Brexitの問題の根源

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2016年6月23日
英国で実施されたEU離脱の是非を問う国民投票は、大方の予想を裏切る「離脱」という結果となった。


2016/6/25 英国、EU離脱 

英国政府は2017年3月29日にEUに対し「EU離脱通知」を行った。2年後の2019年3月29日の離脱となる。

英国のEUからの離脱交渉が2017年6月19日、ブリュッセルで始まった。

下記の協議を最優先する方針で一致した。

(1)英国で暮らすEU市民の権利や地位の保護
(2)最大600億ユーロ(約7兆4000億円)とされる英国の未払い分担金など「清算金」支払い
(3)離脱後の英国とアイルランドの国境管理

2017/6/21 BREXIT 交渉 開始

Theresa May英首相は2018年11月14日夜、13日に英国と欧州連合(EU)が合意したBrexitをめぐる合意案を、内閣が承認したと発表した。
首相は、「この合意か、合意なしでの離脱か、Brexitをやめるかだった」と述べた。

2018/11/19 英内閣、Brexit合意案を承認 国内では反発も

英議会下院は2019年1月15日午後8時半すぎ、Brexit について英政府がEUとまとめた離脱条件の協定の承認採決を行い、432対202の大差でこれを否決した。

2019/1/16  英下院、ブレグジット協定を歴史的大差で否決 

このままでは、3月29日には「合意なき離脱」('no deal' Brexit) となる可能性が強く、大きな混乱が予想される。


付記

英下院は1月29日夜、EU離脱を巡り、メイ首相が推進してきた離脱合意案の主要条項を変更することを求める議員提案を賛成多数で可決した。
首相は、いったん下院が否決した合意案のうち、根幹部分の離脱協定について、
アイルランドの国境問題への対応でEUに再交渉を要請する。

下院はこの日、合意なき離脱を拒否するとの超党派議員提案も賛成多数で可決した。「2月26日までに議会で離脱案の承認がない場合に、離脱時期の延期を求める」案は与野党からの支持があったものの否決された。


EUのトゥスク大統領は同日、英下院がEUとの再交渉を支持したのを受けて声明を発表し、離脱合意案の根幹である離脱協定は「再交渉しない」との姿勢を明確にした。

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最大の問題はアイルランドとの国境問題である。

北アイルランドでは、少数派カトリック系住民とプロテスタント系住民との衝突が尖鋭化して北アイルランド紛争が起こったが、1998年4月10日のベルファスト合意により和平がもたらされた。
和平合意により、住民らは通勤や買い物で自由に国境を往来できるようになった。

アイルランドとの統合を悲願に争ってきた北アイルランドのアイルランド人にとっては、Brexitにより再度国境が設置され、アイルランドと遮断されることは耐えられない。

北アイルランド紛争の再発を防ぐため、EUと英国は、北アイルランドとアイルランドの国境問題について、国境復活などの厳格な対応ではなく、柔軟で建設的な解決を模索することで合意した。

しかし、これの解決策は見つかっていない。

国境を設置しない場合、EUーアイルランドー北アイルランドー英本土が結びつき、人やモノが自由に移動できることとなり、EU離脱の意味が無くなる。
逆に北アイルランドと英本土の間を遮断すれば英国が分断される。

EU側は、EU制限物品が外国から北アイルランドを経由して入るのを防止するため、工業製品、環境、農産品などに関してEU規制を適用し、通関手続きはEU関税法典に従うことを求めている。
これは、北アイルランドを実質的にEUに残存させることを意味し、ここでも英国が分断される。

現在の合意案では2020年末までの移行期間 を置くが、その間に解決策が出る可能性は少ない。その場合のBackstop案では英国はEUのルールから外れることができない。英国が提案してもEUが了承しない限り、英国が永遠にEU関税同盟に残ることとなり、これに対する反対が強い。


本件は離脱交渉の最初に重要課題として取り上げられたが、不思議なことに、こんな重要な問題についてBrexitの検討中に議論された様子が全く見られない。

離脱すればどうなり、どんな問題が起こるかを全く検討せず、Brexitを決めてしまったのは不思議である。


また、離脱賛成派は、離脱しないと大変だ、離脱するとこんなに良いことがあると主張したが、その多くが全くの嘘であった。

多くの国民が、この嘘を信じて、離脱に賛成票をいれたこととなる。

その一つが、EUへの拠出金である。

離脱派は拠出金が週3.5億ポンド(約480億円)に達すると主張、与党・保守党のBoris Johnson 前ロンドン市長らが全国を遊説したバスの側面にも、巨額の拠出金を「国民医療サービスの財源しよう」と書かれていた。

一方で残留派は、EUから英国に分配される補助金などを差し引くと、拠出金は「週1億数千万ポンドだ」と反論していたが、 多くの報道が無視したため、国民に伝わっていない。

実際は次の通り。

英国の2015年の拠出金は180億ポンドである。

週当たりでは3.5億ポンドで、離脱派はこれをそのまま、「国民医療サービスの財源にしよう」と訴えた。

実際には、英国に限り、50億ポンドのリベートがすぐに払われる。さらに、EUの政策に基づき、英国に45億ポンドが支出される。

このため、ネットでは英国のEUに対する支出は85億ポンド(週当たりでは1.6億ポンド)に過ぎない。


移民問題でも嘘があった。

政府は移民を10万人以下と公約していたが、2015年の移民は33万 人の純増であった。

離脱派はこれを引き合いに出し、今後数年で400万流入の可能性 があるとか、トルコがEUに参加し、100万人 が流入するなどのデマを流した。英国がトルコ参加の拒否権を持たないとのデマも流した。

しかも、BBCを含めた報道が、誤りを修正せずにそのまま報道した。
BBCは「公平性の原則」を理由に、発言をそのまま報道した。庶民が読む地方紙は賛成派、反対派に分かれ、虚偽の報道をした。

キャメロン政権の首相付き政務広報官であったCraig Oliverの著書 ブレグジット秘録 英国がEU離脱という 『悪魔』を解き放つまでがこれを詳しく報じている。

国民投票後に、賛成派の政治家が自身の説明が嘘であったことを認めた。このため、「うそを信じてしまった」と離脱に投票したことを後悔する書き込みが増加し、「BREXIT」(Britain Exit )に絡め、BREGRET (Britain Regret) が使われている。

2016/6/28 BREXIT からBREGRET(Britain Regret) へ 

結局、離脱すればどうなるのかを検討し、議論して決めるのではなく、国民を騙して離脱に賛成票を入れさせた結果が現在の状況を生んだ。

十分な、正しい情報なしで国民投票が行われた結果であり、もう一度国民投票をするのがよいのかも分からない。

メイ首相は1月14日の英議会の演説で「EU離脱を止めることは民主主義の破壊になる」と述べ、EU残留派を中心に広がる国民投票の再実施論を強くけん制した。


EU
側は、離脱が容易にできると追随する国がでる恐れがあるため、英国の失点を逆手に強硬な姿勢を続けている。

英国は離脱協議の初めに、アイルランドとの間に国境を設置しないことを了承した。これは止むをえないことだが、外国品の移動、外国人の移動 、その他について、いろいろな条件交渉の手はあったと思われる。

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