トランプ次期大統領の暴論続く

| コメント(0)

トランプ次期大統領は2024年12月、1期目から目を付けていデンマークの自治領のグリーンランドについて、安全保障上の観点などからアメリカが所有すべきだと主張した。

北の隣国カナダを吸収して51番目の州にする可能性をほのめかし、カナダの当局者をあざけった。メキシコ湾をアメリカ湾に改めるとした。

さらに、米国が建設したもののパナマが四半世紀にわたって管理するパナマ運河を奪取する考えを示唆した。

記者からの「グリーンランドとパナマ運河について、軍事と経済で威圧しないと断言できるか」との質問に対し、「できない。どちらも経済安全保障に必要だ。デンマークに権利があるのか怪しい。権利を持っているなら放棄すべきだ。自由な世界を守るために」と述べた。

...

...

1. グリーンランド

デンマーク領グリーンランドは、ロシアに近い世界最大の島で、軍事的な要衝である。

トランプ氏はグリーンランド周辺を中露の船が行き来していると指摘し、「国家安全保障上の理由で領有が必要だ」と訴えた。デンマークが譲渡に応じなければ「非常に高い水準の関税をかける」と強調した。 

トランプ氏は政権1期目の2019年にも買収計画を提案し、デンマークのフレデリクセン首相に「ばかげている」と一蹴され、外交摩擦になったことがある。

2019/8/20 トランプ大統領、「グリーンランド買いたい」

米国が懸念するように、中国はグリーンランドを狙っている。 中国政府は2018年1月、北極海の開発や利用に関する基本政策をまとめた「北極政策白書」を初公表した。北極海を通る航路を「氷上のシルクロード(Polar Silk Road)」と呼び、「一帯一路」と結びつける方針を示した。中国はグリーンランドをPolar Silk Roadの拠点とみなしている。

今回、クレムリンのペスコフ報道官はトランプ次期米大統領の発言について、「北極圏はロシアの国益と戦略的利益の領域」とし、「北極圏の平和と安定を維持することに関心がある」と述べ、状況を注意深く見守っているとした。

米国の現政権のブリンケン国務長官は1月8日、訪問先のフランスでの記者会見で「われわれは、同盟国を遠ざけるような言動をするのではなく緊密に協力することで、よりよい結果を得ることができる。その点で、グリーンランドをめぐる考えはよいことではない」と述べた。そのうえで「明らかに実現しないことなので、その議論に時間を費やすべきではないだろう」と批判した。

ドイツのショルツ首相は1月8日、ヨーロッパ各国の首脳らと意見を交わしたと明らかにしたうえで「最近のアメリカからの発言についてわれわれは理解しきれていない」と述べた。そして「国境の不可侵の原則はすべての国に適用される。小国であっても、とても強力な国家であろうと従わなければならない」と強調した。

フランスのバロ外相は8日、「グリーンランドはEUの領土だ。相手がどのような国であったとしても、EUが領土の攻撃を容認することはありえない」と述べるなど、ヨーロッパ各国からも批判的な声が相次いでいる。

2.パナマ運河

トランプ次期大統領は12月22日、アメリカが1900年代初頭に建設し、現在は中米パナマが全面的な管理権を得ているパナマ運河について、「法外な」通航料を請求していると同国側を非難し、通航料を引き下げるか、アメリカの管理下に戻すよう訴えた。

「パナマが請求している通航料金はばかげていて、非常に不公平だ」と語った。

トランプによれば、パナマ運河が中国に運営されている、運河を通航するアメリカの船舶に過剰な通航料を請求しているという。そして、来月大統領に就任するのをふまえ、「このような我が国に対する完全なぼったくりは、直ちに止まるだろう」と述べた。

香港を拠点とするCK Hutchison Holdingsは1997年にパナマ政府との契約を結び、パナマ運河の両入り口付近にあるバルボア港クリストバル港の運営権を保有し、港湾インフラの整備や近代化に投資、コンテナターミナルの運営や貨物取扱業務を行っている。

しかし、パナマのホセ・ラウル・ムリノ大統領は、「中国は全く干渉していない」と反論している。

パナマのホセ・ラウル・ムリノ大統領は、トランプ氏の発言を即座に非難。パナマ運河とその周辺地域はすべて、自国のものだと主張した。

ーーー

パナマ運河は、スエズ運河の建設者フェルディナン・ド・レセップスが初めて着工したが、黄熱病の蔓延や工事の技術的問題と資金調達の両面で難航した。
1889年にパナマ運河会社は倒産した。

フランスは運河建設から事実上、手を引くこととなり、運河建設は米国によって進められることとなった。

パナマ地峡は当初は自治権を持つコロンビア領であったが、パナマ運河の地政学的重要性に注目した米国は運河を自らの管轄下に置くことを強く志向し、1903年1月22日、米国のヘイ国務長官とエルラン臨時代理大使との間でヘイ・エルラン条約が結ばれた。しかし、コロンビア議会はこれを批准しなかったことから、米政府は、独立派の運動家と手を結び、1903年11月3日、この地域はコロンビアから独立を宣言して「パナマ共和国」となり、米国はパナマ運河条約を結び、運河の建設権と関連地区の永久租借権などを取得し、建設工事に着手した。

1905年にアメリカ資本による建設事業がスタートし、1914年8月15日に開通した。運河収入はパナマに帰属するが、運河地帯の施政権と運河の管理権は、米国に帰属した。

第二次世界大戦後になるとパナマの民族主義が高まり、運河返還を求める声が強くなっていった。1968年の軍事クーデターによって権力を握ったトリホス政権は運河の完全返還を強く主張した。これを契機に返還をめぐる協議が始まり、1977年、カーター大統領の時代に新パナマ運河条約が締結された。新条約では、恒久的に中立無差別な通航が保証される国際運河であることの再確認と引き換えに、まず1979年に主権をパナマに返還し、米国の海外領土としての運河地帯を法的に消滅させた。

その時点から20年間は運河の管理を両国共同で行うこととされ、1999年12月31日にアメリカは全ての施設を返還、アメリカ軍は完全に撤退した。

3.カナダとメキシコ

トランプ次期大統領は2024年11月25日、メキシコとカナダからの輸入に25%、中国からの輸入に10%の追加関税を就任初日に課す意向を示した。

メキシコとカナダについて、「数千の人々がメキシコとカナダを通じて米国に流入しており、犯罪と麻薬を持ち込んでいる」とし、就任日に署名予定の複数の大統領令の1つとして、両国からの全ての輸入品に25%の関税を課すとした。

両国から流入するフェンタニルをはじめとする麻薬と違法な入国者が止まるまで続けるとした。

米国は両国との間で、1期目のトランプ政権時の2020年7月1日に米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)を発効させている。同協定の原産地規則を満たした製品の域内貿易については、基本的に関税が免除されることから、日米を含む多くの企業が両国に拠点を置いて米国に輸出するサプライチェーンを構築している。

ーーー

11月末にフロリダ州でカナダのトルドー首相と会談した際、カナダがアメリカの51番目の州になるべきだなどと述べた。大統領就任初日にカナダに新たな関税を課すとしており、それによってカナダ経済が疲弊するのであれば「51番目の州になるべき」だと述べたとされる。

12月18日にも、カナダがアメリカの51番目の州になるのは「素晴らしいアイデアだ」とソーシャルメディアに投稿、「多くのカナダ人は、カナダが51番目の州になるのを望んでいる。そうなれば、税金を大幅に節約でき、軍事的保護も得られる。素晴らしいアイデアだと思う。51番目の州だ!」とした。


トルドー首相(53)は本年1月6日、与党・自由党の党首と首相の職を辞任すると表明した。9年間にわたって国を率いてきたが、退陣を求める声が与党内で大きくなっていた。

ーーー

トランプ次期大統領は1月7日、メキシコ湾の名称を「アメリカ湾」に変えると主張した。「なんと美しい名前だろう。(アメリカ湾こそ)ふさわしい。」

ワシントン・ポストによると、メキシコ湾という名称は400年以上前から使われてきた。
米政府が使用する地名については、連邦政府機関である「米国地名委員会」が、提案があったものを承認や却下する仕組みだという。

これを受け、メキシコのクラウディア・シェインバウム大統領は1月8日、メキシコ湾という名称は何世紀にもわたり国際的に認められてきたものだと反論した。

さらに、北米大陸にスペイン語で「America Mexicana」(英語でメキシカン・アメリカ)と書かれた1600年代の北米地図を示しながら、北米の名称をこれに変更するよう提案した。

コメントする

月別 アーカイブ