Bayerに2つの打撃が相次いで襲った。
1)MonsantoのRoundup訴訟
Bayerは5年前に米 Monsantoを630億ドルで買収したが、同社の主力の除草剤Roundupを巡る訴訟で敗訴が相次いでいる。最高裁への上訴も棄却された。
2018/8/28 Bayer のMonsanto買収 完了と、Monsantoの除草剤への賠償命令判決
2020/6/21 米最高裁、Bayerの除草剤問題での上訴を審議せず Bayerの上訴を棄却
今回、11月17日に Missouri 州Cole Countyで陪審員はMonsanto敗訴の判断を下した。
原告のValorie Gunther (New York)、Jimmy Draeger (Missouri)、Daniel Anderson (California)の3人に損害賠償として合計61.1百万ドル、懲罰賠償としてそれぞれに5億ドル、合計15.6億ドルの支払いを命じた。3人は非ホジキンリンパ腫に罹ったが、それぞれ、Roundupの使用の結果であると主張している。(懲罰賠償額は最高裁の基準を上回っており、控訴で引き下げられる可能性がある。)
陪審はこれについて、過失、設計上の欠陥、Roundupの使用の潜在的な危険性を原告に警告していないことでMlonsantoに責任があると判断した。
11月時点で、Monsantoはほぼ10万件の訴訟で和解し、約110億ドルを支払ったが、まだ4万件が残っている。
Bayerは訴訟関連費用して160億ドルを引き当てているが(当初116億ドル、2021/8に追加45億ドル)、今回の陪審の判断は、引当を全額またはそれ以上の支払いを必要としかねない衝撃的な内容である。
2)抗凝固薬アスンデキサン
asundexian はBayerのパイプラインで最も有望視されていたプロジェクトの1つで、年間50億ユーロ(55億ドル)以上の売り上げを生み出すと予想し、2026年に欧州で主要な特許による保護を失う抗凝固薬「Xarelto」(一般名・Rivaroxaban、日本製品名・イグザレルト)に代わる収益源としての自信を示していた。
Xareltoでは米 Johnson & Johnsonと開発コストを共有し、米国市場の大部分を同社に任せたが、 asundexianでは単独開発を選択し、米国でのマーケティングや流通に多額の費用を投じる用意をしていた。
Xareltoの売上高は2022年で4,516百万ユーロ(7300億円)で、特許切れまでに後継候補でXarelto 以上の売上高を見込んでいたasundexian の代わりが見つからない場合、悲惨なこととなる。
2023/11/8 米国医薬業界、特許切れの恐怖:住友ファーマのケース
Bayerの株価は11月20日に急落し、12年ぶりの安値となった。
今年6月に就任したBill Anderson CEO(直近はRocheの医療用医薬品部門CEO)は、11月8日発表した2023年7〜9月期決算(最終損益は45億6900万ユーロの赤字)について「今期の業績はまったく容認できない」と語った。
管理職の削減とともに、主要部門である農薬・種子(Crop Science)かコンシューマー・ヘルスの分社化を検討していると明らかにした。
本年7~9月期でCropScienceで3,964百万ユーロ(約6300億円)の特別損失があり、全社の金利・税前損益が3,594百万ユーロの赤字、純損益が4,569百万ユーロの赤字となった。Pharmaceutical、Consumer Health はほぼ前年並み。
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