安倍首相は3月28日夜の記者会見で、新型インフルエンザ薬「アビガン」について「新型コロナウイルスの治療薬として正式に承認するにあたって必要となるプロセスを開始する」と発表した。

膵炎治療薬の「フサン」についても投与をスタートする。

発言:

政府としても一日も早く皆さんの不安を解消できるよう、有効な治療薬やワクチンの開発を世界の英知を結集して、加速してまいります。先般、テレビ電話で実施されたG7サミットでも、G20サミットでもそのことを強く主張し、世界の首脳たちから賛同を得ました。

わが国では、4つの薬について、すでに観察研究としての投与を開始しています。

このうち新型インフルエンザの治療薬として承認を受け、副作用なども判明している「アビガン」については、これまで数十例で投与が行われています。ウイルスの増殖を防ぐ薬であり、すでに症状の改善に効果が出ているとの報告もあります。

「アビガン」には、海外の多くの国から関心が寄せられており、今後希望する国々と協力しながら、臨床研究を拡大するとともに、薬の増産をスタートします。
新型コロナウイルス感染症の治療薬として、正式に承認するに当たって必要となる治験プロセスも開始する考えです。

エボラ出血熱の治療薬として開発されていた「レムデシビル」については、日米が中心となった国際共同治験がスタートしています。

そして、5つ目の有力候補として膵炎の治療薬に承認されている「フサン」について今後観察研究として、事前に同意を得た患者の皆さんへの投与をスタートする予定です。

さらには現在、治療薬やワクチンなどの開発に向けて、大学や民間企業でもさまざまな動きが出てきています。

これらを政府が力強く、後押しすることにより、あらゆる可能性を追求します。日本だけでなく、世界中を未曽有の不安と恐怖が覆う中で、日本は持ち前のイノベーションの力で希望の灯をともす存在でありたいと願っています。

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既に投与を開始している「4つの薬」は下記のものと思われる。

1) アビガン

富士フィルム子会社の富山化学(2018年10月に富士フイルムRIファーマと統合し、富士フイルム富山化学)は抗インフルエンザウイルス薬「アビガン®錠200mg」(Favipiravir) を開発した。

現在、治療に用いられている抗ウイルス剤はノイラミニダーゼ阻害剤(Neuraminidase inhibitors)で、増殖されたウイルスの放出を阻害して感染の拡大を防ぐものだが、アビガンは、ウイルスの細胞内での遺伝子複製を阻害することで増殖を防ぐRNAポリメラーゼ阻害剤である。

富山化学は2014年3月24日、日本で錠剤タイプの新しい抗インフルエンザウイルス薬「アビガン®錠200mg」の製造販売承認を取得した。

アビガンは、新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症が発生し、既存の抗インフルエンザ薬が無効又は効果不十分である場合に備え、新しいメカニズムのアビガンを使用可能な状況にしておくことは意義があると判断され、世界に先駆けて国内で承認となった。

直ちに医家向けに販売するのではなく、厚生労働大臣から要請を受けて製造・供給等を行うもので、新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症が発生し、本剤を当該インフルエンザウイルスへの対策に使用すると国が判断した場合に、患者への投与が検討される。

承認には次のような厳しい条件がついている。

動物実験で初期胚の致死及び催奇形性が確認されていることから、妊婦または妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと。

富士フィルムは新型インフルエンザ流行に備えた国家備蓄用に200万人分を約68億円で納入している。

2) 抗ウイルス薬「レムデシベル」

米国立衛生研究所(NIH)は、COVID-19の治療薬候補のGilead Sciences 社のRemdesivirの世界規模での治験に着手した。世界50カ所で偽薬とremdesivir を患者に投与し、治療効果を検証する。治験参加数は400人程度を想定しており、既に募集を始めた。

2020/2/22 COVID-19、WHOが2つの治療法試験ーーー 3週間以内に結果判明  

中国を視察しているWHOのBruce Aylward 事務局長補は2月24日、「現時点で有効と思われる唯一の薬がある。それは remdesivirだ」と述べた。

3) エイズ発症抑える抗ウイルス薬「カレトラ (Kaletra)」

AbbVie Inc.が販売するもので、HIV感染症のHAART療法に用いられるプロテアーゼ阻害薬のLopinavirとRitonavir の合剤。WHOを中心とした研究開発チームが試験している。

HAART (highly active anti-retroviral therapy)療法は、複数の抗HIV-1薬を各人の症状・体質に合わせて組み合わせて投与し、ウイルスの増殖を抑えAIDS の発症を防ぐ治療法。

抗HIV薬は作用機序により、ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(NRTI)、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(NNRTI)、プロテアーゼ阻害剤(PI)、インテグラーゼ阻害剤(INSTI)、侵入阻害剤に分類される。

HIVはその増えていく過程でウイルスの組み立てに必要な蛋白質を感染した細胞に作らせる。その蛋白質は、まず大きな分子として組み立てられるが、そのままの大きさではウイルスが組み立てられない。そのため、HIVに特有のプロテアーゼという酵素がその蛋白質を適当な大きさに切断する。この酵素の働きを阻害するのがプロテアーゼ阻害薬である。

4) 抗マラリア薬のリン酸クロロキン」

中国政府は、抗マラリア薬の「リン酸クロロキン」で治療効果があったと示し、国内でも類似の薬を患者に投与したケースが報告されている。

日本では製造・販売が禁止されている。マラリア予防薬としては最も安全性の高い薬剤だが、薬剤耐性マラリアが多いことが欠点。薬害としてクロロキン網膜症がある。

Bayerは「リン酸クロロキン」300万錠を米国政府に寄付した。マラリア用などで米国で承認を受けているが、新型コロナウイルス用に緊急使用の申請をしている。


5つ目の 候補
「フサン」

東京大・医科学研究所の井上純一郎教授らは3月18日、急性膵炎の治療薬として国内で長年使われてきた点滴薬剤「ナファモスタット(商品名フサン)」が新型コロナウイルスの感染を阻止する可能性があると発表した。

フサンは、ウイルスのSタンパク質とヒト細胞のACE受容体が結合したのち、TMPRESS2で切断されてSタンパク質が活性化されるのを阻止する。



2020/3/18 
急性膵炎治療薬が新型コロナウイルス感染阻止の可能性

トランプ米大統領は3月27日、国防生産法に基づき、米自動車大手GMに対し、新型コロナウイルス患者の治療に必要な人工呼吸器を生産するよう命令した。


大統領は命令に先立ち、ツイッターで「GMは4万台を『とても迅速に』供給すると言っていたのに、4月下旬にたった6千台だという。しかも最高の代金を求めている」と 述べ、Mary Barra CEOを名指しで非難、国防生産法発動を示唆していた。

As usual with "this" General Motors, things just never seem to work out.
They said they were going to give us 40,000 much needed Ventilators, "very quickly".
Now they are saying it will only be 6000, in late April, and they want top dollar.
Always a mess with Mary B.
Invoke "P".

(その後のツイッターで)
Invoke "P" means Defense Production Act! 

General Motors MUST immediately open their stupidly abandoned Lordstown plant in Ohio, or some other plant, and START MAKING VENTILATORS, NOW!!!!!!
FORD, GET GOING ON VENTILATORS, FAST!!!!!!

GMは大統領の命令に先立ち、医療機器メーカーのVentec Life Systemsと組み、インディアナ州のKokomo電子部品工場に呼吸器(VOCSN critical care ventilators)の生産設備を導入すると発表した。4月から月間1万台のペースで生産する。
Ventec Life Systemsは自社のワシントン州 Bothell でも生産を拡大する。

VOCSNは人工呼吸器(Ventilator)、酸素濃縮器(Oxygen concentrator)、排痰補助装置(Cough assist) 、吸引器(Suction) 及びネブライザ(Nebulizer 吸入器)の5つの装置の機能を一体化した呼吸ケア システム

GMはまた、Warren, Michigan工場でLevel 1 手術用マスクの生産を始める。

2週間以内に1日5万枚を生産、10万枚に増やすことを狙う。生産量は原料供給に依存する。

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トランプ米大統領は3月18日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、「国防生産法 (Defense Production Act )」を発動したことを明らかにした。国の安全保障の目的などで、民間企業に増産を求めることができるようになる。

国防生産法は朝鮮戦争の勃発を受け、1950年9月8日に成立した。

大統領に下記の権限を与える。

 ・企業に対し、国防に必要とみなされる契約を結ぶことを命じる権限。売り惜しみや、
  便乗値上げすることを禁じる対象品目を指定する権限。

  ・国防のため、モノやサービスや設備を割り当てるためのメカニズム(規則や命令など)を決める権限。

  ・国防のために必要な不足する物品や重要な物品が防衛のために使えるよう、民間経済に介入する権限。

 ・国防のため、資産の徴用、業界への生産増の命令、賃金・価格のコントロール、労働紛争の終止、
  消費者与信や不動産与信の制限、優先度の設定、原材料の配分などの権限

トランプ政権では、2017年に米自治領プエルトリコなどを襲ったハリケーンによる被災後、水や食料品の増産を目的に発動している。感染症対策で用いられるのは異例。

2020/3/20 トランプ大統領、新型コロナ対策に国防生産法を発動  

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米国トヨタ自動車は3月27日、人工呼吸器の需要急増を受け、トヨタが持つ生産技術を人工呼吸器メーカー2社に提供するなどして増産を支援すると発表した。北米施設にある3Dプリンターを使って、感染防止のために医療関係者の顔を覆う「フェースシールド」の生産にも乗り出す。

  • Ventilators/Respirators: メーカー2社の増産支援の協議
  • 3-D printed Face Shields: 休止プラントで3月末生産開始

  • COVID-19 Masks: 生産準備。フィルター供給者を求めている。
  • Toyota Production System Support Center: 医療資材、機器増産の支援
  • その他:顧客のファイナンス支援、病院への資材寄付など

丸紅は3月25日、2020年3月期の連結損益(株主帰属当期損益)の予想を2月5日時点の2000億円の黒字から1900億円の赤字に下方修正すると発表した。

最終赤字は不振事業の見直しを進めた2002年3月期以来18年ぶりで、赤字額は過去最大となる。

同社では、新型コロナウイルスの感染拡大について「これまでの金融危機や地政学的危機とは異なる。すぐに終息するとは考えられない」と指摘し、影響の長期化に懸念を示す一方で、「今の低迷する市況を全部織り込んだ」として、追加の減損の懸念はないと説明した。

新型コロナウイルス感染症の世界的な大流行に伴う、原油価格の急激な下落をはじめとした事業環境の悪化を踏まえて、各事業における保有資産の価値を見直し、下記の通り、減損損失を計上した。

 前回予想 当期損益 2,000億円

石油・ガス開発事業 米国メキシコ湾の石油・ガス開発事業
Marubeni Oil & Gas (USA)
-800億円
英領北海の石油・ガス開発事業
Marubeni North Sea
-650億円
合計 -1,450億円
米国穀物事業 Gavilon穀物事業 -800億円
米国西海岸の穀物輸出事業 Archer Daniels MidlandとのJV -200億円
合計 -1,000億円
チリ銅事業 -600億円
海外電力及びインフラ関連事業 -400億円
その他 -250億円
一過性損失による悪化 計 -3,700億円
市況の悪化等による実態純利益の減益 -200億円
合計 -3,900億円

 修正後 当期損益予想 -1,900億円  

状況は下記の通り。

1石油・ガス開発事業における減損損失

丸紅は100%出資のMarubeni Oil & Gas (USA) LLC.を通じて米国メキシコ湾の石油・ガス開発事業を行っている。
同じく
100%出資のMarubeni North Sea Ltd.を通じて英領北海の石油・ガス開発事業を行っている。

これについて原油価格の18年ぶりの急激な下落に伴い、減損損失の計上、繰延税金資産の取り崩しを行った。

2米国穀物事業における減損損失

100%出資のGavilon Agriculture Investment, Inc.を通じ米国穀物事業を行っており、西海岸ではArcher Daniels MidlandとのJVで穀物輸出事業を行っている。

米中通商摩擦や北米の天候不順等の収益の押し下げ要因には回復の兆しが見られるものの、新型コロナウイルス感染症の世界的な大流行に伴い、世界経済の不透明感が増している。

(3)チリ銅事業

丸紅は、チリにセンチネラ銅鉱山およびアントコヤ銅鉱山に30%、ロスペランブレス銅鉱山に9.21%出資しており、パートナーである世界有数の銅生産会社である英国・アントファガスタ社と保有銅鉱山の事業運営を行い、日本企業トップクラスの15万トンの持分権益銅量(銅地金換算)を保有している。

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同社は2015年3月期決算でも同様の減損損失を計上している。株主帰属当期損益は2200億円から1100億円(黒字)に修正した。(実績は1056億円の黒字)

内訳は次の通り。

減損損失 主な理由 損益
資源 北海の油ガス 5鉱区群 原油価格下落、開発コスト増加 -600億円
メキシコ湾沿岸(1鉱区) 原油価格下落 -175億円
米シェールオイル -175億円
チリ銅事業の減損損失 銅価格下落 -100億円
豪州石炭事業の減損損失 石炭価格下落 -50億円
非資源 Gavilon社「のれん」の減損損失 計画未達による計画見直し -500億円
合計 -1,600億円
税効果 400億円
損益合計 -1,200億円


2015/1/29 丸紅、原油価格下落等で1600億円の減損損失を計上

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今後、多くの資源関連企業で大きな減損損失計上が予想される。

更に株式評価損の計上も必要となる。

JXTGホールディングスは3月26日、2020年3月期の損益予想の修正を発表した。

新型コロナウイルス感染症拡大に起因する原油価格の下落や国内外における石油・石化製品需要・マージン等の状況から2019118日に公表した予想を修正した。

営業損益では、一般損益が3100億円悪化、在庫評価で1800億円悪化し、前回2800億円の利益と予想したのが、現時点では2100億円の赤字となる

なお、後記の通り、本来の営業活動に必要でない大量の在庫の評価損で経営の実態が歪められている。
近似値としては、実質的な営業損益は「一般」の400億円の利益であるが、これも総平均法によりコストが割高に計上されている。

当期損益は、前回の1550億円の利益が4550億円悪化し、3000億円の損失となる。

2019/11/8
予想
修正 今回予想
営業損益 一般  エネルギー 1,950 -1,950 0 需要減少、マージン大幅に縮小
石油・天然ガス開発 550 -1,050 -500 資産の減損
金属 500 -100 400
その他 500 0 500
合計 3,500 -3,100 400
在庫影響(低価法) -700 -1,800 -2,500 下記参照
総計 2,800 -4,900 -2,100
当期損益 1,550 -4,550 -3,000


新型コロナウイルスによる石油需要減少のなか、OPECプラスの減産交渉が決裂し、サウジとロシアは大増産に踏み切った。

2020/3/9 OPECプラス、追加減産で決裂、3月末で減産終了 

2020/3/11 サウジが2割増産、ロシア追随、石油価格戦争へ 

この結果、1月に1バーレル当たり64ドルだったドバイ原油価格は3月には30ドルまで大幅に下落した。3月23日には25.70ドルまで下がった (2カ月後渡しの先物価格)

本決算の3月末まででは、原油価格はそれほどは下がっていない。本当に大きな影響が出るのは4月以降である。

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石油業界は「石油の備蓄の確保等に関する法律」によ り、営業活動に必要な在庫に加え、消費量の70日分相当量の石油の備蓄義務がある。原油価格が急激に変動する場合は、これが損益に大きな影響を与える。

原油などの棚卸資産は、総平均法で評価するとともに、期末の時価が簿価を下回る場合は低価法により時価に置き換える。
70日分の備蓄は本来の事業活動には不要のものであり、通常の在庫と切り離し、当初の簿価で維持しておくべきであるが、会計処理上は通常の在庫と合わせて経理処理する。

今回のように原油価格が大きく下がると、下がった分の多くが備蓄在庫の簿価引き下げにまわり、その分が当期の原価には反映されないこととなる。その結果、原油価格の下落で売価が下がるが、原価はそれに応じて下がらず、マージンが縮小する。

今回、エネルギー部門の損益は、需要の減少と、このマージンの縮小で1950億円の悪化となった。

備蓄分を含めた在庫については、安価な購入品を含めた総平均法により簿価は期首よりは下がるが、期末の時価よりは非常に高い水準にあり、低価法で時価に置き換えると、2500億円の評価損となる。2019年11月時点では700億円の損失を見込んでいたが、更に1800億円悪化する。

一般損益と在庫影響を加えると営業損益で4900億円の損益悪化となり、当期損益では4550億円の悪化となる。

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上記のように、この業界特有の理由で、本来の営業活動に必要でない大量の在庫の評価で当期の損益が大幅に変動し、本来の事業活動の状況が分かり難くなる。

このため、各社は独自の計算で在庫影響を除いた損益を発表している。(会計基準に基づかないもので、監査の対象外)

上のグラフの通り、2015年3月期も原油価格が激減した。

当時の(東燃ゼネラルとの統合前の)JXホールディングス(日本方式)は下記の報告をしている。(億円)

営業損益 経常損益 当期純損益
2014/3 2,137 3,023 1,070
2015/3 -2,189 -1,501 -2,772
(除 在庫影響) 1,864 2,552

なお、国際会計基準(IFRS)では、この後に時価が上がり、評価減する原因となった従前の状況がもはや存在しない場合、又は経済的状況の変化により正味実現可能価額の増加が明らかである証拠がある場合、当初の評価損の金額を上限として、評価減の戻入れを行う方法が認められている。

その後、原油価格は値上がりしているが、JXTGホールディングス(IFRS方式)では各年度で評価減の戻入が行われている。(最終損益は在庫影響を除く損益よりも多い。)

営業損益 税引前損益 当期純損益
2017/3 2,711 2,491 1,500
(除 在庫影響) 1,411
2018/3 4,875 4,674 3,619
(除 在庫影響) 3,726


LG Chemは2019年4月30日に、SK Innovationがリチウムイオン電池技術を盗用したとし、米国
国際貿易委員会(USITC)に提訴したと発表した。

ITCは2019年5月29日に調査開始を決定、その後調査を行ってきたが、ITCは2月14日、SK Innovation敗訴の仮決定(Default Judgment)を下した。SK Innovationが「組織的かつ広範囲に証拠を隠滅した」とした。

SK Innovation は3月3日、これに対して異議を申し立てた。ITCは異議を受け付けるかどうかを4月17日までに決める。異議を受け付ける場合、10月5日までにSK Innovationが米国関税法337条に違反しているかどうか、違反の場合は米国への輸入を禁止するかどうかを決める。

ITCは3月20日、LG Chem、SK Innovationの電気自動車バッテリーの技術流出に関する仮決定の内容を公表した。

「SK InnovationはLG Chemの元社員から陽極材料、陰極材料関連の詳細なレシピ情報を盗み出した」、「L社(LG Chem)から取得した資料を他の場所に全て移動し、電子メールを全て削除するよう指示した」などとしている。

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LG Chemは2019年4月30日、SK InnovationがLG技術者を採用することにより、リチウムイオン電池技術を盗用したとし、LGの米国子会社と共同で、米国国際貿易委員会(USITC)とDelawareの連邦地裁に提訴したと発表した。

米国の関税法337条は、米国への輸入における不公正な行為により米国産業に被害が生じる恐れがあるときに、輸入品の排除、不公正行為の差し止めをITCが判断し、命令を発する権限を規定している。特許侵害は典型的な不公正行為にあたる。

LG ChemはUSITCに対し、LGの企業秘密を侵害するリチウムイオン電池のサンプルと基盤技術を米国に輸入するのを止めるよう求めた。SK Innovationが米国に建設している電気自動車バッテリー工場(下記)への技術や部品の輸入の停止を求める。

LGの主張:

SK Innovationは、LGのリチウムイオン電池部門の77人の高度の技術と経験を持つ従業員を雇用し、LGの企業秘密を取得した。

この技術はLGが世界で初めて商業用に開発した自動車用のパウチ型リチウムイオン電池で、世界中の自動車メーカー、家電メーカーに採用されている。

77人のなかには、最新型の電池を含むリチウムイオン電池のR&D、製造・組み立て、品質保証テストを担当する数十人のエンジニアを含んでいる。

その多くが、SKがパウチ型リチウムイオン電池の開発、製造をするのに役立てるべく、LGの企業秘密を盗んだ。

社内調査の結果、彼らはLGの秘密を盗み、それをSKに提供することで採用してもらっている。SKへの入社のための申請書や履歴書がLGのコンピュータに残っている。例えば、一人は電極製造プロセスに関する秘密情報をSKへの履歴書のなかに挿入していた。何人かはSKへの転職の前にLGのデータサーバーから400~1900件の技術資料をダウンロードしていた。

77人の転職が始まった2016年末から本年初めまでに、SKのEV電池の契約数量は14倍以上に増えている。

LGは以前に、韓国での同様のケースでSKに移動した5人の元従業員を競業禁止条項違反で訴えている。韓国最高裁は、LGの秘密情報が洩れる恐れが実際にあるとして競業禁止条項の発動を認めている。それにもかかわらず、SKは今に至るまでLG従業員を勧誘している。

これに対し、SKは「自然な転職だったにすぎず、技術を盗んだことはない」と反発した。

米国ITCは5月29日、調査開始(discovery)を決定した。

2019/5/7 LG Chem、リチウムイオン電池技術の盗用で米国で SK Innovationを提訴 

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決定文には、2018年にLGからSKに移籍した社員がSK社員に送った電子メールが証拠資料として示されている。

「これが唯一自分が持ち出した整理資料」と題する電子メールにはLG Chemが保有する「バッテリーのレシピ」に関するファイルが添付されていた。

バッテリーのレシピとは陽極材料を製造するためにニッケル、コバルト、マンガンなどを調合する比率、陽極材料と陰極材料を薄くコーティングする方法、それを一定のサイズに切断する方法などバッテリー製造に必要な「秘訣」が網羅されていた。
ファイルに含まれていた「レシピ」は57件に達した。

電子メールには「自動車モデル別情報」というファイルも含まれていた。
電気自動車を生産する場合、モデル別にそれに合わせたバッテリーを開発しなければならないため、そうした情報も機密に属する。
LG Chem関係者は「今回の訴訟過程でSK Innovationが3万4000件に達するファイルや電子メールを削除したことが判明しており、流出した情報量は推定困難な水準と推定される」と指摘した。

SKはLG出身者を経験者として採用するために面接を行い、そこで得た情報も不正流用していた。

陽極材料と陰極材料を生産するため、固体混合物を溶かし、液状の状態にする泥漿(スラリー)製造法、陽極材料・陰極材料のコーティング速度調整法などの工程技術 で、SKは応募者が面接用に提出したパワーポイントのファイルを社内で共有し、「短期間にL社(LG Chem)の電極工程ノウハウを吸収可能」「競合社のミキシング技術に対する多量の情報を得られるとみられる」などと評していた。

ITCはSKによる証拠隠滅についても詳細に記述した。

SKは2017年12月、LGが大田地裁に自社の社員の国内転職禁止を求める仮処分を申し立てると、本格的に証拠隠滅を開始した。

2018年には「チームルームに存在するL社関連資料、競合社との比較資料、L社から取得した資料などを他の場所に移動させ、電子メールを削除するように」と指示した。

2019年4月12日にはLG Chem関連の削除対象ファイル980件を整理したリストまで作成した。

このリストを作成したLG Chemの元社員がリストを削除した後、「ごみ箱」を削除せずに、パソコンに保存されたファイルをITCに証拠として提出したことで発覚した。

ITCは「SK Innovationの証拠隠滅がLG Chemの訴訟進行に被害を与えたのはもちろん、判事が公正かつ効率的な裁判を進める上でも足かせになった」と指摘した。

ITCは「こうした状況からみて、適法な法的制裁は早期の(SK)敗訴判決しかない (Contrary to SKI's suggestion, default is the only appropriate remedy here.)」とする結論を下した。

これについて、SK Innovation関係者は「先月の早期敗訴判決の際に表明したように、円満な解決のために努力するという立場で何も変わってはいない」と述べた。

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ITCの最終決定は今年10月5日までに下される予定。

最終決定では関税法337条(知識財産権侵害)に違反しているかどうか、SK製品の米国への輸入禁止措置などに関する判断が下される。

ただ、双方が和解した場合にはその時点で訴訟が終了する。

SK Innovationは2019年3月から米ジョージア州に電気自動車バッテリー工場を建設している。双方が和解できないまま、ITCの最終決定が下されれば、2022年からフォルクスワーゲンの米国工場にバッテリーを供給するとしていた計画にも支障が生じかねない 。

SK Innovationは2018年11月26日、米ジョージア州Commerce市に1兆1396億ウォン(約1140億円)を投資して、電気自動車用バッテリー工場を建設することを明らかにした。

韓国企業が米現地に電気自動車用バッテリー工場を建設するのは、2012年に完成したLG Chemのミシガン州ホランド工場に次いで今回が2度目となる。


SK Innovationは、LG Chemと同様、
米国と中国と極東、そして欧州というEVマーケットのシェア9割を占める地域をカバーする。

北米でVolkswagenグループへの供給が決まっている。

2018/12/4 SK Innovation、米に電気自動車バッテリー工場を建設、LG & Samsung も各地で増設 

トランプ米政権と与野党の議会指導部は3月25日未明、新型コロナウイルス対策として2兆ドル規模の景気刺激策で最終合意した。25日中にも上下両院で可決し、早期成立を目指す。

Larry Kudlow 国家経済会議(NEC)委員長は、政府からの資金拠出を通じた連邦準備制度理事会(FRB)による企業などへの資金供給が4兆ドルになると説明。経済対策効果は財政支出分を含め「総額で6兆ドル」と述べた。

ーーー

トランプ政権がCOVID-19 への対応のために打ち出した本格的な景気浮揚策は当初、議会の反対で行き詰まった。

トランプ政権は当初、景気刺激策の規模を1兆ドルと想定していたが、医療現場の資金支援策などを積み増して、財政支出だけで1.6兆~1.8兆ドルになり、米連邦準備理事会(FRB)の追加策を加えれば2兆ドルを超える。

民主党も経済対策の規模には賛同するが、企業救済策が選挙戦に利用されかねないと強く警戒し、「何の責任も負わない大規模な企業救済」と批判した。

米国史上最大規模の緊急景気浮揚予算案は、3月22日(日曜)に上院で討論終結(Cloture)議案が否決され、投票に至らなかった。

  共和党 民主党 民主系
無所属
合計
賛成 47 47
反対 1 45 1 47
棄権 5 1 6
合計 53 45 2 100

翌3月23日、再度投票が行われたが、同じく否決された。

  共和党 民主党 民主系
無所属
合計
賛成 48 1 49
反対 44 2 46
棄権 5 5
合計 53 45 2 100



フィリバスターを避けるため、3/5以上(60人以上)の賛成が必要であるが、共和党が53議席を持つにもかかわらず、過半数にも至らなかった。

共和党の5人が棄権したが、共和党上院議員1人がコロナウイルステストで陽性となって棄権し、他の4人も感染を懸念して自宅隔離し、棄権した。

さらなる感染拡大が懸念されており、共和党があと2人欠席すると、野党47、与党46となり、上下院ともに野党多数となりかねない。

報道によると、総額2兆ドルにもなるこの法案の内容は下記の通り。

 ・個人に1200ドル(夫婦に2400ドル、子供一人に500ドルずつ)の現金支払い(年収75000ドル以上の場合は減額)
 ・中小企業の、レイオフ回避、給与支払い補助のための3500億ドルの基金
 ・被害を受けた産業へのローン、保証、投資のため財務省が5000億ドルを用意
 ・ローンを受けた企業は、その期間は自社株の買戻しを禁止、その企業で425千ドル以上の給与を受ける役員等は次の2年間昇給無し
 ・保険業者は追加コストなしでコロナウイルス予防サービスを対象に加える。
 ・雇用維持の税額控除
 ・ヘルスケア補助に2400億ドル、病院補助に750億ドル、退職軍人のヘルスケアに200億ドル、緊急公共輸送に200億ドル、
  空港救済に100億ドル、CDC補助 45億ドル、航空会社補助のローンに500億ドル、貨物航空補助に80億ドル、
  国防維持に必要な事業(不特定)の補助に170億ドル
 ・失業保険強化(各州の規定に加え、最長4カ月、週600ドルを加算)

野党民主党は、特に以下の点で反対している。

 ・被害を受けた産業への支援の5000億ドルは、対象や目的などの規定がなく、財務省の裁量に任されている。
  民主党はこれを従業員に向けるような規定を求めている。
 ・病院や、必要な人工呼吸器・マスクなどへの支援の増加が必要。

トランプ大統領は3月23日、「これ以上の党派のゲームは避けるべきだ 。政治的な目的ではなくアメリカ国民のニーズに正面から向き合うべきだ」」と述べ、早期の法案の成立を求めた。

そのうえで「私たちは労働者を迅速に救う。規模の大小を問わず、アメリカ企業を救う」と述べ、民主党の意見を取り入れることを示唆し、早期の法案の成立を求めた。

トランプ大統領は3月24日、ツイッターで議会を批判した。

Congress must approve the deal, without all of the nonsense, today.
The longer it takes, the harder it will be to start up our economy. Our workers will be hurt!


民主党のペロシ下院議長3月23日、新型コロナウイルス対策として2兆5000億ドル規模の景気刺激のための法案を公表した。この日、再度阻止された上院共和党の景気対策法案を巡る交渉を方向づける狙いがある。

金融機関は住宅ローンや自動車ローン、クレジットカードの支払いを一時的に猶予するよう義務付けられる。
また、借り手が住宅ローンの支払いを最長360日停止できるよう、連邦準備制度に対し債権回収会社への流動性供給を命じる条項も盛り込まれた。

さらに公共住宅の住民は家賃の支払いを一時的に猶予され、学資ローンの借り手は債務1万ドルが免除されるとしている。 

消費者ローンでの消費者に不利になる信用レポートは停止され、差し押さえや立ち退きは禁止される。

ペロシ下院議長は3月24日、「大きな進展があった」と述べた。政権や与党共和党と続ける協議で近く合意できる可能性があるとの見方を示した。

最終的に与野党協議で、政府案の5千億ドルの企業支援策について、(1)経営者の報酬増に使わない、(2)自社株買いにあてない、(3)使途は議会が監視する――などの条件で合意した模様。


付記

上院は3月25日夜11時、この法案を出席者全員賛成で可決した。下院に回す。

  共和党 民主党 民主系
無所属
合計
賛成 49 45 2 96
反対
棄権 4 4
合計 53 45 2 100

3月23日にコロナで棄権した共和党の5人(陽性が1人、隔離が4人)のうち、2人が出席、他に1人が病気で欠席した。

下院は3月27日、発声投票による採決を実施し、ほぼ全会一致で可決した。トランプ大統領が直ちに署名し、法案は成立した。
下院議員2名がコロナ陽性と判明、少なくとも36名が自宅隔離となっており、投票による採決を避けた。

ーーー

トランプ大統領は3月6日、議会上下両院が可決した新型コロナウイルス対策用の83億ドルの緊急補正予算法に署名し、同法が成立した。

トランプ政権は2月24日、議会に対して最低25億ドルの緊急予算を要求したが、議会民主党は不十分と批判していた。 今回の予算法案は下院で415対2、上院でも96対1の圧倒的な賛成多数で可決された。

可決された83億ドルの予算のうち、ワクチンなどの研究・開発費用(30億ドル以上)、連邦・州・自治体の公共衛生機関への財政支援(22億ドル)などが含まれる。
ビジネス支援に関しては、10億ドルを新型コロナウイルス拡大により資金的損害を受けた中小企業などへの低利融資に充てるとしている。
また、4億3,500万ドルを外国の医療機関への支援として計上している。

トランプ米国大統領は3月18日、議会が可決した第2弾の新型コロナウイルス対策法案(「家族第一・コロナウイルス対応法」)に署名し、同法が成立した。


第2弾の対策法では、個人への支援が主となっており、新型コロナウイルスの検査無償化や、従業員がウイルスの影響で休暇を取得せざるを得ない場合の所得保証などが盛り込まれている。

新型コロナウイルスの検査無償化については、無保険者向けの公的プログラムに資金を拠出するとともに、民間医療保険に被保険者の検査費負担を無料にすることを義務付けている。

コロナウイルスの影響で出勤できない従業員への雇用の保証や有休疾病休暇の与え方、給与の支払い額、休業した従業員に支払った給与の税控除などについて定めている。

このほか、低所得者向けの食料補助プログラムや、失業保険拡充のための各州への財政支援などが含まれている。

法律成立から15日以内に有効となり、20201231日に失効する。

今回の法案は、これに次ぐ本格的な対策である。


韓国では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染者が増加しており、韓国政府は危機警報を「深刻」段階へと引き上げた。大邱広域市,慶尚北道清道郡及び慶尚北道慶山市では、「感染症特別管理地域」に指定されている。

一方、韓国ではウイルス感染の有無を調べるPCR検査が急速に普及している。

オックスフォード大学の研究者らのグループ Our World in Dataは、新型コロナウイルスについてのいろいろなデータを公開している。
  https://ourworldindata.org/coronavirus

それによると、世界の国と地域で行われた検査の数は、中国を除き、韓国が突出して多い。イタリアがこれに次ぐ。
(下図はタテが検査数、ヨコが陽性数で、目盛りはいずれも対数)

日本の検査数は、ロシア、米国、豪州、英国、スペイン、台湾等より少ない。

死者:

韓国では、ドライブスルー方式、ブース方式を採用するなど、1日に平均およそ1万2000件の検査を行っている。

自動車に乗ったまま、鼻と口からウイルス検体を採取する drive through方式は、2009年の新型インフルエンザ流行時に米スタンフォード病院で初めて導入されたが、今回,、仁川医療院感染内科専門医の提案で韓国で多数導入され、70カ所運営されている。ドライブスルー方式では1回あたり5-10分に短縮、 検査件数を増やすのに大いに貢献した。

病院の屋外に設けられたテント内に、ウイルスを外に出さないよう気圧の下げられた電話ボックスに似たブースが並ぶ。
ブースでの検査は問診から検体採取まで平均7分ほどで、結果は約6時間後に検査を受けた人の携帯電話に送られる。
ブースは消毒と換気をすれば約10分後に次の検査に使える。

韓国の新型コロナウイルス診断能力に海外が注目している。韓国の洪楠基・経済副首相兼企画財政部長官は3月20日、新型コロナウイルスの検査キットを提供してほしいとの要請が米国を含め数カ国からあり、検討していると明らかにした。

国の診断キット業者が注目を集めるのは、中東呼吸器症候群(MERS)、エボラ出血熱、新型インフルエンザなどを経験し、ノウハウを蓄積し、迅速な意思決定が可能な博士・教授出身の専門家が会社を率いている点 である。

3月16日現在で食品医薬品安全処から販売許可を得ているのは5社で、うち4社 (Kogene Biotech、Seegene、SolGent、SD Biosensor)が診断キットを大量生産し、国内の需要を満たし、海外にも輸出している。

関東化学は韓国のKogene Biotech製のリアルタイムPCR法を用いたキットの輸入販売を始めた。

4社には代表が博士、教授出身の専門家だという共通点があり、中小バイオ企業は専門家の迅速な判断と決定で先手の対応を取ることができた。

Kogene Biotechのナム・ヨンソク代表は、高麗大の生化学・分子遺伝学博士出身で、延世大機械工学部でバイオエンジニアリング部門の兼任教授を務める。
SD Biosensor
のイ・ヒョグン代表は20年間にわたり、血糖測定器やさまざまな診断キットを開発した。
Seegeneのチョン・ジョンユン代表は米テネシー大生命工学博士で、梨花女子大で生物学科教授を歴任した。
SolGentのユ・ジェヒョン代表は忠北大微生物学科の博士出身。

各社は感染症診断に関するノウハウを蓄積してきた。

Kogene Biotechは2009年の新型インフルエンザ、2015年のMERSの際に製品を開発し、政府や医療機関に供給した。
SolGent、SD Biosensorもエボラ出血熱、MERSの診断キットを開発した。

WHOは2020年1月5日、中国での原因不明の肺炎の流行を発表、韓国で最初の確定患者が出たのは1月20日である。だが、Kogene BiotechSD Biosensor、SeegeneはWHOの1月5日の発表直後に、このウイルスが韓国に入ってくるだろうと予想し、診断キットの開発に着手した。SolGentも中国の代理店からの要請を受け、1月17日に開発に乗り出した。

各社とも、下部の慎重論をトップが覆し、開発に乗り出したとされる。1月20日に韓国で最初の確定患者が出る前に試薬の製造に入った。

韓国政府も通常1年程度かかる認証を数週間に短縮した。

食品医薬品安全処は2017年3月の新型感染症発生時に、新規診断試薬と検査法を即時に利用できる緊急使用承認制度を導入した。

未知の感染症が発生したら緊急性を考慮して臨床試験などを省略し、新診断法を迅速に審議してすぐに使えるようにした。

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杏林製薬は3月17日、遺伝子定量装置「GeneSoC®」を用いて、新型コロナウイルス検査の実証実験を開始すると発表した。医療機関などで検査精度を実証したり、操作性を確認したりし、2020年3月中の利用開始を目指す。

3月10日に「新型コロナウイルス緊急対応策(第2弾)」が閣議決定され、政府が「産業技術総合研究所等が開発したPCR検査の時間短縮を可能とする迅速ウイルス検出機器(GeneSoC)について、医療機関等において検査精度等に関する実証や操作性の確認を行い、3月中の利用開始を目指す」と公表したことを受けて実施する。

GeneSoCは、産業技術総合研究所(産総研)が開発したマイクロ流路型サーマルサイクル技術を用いて15分程度 (前処理時間を除く)と短時間で試料中のターゲット遺伝子を同定することができる、小型の超高速遺伝子定量装置。研究用機器として201911月より販売を開始している

本装置は 、迅速・適確・簡便にヒト・動植物・微生物の遺伝子や微生物が有する薬剤耐性遺伝子等を同定できるため、基礎・臨床研究ならびに感染症をはじめとする各種検査・診断分野への応用が期待されており、現在、医療用機器としての開発もめている。

杏林製薬は、新型コロナウイルスの迅速な検出方法における開発の一環として、本事業に対して全面的に協力する。

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現在国内で使われる「PCR検査」は、DNAをその複製に関与するプライマー等を用いて大量に増幅させる方法で、ごく微量のDNAであっても検出が可能だが、機械にかけて遺伝物質の量を増やさなければならず、結果が出るまでに6時間程度が必要である。

神奈川県衛生研究所と理化学研究所は2月27日、既存のリアルタイムPCR装置をそのまま利用することができ、増幅時間の短縮及びエネルギー消費量の削減が可能なSmartAmp法を開発したと発表した。

これは、PCR のような複雑な温度制御を必要としない。67℃での反応のみのため、大量必要機器小型最適。

2020/2/29 COVID-19 ウイルス、迅速検出

産業技術総合研究所は、2001年に米国で発生した炭疽菌事件をきっかけとして、「迅速」 「小型化」を目指した新規PCR技術の研究を開始した。

このPCR技術の研究は、産総研発ベンチャーである㈱ジェイタスに受け継がれ、マイクロ流路を活用することでサーマルサイクルの迅速化を達成した「GeneSoC®」が開発された。

その後2017年9月に㈱ジェイタスは杏林製薬に吸収合併され、杏林製薬はマイクロ流路型サーマルサイクル技術の多分野での活用に着手した。

ーーー

GeneSoCは、マイクロ流路型サーマルサイクル技術に基づき、蛍光標識プローブを用いて核酸増幅をリアルタイムで検出する遺伝子定量装置であ る。(リアルタイムPCR法)


異なる温度帯の複数のヒーターに接したマイクロ流路内で測定試料を繰り返し往復移動させて、温度を素早く変化させる。短時間で核酸を定量できる。


本体と検出ユニットによる構成で、検出ユニットは、最大4台まで増設でき、複数試料の同時検査が可能。また、検出ユニットは独立して制御されるため、測定中であっても別ユニットを用いて別の検査を実行でき る。


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参考

2020/2/29 COVID-19 ウイルス、迅速検出  神奈川県衛生研究所と理化学研究所 SmartAmp法(上記)

2020/2/29 新型コロナウイルスの簡易検査開発へ 大阪大学発バイオベンチャー「ビズジーン」 免疫クロマト法

2020/3/14 クラボウ、15分で判定可能な「新型コロナウイルス抗体検査試薬キット」の販売開始 免疫クロマト法

2020/3/20 塩野義製薬も新型コロナウイルス検査キットを導入へ 免疫クロマト法


世界の主要な中央銀行が新型コロナウイルスの感染拡大を受け、金融市場への資金供給を急拡大させている。

米連邦準備理事会(FRB)の3月18日時点の総資産残高は4兆6680億ドルとなり、1週間前に比べて約3500億ドル増え、量的緩和第3弾(QE3)で資産が膨らんだ際の残高も上回った。

3月23日には米国債や住宅ローン担保証券の買い入れ量を当面無制限とする緊急措置を決めた。さらに、短期金融市場にゼロ金利で供給する新たな措置も決めた。

ーーー

2019年2月20日に公表した米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で、2017年秋から続く保有資産の縮小を2019年中に終了する方針を明らかにした。

3月20日の米連邦公開市場委員会で「量的引き締め」は2019年9月末で停止すると決めた。実際には2019年7月末で終了した。

FRBの発表によると、アメリカの雇用市場はなお力強く、経済活動も堅調に伸びている。


2019/8/1 FRB、10年半ぶり利下げ、資産縮小も終了

しかし、米市場で資金需給が逼迫して短期金利が急上昇するなど不安定な状況が続いた。

このため、FRBは2019年9月中旬、レポ取引(Repurchase agreement:国債を担保にした短期資金の供給)を通じた資金供給オペを開始した。1日に2000億ドル規模で供給したこともあった。

これに加え、FRBは10月11日、短期金融市場の資金不足解消のため、短期国債を月600億ドルのペースで購入すると発表した。10月15日から開始し、少なくとも2020年4~6月期まで続ける とした。


2020年3月に、
新型コロナウイルスの感染が米国にも拡大、経済への悪影響が懸念されるようになった。

FRBは3月15日、3月3日に続いて再び臨時の会合を開き、新型コロナウイルスの感染拡大による経済への悪影響を抑えるため、政策金利を一気に1%引き下げ、事実上のゼロ金利政策に踏み切ることを決定した。前月末から一気に1.50%下げた。

2020/3/16 米FRB、政策金利引き下げ 事実上ゼロ金利導入

これに加え、FRBは財務省証券などの債券を少なくとも7,000億ドル買い増す、いわゆる資産買い入れ策の再開も併せて発表した。 向こう数か月、財務省証券を少なくとも5,000億ドル、モーゲージ担保証券(RMBS)を少なくとも2,000億ドル、合計で少なくとも7,000億ドル買い増す。

これ以外に、準備預金率を0%に引き下げ、また民間銀行への貸出制度の拡充策も決めた。

3月17日には企業の資金繰りを抜本的に支援するため、企業が短期資金の調達に使うコマーシャルペーパー(CP)を買い入れる緊急措置を発動すると発表した。

企業に直接、潤沢な資金を供給して景気の一段の冷え込みを避ける。FRBによるコマーシャルペーパーの買い入れはリーマン・ショック時の2008年から2010年以来となる。

更に、FRBは3月23日に臨時の連邦公開市場委員会を開き、米国債や住宅ローン担保証券の買入量をさきに決めた7,000億ドルから「必要量」に切り替え、当面無制限とするとした。

また、短期金融市場にゼロ金利で供給する新たな措置も決めた。金融機関が国債などを担保に短期資金をやりとりする「レポ市場」が対象で、これまでは政策金利(0~0.25%)と連動するフェデラルファンド(FF)金利を基準としたが、FF金利は乱高下するため、翌日物に限り、ゼロ金利で資金を供給する。

さらに、消費者ローン、自動車ローン、学生ローンなどを担保とする資産担保証券の買い入れも決定した。

ーーー

この結果、FRBの3月18日時点の総資産残高は4兆6680億ドルとなった。

付記 3月25日時点の総資産は5兆2542億ドルに膨らんだ。

2019年7月末で保有資産の縮小を止めたが、直後の9月からは短期金利の状況を抑えるためレポ取引などで資金供給を増やし、本年3月にコロナウイルス対策で資産買入を再開、QE3で膨らんだ際の残高を上回った。

欧州中央銀行(ECB)は3月18日夜、臨時の理事会を開き、新たに7500億ユーロの枠を設け、2020年末までに国債や社債などの資産を購入して資金供給することを決めた。

新型コロナウイルスの感染拡大による経済の悪化と金融市場の不安定化に対応する。市場の安定を通して緩和の効果が企業などに行き渡りやすくする。

ECBは3月12日の定例理事会で、従来の月200億ユーロペースでの資産の買い取りに加え、年末までに総額1200億ユーロの資産を購入する緩和策を決めた。

しかしその後も、イタリアの長期金利が大きく上昇するなど、金融市場が不安定になっていた。

3月18日の深夜の時間帯に異例の決定を行なった。ECBのラガルド総裁は「普通でないときには普通でない行動が必要になる」とツイッターに投稿した。

月200億ユーロの量的緩和(年間2400億ユーロ)、3月12日決定の1200億ユーロを加え、年間1兆1100億ユーロの緩和となる。

ーーー

欧州中央銀行(ECB)は2018年の9月13日の理事会で、毎月の債券買い入れ額を10月から月150億ユーロに半減させること、債券買い入れ策を年末までに終了させ、少なくとも2019年夏までは金利を過去最低水準にとどめることを決めた。

2018/9/22 欧州中銀、債券買い入れを年末で終了

しかし、欧州中央銀行(ECB)は2019年9月12日の定例理事会で、利下げや量的緩和の再開を含む包括的な追加金融緩和策の導入を決めた。
2018年末で終了していた量的緩和については、11月から月200億ユーロの資産購入規模で再開 した。

2019/9/13 欧州中銀、3年半ぶり利下げ、量的緩和再開 

欧州中央銀行(ECB)は2020年3月12日開いた理事会で、新型コロナウイルスの感染拡大で動揺する欧州経済を支えるため、月200億ユーロのペースで国債などの買い入れに加え、年末までに1200億ユーロの資産を追加購入すると決めた。

しかし金融市場の混乱が続いていることから、更なる拡大が必要と判断し、今回、2020年末までの期間限定で7500億ユーロの資産を追加購入すると決定した。

月200億ユーロの量的緩和(年間2400億ユーロ)、3月12日決定の1200億ユーロを加え、年間1兆1100億ユーロの緩和となる。

ーーー

EUのフォンデアライエン欧州委員長は3月20日、新型コロナウイルス感染拡大が経済危機を招くのを防ぐため、各国の財政赤字をGDPの3%以内に抑える規則を一時棚上げする例外条項の発動を発表した。

欧州債務危機を受け、2011年に「財政安定化・成長協定」に一般免責条項を設け、危機時には財政目標からの逸脱を容認するが、今回、初めてこれを適用する。

委員長は声明で「加盟国政府は予算を必要なだけ経済対策につぎ込める」と述べた。

各国は独自に経済対策を打ち始めている。

ドイツのメルケル政権は新規の国債発行をゼロにする健全財政路線を棚上げし、1500億ユーロ規模の追加予算を計上する方針を固めた。基本法(憲法)で均衡財政が義務付けされているが、例外規定を使う手続きに入る。

ユーロ圏には1997年6月締結の「財政安定化・成長協定(SGP:Stability and Growth Pact)」がある。

・ 単年度の財政赤字額の比率がGDP の 3% を上回ってはならない
 (ここでいう財政とは、中央政府に限らず、地方政府などのすべての公共財政の合計を指す)
・ 国債残高が GDP の60%を下回ること

その基準をクリアできず、EU経済財務相理事会が「過剰な赤字」と評価すれば赤字是正が勧告され、その後、赤字の解消に進展がないとみなされればペナルティー(罰金)が科される。

1990年代半ばにドイツの連邦財務相Theodor Waigelが提唱したもので、単一通貨圏において、一国が多額の借り入れを行い、中央銀行が通貨膨張の圧力にさらされ、インフレになった場合、1つの国の浪費によるコストを他のすべての国々に拡散して負担させることになり、同盟でも弱体化させるからである。

しかし、ドイツとフランスは、2002年以降3年連続で違反を続け、罰金の適用も停止させた。

フランスとドイツの圧力を受け、2005年3月の欧州理事会で見直しが行われ、財政赤字規律の条件を超えても、「小幅かつ一時的」な場合、経済成長がマイナスであれば過剰財政赤字とはみなされないことになった。

その後、ギリシャ問題が発生した。ギリシャの財政危機が世界的な株価急落を引き起こし、通貨ユーロの下落を招いた。

2010/5/10  統一通貨ユーロの危機

問題は南欧諸国に波及した。

PIIGS諸国(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン)から更にFISH諸国(フランス、イタリア、スペイン、オランダ)が問題視された。

2013/3/5 ユーロ圏の不安、PIIGS からFISHに拡大 

現在は、イタリアとフランスが問題になっている。

イタリアの場合、財政赤字はGDP比で3%未満で基準を満たしていたが、公的債務は130%超で、債務の持続可能性を確保するため、構造的財政収支の中期目標(MTO)をGDP比率でゼロ%に設定、毎年の構造収支の改善を求めている。

2019/5/10 イタリアの2019年度見通し、債務削減の対EU公約未達へ 


フランスは2017年と2018年を除き、違反を続けている。2019年も -3.1%となった。フランスの赤字は一時的なものではないが、EUは罰金を課していない。


2018/12/20 フランスの2019年の財政赤字、GDP比3.2%に

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