バイデン大統領は3月31日、国内のインフラの整備等に8年間で2兆2500億ドル、日本円で220兆円を投入する新たな計画(American Jobs Plan ) を発表した。
財源として、増税を発表した。15年かけて今回のコストをすべて賄えるとしている。
現行で21%の法人所得税率を28%に引き上げる。各国が行っている税率引き下げ競争を米国は止める。
Tax Haven 国への本社移転で税回避するのを防ぐため、種々の対策を折り込む。世界的に事業展開する企業の利益に税率21%のミニマム税を適用するが、国別に計算することで、Tax Haven国での利益にも課税する。
米財務省は4月7日、バイデン大統領が提案したAmerican Jobs Planの財源となる法人増税計画(The Made in America Tax Plan)の詳細を発表した。
イエレン財務長官は新たな法人税制案について「全ての米国在住者にとってより公平なものになる」と指摘、企業が投資や利益を国外に移すインセンティブを排除し、国内での極めて重要なニーズに充てる資金を増やすための計画だと述べた。
考え方
1. 必要な投資を賄うため十分な税収を集める。
トランプ大統領と共和党は2017年12月の税制改正(Tax Cuts and Jobs Act)で35%の連邦法人税率を2018年から21%に引き下げた。
2017/12/18 米共和党、税制改革で統一案、減税規模10年で1.5兆ドル 法人税21%で決着
この結果、それまで法人税収入はGDPの2%を占めていたが、1%に下がった。各国と比較すると非常に低い。
2. 労働に対してフェアな税制
最近は労働からの国民所得のシェアが資本からの所得に比較し低減している。これを是正する。
3. 海外投資による利益移転を減らす。
4. 国際的な税率引き下げ競争の停止
5. 全ての企業がフェアに納税 利益に対して納税の少ない企業に最低税率を適用
The Made in America tax planの内容
今後15年間で2兆5000億ドルの追加税収を目指す。
1. 法人税率(現在21%)を28%に引き上げ
2. 米の多国籍企業にグローバルな最低税率
米国の多国籍企業は、タックスヘイブンの活用で実効法人税率が8%にとどまっている。
多国籍企業の海外子会社の収益への課税を現行の2倍の21%に引き上げるなど、利益の海外移転に対する税制上のメリットを縮小する。
3. 各国の税率引き下げ競争の停止
4. 多額の利益を計上しながら課税所得が低い大企業に対し、計上利益に15%のミニマムタックス
決算報告で年間20億ドル以上の利益を計上した大企業に対して、税制優遇などで法人税の課税額がゼロになる場合でも、決算上の利益に対して最低15%を課税する。
この制度が導入されれば、米企業45社の納税額が平均で年間3億ドル増えるという。
5. 新規R&Dにインセンティブを与える。
6. 化石燃料補助金からクリーンエネルギーへの投資の補助に。
7. 企業の租税回避への対策の強化
法人税率の大幅引き上げには反対が強い。
バイデン大統領は4月7日、記者団から28%を下回る税率でも合意するつもりかと問われ、「進んで耳を傾ける。条件を付けずに臨む」と述べ、妥協に前向きな姿勢を示した。
最終的に25%程度で落ち着くとの見方が強い。
付記 上記の3. 各国の税率引き下げ競争の停止に関して:
米財務省は5月20日、低税率で企業を誘致し税収を損なう結果を招く各国の税率引き下げ競争を終わらせることを目指したOECDの協議で、同国が法人税の国際的な最低税率として15%を提案したと発表した。
「法人税を巡る競争と法人税源浸食の圧力を終わらせるために多国間での取り組みが不可欠だ」とし、
「米財務省は15%が下限だとし、野心的な議論を続けて税率を引き上げていくべきだと強調した」ことを明らかにした。
上記の2の通り、米国企業の海外利益に21%の税率を課すとしている。
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バイデン米政権は別途、国際的な合意形成に向け、多国籍企業への課税に関する新たな提案を、デジタル課税とグローバルミニマム税に関するOECDの協議に参加する約140カ国に送付した。
提案文書が公表されていないが、関係者によると、この案ではそれぞれの国で上げた売上高の比率に基づき各国に課税権を配分することを呼び掛けている。
公式が一律に適用され、デジタル企業だけではなく、売上高の大きい「多国籍企業100社程度」が対象になるという。
法人税率の低い国での税逃れを防ぐため、共通の最低税率を導入することも改めて求めた。
トランプ前政権の「他国による米企業への課税拒否」方針を変更するもの。
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トランプ前政権はデジタル税を巡る国際協議から撤退した。
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