韓国のバッテリー・メーカーが日本の完成車メーカーと合弁するのは今回が初めて。
新たな合弁会社は2022年中に設立される予定で、出資比率はLGが51%、ホンダが49%とされる。
両社は総額約44億USドルを投資し、米国に生産工場を建設する。今後、建設地の確定を経て、2023年初頭に着工し、2025年中の量産開始を予定している。
この工場で生産されるリチウムイオンバッテリーは、全量が 本田の北米工場へ供給される予定で、その生産能力は最大約40GWhを目指している。
両社は、急速に成長する北米の電動化市場において、タイムリーで安定的にバッテリーを現地調達することが重要との共通認識に基づき、今回の合意に至 った。韓国バッテリーメーカーが日本の完成車メーカーと合弁会社を設立する最初の事例となる。
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バイデン米大統領は8月16日にインフレ対策法案:Inflation Reduction Act of 2022 に署名し、成立した。
エネルギーコスト引き下げ、クリーンな生産、2030年までにカーボン排出の40%削減を狙い、3,690億ドルを投じる。
新法では、
低・中所得者がエコカーなどの新車を購入する際に1台当たり最大7500ドルの税控除を受けられる。
既存のEV減税は適用対象を自動車メーカーごとに20万台と定めていたが、台数の上限を撤廃する。
ただ、EV減税の対象となる新車について、北米地域での最終組み立てを義務付けた。さらにEV用電池の原材料である重要鉱物の調達先を、米国か、米国と自由貿易協定(FTA)を結んでいる国に事実上制限する。世界シェアの高い中国製品をサプライチェーン(供給網)から排除する狙い。
米国政府は法律が成立した8月16日から北米での組み立てでない電気自動車へのエコカー補助を中断した。
輸出電気自動車にとっては影響は大きく、EUや韓国は、米産品を優遇するEV減税について、内外無差別をうたったWTOルールに反すると主張しているが、米政府の目論みどうり、米国でのバッテリー生産、それを使った電気自動車の生産が進むとみられる。
2022/8/24 米「インフレ抑制法案」成立 電気自動車補助金で波紋
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LGは今回のホンダとの合弁で、米GMを含む世界10大完成車メーカーのうち8社にバッテリーを供給することになった。
LGは現在、米国ミシガン単独工場の増設を進めている。これに加え、GMと3カ所、Stellantis (Fiat Chrysler Automobiles とPeugeot の統合会社)と1カ所の合弁会社工場を持つ。
LG単独ではミシガン州Hollandに5GWhの工場を持ち、GM、Ford Motor、Chrysler などに供給している。ミシガン工場はオバマ米大統領が2010年7月の起工式に参列するなど注目されたが、 当初はいろいろな問題が発生した。
2013/9/10 LG化学のミシガン州のリチウムイオン電池工場、生産開始2か月で停止
LG Energy Solution は2021年3月12日、2025年までの5年間で米国に45億ドル以上を投資すると発表した。少なくとも2工場を建設、米国での電気自動車の成長に対応し、能力を70GWh増やす。
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LGはGMとのJVのUltium Cells LLCで、オハイオ州 Lordstown の近辺に23億ドルを投資して生産能力30GWhの次世代グローバルEVバッテリーシステムの生産工場の建設中。
2020/1/3 GMとLG Chem、世界最大級のEV用電池工場建設計画を発表
GMとLGは2021年4月16日、第二工場のテネシー州Spring Hillでの建設を発表した。能力は35GWh。
GMは2022年1月25日、EVの生産能力の強化に向けて、米国で3つ目となる新たな電池工場の建設を発表した。LG Energy Solution との50/50 JVのUltium Cells LLCが26億ドルを投じ、ミシガン州 Lansing に第3工場を建設する。
2022/1/28 GM、米国で3つ目の電池工場を建設、電気自動車生産投資も
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Stellantis N.V.()は2021年10月18日、LG Energy Solutionと合弁会社を設立し、北米で電動車用の電池を生産すると発表した。
StellantisとLG Energy Solutionは2022年3月23日、本契約を締結した。立地はカナダのオンタリオ州 Windsor (デトロイト市に隣接)で、能力は45 GWh。
Samsung SDIとの間でもIndiana州にJVを設立した。
2022/5/27 Stellantis、米国での2つのEV向け電池合弁会社の内容が確定
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トヨタ自動車は8月31日、需要が拡大するバッテリーEVの供給に向け、日本および米国において最大7,300億円(約56億ドル)を投資し、2024~2026年の車載用電池生産開始を目指すことを決定したと発表した。
日本および米国合わせて、最大40GWhの生産能力増強を目指す。
日本では、プライムプラネットエナジー&ソリューションズ(トヨタ 51%、パナソニック49% :車載用高容量/高出力角形電池の開発・製造・販売:2020/4/1 操業開始)の姫路工場、およびトヨタの工場・所有地に合計約4,000億円、
米国ではToyota Battery Manufacturing, North Carolina(Toyota Motor North America, Inc. 90%、豊田通商 10%出資)に約3,250億円(約25億ドル)を新たに投資し、車載用電池生産を増強する。
トヨタは2021年12月7日、Toyota Motor North Americaの車載用電池工場の建設地について、ノースカロライナ州のGreensboro-Randolph Megasiteに決定したと発表した。
車載用電池工場の名称は、Toyota Battery Manufacturing, North Carolinaで、豊田通商が 10%出資する。
2025年の稼働開始で、4本の生産ラインでそれぞれ20万台分のリチウムイオン電池を生産する予定。将来、少なくとも生産ラインを6本に拡張し、合計で年間120万台分の電池を供給することを目指す。
投資額は約12億9,000万ドル(用地、建物の費用を含む)で、1,750人の米国での新規雇用を創出することを見込んでいる。新工場では100%再生可能エネルギーを使用する予定。
今回の発表で、米国の投資は倍増、約25億ドルとしている。
日産自動車は20%出資するエンビジョンAESCからの電池調達を拡大する。
エンビジョンAESCグループは4月14日、米ケンタッキー州Bowling GreenのKentucky TransparkでEV向けリチウムイオン電池の新工場を建設すると明らかにした。既存のテネシー州Smyrna工場に次ぐもの。
投資額は20億ドルで、生産能力は立ち上げ時で年30ギガワット時を想定、年内にも着工し、2025年の稼働を目指す。
日産が売却したオートモーティブエナジーサプライ(AESC)を前身とするもので、中国の再生可能エネルギー関連企業のEnvision Group(遠景能源集団)が80%、日産自動車が20%を出資する。
日産自動車は2021年7月1日、英国Sunderland工場の隣接地のInternational Advanced Manufacturing Parkに、エンビジョンAESCが大規模バッテリー工場「ギガファクトリー」を建設することに協力すると発表した。稼働当初、9GWhで生産を開始する予定で、2030年までに最大25GWhへ生産能力を増強、最終的には、35GWhまで拡張することを想定している。英国及びEUのガソリン車規制強化に対応する。
同社の能力(現状及び計画)は下記の通り。
日本 神奈川 2.6GWh/yr
英国 Sunderland 1.9GWh/yr 米国 Smyrna/TN 3.0GWh/yr 中国 無錫 20GWh/yr 日本 茨城 6→18GWh/yr 米国 Kentucky 30GWh/yr フランス Douai 9→24GWh/yr 英国 Sunderland 9→25→35GWh/yr
2022/4/15 エンビジョンAESC、米国に2番目の電池工場建設
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