欧州の原油、天然ガス、石炭の ロシア依存度 

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バイデン米大統領は3月8日、ロシア産の原油、天然ガス、石炭と関連製品の輸入を全面的に禁止すると発表した。同日に大統領令に署名し、即日発効した。

英国のジョンソン首相は同日、ロシアからの原油と石油製品の輸入を段階的に削減し、2022年末までに完全に停止すると発表した。

2022/3/9 ロシア産原油禁輸、米が追加制裁 即日発効 英は年内停止

G7は3月11日、ウクライナへの侵攻を続けるロシアに新たな経済制裁を科すと表明した。

ロシアの最恵国の地位を取消し、ロシアからの輸入品に大幅に高い関税を課すほか、高級品の対ロ輸出も禁じる。

EU主脳会議は、2027年までにロシア産ガスや石油からの依存を脱する方針を確認した。

   2022/3/14 G7、ロシアに新たな経済制裁

しかし、欧州諸国がロシア産の原油、天然ガス及び石炭の輸入をやめるのは簡単ではない。

河野太郎衆院議員の「ごまめの歯ぎしり」 2022年3月9日号は「ロシア産のエネルギー資源」として経産省のデータを載せている。

バイデン大統領は「ロシア産の原油、天然ガス、石炭と関連製品の輸入を全面的に禁止」としたが、 米国の石油の依存度は2%(石油製品を入れれば8%)に過ぎず、天然ガスと石炭はゼロである。大々的に「輸入の全面禁止」を打ち出したが、実は他国に輸入停止を促すためのものであろう。

欧州はロシア依存が大きく、輸入禁止は大問題である。

英国の場合、石油は11%、天然ガスは5%であるが、石炭は36%を依存している。

フランスは天然ガスが27%、石炭が29%で、ドイツにいたっては、石油が34%、天然ガスが43%、石炭が48%と、消費の半分弱がロシアからの輸入品である。

ロシアからの輸入をやめ、他のソースに切り替えるのは大変である。

石油については、OPECは、サウジ産の輸出量 にほぼ近いロシアの輸出量日量約700万バレルを埋め合わせる余剰能力はないと述べた。サウジアラムコのCEOは「サウジの増産余地は日量200万バレルで世界需要の2%相当しかない」と述べた。

少なくとも中国はロシア原油の輸入を増やすと思われ、700万バレルがそのまま無くなることはないが、大変であることには間違いない。

天然ガスについては、欧州はロシアからパイプラインで供給を受けている。これを切った場合、他国からLNGで輸入するしかな い。
その場合、LNGの受け入れ設備、気化設備の設置が必要である。供給側も追加需要に対し、液化・出荷設備の建設が必要である。また輸送のための船も追加で必要となる。

EU首脳会議は今回、「2027年」までにロシア依存を脱するとしている。それまでは輸入を続けるということだろうか。


なお、日本の依存度は石油が4%、天然ガスが9%、石炭が11%となっている。

ロシア産LNGの輸入量は657万トンで、うちサハリン2が600万トンとなっている。

Shellは2月28日、主要な液化天然ガスプラントを含むロシアの全事業から撤退すると発表、「サハリン2」からも手をひく。

サハリン2には三井物産が12.5%、三菱商事が10%出資し、輸入LNGはJERAや東京ガスなど日本の電力・ガス会社8社が長期契約で調達している。

三井物産は「エネルギー安全保障をどう考えるか政府と協議する」としているが、どうするのだろうか。

撤退すると、代わりに価格が暴騰しているスポット品を購入する必要がある。LNGは中国が喜んで引き受けるだろう。

2022/3/1 Shell、サハリン2から撤退

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