英国トラス首相、辞任表明  

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英国トラス首相は10月20日、辞任を表明した。

保守党が下院の過半数を占めており、後任の保守党党首が次期首相となる。保守党党首を10月28日までに選出する。

英紙は、ジョンソン前首相が立候補する可能性があると報じた。減税策の修正を担当しているハント財務相は出馬しない。


党首選を運営する保守党の「1922年委員会」は10月20日、党首選への立候補に議会下院の同党所属議員357人のうち100人の推薦を必要とするルールを決めた。前回の党首選では必要な推薦人の議員は20人だったため8人が立候補し、時間がかかった。今回は短期間で選出できるよう、立候補のハードルを高めた。

立候補は英時間24日の午後2時に締め切る。この時点で候補者が1人の場合は自動的に新首相が決まる。3人立候補した場合には24日に党下院議員の投票を実施し、2人に絞り込む。その後、保守党員を対象としたオンライン投票を実施して勝者を決める。その結果は28日に発表される。

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Liz Truss英首相は10月14日、Kwasi Kwarteng 財務相を解任し、後任にJeremy Hunt元外相が就任すると発表した。9月の政権発足直後に打ち出した経済対策を巡って混乱が広がった責任を明確化した。

Liz Truss英首相は10月14日、Kwasi Kwarteng 財務相を解任し、後任にJeremy Hunt元外相が就任すると発表した。9月の政権発足直後に打ち出した経済対策を巡って混乱が広がった責任を明確化した。

2022/10/17 英トラス首相、財務相を解任 法人税減税を撤回 

新任のJeremy Hunt 財務相は就任直後の10月17日、トラス政権が示した補正予算案に盛り込まれた経済対策(5年間で1610億ポンド:約25兆5000億円)の「ほぼ全て」を撤回すると表明した。エネルギー価格の高騰を受けた家庭や企業の光熱費抑制策も縮小する。

当初2年間としていた光熱費抑制策については、来年4月までの半年に短縮し、その後は補助対象を絞る。

トラス政権の経済対策 見直し
エネルギー対策  10月から半年で600億ポンド(約9.3兆円)
標準的な世帯で光熱費の上限を年間2,500ポンドに凍結(2年間) <2023年4月に打切り、見直す>
企業向け:電気・ガス卸売価格に上限、光熱費は想定水準の半分に


大規模減税については、5年間で450億ポンドの案を出したが、大部分を取り消し、「320億ポンドの税収減を回避する」としている。

このうち、最高税率の引き下げ(45%→40%)については既に10月3日に、また、所得税基本税率引き下げ(20%→19%)については10月17日に撤回していた。

法人税率引き上げ取り止め」とともに野党・労働党から富裕層優遇との批判を浴びていたバンカーの賞与制限撤廃については言及がなく、 予定通り撤廃されると見られている。

賞与上限は2014年にEUの法律によって導入され、英国のEU離脱後も継続されている。

トラス政権の経済対策 見直し
大規模減税 5年間で450億ポンド(約7兆円)  
*党首選での公約は総額300億ポンド
320億ポンドの税収減を回避
2023/4予定の法人税率引き上げ(19%→25%)を取り止め  〈今回 取り止めの撤回〉
法人税率引き上げ(19%→25%)
2022/4の国民保険料1.25%引上げの撤回 〈維持 11月から引き下げ〉
2023/4からの所得税基本税率1%引き下げ(20%→19%) 〈10/17 撤回〉 所得税基本税率 20%のまま
最高税率の引き下げ(45%→40%) 〈10/3 撤回〉 最高税率 45%のまま
住宅一次取得者の42万5,000ポンド分相当の印紙税を免除 〈予定通り実施〉
不動産価格25万ポンド分相当の印紙税を免除
海外からの買い物客の消費税を免除するデジタルシステムの早期導入 〈今回 撤回〉
バンカーの賞与制限は撤廃 〈予定通り実施〉*最高税率は45%に戻る。


ハント財務相は10月31日に、今回の措置を含む中期財政計画を
予算責任局の財政見通しと共に公表する予定。

トラス政権は、通常の予算発表の際には必ず事前の行われる予算責任局の評価を経ないまま、今回の減税策を発表していた。

同相は「税金と支出の両面でさらに困難な決断を下すことになる」としている。民間シンクタンクの英財政研究所は先に、英国の財政安定化には620億ポンドの歳出削減が必要になるとの見方を示している。

トラス首相は、公約に掲げてきた大型減税の大部分の撤回を強いられた格好となった。英国財政への信用失墜や市場の混乱を招いた責任を追及する声も強く、保守党内からも辞任圧力が強まっている。

しかし、首相は英BBCのインタビューで「間違いがあったことを完全に認める」と語ったが、「(2025年1月までにある)次の総選挙を私は率いるだろう」と述べ、辞任を否定した。

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