住友化学、臭気検知デバイスを用いた新型コロナウイルス感染症の迅速診断センサー開発のため資金提供

| コメント(0)

住友化学は5月8日、高精度の臭気検知IoTプラットフォームを開発するイスラエル のNanoScent社へ、同社が進める臭気検知デバイスを用いた新型コロナウイルス感染症の迅速診断センサー開発のため、必要資金の約7割を提供すると発表した。

NanoScentは、2017年設立のテクニオン・イスラエル工科大学発のスタートアップ企業で、Scent Recognition as a Serviceというコンセプトのもと、臭気検知のハードウェアのみならずソフトウェア開発も行っている。

NanoScent はケミレジスタ(chemiresistor)を搭載した臭気検知デバイスとデジタル技術を融合したさまざまな新型センサーを開発してい る。

ケミレジスタとは絶縁性または半導体性の媒体中に導電性材料を混合した材料で,物質の吸着など周辺の化学的環境により導電パスの状態が変化し電気伝導性が変化するため、さまざまな物質を検知するセンサーとして活用できる。一般にナノテクノロジーを活用した材料が用いられる

複数の臭気をリアルタイムで検知できるポータブルデバイスと、検知したデータをクラウド上に蓄積・解析し、スマートフォンなどの端末にその結果を表示させる情報基盤の試作品を完成させてい同社のNanoScent SR (Scent Recorder) は直径1mm の8つのセンサーを持つ。

NanoScent は、新型コロナウイルス感染症の拡大抑止に向けて、この技術を活用し、鼻の呼気からウイルス感染を検知できる迅速診断センサーの開発に着手した。

国境や空港、病院などでの感染スクリーニングシステム構築のため、イスラエルおよび欧州の病院や高精度な検査技術を開発する企業と連携し、実証実験を始めている。

臭気検知デバイスを用いた非侵襲(生体を傷つけない)かつ即時に判定ができる極めて簡便な診断方法と、PCR法などのより高精度な検査方法を組み合わせて、「短時間」「低コスト」「高精度」で実施可能な感染スクリーニングシステムの実現を目指す。

住友化学は、迅速診断センサー技術の開発は、新型コロナウイルス感染症はもとより、将来に発生が懸念されるパンデミック対策にも応用が可能であると考えている。

ーーー

住友化学は2019年12月にNanoScent に200万ドルを出資し、戦略的な技術的連携を深めるとともに、新規ヘルスケア事業の創出に取り組むこととした。

住友化学は連携により、次世代ヘルスケアプラットフォームの鍵となる「体調可視化」の実現を目指している。

排泄物の臭気データから体調変化や病気の兆候を読み取り、その日の体調に適したソリューション(食事や薬、生活習慣など)の提案により、健康管理に役立てる仕組みを構築すべく、実証実験を計画している。

また、さまざまな揮発性化学物質の集合体である臭気を高精度で検知できるNanoScent の技術は、ヘルスケアに留まらず、工場や街中での有害物質の検知・モニタリング、自動車内の臭気判定・管理など、応用範囲は多岐にわたるため、次世代事業の創出につながると判断した。

ーーー

臭いによる新型コロナウイルスの感知は全く新しい方法である。

現在、新型コロナウイルスの検査には、PCR検査、抗原検査、抗体検査がある。

PCR検査と抗原検査は、人体に侵入したウイルスを検査し、抗体検査は、人間が持つウイルスへの抗体を検査する。


PCR検査はウイルスのRNAの存在を検査する。ウイルスは、デオキシリボ核酸(DNA)を持つDNAウイルスと、リボ核酸 (RNA)をゲノムとするRNAウイルスに分けられる。

コロナウイルスはRNAウイルスなので、PCR法の前にRNAをDNAに変える「逆転写」という作業を行う。
次に、一本のDNAをもとに、次々にDNAを複製する。

PCR法では、検体に含まれるウイルスの遺伝子量では検出できないが、増幅することにより検出できるようになる。

2020/2/29 COVID-19 ウイルス、迅速検出

抗原検査は、ウイルスの外側に付いている突起部分(スパイク)のたんぱく質を検出する。抗原は、免疫細胞上の抗原レセプターに結合し、免疫反応を引き起こさせる物質の総称。

米食品医薬品局(FDA)は5月9日、新型コロナウイルスに感染しているか簡易診断できる「抗原検査」に初めて緊急使用認可を与えたと発表した。

Quidel Corporationが手掛ける抗原検査Sofia® 2 SARS Antigen FIAで、同社のSofia 2 Fluorescent Immunoassay Analyzer で検査する。

抗原検査は鼻の奥から綿棒で粘液を採取し、ウイルス特有のたんぱく質を検出する。

「PCR検査」より精度は劣るものの、検査現場で15分で判定できるほか、コストが安いのも利点である。

厚労省は富士レビオの抗原検査キットを5月13日に薬事承認し、保険適用する。15~30分で検出する。精度はやや劣るため、陰性が出た場合は、念のためPCRによる検査を実施する見通し。


ヒトがウイルスに感染すると、まずlgM抗体ができ、短期間で消失する。lgM抗体に遅れてlgG抗体ができ、漸減しながら長期間持続する。

抗体検査は、この抗体を検査する。

2020/5/7 米FDA、ロシュの新型コロナ抗体検査薬の緊急使用許可


コメントする

月別 アーカイブ