米財務省、税制改革案を後押しする試算を発表

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米財務省は12月11日、上院財政委員会の税制改革案が実現した場合、向こう10年間で1兆8000億ドルの増収となり、減税による税収減を賄えるとの試算を発表した。

1 ページだけの簡単な発表。Treasury Releases Analysis of Revenue Estimates Associated with Administration Economic Policies

11月26日に議会予算局が税制改革案の影響についての報告を出し、これが共和党内部でも税制改革案に対する反対を産んだ。

議会予算局の分析では、税制改革案により、経済成長を考えない場合で、2018~2027年累計で赤字が1兆4142億ドル増えるという。1.9%の経済成長を考慮しても、赤字は1兆ドル増える。

2017/12/4 米上院、税制改革法案を可決   

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財務省の Office of Tax Policy (OTP) はこれを基に分析している。

議会予算局は、このままでは10年間で約1.5兆ドルの赤字となるとする。但し、成長により4080億ドルの税収増が生まれ、赤字は1兆ドルに減る。

この議会予算局の試算はGDPの伸びを2.2%にしている。(一般には「1.9%の経済成長を考慮して」となっている)

これに対し、OTPは2.9%と見る。より詳細には、2018年は2.5%、2019年は2.8%、それ以降は3.0%とする。

元の2.2%から0.7%ポイントだけ増えることとなるが、このうち半分は法人税率の引き下げによるもの、残り半分はPass-through企業(株主が課税されるもの)税制や個人所得税の改正、規制改革、インフラ開発、福祉の改定など政府が予算で提案する計画による。

GDPを見直すと、税収は10年間で議会予算局の計算の4080億ドルではなく、約1.8兆ドル増加する。(増益分は後半の5年に生まれる)

成長なしでは10年間で約1.5兆ドルの赤字となるとするが、成長を考えると、10年間で3000億ドルの黒字となる。

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専門家や民主党が財務省の分析を批判している。

想定成長率は大半のエコノミスト予測を大幅に上回っているほか、まだ実現できていない修正事項も前提としている。

参考 過去のGDP

保守派の非営利組織「責任ある連邦予算委員会」は「(税制変更が経済に及ぼす影響を分析する)ダイナミック・スコアリングを馬鹿にしている」と批判している。

民主党のシューマー上院院内総務も「1ページのでたらめな計算にすぎない」とした上で「ホワイトハウスと共和党が藁をもつかむ思いで、確証のないことを証明し、法案への支持を取り付けようとしていることは明らかだ。この法案では、赤字が膨張し、赤字を相殺する追加の経済活動もほとんど全く生じないことは、ほぼすべての独立した分析で結論づけられている」と述べた。

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