2017年3月期よりIFRS方式に変更した。

損益は前期を大幅に上回った。

法人税については、米国の連邦法人税率の引き下げで繰延税金負債の取り崩しによる減少があった。

田辺三菱製薬や大陽日酸のような高収益子会社の持ち株比率が50%台に止まるため、少数株主帰属損益が大きい。

年間で12円の増配とした。

営業損益のうち、コアに含まれない非経常的損益は下記の通り。(億円)

2016/3 2017/3 2018/3
減損損失 -136 -150 -97
固定資産売却損益 21 -20 -19
関係会社株式売却 3 -10 37
過去勤務費用 -8 -50
子会社統合費用 -10 -38
特別退職金 -155 -25 -24
環境対策費 -68 -10
その他 -50 -98 -47
合計 -317 -389 -248

 
営業損益は下記の通り。2016/3からはコア営業利益で、これまで営業外損益扱いで除外されていた持分法損益等を含む。

2017年4月に三菱化学、三菱樹脂、三菱レイヨンを統合し、三菱ケミカルにしたのに伴い、2018年3月期のセグメントを変更した。

MMA部門の営業利益の伸びが大きい。特にモノマーの市況が上昇した。MMAのコア営業利益は1096億円となり、前年を717億円上回り、 これは全社の増益額とほぼ同じである。

MMA部門の営業利益が大き過ぎ、将来、状況が変われば、影響は大きい。
1990年の三菱油化のスチレンモノマーの利益は200億円とも300億円とも言われた。翌年にはバブルがはじけ、これがほぼゼロとなり、同社の損益悪化が三菱化成との統合に至った。

旧三菱レイヨンのMMA部門と、田辺三菱製薬、大陽日酸のコア営業利益を加えると2,481億円となり、全体の65%を占める。

IFRS コア営業損益対比(億円)    
  2017/3 2018/3 前年比 増減内訳 2019/3
予想
売買差 数量差 コスト
削減
機能部材 623 580 -43 -141 133 99 -93 625
機能化学 319 360 41 325
MMA 379 1,096 717 646 100 50 57 910
石化 209 259 50 230
炭素 38 124 86 165
産業ガス 521 575 54 -9 45 16 2 615
ヘルスケア 984 812 -172 -2 40 25 -235 730
その他 2 -1 -3 0 -8 2 3 -50
合計 3,075 3,805 730 494 310 192 -266 3,550

     その他差には、受払差・持分法投資損益差等の金額が含まれる。


田辺三菱製薬の実績は以下の通り。
2017年度よりIFRSを適用。(三菱ケミカルHDの出資比率は56.3%)

単位:億円 (配当:円)
売上高 営業損益 コア営業利益 税引前損益 株主帰属損益   配当
中間 期末
2016/3 4,258 818 1,070 833 593 22 24
2017/3 4,240 941 945 961 713 24 28
2018/3 4,339 773 785 788 580 38 28
前年比 99 -168 -160 -173 -133 14 0
2019/3 4,350 670 700 675 470 28 28

コア営業利益は、後期開発へのステージアップやNeuroDerm社の買収などによる研究開発費の増加により減益となった。

2017/7/27 田辺三菱製薬、イスラエルの医薬品企業 NeuroDermを買収


2014年下期から連結対象とした大陽日酸の業績は下記の通り。 
2017年3月期よりIFRSを適用(2016/3もこれに組換え)。(三菱ケミカルHDの出資比率は50.7%) 

単位:億円 (配当:円)

売上高 営業損益 コア営業利益 税引前損益 株主帰属損益   配当
中間 期末
2016/3 5,944 489 475 466 290 7 9
2017/3 5,816 537 547 502 347 9 11
2018/3 6,462 599 600 559 489 11 12
前年比 646 62 53 57 142 2 1
2019/3 6,700 645 640 600 400 12 12

 

2018年3月期決算がほぼまとまった。

各社の決算状況は http://www.knak.jp/kessan/ 

決算でIFRS方式を採用する企業が増えている。

下のグラフでは、斜線で示した、三菱ケミカル、日立化成、住友化学(2017/3~)、JSR(2017/3~)、住友ベークライト(2017/3~)で、これらについては、営業損益はコア営業損益、経常損益は税引前損益を表示している。当期損益は他社と同じ株主帰属損益を表示しているが、損益概念に相違点がある。

なお、上記のうち、JSRはコア損益を表示していない。(「その他の営業収益・費用」は少なく、非経常的な損益がないためと思われる)

営業損益には、下記の通り、従来の営業外損益(金融費用・損益を除く)や特別損益を含むため、それ以前との対比はできない。

このため各社が独自の判断で、新しい営業損益から非経常的な損益を除外したものをコア営業損益として発表している。

コア営業損益は従来の営業損益に近いが、持分法損益やその他の営業外損益等を含んでいる。

経理処理も、ノレンの償却がなくなるなど、一部変更されている。

主な各社について、順次掲載する。(信越化学については掲載済み 2018/5/1 要企業の2018年3月決算 ー 信越化学

全般的に好調だが、特定の業種が全体としてよいというのではなく、一部の会社の利益が大きく伸びている。
(石油化学製品については、前年度に交易条件の改善で各社とも営業利益が増えており、更なる増益は難しい。なお今後は、米国のシェールガス原料の大規模エチレン設備が相次いで完成するため、値下がりが予想され、採算は悪化すると思われる。)

信越化学は塩ビと半導体の増益が大きい。三菱ケミカルはMMAの増益分が全社の増益額とほぼ同じである。住友化学はMMAに加え、海外の石化事業が増益となっている。
東ソーはクロルアルカリの増益分が全社の増益額とほぼ同じ。旭化成はアクリロニトリルの交易条件差の貢献が大きいとみられる。
そのなかで三菱ガス化学が、一時は会社を支えた海外メタノール事業の損益が停滞しているなか、芳香族や機能化学品で増益となっているのが目立つ。

IFRS方式に切り替えた企業(住友化学など)の営業損益については、切り替え以前の年度と比較し、持分法損益が含まれた影響が大きい。

三菱ケミカルと信越化学で、経常損益(or 税引前損益)ではほぼ同じだが、当期損益で差がついているのは、連結対象子会社の少数株主帰属損益の多少による。

売上高

営業損益 ーーー IFRS採用企業(斜線)はコア営業利益

経常損益ーーー IFRS採用企業(斜線)は税引前損益

当期損益

中国商務部は5月18日、公告44号で、米国原産の輸入コーリャンの反ダンピング調査、反補助金調査を打ち切ると発表した。


商務部は2月4日に反ダンピング及び反補助金調査の実施を発表した。

4月17日には、反ダンピングでクロの仮決定を行い、一律 178.6%の保証金の徴収を開始した。

米国産の輸入が急増しており、問題であるとした。

2013 2014 2015 2016 2017/1-10
輸入量(万トン) 31.7 541.9 896.6 586.9 425.8
金額(万ドル) 9,181 151,736 247,147 126,055 84,631

反ダンピング調査の最終決定を追って行うとともに、反補助金調査を続けるとしていた。

ーーー

今回、商務部は下記の理由で、反ダンピング、反補助金調査を打ち切るとした。これまでに徴収した反補助金の保証金は返却する。

調査の過程で、多くのユーザーの声を聞いた。

輸入コーリャンへの反ダンピング措置で消費者の生活費が上がる。(コーリャンは白酒の原料、食用、飼料、エネルギー源として使われる)

家畜の飼料にも使われるが、国内の豚肉の価格は下がっており、飼料値上がりで養豚業者の生活が苦しくなる。

これは公共の利益に反する。

参考 

反ダンピング課税は、被害を受ける国内メーカーの保護のためのものであり、安値の輸入が減ると、国内価格に影響を与えるのは当たり前の話である。

国内メーカーの要請で反ダンピング課税を行いながら、消費者の声を重視して調査を打ち切るのは、おかしな話である。

反ダンピングのクロの仮決定は、米国による国有通信機器大手、中興通訊(ZTE)への制裁の翌日になされており、米制裁への報復措置とみられていた。

2018/4/19 米国が中国通信機器大手 ZTEへの製品販売を7年間禁止

中西部の農業生産地域のうち8つの農業州がトランプを大統領選で勝利に導いた重要な票田となっており、中国の輸入対応措置でこれらの地域の経済は直接影響を受け、大統領に政治的に大きなダメージを与える。


中国は、コーリャンへの追加課税を取り下げることで米国にも譲歩を迫る狙いがあるとみられる。


米中両政府は5月17、18の両日、ワシントンで「貿易戦争」回避に向けた2回目の閣僚級会合を行った。

1日遅れの共同声明で、「米国の対中貿易赤字を減らすため、中国が米国の農産品やエネルギーとサービスの輸入を大幅に増やすことで合意した」と表明した。数値目標などには触れなかった。両国の見解として「知的財産権の保護は重要だ」とも付記した。
ムニューシン米財務長官は「貿易戦争は当面保留する」と述べた。制裁関税を棚上げし、貿易不均衡是正のための具体案を詰める。

黒字圧縮と引き換えに習主席が大統領に自ら求めた通信機器大手、中興通訊(ZTE)の制裁問題には触れていない。

厚生労働省の再生医療等評価部会は5月16日、iPS細胞から作った心臓の筋肉細胞をシート状にして重症心不全患者の心臓に移植する大阪大の臨床研究計画を 、臨床研究の患者の対象を厳しくすることなどの条件付きで承認した。iPS細胞を使った心臓病の臨床研究は世界初で、年度内にも最初の患者に移植される。

澤芳樹教授(心臓血管外科)のチームが今年3月に届け出ていた。

iPS細胞を使った移植の臨床研究では、理化学研究所などのグループが目の加齢黄斑変性に対する自己iPS細胞由来の網膜色素上皮シート移植を実施しているが、移植した細胞の数 は数十万個だった。
今回の心臓病の臨床研究は約1億個と、移植する細胞数が大幅に増える。数が多いと低品質な細胞が紛れ込む恐れがある。

iPS細胞はがん化の恐れがあ るが、目の場合は異変がすぐ分かり、対処できるが、心臓の場合は簡単ではない。

承認された臨床研究計画は、虚血性心筋症(血管が詰まって 心臓の筋肉への血液供給が減ることや途絶えることによって生じる心臓の筋肉の障害)の患者が対象で、18歳以上80歳未満の3人に、他人のiPS細胞から作った2枚の心筋の円形シート(厚さ 0.05ミリ、直径数センチ)を心臓表面に張り付ける。がん化や免疫拒絶反応などに対する安全性を調べ、心機能の変化についても観察する。

iPS細胞は京都大iPS細胞研究所が備蓄するものを使用する。

シートは3カ月で細胞が死んで消失するとされ、免疫抑制剤を段階的に減らす。動物実験では消失しても心機能の改善が確認されているという。


澤教授らの研究グループは、2006年より重症心筋症患者に対して、患者自身の足の筋肉(骨格筋)から採取した筋芽細胞と言われる細胞のシートを作製し、心不全に陥った心臓表面に貼ることにより、心機能回復させる治療の研究を進めてき た。

筋芽細胞は心筋細胞になるわけではないが、生着した細胞は、血管を誘導するVEGFやFGFといったサイトカン(細胞間の情報伝達を担うタンパク質分子)を出し続け、周辺組織に血管が誘導されて、機能が回復する。

筋芽細胞を直接心筋内に注射する方法があるが、注射の際に移植細胞の95%以上が失われ、効果が十分でなく、他にいろいろな問題がある。

この技術は、2016年5月に、テルモ社によって虚血性心筋症患者への新たな治療法として製品化され 、「ハートシート」として発売された。厚生労働省が再生医療の実用化を促進するために制定した「条件及び期限付き承認」という早期承認制度が適用になった初めての製品である。

テルモは、大阪大学との共同研究を進め、先端医療開発特区「スーパー特区」の「細胞シートによる再生医療実現プロジェクト」(研究代表者:東京女子医科大学岡野光夫教授)に参加した。

しかし、より重症な虚血性心筋症患者に対して筋芽細胞では治療効果が認められないという課題があった。

そこで、澤教授らの研究グループは、細胞から作った心筋細胞に着目した。

動物実験において、虚血性心筋症によって心臓の機能が低下したブタに iPS細胞から作った心筋細胞をシート状に加工して移植する研究を実施し、心臓の機能を改善させることに成功 した。

さらに心筋細胞の作製に用いる試薬や作製方法を改良することで、ヒトに移植可能な安全性の高い心筋細胞を大量に作製することに成功し た。

今回、ヒトでの安全性を検証する臨床研究の実施することとなった。

患者自身の筋肉から培養する筋芽細胞では、拒絶反応はないが、筋肉を採取してから移植可能な細胞を作製するまでに1ヶ月以上かかり、緊急時に使用することができない。

今回の治療法では、京都大学で作製されたiPS細胞を使い、事前に心筋細胞を大量に作製・保存しておくことができるため、患者の負担も少なく、緊急の使用も可能で ある。

本治療法は、有効な治療法の存在しない重症心不全に対する新しい治療となる可能性があり、深刻なドナー不足である我が国の移植医療において、一石を投じる治療法になる。

ーーー

細胞をシート状にして幹部に貼り付ける技術は、東京女子医科大学の岡野光夫教授によって開発された。

まず、培養した細胞シートを培養皿から取り出す技術を開発した。
タンパク質分解酵素などを使用すると、重要な働きをするタンパク質が分解され、十分な機能を果たせない。
このため、温度に応答する高分子を利用する。培養皿の表面にこれを薄く敷き詰め、37℃に設定し、細胞を増殖させシートにする。温度を20℃に下げると高分子が親水性に変わり、皿と細胞の間に水が浸透するため、きれいに剥がすことができる。

シートの積層化には、細胞シート回収面にゼラチンなどの支持材を固定したスタンプ型積層機器を開発した。

シートに血管内皮細胞を少量混ぜると、細胞シート内に毛細血管網ができる。3層の細胞シートごとに血管がつながるのを待って、次の3層の細胞シートを重ねていくと30枚の細胞シートからなる厚さ約1ミリの心筋細胞が完成した。

これまでの応用例:

口腔粘膜の細胞シートを使った角膜の再生
食道上皮癌の切除の痕に口腔粘膜の細胞シートを貼り付け、狭窄を克服
歯根膜細胞シートを使った歯周組織の再生
軟骨細胞シートによる関節軟骨の再生
心筋細胞シート(澤教授)

東芝は5月15日、決算を発表した。

株主帰属損益は8040億円の黒字で、前年を1兆7697億円上回り、2月に発表した予想(5200億円)を2800億円上回った。

2019年3月期の同利益は、東芝メモリ売却益を折り込んで、1兆700億円を見込み、2期連続で過去最高益を更新する見通し。

主なポイント:

①資産・事業売却 3400億円(WEC関連債権、ランディス・ギア、映像事業など)

2018/1/19 東芝、Westinghouse関連の株式と債権を売却

2017/4/29 東芝のスイス子会社ランディス・ギアの売却 

東芝は2017年11月14日、東芝映像ソリューションの発行済株式の95%を、中国ハイセンスグループに譲渡することを決定した。
2018年2月28日 譲渡完了

② 課題の処理 -1300億円 (欧州子会社年金、固定資産減損、構造改革等)

③ 事業改善 5300億円 (メモリ事業損益 4700億円)

④ 評価損益の税金 差引 1973億円の益

メモリ事業分割の評価益への課税 -2485億円 (売却未了のため売却益は非計上で、これのみ計上)
WEC関連債権・株式売却で、評価損が実現し、税金が4458億円減少 (債権分2445億円、株式分1972億円)


株主資本は、当期の株主帰属損益 8040億円に増資6000億円を加え、1兆3361億円増加し、7831億円となり、債務超過を解消した。


2019年3月期予想には下記を含む。

 税引前損益(900億円)には、2Q以降に持分法損益になると見込むメモリ事業損益 500億円を含む。

 当期純損益(株主帰属 10,700億円)には、メモリ事業売却益 9700億円と、1Qのメモリ事業非継続事業損益 800億円を含む。

 なお、Cash Flow としては、メモリ事業の売却収入 1兆4500億円を見込んでいる。
 (売却額は2兆円、東芝出資3500億円、他に税金?)

2017/9/30 東芝メモリの株式譲渡契約締結


中国の独占禁止法当局が売却案を承認した
ことが5月17日に分かった。既に日米欧など他の全ての国の独禁法当局の承認は得ている。

6月1日付で売却する。東芝メモリの売却により、利益剰余金は予想ベースでは1兆700億円の増となり、東芝の株主資本比率は急回復する。



詳細は下記の通り。(億円)

17/3 18/3 増減 19/3予想
営業損益
 Energy System -417 -148 269
 Infra System 584 480 -104
 Retail & Printing 163 270 107
 Storage & Device 576 473 -102
 ICT 71 13 -58
 others -171 -487 -316
 全社 15 39 25
 合計

820

641 -179 700
継続事業 税引前 449 824 374 900
    税金 580 -619 -1,199

    税引後 -130 1,443 1,573
非継続事業 税引前 7,219

メモリ事業 4,657、WEC 2,562

     税金 -2,231

実効税率 30.9%

    税金補正 1,973

メモリ事業非適格 -2,485、WEC是認 4,458

 
非継続事業 税引後 -11,472 6,961 18,432

17/3 WECは-12,801、差引メモリは1,329

税引後 合計 -11,602 8,404 20,006
うち 非支配持分 -1,945 364 2,309
差引 株主帰属 -9,657 8,040 17,697 10,700
利益剰余金 -5,804 2,236 8,040

18/3 株主帰属損益 8,040億円

2017/12 増資 6,000 6,000
株主資本 -5,529 7,831 13,361

債務超過を解消

2017/3月期発表では、非継続事業はWECのみで、税引後は-12,801億円。今回、メモリ 1329億円を含め、遡及して-11,472億円としている。


損益予想の推移:

営業損益

継続事業

非継続事業
税引後損益
株主帰属
損益
税引前損益 税引後損益
2017/8/10 4,300 4,000 2,300 メモリ営業損益 3,712億円
増減 -3,400 会社分割による税額 -3,400億円
2017/11/9 4,300 4,000 -1,100
増減 6,300 WEC関係債権譲渡益2400億円、税引き後1700億円
メモリ事業分割の税額影響減少 2400億円ほか
繰延税金資産 1100億円を計上(復活)
2018/2/14 0 200 5,200 メモリ事業営業利益4400億円は非継続事業に振替
増減 641 624 2,840
最終 641 824 1,443 6,961 8,040

富士フィルムは5月14日、大正製薬から7月31日に富山化学株式34%を取得して富山化学を完全子会社化すること、放射性医薬品の富士フイルムRIファーマと富山化学を10月1日付で統合し、富士フイルム富山化学としてスタートさせることを発表した。

同社は現在、富山化学の低分子医薬品、富士フイルムRIファーマの放射性診断薬・治療薬を中核として医薬品事業を展開している。

昨今、アンメットメディカルニーズへの対応がますます求められるとともに、治療の適正化に貢献する診断の重要性が高まっている中、富山化学と富士フイルム RI ファーマを統合して、診断薬・治療薬の新薬開発のスピードアップ、さらには「診断」と「治療」の連携強化をより一層図る。

富山化学:

富士フイルム、大正製薬、富山化学工業の3社は2008年2月13日、富山化学の医療用医薬品事業の強化を中心とする戦略的資本・業務提携を行うことで基本合意したと発表した。

下記の手順により、富山化学株式の最終的な保有比率は富士フイルム 66%、大正製薬 34%となった。今回、富士フィルム100%とする。

2008/2/19 富士フイルム、富山化学を買収、総合ヘルスケア企業を目指す

富山化学は抗インフルエンザウイルス薬「アビガン®錠200mg」(Favipiravir) を開発した。

アビガンは、ウイルスの細胞内での遺伝子複製を阻害することで増殖を防ぐRNAポリメラーゼ阻害剤である。

富士フイルムは2014年9月26日、グループの富山化学が開発した抗インフルエンザウイルス薬「アビガン® 錠200mg」が、エボラ出血熱に罹患した患者の治療のため、フランスの病院で投与されたと発表した。

2014/9/27 富士フィルム、エボラ出血熱患者に「アビガン」提供 

富士フイルムRI ファーマ:

富士フイルムRI ファーマは治療用放射性医薬品メーカーで、旧称 第一ラジオアイソトープ研究所。

1968年に第一製薬とMallinckrodt とのJVで設立、1988年に第一製薬の100%子会社となり、2006年10月に富士フィルムが買収した。

富士フイルムRI ファーマは2014年10月14日、大手製薬企業のEli Lilly and Companyとの間で、同社のPET検査用放射性医薬品「florbetapir(18F)注射液)」の日本国内における共同開発契約を締結した。

同年11月4日、脳疾患や心臓疾患、腫瘍などの各種疾病の機能診断に役立つPET(陽電子放射断層撮影)検査用の放射性医薬品市場に参入すると発表した。富士フイルムRI ファーマが約60億円を投資し、川崎と茨木に研究開発拠点を新設する。

2014/11/18 富士フイルム、PET検査用の放射性医薬品市場に参入  


富士フイルムは、写真フィルムで培った、化合物の合成力・設計力や解析技術、ナノ分散技術などの高度な技術を活かして新薬の研究などを行う。

統合会社となる富士フイルム富山化学は、富士フィルムと連携し、アンメットメディカルニーズが高い「がん」「中枢神経疾患」「感染症」領域において、新規の放射性診断薬・治療薬、独自の作用メカニズムを持った治療薬の開発を行う。

さらに、必要な量の薬物を必要な部位に必要なタイミングに送達するドラッグ・デリバリー・システム(DDS)のさらなる技術開発も推進し、下記の技術を、既存薬のみならず、次世代医薬品として期待されている核酸医薬品や遺伝子治療薬へ応用展開していく。

リポソーム製剤技術:細胞膜や生体膜の構成成分である有機物のリン脂質などをカプセル状にした微粒子 (リポソーム)の中に薬物を内包する製剤技術
マイクロニードルアレイ:100~2000 ミクロンの長さの微細な突起をシート上に配した薬剤送達部材で、皮膚表面に貼ることで、 突起部分から薬剤を皮膚に浸透させ、体内に届けることができるもの


第一期計画は次の通り。

2006/4/7 中国のエチレン合弁会社ー2


米国の物言う株主の投資会社 Elliott Managementは、2015年の Samsung Groupの第一毛織とサムスン物産の合併を巡り、米韓自由貿易協定(FTA)の「ISDS(投資家と国家の紛争解決)」条項に基づいて韓国政府に6億7000万ドルの損害賠償を要求した。

韓国法務省が5月11日、Elliott から受け取った仲裁意向書を公開した。FTAのISDS条項を根拠に企業が韓国政府に賠償を求めた初のケースになる。

Elliotが問題視するのは、2015年にSamsung Groupの第一毛織とサムスン物産が合併を決めた臨時株主総会で、当時、サムスン物産株を7%強保有していた Elliottは反対したが、韓国政府傘下の国民年金公団が賛成するなどし、合併は承認された。

第一毛織とサムスン物産(Samsung C&T) の合併は2015年7月18日の臨時株主総会で承認を受け、9月1日に新しいサムスン物産(Samsung C&T) となった。

新しいSamsung C&T は李一族のSamsungグループ支配構造の事実上の持ち株会社となる。

2014/12/2 Samsung Group の持株会社 第一毛織の上場 付記参照

2017/12/26 韓国公取委、2年前のたサムスン物産と第一毛織合併での株式売却命令を遡及修正

朴槿恵前大統領とその友人の国政介入事件の裁判で、国民年金が第一毛織とサムスン物産の合併の賛成を決めたのは、サムスンから朴槿恵前大統領への賄賂の効果であると認定された。

韓国の前大統領、朴槿恵被告側への贈賄罪などに問われた国政介入事件で、ソウル中央地裁は2017年8月25日、サムスングループを事実上率いる李在鎔・サムスン電子副会長に懲役5年(求刑12年)の判決を言い渡した。贈賄や横領など問われた罪のすべてを有罪とした。

李在鎔副会長の主要容疑は賄賂供与など5つ。

特検チームはこうした支援が2015年7月に朴大統領が保健福祉部傘下の国民年金公団を通じサムスン物産と第一毛織の合併を助けたことに対する答礼だとみており、これらの資金協力が李副会長の指示もしくは了解のもと実行されたとし、副会長に崔被告側への贈賄罪が成立すると判断した。

2017/8/28 サムスン電子副会長に実刑判決、ソウル地裁

Elliotは、合併の成立は不当であり「6億7000万ドル以上の被害を受けた」として、仲裁裁判所を通じて韓国政府に賠償を求める考えを明かした。

ーーー

ISDS(Investor‐State Dispute Settlement)条項は、企業が進出先の政府から不公平な待遇を受けたり、財産を不当に収用されたりした場合に、仲裁を申し立てることができる仕組み。

韓国法務省によると、FTAを巡っては初のケースだが、同国政府が国家間の投資協定を根拠に企業から賠償請求を受けるのは5件目となる。

米国系ファンドの現代グロービスUAEのInternational Petroleum Investment Co (IPIC) のオランダ法人 Hanocal BV、イランのEntekhab Industrial Group、と他に1件(不明)。

2015/9/25 韓国にイラン企業から3番目のISD提起

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韓国の財閥は複雑な資本関係を改善するグループ改編の途上にあり、改編計画が創業家に有利な条件で立てられているとの批判がつきまとう。

Elliottは5月11日、現代自動車グループの再編について5月29日に予定する臨時株主総会で、反対票を投じる意向を表明した。
Elliott は、現代自動車と起亜自動車、現代モービスというグループ3社の株式を合わせて10億ドル余り保有していること、普通株の保有比率は3社それぞれで1.5%を超えることを明らかにしている。

現代自動車グループは未来事業の競争力を強化し、循環出資など政府の規制を解消するための出資構造の再編に乗り出した。
グループの財源と資源を効率的に配分し、各グループ社の事業力量と独立性ㆍ自律性を向上し、同時に大株主の責任経営を強化するためとしている。

現代モービスと現代グロービスの分割合併、循環出資の完全解消などで行われる。

現代モービスは、投資や重要部品の事業部門と、モジュール及びAfter Service 部品事業部門を人的分割する。
モジュール及びAS部品事業部門を現代グロービスと合併する。

これに対し、Elliottは、同グループの再編計画は一部の株主を不当に扱っており、事業上の論理的な考え方が欠けていると主張する。
現代モービスの一部事業を現代グロービスに移すのではなく、現代自動車と現代モービスを合併させ、グループ全体を統括する持ち株会社を創設するよう提案している。

グループ内の12兆ウォン(約1兆2100億円)を超える余剰資金を株主に還元し、配当を引き上げ、自社株の消却をすべきだと求めたほか、ガバナンス改善のため新たな外部取締役の起用を増やすよう各社に促した。

現代自動車と現代モービスが合併すれば、資産規模で世界7位の自動車会社になるとする。



Xeroxは5月13日、富士フィルムホールディングスによる買収契約を終了すると発表した。

買収に反対する大株主のCarl Icahn、Darwin Deason と5月1日に和解し、5月3日に撤回、5月9日に株主宛ての書簡で富士フィルムと再交渉するとしていたが、株主側と再度和解し、買収契約自体を終了させた。

2018/5/2 Xerox、富士フィルムとの統合見直し、株主のCarl Icahn、Darwin Deason と和解 

2018/5/4 Xerox、株主との和解を撤回、現取締役会メンバー全員が留任 

2018/5/11 Xerox、富士フィルムと条件面で再交渉へ

Xerox によると、現地時間 5月13日午後5時(日本時間14日午前6時)に富士フィルムに契約終了を通知した。理由としては、①富士ゼロックスの監査済決算を4月15日までに提出しなかったこと、②監査済の財務数字が契約締結前にもらっていた監査前の財務数字と著しく違っていること、③その後の事態の変化で契約の実行が難しくなったことを勘案したとしている。

1月22日、Carl IcahnとDarwin Deasonはゼロックスに関する共同声明を発表したが、そのなかで、今回の富士ゼロックスの経理スキャンダルに鑑み、JVを解消するか、ゼロックスに有利なように改定すべきであるとしていた。

富士ゼロックスの財務スキャンダルはXeroxの他の株主の間でも問題になっていた。

富士フィルムへの通知後、大株主のCarl Icahn、Darwin Deasonと新しい和解契約を結んだ。これにより、株主総会での委任状争奪戦、および、Darwin Deasonによる会社及び取締役に対する訴訟を回避する。

株主側の和解内容は次の通りで、Robert J. Keegan 会長、Jeff Jacobson CEO と取締役5名が退任し、株主側推薦の5名が次の総会後に取締役に就任する。

新しい会長にはIcahn Enterprises L.P. のCEOの Keith Cozza が就任する。
副会長兼CEOには
Giovanni ("John") Visentinが就任する。同氏はExela Technologies のSenior Advisor to the Chairman で、また。Advent InternationalのOperating Partner であった。

付記 

Xeroxは5月16日、Keith Cozza 会長、John Visentin CEOの就任を発表した。(取締役就任は株主総会後)
株主総会は7月31日に決まった。

買収合意撤回についてのSECへの提出資料では、株主への特別配当を5割積み増すよう富士フィルムに求めたが、回答がなかったという。

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今回合意 5/1 合意
新取締役
(株主推薦)
5名
Keith Cozza, Nicholas Graziano,
Scott Letier、John Visentin
Jonathan Christodoro
6名
Keith Cozza, Nicholas Graziano,
Scott Letier, John Visentin
Jay Firestone, Randolph Read
退任取締役 6名
Jeff Jacobson
Robert J. Keegan, Charles Prince,
Ann N. Reese, William Curt Hunter,
Stephen H. Rusckowski
7名
Jeff Jacobson
Robert J. Keegan, Charles Prince,
Ann N. Reese, William Curt Hunter,
Stephen H. Rusckowski、
Sara Martinez Tucker
留任取締役 4名
Gregory Brown, Joseph Echevarria,
Cheryl Krongard
Sara Martinez Tucker
3名
Gregory Brown, Joseph Echevarria
Cheryl Krongard
会長 退任 Robert J. Keegan
就任 Keith Cozza
退任 Robert J. Keegan
就任 Keith Cozza
CEO 退任 Jeff Jacobson
就任 John Visentin(副会長兼務)
退任 Jeff Jacobson
就任 John Visentin
(副会長兼務)

当初、株主側は取締役全員の候補を立てるとしていたが、今回就任の5名以外は引き下げる。なお、会社側は取締役候補の推薦期限を2017年12月11日としていたが、2018年6月13日までは受け付ける。
6月13日に予定されていた株主総会はそれ以降となる。

現在の取締役会は、次の通りコメントした。

過去数週間にわたり、富士フィルムに対し、直ちに契約変更の交渉に入るよう求めてきたが、富士フィルムはこれに応じなかった。

取締役会としては、裁判所の差し止め命令、株主が現在の条件での契約を支持していないこと、富士ゼロックスの経理スキャンダルが解決していないことなどの状況下で、取引の完了が見込めないと考える。

また、委任状争奪戦で混乱し、事業にも悪影響を与えることを懸念した。富士フィルムとの間で早期に取引が完了しないことから、富士フィルムとの取引を終了し、株主二人と和解するのが会社にとってベストと考える。

和解契約のもとで、新取締役会はXeroxの株主にとっての価値を最大限にするための代替案の検討に着手する。



付記 富士ゼロックスの経理スキャンダル

富士フィルムHDは2017年6月12日、傘下の富士ゼロックスの販売子会社で起きた不適切な会計処理を受けて375億円の損失が発生し、抜本的な対策のため富士ゼロックス会長に古森重隆会長が就くと発表した。

調査報告書によると、不適切会計の主な舞台となったのは富士ゼロックスのニュージーランドの販売子会社。中堅幹部であるマネージングディレクターが中心となって、複写機などのリース契約で問題のある取引を繰り返していた。

例えば、(1)顧客との契約時におけるサービス利用想定量を過大に計上した (2)リース契約期間満了前に契約を更新し、その際に過去の売り上げを取り消さずに、新たな売り上げを計上した (3)リース契約獲得のための販促費用相当額を売り上げに加算し、同額をリース債権に計上した、といった不適切な取引を行っていたという。

第三者委員会は理由として、過大なインセンティブ報酬の存在を指摘する。現地従業員の固定給を低く抑える代わりに、売り上げ目標を達成したときの「ボーナス」を大盤振る舞いする報酬体系だったという。

2015年7月、ニュージーランド販社が不適切な取引を行っているとの内容の告発メールが、富士ゼロックスに届くが、幹部は実質的な問題先送りを指示した。

2016年9月にニュージーランドの複数の報道機関が損失発生の事実を指摘。続報で「不正な売上計上の可能性」を報じ、同国の警察省の重大不正捜査局が捜査を始めた。

不適切な会計処理を回避できなかった原因として、調査報告書は「売上プレッシャー」の存在を指摘する。複数のインタビュー対象者から、本社からの業績達成圧力が非常に強いとの証言を得たとしている。

 

韓国政府とGeneral Motors(GM)は5月10日、韓国GMの経営再建で合意した。


韓国政府は経済副首相兼企画財政部長官主宰の関係閣僚会議を開き、同社の経営再建のために
71億5000万ドルの資金を投入することを決定した。

GMが36億ドル、産業銀行が7.5億ドルを出し、ほかにGMは韓国GMへの貸付金28億ドルを優先株に転換する。

経営破たんの危機に面していた韓国GMでは、会社側と労働組合の話し合いが続いていた。

会社側が、妥結できなければ法定管理(会社更生法)申請に踏み切るとしていた4月20日も妥結できず、23日も引き続き交渉を行った。その結果、経営立て直しのため、労使が歩み寄ることで合意した。

その後、韓国産業銀行とGMは4月26日、韓国GMの経営正常化のために7兆7000億ウォン(71億5000万ドル)を投じることで合意した。


2018/4/25 韓国GMの破綻、ギリギリで回避 

今回、下記の通り決まった。

GMは2018年中に韓国GMへの貸付金28億ドルを優先株に転換する。さらに36億ドルを新規融資などで資金提供する。

韓国GMは36億ドルのうち、28億ドルを今後10年間の設備投資や研究開発にあて、8億ドルを早期希望退職に応募した従業員の退職金などに使う。
競争力のある新車2車種の生産を韓国GMに割り振る。

韓国GMの2位株主で韓国政府系の産業銀行は年内に7億5000万ドル分の優先株を取得する。

GM及び産業銀行の受け取る優先株は議決権がないため、韓国GMの出資比率は米GMが83% (うち、中国でGMと合弁を持つ中国上海汽車が6%)、 産業銀行が17%で変わらない。

産業銀行はこれまで、GMが債権を出資に転換すると、産業銀行の出資比率は現在の17%から1%未満に下がってしまうため、GMに20対1以上の差等減資を求めていた。

韓国政府は米GMが求めていた韓国GMに対する税金の減免措置を検討する。

韓国政府は、GMと産業銀行が詳細な調査を実施し、競争力を持つ新車の発売や固定費削減の努力などが行われれば、売上原価率と営業利益率が次第に改善して経営正常化と長期的な存続が可能だと判断したことから、これに基づいて経営再建策を講じたと伝えた。

韓国の副首相兼企画財政部長官は、韓国GMの経営正常化問題について「10年間、いわゆる『食い逃げ防止』は制度的に保障されている」と述べた。「構造調整問題はこれまで 、大株主の責任、大株主・債権団・労働組合など利害関係者の苦痛分担、持続可能な生存の可能性の3つの原則に基づいて、中堅造船会社とクムホタイヤで実施したが、 韓国GMも同じ原則で処理する」と説明した。

「GMが韓国国内に10年以上は残ることにし、2大株主の産業銀行の拒否権も持つようにした」とし「また、研究開発センターと新車配分を通じて10年間は韓国国内で営業することを制度的に保障した」と話した。

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