中国がチベットに世界最大級のダム建設決定、インドとの対立激化か

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2024年12月25日の新華社通信によると、中国はチベット自治区を流れるヤルンツァンポ川(Yartung Tsangpo)の下流に世界最大級の水力発電ダムを建設する計画を承認した。

中国のCO2排出量削減目標の達成において大きな役割を果たし、関連産業を刺激し、チベットでの雇用を創出すると期待されているとしている。

新華社はダムの建設場所や建設の開始時期、事業の規模について言及していないが、承認された水力発電所の能力は年間3000kWhだとされる。中国が世界に誇る三峡ダムの3倍のスケール。

資金の規模も三峡ダム(約2542億元)の約4倍になる見込み。中国政府は2023年に「ダム建設費用は1兆元(約216000億円)に上る」との試算を発表している。

当局はこのプロジェクトがどれだけの人々を移住させ、地域の多様な生態系にどのような影響を与えるかを明らかにしていない。
ただ、当局によれば、チベットでの水力発電プロジェクトは、環境や下流の水供給に大きな影響を与えることはないという。

工事は難航することが予想される。

ダム建設には重機が欠かせないが、建設場所は奥地にあるため、その搬入が極めて困難だ。

日本時間の1月7日午前10時過ぎ、チベットでマグニチュード6.8の地震が発生、付近では多数の家屋が倒壊し、新華社通信は126人が死亡したと伝えている。

7日の地震が示すとおり、この地域は地震活動が活発であり、過去に大きな地震が何度も起きている。

ダムの建設には少なくとも10年はかかると言われている。

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ヤルンツァンポ雅魯蔵布:Yartung Tsangpo)川はチベット高原に端を発する河川で、世界で最も源流の標高が高い。

その後、ブラマプトラ(Brahmaputra)川となり、インドのアルナーチャル・プラデーシュ州に至る。そこから下流は一挙に川幅が広がり、シアング川
(Siang) と名を変える。アッサム州に達すると再びブラマプトラ川となり、バングラデシュではポッダ川と呼ばれるガンジス川に注いでいる。ガンジス川はインド洋へと注ぐ。



中国政府は「下流の水供給に大きな影響を与えることはない」としているが、インド、バングラデシュ両政府は早速懸念を表明している。

ヒマラヤ地方の大半の河川の水源付近にはこれまでダムの数は比較的少なかった。しかし中国に加え、インドもヒマラヤ地方にダム建設を急ぎつつある。建設計画中のダムの多くは米国コロラド川のフーバーダムに匹敵する4,000メガワット級の発電能力を有する世界最大級のダムになる。ヒマラヤ地方はダムが世界最多の地域となる可能性がある。

インドに流れる河川の半分は中国から直接流入していることからインドの置かれた立場は弱い。その一方で、バングラデシュはインドによる水路の迂回と水力発電計画を恐れている。バングラデシュの政府系機関の科学者によれば、バングラデシュではインドから流入する水量が1割減っただけで、1年の殆どの期間、農地の大半で水が枯渇することになる。バングラデシュ国内の5,000万人の小規模農家のうち、8割以上がインドから流入する水に依存している。

専門家は、洪水が増え、地震が起き易くなることを懸念している。また、ダムが建設されるのは、どれも氷河や雪原の融解が急速に進む河川であるが、気候変動が河川に及ぼす影響が未知数である。

今後、水問題で各国間の争いが起こる可能性がある。

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