中国、米の半導体製品輸出規制をWTOに提訴

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中国は12月12日、米国の中国に対する半導体などの製品をめぐる輸出規制措置について、WTOの紛争解決制度に提訴した。

商務部は、「これは中国が自国の合法的権利を守り抜くために必要なことだ。米国には直ちに誤ったやり方を是正してほしい」と述べた。

「米国はここ数年、国家安全保障の概念を絶えず汎用化し、輸出規制措置を乱用して、半導体をはじめとする製品の正常な国際貿易往来を阻害し、グローバル産業チェーン・サプライチェーンの安定に脅威を与え、国際的な経済貿易秩序を破壊し、国際的な経済貿易ルールに違反し、基本的な経済の法則に背き、世界の平和・発展の利益を損なってきたのは、典型的な保護貿易主義のやり方だ」とし、「提訴は法的手段を通じて中国が関心を抱く問題を解決するためであり、自国の合法的権利を守り抜くために必要なやり方だ」と述べた。

また、「中国は米国がゼロサム思考を捨て去り、誤ったやり方を直ちに是正し、半導体などのハイテク製品の貿易を混乱させることをやめ、中米の正常な経済貿易往来を維持し、世界の半導体などの重要な産業チェーン・サプライチェーンの安定を維持することを願う」と述べた。


バイデン米政権は10月7日、中国への半導体先端技術の新しい輸出規制を実施すると発表した。 その後、日本など同盟国に対中規制に追随するよう要求した。 

対中規制のポイントは次のとおり。

 ・スーパーコンピューターなどの先端技術の輸出は商務省の許可制に

 ・先端半導体の製造装置やソフトウェア、設計ソフトも規制の対象

 ・14nm 以下のロジック半導体などをつくる中国工場に部品や技術を提供を厳しくする。

 ・中国企業で働いたり、取引する米国人も審査対象

 ・外国企業でも米国技術を使っておれば輸出を原則認めない。

 ・申請しても原則拒否。ただし商務省が許可すれば一定の猶予期間を認める。

2022/10/10 米国、半導体の対中輸出制限を拡大


中国によるWTO提訴後の12月15日、バイデン政権は中国半導体大手・紫光集団傘下の長江存儲科技(YMTC)を含む36の中国系企業・団体に対する輸出を事実上禁止すると発表した。
商務省が安全保障を脅かすと見なした外国企業を列挙するEntity Listに36社を16日付で追加する。

YMTCの日本子会社のYangtze Memory Technologies (Japan) Inc.も含まれている。

これらの企業・団体に対する米国製品・技術の輸出には商務省の許可が必要となるが、申請は原則却下される。 

YMTCは中国政府系ファンドから多額の資金を受け、データ保存に使う「NAND型フラッシュメモリー」などの量産で急成長した。低価格で大容量のNAND型フラッシュメモリーの製造に強みがある。米政権は10月に先端半導体の対中輸出規制を強化した際、米国製品の最終用途が検証できない輸出先リストにYMTCを加えた。Huawei TechnologiesやHikvisionなどに米製品を横流ししているとの指摘が米議会などから強まっていた。

人工知能向けの半導体などをてがける中科寒武紀科技(Cambricon )、露光装置に強みを持つ上海微電子装備集団(SMEE)も対象になった。

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世界貿易機関(WTO)の紛争処理小委員会(パネル)は12月9日、トランプ前大統領が課した鉄鋼・アルミニウムの輸入に対する関税はWTOのルールに違反しているとし、米国に対しWTOのルールに適応させるよう勧告した。

これを受け、米国側はパネルの「不備のある」解釈と結論を強く拒否すると表明した。中国の過剰生産能力が米国の鉄鋼・アルミセクターと国家安全保障の脅威になっている中で米国は黙って見守るつもりはないと指摘し、「紛争の結果として米通商拡大法232条に基づく関税を撤廃する意向はない」とし、今回のパネルの判断はWTO改革の必要性を強調したとした。

米国はパネルの判断を不服として控訴することが可能だが、米国は紛争処理機関の最終審に当たる上級委員会の新たな委員の選任を拒否し上級委は機能不全に陥っているため、控訴された場合には法的効力が失われることになる。

米国は、中国政府による産業補助金や知的財産権の侵害といった問題で、WTOが疑わしきは罰せずという原則に基づき中国に有利な判断を下したことを問題視し 、WTOを機能不全にした。

2022/12/13 WTO、米国の鉄鋼・アルミ関税はWTOルール違反  

今回も、WTOはおそらく 米の半導体製品輸出規制を批判し、米国がそれを無視するという事態が予想される。

各国が米国を説得し、WTOの改革を通じて機能の回復を図ることが必要である。

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米議会下院は2月4日、中国に対抗するため先端技術の競争力向上をめざす包括法案 The America COMPETES Act of 2022 を賛成多数で可決した。

下院民主党が1月25日に公表した法案で、上院は2021年6月8日に同様の法案 United States Innovation and Competition Act を異例の超党派で可決している。

いずれも、中国政府が巨額の産業補助金を投じるハイテク産業政策「中国製造2025」に対抗するもので、今回の中国に対する半導体などの製品をめぐる輸出規制措置もこれに対応するものである。

このままでは中国に追い抜かれるという恐怖感が強く、この進展を妨害しようとしているように見える。


中国製造2025(
Made in China 2025)は2015年5月に公表された。

ステップ1で、2025年までに、格差縮小、十点突破で製造強国の仲間入りを果たし、
ステップ2で、2035年までに工業化の実現により製造強国の中位レベルに到達する。
ステップ3で、建国100周年の2049年までにイノベーション先導で製造強国の先頭グループに入るとの目標を掲げている。

2022/2/7 米下院、「対中競争法案」可決 

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