米Intel と、半導体製造を中心にサプライチェーンを繋ぐ世界的な業界団体SEMI の日本支部、及びオムロンなど国内14社と三菱総合研究所は5月7日、半導体製造後工程であるパッケージング・アセンブリーテスト工程トランスフォーメーションおよび完全自動化目的とする半導体後工程自動化標準術研究組合SATASを、416設立したと発表した。

後工程自動化必要技術およびオープン業界標準仕様作成、装置開発実装統合されたイロットライン装置動作検証い、2028 実用目指す。事業れた知見技術既存および新規工場導入・実装していくこと実用化おける重要目標なる。

従来半導体製造トランスフォーメーションし、より効率的かつサスティナブル柔軟サプライチェーン実現目指す。

後工程は多様な部品や製品を手作業で組み立てることが多く、労働力が豊富な中国や東南アジアに工場が集中しているが、人件費の高い日米に拠点を構えるには、生産ラインを無人化する技術が必要だと判断した。

インテルが装置や素材メーカーに共同開発を呼びかけた。技術力を持つ日本の装置や素材メーカーと連携する狙いで、今後も参画企業を募る。

日米連携には日本や米国で半導体を一貫生産できるようにし、供給網が寸断するリスクを軽減させる狙いがある。

日本国内では半導体の技術者は不足感が強い。生産を自動化することで、後工程を担う人員確保の負担を減らす。後工程に関する技術の標準化を進め、複数の製造装置や検査装置、搬送装置をシステムで一括管理したり制御したりできるようにする。

経産省も最大数百億円の支援をする見通し。

参加メーカーと各社の専門分野は下図の通り。



参考

米アリゾナ州のKatie (Kathleen )Hobbs 知事(民主党)は2024年5月2日、人工妊娠中絶をほぼ全面的に禁じる1864年の州法を廃止する法案に署名、同法が成立した。7月までに州議会が閉会した後、90日後に発効する。

州最高裁が1864年の中絶禁止法の有効性を認め、早ければ6月下旬に施行される可能性があるため、 この州法を正式に廃止することにしたもの。

これまでの経緯は下記の通り。

アリゾナ州では、アリゾナ州が州になる前の1864年に人工妊娠中絶禁止法を制定した。(アリゾナ州は1912年に米国で48番目の州に昇格した。)

受精の時点から中絶を禁止するもので、レイプや近親姦の場合でも例外とならない。

母体の生命が危険な場合を除き、中絶に禁錮2~5年の罰を科せる。

1973年1月22日、Roe v. Wade事件に対する最高裁判決が出た。テキサス州の「妊娠中絶を原則禁止」とした中絶法を7対2で違憲とする判決を下した。これにより、アリゾナ州の人工妊娠中絶禁止法は無効とされた。

中絶は憲法に保障された権利との判断を示し、胎児が子宮の外で生きることができるようになるまでなら中絶は認められるとした。
現在は「妊娠22~24週ごろよりも前」がその基準と考えられている。

2022年6月24日、米連邦最高裁は1973年の「Roe v. Wade判決」を覆す判断を下した。

「中絶は深い道徳上の問題だ。中絶の権利は憲法に明記されておらず、歴史や伝統に根ざしているわけでもない。憲法は州が中絶を規制したり、禁止したりすることを禁じていない」と結論づけた。

保守派判事5人が支持、リベラル派判事3人が反対し、ロバーツ長官も中絶が妊娠中期まで認められることに根拠がないとして州法の合憲性を認めた。(但し、中絶を選ぶ権利まで取り消すことには反対した。)

問題となったミシシッピー州法については「胎児の生命を保護することなど州側の正当な利益があり、州法には合理的な根拠がある」と判断。州法を「違憲だ」とした連邦控訴裁(高裁)の判決を破棄し、審理を差し戻した。

中絶の権利に対する憲法の保障がなくなり、全米50州の26州で中絶が事実上禁止または大幅に制限される見込み。

米最高裁の中絶権判例を覆す意見草案 付記

この結果、州ごとに中絶権が決定できるようになった。

アリゾナ州では2022年、母体の生命が危険な場合を除き、妊娠15週以降の中絶を禁止する州法が成立した。ただしこの法律でも、レイプや近親姦の場合は例外とならない。

アリゾナ州最高裁判所は2024年4月9日、人工妊娠中絶をほぼ全面的に禁止する160年前の州法を有効とする判断を示した。

160年前の州法は1973年のRoe vs Wade 判決で死文化していたが、2022年に Roe vs Wade判決が覆されたことを受け、州最高裁は昔の禁止法が再び施行可能になったとの判断を下したもの。

今回の判決により、中絶が可能な州内のすべてのクリニックが閉鎖される可能性がある。影響は女性の健康と、今秋の大統領選挙にも及びうる。

そのため、人工妊娠中絶をほぼ全面的に禁じる同州の1864年の法律を廃止する法案が州議会に提出された。中絶禁止法は強姦や近親相姦による妊娠も含めて中絶を禁じており、バイデン大統領は生殖の自由を制限すると批判。トランプ前大統領も「行き過ぎだ」と指摘していた。

アリゾナ州下院は2024年4月24日、共和党議員3人が法案賛成に回り、賛成32、反対28でこの法案を可決した。

アリゾナ州上院は2024年5月1日、賛成16、反対14の賛成多数で可決された。

7月までに州議会が閉会した後、90日後に発効する。

アリゾナ州では2022年、母体の生命が危険な場合を除き、妊娠15週以降の中絶を禁止する州法が成立しており、今後はこの法律が有効となる。


同州では本年11月に、妊娠24週までの中絶について是非を問う住民投票が行われる予定で、その結果によってはさらに法律が変わる可能性がある。


2013年に豪州のOricaなどが設立したMCi ( Mineral Carbonation International )は4月10日、OricaのKooragang島(ニューサウスウェールズ州)のアンモニア製造工場の隣にCCU施設Myrtle(炭酸塩プラント)の建設を開始したと発表した。

CCU技術(Carbon dioxide Capture and Utilization)は二酸化炭素(CO2)を回収して製品開発などに生かす技術で、具体的には、製鉄工程で生じる副産物(スラグ)や火力発電所で生じる石炭灰、その他カルシウムやマグネシウムを含む様々な物質(廃コンクリートなど)にCO2を反応させることで、建設部門向けのさまざまな炭酸塩製品を製造する。



Myrtleは、Oricaのアンモニア工場から回収される年間1,000トン以上のCO2を利用し、約10,000トンの建材を生産 する。2025年初めまでに完成、就役、操業開始される予定としている。

MCiはMyrtle建設のためにオーストラリア政府のCCUS Development Fund から1,460万オーストラリアドル(約12億円)を確保している。

オーストラリア政府は2021年3月にCCUS開発ファンド(Carbon Capture, Use and Storage Development Fund)を設立し、最大5,000万豪ドル(約41億5,000万円、1豪ドル=83円換算)の公募型資金を公表した。

対象とするプロジェクトは、オーストラリア国内で実施されるパイロット規模以上のもので、将来的に地域のCCSハブに接続可能であるものとしており、2025年6月末までに完了することも要件となっている。

日本から伊藤忠商事とみずほ銀行に加え、三井住友信託銀行が同社に投資している。

伊藤忠商事は、2021年8月にMCiへの出資を実施した。

MCiの技術は半永久的にCO2を固定化し、且つ有用な成果物を創出できることから、世界的な脱炭素の流れを加速させる技術として産業界を中心に幅広く注目されている。また、MCi社は豪州政府から14.6百万豪ドル(約12億円)の本技術の更なる研究・開発に向けた基金交付を受けており、豪州国内で本技術への関心・期待が高まっていることが窺える。
伊藤忠商事はMCi社技術の日本国内での展開を図るべく、2021年3月に同社とMOUを締結した。その後早期に実用化できる可能性があること、対面業界である鉄鋼業界・電力業界などの顧客からの本技術への関心が非常に高いことなどを総合的に鑑み、同社への出資に至った。

本出資に伴い、本技術の日本向け展開・プロモーションについては伊藤忠商事が独占的に行うこととなる。

みずほ銀行は2023年3月31日にMCi Carbon との間で、みずほ銀行によるMCiへのUSD5Mの出資を目的に、株式引受契約を締結し、出資を行った。みずほ銀行は、環境・社会の持続性向上に資する領域(トランジション領域)における顧客の挑戦をサポートすべく、シード(技術の種)やアーリーステージ(初期段階)の段階から、トランジション領域にて顧客が関与するプロジェクト等に戦略的に出資することで、顧客と機会とリスクを共有し、広く環境・社会の持続性向上に資する社会的価値を共創していくことを目指している。

三井住友信託銀行は2024年3月12日、「社会課題解決に向けた挑戦や取り組みを資金面からサポートすることを目的とする」インパクトエクイティ投資として出資した。増資による資金は、当該量産化プラントの建設資金として活用される。

米財務省は5月3日、消費者が電気自動車(EV)を購入する際の税優遇の要件を従来案から緩和すると発表した。中国産の鉱物を使ったEVは2025年から優遇の対象外とするとしてきたが、黒鉛など一部鉱物については2027年からとし、メーカーに2年間の猶予期間を設けた。

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バイデン米大統領は2022年8月16日にインフレ対策法案:Inflation Reduction Act of 2022 に署名し、法案は成立した。大統領は「気候変動に関するこれまでで最大の前進だ」と強調した。

エネルギーコスト引き下げ、クリーンな生産、2030年までにカーボン排出の40%削減を狙い、3,690億ドルを投じる。

新法では、

低・中所得者がエコカーなどの新車を購入する際に1台当たり最大7500ドルの税控除を受けられる。

既存のEV減税は適用対象を自動車メーカーごとに20万台と定めていたが、台数の上限を撤廃する。  

ただ、EV減税の対象となる新車について、北米地域での最終組み立てを義務付けた。さらにEV用電池の原材料である重要鉱物の調達先を、米国か、米国と自由貿易協定(FTA)を結んでいる国に事実上制限する。世界シェアの高い中国製品をサプライチェーン(供給網)から排除する狙い。

主な要件(控除額は個人の場合)
税額控除額
価格が5.5万ドル(バンやSUV、ピックアップトラックは8万ドル)未満であること 必須 -
車両の最終組み立てが北米(米国、カナダ、メキシコ)で行われていること 必須 -
電池材料の重要鉱物のうち、調達価格の40%が自由貿易協定を結ぶ国で採掘あるいは精製されるか、北米でリサイクルされていること

2023年3月28日に「重要鉱物のサプライチェーンの強化に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」(日米重要鉱物サプライチェーン強化協定:日米CMA)が署名され、即日発効となった。米国は、同協定をインフレ抑制法(IRA)上のFTAとみなす。

2023
2024
2025
2026
2027ー
40%
50%
60%
70%
80%

2025年からは、「懸念される海外企業」が抽出、加工、またはリサイクルした重要鉱物を含んではならない。→ 2027年から

どちらか
必須
3,750ドル
電池用部品の50%が北米で製造されていること
2024-25
2026
2027
2028
2029-
60%
70%
80%
90%
100%

2024年から、「懸念される海外企業」が製造または組み立てたバッテリー部品を含んではならない。

3,750ドル

「懸念される海外企業」の定義が明らかでなかったが、財務省は2023年12月1日、「懸念される海外企業」と見なされるエンティティを定義する提案ガイダンスを公表した。
 

それによると、「懸念される海外企業」は、懸念国(中国、ロシア、イラン、北朝鮮)の企業 及びその企業が25%以上所有、またはコントロールする企業とされる。

2023/12/4 米政府、EV税額控除で中国の影響排除

ルール通りであれば、2025年からは中国が抽出、加工、またはリサイクルした重要鉱物を含んではならないこととなる。

米財務省は5月3日、消費者が電気自動車(EV)を購入する際の税優遇の要件を従来案から緩和すると発表した。中国産の鉱物を使ったEVは2025年から優遇の対象外とするとしてきたが、黒鉛など一部鉱物については2027年からとし、メーカーに2年間の猶予期間を設けた。 (ルール上は「黒鉛など一部鉱物」との規定はない。)

中国産の黒鉛などを使わずEV電池をつくるのは現時点で難しいからで、黒鉛はリチウムイオン電池の負極の中核材料で、供給の7割を中国に依存している。加工や精製の中国依存度も高い。

米国でEV販売・生産を手がける自動車メーカーから、代替調達先の確保には時間が必要だとして猶予期間を求める声が相次いでいた。

中国政府は2023年12月、黒鉛の輸出を許可制とした。米財務省などは、近く自動車メーカーや電池メーカー、資源会社を集め、取引実態を把握したうえで中国に頼らない重要鉱物の調達方法を検討するとしている。

欧米各国が2022年には利上げに転じたのに対し、日本銀行は3月18日~19日の金融政策決定会合で、ようやく従来の「マイナス金利政策」を解除し、無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0~0.1%程度で推移するよう促すことをきめた。

日銀による利上げは2007年2月以来およそ17年ぶりである。

一方で米国は2022年以降、頻繁な利上げを行い、現状のFF金利は5.25~5.50%で、日米金利差は非常に大きい。欧州も同様である。

2024/3/20 日銀、マイナス金利政策を解除

この結果、円安が進行している。2024年4月29日(祭日)の外国為替市場で一時160円台と、1990年4月以来34年ぶりの円安ドル高水準となった。

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4月29日(日本は祭日)のアジアの外国為替市場で午前中、およそ34年ぶりに1ドル=160円台になった。

午後1時すぎに一転して円高方向に変動し、1ドル=155円台まで値を戻した。

政府は発表していないが政府による円買いドル売り介入があったとの観測が強まった。

その後、4月30日、5月1日と再び円安に動いていたが、日本時間の5月2日朝6時頃(米連邦公開市場委員会の終了後)、急な円高・ドル安が進み、円相場は一時1ドル=153円台まで上昇した。1時間程度で4円超の円高になった。

市場では日本政府・日銀が円買い介入に踏み切ったという見方が出ている。
午後は円買い再開で155円台前半に失速した。




3日のニューヨーク外国為替市場で円が対ドルで上昇、一時1㌦=151円台 4月の雇用統計で非農業部門の就業者数が前月比17万5000人増と市場予想(24万人程度)を大きく下回り、FRBが早期利下げに動く可能性を意識したドル売り。


日本経済新聞は、専門家の意見をまとめ、介入原資は3000億ドルと推定、最初の介入が5兆円規模と推定されたことから、円買い余力はあと8回と報じた。

円売り介入の場合は限度がないが、円買い介入の場合は円を買うための米ドルが必要である。

日本の外貨準備は3月時点で1兆2906億ドルあったが、当面使えるのは、このうちの満期1年未満の短期証券と預金の合計の約3000億ドル(約47兆円)と推定した。

最初の介入は5兆円規模と推定されたことから、余力はあと8回、約40兆円としたもの。

日銀が4月30日に公表した5月1日の当座預金残高の見通しによると、為替介入を反映する「財政等要因」による減少額が7兆5600億円だった。

為替介入を想定しない市場推計と5兆円強のずれが生じており、市場では4月29日に5兆円規模の円買い介入があったとの観測が強まっている。

同様に、5月2日のケースでは、「財政等要因」による当座預金残高減少額が4兆3600億円で、為替介入を想定していない市場予想と3兆円強のずれが生じた。3兆円規模の円買い介入があったと見られている。

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直近では政府は2022年9-10月に合計9兆1880億円の円買いドル売り介入を行った。

政府・日銀は急速な円安を抑えようと9月22日に24年ぶりに円買い・ドル売り介入に踏み切った。円安が続いたため10月も追加で介入した。9月22日と合わせた9~10月の介入額は9兆1880億円だった。11~12月は介入がなかった。

10月21日は円相場が一時1ドル=151円90銭台と32年ぶりの安値を更新した。その後、政府・日銀の円買い介入を受けて一時1ドル=144円台まで円高が進んだ。

この時点でも日米金利差はあったが、差は今ほどはひろがっていなかった。2022年9月のフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は3.00~3.25%であった。

一時的ではあったが、9兆円の介入で円高はかなり進んだ。

今回は2回で8兆円の介入だが、これで円安が是正されると見る人はいないであろう。日経は1回目の介入のあと、余力はあと8回、約40兆円(しかない)とした。

小野薬品工業は4月30日、米国のバイオ医薬品企業 Deciphera Pharmaceuticals, Inc.との間で、本買収のために設立する完全子会社を通じて、一株当たり25.60米ドル、総額約24億米ドルの現金を対価として同社を買収することで合意し、4月29日(日本時間)に契約を締結したと発表した。Deciphera社を同社の100%子会社とすることを目指す。
名称 Deciphera Pharmaceuticals, Inc.
所在地 200 Smith Street Waltham, MA 02541, USA
事業内容 医薬品の研究開発、商業化
資本金 805千米ドル(2023年12月31日時点)
設立年月日 2017年(Deciphera Pharmaceuticals, LLCは2003年設立)

同社の2024年2月のPresentationで、同社のミッションを One Mission, Inspired by Patients: Defeat Cancer としている。

Deciphera社の最近の業績は下記の通り。(千米ドル)

2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期
連結売上高 96,148 134,036 163,356
連結営業損益 -300,077 -182,722 -210,958
親会社株主帰属当期純損益 -299,964 -178,931 -194,942

2023年12月期の営業損益は-210,958千ドルだが、R&D費用が234,123千ドルを占め、売上高を大幅に上まわる。それに対し、Costs of sales は僅か3,732千ドルである。
開発段階で売上高が一部計上されただけであり、正常時の損益ではない。

合意した取得価格は2024年4月26日の終値(@14.65米ドル)に対して74.7%、同日から過去30日間の売買高加重平均価格に対しては68.8%のプレミアムを加えた価格となる。

両社の取締役会は、全会一致で本買収へ賛同している。


小野薬品はグローバルスペシャリティファーマとして、独創的かつ革新的な新薬を世界に届けることを目指している。中長期成長戦略である「パイプライン強化とグローバル開発の加速」および「欧米自販の実現」を見据え、医療ニーズの高いがんや免疫疾患、中枢神経疾患、スペシャリティ領域を重点研究領域に定め、医療現場に革新をもたらす新薬の創出に取り組んでいる。

同社の業績拡大をけん引してきたがん免疫薬「オプジーボ」は2028年以降に段階的に特許切れを迎える。

オプジーボは、免疫細胞上のタンパク質(PD-1)を発見した京都大学の本庶佑名誉教授の研究を基に「ゴールの見えないまま始めた研究から成果が出るまで20年以上かかった」(小野薬品)。

2016/11/17 オプジーボ 50%値下げ


Deciphera社は、がんを対象とした革新的な医薬品の研究・開発・販売に注力しており、自社で創製した経口キナーゼ阻害剤からなる豊富なパイプライン(下記)を有している。

癌は無秩序な増殖を繰り返し、正常な細胞を障害し転移を行うことで本来、癌のかたまりがない組織でも増殖する。細胞増殖のシグナル(信号)を伝達する上で重要となるチロシンキナーゼという酵素がある。皮膚の表面の細胞では上皮成長因子受容体というチロシンキナーゼ活性を持つ受容体に上皮成長因子が結合し活性化され伝達により細胞増殖がおこる。

この増殖因子受容体に異常がおこることで、癌細胞の増殖がおこるとされる。

キナーゼ阻害薬はチロシンキナーゼ活性を選択的に阻害し、腫瘍細胞の増殖を抑えることで抗腫瘍作用をあらわす。癌細胞の増殖などに関わる特定の分子の情報伝達を阻害することで抗腫瘍効果をあらわす分子標的薬となる。

作用機序 適応症 開発段階
QINLOCK (Ripretinib) KIT阻害剤
(キナーゼ阻害剤)
4L GIST / 一部の2L GIST
消化管間質腫瘍(GIST)の4次治療の薬剤
上市済 / 効能追加P3
欧州及び中国を含む40ヶ国
以上で販売
Vimseltinib CSF-1R阻害剤 TGCT / cGVHD
腱滑膜巨細胞種(TGCT)を対象
欧米で2024年に申請準備中 /
P1/2準備中
DCC-3116 ULK阻害剤 KRAS変異がん、GIST P1b
DCC-3084 Pan-RAF阻害剤 がん P1準備中
DCC-3009 Pan-KIT阻害剤 GIST IND準備中


本買収により小野薬品は固形がん領域のパイプラインを拡充し、特にQINLOCK®とVimseltinibの獲得によって短中期的なグループの収益増加が期待できる。

QINLOCK®は、米国、欧州及び中国を含む各国で「イマチニブを含む3種類以上のキナーゼ阻害剤による治療を受けた消化管間質腫瘍 (GIST) 患者」への治療薬として承認されている経口投与可能なKIT阻害剤。

National Comprehensive Cancer Networkの腫瘍学臨床ガイドラインにて、GIST患者の4次治療としてカテゴリー1の推奨も受けている。

2023年のグローバル売上は163百万米ドルに達しており、GIST患者に広く使用されている。現在、KIT Exon 11 + 17/18に変異を有するGIST患者の2次治療への適応拡大を目指し、第Ⅲ相臨床試験が進行中。また、2019年にGIST患者の4次治療、2023年には上記一部変異を有するGIST患者の2次治療を対象として、米国食品医薬品局(FDA)よりブレイクスルーセラピー指定を受けている。

なお、2019年にDeciphera社は、主に中国本土と香港において、がん、自己免疫疾患、感染症、神経科学の治療薬の開発および商業化を行っているZai Lab Ltdとライセンス契約を締結しており、中国と台湾についてはZai Lab社が開発販売を実施している。

Vimseltinibについて:

腱滑膜巨細胞腫(TGCT)は、関節の内側又は近傍に生じる局所進行性の腫瘍で、主に第一選択として、手術による腫瘍の切除が行われているが、切除不能患者に対する治療選択肢が限定的であり、優れた有効性と安全性を有する新薬が求められている。TGCTの病態として、コロニー刺激因子1(CSF-1)遺伝子の転座とCSF-1の過剰発現が見出されている。

VimseltinibはFDAよりファストトラック指定を受けた経口投与可能なCSF-1受容体阻害剤であり、TGCTを対象とした第Ⅲ相臨床試験(MOTION study)にて主要評価項目及びその他副次的評価項目を統計学的有意に達成している。なお、慢性移植片対宿主病(cGVHD)を対象とした第Ⅱ相臨床試験を現在準備中。

Deciphera社は、米国および主要な欧州諸国において自社での販売網を構築しており、この販売網は申請準備中のVimseltinibにおいても活用される。小野薬品はDeciphera社の欧米での開発・販売能力を獲得し、欧米自販体制を強化できる。 さらに、Deciphera社の創薬能力を活用することで、小野薬品グループのオンコロジー領域において研究開発のさらなる加速が期待できる。

住友化学は4月30日、経営戦略説明会を開催し、2024年3月期の連結最終損益(国際会計基準)が3120億円の赤字になったと発表した。従来は2450億円の最終赤字を見込んでいたが、赤字幅が670億円広がった。連結子会社である住友ファーマの医薬品の特許権などで減損損失を計上するためで、過去最大の赤字幅となる。

単位:億円 売上高

営業損益

株主帰属
損益
コア 非コア 合計
2023/3実績 28,953 928 - 1,237 - 310 70
2024/3予算 29,000 400 -200 200 100
同 2024/2/2予想 24,800 -1,450 -1,400 -2,850 -2,450
同 今回予想 24,470 -1,490 -3,400 -4,890 -3,120


コア営業損益

医薬品における北米でのラツーダ(非定型抗精神病薬)の特許切れによる売上高の激減に加え、後継候補であるオルゴビクス(進行性前立腺がん治療剤)、マイフェンブリー(子宮筋腫治療剤)、ジェムテサ(過活動膀胱治療剤)等の売上が計画を下回る見込みであることに加え、
エッセンシャルケミカルズにおいては世界的な景気減退による需要減少や交易条件の悪化等により持分法適用会社であるPetroRabigh の業績悪化が見込まれること等から、コア営業損益は-1490億円と予想した。

2023/11/8 米国医薬業界、特許切れの恐怖:住友ファーマのケース

(億円)
23/3実績 24/3予算 2024/2予想 今回予想
エッセンシャルケミカルズ
(うちPetroRabigh)
-342

-70

-870
(-630)
-910
(-650)
エネルギー・機能材料 152 130 50 80
情報電子化学 476 380 380 440
健康・農業関連 573 620 400 310
医薬品 162 -610 -1,310 -1,330
その他 104 150 -100 -80
全社 -197 -200
コア営業損益 928 400 -1,450 -1,490


非コア損失(赤字

合計 うち減損 その他
住友ファーマ関連 2219億円 1809億円

(基幹3製品 特許権 1,335億円)
(      のレン  359億円)
(開発品目開発中止  106億円)

北米子会社再編 301億円

固定資産除却等 109億円

その他 1181億円 885億円(国内石化、シンガポールMMAほか) 固定資産除却等 296億円
総計 3400億円 2694億円 706億円

医薬品における特許権及びのれん等

基幹3製品(進行性前立腺がん治療剤「オルゴビクス」、子宮筋腫・子宮内膜症治療剤「マイフェンブリー」、過活動膀胱治療剤「ジェムテサ」)の売上収益の伸びが想定を下回っており、北米事業の事業予想を見直した結果、「マイフェンブリー」にかかる特許権の一部133,457百万円及びのれんの一部35,858百万円を減損することとなった。
また、rodatristat ethyl及びEPI-589(いずれもフェーズ2試験段階)等の開発品目の開発を中止したことにより、当該開発品に係る仕掛研究開発10,577百万円を減損するなど、総額180,857百万円の減損損失を計上した。

医薬品以外の主なもの

千葉工場エッセンシャルケミカルズ製造設備及び工場共用資産  減損損失25,381百万円
シンガポールにおけるメタアクリル製造設備  減損損失14,891百万円
愛媛工場における正極材焼成実証設備  減損損失11,566百万円

全体の非コア損失のうち、評価損が合計2694億円に達する。
 

4月30日の経営戦略説明会では2024年3月期の実績を上記のように説明したうえで、短期集中業績改善策と、抜本的構造改革を説明している。

最大の経営課題は、「2024年度業績V字回復の達成」(コア営業利益 1,000億円、純損益 200億円としたうえで、

短期集中業績改善策による2024年度キャッシュ創出目標を、従来の5,000億円から6,000億円に上積みするとした。

抜本的構造改革として下記を挙げた。

1) 再興戦略
  住友ファーマは、グループの総力を挙げて徹底した合理化を進め、一日でも早く完全に止血する。
  その間、基幹3製品の拡販とともに、再成長に向けたあらゆる選択肢を検討していく。

  PetroRabighは、当社とAramco両社で「共同タスクフォースチーム」を結成することで合意。
  収益力強化を含む緊急度の高い重要課題解決に向け、短期集中で取組む。 

2) 成長戦略
  「Innovative Solution Provider」を長期に目指す企業像とし、新しい成長戦略を策定。
  
  農業関連、ICT関連が成長ドライバー。経営資源を集中投入し、2030年に各々1,000億円のコア営業利益を目標とする。

  次世代成長領域として先端医療を拡充。

  石化関連は長期的視点で環境負荷低減技術による価値創造に舵を切る。

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日本経済新聞はこれを取り上げ、石化再建「肩すかし」で株安 という副題で下記のとおり報じた。

大規模な止血策と2025年3月期の黒字化を発表したにもかかわらず、市場は厳しい反応を示した。30日の終値は前日比17円安(4.8%安)の337円と、470円上げた日経平均株価とは対照的な動きとなった。「ラービグを巡る構造改革案が具体策に欠け、構造改革に期待を寄せていた投資家が肩すかしをくらったとの受け止めからか」(立花証券の福永幸彦アナリスト)との声が聞かれた。

ラービグとはサウジアラビアの国有石油会社サウジアラムコとの合弁で、住友化学にとって持ち分法適用会社の「ペトロ・ラービグ」のこと。石油精製での競争力が低く、24年3月期は650億円の赤字に落ち込んだ。今回の経営戦略発表会で収益改善に向けた具体的な施策が示される期待もあったが、新たにアラムコとタスクフォースを設置し「1年以内に将来像の方向性を示したい」(岩田社長)との内容にとどまった。

収益改善には石油精製の部分を高度化する装置への投資などが必要だが、住友化学はそこへの追加投資はしない姿勢を貫いており、アラムコとの交渉が難航している。ラービグはアジア向けの汎用品が多く、「日本の内需は悲観していないが、アジア市況は24年も23年に比べてそんなに改善は期待できない」(岩田社長)。ラービグを含む石化関連事業全体の25年3月期のコア営業損益は350億円の赤字を見込む。福永氏は「タスクフォース結成はプラス材料だが先送り感が残る」とみる。

経営戦略説明会でも、「当社としては、同社に対するエクスポージャーを増加させる資金支出は実施しない意向」としている。

JR九州、住友商事、住友商事九州が出資し設立したでんきの駅(福岡市)は3日21日、系統用蓄電池事業の第1号案件として熊本市で建設を進めてきた系統用蓄電所「でんきの駅川尻」を完工した。

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太陽光発電を中心に再エネ導入量の多い九州地区では、電力系統の需給バランスを調整する系統用蓄電池の役割が重要になる。


2023年度に大規模な出力制御が九州電力管内を中心に日本全国で17億kwh発生し、太陽光発電が停止された。

出力制御は電気の供給が電気の需要を大きく超えたときに、電力会社が様々な発電設備の出力を停止することで需要と供給をコントロールする制度。

全体としては不足する電力を無駄にしないための手段として、①蓄電池、②追加送電網による広域送電が重要である。

でんきの駅は、JR九州が管理する鉄道沿線地・遊休地を有効活用し、JR九州の保守管理ノウハウと住友商事グループの蓄電事業ノウハウを活用し、系統用蓄電池事業を行う。

JR九州、住友商事100%子会社で蓄電池設備のアセット保有・管理を手掛けるBSホールディングス、住友商事九州が出資し、2023年4月に設立した。

JR九州、住友商事、住友商事九州は、2024年2月に熊本市とカーボンニュートラルの実現に向けた連携協定を締結した。

今後、熊本市内で事業展開しながら、九州エリア全体へ事業拡大を進めていく。さらに、でんきの駅をプラットフォームとして、災害時に蓄電池の電力を開放するなど、地域に安全・安心を提供する地域エネルギーサービスを検討する。

でんきの駅(福岡市)は3日21日、系統用蓄電池事業の第1号案件として熊本市で建設を進めてきた系統用蓄電所「でんきの駅川尻」を完工した。鉄道沿線特有の土地形状に合わせた専用設計の「バッテリー・ステーション」システムを構築した。

蓄電池は、住友商事(49%) と日産自動車(51%) の合弁会社である4R Energy(横浜市)が提供するリユース(再使用=中古)品のEV(電気自動車)用バッテリーを定置用にシステム化した「EVバッテリー・ステーション」を採用した。蓄電事業としての運用は、でんきの駅が担当する。

定格出力は1.5MW、実効容量は6.0MWh。リユースEVバッテリーを約350台分収納し、電池交換が可能。また、スケールアップ(高出力・大容量化)のための制御技術を導入した。今後、設備の本格稼働に向け各種試験を行った後、需給調整市場および容量市場に参入する。事業開始は9月の予定。

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参考 4R Energy の狙い

米国の天然ガス価格が暴落している。

米国の天然ガス価格の相場であるHenry Hub spot price の推移は下図のとおりだが、Shale革命で価格が下がり、長期間、高くて6ドル、2~4ドルの間で推移していた。(単位は100万BTU当たりドル)

BTUはBritish thermal unitの略語で、日本では英熱量ともいう。 1常用ポンドの水の温度を1°Fだけ上げるのに要する熱量である。

Henry Hub は米国南部ルイジアナ州にある天然ガスの集積地名で、ここで売買される天然ガスの価格がNew York Mercantile Exchangeの先物価格の指標値(基準値)となっている。

2021/2月 Henry Hub 大寒波で急騰、3月に元に戻るが、その後、 エネルギー価格高騰で上昇が続いた。

2022年4月以降、ウクライナ問題で急騰し、8月には8.81ドルに達した。(8月23日には一時10ドルを超えた。)

その後の動きは下図の通り。

ウクライナ危機を契機とした原油価格、天然ガス価格の上昇により、米国のシェール・オイル、シェール・ガスの生産量は増加を始め、2023年12月の米国の原油生産量は日量1,331万バレルと米国の歴史上最高に達している。

リグ(新規油田開発のための掘削装置)の稼働数は、2010年代と比較して増加していないものの、掘削技術の向上、AI(人工知能)の活用、坑井仕上げの改善等により、1井戸当たりの生産性が向上し、投資額を抑制しつつ、シェール・オイルとシェール・ガスの生産量を増加させている。

さらに、ウクライナ危機によるガソリン価格の高騰を受けて、バイデン政権もシェール・オイル、シェール・ガスの開発規制を緩和し、石油企業も風力発電をはじめとした再生可能エネルギーよりも、石油・天然ガス事業のほうが利益率も高く、株式市場における評価も好ましいことから、再びシェール・オイル、シェール・ガスの開発に力を入れ、シェール・オイル、シェール・ガスの権益に係わるM&A(合併・買収)が活況を呈している。

米金融大手ゴールドマン・サックスは2023年1月末の調査リポートで、気温上昇や輸出能力の停滞を背景に、米天然ガス相場は2023年から2024年にかけて弱気サイクルに入るとの見方を明らかにした。

米国では暖冬で暖房需要が伸び悩み、ガスの需給が緩んだ。

これらの結果、Henry Hub価格は、2023年の月平均は2.54ドルにとどまり、2024年1月が3.18ドルであったのに対し、2月は1.72ドル、3月は1.49ドルと急落した。上の月別グラフでは3月の1.49ドルは過去最低である。

ExxonMobilが4月26日に発表した2024/1-3月の純利益は前年同期比28%減となった。天然ガス価格の下落が響いた。

米最高裁は4月25日、米国で3年前に起きた議会乱入事件を巡り、起訴されたトランプ前大統領が「在任中の大統領としての行動は刑事責任を問われない」と訴えていることについて弁論を開いた。

米連邦議会は2021年1月6日、上下両院合同会議を開いた。大統領選の結果を最終確定し、バイデン次期大統領を正式に選出することになっていた。

この議場にトランプ支持者が乱入し、大混乱となった。(この時点ではトランプはまだ大統領である。)

2021/1/7 米議会にトランプ支持者が乱入、大統領選確定の上下両院合同会議が中断

トランプ大統領は2021年1月20日、次期大統領の就任式には出席せず、任期を終える正午を前にホワイトハウスを出発してワシントン郊外の軍のAndrews 基地に向かい離任の式典に臨んだ。

3年前に起きた連邦議会への乱入事件を巡り、トランプ前大統領はその前の年に行われた大統領選挙の結果を覆そうとしたなどとして起訴されているが、トランプ氏は在任中の大統領としての行動には免責特権が適用され、刑事責任を問われないと主張している。

これについて、連邦最高裁判所で4月25日に弁論が開かれた。

トランプ氏本人は不倫の口止め料を巡り、業務記録を改ざんした罪に問われているニューヨーク州での裁判に出廷しているため(裁判長から、裁判の全日程に出席するよう命令を受けている)、連邦最高裁の弁論には出廷しなかった。

弁論には、最高裁判事全員が出席した。

性別 born 人種背景

指名した大統領

就任日 判断傾向
Clarence Thomas 男性 1948/6 アフリカ系 George H. W. Bush 1991年10月23日 保守
John Roberts  (Chief) 男性 1955/1 白人系 George W. Bush 2005年9月29日 保守
Samuel Alito 男性 1950/4 イタリア系 2006年1月31日 保守
Sonia Sotomayor 女性 1954/6 ラテン系 Barack Obama 2009年8月8日 リベラル
Elena Kagan 女性 1960/4 ユダヤ系 2010年8月7日 リベラル
Neil Gorsuch 男性 1967/8 白人系 Donald Trump 2017年4月10日 保守
Brett Kavanaugh 男性 1965/2 白人系 2018年10月6日 保守
Amy Coney Barrett 女性 1972/1 白人系 2020年10月26日 保守
Ketanji Brown Jackson 女性 1970/9 アフリカ系 Joe Biden 2022年6月30日 リベラル

このほか、次の2名が質問に答えている。

トランプ氏の弁護士 Dean John Sauer
米国政府を代表して Michael Dreeben 元司法長官代理で米国刑法の権威

US Special Counsel Jack Smith は、トランプが2020年選挙の結果を転覆しようとしたとして刑事告発を行った。この審理は、最高裁が6月に予想される決定を下すまで保留され ている。

それに対しトランプは、大統領在任中に犯した行為に対する刑事告発から絶対的な免責を受ける権利があるとするが、判事からは、すべての罪について免責特権を認めることには懐疑的な意見が示された。

一方、最高裁のロバーツ長官が、連邦高等裁判所が免責特権を認めなかったことについて、この意見に部分的に同意しかねると発言。「どの行動、もしくはどの文書を議論しているのか、高等裁判所は焦点を絞った審理に入らなかった」と述べた。

審理を差し戻すべきだとの意見が複数出された。
その場合、スミス特別検察官にとって、11月5日の大統領選挙前にワシントンの陪審員らがトランプ氏の容疑を評議できるように事を運ぶのは時間的に厳しい。
この裁判を担当する判事の場合、3ヶ月の準備期間と、2-3ヶ月の裁判期間が必要と見られており、大統領選までに裁判が終了しない。仮に結審までにトランプが大統領選挙で勝ってしまうと、また厄介なことになる。

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弁論は3時間にわたって行われ、最高裁判所は元大統領が起訴の対象から免除されるかどうか、およびそうである場合の具体的な意味が何であるかを検討した。

Justice Neil Gorsuch は、どのような決定であっても、各判事はそれが今後数年間のアメリカの民主主義を形作ることになると述べた。「私たちは歴史に残る規則を作成しています」。

トランプ氏の弁護士であるDean John Sauerの主張は、大統領在任中に犯した行為に対する刑事告発から絶対的な免責を受ける権利があるというものだが、

保守派判事は、すべての元米国大統領がある程度の免責を持つべきだという考えには開かれているようだが、絶対的免責には疑問符 をつけた。

判事たちのDean John Sauer への質問やコメント:

「絶対的な免責」で、将来の大統領が米軍を使って自らのライバルを殺すことができるようになるのか?

免責がなければ、退任した大統領が個々の検察官の気まぐれにさらされ、政治的な私怨の一環として投獄される可能性があるのか?

ウォーターゲート事件のカバーアップに対するリチャード・ニクソン元大統領の恩赦は?(「有罪」で、恩赦された。)

1960年代に当時のジョン・F・ケネディ大統領が中央情報局にフィデル・カストロに対する秘密作戦を実行させた Operation Mongooseは? (Kennedyは起訴されなかった。=免責を擁護)

「もし大統領が軍を使ってクーデターを起こすよう命じたらどうなるでしょうか?」 Justice Elena Kagan,が尋ねた。ソーヤー氏は答えるのをためらった後、「状況による」と述べると、
 判事は信じられないというような口調で
"That sounds pretty bad, doesn't it?" と返答した。

リベラル派の判事であるJustice Ketanji Brown Jacksonも、「私はオーバルオフィスを犯罪の座にする際の抑止力が何かを理解しようとしています」と述べた。

保守派の判事たちも、「公式行為」= 大統領職務の一環として行われる行為 と私的行為の区別について質問した。最高裁で最も保守的な判事の一人であるSamuel Alito 判事が「私の質問は、あなたが提唱している非常に強固な免責の形式が必要かどうかです」と尋ねた。

政府代表のMichael Dreeben は、大統領を刑事的責任から保護しないことの結果を通過させる際に、同じような厳しい尋問に直面した。

Clarence Thomas 判事が、「もし大統領が外国の土地で暴力的な攻撃を指示したら、その大統領は後で訴追される可能性があるでしょうか」と尋ねた。ドリーベン氏は、大統領が職務を遂行するために行動を起こした場合を含め、既に大統領を刑事責任から保護するための「層」が存在していると述べた。

特にSamuel Alito 判事は、もう1つの可能な結果について懸念を示した。大統領は、後任者によって、退任後に党派的攻撃の対象となる可能性がある。「これは私たちが知っている大統領職を破壊する可能性がある」

しかし、保守派の判事たちは結束しているわけではなかった。トランプ氏によって指名されたAmy Coney Barrett判事は、大統領が包括的な免責を受けるべきだという考えに疑問を抱いている。ドリーベン氏が「完璧なシステムはない」と述べ、現行システムがトランプ氏の「過激な提案」によって改善されるわけではないとしたとき、バレット判事は「同意します」と返答した。

トランプ氏の弁護士または特別検察官のどちらにも完全に同意しない分裂した判決は、代わりにその質問の一部を下級裁判所に送るかもしれない。これは間違いなくさらなる遅延を引き起こし、控訴の対象となる。つまり、この法廷闘争は今後数か月間、もしくは数年間続くことになる。

Washington Postは次のようにまとめている。

1.判事たちはトランプが完全な免責(blanket immunity)を持たないということで一般的に意見が一致

2. John Roberts 長官は本件での連邦高等裁判所の意見に不満

3. 保守派の判事はトランプの将来よりも将来の大統領に焦点

4. リベラル派の判事はトランプの免責は無法の王様を生むと主張

    Justice Elena Kagan:憲法起草者は、やろうと思えばできたが、憲法に免責条項を折り込まなかった。それよりも、法の上にあると主張する独裁者をつくらないように動いた。

ーーー

大統領が完全な免責を持たないことでは最高裁の意見はほぼ一致していると思われる。

ただし、どこまでの罪が免責されるかについては意見は一致していない。

Roberts長官は連邦高裁がどの行為が免責されないのかを定めていないことに不満を表している。これを明らかにするよう差し戻し、そのうえで最高裁の意見を決める可能性はある。

大統領選が迫っているため、6月末にも最高裁が意見を出す可能性はあるが、どこまでが免責され、どこからが免責されないか、私的行為も免責されるのか、等々 決めるのは簡単ではない。

Justice Neil Gorsuch が述べた通り、「私たちは歴史に残る規則を作成しています」 からである。

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