トランプ大統領は10月2日未明、ツイッターで、「今夜、妻と私は新型コロナウイルスの陽性と判定された。直ちに隔離と回復のためのプロセスを開始する。この新型ウイルスをともに乗り越えていく」と投稿した。
大統領は10月2日、首都ワシントン郊外の米軍医療施設 Walter Reed National Military Medical Center に入院した。「確実に治るようにする」ため「数日間」入院する。
2020/10/2 トランプ大統領夫妻 新型コロナ陽性
トランプ米大統領の専属医は10月2日、新型コロナウイルス感染で入院した大統領が抗ウイルス薬Remdesivirを服用したと明らかにした。酸素吸入の必要はないとしている。
また、米Regeneron Pharmaceuticals, Inc.の治験段階にある抗体カクテル療法が使用された。
Regeneron Pharmaceuticals, Inc.はトランプ大統領の主治医から人道的見地で未承認薬の使用を認める「Compassionate Use」の要請を受け、大統領向けに高用量の未承認の抗体カクテル「REGN-COV2」1回分を提供した。
CU は生命に関わる疾患を有する患者のために例外的に未承認薬の人道的使用を認める制度。同社は「まれで例外的な状況の下」で実施されたと説明している。
大統領は年齢や臨床的肥満ゆえに新型コロナの重篤な合併症に陥るリスクが比較的高い。
専門家は、未承認の抗体カクテル療法が利用された事実は、大統領の症状がホワイトハウスの説明より重い可能性を示すと見ている。「本当に軽い風邪の症状なら、治験段階の治療を受けさせないだろう」と指摘している。
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医師団は大統領の容体の安定に向けてステロイド薬「デキサメタゾン」の使用を始めた。米国立衛生研究所(NIH)はデキサメタゾンについて、人工呼吸器が必要な重症患者などに使用を限るよう推奨しており、トランプ氏の容体が一時は重かった可能性がある。
抗ウイルス薬「レムデシビル」も使用している。
日本の厚生労働省は7月に、新型コロナウイルス感染症の診療ガイドラインに「デキサメタゾン」を新たに掲載した。5月に特例承認された「レムデシビル」に続いて2例目。
既に承認、保険適用されていて、肺の疾患や重症の感染症も投与の対象となっている。低価格で手に入りやすいのが利点。
2020/6/17 COVID-19 重症患者にステロイド剤デキサメタゾンが効果
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トランプ大統領は10月5日夕、退院した。
主治医は「完全に困難を乗り越えてはいないかもしれない」と説明し、今後も容体を注視する考えを示した。
退院後もホワイトハウスで抗ウイルス薬「レムデシビル」の投与を6日まで続ける。24時間体制で容体を監視する。
Regeneron Pharmaceuticals, Inc.は バイオ医薬品メーカーで、重病患者の治療を対象とする医療製品の研究開発と商品化を手掛ける。がん、眼病、慢性炎症の治療薬(臨床試験段階)、またその他の病気や障害 を対象とする治療薬(前臨床段階)を保有する。
Regeneronのpolyclonal antibody cocktail 「REGN-COV2」は、コロナウイルスのスパイクタンパク質に対する2つのモノクローナル抗体(REGN10933+REGN10987)を組み合わせたもの。
何千ものモノクローナル抗体候補のなかから最終的にウイルスに対する強い中和抗体を産出させることができる組み合わせを見つけた。
抗体はウイルスが健康な細胞に感染するのをブロックするが、単一の抗体の場合、ウイルスの自然発生的な変異型は、抗体のブロック作用を回避する可能性がある。これらの変異体は抗体処理にもかかわらず生き残り、増殖することができ、最終的にはウイルスの優性株になる可能性がある。
REGN-COV2は重複しない別々の場所でウイルスのスパイクタンパク質に結合することにより、ウイルスが逃げるリスクを減らすことができる可能性があることを示す。
6月に新型コロナの入院患者と外来患者の両方を対象に複数の臨床試験を開始し、短期間でPhase3まで終えた。
9月29日に発表された臨床試験1件の暫定結果では、投与した外来患者でウイルス量を減らし症状を緩和する効果が示された。
COVID-19患者275人を対象に実施された初期段階の試験で、REGN-COV2を投与された患者はプラセボ(偽薬)投与の患者との比較で7日後の血流のウイルス量が低かった。高用量、低用量のいずれも忍容性は良好だった。
同社の最高科学責任者は発表資料で、REGN-COV2が「COVID-19患者のウイルス量を急速に減らし、関連症状を和らげた」と指摘した。
同社では緊急使用許可(EUA)の申請に進むのに今回の新データが十分かどうか米当局と協議する考えを示した。
7月には政府のワクチン開発計画 Operation Warp Speed に採用され、4.5億ドルの契約を締結した。8月には米国以外での販売についてRocheと締結した。
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Regeneron Pharmaceuticalsは10月7日、この抗体カクテル療法治療薬「REGN-COV2」について、緊急使用許可(EUA)を米食品医薬品局(FDA)に申請したと発表した。
大統領は同日、ツイッターに投稿した動画メッセージでこの薬を称賛。緊急使用を認め、「無料にするつもりだ」と述べた。
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大統領夫妻が感染した経路は不明だが、9月26日にホワイトハウスで開いた連邦最高裁判所の新判事の候補を紹介した行事がクラスターにつながったとの見方が浮上している。
このほかに既報の通り、大統領候補討論会などで大統領と行動をともにしていた最側近のHope Charlotte Hicksさんが10月1日、新型コロナウイルスの検査で陽性と判定された。
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