塩野義製薬は1月26日、アレルギー性鼻炎に対する適応取得を目指して開発を進めていたDP1受容体拮抗薬S-555739について、 米国のBioAge Labs, Inc.との間で COVID-19の重症化抑制を対象としたライセンス契約を締結したと発表した。


BioAge Labsは本化合物のCOVID-19の重症化抑制に関する米国、欧州での独占的開発・販売権を獲得、さらに、
新型コロナ以外の感染症の重症化抑制など、他の疾患への適応追加に対する独占的交渉権が付与される。

塩野義は、本契約の締結に伴う一時金、今後の開発進展に応じたマイルストン、製品上市後の販売額に応じたロイヤリティーを受領する。

この化合物は、塩野義が創製したDP1受容体拮抗薬であり、アレルギー性鼻炎に対する適応取得を目指して開発を進めていたが、この開発は現在中止している。
複数の非臨床および2,400例以上を対象とした臨床試験において、DP1受容体への高い親和性および選択性に加え、良好な忍容性、安全性が確認されている。

DP1受容体(DP1 receptor)は、ヒトなどに存在するGタンパク質共役受容体の1種で、全身の様々な細胞に発現しており、様々な生理反応に関与している他、病理学の分野では炎症やアレルギーに関係する受容体の1つとして知られる。

BioAge Labs は加齢や老化に関連する疾患を治療するための医薬品を開発している米国のバイオテクノロジー企業で、同社が実施した独自のAIによるオミクス解析(生体を構成しているさまざまな分子を網羅的に調べること)から、加齢に伴う免疫機能低下を改善する創薬ターゲットとして、DP1受容体が同定された。

加齢による免疫機能の低下は、感染症に対する罹患率ならびに死亡率を高める大きなリスク因子となる。そのため免疫機能を亢進させることで、COVID-19を含む種々の感染症の重症化抑制に繋がる可能性が示唆されている。

また、アイオワ大学で実施されたSARSコロナウイルスを感染させた加齢マウスモデルに既存のDP1受容体拮抗薬を投与した試験では、マウスの死亡率の改善とともに、肺内のウイルス量の有意な低下が報告された。

これらを踏まえてS-555739のドラッグリポジショニング(ヒトでの安全性や体内動態が確認されている既承認薬について、別の疾患に対する治療薬として開発する手法)による高齢者の免疫亢進薬としての開発期待から、今回の契約締結に至った。

BioAge Labsは、2021年上期に、COVID-19患者を対象とした第Ⅱ相臨床試験の開始を計画している。

塩野義では、BioAge Labsによる試験結果が良好であれば、これを活用して国内申請する可能性もあるとしている。

神戸市立神戸アイセンター病院は1月20日、「網膜色素上皮(RPE)不全症に対する同種iPS細胞由来RPE細胞懸濁液移植に関する臨床研究」が、1月20日に開催された厚生科学審議会再生医療等評価部会にて了承されたと発表した。

RPE細胞は視細胞の外側にあり、視細胞を保護する役目を持つ。

RPE不全症は、RPE細胞の遺伝子に異常があったり、近視がとても強かったり、加齢によるストレス、または炎症が起きたりすることでRPE細胞が働かなくなり、続いて、RPEに保護されなくなった視細胞も働かなくなるために、目が見えにくくなってしまう、いろいろな種類の病気が含まれる。

理化学研究所と先端医療振興財団は2013年8月1日、iPS細胞を使い、RPE細胞異常による滲出型加齢黄斑変性の患者6人を対象に目の網膜を再生する世界初の臨床研究を開始した。

網膜下の脈絡膜新生血管や傷害を受けたRPEを取り除いた後、iPS細胞から作製したRPEシートを網膜下へ移植する。

  2013/12/4 大日本住友製薬と理研認定ベンチャーのヘリオス、iPS細胞由来医薬品を共同開発

神戸アイセンター病院では、滲出型加齢黄斑変性の患者に対し、RPE細胞の移植(自家細胞シート1例、他家懸濁液5例)を実施した。(安全性について確認済)

これまでのRPE細胞移植では、安全性を確認することを主な目的としていたが、今回の臨床研究では、移植の対象疾患を拡充し、新しい治療法の有用性(視機能、QOL)や安全性を確認する。

今回の臨床研究では、RPEシートの移植ではなく、他家(他人の細胞)のiPS細胞より作製したRPE細胞を含む液体(懸濁液)を、RPE不全症の患者に移植する。

理化学研究所で製造したRPE細胞を使って、神戸アイセンター病院網膜再生細胞手動調製室で細胞懸濁液を作る。

目標症例数は50例で、移植後の観察期間は4年間。

RPE不全症に含まれる病気のうち、どの病気にRPE細胞移植の効果が期待できるかを調べることと、移植の効果を調べるために行う検査について評価する。
また、移植したRPE細胞が患者の眼の中で生着しRPE細胞としての機能を果たすかや、免疫拒絶反応などの安全性の評価も行う。


神戸市立
神戸アイセンター病院は、「網膜色素変性に対するiPS細胞由来網膜シート移植に関する臨床研究」を実施している。

2020/6/15 iPS網膜シートの移植、臨床研究開始へ 


なお、大阪大の西田幸二教授(眼科)らのチームの
「角膜上皮幹細胞疲弊症に対する他家 iPS 細胞由来角膜上皮細胞シー トの first-in-human 臨床研究」を行なっている。

2019/3/8 厚労省、iPS細胞の角膜移植臨床研究計画を了承 

米国のMerck (米加以外での社名はMSD : Merck Sharp and Dohme)は1月25日、同社のCOVID-19ワクチン(V590 と V591) の開発プログラムを打ち切ると発表した。
2つの新型コロナ治療薬の開発に集中する。

2種のワクチンは、Phase 1の臨床試験で自然感染や既存のワクチンと比べ、免疫反応が劣るとデータで示された。

開発中止となるワクチン候補は、Merckのエボラ出血熱の予防接種技術を用いた「V590」 (「国際エイズワクチン推進構想(IAVI)」との協業)と、欧州で使われている「はしかワクチン」を基にしたThemis社の「V591」 で、Merckは2020年5月26日、COVID-19ワクチンを開発しているオーストリアのThemis Bioscience社を買収すると発表した。

Developer/manufacturer Platform Type doses Timing Route Phase
1 1/2 2 3
Merck/ IAVL

V590 Replicating Viral Vector Replication-competent VSV delivering the SARS-CoV-2 Spike 1 IM
Institute Pasteur/Themis/Univ. of Pittsburg CVR /Merck V591 Replicating Viral Vector Measles-vector based 1 or
2
0, 28 days IM

一方、2つの新型コロナ治療薬、MK-7110 MK-4482の開発に集中する。

うち1つの治療薬「MK-7110」(旧称CD24Fc) は、バイオ医薬品会社OncoImmuneが開発したもの。

Merckは2020年11月23日、株式非公開のバイオ医薬品会社OncoImmuneを425百万ドルの現金前払いで 買収すると発表した。2020年末までに買収を完了する。
OncoImmuneの株主は売上高および一定の規制関連のマイルストン達成に基づいた支払いを受け取る権利を得る。

OncoImmuneは 新型コロナ治療薬「CD24Fc」のほか、がんや自己免疫疾患の治療薬を開発する。

「CD24Fc」は、自然免疫系を標的とするfirst-in-classの組換え融合タンパク質で 、過剰な免疫反応を抑えることで炎症を防ぎ、治療の効果を飛躍的に高めるも

2020/11/28 米メルク、バイオ医薬品会社OncoImmuneを買収、新型コロナ薬候補を取得

Merckは2020年12月23日、開発中の新型コロナウイルス治療薬「MK-7110」 6万~10万回投与分を3億5600万ドルで供給する契約を米政府と結んだと発表した。
米当局から緊急使用向けの承認が受けられた場合、2021年6月末までに最大で10万回分の出荷を目指す。

新型コロナで入院中の重症患者を対象としたこれまでの臨床試験(治験)で、この薬を投与した患者グループは偽薬と比べて病状の改善や死亡リスクの低下が認められた。


MK-4482 (molnupiravir)はRidgeback Bioと共同で開発中で、現在 Phase 2/3 臨床試験中。体内でウイルスの増殖を抑える経口薬で、感染患者の早期回復や重症化防止への効果を期待している。

経口薬のため、実用化すれば患者が自宅で服用できる利点がある。

米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のAnthony Fauci 所長は1月22日、今後2週間以内にJohnson & Johnson 子会社のJanssen Pharmaceutical が開発中の新型コロナウイルスワクチンがFDAから緊急使用の承認を受けるとの見通しを示した。
"I would be surprised if it was any more than two weeks from now that the data will be analyzed and decisions would be made."

所長は、「J&Jのワクチンは超低温で保管する必要がないうえ、接種は1回で済むという点で、Pfizer製やModerna製とは大きく異なる」と評価した。

超低温が必要ではないため、保管や管理が容易であり、開発途上国では評価が高いだろうと述べた。

J&J は当初は2回接種で試験をしていたが、現在の試験は1回接種で行なっている。

J&Jは、FDAからの緊急使用許可が得られれば、4月までに1億本(1億人分)のワクチンを生産し、2021年中に全世界向けに10億本を供給する。
2020年10月にはEUと最大4億回分のワクチンを供給することで合意している。

J&J は2020年10月12日、Janssen Pharmaceutical の新型コロナウイルスワクチンの全ての臨床試験を一時停止したと発表した。治験参加者が原因不明の病気になった。
しかし、
本ワクチン候補が本事象を引き起こしたというエビデンスは認められず、試験を再開した。

2020/10/15 Johnson & Johnson、コロナワクチンの治験を一時停止、Eli Lillyの抗体治療薬も

ーーー

Fauci 所長は米国政府が6つのワクチン候補について医薬会社と作業を進めていると述べた。

米国では既に、Pfizer/BioNTech と Moderna のワクチンがFDAから緊急使用許可を受けている。

Fauci 所長は、12月に2回目のワクチン(Moderna)の接種を受けた際、軽度の副反応があったことを明らかにした。倦怠感や痛みがあったが「病気ではない」としている。
ワクチンに対する信頼を高めるため、自身がワクチン接種を受ける模様を公開した。

他に、2020年12月28日時点で、米国ではJ&J (Janssen) 、AstraZeneca、Novaraxの3つのワクチンがPhase 3 の臨床試験を行っている。

AstraZenecaは既に2020年12月30日に英国の承認を受けている。

これで5種類となるが、あと1種類は明らかでない。ドイツのCureVacのワクチンの可能性がある。

ドイツのCureVacのワクチンについて、メキシコ政府が1月初めにPhase 3の臨床試験実施を承認した。
CureVac は欧州に加え、米国での販売も狙っていると思われる。同社は2020年8月に米国のNASDAQに上場した。

同社のワクチンについては、トランプ政権が独占を狙い、EUやドイツなどは多額の資金を供与し、これを防いだ。

2020/3/19 米国がコロナウイルスワクチン技術独占を画策?

CureVacは1月7日、開発中のワクチンについて、当局の承認獲得や配布で Bayerと提携すると発表した。
Bayerは、臨床、規制対応、医薬品の安全性対策、医療情報、サプライチェーン、特定の国での支援などの分野において専門知識と確立されたインフラを提供する。
EU域内と、域外の特定市場への販売はCureVacが担当し、Bayerはこれを支援する。一方、その他の市場については、Bayerが販売権取得のオプションを付与された。
ワクチン製造に関しては、CureVac はWacker Chemie AGと契約を締結している。



先進ワクチンの状況

Developer/manufacturer Platform Type doses Timing Route Phase 承認
1 1/2 2 3
University of Oxford/AstraZeneca Non-Replicating Viral Vector ChAdOx1-S 1*   IM  

UK 2020/12/30

CanSinoBiological Inc./Beijing Institute of Biotechnology Non-Replicating Viral Vector Adenovirus Type 5 Vector 1   IM   〇   
Gamaleya Research Institute
(ロシア)
Non-Replicating Viral Vector Adeno-based 2 0, 21 days

 

IM  

Sputnik V
ロシア 2020/8
 

Vektor (State Research Center for Virology and Biotechnology)
ロシア
                 

EpiVacCorona
ロシア 2020/10

 

Janssen Pharmaceutical (J&J) Non-Replicating Viral Vector Ad26COVS1 2→1 0,56 days IM      
Sinovac(中国) Inactivated Inactivated 2 0, 14 days IM      
Wuhan Institute of Biological Products/Sinopharm Inactivated Inactivated 2 0,14 or
0,21 days
IM  

 

 
Beijing Institute of Biological Products/Sinopharm Inactivated Inactivated 2 0,14 or
0,21 days
IM    

 

中国 2020/12/31

Bharat Biotech (インド) Inactivated Whole-Virion Inactivated 2 0, 14 days IM    

Covaxin
インド 2021/1/3

Moderna/NIAID(米国立アレルギー感染症研究所) RNA LNP-encapsulated mRNA 2 0, 28 days IM  

FDA 2020/12/17
EU 2021/1/6

BioNTech(独)/Fosun Pharma(上海復星医薬)/Pfizer   RNA 3 LNP-mRNAs 2 0, 28days IM  

 

UK 2020/12/2
FDA 2020/12/11
EU 2020/12/21
WHO 2020/12/31

Novavax(米) Protein Subunit Full length recombinant SARS CoV-2 glycoprotein nanoparticle vaccine adjuvanted with Matrix M 2 0, 21 days IM    
Curevac(独) RNA mRNA 2 0, 28 days IM 〇 

貧困国へのワクチン供給について、この数日間で多くの動きがあった。

WHOのTedros Adhanom 事務局長は1月18日、COVID-19ワクチン接種の状況について、分配の不平等が起きていると懸念を示した。

WHOなどが主導する枠組み「COVAX ファシリティー」で貧困国・低所得国にワクチンの供給を 行なうこととしているが、一部の先進国はCOVAXに先回りして自国分を確保するため、ワクチン価格を押し上げて製薬会社と取引している、と苦言を呈した。

また、これまでに少なくとも49の高所得国で計3900万回分以上が投与された一方、アフリカのギニアを想定して「最低所得国での投与はたったの25回だ」とも指摘し 、「世界は悲惨な道徳的失敗の危機に瀕している」として、先進国や製薬企業に公平なアクセスへの貢献を求めた。

直後の1月22日、WHOは「COVAXファシリティー」を通じた新型コロナウイルスのワクチン供給を2月に開始すると発表した。
このたびPfizer /
BioNTechが開発したワクチンについて、4000万回分の供給を受けることで合意し、開始のめどが立った

ーーー

2020年4月24日にWHOとCEPI、GAVI(下図参照)が国際協働の仕組み「Access to COVID-19 Tools Accelerator」(ACT Accelerator を立ち上げた。この柱の一つのワクチン分野をCOVAX(COVID-19 Vaccine Global Access)ファシリティが担当する。

CEPI「感染症流行対策イノベーション連合」が開発GAVIワクチンアライアンスが供給を取りまとめる


COVAXの目標は、2021年末までに、規制当局の承認やWHOの事前承認を受けた20億回分の安全で効果的なCOVID-19ワクチンを提供する。各参加国の20%を占める弱者に対して収入レベルに関わらずワクチンの平等な分配を実現しようとするもので、10年前のパンデミックから得た教訓をもとにしている。

資金を出して参加する国は一定額を前払い金として支払う。ワクチン開発に取り組む複数の製薬企業の研究開発などに使われ、開発に成功した場合、出資国は人口の20%分を上限にワクチンを確保できる。
途上国はGaviを通じてワクチンの提供を受ける。

日本政府は2020年9月1日、「COVAXファシリティ」に参加する方針であると発表した。

ホワイトハウスは9月1日、WHO主導の「COVAX」には参加しない方針を明らかにした。

トランプ政権は2020年7月6日、国連のグテーレス事務総長にWHOからの脱退を正式に通知し、1年後の2021年7月6日に脱退すると表明した。

COVAXの参加表明の期限だった9月18日までに日本を含む150カ国以上が加わったが、米国やロシア、中国は参加を見送っていた。

しかし、中国外務省は10月8日、「COVAX」に正式に加入した。「実際の行動でワクチンの公平な分配や発展途上国への供給確保を促進するためだ」と説明した。

2020/8/5 政府、ワクチン確保へ国際共同購入を検討

5月中国の習近平国家主席はWHO総会で演説し、途上国を中心とする国際的な感染対策のために今後2年間で20億ドル(約2100億円)を提供すると表明。ワクチンの開発に成功すれば「国際公共財」とする考えも示した。


Trump大統領は不参加を決めたが、Biden新大統領は1月21日、大統領令でCOVAXへの参加を表明した。

National Security Directive on United States Global Leadership to Strengthen the International COVID-19 Response and to Advance Global Health Security and Biological Preparedness

Sec. 2. United States Leadership in the Global Response to COVID-19

The Secretary of State and the Secretary of HHS shall inform the WHO and Gavi, the Vaccine Alliance, of the United States' intent to support the Access to COVID-19 Tools (ACT) Accelerator and join the multilateral vaccine distribution facility, known as the COVID-19 Vaccine Global Access (COVAX) Facility.

米国立アレルギー感染症研究所のAnthony Fauci 所長は1月21日のWHO執行理事会で、米国がCOVAXを含むWHOの包括的な新型コロナ対策支援策「ACTアクセラレーター」に参加し、WHOへの拠出金を出す義務を果たすと表明した。

米国のCOVAX加入で途上国などへのワクチンの公平な配分が進む可能性がある。

ーーー

「COVAX」は1月21日、本年に18億回分を貧困国・低所得国に供給するとの最新目標を明らかにした。
ワクチン買い取り補助金事前保証制度(AMC)を通じ、92カ国に供給する。対象国の総人口の約27%への接種が可能になるという。

今年後半には、これと別に自国で資金の工面ができる参加国との供給契約を履行したいとの期待も示した。


WHOは1月22日、「COVAXファシリティー」を通じた新型コロナウイルスのワクチン供給を2月に開始すると発表した。
既にAstraZenecaなどとは合意に達していたが、このたびPfizer /
BioNTechが開発したワクチンについて、4000万回分の供給を受けることで合意し、開始のめどが立った。

PfizerのCEOは1月22日、WHOのテドロス事務局長らとともにオンラインで会見し、同社が年内に製造する20億回分のうちCOVAXに供給する分は「利益を度外視する」と述べ、今後、追加供給する意向も明らかにした。


中国政府は1月20日、「COVAX」に国内のワクチンメーカー3社が参加を申請したと発表した。

シノバック・バイオテック(科興控股生物技術)、中国医薬集団(シノファーム)、康希諾生物(カンシノ・バイオロジクス)がCOVAXを通じたワクチンの供給を申請したと明らかにした。ワクチンの供給量等は明らかにしていない。

上院で予定されるトランプ前大統領の弾劾裁判は2月9日に審理を開始することで与野党が合意した。

1月6日の米連邦議会議事堂襲撃事件について、民主党はトランプ氏が「反乱を扇動」したとして、1月13日に下院で
232対197の賛成多数で弾劾訴追した。

2021/1/14 トランプ大統領 2度目の弾劾訴追

本来であれば、下院は弾劾訴追決議を上院に付託し、 これを受けて上院は弾劾裁判を開く。

しかし、今回はバイデン政権の閣僚指名の承認手続きがほとんど終わっておらず、また経済対策法案の審議も必要であり、これらを優先させる必要がある。

報道によると、Biden次期大統領は共和党のMcConnel上院総務に電話し、弾劾と通常審議を(例えば午前と午後に分け)並行して行う「分離審議(Bifurcatiion)」の可能性について話し合ったというが、合意できていない。

このため、下院は上院への送付を遅らせた。

民主党と共和党で日程を協議した結果、下記の通りとなった。

1月25日に下院が弾劾決議を上院に送付

(この間、通常の法案審議と、トランプ前大統領の弁護準備)

2月9日に審理開始 

上院議員が弾劾裁判の陪審員となり、最高裁長官が裁判長となる。

上院の審議日程は、多数党の院内総務が決める。今回、民主党が多数党となったが、民主党院内総務のChuck Schumer上院議員が審理開始前の準備期間を認めた。

共和党のMitchell McConnell 院内総務は、 審理開始前の準備期間を民主党が認めたことを歓迎し、「下院が素早く最低限の手続きで進んだだけに、共和党としては上院が今後、トランプ前大統領の権利と法定手続き、上院という制度や大統領の職位を尊重するよう、働きかけた。その目的は実現した。これは法定手続きと公平性の勝利だ」 と評価した。

トランプ前米大統領は、上院での弾劾裁判を担当する弁護人にサウスカロライナ州のButch Bowers 弁護士を起用した。
当初は顧問弁護士の Rudy Giuliani 氏が担当する見込みだったが、同氏は最近、議事堂乱入事件直前の支持者集会に自らも参加していたことを理由に弁護を担当しない考えを明らかにした。

上院は与野党の勢力が50対50となったが、有罪とするには3分の2以上(67人)の賛成が必要で、共和党から少なくとも17人の賛同が必要となる。

McConnell 院内総務は1月19日の上院本会議で、連邦議会議事堂占拠事件について、「トランプ大統領や他の影響力を持つ人々に扇動された」と発言した。
「暴徒はウソをすり込まれていた」と述べ、大統領選で大規模な不正があったとの根拠のない主張を繰り返したトランプ氏らを批判、「我々は団結し、米国ではたとえ一晩でも怒る暴徒たちが法の支配を拒否することはさせないと明言した」と強調した。

同事件を巡る上院のトランプ氏弾劾裁判に影響を与える可能性がある。

有罪となった場合、上院は過半数の賛成で、トランプ氏から今後公職に就く資格を剝奪することができる。

憲法に2つの規定がある。

憲法 第1章第3条第7項

弾劾事件の判決は、職務からの罷免、および名誉、信任または報酬を伴う合衆国の官職に就任し在職する資格の剥奪以上に及んではならない。
"Judgment in Cases of Impeachment shall not extend further than to removal from Office, and disqualification to hold and enjoy any Office of honor, Trust or Profit under the United States."

第6項では「何人も、出席議員の3分の2の同意がなければ、有罪の判を受けることはない」としているが、資格剥奪については3分の2の規定がない。

1862年と1913年に上院はWest Humphreys 判事と Robert Archbald 判事の弾劾裁判で3分の2の同意でそれぞれ有罪とし、資格剥奪については単純多数決で決めた。

ーーー

憲法修正14条

第3節、アメリカ合衆国議会議員、国の機関の役人、州議会議員、あるいは州の行政及び司法の役人として、アメリカ合衆国憲法を支持することを以前に誓い、かつそれらに対する反乱に加わった者あるいはその敵に対して援助や同調した者は、アメリカ合衆国下院または上院議員、大統領および副大統領の選挙人、あるいは国または州の公的、軍事的役職に就くことはできない。

ただし、アメリカ合衆国議会が各院の議席の3分の2以上で決した場合は、その禁止規定を排除する。

第5節、アメリカ合衆国議会は適切な立法により本修正第14条の条項の施行権限を有する。

今回の弾劾は、「反乱を扇動」で訴追されており、上院で有罪となれば、憲法修正14条で公職につくことができず、これは議会の適切な立法で過半数で施行できる。


参考

米国は南北戦争時に憲法修正13条で奴隷制度廃止を決めたが、更に修正14条を採決し、南部各州に批准を迫った。
第3節の意味は下記の通り、南部連合を支持した公務員からの選挙権と公職就任権をはく奪するためのものであった。

  1. 合衆国市民権は出生または帰化によって取得される。各州は合衆国市民に保障されている権利を制限してはならない。
  2. 南部が黒人男子に投票権を認めない場合は、その数が男子総人口に占める割合に比例させて、その州から選出される下院議員数を削減する。
  3. 南北戦争で南部連合を支持した元公務員から選挙権と公職就任権を剥奪する。
  4. 南北戦争中の 政府の公共債務は支払われるが、南部諸州の負債支払いと奴隷解放による損失の補償の請求権は認めない。

バイデン米大統領は1月22日、新型コロナウイルスで打撃を受けた低所得者の生活支援や、労働者保護を目的とした大統領令に署名した。

政府全体で、パンデミックから生じる経済危機に対応するため、可能な行動を早急に見出すことを命じた。

個人や中小企業の問題について、下記を挙げている。

Fact Sheet: President Biden's New Executive Actions Deliver Economic Relief for American Families and Businesses Amid the COVID-19 Crises

1) COVID ECONOMIC RELIEF

担当 対象
農務省 飢餓に瀕する29百万人+子供12百万人 フードスタンプnutrition assistance programs)の拡大
財務省 国の支援を受領できない8百万人 一人当たり2000ドルの支払方法の変更
退役軍人省 貧困の退役軍人2百万人 過払いと債務の連邦徴収の一時停止
労働省 失業者 COVID-19関連の危険な仕事を拒否した労働者が失業保険を受けられるよう検討
全体 省庁間調整機構をつくり、政府支援がうまく機能するよう検討

2) 連邦職員と業者の保護(PROTECTING AND EMPOWERING FEDERAL WORKERS AND CONTRACTORS)

  • トランプ大統領命令13836、13837、および13839を取り消し、団体交渉力と労働者保護を回復
  • トランプ大統領は2020年10月に政策立案に関与する公務員を新しい"Schedule F" に移す大統領令を出したが、これを取り消す。
     
    この分類の職員には従来のような雇用保証が与えられなくなる。
     大量退職につながるとともに、
    政治任用を加速させるとして反対が強い。
  • 連邦職員の最低賃金を 1時間当たり $15 にするよう、Office of Personnel Management に勧告するよう命じた。

 別途、これらを含めた連邦職員保護の大統領令を出した。  

Executive Order on Protecting the Federal Workforce

 大統領のツイッター:

Federal employees have dedicated their careers to serving the American people -- and they are worthy of the utmost dignity and respect.
Today, I took action to improve the wages, benefits, and bargaining rights of federal workers and contractors.



本件に関し、大統領がスピーチを行った。

Remarks by President Biden on the American Rescue Plan and Signing of Executive Orders

また、ホワイトハウスのJen Psaki広報部長がNational Economic Council Director とともにブリーフィングを行なった。  

Press Briefing by Press Secretary Jen Psaki and National Economic Director Brian Deese

ーーー

なお、この日は48年前に米最高裁が画期的な Roe v. Wade 判決を下した日である。

「妊娠を継続するか否かに関する女性の決定はプライバシー権に含まれる」として、アメリカ合衆国憲法修正第14条が女性の堕胎の権利を保障していると初めて判示し、人工妊娠中絶を規制するアメリカ国内法の大部分を違憲無効とした。

Biden大統領と Harris副大統領は声明を発表、これを推し進めていくとしている。

Statement from President Biden and Vice President Harris on the 48th Anniversary of Roe v. Wade

中国外交部は1月21日、トランプ前政権のMichael R. Pompeo 国務長官ら28人に対して制裁を課す決定をしたとの声明を発表した。

過去数年間に米国の一部の政治家が中国の内政に深刻に干渉し、中国の利益に損害を与え、米中関係を破壊したと非難し、28人およびその家族に対し、中国大陸、香港、マカオへの入境を禁じるとともに、それらの関連企業・機関が中国側とビジネスをしたり、接触したりすることを制限した。

関連する企業も対象にしたことは、「これらの高官らが離任後に企業に雇用された場合、雇用した企業は中国市場での利益を失うという明確なシグナル」との見方がある。

1月21日の発表では、制裁を課すとされた28人のうち、10人のみ名前が明らかにされた。

Michel Pompeo 国務長官
Peter K. Navarro Director of the Office of Trade and Manufacturing Policy
Robert C. O'Brien 国家安全保障問題担当大統領補佐官
David R. Stilwell Assistant Secretary of State for the Bureau of East Asian and Pacific Affairs
Matthew Pottinger Deputy National Security Advisor
Alex M. Azar II 保健福祉長官
Keith J. Krach Under Secretary for Economic Growth, Energy, and the Environment
Kelly D. K. Craft
John R. Bolton   国際連合大使、国家安全保障問題担当大統領補佐官などを歴任
Stephen K. Bannon  最初の7ヶ月間 ホワイトハウスの首席戦略官

Pompeo 国務長官はトランプ大統領の退任の前日の1月19日、中国新疆ウイグル自治区のウイグル族や他の少数民族に対する同国政府の弾圧をジェノサイド(民族大量虐殺)と認定し、米中関係の緊張を一段と高めた。

外務部の華報道官は、制裁対象となった政治家について「これらの反中政治家は自身の行為に対して代償を支払わなければならない」と非難した一方、バイデン新政権に対しては「客観的かつ理性的に中国と米中関係を捉え、米中関係が健全かつ安定した発展の軌道に戻ることを期待する」と述べた。

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Biden米大統領は1月20日、就任から数時間後に多数の大統領令に次々と署名した。「パリ協定」への復帰など、トランプ前大統領の主要政策を覆すものも多く含まれている。

Ron Klain 次期大統領首席補佐官は1月16日、バイデン新大統領の ホワイトハウスのメンバー向けの "Overview of First Ten Days"メモを発表した。大統領就任後、直ちに多くの大統領令を出す。
2日目、3日目も、更に1月25日から2月1日までの間に、追加の指示を出すとしている。

2021/1/18 バイデン次期大統領の最初の10日間

1月21日にはCOVID-19関連(青字)を10件、発表した。

これに伴い、ホワイトハウスのJen Psaki広報部長が国立アレルギー・感染症研究所の所長Dr. Anthony Fauci とともにブリーフィングを行った。
  https://www.whitehouse.gov/briefing-room/press-briefings/2021/01/21/press-briefing-by-press-secretary-jen-psaki-january-21-2021/

1日目、2日目の大統領令は次の通り。

統一の訴え  National Day of Unity A National Day of Unity
トランプ政策の転換 パリ協定復帰(2020/11/4に離脱) Paris Climate Agreement
WHO残留(国連事務総長へのレター)
2020/7/6 の通知の取り消し

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Harris 副大統領のWHOのTedrosへの電話

Letter to His Excellency António Guterres


Readout of Vice President Harris's Call with World Health Organization Director-General Dr. Tedros Adhanom Ghebreyesus

イスラム、アフリカ等からの入国禁止命令取り消し Proclamation on Ending Discriminatory Bans on Entry to The United States
不法移民を匿っている「聖域都市に対する連邦補助金停止」の廃止等
2017/9/20 米地裁、聖域都市への補助金停止を差し止め 
Executive Order on the Revision of Civil Immigration Enforcement Policies and Priorities
問題対応のため過去の大統領令の廃止
COVID-19、経済復興、人種差別、温暖化等、米国が直面する問題に対応するため
Executive Order on Revocation of Certain Executive Orders Concerning Federal Regulation
メキシコの壁建設中止 Proclamation on the Termination Of Emergency With Respect To The Southern Border Of The United States And Redirection Of Funds Diverted To Border Wall Construction
リベリア難民について、米国からの強制出国の延期、2022年6月30日までの雇用許可 Reinstating Deferred Enforced Departure for Liberians
幼少時に親に連れられて米国へ不法入国した若者の強制送還を猶予する措置「DACA」

2020/6/19 米最高裁、トランプ政権によるDACA撤廃を認めず

Preserving and Fortifying Deferred Action for Childhood Arrivals (DACA)
差別解消 人種差別解消
Executive Order On Advancing Racial Equity and Support for Underserved Communities Through the Federal Government
性、性的指向による差別禁止 Executive Order on Preventing and Combating Discrimination on the Basis of Gender Identity or Sexual Orientation
コロナ対策 連邦職員等にマスク、距離
米国全体でマスク奨励
Safer Federal Woforce Task Force設置
Executive Order on Protecting the Federal Workforce and Requiring Mask-Wearing
White House の体制
US Leadership (WHOの強化)
Executive Order on Organizing and Mobilizing the US Government to Provide a Unified and Effective Response to Combat COVID-19 and to Provide United States Leadership on Global Health and Security
学生救済
国の奨学金の返済停止、金利を0%にする。
Pausing Federal Student Loan Payments
COVID-19下での旅行ルール Executive Order on Promoting COVID-19 Safety in Domestic and International Travel
新療法開発促進、対応能力増、よりよいHealthcare Executive Order on Improving and Expanding Access to Care and Treatments for COVID-19
科学に基づくCOVID-19対策  Executive Order on Ensuring a Data-Driven Response to COVID-19 and Future High-Consequence Public Health Threats
州への資金補助 Memorandum to Extend Federal Support to Governors' Use of the National Guard to Respond to COVID-19 and to Increase Reimbursement and Other Assistance Provided to States
対策資材のサプライチェーン Executive Order on a Sustainable Public Health Supply Chain
COVID-19 Health Equity Task Force Executive Order on Ensuring an Equitable Pandemic Response and Recovery
学校 Executive Order on Supporting the Reopening and Continuing Operation of Schools and Early Childhood Education Providers
労働者対策 Executive Order on Protecting Worker Health and Safety
国際協力
COVAXへの参加も
National Security Directive on United States Global Leadership to Strengthen the International COVID-19 Response and to Advance Global Health Security and Biological Preparedness
COVID-19 Pandemic Testing Board Executive Order on Establishing the COVID-19 Pandemic Testing Board and Ensuring a Sustainable Public Health Workforce for COVID-19 and Other Biological Threats
政府職員の倫理 倫理規定
Lobbyist からのGiftの禁止
Revolving Door、Golden Parachute (天下り)等の禁止
Executive Order on Ethics Commitments by Executive Branch Personnel
公衆衛生、環境等 諸問題を科学で対応
Keystone XL Pipeline認可取消も
Executive Order on Protecting Public Health and the Environment and Restoring Science to Tackle the Climate Crisis
下院の議席数の公正化 国勢調査 Executive Order on Ensuring a Lawful and Accurate Enumeration and Apportionment Pursuant to the Decennial Census

三井物産は1月21日、Vale S.A.と共同でモザンビーク共和国で開発しているモアティーズ炭鉱事業およびナカラ回廊鉄道・港湾インフラ事業の三井物産全持分、これに付随する融資をValeにそれぞれ1.0米ドルで譲渡する基本合意書を締結したと発表した。

三井物産は、2017年3月にValeより、モアティーズの95%権益を保有する同社子会社の15%持分、およびナカラを推進する同社子会社の50%持分を取得し、本事業の開発推進と操業改善に取り組んできた。

出資関係
  参加前 参加
Moatize炭鉱 Vale子会社 95% Vale(Vale子会社の85%) 80.75%
三井物産(Vale子会社の15%) 14.25%
モザンビーク鉱物資源公社 5% モザンビーク鉱物資源公社 5.00%
 
Logistics Nacala Corridor Vale子会社 70% Vale(Vale子会社の50%) 35%
三井物産(Vale子会社の50%) 35%
モザンビーク企業、鉄道港湾公社

30%

モザンビーク企業、鉄道港湾公社 30%


2016/10/7 三井物産のモザンビークの炭鉱と鉄道・港湾インフラの投融資額変更 


モアティーズ炭鉱は原料炭と一般炭を産出し、2019年の生産量は900万トンだった。

Valeは脱炭素の流れを受け石炭事業からの撤退を決めており、三井物産も歩調を合わせる。年内の譲渡を目指す。

Valeは当面操業を継続し、最終的には第三者への売却を検討する。

三井物産はこれまでに本事業での減損を計上しており、2020年9月末時点での投融資簿価は、炭鉱事業がゼロ、回廊鉄道・港湾インフラ事業が約5億ドルだった。

本事業の譲渡実行に伴い見込まれる損失は現在精査中だが、2021年3月期の通期連結業績予想では損失を考慮している。

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