米上院は8月10日、5500億ドル規模のインフラ包括法案を賛成69、反対30で可決した。
共和党 | 民主党 | 民主系 無所属 |
合計 | |
賛成 | 19 | 48 | 2 | 69 |
反対 | 30 | 30 | ||
棄権 | 1 | 1 | ||
合計 | 50 | 48 | 2 | 100 |
上院民主党は別途、教育や子育て支援、気候変動対応などに10年間で3.5兆ドルの財政を投じる枠組みを固める「予算決議」の民主党単独での可決をめざす。
今回、上院は3兆5000億ドル規模の財政支出法案についても、審議入りを承認した。 民主党は夏期休会前の可決を狙う。
下院は既に9月20日までの夏期休会に入っており、ペロシ議長は第二の法案が上院を通過するまで、第一の法案の採決を行わない意向を示している。
付記 米上院は8月10日、3兆5000億ドル規模の予算決議を50対49の賛成多数 (民主党のみの賛成)で可決した。
共和党 民主党 民主系
無所属合計 賛成 0 48 2 50 反対 49 49 棄権 1 1 合計 50 48 2 100
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バイデン大統領は3月31日、国内のインフラの整備等に8年間で2兆2500億ドルを投入する新たな計画 American Jobs Plan を発表した。
2021/4/2 バイデン大統領、American Jobs Plan 発表、8年間で2兆2500億ドル投資
バイデン米大統領は6月24日、8年間で1兆2000億ドル規模のインフラ投資計画で超党派の上院議員と合意したと発表した。
新規投資として交通インフラに3120億ドル(当初計画 6210億ドル)、その他インフラに2660億ドルの合計5790億ドルを見込んだ。
研究開発や製造業支援などの人的インフラ投資はすべて省かれた。
これについては、バイデン大統領や議会民主党指導部は以前から、人的インフラ投資について(企業増税や富裕層への増税案を含む)共和党の賛成が得られないことを前提に、別の法案(共和党の賛成を必要としない「財政調整措置(リコンシリエーション)」の手続きを使う)で通すことを考えていた。
2021/6/29 米政権、インフラ計画で超党派と合意するも、最終決着は難航予想
米上院は7月21日、このインフラ投資法案の審議開始に向けた動議の採決を行ったが、共和党からの賛成は得られず、否決された。
米上院は7月28日、超党派議員グループとホワイトハウスがこの日合意したばかりの5500億ドル(約60兆3400億円)規模のインフラ包括案の審議入り動議を可決した。
今回の新規支出規模は5,500億ドルと、当初提案時の5,790億ドルから若干縮小されている。
道路・橋など大型プロジェクト:1100億ドル
電力網の改修:730億ドル
鉄道・アムトラック改善:660億ドル
ブロードバンド普及:650億ドル
飲料水の水質改善:550億ドル
交通・輸送:390億ドル
港湾:170億ドル
空港:250億ドル
電気自動車充電施設:75億ドル電気自動車インフラや電気バス等の予算は前回から大きく削られた。
2020/8/2 米上院、5500億ドル規模インフラ計画の審議開始へ
今回、上院はこれを可決した。
バイデン大統領の当初のAmerican Jobs Planのうち、ハード面だけであり、研究開発や製造業支援などの人的インフラ投資は含まれていない。
また、増税を封印したため財源の詰めは甘く、議会予算局はこの法案で財政赤字が10年間に約2560億ドル拡大する恐れを指摘する。
なお、財源の一つに暗号資産(仮想通貨)取引に対する課税を決めた。取引の監視を強化することで280億ドルの財源捻出を目指す。
法案では「他人に代わってデジタル資産の移転を実現するサービスに責任を持ち、定期的に提供する」事業者をブローカーと認定し、顧客の取引記録の報告義務を課した。
内国歳入庁は仮想通貨を「財産」と見なしており、売買によってキャピタルゲインを得た場合、課税の対象となるが、取引データを入手することで、税逃れの取り締まりを強化する。「ブローカー」の定義があいまいだと問題になり、修正案が出されたが時間切れとなった。今後の下院での審議に委ねられる。
今回の法案は、地元への投資につながることから与野党双方の多くの議員が支持している。しかし、残る研究開発や製造業支援などの人的インフラ投資については、増税につながることでもあり、野党共和党に反対が強い。
上記のとおり、民主党はこれを別法案で、共和党の賛成を必要としない「財政調整措置(リコンシリエーション)」の手続きを使って通すことを考えている。
通常のやり方では60票の賛成がないと予算が決まらないことになる。このため、 Congressional Budget Act of 1974 が成立した。
① 予算決議案
連邦歳入総額、歳出総額、財政赤字(黒字)額を示した上で、国防、農業、エネルギー等20の政策分野の歳出上限額を規定するほか、当該年度以降の複数年度の財政見通しを示すもの。大統領に送付されず法的拘束力を有するものではない。
予算決議案の審議時間が50時間に限られているためフィリバスターを回避できる。
② 予算決議案が成立すれば、財政調整法を審議する。予算決議に各委員会への財政調整指示(歳入、歳出、財政赤字、公的債務上限を変更するために既存の法律を改正する指示)が含まれると、各委員会はこの指示を受けて財政調整法案を策定、策定された法案は予算委員会でまとめられ、一つの包括的な法案として議会で審議され、両院の本会議で可決、大統領の署名を経て成立。
審議時間が20時間に限られているため、上院でのフィリバスターは財政調整法には適用されない。
民主党は8月9日、3兆5000億ドル規模の法案の概要を明らかにした。下記が含まれている。
「クリーン」な製造業向けの税優遇措置 1980億ドル
全ての3─4歳児への幼児教育提供やコミュニティーカレッジ(日本の短大)の無償化に約7260億ドル、
安価な住宅に3320億ドル
数百万人の移民労働者に市民権獲得への道を開く措置など
3兆5000億ドルの費用は、増税、連邦医療保険制度の節減、長期的に見込まれる経済成長によって全額賄われると想定している。
増税は富裕層を対象とし、年収40万ドル以下は対象とならない。米内国歳入庁の徴税強化も併せて実施する。輸入品に炭素価格を賦課する措置も求めている。
今回、審議入りが承認されたが、民主党は向こう数日中に審議・可決したい考えで、可決されれば拘束力のあるより詳細な法案の枠組みとなる。
「予算決議」の内容は、上院の議事運営専門員(パーラメンタリアン)が審査を行い、上院のルールに反する条項を削除する権限を持つ。
2月27日に下院が可決した1.9兆ドルの追加の新型コロナウイルス対策法案には、最低賃金を15ドルに引き上げることが含まれていたが、上院では「予算決議」の下での法案となり、議事運営専門員の判断でこの部分が削除された。
なお、米連邦政府の債務残高に上限を定める法律の適用停止措置が7月31日に期限を迎えているが、民主党は連邦債務上限の引き上げないし再度の適用停止を予算決議案テキストに盛り込まないことにした。
予算決議案への盛り込みを求めていた共和党との対決姿勢を示唆するものとみられる。
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