ウクライナ産穀物の輸出問題

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ウクライナは穀物輸出で2つの種類の問題を抱えている。 黒海経由のアフリカ、中近東その他向けの輸出と、 近隣のEU各国向けの輸出である。

EU各国には陸路で運び、アフリカや中近東には黒海経由で運んでいる。

ロシア外務省は7月17日、黒海を通じたウクライナ産穀物輸出に関する合意「黒海穀物イニシアチブ」に関し、同日に期限を迎えたイニシアチブの延長に反対するとし、合意当事国のトルコ、ウクライナと国連事務局に通知した。これにより7月18日にイニシアチブの効力が停止し、黒海経由の輸出が出来なくなった。

2023/8/14 黒海穀物イニシアチブ」 破綻の一因

対策として、ウクライナはドナウ川沿いの港を代替ルートにしようとしている。

ドナウ川はルーマニアとブルガリアの国境を西から東に流れ、黒海の近くで北上し、ウクライナとの国境で東に折れ、黒海に注いでいる。

オデーサからドナウ川沿いの港のレニやイズマイールまで穀物を陸路で運び、ここから船に乗せかえて、黒海の端などを通して輸出するもの。

但しロシアは、ドナウ川沿いの港までも標的にし始めた。7月24日、レニの港が攻撃されたのに続き、8月2日にはイズマイールの港が無人機で攻撃され、港の施設が損壊した。 

ウクライナ政府はドナウ川河口付近に停泊地をつくり、そこで別の船に積み替えて輸出する計画に着手した。

ウクライナは現在、黒海経由に代わり、陸路でのEU各国経由の代替ルートに依存している。ウクライナ産穀物輸出の3分の1は黒海に面したルーマニアのコンスタンタ港から出荷されている。 最近はドナウ川を経由でコンスタンタ港に送られる量が増加している。

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ウクライナは現在、穀物の輸出を近隣各国を経由して行っているが、これら各国との間で問題が発生している。

戦争が始まった2022年から2023年初頭にかけて、近隣5カ国:ブルガリア、ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、スロバキア向けのウクライナ産穀物の輸出は過去に例のない増加を見せた。これらの国でウクライナ産穀物はEUによる関税を免除されており、国内産穀物よりも割安になっている。

このため、ウクライナ産の穀物が大量に流入し、価格が下落し、5カ国で生産される穀物が国内市場および一部の輸出市場から締め出され、各国農家の抗議を招いた。

2023年4月にポーランドとハンガリーが一方的にウクライナ産穀物その他の食料の輸入を禁止した。ルーマニアはルーマニア経由の他国向け輸出のみ認め、国内での輸送は封印した状態で行うものとした。

EUは2023年5月、ポーランド、ルーマニア、ハンガリー、スロバキア、ブルガリアに対し、これら諸国を経由した輸出は継続する条件で、ウクライナ産小麦、トウモロコシ、油糧種子の国内販売を6月5日まで禁止することを認めた 。(その後9月15日まで延長)

7月19日、5カ国は輸入禁止措置について、少なくとも今年末までの延長を要請した。10月15日に総選挙のあるポーランドは強硬である。

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