2013/10/16 TPP交渉の行方
TPP交渉がまとまったとして、米国議会がこれを承認するかどうか
2013/10/23 米国の政治・経済の問題点
基本は富の偏在
グローバル化により製造業が中国等海外に→雇用を巡っての白人中低所得層とヒスパニック等との争い
米国の基本的な問題は富の偏在であるが、製造の海外移管に伴う雇用減が直接の問題となっている。
「米国製造業イノベーション構想」は雇用対策としての製造業復活構想で、これらの問題に対処するものである。
米国は、万一、TPP交渉がまとまらないことも考え、TPPに依存しなくともやっていける体制づくりを狙っている。
以下は、政策大学院大学での米国在留の弁護士 Thomas Kato氏の講演(2013/9/17 )に基づく。
「米国製造業イノベーション構想」の出発点はObamaの個人構想であるという。
グローバル化により製造が中国等に移管された。
新しい技術は米国の政府機関や大学で開発されるが、実際の生産は海外に移り、米国内が空洞化した。
更に、製造国は技術の模倣、盗用により、単なる組み立てから技術開発にまで展開している。ドイツでは基礎研究は Max Plancが、応用研究はFraunhofer研究所が行い、その成果を使い、民間が生産しているが、米国では基礎研究は政府機関や大学が行うが、応用研究が抜けている。これを補充すべきだ考えた。
この構想に対しては当初、金融重視のSummers(国家経済会議委員長)、Geithner(財務長官)、Christina Romer(経済諮問会議議長)などが反対した。
しかし、Summers等の退任後、Biden副大統領やRon Blume 参与の助言を受け、構想を進めた。
2012年1月、Obamaは演説で、"Economy recovery and growth begins with manufacturing" と述べた。
2011年11月にCEA議長に就任した Alan Kruegerは、海外Trans-plant の遠因は海外賃金の安さだけではなく、米国に労働力をスキルアップする教育インフラが欠けていることだと述べた。
従来の考えは、失業は一過性であり、GDPの 1%増が100万人の雇用を生み、雇用があれば何でもよいというもので、先進国で雇用がサービスにシフトするのは当然であり、Innovation誕生拠点が米国にあれば、低賃金国で生産すればよいというものであった。
Bernanke FRB議長も2012年3月に、雇用減は労働者のスキル不足からくる構造的なもので、このままでは解決は難しいと述べた。
オバマ大統領は2011年6月、訪問先のカーネギーメロン大学で、「先端製造パートナーシップ」(Advanced Manufacturing Partnership
=AMP)の立ち上げを発表した。http://www.nedodcweb.org/report/2011-7-8.html
AMPは、製造部門の雇用創出および米国の国際競争力強化を可能にする新興技術への投資を、産業界・大学・連邦政府をあげて行っていくという国家的な取組みである。
既存のプログラムやプロポーザルにてこ入れをするというもので、下記の5つの重要分野に5億ドル以上を投資することになる。
- 重要な国家安全保障産業の国内製造能力を構築
- 工業製品に使用される先端材料の生産所要時間を短縮
- 次世代ロボティクスにおける米国リーダーシップの確立
- 製造工程のエネルギー効率を改善
- 製品の設計・作成・実験に要する時間を大幅に短縮する新技術を開発
ホワイトハウス国家経済会議、科学技術政策局、及び大統領科学技術諮問委員会との緊密な協力で、米国の大手メーカーや一流の工科大学を結集していくことになる。
オバマ大統領はAMPの立ち上げに伴い、先端製造に対するコミットメントを表明し、連邦政府が取り組むべき重要対策として下記を挙げた。
- 重要な国家安全保障産業の国内製造能力を構築
- 先端材料の開発・導入に要する時間を短縮するMaterials Genome Initiative
- 次世代ロボティクスへの投資
- エネルギー高効率な製造工程の開発:
大統領は、これは世界競争に立ち向かう米国製品をより良く、より廉価に製造することを意味すると述べた。
AMP運営委員会は2012年7月、『先端製造業における米国競争優位性の確保』という報告書を発表、米国で先端製造が促進・成長していくためには、コミュニティや教育者、労働者や企業、連邦・州・地方政府の積極的参加が必要であると指摘し、以下の提言を行った。
http://www.nedodcweb.org/report/2012-7-27.html
・イノベーションの実現 | ||
提言1. | 国家先端製造戦略の確立 | |
提言2. | 分野横断的なトップ技術への研究開発(R&D)予算の増額 | |
提言3. | 製造イノベーション研究所の全米ネットワークの構築 (官民パートナーシップとして設立) | |
提言4. | 先端製造研究における産学協力の強化 | |
提言5. | 先端製造技術の商業化に向け、より健全な環境の育成 | |
提言6 | 国家先端製造ポータルの設置 | |
・人材パイプラインの確保 | ||
提言7. | 一般市民の製造業に関する誤解の訂正 | |
提言8. | 帰還した退役軍人の人材プールの活用 | |
提言9. | コミュニティカレッジ教育への投資 | |
提言10. | 技能の認証・認定を提供するパートナーシップの構築 | |
提言11 | 大学の先端製造プログラムの強化 | |
提言12. | 全米製造フェローシップ/インターンシップの立ち上げ | |
・ビジネス環境の整備 | ||
提言13. | 税制改革法を制定 | |
① 国内製造活動に対する税率を引き下げ;② R&D代替簡易税額控除を20%に引き上げ、これを恒久化;③米国内投資を奨励するため、企業税を全般的に引き下げ、海外収益に関する現行税法を改正 | ||
提言14. | 規制政策の簡素化 | |
提言15 | 貿易政策の整備 | |
提言16. | エネルギー政策の更新 |
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