リニア中央新幹線建設工事をめぐるゼネコン大手4社による談合事件で、公取委による立ち入り調査前に自主申告した大林組については、これまで、課徴金全額が免除され、刑事告発もされないものとされてきた。
リニア中央新幹線建設工事をめぐるゼネコン大手4社(大林組、清水建設、鹿島建設と大成建設)による談合事件家宅捜査で明らかになった。
その後、12月18日には、特捜部と公取委が独禁法違反容疑で立ち入り調査を行ったが、その前に大林組が自主申告をおこなった。
独禁法違反容疑で立ち入り調査の後で、清水建設も自主申告を行っている。
独禁法では、調査開始日前の1番目の申告事業者は課徴金が全額免除されるとともに、公取委による刑事告発が見送られる。
その他については以下の通り。
課徴金 | 刑事告発 | 一般認識 | ||
開始前 | 第1申告者 | 全額免除 | 見送り | 大林組 |
第2 | 50%減額 | |||
第3~第5 | 30%減額 | |||
開始後 | 最大 3社 & 開始前と合わせ 最大5社 |
30%減額 | 清水建設 |
公取委は第2申告者以降の扱いを改正しようとしていたが、現通常国会への提出を断念した。2018/1/26 公取委、独禁法改正案の通常国会への提出を断念
しかし、課徴金減免には次のような手続きが必要である。
(調査開始前の自主申告)
①まず調査開始前に、違反行為の概要を記載した「様式1号」を提出
②さらに公取委が通知する期限までに、指定日までに、不正行為に関与した自社や他社の役職名や時期などを明記した詳細な報告と営業日報などを添えた「様式2号」を提出
(調査開始後)
調査開始日から20営業日を経過した日までに「様式3号」を提出し、公取委が把握していない情報を提供
今回の場合、大林組は調査開始前に1号様式を提出したが、様式2号の提出前の12月18日に独禁法違反容疑の調査が行われた。
このため、調査開始前に様式1号と様式2号を提出するという要件を満たせず、調査開始後の自主申告となる。
清水建設とともに、調査開始20営業日の前に様式3号を提出した。
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様式2号は公取委の指定する日までに提出することとなっている。
今回、その日の前に調査に入った。
通常は自分が指定した様式2号提出日までに調査に入ることはあり得ない。公取委の知らない事案を自主申告しても、そのメリットが大幅に下がることとなる。
今回は、「公取委の知らない事案」ではなく、12月8日の特捜部の偽計業務妨害容疑調査の時点でおそらく公取委も関与しており、12月18日の独禁法違反容疑調査も予定されていたと思われる。
大林組の様式1号提出は、「形式上」は調査前であるが、公取委が全く知らない事案ではない。特捜部の調査の報道で公知の事実でもある。
大林組が仮に様式1号と様式2号を合わせて提出しておれば、調査前扱いになっていたかも分からない。
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