米、学生ローンの一部免除対象を80万人に見直し

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米教育省は7月14日、所得連動返済(Income-Driven Repayment、IDR)プランを見直した結果、およそ80万人がローンの一部を免除されると発表した。計390億ドル(約5兆4000億円)分の学生ローンを免除する。所得に応じた返済制度の運用に不備があったと説明した。

米連邦最高裁は2023年6月30日、バイデン政権による学生ローン返済の一部免除措置を無効とする判断を示した。

バイデン大統領は判決後の声明で「裁判所の決定は間違っている。全ての米国人に高等教育の約束を果たすために努力する」と訴えた。

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バイデン米大統領は2022年8月24日、学生ローンを抱える数百万人の借り手に対し1人当たり1万ドルの返済を免除すると述べた。

パンデミック下で特に大きな打撃を受けた労働者や中流階級の人々のための措置だとし、高所得世帯(所得上位5%)は対象外とする。

延長を繰り返し、8月末としていた学生ローンの返済猶予措置を年末まで延長するほか、年収125千ドル以下、夫婦の場合は合計25万ドル以下の世帯に対し1万ドルの学生ローンの返済を免除する。

低所得者層の学生を対象とするPell Grantsと呼ばれる連邦補助金の受給者に対しては最大2万ドルの免除を行う。

学生ローンの対象は約43百万人で、うち20百万人が債務全額免除となる。

2022/8/27 米大統領、学生ローン返済免除表明 


米連邦最高裁は2023年6月30日、最高裁はバイデン大統領が掲げる連邦政府に対する学生ローン債務の減免プログラムについて、権限を逸脱しているとして却下した。6対3の判断だった。

ロバーツ最高裁長官は、戦争や国家非常事態を想定している学生高等教育救済法のコロナへの運用は「行き過ぎ」と断じ、大規模な債務帳消しプログラムには議会の承認が必要であるとした。

2023/7/5 米最高裁、「学生ローン返済の一部免除措置は無効」など保守的判決が相次ぐ

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教育省は7月14日、約804千人の債務者に対して、総額390億ドルの連邦学生ローンが数週間以内に自動的に免除されることを通知すると発表した。

教育長官は、「長い間、債務者は免除への進捗状況を正確に追跡できない壊れたシステムの網の目から逃れられなかった。バイデン・ハリス政権は再び歴史的な一歩を踏み出し、804,000人の債務者に対して390億ドルの債務救済を発表した。過去の行政上の失敗を修正することで、公務員、大学に騙された学生、退役軍人を含む永久的な障害を持つ債務者と同様に、誰もが自分に相応しい免除を受けることを保証している」と述べた。

今回の免除は、所得連動返済(Income-Driven Repayment、IDR)プランのもとで免除に適格な月々の支払いの正確なカウントをすべての債務者が持つことを保証するために行われる。

IDRプランは、政府の連邦学生ローン返済プログラムの一つで、借り手が所得と家族の人数に基づいてローン返済を管理できるように設計されており、標準的な一定返済プランに代わる選択肢となる。

借り手の月々の返済額は調整総所得から特定の貧困ライン額を差し引いた所得剰余に基づいて計算される。Income-Based Repayment(IBR)、Pay As You Earn等々、複数のタイプがあり、各プランには若干異なる適格基準、返済額計算、返済条件がある。

IDRプランでは、一定期間の継続した返済後にローンの免除が可能となる場合もあり、免除期間は通常、20〜25年程度であり、具体的なプランによって異なる。

民間学生ローンはこれらのプログラムの対象外。

敎育長官によると、免除基準を満たしているかを算出するに当たって長年にわたりミスがあった。

「この政権の開始時点で、数百万人の債務者がローンの免除を受けられたにもかかわらず、それを受け取っていない。それは許されないことだ」と述べた。

特定の期間において所定の免除条件を満たしたローン債務者が対象となる。

該当する免除条件を満たす債務者は、省庁によって免除の対象とされることが通知され、30日間で免除が開始される。

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バイデン米政権が学生ローンの減免を追求する背景の一つに、米大学の学費高騰がある。NPO「カレッジ・ボード」によると、米国の私立大学の2022会計年度の平均学費は年間39,400ドル(約570万円)で、各州の公立大は同10,940ドル(約158万円)だった。

大学の学費は約30年で2倍前後に高騰。部屋代や教科書代、移転費などを加えると、学生1人当たりの年間支出は私立大が57,570ドル(約830万円)、州公立大は27,940ドル(約400万円)にそれぞれ膨れ上がる。

米国の学生ローンは1兆7500億ドルで、大半が連邦政府のローンである。

連邦学生ローンは民間の学生ローンに比べて低金利で借りられ、返済プランが柔軟であるなど、民間の学生ローンよりも有利な点が多いが、全期間にわたって金利は定率であり、低利子のローンに借り換えすることが困難である上に、破産免責されないことが通常であるといった不利な点がある。

自己破産の場合、連邦政府の資金が返済されないことから、これを防ぐため、1998年10月8日以降、連邦学生ローンは自己破産した後も免責とならない厳しい措置がとられている

破産しても、取り立て業者から返済を迫られる。

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