連邦地裁、政府のTikTok配信禁止措置を一時差し止め

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米連邦地裁(U.S. District Court, Washington DC)は9月27日、同日午後11:59に発効する予定だったトランプ米政権による配信禁止措置の一時差し止めを命じる判断を示した。

政府の禁止措置はAppleのapp store やGoogleのAndroidからTikTokを除くもので、新規取得が出来なくなる。既存の需要家はそのまま使用できるが、安全性強化などのアップデートが出来なくなる。
今回、これが一時差し止めされた。

なお、11月12日からは既存需要家のダウンロード済みのアプリの機能も制限される。 これについては、地裁は今回、判断していない。

TikTok の米国事業見直しを巡る交渉は続いている。

付記

米政府は10月8日、TikTokの配信禁止を差し止めた連邦地裁の判断を不服として、連邦高裁に上訴した。

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TikTokの親会社のByteDance は9月23日、米連邦地裁に対し、TikTokの売却交渉が続いていることを理由に、配信禁止措置の一時差し止めを請求した。

米連邦地裁は9月24日の公聴会で米政府に対し、25日午後2時半までに9月27日のアプリ配信禁止措置を延期するかどうかを決めるよう求めた。延期に応じない場合はByteDance側の主張に反論する追加の資料を提出するよう求めた。

政府は9月25日、アプリ配信禁止措置を延期することを拒否し、追加の資料を非公開で提出した。

地裁判事は公聴会を9月27日午前9時半に開くことを決めた。商務省によるアプリ配信禁止は9月27日 午後11:59にと迫っていた。

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別途、TikTokの利用者3人がアプリ配信禁止措置の一時差し止めを求めた訴訟で、ペンシルバニアの連邦地裁判事は9月26日、請求を却下した。
「配信禁止は疑いもなく不便であるが、新規配信の禁止であるため、現在の数百万のフォロワーのために引き続き投稿し、内容をシェアできる」とした。


なお、騰訊控股(Tencent Holdings )の
「WeChat」については、米カリフォルニア州北部地区の連邦地裁は9月20日、「WeChat」の提供を禁止する大統領令の執行を一時的に差し止める命令を下した。AppleやGoogleが9月20日からWeChatのダウンロードを中止するのがブロックされた。

2020/9/21 米連邦地裁、WeChat 配信禁止を一時差し止め

ByteDanceは別途、8月24日に カリフォルニア州中部地区米国連邦裁判所に米商務省、トランプ大統領、Wilbur Ross商務長官に対する起訴状を提出している。

米政府が発表した同社と親会社のByteDanceに関わる大統領令は、プロセスが合法的でなく、同社が享受すべき憲法で保障された権利を破壊した、同大統領令は「国際緊急経済権限法」の乱用であると指摘したと訴え、裁判で自分たちの合法的権利を守るとしている。

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トランプ大統領は8月6日、動画投稿アプリTikTok を運営する北京字節跳動科技(ByteDance)との米国人の取引を禁止する大統領令及び、WeChat に関する騰訊控股(Tencent Holdings )との米国人の取引を禁じる大統領令を出した。45日後に商務長官が禁止対象行為を決め、それ以降の取引を禁止する。米商務省は9月18日、TikTokとWeChat の規制を発表した。

トランプ大統領は8月14日夜、国家安全保障上の懸念を理由に、中国のBytedance(北京字節跳動科技)に対し、運営する動画投稿アプリTikTokの米国資産を売却するよう命じた。

トランプ米大統領は9月19日、北京字節跳動科技(ByteDance)の運営するTikTokの米国事業売却交渉を巡り、ByteDanceと米IT大手Oracleなど米企業との提携案を「概念として(in concept)承認する」と述べた。

Mnuchin 米財務長官は、当初9月15日であった売却期限を9月20日に延ばした。

2020/9/20 トランプ大統領、TikTokとOracleの提携案を「概念として承認」 


提携案は下図の通り。

この提携案は、米国政府から出された極めて厳しい条件に加え、中国政府が対抗して出した厳しい条件から、到底解決できないとみられたものを、なんとか解決した素晴らしい案である。

条件 今回案
米国側 TikTok利用者の個人データの流出を防ぐ

OracleがByteDanceの技術パートナーとなり、TikTokの米国のユーザーデータの管理をOracleのcloud上で行う。

→中国にデータが流出しない。
対米外国投資委員会(CFIUS)により承認されているという前例
 
2020/9/15 TikTok、Oracle と提携 

米国資産の売却 TikTok Global 設立
 上記の構成で、米資本が52%となる。
  ( 80%x40% + 20%)
実際は、ByteDanceは中国資本が支配するため、米資本の支配権は20%に留まる。
詭弁ではある。
売却益の大部分は米財務省に支払わなければならない。

大統領は、そのような支払いは違法になると弁護士に指摘されたことを認めた。

TikTok Globalは教育基金に50億ドルを寄付

トランプ「米政府への支払いを求めていた自身の要求を満たす」
本社をテキサス州に置き、少なくとも 2万5000人を採用
中国側 一部のハイテク技術を海外に移転する際に中国政府の許可が必要
TikTok技術はこれに該当
ByteDanceは中国資本が支配するため、海外への移転に該当せず

Trump大統領は9月21日、新会社TikTok Globalの株式の一部をByteDanceが保有するなら、提携案の承認を撤回すると述べた。
「Oracleが完全な支配権を持たないのであれば、われわれは合意を認めない。」
提携策を認めるかどうかについて「安全性が最も重要な要素だ。」

当初、よく理解しないまま、米側が過半数を持つとして容認したが、実際は依然として中国側が支配権をもつことが分かったと思われる。

ByteDanceは9月24日、「中国輸出禁止・輸出制限技術リスト」に関する申請を北京市商務局に提出したと発表した。

中国商務省と科学技術省が8月28日に、一部のハイテク技術を海外に移転する際に中国政府の許可が必要になるなど、規制強化を発表したが、TikTok Global への変更で従来の仕組みが変更になるため、申請した。

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