米議会再開、COVID-19経済対策と2021会計年度の連邦政府予算が争点に

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米上院はLabor Day祭日明けの9月8日に再開した。下院は9月14日からスタートする。

とりあえず問題となるのはCOVID-19経済対策第4弾と、10月1日から始まる2021会計年度(20年10月~21年9月)の連邦政府予算である。


(連邦政府予算)

2021会計年度の連邦予算案は全く審議されておらず、このままでは10月1日に政府機関は閉鎖される。

メディアによると、ムニューシン財務長官と民主党のペロシ下院議長が9月1日、11月の大統領選後までつなぎ予算を手当てすることで合意した。連邦政府予算と、与野党協議が難航している追加経済対策の扱いを切り離す。

政府機関の閉鎖などで大統領選に悪影響が及ぶことを避けることで一致した。 つなぎ予算の期間やつなぎ予算に含まれる予算項目など、細目の協議はこれからである。 


(COVID-19経済対策第4弾)

COVID-19経済対策第4弾は、民主党が主導する米下院が5月15日に3兆ドルの新型コロナウイルス対策案(The Heroes Act)を可決した。

2020/5/16 米民主党、下院で新型コロナ対策第4弾を可決 

しかし、上院で多数を占める共和党は上院では即否決するとしており、同案そのままでの成立は不可能である。

米共和党の議会指導部は下院可決後の2か月半後の7月27日、ようやく1兆ドル規模の追加の新型コロナウイルス対策法案を正式に提示した。

米共和党の1兆ドル規模の追加の新型コロナウイルス対策法案:

追加対策には家計への直接支援を再び盛り込んだ。

8月中にも大人1人あたり最大1200ドルの現金を支給する。3月下旬に決めた経済対策第3弾でも同規模の現金給付を発動しており、今回で2回目だ。年収9万ドル以上の高所得者は対象外とするが、支給額は全体で2500億ドル規模と試算され、家計の手元資金の枯渇を防ぐ。

中小企業の支援策も部分延長する。従業員の雇用を維持すれば給与の支払いを連邦政府が肩代わりする仕組みだが、8月7日が申し込みの最終期限だった。これまでは従業員500人以下の企業は全て対象だったが、共和党案では売上高が5割以上減った企業に対象を絞る。ほかにも雇用を増やした企業には税額控除などで財政支援する。

7月末で期限が切れる失業給付の特例は、加算額を減らして12月末まで延長する。現在は連邦政府が週600ドルを上乗せしているが、10月初めまで加算分を200ドルに減らし、その後は州の支給分と合わせて失業前の給与の70%を上限とする。

失業給付の特例加算は2500万人が支給対象になっているとされ、失業者の7割が以前の給与を上回る給付を受けているとの試算もあった。 延長そのものに反対する共和党議員が少なくない。

その間、米連邦政府が新型コロナウイルス対策として発動した失業給付の特例が7月31日に失効し、支給額が一時的に大幅に減額する見通しとなった。

2002/8/3 米の失業給付特例、与野党の不一致で失効

これに続き、中小企業の雇用維持策も8月7日に申請期限が切れることとなった。

2020/8/8 米国、失業給付の特例に続き、中小企業の雇用維持策も期限切れ

トランプ大統領は8月8日、新型コロナウイルス感染拡大を受けた追加経済対策として、失業給付を増額する措置の延長を含む4つの大統領令に署名した。

2020/8/9 トランプ大統領、失業給付増額等へ大統領令

民主党の主張する3兆ドルと共和党の1兆ドルの差が大きく、まとまらないまま、夏季休暇に入った。

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ある報道では、ホワイトハウスは従来の共和党主張の1兆ドルから1.5兆ドルに増やし、民主党は当初の3兆ドル案から2.5兆ドルに引き下げ、合意に向け一歩進んだとされた。

しかし、米上院共和党のマコネル院内総務は9月8日、従来案(1兆ドル)から規模を縮小した5000億ドル規模の対策法案を提出した。

失業給付の加算延長、中小企業の雇用維持策の再開2580億ドル、企業などのコロナ訴訟の免責条項、米郵便公社への資金支援100億ドル、ワクチン・検査予算 470億ドルは折り込んだが、家計への現金給付、州・地方自治体支援、トランプ大統領が主張する4人家族で計3400ドルの現金給付などは削除した。

失業給付については、連邦政府が週300ドルを支給する。期限切れ前の連邦政府支給は週600ドルであった。大統領は大統領令で週400ドルとしたが、これには州政府支給の100ドルが含まれている。

8月7日に申請期限が切れた中小企業の雇用維持策も再開する。

企業などのコロナ訴訟の免責条項は野党民主党と対立する。新型コロナで死亡した従業員の遺族が企業などを訴えるケースが増えているが、企業などがCDCなどによるコロナ対策を順守している場合は、従業員や顧客に責任を負わないとする規定である。


共和党は早期の可決を狙うが、
民主党の議事妨害(フィリバスター)を打ち切って採決に持ち込むには60議席の賛成が必要だが、上院では共和党は53議席であり、単独では不可能である。
民主党の
ペロシ下院議長は同案を「詐欺的」と批判しており、民主党からの賛成は期待できない。逆に、共和党内にこの案にも反対する財政保守派がおり、難航は必至である。

上院共和党は、60議席の賛成を得られる目途が立たないまま、 審議に入るべく、9月10日に動議を採決した。

結果は賛成52、反対47 で、審議入りに必要な60票に届かなかった。

共和党 民主党 民主系
無所属
合計
賛成 52 0 0 52
反対 1 44 2 47
棄権 0 1 0 1
合計 53 45 2 100

この日の採決後、複数の共和党上院議員が選挙前の交渉再開の見通しについて、悲観的な見解を示した。

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