Brexitで合意

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欧州連合(EU)のユンケル欧州委員長は10月17日、トゥスク大統領に宛てた書簡に「英国とEUの交渉担当者は17日に新たな離脱協定案で合意した」と明記した。自身のツイッターで書簡を公表した。

Where there is a will, there is a #deal - we have one!
It's a fair and balanced agreement for the EU and the UK and it is testament to our commitment to find solutions. I recommend that #EUCO endorses this deal.

(本来の諺は、Where there is a will, there is a way.)

概要は以下の通り。経済や市民生活の面でEUやアイルランドとの関係の方が強くなる可能性が高く、「連合王国としての英国の一体性の維持」を党是とするDUPとしては容認しがたいと見られる。

アイルランド国境をめぐる「バックストップ」は削除

英国は北アイルランドを含め、EU関税同盟から離脱。

アイルランド島の国境には物理的な関税等は設けない。

2020年末までの移行期間終了後、名目上は北アイルランドを含む英全土がEUとの関税同盟から抜ける。
しかし、アイルランド島の国境付近での税関業務を省略できるよう、北アイルランドに限り関税手続きをEU基準に合わせる。英本土から北アイルランド向けの品物はいったんEUの関税を徴収されるケースも出る。

本土から北アイルランドに入る段階でEU関税を支払い。(英国が実施するが、EUは立ち合いの権利を持つ。個人の荷物はチェックしない。)
北アイルランドに留まるものは関税還付。
アイルランドに運ばれるものは関税還付なし。

実質的には北アイルランドだけEUの関税同盟に残る状態に近い。

北アイルランドはEU単一市場に部分的にとどまる。農産物や工業品の基準、付加価値税などでEUルールを適用

VATのEUルール適用はモノに対してのみで、サービスは除く。
北アイルランドにアイルランドと同じ率の適用もありうる。
英国が、EU規定での最低レートを下回る率を定めても、北アイルランドには適用できない。

北アイルランド議会はEUルール適用を受け続けるかどうか4年ごとに判断(移行期間終了の4年後の2025/1以降)

移行期間は2020年12月末まで

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英国を除くEU加盟国27カ国の首脳は新たな合意案を承認した。

ジョンソン首相 は19日(土曜日)に下院を招集し、審議・採決の運びとなる。首相はツイッターで、「議会は土曜に承認しろ」と述べた。

We've got a great new deal that takes back control -- now Parliament should get Brexit done on Saturday so we can move on to other priorities like the cost of living, the NHS, violent crime and our environment
#GetBrexitDone #TakeBackControl

今回合意したが、協定にはイギリス議会の承認が必要である。ジョンソン首相は北アイルランドの民主統一党(DUP)や与党・保守党の親EU派による支持固めに奔走しているが、与党は多数を割っており、議決できるかどうか不明である。

「このままでは新離脱案を支持できない」。北アイルランドを地盤とする閣外与党の民主統一党(DUP)はコメントを出した。

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英国とEUの交渉は、 当初は15日深夜が妥結の期限とされていたが、 協議はその後も続いた。アイルランドと英領北アイルランドの間の国境問題については、双方の意見がなお一致していなかった。

ジョンソン首相は北アイルランドをEUの単一市場、関税同盟に残すという妥協をした模様。Donald Tusk 欧州理事会議長は、「15日にはこれで決まったと思ったが、英国側に問題があるようだ」と述べた。

報道では主な問題点は下記の通り。

提案 反対
EU アイルランド国境での厳格な国境検査を避けるため、北アイルランドをEUの単一市場と関税同盟に残す。 北アイルランドの民主統一党(連立与党)は一貫してこれに反対   英本土と北アイルランドの間で通関検査が必要となる

英政府 北アイルランドを巡る取り決めの実施に当たっては、北アイルランドの定期的な承認を必要とする仕組み
 北アイルランドの民主統一党(連立与党)が強く要求
EUが懸念
IRA 国境をつくれば、国境施設・要員に軍事攻撃する。


英議会は、17~18日のEU首脳会議で新たな合意が結ばれなかった場合、EUに延期を要請するよう首相に命じる
通称「ベン法」を可決している。

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その後、「英政権に閣外協力する北アイルランドの地域政党・民主統一党(DUP)が譲歩し、合意の可能性が高まった」と報道された。

欧州メディアは、バルニエEU首席交渉官が16日夜、加盟各国に対し、付加価値税(VAT)の取り扱い以外の課題は全て英国と合意したと説明したと報じた。

北アイルランドにEUのVATが適用されるのかどうかという問題とされる。
Another major issue in the PM's proposals are whether EU VAT rates would apply in Northern Ireland.

VAT税率

基本税率 軽減税率
英国 20% 0、5%
アイルランド 23% 0、4.8%、9%、13.5%


現在は、北アイルランドでは英国の税率が課せられている。離脱後に何故変更が必要なのか分からない。

なお、現在は、アイルランドと北アイルランドの取引は、同じEU内のため、消費地の税率(アイルランド品を北アイルランドに運べば英国の税率、逆ならアイルランドの税率)が課せられている。
離脱後は、本来ならば、域内のアイルランドと域外の北アイルランドの製品移動は輸出入となり、輸入側で輸入品の税率がかかる。


BBCによると、交渉の焦点となっていた国境に関する問題は「ほぼ解決された」が、なお技術的な詳細について協議が続いていた。

しかし、民主統一党(DUP)は、税関や地方政府の発言権についての現在の提案を受け入れることはできないとツイートした。付加価値税(VAT)についても明瞭性を欠いていると主張した。

"We have been involved in ongoing discussion with the Government. As things stand, we could not support what is being suggested on customs and consent issues and there is a lack of clarity on VAT.

We will continue to work with the Government to try and get a sensible deal that works for Northern Ireland and protests the economic and constitutional integrity of the United Kingdom."

関係者によると、DUPは「数百万でなく数十億ポンド」単位の資金を北アイルランドに拠出するよう要求し、支出を増やすことが合意を支持する条件だとジョンソン首相に伝えたという。



参考
 2019/10/16   Brexitの状況 (10/15)



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