トランプ米大統領は8月14日、不公正貿易での制裁も視野に、中国に対する通商法301条に基づく調査を開始するよう指示した。

https://www.whitehouse.gov/the-press-office/2017/08/14/presidential-memorandum-united-states-trade-representative


内容は次の通り。

中国は知財やイノベーションや技術に関連して、米国の技術と知財の中国企業への移管を求めたり、米国の利害に悪影響を与えるような、法律、政策、慣例、行動を実行している。
これらは、米国の輸出を妨げ、米国のイノベーションに正当な対価を払わず、米国の雇用を中国に移転し、その結果、対中貿易赤字を増やし、米国の製造業、サービス、イノベーションを弱体化させている。

このため、USTRに対し、1974年通商法301条(301~309条の総称)の section 302(b) に基づき、中国の法律、政策、慣行、行動が不当又は差別的で、米国の知財、イノベーション、技術発展に害を与えているかどうかの調査を行うよう命じる。

不当と判断すれば制裁措置の発動も検討する。

1974年通商法301条では、米国の通商に負担・制限を与えている外国の慣行等について,当該国と協議を行うことを義務付け,解決しない場合には,関税引上げなどの一方的措置を発動する権限を行政府に与えている。

署名に先立ってトランプ大統領は「 外国による知的財産の盗難は、年間で数百万人の雇用喪失と数十億ドルの損失をもたらしている。不公正な行為からアメリカの労働者や技術、産業界を守るのは私の義務であり、責任だ」と述べ、不公正な貿易慣行の是正を求めていく姿勢を強調した。

直接言及はしなかったが、北朝鮮が核やミサイルの開発を進める中、中国から協力を引き出すため、圧力を強める狙いもあるものと見られている。

USTRのLighthizer 代表は今回の大統領令を受け、USTRが最優先課題の一つとして調査の検討に取り組む方針を示した。


これについて野党・民主党の上院院内総務は8月14日、声明を発表し「トランプ大統領の行動パターンが続いている。中国に対する発言は厳しいが、行動は弱々しい」と述べ、通商問題で大統領令の署名を連発しているものの、具体的な対応が伴っていないと批判した。

トランプ大統領は4月20日、大量の鉄鋼輸入が米国の安全保障を脅かしている懸念があるとして、米通商拡大法に基づいた鉄鋼輸入の実態調査を米商務省に指示した。

更に4月27日に、アルミニウムについての調査を指示する大統領令を出した。

鉄鋼については、トランプ大統領が関税引き上げと輸入割り当てを同時に課す考えを表明したが、米産業界で賛否が分かれて おり、決まっていない。
(輸入鋼材の攻勢を受ける鉄鋼業界は早期の関税引き上げなどを要求しているが、石油業界はパイプラインの価格の上昇につながりかねない制裁措置には反対、自動車産業も反対している。 )

2017/4/22 Trump大統領、鉄鋼輸入規制に向け、実態調査を指示


中国外交部の報道官は8月14日の定例記者会見で「中米の利益の相互融合が日増しに深まり、互いに切り離せない緊密な構造がすでに形成されている中、貿易戦争に前途はなく、勝者なくして共に負けるのみだ」と述べた。

「中米の経済・貿易関係の本質は互恵・ウィンウィンだ。双方は中米包括経済対話を通じて、双方の経済・貿易関係に生じる問題への対処について重要な共通認識にいたった。双方が相互尊重、平等及び互恵の精神に基づき、互いの懸念を対話によって解決し、中米の経済・貿易関係の持続的で健全な安定した発展を維持することを希望する」と述べた。

また「中国側は知的財産権の保護を一貫して非常に重視している。近年中国は関連法規を制定・整備し、知的財産権の侵害という違法犯罪行為への取り締まりを強化し、社会全体の知的財産権保護意識の強化を重視し、誰の目にも明らかな成果を得た」と述べた。

さらに「WTO加盟国による貿易措置は、すべてWTOルールを順守する必要がある」と米国の動きにクギを刺した。

WTOは一方的な制裁措置を認めていない。米の通商法301条は、何が不公正であるかの判断を米国が一方的に認定し,対抗処置を講じられるという意味で、 WTOルールに抵触する可能性が極めて高い。

米国が実際に制裁に乗り出せば、中国が対抗措置に動くなど、世界経済に大きな混乱をもたらす恐れもある。

米政府高官も「調査結果を得るまで1年近くかかる可能性もある」と述べるなど中国の出方を見極めつつ、全面対決は回避したいとの思いがにじむ。




中国の商務部と税関総署は8月14日、北朝鮮からの石炭、鉄、鉄鉱石、鉛、鉛鉱石、海産物などの輸入を15日から全面的に禁止すると発表した。

国連安全保障理事会が8月5日に採択した北朝鮮に対する新たな制裁決議 (2371) に基づく措置。

国連の安全保障理事会は、北朝鮮がICBMだとする発射実験を2回行ったことをめぐり、北朝鮮の主な収入源になっている石炭などの輸出を一切禁止するとする制裁決議を中国、ロシアを含む全会一致で採択した。

安保理制裁に基づく禁輸が加盟国によって着実に実行されれば、北朝鮮の年間輸出収入の約3分の1にあたる10億ドルが削減できる見込み。

商務部公告40号によると、詳細は次の通り。

8月15日以降、下記の対象品目の輸入は全面的に禁止する。
これ以前に入港したものについても、9月5日以降は申請を受け付けたものについても輸入手続きを中止する。

例外として、北朝鮮の羅津港からの石炭で、輸出国が信頼できる情報によって北朝鮮産以外のものと証明するものの再輸出品は除く。(但し、輸出国は国連が設置する委員会に通知する必要がある。) ロシア品を想定している。

禁止対象製品は次の通り。

製品 詳細 関税番号
石炭 石炭 2701
亜炭 2702
鉄鉱石 2601-111、112、119、120、200
7201-10001、10009、20000、50001、50009
鉛、鉛鉱 鉛鉱 2607
鉛製品 第78章全て
海産品 魚類 第3章全て
エキス及びジュース 1603
調整・保存処理した魚、イクラ 1604
同上甲殻類 1605

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国連安全保障理事会は2016年11月30日、北朝鮮による核実験等に関する決議第2321号を全会一致で採択した。

中国商務部は2016年12月23日の公告81号で、国連決議2321に基づき、次の措置を取ると明らかにした。

1) 北朝鮮からの石炭の輸入の制限

2017年1月1日以降、毎年、各国全体の北朝鮮からの輸入を4億ドル、または750万トンのいずれか少ない方に制限する。

2) 北朝鮮からの銅、ニッケル、銀、亜鉛の輸入禁止

3) 北朝鮮からの彫刻像の輸入禁止

4) 北朝鮮へのヘリコプター、船舶の輸出禁止

石炭については、実際に北朝鮮から輸入しているのは中国のみとされる。

中国商務省は2017年2月18日、公告12号で、国連決議2321に基づき、北朝鮮からの石炭輸入を2月19日から12月31日まで全面的に停止すると発表した。

中国の1月の北朝鮮からの石炭輸入額は1億2194万ドル、輸入量は145万トンで、1月末時点では上限まで相当な余裕があることが判明している。

2017/2/28 中国、北朝鮮からの石炭輸入を全面停止


石炭は2月19日から禁輸したものの、今年上半期の中朝貿易の輸出入の総額は、昨年の同じ時期と比べて10.5%増えていた。


水俣条約が2017年8月16日に発効した。

2017/5/19  水俣条約、8月に発効 

2013/10/15 「水俣条約」採択

METIの「通商白書」、JETROの 「世界貿易投資報告」が相次いで発表された。

2017/6/17 平成 29 年版 通商白書

2017/7/31 ジェトロ世界貿易投資報告」2017年版 ‐転換期を迎えるグローバル経済

それによると、日本の貿易全体に占めるFTA・EPA締結国との貿易の割合(FTAカバー率)は主要各国と比べると、非常に低いことが分かる。


以下では、2017年3月末(METI)or 2017年6月末(JETRO))時点でFTAが発効している国との2016年の貿易額、率をとった。

 
貿易額
(億ドル)

FTA発効

TPP

EU
韓国 中国 米国 NAFTA EU TPP11 米国
日本 12,371 22.5% 22.5% 1.8% 15.8% 11.9%
韓国 9,019 23.4% 12.2% 10.9% 21.3% 67.8%
中国 37,261 6.8% 31.9% 38.7%
EU 38,308 2.5% 28.6% 31.1%
米国 36,429 3.1%

29.3 6.7% 39.1%

8.4%

メキシコ 7,859 66.0 79.7%
カナダ 8,166 67.1 70.5%
チリ 1,159 93.1%

中国とEUのFTA化率(計)は両者で数字が異なっており、通商白書を採った。

日本の場合、FTAカバー率は22.5%に過ぎない。
米国込みのTPPが発効すれば、EUを加えて52%になるところであったが、米国離脱により、米国を除くTPP締結国(TPP 11)とFTA締結が間近とされるEUを加えても36.2%である。
政府目標の「2018年に7割」には遠い。米国 and/or 中国との締結が必要であるが、問題が多い。

それに対し、韓国はFTAカバー率が67.8%もある。

韓国は、日本が締結していない中国、米国、カナダ、EU、EFTA、トルコ、ニュージーランド、コロンビア、中南米6カ国とFTAを締結しており、更にインド、オーストラリア等とも締結し、欧州―東アジア―米国をつなぐ「東アジアのFTAハブ」と称している。(後記)

中国やEUも30%を超えている。

米国、カナダ、メキシコはNAFTAを締結しており、特にメキシコとカナダはNAFTAでの貿易(ほとんどが対米)が大きな比率を占める。
NAFTA再交渉は8月16日に始まる。

首位のチリは93.1%で、中国、韓国、米国、カナダ、EUなどFTAを結 んでいる。

ーーー

日本と韓国のFTAの状況は下記の通り。年月日は発効日。
TPP 参加国-2016/2/4 署名日本を含め12カ国
韓国先行
日本 韓国
アジア
個別 ASEAN 個別 対ASEAN
ASEAN マレーシア 2006/7 2009/2/1 2007/6/1
シンガポール 2002/11 2008/12/1 2006/3/2 2007/6/1
ベトナム 2009/10 2008/12/1 2015/12/20 2007/6/29
ミャンマー 2008/12/1 2007/11/27
インドネシア 2008/7 (未発効) 2007/12/7
フィリピン 2008/12 2010/7/1 2008/1/1
ブルネイ 2008/7 2009/1/1  2008/7/1
ラオス 2008/12/1 2008/10/1
カンボジア 2009/12/1 2008/11/1
タイ 2007/11 2009/6/1 2010/1/1
モンゴル 2016/6
インド 2011/8 2010/1/1
中国 2015/12/20
北米 米国 2012/3/15
カナダ (交渉中) 2015/1/1
メキシコ 2005/4
欧州 EFTA
スイス、リヒテンシュタイン、
ノルウェー、アイスランド、
2006/9/1
スイス 2009/9  EFTAとしては発効済
EU 28カ国 (交渉中) 2011/7/1
トルコ 基本&物品貿易 (交渉中) 2013/5/1
サービス&投資 2015/2/26 (署名)
オセアニア オーストラリア 2015/1 2014/12/12
ニュージーランド 2015/12/20
中南米 チリ 2007/9  2004/4/1
ペルー 2012/3  2011/8/1
コロンビア (交渉中) 2016/7/15
中米6カ国
グアテマラ、ニカラグア、エルサルバドル、ホンジュラス、コスタリカ、パナマ
2016/11/16 (妥結)
Mercosur (予備交渉)

 



日産自動車は8月8日、日産が保有するバッテリー事業およびバッテリー生産工場を中国の投資会社GSR Capitalに譲渡する契約を締結したと発表した。

売却対象のオートモーティブエナジーサプライ(AESC)に共同出資するNECも、自社及び子会社のNECエナジーデバイスが所有する AESC 株式を日産に売却したこと、及びNECエナジーデバイスをGSR Capital に譲渡する交渉を行っていることを発表した。
NECエナジーデバイスはバッテリーおよび電極の開発・製造を行っており、AESCに電極を供給している。

GSR Capital (金沙江創業投資基金)は、北京、香港およびシリコンバレーに拠点を持つ中国の投資ファンドで 、電気自動車、新エネルギー、現代農業、医療および無線技術などの高成長分野への投資に焦点を置いている。近年、超小型EVメーカーやリチウムイオン電池メーカーに相次いで投資を行っている

サッカーのイタリア1部のACミランは本年4月にRossoneri Sport Investment Lux に売却されたが、このオーナーはGSR Capital の会長のSonny Wu(伍伸俊)である。

日産の譲渡契約の対象となるバッテリー事業には、AESCの全株式(NECから譲渡を受けたものを含む)、北米日産会社が保有するバッテリー生産事業、英国日産自動車が保有するバッテリー生産事業、及び日産のバッテリー事業に関連する追浜、厚木、座間の開発・生産技術部門の一部が含まれる。


日産では、「AESCは、GSR Capital の幅広いネットワークや積極的な投資を活用し、新たな顧客の獲得により、その競争力の向上が可能となる。これは日産にとってはEVの競争力の更なる強化にもつなが る」としている。AESCを引き続き同社の重要なパートナーとし、日産は市場をリードするEVの開発及び生産に専念するとしている。

GSR CapitalのSonny Wu 会長は、「AESCの取得は、新エネルギー自動車産業に関わる当社にとって重要な一歩とな る。R&Dへのさらなる投資を行い、米国、英国および日本で既存生産能力を拡大していく。また、中国および欧州に新たな工場を建設し、世界中により良い製品を提供してい く」と述べた。

NECでは、スマートエネルギー分野では蓄電システムの構築・運用・保守を行うサービス事業へのシフトを進めており、総合的に検討した結果、このたびの契約締結に至ったとしている。

ーーー

オートモーティブエナジーサプライ(AESC)は2007年4月に、日産自動車、NEC、NECトーキンの合弁により、自動車用高性能リチウムイオン電池の開発、マーケティングを事業内容として設立された。

2008年に自動車用高性能リチウムイオン電池の開発、生産、販売を行う会社へ移行、2010年にHEV用、EV用のバッテリーの本格的な量産を開始した。

2010年4月にNECエナジーデバイスが設立され、NECトーキンの「大容量ラミネートリチウムイオン二次電池」事業を承継した。
AESCの株主も、NECトーキンからNECエナジーデバイスに代わった。


Renault と
日産自動車は当初、AESCの技術をベースにした 電気自動車用電池工場を、2012年半ばまでにRenault のフラン工場に建設する計画を発表していた。

しかし、この計画は延期された。

2012年時点では、ルノーのEVの電池については、小型商用車「Kangoo Z.E.」とセダン「Fluence Z.E.」向けはAESCが、2人乗りの超小型車「Twizy」向けはLG Chemが供給していた。

電気自動車の分野での戦略的提携をしている Renault とフランス原子力庁は2012年7月、電気自動車用次世代電池の量産開発でLG Chemと提携すると発表した。

LG Chemは、EV用次世代電池の工場をフランス国内に建設し、2015年末からEV用電池の現行品の量産を開始する。
ルノーが2012年末発売予定の小型 EV「ZOE」も、LG Chemの電池を採用する。

AESCの生産能力が限られているため、日産自動車は自ら出資するAESCの電池を優先して使い、RenaultはLG Chemの電池を採用することになったとされた。

Renault は2014年5月21日、Renault とLG Chemが次世代のゼロエミッションの自動車用のバッテリーを共同開発する契約に調印したと発表した。

2014/5/28 ルノー、韓国LG Chem と将来の電気自動車のバッテリーを共同開発、GMはバッテリーをLGに統一


車載リチウムイオン電池の世界シェアは次の通り。(2017/8/3 日本経済新聞)

パナソニックは2017年1月4日、Tesla が米ネバダ州に建設した「Gigafactory」で円筒形リチウムイオン電池セルの量産を開始すると発表した。

Gigafactory内に設置されたパナソニックの電池セル工場で 新型EV(電気自動車)「モデル 3」およびTeslaの住宅用蓄電池「PowerWall」、産業用蓄電池「PowerPack」向けに、「2170」サイズの円筒形電池セルを生産する。

2017/1/11 Tesla Motors とパナソニック、「Gigafactory」でバッテリーの生産開始


東芝は8月10日、PwC あらた監査法人から2017年3月期の有価証券報告書について監査法人から「限定付き適正」の監査意見を受領し、有価証券報告書を関東財務局に提出した。


上場継続の3条件の1つを辛うじて達成した。

債務超過の解消

有価証券報告書での適正意見

特定注意市場銘柄指定解除 東証が今秋をメドに判断

2017/8/2  東芝、東証2部降格   

PwCあらた監査法人は昨年度の決算はおおむね妥当だとする「限定付適正意見」を出した。

東芝の決算をめぐっては、監査法人が、アメリカの原子力事業による巨額の損失をもっと早く認識できなかったか、過去の決算も調べる必要があるとして承認せず、発表が延期されてきた。

東芝は2016年12月に、2015年末の
Stone & Webster 買収で数十億ドル規模の「のれん」計上の可能性が生じたことを明らかにしたが、PwCあらたとWestinghouse を監査する米国のPwCは、巨額損失が突如分かったのは不自然だとし、2016年3月以前に損失を認識できたのではとみており、2016年3月期決算(前任の新日本監査法人が適正意見を出している)でその一部を計上しておくべきだと主張している。

今回、PwCあらたは、この主張は取り下げない一方で、現在の財務状況などは適正 であると認め、決算の内容はおおむね妥当だとする「限定付適正意見」を出した。

PwCあらたは2016年4-12月期決算について、「意見不表明」としており、今回もその案があったが、金融庁や公認会計士協会などが、「責任放棄にあたる」とけん制したと報じられている。

決算そのものについて、「不適正」や「意見不表明」となった場合、東証が審査中の解除判断に影響を及ぼし、上場が廃止されかねないとみられていた。


但し、PwCあらたは、東芝社内のチェック体制を示す「内部統制」については、巨額の損失を見過ごすなど問題があるとして、「不適正」とする意見 をつけた。

これについて、東証の審査に影響を与えるのではとの懸念があるが、東芝では、「内部統制に不備があったのはWestinghouseの会計で、損失の計上時期についての一点のみであり、Westinghouseが連結からはずれたことで不備が指摘されたところもなくなった。内部体制を強化しており、不備はないと考えている」としている。

今回の結果を受け、東証は特注銘柄から外すかの判断を出す見通し。


問題は
の債務超過の解消で、東芝メモリの2018年3月末までの売却完了の目途は立っていない。
売却が決まっても、当初予定からどんどん遅れているため、3月末までに各国の独禁法当局の承認を全て得るのは難しくなりつつある。

増資については、特設注意市場銘柄のため公募増資は事実上困難で、第三者割当増資の引き受け手の確保が必要となる。

ーーー

確定した2017年3月期及び2017/4-6月期決算と、現時点での2018年3月期決算予想の概要は次の通り。(億円)

  16/3 17/3 増減 6/23発表
見通し
増減 17/1Q 18/3
売上高 51,548 48,708 -2,840 48,708 0 11,436 49,700
営業損益 -4,830 2,708 7,538 2,708 0 967 4,300
(うち東芝メモリ) (1,100) (1,866) (766) (903) (3,712)
(東芝メモリ以外) (-5,930) (842) (6,772) (64) (588)
非継続事業純損益 -1,298 -12,801 -14,099 -13,065 264
純損益 -4,600 -9,657 -5,057 -9,952 295 503 2,300
株主資本 3,289 -5,529 -8,818 -5,816 287 -5,043 -4,100


東芝メモリ分はストレージ&デバイスソリューションのうち、HDD、デバイスほかを除いた 「メモリ」をとった。
米国原子力事業は、2016/3は継続事業で営業損益に含まれる。2017/3は非継続事業。

東芝が6月23日に監査意見無しで「見通し」として発表したものとほぼ同じで、米電力会社との合意で親会社保証額がほぼ確定した分が差の大部分である。  

親会社保証引当金
確定額 Vogtle 3、4号機 3,680百万ドル 4,129億円
V.C. Summer 2、3号機 2,168百万ドル 2,432億円
その他 316億円
合計 6,877億円
引当額 (2017/6/23 業績見通し) 7,162億円
引当金 減額 益 285億円

2017年3月末時点での株主資本は5,529億円の赤字となった。

2018年3月末までに赤字を解消できなければ、上場廃止となる。

上表の2018年3月期予想(4,100億円の赤)には、東芝メモリの売却益は含んでいない。2兆円とされる売却が実現すれば、赤字は解消する。

なお、2018年3月期予想の営業損益の4,300億円のうち、東芝メモリ以外は588億円しかなく、東芝メモリ売却で上場廃止は免れるが、その後の経営は苦しい。

さらに、追加の損失発生のリスクがある。

東芝はFreeport LNGとの間で年間220万トンのLNGの購入契約を結んでおり、これはTake or Pay の契約であり、市況が下がっても契約価格での引取り、または固定費の支払いが必要である。

計画 立地 生産開始 日本企業 契約数量
Freeport LNG テキサス州 2018 大阪ガス 
中部電力
220万トン
220万トン
2019 東芝    220万トン

東芝では、「LNGの供給事業がリスクだ。全く売れない場合に1兆円を見積もっているが、販売先で決まっているところはある。契約に向けて営業活動をすすめている」と述べている。

ーーー

Westinghouseに関しては電力会社に対する親会社保証問題は完了したが、これで負担問題が全て無くなった訳ではない。

それぞれの電力会社は総括原価方式により追加コストを電気料金に転嫁しており、消費者が東芝を訴える恐れもある。

Southern電力は米政府の債務保証で銀行から融資を受けており、これが影響する恐れもある。

ーーー

東芝は2016年3月の東芝メディカルシステムズのキヤノンへの売却の場合は、独禁法審査を後回しにして、先に売却し、売却益を計上するという奇手を使った。

2016/3/18 キヤノン、東芝メディカル買収を発表、独禁法対策で奇手

これに対し、欧州委員会はキヤノンに対し、承認前に買収をした疑いで異議告知書を送付した。今後の検討で問題だと認定した場合、罰金支払を命じるが、罰金は世界全体でのキヤノンの年間売上高の最大10% (3,400億円)にもなる。

2017/7/7 EU、キヤノンの東芝メディカル買収で異議告知書

どこも取り上げていないが、キヤノンは承認をえてから売却すれば問題ないのに、わざわざこんなリスクのある取引をしたのは、明らかに東芝の要請によるものであり、リスク回避の条項を契約に織り込んでいると思われる。


経済産業省及び財務省は、2016年9月30日以降、中国原産の輸入高重合度ポリエチレンテレフタレート(PET)に対するダンピング調査を行ってきたが、ダンピングの事実及び日本産業に与える実質的な損害等の事実を推定するに至ったとして、8月4日付でダンピングの仮決定を行った。

ダンピング課税の発動要件は以下の通り。
  1) ダンピング輸入の事実
  2) 国内産業の損害の事実
  3) 両者の因果関係
  4) 国内産業を保護するために必要であること

2016年9月6日に三井化学、三菱化学、日本ユニペット及び越前ポリマーからの申請を受け、両省合同の調査を実施した。

今後、引き続き調査を行い、ダンピング関税の課税の可否を政府として判断することとなる。

現在の関税率はゼロで、ダンピングが確定した場合、WTOのルールで最大54%までとすることができる。

PETの状況は次の通り。

2013年度 2014年度 2015年度 2013/2015
総輸入量 577,182 625,364 660,430 +114%
うち 中国 254,034 299,577 364,258 +143%
中国の比率 44.0% 47.9% 55.2%

ーーー

これまでの調査対象とその状況は下記の通りで、現時点で、電解二酸化マンガン、TDI、水酸化カリウムが課税中で、炭素鋼製突合せ溶接式継手が調査中である。

日本政府は2016年に関税定率法の政令改正を決めた。反ダンピング課税の申請が出来るのは、一定条件を満たす生産者とその団体であるが、団体についての要件を変更する。

この改正により、団体による申請がし易くなる。

2016/4/8 日本政府、反ダンピング課税申請要件を緩和 



品名 調査開始 相手 決定 課税率 課税期間 現状
(アンチダンピング)
ポリエステル短繊維 2001/4/23 韓国 2002/7/26 クロ確定 1社6%、4社0%、他 13.5%

2002/7/26/~2012/6/28

課税終了
台湾 10.3%
カットシート紙 2012/6/29 インドネシア 2013/6/26 課税なし  -
電解二酸化マンガン 2007/4/27 スペイン 2008/9/1 クロ確定


2014/2/21 延長確定
(除 豪州)

14.0% 2008/9/1~2019/3/4 課税中
中国 1社 34.3%、他 46.5%
南アフリカ 14.5%
豪州

29.3%

2008/9/1~2013/8/31 課税終了
TDI 2014/2/14 中国 2015/4/14 クロ確定

69.4%

2015/4/25/~2020/4/24

課税中
 2014/12/9 日本、中国原産の輸入TDI にダンピングの仮決定
水酸化カリウム 2015/5/26 韓国 2016/8/2 クロ確定 49.5%

2016/8/9/~2021/8/8

課税中
中国 73.7%
ポリエチレンテレフタレート 2016/ 9/30 中国 2017/8/4 クロ仮決定 仮決定
炭素鋼製突合せ溶接式継手 2017/3/31 韓国 調査中
中国
・・
(相殺関税)
ハイニックス社製DRAM 2004/8/4 韓国 2006/1/27 クロ確定 ~2008/8/31 27.2%

2006/1/27/~2009/4/22

課税終了
~2009/4/22  9.1%

 


カナダのアルバータ州でプロパン脱水素、PP生産の大型石油化学計画が進んでいる。

カナダの大手石油製品パイプライン会社 Pembina Pipeline Corporation とクウェート国営石油(KPC)子会社のPIC (Petrochemical Industries Company)が本年5月にJV契約を締結し、50/50 出資の Canada Kuwait Petrochemical Corporation を設立した。
既に技術の選定も終えており、2018年末までに基本設計を終え、最終的に投資を決める予定。

Pembina Pipeline Corporation はCalgaryベースの石油製品の輸送・貯蔵・販売会社で、石油製品のパイプタインおよびオイルサンド・パイプラインを運営するほか、石油の 貯蔵や天然ガスの収集加工も手掛ける。2017年に同業のVeresen Inc.を買収した。

Pembinaは
Redwater Fractionation Complex で第3精留装置を建設中で、これが完成すると、精留能力は日量20万バレルとなる。


両社は2016年4月にAlberta 州でのプロパン脱水素、PP生産事業の共同FS契約を締結し、検討を続けてきた。

過去10年、同州で生産されるプロパンの約85%が北米各地に輸出されてきた。これを利用して地方を活性化しようというもので、日量35,000バレルのプロパンを使い、年産80万トンのPPを生産しようというものであった。

本年5月のJV契約では、能力が若干縮小されている。

原料プロパン 日量22,000バレル(Pembinaの Redwater Fractionation Complex その他から)
製品PP 年産550千トン
立地 Alberta州Sturgeon CountyにあるPembina社のRedwater Fractionation Complex 
投資総額 $3.8 - $4.2 billion  

 
   

    

   


東京大学発ベンチャーのペプチドリームは8月7日、塩野義製薬、積水化学と共同出資会社を設立すると発表した。

共同出資会社の社名はペプチスター(PeptiStar Inc.)で、「ペプチド医薬品」と呼ばれる次世代医薬品の原薬の合成・製法の研究開発、製造及び販売を実施する。

現在、特殊ペプチド医薬品の研究開発が国内外の製薬企業において進められているが、高品質な特殊ペプチド原薬を低コストで安定供給できるCMO(医薬品製造受託機関)は世界的に見ても存在していない。 また、これまで広く使われてきたペプチド合成法の生産性は極めて低くその改善が求められている。


ペプチドリーム、塩野義製薬、積水化学の3社は6月1日に、3社を中心に特殊ペプチド原薬の研究開発、製造及び販売を行う新会社を設立することについて、検討を開始したと発表した。

ペプチドリームが保有する特殊ペプチド医薬品の周辺知財及び周辺技術をもとに、オールジャパン体制の構築とさまざまな最先端技術の集約による高品質特殊ペプチド原薬の低コスト且つ安定供給体制の確立について検討を行っており 、3社のほか、大塚化学、キシダ化学、島津製作所、長瀬産業、中村超硬、日産化学工業、浜理薬品工業、マイクロ波化学、渡辺化学工業等が検討に加わっている。

今回、9月1日付で 3社均等出資の資本金1.5億円で設立し、本社と製造工場を摂津市の塩野義製薬の工場内に設置する。
その後、他社も含めて順次増資し、各社20%未満での出資比率に調整する。

早ければ2019年7~9月ごろの工場稼働を予定する。

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一般的な医薬品は、その多くが分子量500以下の低分子医薬品と呼ばれている。

この対極にあるのが、抗体医薬品などの生物学的製剤で、分子量150,000程度にも及ぶ。これらは、低分子医薬品では制御できない分子標的に作用し薬理機能を発揮できるメリットがある一方で、遺伝子組み換えが必要で、生産管理に手間がかかり、製造コストも高い。

ペプチドは、分子量では低分子医薬品と生物学的製剤の中間で、「中分子医薬品」と呼ばれる。低分子医薬品では標的とすることができないような分子についても薬理作用を発揮することができることに加え、生物学的製剤と異なり、完全に化学合成で製造可能であるという特長 を有している。


 図は http://www.jitsubo.com/jp/business/peptide.html


ペプチド
は、決まった順番で様々なアミノ酸がつながってできた分子の系統群である。

特殊ペプチドは、一般的なペプチドが6~50 アミノ酸残基からなるのに対して、天然の 20種類のアミノ酸のみならず、各種特殊(非天然型)アミノ酸(L-アミノ酸誘導体、D-アミノ酸、N-メチル化アミノ酸、β-アミノ酸等)を組み込んだ6~20 アミノ酸残基からなるペプチドのこと。

特殊ペプチド治療薬は、様々な治療用途に適用可能で、特に、低分子化合物では見出すのが困難だったタンパク質-タンパク質相互作用を阻害する治療薬や、特定の生体内情報伝達経路を活性化するアゴニスト(活性化治療薬)を見出すことが可能で ある。


特殊ペプチド治療薬は細胞外ターゲットに対して有効なアプローチであり、極めて高い薬理活性及び選択性を達成するだけでなく、比較的高い安全性及び忍容性を付与でき、多くの異なる投与経路を選択することが可能。

さらに特殊ペプチド治療薬は、現在使用されている抗体医薬品を中心とする生物学的治療薬に対して、薬品の品質管理や製造コストの面で極めて高い優位性を持ってい る。

しかし現在、特殊ペプチド医薬の市場を形成するのに不可欠な特殊ペプチド原薬の製造供給体制は世界的にも存在していない。

国内に存在する各種最先端技術を戦略的に集約することで特殊ペプチドの原薬製造体制を確立し、世界初・世界最先端の特殊ペプチド原薬 CMO を設立する。

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ペプチドリームは、東京大学の菅裕明教授が開発した特殊ペプチドを事業化すべく、2006年7月に設立された。

独自の創薬開発プラットフォームシステム:PDPS (Peptide Discovery Platform System) により、多様性が極めて高い特殊環状ペプチドを多数(数兆種類)合成し高速で評価を可能にすることで、創薬において重要なヒット化合物の創製やリード化合物の選択等が簡便に行えるようになる。

ペプチドリームは米Bristol-Myers Squibb や英GlaxoSmithKline、スイスのNovartis、田辺三菱製薬や第一三共 ななど製薬世界大手とも創薬研究の契約を締結している。


塩野義製薬は、2016 年2月にペプチドリームと特殊環状ペプチドの創製を目的とした共同研究開発契約を締結した。

同社は2017年6月 に、ペプチドリームのPDPS (Peptide Discovery Platform System) の使用について、日本企業としては初めて、非独占的ライセンス契約を締結した 。ペプチド化合物を起点とし、同社の従来からの強みである低分子創薬力との融合を図ることで、創薬の生産性を画期的に向上させる。

塩野義は、食道癌や膀胱癌の癌ワクチンの開発を行っている。塩野義のワクチンはがん細胞に発生する「ペプチド」を人工的に合成したもので、 患者に投与されたペプチドを樹状細胞が捕捉し、T細胞に抗原を提示する。T細胞は体内を循環し、同様のペプチドを持つがん細胞を見つけて攻撃する仕組み。

2009年にオンコセラピー・サイエンスとがんペプチドワクチンに関するライセンス契約 を結んでいる。

2017年6月に、従来のがん治療薬より効果が高いとされる「がんワクチン」に使う原薬の量産技術を開発した。ペプチドの分子構造を変え、量産しやすいようにした。


積水化学は、 ライフサイエンス分野を戦略分野に位置付けるとともに、グループ外との技術等の融合を図ることで関連事業の強化を目指している。

具体的には、子会社の積水メディカルにおいて検査薬・検査機器を中心とした検査事業、医薬品開発の研究開発支援等の創薬支援事業、医薬品原薬の受託製造等の医薬事業を展開しており、今般のペプチド医薬の受託製造分野への参入は、ライフサイエ ンス分野の強化領域(融合強化)拡大に寄与するものと期待している。

8月9日 同社は構造改革計画を発表した。

2017/8/4 「ジャパンディスプレイ、1千億円融資要請」に内容を付記しました。




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