大阪大や北海道大などのチーム新型コロナウイルスを短期間で人工合成する方法を開発した 従来は合成に数か月かかったが、この方法を使うと2週間に短縮できるという。ウイルス遺伝子の改変も容易にでき、世界で拡散する変異ウイルスの解析に役立つとしている。

4月1日付で英国科学雑誌「Cell Reports」にオンライン公開された。
  
"Establishment of a reverse genetics system for SARS-CoV-2 using circular polymerase extension reaction"

ウイルスの人工合成は、大腸菌にウイルスの遺伝子を組み込んで複製を作る方法が一般的だが、新型コロナは遺伝情報が多く、そのままの状態で複製すると予期しない変異が起きやすい。
このため限られた研究者しか合成できず、時間もかかっていた。

大阪大学の微生物病研究所の鳥居志保特任研究員、感染症総合教育研究拠点の松浦善治特任教授、北海道大学大学院の福原崇介教授らの研究グループは、CPER法を用いることにより、わずか2週間で新型コロナウイルスを人工合成する新しい技術を確立した。

CPER(Circular Polymerase Extension Reaction) 法はPCRを活用した手法で、重なる領域を有する遺伝子断片を鋳型にDNA合成酵素 (ポリメラーゼ) を用いて伸長反応を実施することにより、遺伝子断片が連結した環状のDNAを作出する方法。2013年に発表され、デング熱を起こすデングウイルスなどが含まれるフラビウイルスのワクチン開発に活用されている。

本技術により、
 ・従来数ヶ月かかっていたウイルスの合成が大幅に短縮されることで新型コロナウイルスの研究開発が加速化する。

 ・世界中で出現する様々な変異を持つ新型コロナウイルスに対しても迅速に解析することが可能となる。

 ・外来遺伝子を組み込むなど遺伝子操作をしたウイルスを用いた研究は病原性解析や予防法・治療法の開発にも応用可能。


手法は下記の通り。

ステップ

新型コロナウイルスの遺伝子全長をカバーする9個のウイルス遺伝子断片とプロモーターを含むリンカー断片をPCRで増幅。
各断片が隣り合う断片と重なる領域を持つよう設計。

ステップ

各断片が隣り合う断片と重なる領域を持つよう設計されているため、もう一度PCRを行うと、10個の断片が一つに繋がり、ウイルス遺伝子全長をコードする環状のDNAを作製できる。

ステップ

この環状DNAを新型コロナウイルスがよく増殖する培養細胞に導入すると、細胞の中でDNAをもとにRNAが合成され、さらにこのRNAをもとにウイルスが合成されて、約7日間で感染性の新型コロナウイルスを作出することができた。

高度な遺伝子操作技術を用いずに、PCRのみで新型コロナウイルスの感染性DNAクローンを作製できることが分かった。

さらに、GFPなどの蛍光タンパク質を導入したウイルスや、任意の遺伝子を変異させたウイルスも作出可能であることを示した。

ウイルスに蛍光タンパク質を導入すると、ウイルスが感染した細胞で蛍光タンパク質が発現するため、感染細胞を可視化することができる。

これまでの大腸菌にウイルスの遺伝子を組み込む方法でのウイルスの人工合成は限られた研究者しか出来ず、時間もかかっていた。
本研究成果により、より多くの研究者が迅速・簡便に新型コロナウイルスを合成できるようになり、人工的に遺伝子改変したウイルスを用いた病原性解析やワクチン・抗ウイルス薬の開発、また、次々と現れる変異ウイルスに対するこれまで以上に素早い解析が可能となる。

新型コロナウイルス感染症克服に向けた研究が飛躍的に進むことが期待される。

ソウル中央地方法院は3月29日、元従軍慰安婦の女性らが日本政府に損害賠償を求めた訴訟で1月 に勝訴した件で、原告が訴訟費用確保のために日本政府の資産差し押さえを求めたのに対し、これを否定する決定を行なった。4月20日に韓国法曹界が明らかにした。

別途、元従軍慰安婦らが日本政府を相手取り損害賠償を求めた訴訟で、ソウル中央地裁は4月21日、国家は外国の裁判権に服さないとする国際法上の「主権免除の原則」を認め、訴えを却下した。(後述)

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韓国で旧日本軍の元従軍慰安婦の女性らが日本政府に損害賠償を求めた訴訟で、ソウル中央地裁は1月8日、請求を認め日本政府に賠償支払いを命じる判決を出した。

調停申請時、原告は12人だったが、多くが他界し、生存者は5人となっている。

ソウル中央地裁は、原告1人あたり1億ウォン(約948万円)の支払いを命じる原告勝訴の判決を出した。

地裁は仮執行を認めており、日本政府が控訴をするかしないかの判断に関わらず、韓国内にある日本政府資産の差し押さえ手続きを取ることが可能になる。

実際に日本政府資産の差し押さえは難しい。

在韓日本大使館の建物と敷地、大使館の車両などは、ウィーン条約第22条第3号が「公館、公館内にある用具類その他の財産及び使節団の輸送手段は捜索、徴発、差押え又は強制執行を免除される」と規定しており、強制執行が不可能である。

日本文化院も外務省所属の政府機関であり、各国派遣大使館(または総領事館)の一部としてウィーン条約の特権が保証される。

日本国内の日本政府資産に対する差し押さえも、韓国の裁判所が日本司法当局を相手に「執行承認」を要請しなければならず、日本の裁判所が執行を許諾する可能性はない。

2021/1/8 元慰安婦訴訟で日本政府に賠償命令 

日本政府は、国家は外国の裁判権に服さないとする国際法上の原則「主権免除」を理由に裁判を認めていない ため、原告は韓国内にある日本政府の資産を差し押さえることを検討し、地裁に日本政府が韓国内に所有する財産の開示を求める手続きを申し立てていた。

1月の判決では、「訴訟費用は日本が負担せよ」としている。

原告は訴訟費用の確保のため日本政府の資産差し押さえを求めた。

これに対し、ソウル中央地方法院民事34部は3月29日に韓国政府の「国庫による訴訟救助取立決定」を下した。

「国家が訴訟救助決定により原告に納入を猶予するようにした訴訟費用のうち、日本から取り立てることのできる訴訟費用は無いという点を確認した」とした。

裁判所関係者は「"強制執行"に関する判断で、これまでの判決である"勝訴"に関する部分ではない」と説明した。

決定は、確定判決を有効としつつ、外国の資産への強制執行はその国家の主権侵害にあたる可能性を指摘 し、韓国内の日本政府の資産を差し押さえた場合、「憲法上の国家安全保障、秩序維持、公共の福祉と相反する結果を招く」と懸念を示した。

当初の判決とは異なり「訴訟費用を日本政府が負担する必要はない」と明示しており、「強制執行は国際法違反」など勝訴判決そのものを問題視する内容も多く指摘している。

本案訴訟は日本政府の国家免除を認めず、原告勝訴判決を確定した。しかし、外国に対する強制執行は該当国家の主権と権威を傷つける恐れがあり、慎重なアプローチが必要 である。
同事件の訴訟費用を強制執行することになれば国際法に反する結果を招くことになる。

外国政府の財産に対する強制執行は現代文明国家の間の国家的威信に関連することで、これを強行すれば司法府の信頼を損なうなど重大な結果につながりかねない 。
今回の事件は、記録に残されたすべての資料を見ても、国連の国家免除条約上の外国政府に対する強制執行要件を満たしていない。
日本政府の財産を強制執行すれば、憲法上の国家安全保障、秩序維持、公共福利と相容れない結果に達することになる。

日本政府に対してこの事件の訴訟費用の取立決定を行うことは、国際法に違反す る。ウィーン条約によると、どの国家も国際条約を履行しないことを正当化するために司法府の判決など一切の国内的事情を援用してはいけない。
大法院の判例で、確定判決による権利も信義誠実の原則により行使されるべきで、判決に伴う執行が権利乱用になる場合には許されない。

(1965年の韓日請求権協定と2015年の韓日慰安婦合意にも言及し)最近も両国政府は慰安婦合意の有効性を確認し、相当数の被害者が基金(和解・癒やし財団)から金員を受け取るか、残額が日本に返還されなかった 。

国際司法裁判所(ICJ)はほぼすべての平和条約と戦後処理慣行において、国家間で総額精算を行う場合、犠牲者一人ひとりに対する賠償は必須規範ではないと判断した 。
また、ICJは戦時に他の国家領土で武装軍隊によって行われた不法行為に伴う損害に関して国家免除を認めている。
*1月の判決では、韓半島(朝鮮半島)は武力紛争の当事者ではなかったために、ICJ事例を適用することはできないとしていた。


慰安婦被害者側は今回の決定に関係なく、日本政府が慰謝料の支払いを行わない場合、強制執行手続きを踏むという立場 で、被害者訴訟代理人は4月13日に「日本が韓国で所有している財産目録を提出するように命じてほしい」としてソウル中央地方法院に財産明示申請を出した。

今回の地裁決定で、賠償の履行を目的とした日本政府の差し押さえも認められない可能性が高くなった。

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韓国の元従軍慰安婦らが日本政府を相手取り損害賠償を求めた訴訟で、ソウル中央地裁は4月21日、国家は外国の裁判権に服さないとする国際法上の「主権免除の原則」を認め、訴えを却下した。

「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」が支援する元慰安婦の李容洙氏や遺族ら20人が2015年の韓日慰安婦合意から1年後の2016年に提起した。

「精神的、肉体的な苦痛を受けた」として計約30億ウォン(約2億8千万円)の損害賠償を日本政府に請求した。

日本政府が、国際法上の「主権免除」の原則を理由に訴訟に応じてこなかったため裁判が進展していなかったが、裁判所が公示送達の手続きを取ったことで、昨年から動き始めた。

当初1月13日に元慰安婦や遺族の20人による訴訟の判決が言い渡される予定であったが、判決は延期され、裁判所は追加の審理の必要性があるとみて弁論を再開した。

今回、1審のソウル中央地方裁判所は判決で、「国際慣習法や韓国の最高裁判所の判例にのっとり、外国の主権行為について損害賠償の訴えは認められない」として、「主権免除」の原則が適用されるとの判断を示し、原告側の訴えを退けた。

理化学研究所、東京大学、京都大学、科学技術振興機構は4月19日、共同研究グループが 新型コロナウイルス由来のウイルスRNAを「1分子」レベルで識別して5分以内に検出する革新的技術の開発に成功したと発表した。次世代の感染症診断法の核心技術としての応用展開が期待でき るとしている。

本研究は、科学雑誌『Communications Biology』のオンライン版(4月19日付)に掲載された。

Amplification-free RNA detection with CRISPR-Cas13

現在行なわれているPCR検査は、検出に最短で1時間程度かかり、検出エラーも発生することから、大量の検体を短時間かつ高精度に解析することが困難である。

今回、SARS-CoV-2由来のウイルスRNAを「1分子」レベルで識別して5分以内に検出する革新的技術、SATORI 法(CRISPR-based amplification-free digital RNA detection法を開発した。

ウイルスの遺伝物質があると活性化する酵素を利用する。

採取した唾液など検体の中のウイルスの殻を界面活性剤などで壊し、この酵素が入った溶液と混ぜ、微小な試験管が集まったプレート上で反応を見る。
酵素が活性化すると光る蛍光物質を検出することで、陽性だと確認する。

これは下記の2つの先進技術を融合したもの。

理化学研究所の渡邉力也主任研究員グループが専門とする「マイクロチップを利用した酵素反応の1分子検出技術

半導体製造プロセスを活用して微細構造をチップ上に造形する技術 で、容積3フェムトリットルの世界最小レベルの微小試験管を約100万個集積したマイクロチップを造形した。

東京大学の西増弘志教授、濡木理教授グループの「核酸切断酵素CRISPR-Cas13a(Cas13a)」

多くの細菌は、「CRISPR-Casシステム」と呼ばれる獲得免疫システムを備えている。 CRISPR-Cas獲得免疫システムは6つのタイプ (I~VI型) に分類されている。

VI型CRISPR-Casシステムに関与するCRISPR-Cas13aは、ガイドRNAと複合体を形成し、ガイドRNAと相補的な1本鎖RNAと結合すると活性化し、1本鎖RNAを切断するRNA依存性RNA切断酵素である。


SATORI 法の仕組みは次の通り。

核酸切断酵素Cas13a (ガイドRNAと結合)と蛍光レポーター、検体のウイルスRNAを混ぜると、特異的にウイルスRNAとCas13aの複合体が形成される。

ガイドRNAをウイルスRNAと結合するよう設計しておくと、Cas13aとウイルスRNAの複合体ができる。

複合体が形成されるとCas13aの酵素活性がオンとなり、蛍光基と消光基がつながった蛍光レポーターが切断される

蛍光レポーターは、標的RNAとCas13aの複合体を検出するための蛍光性の機能分子 で、核酸のウラシル(U)が五つ連なった1本鎖RNAの両端に、それぞれ蛍光基と消光基が結合した構造を持つ。複合体はウラシルが連なった構造を特異的に切断する性質を持つため、蛍光レポーターが複合体により切断されると、蛍光基は消光基から物理的に解離し、蛍光を発するようになる。

これを微小試験管が100万個集積されたマイクロチップアレイに小分けにして封入すると、ウイルスRNAが存在する微小試験管だけ蛍光シグナルが1分以内に上昇する。

マイクロチップのデジタル信号からシグナル有の微小試験管の個数をカウントする。カウントされる試験管の個数はサンプル中のウイルスRNAの個数に相当する。


検出感度は5フェムトモーラー(fM、fMは1000兆分の1モーラー)で、新型コロナウイルス感染者の検体中のウイルスRNA量を検出する感度を満たしている。

ランニングコストは9ドル程度と安価であるという利点もある。(PCR検査は5ドル程度)

グループは来年度中の臨床試験開始をめざす。

また、SATORI法は、疾患バイオマーカーの検出などにも活用できるため、がんなどの基礎疾患の早期・層別化診断などを指向した次世代のリキッドバイオプシ ー(血液や尿などの身体への負担が少ない低侵襲性の液性検体の解析を基盤とした基礎疾患・感染症の診断方法)の技術基盤となることも期待できるとしている。

電源開発(愛称 Jパワー)と宇部興産の山口宇部パワーは2015年から山口県宇部市西沖の山の宇部興産所有地で西沖の山発電所(仮称)新設計画を進めてきたが、4月16日、計画を取りやめると発表した。

西日本エリアにおいて電力需要は横ばいで推移すると見込まれることや、再生可能エネルギーの導入が拡大していることなど、事業環境を巡る状況を総合的に判断した結果としている。

山口宇部パワーは2015年2月に、宇部市西沖の山において、120万kW級(60万kWx2基)の石炭火力発電設備の建設の検討および準備を進めるため設立された。

当初の出資者は、Jパワー45%、大阪ガス45%、宇部興産10%で、2026年の稼働を目指していた。

これを受けて環境相は2015年6月12日、「西沖の山発電所」について、「現段階において是認しがたい」との意見書を経産相に提出している。

山口宇部パワーはその後も環境影響評価手続きを続けていたが、2019年4月24日、計画変更を検討し、環境影響評価手続を休止すると発表した。

大阪ガスは投資を回収できないと判断し、本計画からの撤退を決定、出資比率をJパワー 90%、宇部興産 10% に変更するとともに、発電能力も半減し、60万kW級(60万kWx1基)とした。

今回、石炭火力への批判が高まりを受け、建設しても投資の回収は困難と結論付け、断念した。

経済産業省・資源エネルギー庁は3月22日、非効率石炭火力の早期削減を狙い、発電効率実績の目標を「2030年に43%」とすることを決めた。電気事業連合会は「43%は非常に高い目標だ」としている。


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2015年頃には石炭火力計画が相次いだ。

九州電力、出光興産、東京ガスの3社は2015年3月27日、千葉県に大型の石炭火力発電所を建設することで合意したと正式発表した。
九電が管外に発電所を造るのは初めて。

3社が均等出資し、出光が千葉県袖ケ浦市に持つ貯炭場に隣接する約30ヘクタールの遊休地に最大で100万kWの石炭火力2基を建設する。
投資額は4千億円規模の模様で、2020年代中ごろの稼働を目指す。

2015/4/22 首都圏向け、火力発電計画 相次ぐ 

しかしその後、石炭火力計画については撤退が相次ぐ。


東燃ゼネラル石油と関西電力の子会社 関電エネルギーソリューションは、東燃ゼネラル千葉工場敷地内に100万kWの石炭火力発電所の建設プロジェクトの事業化検討を進めていたが、2017年3月23日、計画の断念を発表した。(図①)

2017/3/29 東燃ゼネラルと関電の石炭火力プロジェクト 断念

中国電力、JFEスチールのJVの千葉パワー(中国電力 73%、JFEスチール 27%)は2018年12月27日、石炭火力発電については十分な事業性が見込めないと判断し、「蘇我火力発電所」の建設を中止すると発表した。 (図②)

2018/12/30 千葉の石炭火力計画中止

千葉パワーはその後、天然ガス火力発電所開発の事業実現性検討を行ってきた が、2021年3月31日、本計画は十分な事業性が見込めないと判断し、本検討を中止するとともに、千葉パワーを解散すると発表した。 世界的に化石燃料への逆風が強まるなか、大型投資の見直しに至ったと報じられている。

2021/3/31  中国電力とJFEスチール、千葉の天然ガス火力発電所計画も断念 

出光興産、九州電力、ならびに東京ガスは2019年1月31日、千葉県袖ケ浦市にある出光興産所有地を活用した千葉袖ケ浦エナジーの石炭火力発電所の共同開発を断念すると発表した。 (図③)

電力小売り全面自由化後の需要をにらみ、発電でも首都圏への参入が本格化するとみられたが、石炭火力3計画は全滅した。

なお、上図のLNG発電のうち、JXと東京ガスの「川崎天然ガス発電」の 3・4号機増設計画はコストアップで採算が悪化し、2017年7月に撤回された。

東京ガスと昭和シェル石油(現 出光興産)の扇島パワー3号機は2016年2月に運転開始した。

政府は4月13日、総理大臣官邸で関係閣僚会議を開き、東電・福島第一原発で増え続けるトリチウムなど放射性物質を含む処理水の処分方法について議論し 、海へ放出する方針を決めた。

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東電は放射性物質を取り除く専用装置で汚染水を浄化した処理水を原発敷地内のタンクに保管している。2020年末までに137万トン分のタンクを確保したが、これでタンク建設用地は無くなる。

汚染水は2020年中に1日平均約150トンまで減らしたが、2022年夏~秋にはタンクが満杯になる。

この処理水の処理について、多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会で検討してきたが、経済産業省は2019年12月23日、とりまとめ案を公表した。
5つの処分方法を検討してきたが、薄めて海に流す「海洋放出」と蒸発させて大気中に出す「水蒸気放出」という前例のある方式に絞り込んだ。

1979年の爆発事故のThree Mile Island -2号炉では汚染水を浄化した後に残る放射性物質トリチウムを含んだ水について、近くの川への放出が検討されたが、下流域の住民が反発した。このため1991年から93年にかけて約9000トンを蒸発させ大気中に放出処分した。

トリチウムを含む水は薄めて海に流すことが国際的に認められている。海洋放出を問題視している韓国でも、月城原発が2016年に液体で17兆ベクレル、気体で119兆ベクレルを放出しており、古里原発も2016年に液体で36兆ベクレル、気体で16兆ベクレルを放出した。

2020/1/1 福島第一原発処理水の処分、海洋・大気放出に絞る

報告書は水蒸気放出について大気中での拡散の仕方の予測が難しく、放出濃度の監視に難があると指摘する一方、原発などで実績のある海洋放出を「確実に実施できる」と記しており、政府は海洋放出に絞った。

なお、報告を出した小委員会の委員からは、「現在あるタンク容量と同程度のタンクを土捨て場となっている敷地の北側に設置できるのではないか」「敷地が足りないのであれば、福島第一原発の敷地を拡張すればよいのではないか」などといった意見が出されたという。敷地の北側の土捨て場に大型タンクを設置することができれば、約48年分の水をためることができると試算されている。

2020年8月7日付の"Science"誌に米ウッズホール海洋研究所のKen O. Buesseler博士が投稿した。

トリチウムの半減期は12.3年であり、60年経てば97%のトリチウムは無くなる。半減期の短い他の放射性物質も同様だ。この間に現在の4倍の処理水が溜まる。タンク漏れのリスクはある。
現在放出の理由とされる土地問題は、現在の敷地外にタンクをつくれば解決する。

汚染水の放出は回復中の地域の漁業にマイナスの影響を及ぼしかねないため、大衆の心配を無視してはいけない。放出する場合、海水と海洋生物、海底堆積物のモニタリングに地域の漁民と独立的な専門家が参加しなければいけない。

2020/8/12 福島原発汚染水問題で、60年保管説

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政府は水蒸気放出には関心を示さず(東京方面に流れるのを懸念したとされる)、海洋放出を決定する方針を固め、2020年10月末にも決定するとされていたが、強い反対を受け、「さらに検討を深め、適切なタイミングで結論を出していきたい」とした。

しかし、最近になり、菅首相が動いた。

菅首相は4月7日、全国漁業協同組合連合会の岸宏会長と官邸で面会し、放出決定への理解を求めた。岸氏は改めて反対を伝達したが、首相は会談後、「近日中に判断したい」と述べた。

政府は4月13日、総理大臣官邸で関係閣僚会議を開き、東電・福島第一原発で増え続けるトリチウムなど放射性物質を含む処理水の処分方法について議論し 、海へ放出する方針を決めた。

菅首相は、「福島第1原発の廃炉を進めるに当たって避けては通れない課題」と指摘。その上で、「基準をはるかに上回る安全性を確保し、政府を挙げて風評対策を徹底することを前提に海洋放出が現実的と判断し、基本方針を取りまとめた」と語った。

経産省は「福島第一原発における多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針」を発表した。概要は次の通り。

トリチウム及びトリチウム以外の放射性物質についてICRPの勧告に沿って従来から定められている安全性に関する原子炉等規制法に基づく規制基準厳格に遵守

海洋放出に当たっては、安全に係る法令等の遵守に加え風評影響を最大限抑制するための放出方法客観性・透明性の担保されモニタリングを含むを徹底

海洋放出について同処理水を大幅に希釈した上で実施

第三者の関与を得つつ、ALPS処理水トリチウム濃度確認するとともに、トリチウム以外の放射性物質が安全に関する規制基準を確実に下回るまで浄化れていることについて確認し、これを公表する

トリチウム濃度は、規制基準を厳格に守するだけでなく、在実施している福島第一原発のサブドレン等の排水濃度の運用目1,500ベクレル/リットル7未満)と同水準とする

この水準を実現するためにはALPS処理水を海水で大幅(100以上)に希釈する必要があるなお、この希釈に伴い、トリチウム以外の放射性物質についても、同様に大幅に希釈されることとなるALPS処理水を100倍以上に希釈することで、希釈後のトリチウム以外の告示濃度比総和は、0.01満となる。

放出するトリチウム年間の総量は、事故前の福島第一原発の放出管理値(年間22兆ベクレル内外の他の原発から放出されている量の実績値の幅の範囲内下回る水準になるよう放出を実施し定期的に見直す

風評影響に対応するため、福島県及びその隣県の水産業始めとした産業に対しては、地及び海外を含めた主要消費地において販路拡大・開拓等の支援を講じる

東京電力には、風評被害が生じた場合には、セーフティネットとして機能する賠償により、機動的に対応するよう求める

東京電力には今後、2年程度後にALPS処理水の海洋放出を開始することを目途に具体的な放出設備の設置等の準備を進めることを求める。


今後たまり続ける分も含めて、流し終えるまでに30~40年かかる見通し。

原子力規制委員会の更田委員長は、タンクの耐用年数は約20年のため、「海洋放出が長期間にわたるなら当然、タンクの置き換えは考えないといけない」と述べた。

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2020年12月11日に、約137万㎥のタンクの設置を完了


2020年12月31日現在 貯蔵量 116万m3

 うち 告示濃度比総和 1未満 (そのまま薄めて放出可能) 32.4万m3

 告示濃度比総和 1~5   37.4万m3
        5~10    20.8万m3
        10~100  16.2万m3
        100以上  6.2万m3
        合計   80.6万m3

    他に再利用タンクに 3万m3


東電は当初、第一原発の汚染水を処理した後の水にトリチウム以外の複数の放射性物質が残留していることは公表せず、2018年8月に新聞が報道して初めて明らかになった。

2018/8/29 福島原発のトリチウムを含む低濃度汚染水を巡る問題 

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福島の漁業関係者は、「約束違反」としてこの決定に猛烈に反発している。

2015年にサブドレン計画が出された。

第一原発の山側からは地下水が建屋側へ流れ込み、これが内部の溶融燃料に触れて汚染水が増える要因となっている。

「 サブドレン計画」は、建屋内に流れ込む地下水を減らし高濃度汚染水の増加を抑えることなどが目的で、原子炉建屋を囲む41本の井戸から地下水をくみ上げ、浄化装置で処理し、放射性物質の濃度を基準以下にして海に放出する。地下水を150トンに半減できると試算し た。

これについていろいろあったが、最終的に福島県漁連は2015年8月11日、条件付きで計画を容認する文書を国と東電に提出した。

東電は2015年8月25日付で廣瀬直己社長名で回答している。

東京電力(株)福島第一原子力発電所のサブドレン水等の排水に対する要望書に対する回答について

4. 建屋内の水は多核種除去設備等で処理した後も、発電所内のタンクにて責任を持って厳重に保管管理を行い、漁業者、国民の理解を得られない海洋放出は絶対に行わない事

(回答)
 ・ 建屋内の汚染水を多核種除去設備で処理した後に残るトリチウムを含む水については、現在、国(汚染水処理対策委員会トリチウム水タスクフォース)において、その取扱いに係る様々な技術的な選択肢、及び効果等が検証されております。また、 トリチウム分離技術の実証試験も実施中です。
 ・ 検証等の結果については、漁業者をはじめ、関係者への丁寧な説明等必要な取組を行うこととしており、 こうしたプロセスや関係者の理解なしには、いかなる処分も行わず、多核種除去設備で処理した水は発電所敷地内のタンクに貯留いたします。

     https://www.tepco.co.jp/news/2015/images/150825a.pdf

東京電力は9月14日、「サブドレン」からくみ上げて浄化した汚染地下水の海洋放出を始めた。 合わせて海側遮水壁の残る部分の工事を開始した。

2015/8/4 福島の漁協、サブドレン地下水の海洋放出容認


今回の決定はこの約束に反するものであるとし、「国も東電も信用できない」としている。

これに対し、経産省幹部は、(今回は放出を決定しただけであり)「関係者の理解なしには、決定をおこなわない」とは約束していないとし、実際の放出までに理解を得るとしている。

2年後に実施する時点で、関係者の理解が得られない場合は(その時点ではタンクは満杯)、どうするのだろうか。

前記の通り、政府は4月13日、総理大臣官邸で関係閣僚会議を開き、東電・福島第一原発で増え続けるトリチウムなど放射性物質を含む処理水の処分方法について議論し 、海へ放出する方針を決めた。

中国外交部は4月15日に日本の垂秀夫駐中国大使を呼び出し、日本政府の決定に厳正な申し入れを行った。

国際法及び国際ルール違反の疑いがあり、現代の文明国のする行為ではない。中国側はこれに強い不満と断固たる反対を表明する。

第1に、福島原発事故による汚染水の処理問題を考え直し、海洋放出という間違った決定を撤回すること。
第2に、国際機関の枠組で中国の専門家を含む合同技術作業チームを設置し、原発汚染水処理問題が厳格な国際的アセスメント、査察、監督を受けるようにすること。
第3に、利害関係国や国際機関との協議を通じた合意に至る前に、原発汚染水の海洋排出を勝手に始めてはならない。

記者会見で日本人記者が中国も放出していると述べたのに対し、報道官はこう述べた。

福島第一原発では最高レベルの原発事故が発生した。そこから生じた汚染水は正常な稼働時の原発の汚染水とは全く別物だ。そうでなければ、日本もこれまで汚染水をタンクに厳密に密封しておく必要はなかった。両者を一緒くたにして論じることはできない。

韓国の文大統領は4月14日、国際海洋法裁判所に放出の差し止めを求める暫定措置を含む提訴を検討するよう指示した。

暫定措置とは、国際海洋法裁判所が最終判断を下すまで、紛争当事者の利益を保存し、日本が汚染水を海洋放出できないようにする一種の「仮処分」を指す。

1999年の「みなみまぐろ事件」では、日本の調査漁獲に対し豪州、NZによる即時中止の暫定措置要請が認められた。(その後の仲裁裁判所はこれを無効とした。)


提訴された場合、うまく対応しないと仮処分が認められる可能性がある。


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海への放出決定の理由の一つは、トリチウムを含む水は薄めて海に流すことが国際的に認められていることである。

中国も韓国も大量のトリチウムを液体及び気体で放出している。

しかし福島では核燃料に接触した汚染水であり、ヨウ素129、セシウム135、セシウム137をはじめとする12核種が含まれる。

今回、トリチウム以外の放射性物質が規制基準を超えているものは再度ALPSで浄化し、安全に関する規制基準を確実に下回る ようにした上で、海水で大幅(100以上)に希釈する ため、トリチウム以外の告示濃度比総和は、0.01満となる。

濃度は低いが、総量としては大量の放射線物質を海に流し込むことになる。
トリチウムとは異なり、これは国際的に認められたことではない。
これが海の生物に長期的にどのような影響を与えるか不明である。

自民党の山本拓衆院議員はブログで書いている。

東京電力の発表によると、ALPS処理水タンク内の処理水を試験的に二次処理したところ、トリチウム以外にもヨウ素129、セシウム135、セシウム137をはじめとする12核種が除去できていないことが明らかになっています。

そのうち11核種は通常の原発排水には含まれない核種であり、処理水を通常の原発排水と同様に考えることはできません。

なお、二次処理後も残る核種には半減期が長いものも多く、ヨウ素129は約1570万年、セシウム135は約230万年、炭素14は約5700年の放射性物質です。

ALPS処理水の海洋放出については、トリチウムのみの安全性を議論するのは、正しくありません。

医学博士ではなく、工学博士が「人体に影響がない」と処理水の安全性を主張しても説得力がありません。

このような状況で、通常の原発排水とは全く異なるALPS処理水を海洋放出することとなれば、福島第一原発事故から10年を経て、さらなる風評被害の拡大を招くことになります。

ーーー

国内には、「どうしても海洋放出しなければならないのであれば、東京湾から始めて、全国の海岸に広げて行ったらどうだろうか。福島の海にだけは流してはいけない」との声がある。

大阪府の吉村知事は4月13日、「政府からの要請があれば大阪湾での放出も真摯に検討したい」と述べた。
放出される処理水の放射性物質の濃度は国の放出基準を下回り、「世界基準でも安全だ」と強調。「風評被害を福島だけに押しつけるのはあってはならない。電力を特に消費するエリアを含め全国で協力すべきだ」と語った。


東京湾や大阪湾に放出するにはタンカーで輸送する必要があるが、タンカーで運んだ汚染水を現地で放出することはロンドン条約及びロンドン議定書で禁止されている。

ロンドン条約、同議定書は「海洋において廃棄物を船舶その他から故意に処分すること」を禁止している。陸上からの処分はこれからは対象外となる。

この条約、議定書では、福島での海洋放出は禁止対象ではなく、汚染水をタンカーで運び、そこから放出するのが禁止対象となる。(福島での海洋放出はしてもよいということではなく、この条約での判断の対象外ということ)

ーーー

「廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約」(通称:ロンドン条約)は、1972年12月にロンドンで採択され、1975年8月に発効し、我が国は1980年10月に同条約を締結した。

第1条 
締約国は、海洋環境を汚染するすべての原因を効果的に規制することを単独で及び共同して促進するものとし、また、特に、人の健康に危険をもたらし、生物資源及び海洋生物に害を与え、海洋の快適性を損ない又は他の適法な海洋の利用を妨げるおそれがある廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染を防止するために実行可能なあらゆる措置をとることを誓約する。

「投棄」の定義
 海洋において廃棄物その他の物を船舶、航空機又はプラットフォームその他の人工海洋構築物から故意に処分すること
 海洋において船舶、航空機又はプラットフォームその他の人工海洋構築物を故意に処分すること

同条約は、有害廃棄物を限定的に列挙し、これらの海洋投棄のみを禁止していた。

その後の世界的な海洋環境保護の必要性への認識の高まりを受けて、更に強化するため、「1972年の廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約の1996年の議定書」(通称:ロンドン議定書)が1996年11月にロンドンで採択され、2006年3月に発効し、我が国は2007年10月に締結した。

同議定書は、廃棄物等の海洋投棄及び洋上焼却を原則禁止した上で、例外的にしゅんせつ物、下水汚泥など、海洋投棄を検討できる品目を列挙するとともに、これらの品目を海洋投棄できる場合であっても、厳格な条件の下でのみ許可することとした。

ロンドン議定書は3度にわたって改正された。
このうち二酸化炭素の海底下地層への処分(貯留)を可能とするものは発効済みであるが、海底下地層への処分(貯留)目的の二酸化炭素の輸出を可能とするものは未発効である。

ロンドン条約(1975/8 発効) ロンドン議定書(2006/3 発効)
目的 人の健康に危険をもたらし、生物資源及び海洋生物に害を与え、海洋の快適性を損ない又は他の適法な海洋の利用を妨げるおそれのある廃棄物その他の物の船舶等からの投棄による海洋汚染の防止 ロンドン条約による海洋汚染の防止措置を一層強化

船舶等からの廃棄物等の海洋投棄を原則として禁止し、
例外的に投棄が認められる場合においても厳格な条件の下で許可

禁止 下記の「廃棄物その他の物」の投棄を禁止

有機ハロゲン化合物、水銀及び水銀化合物、産業廃棄物、放射性廃棄物等を含む

・下記を除く「廃棄物その他の物」の投棄を禁止。
・「廃棄物その他の物」の海洋における焼却を禁止。


例外:しゅんせつ物、下水汚泥、魚類残さ、船舶・プラットフォーム、不活性な地質学的無機物質、天然起源の有機物質等
(但し、投棄には許可を必要とする)

例外追加 
 二酸化炭素の海底下地層への貯留
  上記のための二酸化炭素の輸出を可能とするもの(未発効)

事前特別許可による投棄 砒素、ベリウム等を相当量含む廃棄物、コンテナ、金属くず等の巨大廃棄物等で漁労や船舶航行の重大な障害になるもの等
事前の一般許可 他の全ての廃棄物その他の物
いずれの許可も、全ての事項(物の特性及び組成、投棄場所の特性及び投棄の方法等)について慎重な考慮が払われた後


以前は昭和電工、日本軽金属、住友化学などは、ボーキサイトを輸入し、国内でアルミナを生産していた。
この際に膨大な量の赤泥ができる。当初はこれを海岸の埋め立てに使用し、工場用地を拡大していたが、その余地がなくなり、海洋投棄を行った。

1972年のロンドン条約付属書では赤泥は「汚染されていない不活性な地質学的物質であって、その化学的構成物質が海洋環境に放出されるおそれのないもの」に該当し、産業廃棄物には当たらず、海洋投棄は認められていたが、各社はグリーンピース等からの批判を受け、自主的に海洋投棄停止→アルミナ国内生産停止に踏み切った。(2006年のロンドン議定書では禁止となる。)

2008/3/8  アルミナメーカー、ボーキサイトの国内精製から撤退へ

関西医科大学は2022年4月に「光免疫療法」で世界初の研究所を設立する。開発者で所長に就任する米国立衛生研究所(NIH)の小林久隆主任研究員は4月12日、現在対象の顔や首のがんに加え「乳がんなどへの適用も検討する」と話した。

米国立衛生研究所(NIH)の小林久隆・主任研究員らの研究チームは2011年11月6日のNature Medicine で初めて「光免疫療法」を報告した。

がん細胞に結びつきやすい特徴を持つ薬を投与した後、患部に赤色光を当てると、薬が光に反応してがん細胞が破壊される。光は熱を持たず、体に当てても害はないとされる。また動物実験などのデータから、この治療によって体内の免疫が活発になり、転移したがんも治癒できる可能性があると考えられている。

2016/8/22 光免疫療法による癌治療 

楽天メディカルは2020年6月29日、がん細胞をピンポイントで攻撃する「がん光免疫療法」に使う医薬品と医療機器について、「条件付き早期承認制度」に基づき厚生労働省に承認申請をした。対象は、舌がんや喉頭がんなどの頭頸部がんが再発した患者で、この治療法に使う医薬品と医療機器を承認申請するのは世界で初めて。

厚労省は2020年9月25日、楽天メディカルジャパンが申請した光免疫療法で使用する「アキャルックス®点滴静注250㎎」について、「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌」を効能・効果として、製造販売承認を与えた。本剤と組み合わせて用いる医療機器レーザ装置「BioBlade®レーザシステム」についても、9月2日に製造販売承認を取得している。

2020/7/1 楽天メディカル、「がん光免疫療法」の医薬品と医療機器の承認申請

関西医大が新設する光免疫医学研究所は「光免疫療法」や「免疫」などの3部門に分かれ、約30人が在籍する予定。

現在は外からレーザーを当てやすい頭頸部がんに限られているが、対象を患者数が多い大腸がんや皮膚がんに広げたり、副作用を抑えたりするための研究を進める。

所長に就任する小林氏は「まず乳がんや食道がん、子宮頸がんが対象として有望。将来的にはがん患者の8割に役に立てるようにしたい」、「特に臨床では高いレベルで、楽天メディカルと連携したい」と話す。

楽天メディカルは光免疫療法と免疫薬を併用する治験を、米国で頭頸部がんと皮膚がんを対象に進めている。

国立がん研究センター東病院も食道がんで光免疫療法の医師主導の治験を進めているほか、胃がんでも計画中。

2019/2/25 食道がんの光免疫療法の治験 

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すこし古い話だが、 東洋紡と京セラの2社が、米国の安全規格であるUL規格に関して長年にわたって不正を行っていたことが判明した。

東洋紡は最初に昨年10月末にPBT樹脂についての不正を発表した。これはDICから譲り受けた製品で、DICの不正をそのまま引き継いだものであ ったが、その後、本年2月と3月にDICから譲り受けたもう一つの製品と東洋紡自身の製品で不正があったことを発表した。

京セラは2021年1月8日、6製品の不正を発表したが、京セラのケミカル事業部は2002年に東芝ケミカルを買収して作られたもので、東芝ケミカル時代から延べ35年にわたり不正を続けていた。

UL規格は米国の第三者安全科学機関であるUnderwriters Laboratories(UL)が策定する製品の安全規格。

ULは、認証、試験、検査、アドバイザリー/トレーニング・サービスの提供によって、120年間にわたり、発展を遂げてきた世界的な第三者安全科学機関。

材料・装置・部品・道具類などから製品に至るまでの機能や安全性に関する標準化を目的としている。
UL規格の認証取得は任意だが、州のプロジェクトではUL認証を義務付けている場合も多く、アメリカの電気製品の多くはUL認証品となっている。

火災保険業者によっては「このUL規格が無い場合、保険を受け付けない」としているところもある

米国に製品を輸出する多くの企業にとって、 その材料が不適合であることは製品そのものが問題となる可能性があり、大問題である。

不適合材料を使っているか否かを調査し、しかるべき対応を余儀なくされる。既に、不適合材料が判明し、顧客に連絡したり、販売を停止したり、材料を切り替えたりする企業が出ている。

部品点数の多い自動車メーカーへの影響は大きい。

経緯や内容は下記の通りだが、1社だけの特殊な例ではない。両社とも買収した事業が不正をしているのを知りながら、そのまま継続している。東洋紡の場合、引き継ぎ製品の不正が分かり、念のため調べたら自社でも同様のことを多数の製品で、多数のやり方で実施していた。

DICの場合、売却したPBT樹脂で今回不正が分かったが、同社の他の製品で同様のことをやっていないだろうか。(PBTだけ不正をやった特殊事情があるのだろうか)

1社だけの特殊な例でないとすれば、これだけ続発すると他社に同様のことがないとは確言できない。

米国の需要家の目に、これが日本の慣行と見られ 、日本の製品は品質面で信用できないと見られると大問題である。

さらに、日本の基準や規格、規則はきちんと守っているのだろうか。

1. 東洋紡

ポリブチレンテレフタレート(PBT樹脂「プラナック®」 について、ULに認証登録されている性能値に対して、実際に販売している商品の性能値が一部適合していないことが判明した。

ULが不定期に実施する確認試験時に、実際に販売する商品と異なる組成のサンプルを提出していた。

東洋紡からULに報告、2020年10月28日にUL保証が取り消された。

本件について、12月29日に調査結果を発表した。

本事業は2010年3月31日付でDICから譲渡を受けた。その時点で事態を把握したが、上層部に報告せず、確認試験用の組成も含めて引き継いだ。

2013年11月に担当部門内で報告されたが、継続した。

2015年10月に本件に関する資料が作成され、撤退には代替品が必要として、販売を続けながら開発を進めた。

2020年になり、開発が失敗、8月に幹部に報告され、会社として事態を認識、その後、ULに報告。

なお、UL提出用サンプルの生産は同社の品質保証部門の監査の対象外であった。

その後、他に問題がないかどうか調査した。

2021年2月3日発表  「バイロペット®」 、「グラマイド®」 、「ペルプレン®」 で問題発見、UL保証取消

2021年3月26日発表 更にバイロアミド®」 、PPS樹脂」 、「グリラックス®」 で問題発見、UL保証取消


当該製品の概要と不適合理由は下記の通り。(日経クロステック)

このうち①ブラナック(PBT)は上記の通り、2010年3月にDICから譲渡を受けたが、⑦のグリラックス(熱可塑性ポリエステルエラストマー)も2009年3月にDICから譲渡を受けたものである。

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/05428/


2.京セラ

京セラは2021年1月8日、6製品の難燃性および絶縁性について、ULが実施する認証試験で実際の製品とは異なるサンプルを提出していた事実等が確認されたと発表した。

この認証不正は35年前からのことという。京セラのケミカル事業部は2002年に東芝ケミカルを買収して作られたもので、東芝ケミカル時代に不正が行われていたということになる。

京セラは2002年5月16日、東証2部上場の東芝ケミカルを、8月1日付で株式交換により買収し完全子会社とすることで合意し、株式交換契約を締結したと発表した。

これに伴い、東芝ケミカルは社名を「京セラケミカル」に変更する。京セラは買収により、東芝ケミカルの有機化学を基盤としたファインケミカル技術と、自社のファインセラミックス技術を融合し、高付加価値の部材開発を進め、電子部品グループとして競争力強化を図る。

当該製品の概要と不適合理由は下記の通り。(日経クロステック)


https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/05417/




日立製作所は3月31日、米GlobalLogicを総額95億ドルで買収すると発表し た。(詳細後記)


一方で、日立製作所は約53%の株式を保有する上場子会社の日立金属を売却すると報道されていたが、米投資ファンドのBain Capital と日本産業パートナーズ、ジャパンインダストリアルソリューションズのコンソーシアムが独占交渉権を得たことが分かった。

昨年8月から交渉されてきたもので、日立は持株全てを売却する。この場合、TOBとなる。

証券取引所内外、どちらの取引であっても、買付け後の株式等所有割合が1/3を超える場合はTOBによる実施が義務付けられている。

日立は全株売却を考えているため、日立化成の場合と同様、上限なしのTOBとなる。

日立金属の事業は下記の通り。電線事業は2013年7月に日立電線を統合したもの。

日立金属については、少し古いが、右を参照  2016/1/28  日立金属、米国の医療機器用部品会社買収 


日立製作所は「選択と集中」を旗印に、成長分野と位置づけるエネルギーなどのインフラやIoT(モノのインターネット)事業に経営資源を集中させる方針である。

非中核分野を次々に売却しており、2009年に22社あった上場子会社は2019年には日立化成、日立金属、日立建機、日立ハイテクノロジーズ (2020/2 日立ハイテクに改称)の4社に減った。

子会社 時期 持株比率
日立物流 2016/5/19 59.01%→30.01% 株式の29%をSGホールディングスへ譲渡
日立キャピタル 2016/10 60.61%→33.40% 株式の23.01%を三菱UFJフィナンシャル、4.20%を三菱UFJリースに譲渡
日立国際電気 2017/1   4割超→ゼロ グループで保有する4割超をKKRに売却(配当金を合わせ752億円で)
KKRはTOBを実施、傘下のHKホールディングスの完全子会社とし、2018年に工機ホールディングスと改称。

KKRは日立国際電気の半導体製造装置事業を分離、2018/6にKokusai Electricを設立したが、
2019/7 これをApplied Materialsに22億ドルで売却した。→中国の承認得られず、解約

日立工機
(電動工具)
2017 
  
40.25%→ゼロ
KKRに売却(KKRがTOB)
日立アーバンインベストメントも 10.90%→ゼロ
クラリオン 2018/10 6割超→ゼロ 仏自動車部品大手フォルシアに譲渡、売却価額は899億円 
日立オートモティブ
システムズ
2019/10 66.6% ホンダのケーヒン、ショーワ、日信工業と統合
ホンダが33.4%

2020年には上場4子会社のうちの日立化成株式を51.29%全てを 昭和電工に譲渡した。

2019/12/2 日立製作所、子会社日立化成を昭和電工に売却へ
2019/12/25 昭和電工、日立化成にTOB 

今回の日立金属の売却が実施されると、以前の御三家が全て売却されることとなる。

これにより日立製作所は以前の重工業企業から変身する。

日立製作所は2021年1月31日、上場子会社である日立ハイテクの完全子会社化に向けてTOB(@8000円、総額5311億円)を実施すると発表した。

日立ハイテク計測・分析技術を生かした社会イノベーション事業の成長加速を行なう。
これに加え、日立ハイテクの体外診断機器事業(グローバルNo.1)を中核事業として育成、ヘルスケア・アナリティクス分野に進出する。



日立製作所は3月31日、米GlobalLogicを総額95億ドルで買収すると発表した。

GlobalLogicはカリフォルニア州に本社を置くシステム開発企業で、日立が「Chip-to-Cloud」と呼ぶ、データを業務の現場からクラウドまで連携させながら活用するためのシステム開発を得意とする。

日立は本買収を通じてGlobalLogic先進的なデジタルンジニアリングのケイパビリティ大手テック企業をはじめとする強固な顧客基盤獲得し、日立のデジタルインフラ/データマネジメント/デジタルソリューション事業を担う米国子会社であるHitachi Vantara LLCグローバル展開をリードするLumadaを強化する。

Lumada:顧客のデータから価値を創出し、デジタルイノベーションを加速するための、日立の先進的なデジタル技術を活用したソリューション/サービス/テクノロジーの総称

日立ハイテク計測・分析技術を生かした社会イノベーション事業の成長加速を行なうため、完全子会社に向け、TOBを実施した。

GlobalLogicとの統合で、ミッションクリティカルでの信頼性が重要な受託型から、アジャイル、クラウドベースの協創型へと事業ポートフォリオを高成長市場に拡大させる。


東原敏昭社長は「Lumadaを進化させてグローバル展開を加速させるための買収」と説明した。

東芝の車谷社長兼CEOが4月14日付で辞任した。取締役会で辞任を表明した。

後任は前任社長の綱川智会長が復帰する。

本日の記事の通り、東芝は物言う株主との間で揉めており、3月18日の臨時株主総会では物言う株主の提案が通った。

東芝は2015年に発覚した不正会計問題に経営トップが関与していたことへの反省から2016年以降、社外を除く取締役や主要子会社社長、本社の部長級社員ら計100人規模を対象に毎年1回、社長への信任を調査している。

車谷社長に対する不信任は、2019年12月の調査では1割弱だったが、今年1月の調査で2割を超えた。
そのため、対象を執行役や事業部長クラスの30人弱に絞り、2月から3月にかけて再度聞き取り調査を実施した結果、不信任が半数を超えたという。結果については3月下旬に車谷氏にも伝えられている。

東芝の指名委員会が、次の株主総会にかける取締役人事案で車谷社長を指名する可能性はほぼゼロだったとされる。

CVCによる買収は車谷氏が持ちかけたとみられ、永山治・取締役会議長 兼 指名委員会委員長(中外製薬名誉会長)らは、こうした動きを「私物化」と判断し、本日の取締役会には車谷氏の解任動議を提出する予定だったとされる。


ーーー

東芝は2021年3月18日、都内で臨時株主総会を開催し、昨年7月に開催した定時総会の運営の適正性について独立した調査を求める筆頭株主 Effissimo の株主提案を可決した。調査の期間は3カ月で、調査者として3人の弁護士を選任した。

臨時株主総会でEffissimo の株主提案が可決された直後の4月7日、CVC Capital Partners が買収提案を行った。

東芝の車谷CEOは東芝の社長兼CEOに就任する前はCVC Capital Partnersの日本法人の代表取締役会長であった。また、東芝の藤森義明・社外取締役は現在、CVC日本法人の最高顧問である。

このことから、物言う株主との対立が続いている東芝の株式を非公開化して、経営判断を速めるため、東芝側から持ち込んだものではないかと の見方もある。

CVCの買収提案について東芝の永山取締役会議長は「(買収提案は)当社の要請によるものではなく、当社の事業についての詳細な検討を経た上で行われていない」としている。

しかし、「現代ビジネス」によると、CVC提案には車谷氏の留任を求める文言はしっかり明記されていた。また、経済産業省は、車谷氏を留任させてCVCの提案を受け入れれば、障害になりかねないと懸念される外為法の事前審査にゴーサインを出すとの意向を東芝側に伝えたという。

「現代ビジネス」は、次の通り述べている。

身の危険を察知した車谷氏サイドが動きを封じるため、CVCと経済産業省に周到な根回しをしていた疑いと、今回の買収提案が、M&Aの世界で禁じ手とされる「経営陣の自己保身」だった可能性は濃厚と言わざるを得ないだろう。

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