世界の主要な中央銀行が新型コロナウイルスの感染拡大を受け、金融市場への資金供給を急拡大させている。
米連邦準備理事会(FRB)の3月18日時点の総資産残高は4兆6680億ドルとなり、1週間前に比べて約3500億ドル増え、量的緩和第3弾(QE3)で資産が膨らんだ際の残高も上回った。
3月23日には米国債や住宅ローン担保証券の買い入れ量を当面無制限とする緊急措置を決めた。さらに、短期金融市場にゼロ金利で供給する新たな措置も決めた。
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2019年2月20日に公表した米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で、2017年秋から続く保有資産の縮小を2019年中に終了する方針を明らかにした。
3月20日の米連邦公開市場委員会で「量的引き締め」は2019年9月末で停止すると決めた。実際には2019年7月末で終了した。
FRBの発表によると、アメリカの雇用市場はなお力強く、経済活動も堅調に伸びている。
2019/8/1 FRB、10年半ぶり利下げ、資産縮小も終了
しかし、米市場で資金需給が逼迫して短期金利が急上昇するなど不安定な状況が続いた。
このため、FRBは2019年9月中旬、レポ取引(Repurchase agreement:国債を担保にした短期資金の供給)を通じた資金供給オペを開始した。1日に2000億ドル規模で供給したこともあった。
これに加え、FRBは10月11日、短期金融市場の資金不足解消のため、短期国債を月600億ドルのペースで購入すると発表した。10月15日から開始し、少なくとも2020年4~6月期まで続ける とした。
2020年3月に、新型コロナウイルスの感染が米国にも拡大、経済への悪影響が懸念されるようになった。
FRBは3月15日、3月3日に続いて再び臨時の会合を開き、新型コロナウイルスの感染拡大による経済への悪影響を抑えるため、政策金利を一気に1%引き下げ、事実上のゼロ金利政策に踏み切ることを決定した。前月末から一気に1.50%下げた。
2020/3/16 米FRB、政策金利引き下げ 事実上ゼロ金利導入
これに加え、FRBは財務省証券などの債券を少なくとも7,000億ドル買い増す、いわゆる資産買い入れ策の再開も併せて発表した。 向こう数か月、財務省証券を少なくとも5,000億ドル、モーゲージ担保証券(RMBS)を少なくとも2,000億ドル、合計で少なくとも7,000億ドル買い増す。
これ以外に、準備預金率を0%に引き下げ、また民間銀行への貸出制度の拡充策も決めた。
3月17日には企業の資金繰りを抜本的に支援するため、企業が短期資金の調達に使うコマーシャルペーパー(CP)を買い入れる緊急措置を発動すると発表した。
企業に直接、潤沢な資金を供給して景気の一段の冷え込みを避ける。FRBによるコマーシャルペーパーの買い入れはリーマン・ショック時の2008年から2010年以来となる。
更に、FRBは3月23日に臨時の連邦公開市場委員会を開き、米国債や住宅ローン担保証券の買入量をさきに決めた7,000億ドルから「必要量」に切り替え、当面無制限とするとした。
また、短期金融市場にゼロ金利で供給する新たな措置も決めた。金融機関が国債などを担保に短期資金をやりとりする「レポ市場」が対象で、これまでは政策金利(0~0.25%)と連動するフェデラルファンド(FF)金利を基準としたが、FF金利は乱高下するため、翌日物に限り、ゼロ金利で資金を供給する。
さらに、消費者ローン、自動車ローン、学生ローンなどを担保とする資産担保証券の買い入れも決定した。
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この結果、FRBの3月18日時点の総資産残高は4兆6680億ドルとなった。
付記 3月25日時点の総資産は5兆2542億ドルに膨らんだ。
2019年7月末で保有資産の縮小を止めたが、直後の9月からは短期金利の状況を抑えるためレポ取引などで資金供給を増やし、本年3月にコロナウイルス対策で資産買入を再開、QE3で膨らんだ際の残高を上回った。
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