メイ首相は4月5日、EUのトゥスク大統領に書簡を送り、12日に迫ったEU離脱期限を6月30日に再延期するよう要請した。
もし、議会が離脱協定案を承認すれば、5月23日の欧州議会選挙の前に離脱ができるとし、承認を得られない場合は議員候補を出すとしている。
しかし、4月12日が立候補締め切り日であり、英国の離脱を前提に議席の再割り当てをしているため、離脱が未定のままでは選挙を進められない。
既にEUのユンケル欧州委員長は4月3日に「離脱協定案を英議会が承認しなければ、短期延期は不可能」と明言している。
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英国のEU 離脱に伴う混乱を避けるため、英政府に対してさらなる離脱延期をEUに申し入れるよう義務付けた法案が、4月3日に わずか1日で下院を通過した。
労働党のYvette Cooper 議員が提出したもので、賛成313票、反対312票の僅差で可決された。 保守党から14人の造反者が出た。
投票権者 賛成 反対 棄権 保守党 312 14 290 8 民主統一党 10 10 (与党 (322) (14) (300) (8) 労働党 243 229 9 5 スコットランド国民党 35 35 自由民主党 11 11 独立党 11 8 3 独立グループ 11 11 シン・フェイン党 7 7 プライド・カムリ 4 4 緑の党 1 1 合計(欠員 1) 645 313 312 20
政府は声明で、「首相はすでにEUから協定にもとづいて離脱するための明確なプロセスを提示しており、政府もすでにさらなる延長に向けて尽力している」と述べ、「もしこの法案が可決されれば、政府の延長交渉に深刻な制限がかかることになり、4月12日までに新たな離脱日を英国法に示すことが難しくなる」 としている。
メイ首相は4月2日、約7時間に及ぶ閣議で対応策を協議したあと、首相官邸で声明を読み上げた。
1) 4月12日の合意なき離脱を回避するため、離脱の短期間の延期をEUに要請する。
2) そのうえで、秩序立った離脱を実現するため、最大野党・労働党のコービン党首と直接話し合い、合意形成を目指す。
2019/4/3 メイ首相、離脱の短期延期を要請へ
これまでの「示唆的投票」は可決されても政府を拘束するものではないが、今回の法案は上院貴族院に廻り、上院で可決すれば法律となり、政府を拘束する。
但し、EUに離脱を申し入れても、EUが受け入れるとは思えない。
メイ首相の発言を受け、EUのユンケル欧州委員長は4月3日、「離脱協定案を英議会が承認しなければ、短期延期は不可能」と明言した。合意なき離脱の可能性が高まっているとし、「どんな結果になるかは英国側にかかっている」と述べた。
7月2日に開かれる新たな欧州議会の議員を選ぶ選挙は5月23日~26日に行われるが4月12日は立候補締め切り日である。
英国の離脱を前提に議席の再割り当てをしており、離脱が未定のままでは選挙を進められない。
EUのトゥスク大統領は、離脱期限について、12カ月の「柔軟な」延期を英国側に提示することを提案している。 BBCがEU高官の話として4月5日に報じた。
この場合は欧州議会に議員を出す必要がある。現時点ではメイ首相は、欧州議会選に参加しなくて済むよう、5月22日までに離脱関連法を成立させたいとしている。
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上院では4月4日にこの法案の審議が始まったが、保守党の 7時間に及びフィリバスターで、まだ投票には至っていない。(通常は下院で通った法律は上院でも通る。)
議長の調整の結果、4月8日に投票することとなった。
上院の構成:
一代貴族 | 世襲貴族 | 聖職貴族 | 合計 | |
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聖職貴族 | 26 | 26 | ||
Conservative | 199 | 48 | 247 | |
中立派 | 152 | 32 | 184 | |
Labour | 181 | 4 | 185 | |
Liberal Democrat | 91 | 4 | 95 | |
議長 | 1 | 1 | ||
無所属 | 26 | 3 | 29 | |
その他 | 15 | 15 | ||
合計 | 665 | 91 | 26 | 782 |
聖職貴族:国教会の高位聖職者であるカンタベリー大主教、ヨーク大主教、ロンドン主教、ダラム主教、ウィンチェスター主教の5人と、そのほかの21名の教区主教をあわせた計26名。
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メイ首相は4月3日、膠着状態の打開策を探るため、労働党のコービン党首と会談した。
首相府はコービン党首との会談について、「建設的な対話だった」と位置付けているが、コービン党首は、「有意義だったが結論は出なかった」と し、メイ首相の姿勢は期待したほどには変わらなかったとも言い添えた。4日に再度協議を行うと述べた。
首相の労働党との協議の戦略は与党内から強い反発を招き、閣僚2人が辞任、議会でも与党議員からメイ首相を批判する発言が相次いだ。
「協議を続けたし、これからも政府と協議を続ける」と述べた。
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