米財務省は1114日、貿易相手国の通貨政策を分析した半期為替報告書を公表した。
     
https://home.treasury.gov/system/files/136/November-2024-FX-Report.pdf

「為替操作国」基準にかかった貿易相手国・地域はなかった。

2019年8月に中国が、2020年12月にスイスとベトナムが「為替操作国」となった。それ以降、2022年11月までの間は、基準では対象となる国があったが、米財務省の判断で実際は非認定となった。
今回は基準でも対象となる国はなかった。

米財務省は為替操作国に指定する条件として(1) 対米貿易黒字の規模 (2) 経常黒字の規模 (3) 継続的な通貨売り介入――を掲げている。

  従来の基準 2019/5より改正
①重大な対米貿易黒字 対米貿易黒字が200億ドル(米国GDPの約0.1%) 以上 同左
②実質的な経常黒字 経常黒字がその国のGDPの3.0%以上 GDPの2.0%以上
③外為市場に対する介入 GDPの2%以上(ネットで)の額の外貨を繰り返し購入
(12カ月のうち、8カ月
同左
(12カ月のうち、6カ月


3基準全てに該当すれば「為替操作国」となる。

次の場合、「監視リスト」に入る。
  2基準に該当 & 1基準だが、前年「監視リスト」の場合
  なお、中国は常時、「監視リスト」

日本は永く2項目でひっかかり、「監視リスト」に入っていた。2022年11月から1項目だけとなり、2023年6月と2023年11月は「監視リスト」から外れた。しかし前回から、①対米貿易黒字に加え、②実質的な経常黒字で該当し、再度、『監視リスト」に入った。

日本の経常黒字は、下図(報告書に記載)の通り、2015年以降、GDPの3%(2019/5より2.0%)を超え、対米黒字と合わせ2基準でかかっていた。2022年は2%を下回り、(時期のずれで)2022/11~2023/11の3期が1項目だけ該当となった。しかし、2023年には経常黒字は再び2%を上回り、2024/Q2は更に上がり4.2%になった。今回2項目で該当する。

日本は2023年12月までの4四半期には外為市場への介入していない。

今回の報告書では、日本の財務省は4月29日と5月1日に合計9.8兆円(620億ドル)のドル売りを行い、7月11-12日にも再び5.5兆円(350億ドル)のドル売りを行ったとしたが、日本は外国為替操作に関して透明性を確保しており、毎月定期的に外国為替介入を公表していると述べ、大規模で自由に取引される為替市場では、介入は適切な事前協議を伴う非常に例外的な状況でのみ行われるべきであると強く期待すると述べた。

ーーー

今回は、日本に加え、前回に続き2項目の台湾、ドイツ、ベトナム、シンガポールと、今回2項目となった韓国1項目だが常時「監視リスト」の中国の合計7カ国が「監視リスト」に載った。マレーシアは1項目が2回続き、外れた。

なお、③「外為市場に対する介入」でひっかかったのはシンガポールだけであった。 

操作国
3基準  
監視国
2基準  
監視国
1前年監視対象 &中国 丸数字は問題となった項目
                 
  日本 中国 韓国 台湾 ドイツ スイス インド アイルランド ベトナム イタリア マレーシア シンガポール タイ メキシコ
2016/4
2016/10
2017/4
2017/10
2018/4
2018/10
2019/5
 

①②



①②

 

 

①②

①②

①②

①②

2019/8   操作国  
2020/1
①②


①②

①②

①②

 



①②

①②

2020/12
①②


①②

①②

①②
操作国
①③
操作国
①②

①②


①②
2021/4
①②


①②
操作国
非認定

①②
操作国
非認定

①③

①②
操作国
非認定

①②

①②


①②

①②
2021/12
①②

①②

①②
操作国
非認定

①②

①③

①③

操作国
非認定

①②

①②


①②

①②
2022/6
①②


①②

①②

①②
操作国
非認定




①②



2022/11


①②

①②

①②
操作国
非認定







2023/6



①②

①②






①②



2023/11



①②

①②




①②


①②



2024/6
①②



①②

①②




①②





2024/11
①②


①②

①②

①②




①②





 

 赤字が為替操作国基準にひっかかった項目

ナルコレプシーなどの過眠症患者は、夜間に十分な睡眠時間を取っているにもかかわらず、通常起きている時間帯に自分では制御できない眠気が繰り返し起る。また感情の高まりをきっかけに突然寝てしまう情動脱力発作が起こり うる。

取引先の前で話している途中で寝てしまったとか、学生であれば受験など重要な試験中で寝てしまったとか、日常生活で壮絶なトラブルがある。

運転中などでも起こり得るため、患者の生活の質は大きく低下する。

日本で過眠症治療に使用できる薬剤は、覚醒剤と類似した作用機序を有しており、薬物乱用や依存が問題になる上に、処方できる医師が限られる。

もっともよく効く薬はメチルフェニデート(商品名リタリン)だが、依存性が問題になっており、近年では適応が非常に厳しく制限されるようになってきた。

ペモリン(商品名ベタナミン)はその点の問題は少なく有用な薬だが、劇症肝炎のリスクがあり、アメリカなど他国では使用が禁止されるなど、一癖ある薬である。

マジンドール(商品名サノレックス)も覚醒作用があるが、日本では眠気治療に保険適応がなく、やせ薬としてのみ使用されている。リタリン同様依存性が問題として言われている。

比較的新しい薬として、モダフィニル(商品名モディオダール)がある。依存性が少なく、副作用も少ないので画期的な薬で、最近条件付きで、睡眠時無呼吸症候群にも使用が承認された。ただ、効果がある人とない人がある。

  以上  ナルコレプシーなど過眠症で用いられる薬 から

そのため、高い安全性及び有効性の両者を兼ね備えた薬剤の開発が待たれている。

北海道大学大学院医学研究院(2023/4まで東北大学大学院)の吉川雄朗教授らの研究グループは、ヒスタミン代謝酵素であるヒスタミンメチル基転移酵素(histamine N-methyltransferase:HNMT)の阻害薬を用いた研究成果を発表した。

ヒスタミンは脳内で覚醒の維持に重要な役割を果たしている。過眠症の一つであるナルコレプシーでは患者の脳脊髄液中ヒスタミン量が低下していることが報告されていた。

そこで本研究では、脳内ヒスタミンを分解する HNMT を薬物により阻害し、脳内ヒスタミンを増加させた際に症状が改善するかを調べた。

HNMT 阻害薬はマウス脳内ヒスタミン量を増やし覚醒時間を延長すること、及び過眠症マウスの症状を大幅に改善することを明らかにした。




HNMT の阻害作用があるメトプリンを野生型マウスに投与すると、脳内のヒスタミン量が約2倍に増加し、マウスが長時間起きていることを明らかにした。

メトプリンは 脳内のヒスタミン量を増加させる薬物 で、メトプリンを投与すると脳内のヒスタミン量が増加し、睡眠覚醒や情動脱力発作に影響を与えることが知られている。

Metoprine :製造元:Toronto Research Chemicals Inc、販売元:富士フィルム和光純薬
      試験・研究の目的のみに使用されるものであり、「医薬品」、「食品」、「家庭用品」などとしては使用できません。

次にヒトのナルコレプシーと類似した症状を持つ病態モデルマウスにメトプリンを投与し、過眠症状がほぼ完全に消失することを明らかにした。
また、メトプリンの効果は欧米でナルコレプシー治療薬として承認されているピトリサントよりも強いことが示された。

日本発の製薬ベンチャー企業のアキュリスファーマは2024年11月21日、ナルコレプシー患者を対象にしたヒスタミンH3受容体拮抗薬/逆作動薬ピトリサントの国内臨床第3相試験で主要評価項目を達成したと発表した。

これらの結果から、HNMT の阻害はナルコレプシーの有効な治療戦略となるため、これを標的とした新たな創薬研究の発展が期待される。

本研究成果は、2024年10月23日公開の睡眠学の国際専門誌 SLEEP に掲載された。

ペルーの首都リマ北方約70キロで中国遠洋海運集団(COSCO)が60%出資するチャンカイ(Chancay)港が11月14日に開港する。

リマの外港のCallao 港の船舶の渋滞と港湾周辺の交通渋滞の深刻化などを背景に、新たなハブ港として始まった。プロジェクトの全4段階の第1段階で、4つのバース、パンアメリカンハイウェイに接続するインターチェンジ、船舶の海上進入路、防波堤、隣接するチャンカイ市を迂回できるトンネルなどが建設されている。総事業費は34億ドル以上と見込まれており、そのうち第1段階で13億ドル以上が投じられる。

チャンカイ港では、最大1万8,000TEUのコンテナ船を受け入れる。水深も18メートルに達する見込み。現状、ペルー国内で最大の港であるカジャオ港で受け入れ可能なコンテナ船の大きさは1万5,000TEU、水深は15メートルであるため、カジャオ港よりも大きな船舶の受け入れが可能となる。

これだけの規模の船舶を受け入れ可能な港となるため、これまで行われていたメキシコのマンサニージョ港や米国カリフォルニア州のロングビーチ港などに寄港しての貨物の積み替えの必要がなくなり、太平洋を横断して東アジアまで直行できるようになる。

チャンカイ港の最も注目すべき特徴の1つは最先端の自動化であり、コンテナの積み下ろし時間を大幅に短縮する。「COSCOが行った投資のおかげで、この港は上海で使用されているのと同様の技術を使用するため、以前は3時間かかっていた船からの荷下ろしが1時間未満でできる。」

さらに、ポストパナマックス(パナマ運河を通れない大型船)として知られる大型船を扱えるキャパシティがあり、より多くの貨物を輸送することができる。これは、青果物や加工品などの傷みやすい産品や、市場価値を維持するために目的地に迅速に到着する必要がある鉱物に関して大きな違いを生む。

東アジアまでの所要日数が23日と12~17日程度短縮される。

遠隔自動操作システムの稼働に際し、中国の通信機器大手の華為技術(Huawei)とメキシコ系通信会社Claro が5G(第5世代移動通信システム)回線を導入する基地局を設置している。

また、チャンカイ港では当初140万~160万TEUの貨物の取り扱いを予定しているが、これが実現すれば、当初から中南米の港の貨物取扱量ランキングでトップ10に迫り、南米の太平洋側の港の中では4番目の規模となる。

首都リマとチャンカイの間にある国内最大のCallao港と合わせると540万TEUで、パナマのコロン港、ブラジルのサントス港を上回る規模になる見込みという。

中国にとってはチリ、ボリビアなど他の南米諸国や中米各国へのさらなる進出のハブ港にすることができる利点があるとされる。

ーーー

2019年にCOSCO傘下で港湾運営の中遠海運港口が、ペルーの鉱山会社Volcanからチャンカイ港を開発中のコンテナターミナル運営会社TPCのの株式60%を2億2500万ドルで取得した。

2021年にペルーの国立港湾局と新港の独占的運営権に関する協定に調印した。ただ、ペルーが中国に向こう30年間の運営権を与える上、その後も中国が運営権を維持できるといった協定内容にペルー国内で反対論が起きため、国立港湾局が『行政上のミス』として協定をご破算にしようと試みた。中国側は一時、契約違反と非難し、国際裁判に持ち込む動きを見せた。

しかし今年6月、ペルー議会で協定の締結を事実上容認する法案が成立、問題解決への道が開かれた。ボルアルテ大統領は同法案に署名し、訪中の際の手土産にした。習近平主席はペルーの首都リマで行われるAPEC閣僚会議・首脳会議(11月15日~19日)に出席の折、チャンカイ新港の落成式に臨む予定であったが、安全上の観点からリモートで参加する。

在リマ外交筋は「中国の対ペルー投資が習近平主席の唱える『一帯一路』構想の南米戦略の一環として行われている点に注目すべきだ」と強調する。ペルーは2019年に中国との間で「一帯一路」構想への参加を表明する「了解覚書(MOU)」を取り交している。

中国の南米戦略の最重点国はブラジルに次いでペルーという見方が有力になっている。中国企業はペルーの鉱業分野やインフラ部門を中心に積極的に投資しており、今や「ペルー経済の発展は中国の存在を抜きにしては考えられない」(ペルーの有力エコノミスト)といった声が聞かれるほど。

今年6月末のボルアルテ大統領の中国公式訪問時には、大統領と習近平国家主席は2国間の経済・貿易面での強化関係をもう一段格上げすることで合意した。また、この首脳会談で両国間の自由貿易協定(FTA)の拡充を目指す交渉も事実上完了したと伝えられる。習近平主席は鉱業のほか電力・通信・港湾などのインフラ分野でも経済支援を拡大すると述べたという。

ーーー

ペルー民間投資促進庁は2024年3月22日、南部イカ州のサン・ファン・デ・マルコナ(San Juan de Marcona)新港湾ターミナルのデザインと資金調達、建設、運営管理に関する官民連携方式による事業者として、中国の金兆鉱業(JINZHAO MINING)のグループ会社の金兆ペルーを選定すると発表した。同ターミナルは首都リマのカジャオ港、リマ州北部のチャンカイ港(中国COSCO社が60%出資)に次ぐ規模となる予定で、総投資額は4億500万ドルに上る。コンセッション契約期間は契約締結日から30年間とされている。

カジャオ港の取扱貨物量は年間3,570万トン、チャンカイ港は同3,400万トンとされている。サン・ファン・デ・マルコナ港の想定取扱貨物量は1,900万トンだが、最大で4,000万トンの許容があるという。

これまで、運輸通信省(MTC)傘下のペルー国家港湾局に対する金兆ペルーからの事業提案は、政府が求める条件に基づいて幾度か修正が行われ、最終的に2023年12月20日付で国益に資する事業として認定を受けた。新港湾ターミナルは公共施設として位置づけられるが、その運営管理から生じる収益は主として金兆ペルーに属することになる。

関連して金兆ペルーは、イカ州に隣接するアレキパ州のパンパ・デ・ポンゴ鉄鉱石鉱山事業を手掛けているが、同地域ではその他にも同じ中国資本のラス・バンバス銅鉱山などが操業している。サン・ファン・デ・マルコナ港湾の開発は、将来的に多くの南部鉱山ビジネスに寄与することになる。

米国大統領選挙は4年ごとに、11月の最初の月曜の次の火曜日(本年は11月5日)に行われる。

同時に上院議員の1/3、下院議員全員の選挙が行われる。

付記

 Whitehouse、上院、下院ともに共和党で「トリプルレッド」 詳細別紙

ーーー

大統領選挙は選挙人を選ぶ。通常、選挙人はその党の大統領候補に投票する。したがって、大統領候補の選挙である。

選挙人は上院(100) と下院(435)の議員数にコロンビア特別区の3人を合わせ総数は538人で、当選に必要な人数は270人。

米国では国勢調査が10年に1度行われ、そこで確定した州別の人口数に基づき、全435の下院議席数が各州に配分される。
商務省センサス局は2021年4月26日、2020年の国勢調査(センサス)に基づき、一部の州で連邦下院議席数が変更になることを、大統領に報告。2022年11月に実施の中間選挙から適用された。

人口の増えた州の選挙人が増え、減った州の選挙人は減少する。今回、Mid-Atlantic、The Mid-West が減り、The South、Rocky Mountainsが増えた。

ーーー

選挙人

下記2州を除き、最も多く得票した候補がその州の選挙人全員を獲得する。
  メインは4人のうち、上院分 2人は全体勝者とし、下院分 2人は2選挙区の勝者
  ネブラスカは5人のうち、2人は全体勝者、3人は3選挙区の勝者

複数の激戦州で勝敗を左右 
 「拮抗」             共和やや優勢
 
  ペンシルバニア(19票)   ノースカロライナ(16票)
  ミシガン   (15票)    ジョージア  (16票)
  ウイスコンシン (10票)    アリゾナ   (11票)
  ネバダ     ( 6票)
    合計  50票--------------------      合計  43票
  

選挙人

Trump Harris

選挙人

Trump Harris
'20 '24 '20 '24
New England Maine 4 4 The Midwest Iowa 6 6
New Hampshire 4 4 Indiana 11 11
Vermont 3 3 Illinois 20 19 -1
Massachusetts 11 11 Ohio 18 17 -1
Connecticut 7 7 Wisconsin 10 10
Rhode Island 4 4 Michigan 16 15 -1
Mid-Atlantic New Jersey 14 14 Missouri 10 10
New York 29 28 -1 Minnesota 10 10
Pennsylvania 20 19 -1 Rocky Mountains Idaho 4 4
Delaware 3 3 Colorado 9 10 +1
Maryland 10 10 Montana 3 4 +1
Washington D.C. 3 3 Wyoming 3 3
The South Arkansas 6 6 The Southwest Arizona 11 11

Alabama

9 9 New Mexico 5 5
West Virginia 5 4 -1 Nevada 6 6
Florida 29 30 +1 Uta 6 6
South Carolina 9 9 Pacific Oregon 7 8 +1
Georgia 16 16 Washington 12 12
Texas 38 40 +2 California 55 54 -1
Tennessee 11 11 Alaska   3 3
Kentucky 8 8 Hawaii  4 4
North Carolina 15 16 +1 合計 538 538
Virginia 13 13
Mississippi 6 6
Louisiana 8 8
Great Plains Oklahoma 7 7
Kansas 6 6
South Dakota 3 3
North Dakota 3 3
Nebraska 5 5

上院

定員100名 50州 x 2

任期 6年  2年ごとに約1/3ずつ 改選(本年は33名 が改選)+ 特別選挙

共和党の非改選 -1、改選 +1 は特別選挙
 Nebraskaの議員が2023/1に辞任、知事は後任を指名したが、任期を今回選挙までとした。このため、今回、非改選期の議員が1名選ばれる。

  共和党 民主党 民主系
無所属
合計
2024年改選前 49 47 4 100
非改選 39-1 28 67-1 (66)
改選 10+1 19 4 33+1(34)
 同改選後 33+1 (34)
改選後合計 100


民主系無所属は
Sanders
議員、 King 議員、Sinema議員、Joe Manchin 議員(2024/5 無所属に)

下院

定員 435名

任期 2年 全員改選

下院議員に欠員が生じた場合には、補欠選挙または総選挙によってのみ補充される。

  共和党 民主党 合計 欠員

2024年改選前

220 212 432 3

   改選後

435  

日米欧の先進7カ国(G7)は10月25日の財務相・中央銀行総裁会議で、ロシアの凍結資産を活用したウクライナ支援について最終合意した。年内に、融資による約500億ドル(約7兆6千億円)の支援を開始する。

G7首脳は共同声明を発表し「ロシアは違法な侵略戦争を終わらせ、ウクライナの損害を賠償しなければならない」と強調した。

ロシアによる不法かつ、不当で、いわれのないウクライナに対する侵略戦争は、引き続き甚大な人的被害及び経済的損失をウクライナにもたらすとともに、世界の最も脆弱な人々を害する食料及びエネルギー不安を含め、世界経済に負のスピルオーバーをもたらしている。

我々は、必要とされる限りの我々の揺るぎないウクライナへの支援を再確認し、また、ロシアに対して戦争の即時終結を求める。

我々は、6月15日にプーリア(イタリア)で発表された G7 首脳声明に沿って、G7 財務大臣が、凍結されているロシアの国家資産から得られる特別な収益を活用し約500 億米ドル(450 億ユーロ)をウクライナのために支出する特別収益前倒し融資(ERA ローン:Extraordinary Revenue Acceleration Loan)イニシアティブの実施要領について合意したことを発表できることを、喜ばしく思う。

各国が個別に融資契約を締結し、ウクライナの需要に応じて12月1日から2027年末までの間に分割で実施する。その元本及び利息は、G7 国内において保有されるロシアの国家資産の凍結から生じる特別収益により返済し、ウクライナに返済義務は生じない。

G7などが凍結したロシアの資産は約2800億ドルに上る。G7は6月の首脳会議で、この資産を活用してウクライナを支援することを決め、融資条件や返済方法といった詳細を協議していた。

G7は「ロシアは自らがもたらした損害に対して支払いを行うべきだ」(加藤勝信財務相)との考え方を出発点に、日本がG7議長国を務めた昨年から、ロシアの資産を活用する方法を検討 してきた。

しかし、ロシアの資産の運用益はロシアに帰属し、それをウクライナに融資するのは違法であるとの懸念が出た。

検討の結果、ロシアの中央銀行が欧州の国際決済機関に預けている 債券のうち、償還期限が来て現金化された資産から生じる運用益であれば、ロシアに帰属しないことが法的に確認され、ウクライナ側の返済原資に充てることが可能となった。

(ロシアの中央銀行が預けている債券のうち、償還期限が来て現金化された資産はロシアの資産である。凍結資産のためロシアはその運用を指示できない。建前上はそれは運用せずにそのまま置いておく。
 実際には運用して運用益がでるが、ロシアの指示で運用したものではないため、ロシアに帰属しない。)

ロシアの国家資産から生じる一連の特別収益の ERA 貸出国への返済のための分配は、今般合意されたウクライナ融資協調メカニズムを通じて管理される。G7 貸出国への返済のための分配は、各二国間融資のコミットされた元本額に比例してなされる。

なお、日本にとっては、ウクライナへの融資金が軍事目的に使われない仕組みにすることが必須だったが、世界銀行の基金を経由することでこれをクリアした。国民に対し、追加的な負担を求めることも回避した。

米国は10月23日、ウクライナへの500億ドルの融資のうち米国が担当する200億ドルの拠出を最終決定し、経済・軍事支援に向け年末までに提供を開始すると発表した。イエレン米財務長官とウクライナのマルチェンコ財務相が合意書に署名した。
バイデン大統領は「ウクライナは納税者に負担をかけることなく、今必要な支援を受けることができる」と述べた。

米国は12月までに100億ドルを経済援助として提供し、残りの100億ドルを軍事支援に充てることを目指している。ただし、この軍事支援部分は米国議会の承認が必要となる。

500億ドルの融資の残り200億ドルをEUが担当、100億ドルを英国、日本、カナダが分担する。

最終的に融資額は下記のとおりとなった。

実際の融資額 米ドル換算
(概算)
米国 200億米ドル 200億ドル
EU 181.15億ユーロ 200億ドル
英国 22.6億ポンド 29億ドル
カナダ 50億カナダドル 37億ドル
日本 4,719億円 31億ドル

1ドル150円の場合で、130円では36億ドル

合計 497億ドル

米国内務省は10月24日オーストラリアのリチウム大手 Ioneer 南ネバダ州の大規模なリチウム・ホウ素鉱山Rhyolite Ridge Projectの最終承認を与えた。

ネバダ州 Esmeralda County Rhyolite Ridge Lithium-Boron Project の承認は、4年間の連邦許可および環境審査プロセスを経て行われた。

建設されると、7,000エーカーの巨大なプロジェクトは23年間稼働し、毎年約37万台の電気自動車に供給するのに十分な量のリチウムを採掘することになる。 ​​

現在、米国でリチウムを生産している鉱山は、エスメラルダ郡にあるAlbemarleのシルバーピーク鉱山Silverpeak lithyum だけだが、両者は非常に近い場所にある。

Silverpeak lithyum:

Albemarle Corporation は、ノースカロライナ州に本拠を置くアメリカの特殊化学品製造会社で、リチウム、臭素、触媒の 3 つの部門で運営されている。
北米唯一のリチウム鉱山
Silverpeak lithyum を運営し、チリ (Atacama塩湖) と西オーストラリアにも拠点を持っている。

チリと米国ネバダ州でリチウムを採掘・生産し、ドイツのLangelsheim でリチウムコンパウンド、リチウムメタルの生産をしている。
Albemarleは
オーストラリアにある世界最大級のグリーンブッシュ鉱山で天斉リチウムと提携している。

このプロジェクトは、絶滅危惧野生植物の Tiehm's buckwheat(タイムソバ)の唯一の既知の個体群のために確保された重要な生息地への鉱山の侵入に反対する保護団体からの激しい反対も引き起こした。

連邦政府の決定が掲載された直後に生物多様性センターは米国連邦政府に絶滅危惧種法に基づく訴訟の意向を通知した。

内務省の魚類野生生物局は、Ioneerの保護対策と組み合わせれば、最終的な鉱山計画が タイムソバの生存を危険にさらしたり、その重要な生息地に悪影響を与えたりする可能性は低いと判断した。連邦政府の土地管理者によると、Ioneer 社は、計画の一環として、プロジェクト施設の再設計と移転、Tiehm ソバの繁殖作業への資金提供、正式な Tiehm ソバ保護計画の策定など、野生の花の保護策を策定したという。

リチウム抽出には大量の水が必要である。Ioneer 社は、過剰に割り当てられた流域であるエスメラルダ郡のFish Lake Valleyから水源を得る予定である。ネバダ州の地下水は、同地域の帯水層の複雑さから十分に理解されていないが、過去50年間に農業によりFish Lake Valley の地下水が一部地域で最大200フィート減少した。 連邦政府の土地管理者は、プロジェクトの最終環境レビューによると、採掘により谷の地下水が採石場周辺で最大300フィート減少し、周囲の地盤が最大10インチ沈下する可能性があると推定している。

プロジェクトの承認は、電気自動車のバッテリーに不可欠な鉱物であるリチウムの国内生産を増やすバイデン政権の取り組みの一環である。ライオライトリッジは「国内のリチウム生産に不可欠な非常に特別な鉱床」であると付け加えた。

リチウムとホウ素の両方を大規模に生産している鉱山は世界中どこにもない。Ryolite Ridgeは北米で唯一知られているリチウムホウ素鉱床であり、世界で知られている2つの鉱床のうちの1つで ある。もう一つはセルビアのJadar Basinである。

Ioneerは2021年6月にRhyolite Ridgeリチウムプロジェクトで生産する炭酸リチウムに関し、韓国の前駆体大手EcoPro Innovationと最大3年間のオフテイク契約を締結した。Ioneerは、EcoPro Innovationに対し2千t/年、オプションとして追加で5千t/年の計7千t/年の炭酸リチウムを供給する。同プロジェクトの資源量は146.5百万t(Li 品位:1,600ppm、炭酸リチウム換算品位:0.9%)、マインライフは26年とされる。

トヨタ自動車とパナソニックが共同出資する電池会社、プライムプラネットエナジー&ソリューションズ(PPES)は2022年8月、豪企業 Ioneerが米ネバダ州で開発するリチウム鉱床から車載用電池のリチウムを調達する契約を結んだ。

Ioneerは5年にわたり年間4000トンの炭酸リチウムをPPESに供給する。PPESはイオニアから調達したリチウムを米国内で製造する電気自動車(EV)用電池部品に使うと確約している。ノースカロライナ州で電池工場を新設する可能性を検討していると報じられていた。


Rhyolite Ridge Projectの建設は来年にも開始される可能性があり、生産は2028年に開始される予定。 Ioneerは、鉱山の存続期間中、この鉱山が年間1億2500万ドルの賃金を生み出すと予想している。

武田薬品工業が中国のバイオ企業のHUTCHMED (和黃醫藥)と共同販売する抗がん剤フルキンチニブ(fruquintinib)(HUTCHMED の商品名ELUNATE® 、武田の商品名フリュザクラ®)について、HUTCHMEDが中国で胃がん治療向けの承認申請を取り下げたことが分かった。臨床試験(治験)で有効性を証明できず、現在の研究データでは承認を取得するのが困難と判断したという。日本経済新聞が報じた。

フルキンチニブ はHUTCHMEDが開発した大腸がんに対する抗がん剤で、2018年に中国で承認された。血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)1/2/3に高い選択性を有する阻害薬で、経口投与され、バイオマーカーの状態にかかわらず、治療抵抗性の転移性大腸がん(mCRC)の様々なサブタイプで使用される可能性がある。


血管新生が阻害される結果、栄養供給を妨げることなどにより腫瘍の増殖を抑制するといった作用機序を有している。

武田薬品は2023年1月に、HUTCHMEDとの間で全世界(中国本土、香港およびマカオを除く)及びすべての適応症を対象としたフルキンチニブの開発および商業化に関する独占的ライセンス契約を締結した。契約一時金として4億米ドルを支払い、開発や販売の達成に応じたマイルストン(最大730百万米ドル)及び売上に応じたロイヤルティを支払う。

HUTCHMED は適応を広げるため、胃がん、子宮内膜がん、腎臓がん向けでも開発を進めていた。

胃がん向けでは既存の抗がん剤との併用で治療につなげる計画だったが、生存期間を延ぱす効果を証明できなかったという。

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大腸癌向け承認:

(中国)

2018年9月に中国国家食品薬品監督管理局(NMPA)により販売承認され、2018年11月に中国でELUNATE®(爱优特® )の販売名で上市された。

(米国)

2020年に米国食品医薬品局(FDA)より、切除不能な転移がある大腸がん(mCRC)患者の治療薬として、その開発においてファストトラック指定を受けた。

2022年12月にHUTCHMEDは米国FDAに対してフルキンチニブの新薬承認申請(NDA)の段階的申請を開始した。

2023年5月25日に治療歴を有する転移性大腸がん(mCRC)の成人患者の治療薬として、フルキンチニブの新薬承認申請(NDA)が、米国食品医薬品局(FDA)より優先審査指定された。

2023年11月8日に、化学療法、抗VEGF療法、および抗EGFR療法(RAS野生型で医学的に適切な場合)の治療歴がある転移性大腸がん(mCRC)成人患者に対して、米国食品医薬品局(FDA)によって承認された。
バイオマーカーのステータスにかかわらず、治療歴を有するmCRC患者の治療薬として、米国で承認された、最初で唯一の3種類のVEGF受容体キナーゼすべてに対して選択性を有する阻害薬である。

(欧州)

2024年6月21日に、化学療法、抗VEGF療法ならびに抗EGFR療法による治療歴があり、トリフルリジン・チピラシル塩酸塩配合剤又はレゴラフェニブのいずれかによる治療中に進行したもしくはこれらに不耐の転移性大腸がん(mCRC)成人患者に対する単剤療法として、欧州委員会(EC)によって承認された。

(日本)

武田薬品は2024年9月24日、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)1/2/3に対して選択性を有する経口のチロシンキナーゼ阻害剤 「フリュザクラ®カプセル1mg/5mg」(一般名:フルキンチニブ) について、「がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」を効能又は効果として、厚生労働省より製造販売承認を取得した。

承認は主に、米国、欧州、日本およびオーストラリアで実施された国際共同第3相試験であるFRESCO-2試験の結果に基づいている。

東北電力は10月25日、女川原発2号機の再稼働について、原子炉を10月29日午後に起動すると正式に発表した。

付記

東北電力は、11月3日開始予定の女川原発2号機の発電と送電を延期した。発電機の試験中に原子炉内の中性子を計測する機器を入れる際、途中で動かなくなり作業を中断 した。

5月27日に安全対策工事が完了、9月に原子炉に核燃料560体を装填する作業を実施した。10月29日の原子炉起動を経て11月上旬に発電を再開し、12月の営業運転開始を予定している。

女川2号機は2011年の東日本大震災で被災し、運転を停止していた。震災では約13メートルの津波が押し寄せ、かろうじて津波はかぶらなかったものの、地下から浸水して冷却ポンプが故障するなどした。

再稼働すれば、2011年の東日本大震災の被災地に立地する原発として初めてで、事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉(BWR)としても初の再稼働となる。 末尾の「原子発電所の現状」参照

電力各社が原発を動かすには福島第1原発の事故後にできた新たな規制基準を満たす必要がある。これまでに国内12基が再稼働し、女川2号機が13基目となる。

原子力規制委員会は2013年6月19日、福島第1原発事故の教訓を踏まえた新しい規制基準を決定した。7月8日に施行した。

テロ対策などを盛り込んだ「過酷事故対策編」、既存設備の安全対策を強化する「設計基準編」、活断層調査の強化や津波防護策を定めた「地震・津波編」の三つに大別される。

基準には、最新の安全対策を義務付ける「パックフィット制度」が導入され、既設原発も対象になる。

2013/6/21  原子力規制委員会、原発新基準を決定

2013年12月 東北電力が設置変更許可申請書、工事計画及び保安規定の変更申請書を提出した。

女川原発は2011年3月の東日本大震災のときには1、3号機が運転中で、2号機は定期検査中だった。
東北電力は、3基ある原発のうち、安全対策の進みが早い2号機を優先させる方針で、2013年12月に再稼働申請を行った。被災した原発としては初の申請となった。

原発の耐震設計の基準となる基準地震動を580ガルから1000ガルに、津波の想定も13.6mから23.1mに引き上げた。
(東日本大震災で、607ガルの揺れが観測された。)

2014年1月から審査が行われた。

審査は難航した。176回の審査会号と8回の現地調査等を実施、598回のヒアリングが行われた。

原子力規制委員会の更田委員長代理は2017年3月8日の定例会合で、東日本大震災の影響で原子炉建屋に多数のひびが見つかった東北電力女川原発2号機について「前例がなく、審査は技術的に極めて難しい」と指摘した。

東北電力は2018年度後半以降に2号機を再稼働する計画だったが、審査に合格できるかが不透明になった。

2017/3/17 東北電力女川原発の審査、難航

建屋のひびは震災の揺れとコンクリートの乾燥収縮が原因とみられ、建屋の機能に影響はないが、補修するなどの計画を東北電力が示し、規制委が妥当と判断するまで約2年かかった。

原子力規制委員会は2019年11月27日、安全対策の基本方針が新規制基準を満たすと認める審査書案を了承した。審査は2013年12月の申請以来、約6年を要し、これまでに適合した原発では最長。事故対策費は当初想定を超える3400億円程度に膨らんだ。

地震の想定を約2倍に引き上げ、全国の原発で最も高い標高29メートル、総延長800メートルの防潮堤をつくるなどの対策を妥当と判断した。

事実上、新規制基準に適合したこととなり、東日本大震災の被災原発としては日本原子力発電の東海第二原発(茨城県)に続き2基目。

規制委員会は2020年2月26日に審査書を了承し、設置変更を許可した。

地元宮城県内の市町村長会議は2020年11月9日、立地自治体である女川町、石巻市、宮城県の3者会談に判断を委ねることを決めた。

宮城県の村井嘉浩知事は11月11日、原発がある女川町と石巻市の市町長と会談し、再稼働に同意することで一致、知事は再稼働に同意すると表明した。「稼働することにより、地元企業の受注に伴う雇用の創出や経済波及効果が見込まれる」と説明した。

2月に規制委の安全審査に合格し、6月には国の原子力防災会議が地元自治体による避難計画を了承した。8月には再稼働に向けた全7回の住民説明会を終えている。

東北電力女川原発2号機の再稼働を巡り、石巻市の住民が2021年5月28日、東北電の再稼働の差し止めを求める訴えを仙台地裁に起こした。重大事故を想定した広域避難計画の実効性を問う。

原告は原発から16~25キロの緊急防護措置区域に住む男女17人。住民らは「女川地域原子力防災協議会は避難計画の実効性を調査、確認していない」と主張し、「交通渋滞で30キロ圏内を脱出できない」「病院や高齢者・障害者施設の入院患者や入所者は避難困難」と計画の問題点を列挙。計画の実行可能性や実施体制を疑問視し「住民らの生命や身体を侵害する具体的危険性がある」「無用な被曝を強いられ、人格権が侵害される具体的な危険性がある」と訴えた。


一方、東北電力側は、合理性があると了承を得られた避難計画であり、改善点があるとしても、ただちに実効性がないとはいえないと反論。避難が必要になるような重大事故が起こる具体的な危険性について原告側は主張・立証していないとし、避難計画を巡る判断にかかわらず、請求を棄却すべきだとした。

仙台地裁は2023年5月24日、原告側の請求を棄却する判決を言い渡した。

裁判長は「放射性物質が異常に放出される事故が起きる具体的危険を認めるに足りる証拠がない」として請求を退けた。「避難の前提となる放射性物質が異常に放出される事故の発生を立証すべき」とした。
避難計画の内容については判断しなかった。

住民側は仙台地裁の判決を不服として控訴した。

2024年4月の弁論で裁判長は、広域避難計画で原発5~30キロ圏の緊急防護措置区域の住民らに求める「段階的避難」の是非に関し「具体的な議論がかみ合っていない」と指摘。原告側が提出した意見書の一部に対する反論を東北電側に求め「さらに議論を深めたい」と述べた。

7月の弁論で、住民側は「事故発生時は渋滞が想定され検査場所が開設できず、住民は被ばくを強いられる」「避難に使うバスは、必要な台数を把握していない」など避難計画に実効性は無いと指摘した。東北電力側は、事故が発生する具体的危険について原告が立証していないなどとして、請求棄却を求めた。

これで結審し、判決期日は11月27日に指定された。

原告団長は「再稼働前に判決を得られなかったのは極めて残念だが、裁判官の良識に期待して11月27日を勝利判決をもって迎えらるように頑張りたい」と述べた。

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中国電力は10月28日、島根原発2号機の安全対策工事が完了したと発表した。

新規制基準への対応として設置や改造を行った設備に対して、使用前事業者検査を進めるとともに、原子力規制委員会による使用前確認に対応してきた。
10月28日に燃料装荷までに行う使用前事業者検査および使用前確認が終了したことをもって、安全対策工事を「完了」とした。

10月28日13時に燃料装荷を開始した。燃料装荷の終了までは、1週間程度を見込んでいる。

2号機に核燃料が入るのは、2012年2月以来、約12年8カ月ぶり。12月上旬にも、原子炉を起動し、再稼働させる方針で、営業運転は来年1月上旬を見込む。

付記 

中国電力は11月3日、島根原発2号機の原子炉に核燃料を入れる作業を完了した。12月上旬に原子炉起動。



なお、東京電力柏崎刈羽 6、7号機は2022年7月に特定重大事故等対策が完了したが、地元の理解が得られていない。

原電東海原発は、2024年9月に特定重大事故等対策が完了する予定であったが、防潮堤工事のうち鋼製防護壁において確認された不具合への対応やその他工事の進捗状況等を踏まえ、特定重大事故等対処施設を含めた安全性向上対策工事の終了時期を2026年12月に変更した。

東海原発も地元の理解が得られていない。

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再稼働原発の現状 12基   2024/10

関電 美浜 3号 停止中 10/15 機器冷却用の配管から海水漏れで運転停止
関電 大飯 3号 運転中
4号
関電 高浜 1号 運転中
2号
3号
4号
九電 玄海 3号 運転中
4号
九電 川内 1号 運転中
2号 停止中 9/14~12/25の予定で第27回定期検査
四電 伊方 3号 運転中


欧州連合(EU)の最高裁判所に当たる欧州司法裁判所は10月24日、EU競争法に違反したとして欧州委員会が米半導体大手インテルに科した制裁金10億6千万ユーロ(約1700億円)を無効とする判断を下した。


欧州委は、インテルが独占的な地位を乱用してEU競争法に違反したとして、2009年に制裁金支払いを命じた。

この訴訟では、一般裁判所が2014年に欧州委の決定を支持したが、欧州司法裁が2017年、一般裁判所に審理を差し戻した。

一般裁判所は2022年の判決で「欧州委の分析は不完全だった」と指摘し、制裁金を無効とした。

今回、欧州司法裁判所は欧州委の決定を取り消した2022年の一般裁判所の判断を支持した。

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欧州委は2009年5月13日、インテルが2002~2007年にかけて自社製のパソコン向けのCPU(中央演算処理装置)の販売を巡って市場の独占的な地位を利用して公正な競争を損ねたと判断し、10億6000万ユーロの制裁金を科すことを決めた。

インテルが1997年から2007年までの間、x86CPU(x86中央演算処理装置)市場において70%以上の市場シェアを有していたと認定した。

その上で、同社が顧客であるDell、HP、Lenovo、NEC等のパソコンメーカーに対して、
(1)条件付リベートを供与していたこと、具体的にはパソコンメーカーが必要とする全て又はほぼ全てのx86CPUの供給をインテル社から購入することを条件にインテル社がパソコンメーカーに対してリベートを支払うというもの 、及び
(2)x86 CPUを搭載した競合他社の製品の発売時期を遅らせる見返りとして金銭を供与していたことが、EU競争法違反に該当すると判断した。

単独企業に対する独占禁止法違反の制裁金としては、当時、過去最高である。

欧州委員会が課した制裁金額事件別上位10 件(~09年12月)

順位 事件 制裁金額
(億ユーロ)
企業別順位  億ユーロ
1位 自動車ガラスカルテル事件(2008年)
 ※旭硝子及び日本板硝子現地法人が対象
 他に、
板ガラスカルテル
  13.8 ③Saint-Gobain(仏)  9.0
⑨Pilkington(英)     3.7
 (日本板硝子現地法人)
2位 天然ガス輸入カルテル事件(2009年)   11.1 ④E.on(独)/GDF-Suez(仏) 各社5.5
3位 インテル(米)支配的地位の濫用(2009年)   10.6 ①インテル(米) 10.6
4位 エレベータカルテル事件(2007年)
 ※三菱エレベータ現地法人が対象
   9.9 ⑥ティッセンクルップ(独)4.8
5位 マイクロソフト(米)
 規制当局処分(2004 年3月)の不遵守(2回目)(2009年)
   9.0 ②マイクロソフト(米) 9.0

インテルは欧州委の判断を不服としてEU司法裁に訴え、2014年には一般裁判所が欧州委の判断を支持する判決を出した。

インテルは上訴し、最高裁にあたる欧州司法裁が2017年、欧州委の決定が正当だったか再審理するよう一般裁に指示した。

EU司法裁判所の一般裁判所(ルクセンブルク)は2022年1月26日、欧州委員会が2009年にEU競争法違反で米インテルに巨額の制裁金を科した判断を無効とする判決を示した。

判決文は「欧州委の分析は不完全だ」と指摘した。リベートが反競争的かどうかを立証できていないという。

理由1:欧州委員会決定は不正確な法的分析に基づいていた

欧州委員会は、 パソコンメーカーが必要とする全て又はほぼ全てのx86CPUをインテル社から購入することを条件にインテル社がパソコンメーカーに対してリベートを支払うという条件付きリベートが、いわゆる「忠誠リベート」に該当 し、支配的地位にある企業がそのような忠誠リベートを提供した場合、その性質上当然に市場における競争を制限する効果があるものとして、実際に競争を制限する効果があったかを立証する必要はないとの立場を採った。

これに対して、2017年欧州司法裁判所では過去の先例は、支配的地位にある企業が忠誠リベートを提供した場合、競争を制限する効果があったと単に推定するものであり、企業が競争を制限する効果がなかったとの一応の証拠を提出したときには欧州委員会は実際に競争を制限する効果があったことを立証する必要があると判断した。

その結果、欧州委員会の違反決定は、不正確な法的分析に基づくものとした。

理由その2:欧州委員会が実施した経済分析には誤りがあった

欧州委員会は、本来必要とされていないと主張していた経済分析を実施していたが、その前提としたデータに誤りがあったため、当該経済分析を無効とするべきとのインテル社の主張を認めた。

理由その3:欧州委員会は欧州司法裁判所が示した規範を適切に分析し、考慮しなかった。

2017年欧州司法裁判所判決では、企業には競争法違反がなかったとの一応の証拠を提出した場合、欧州委員会が競争法違反を立証するためには、当該企業の市場での支配的地位の程度、リベートが適用される市場の割合、リベートが供与される条件、適用期間及び金額、参入を阻止する戦略の有無といった事項を分析する必要があるとの判断をした。

本判決では、2017年欧州司法裁判所で示された各事項は、欧州委員会が「最低限」検討しておくべきもので、欧州委員会の決定では問題とされたリベートが適用される市場の割合を適切に分析せず、リベートの適用期間に関しても正確な検討がなされていないため、リベート金額や参入を阻止する戦略の有無を検討するまでもなく、欧州委員会の決定には誤りがあったと判断している。

  https://www.tmi.gr.jp/eyes/blog/2022/13239.html から

今回の判決は、欧州委の立証に高いハードルを課したもので、今後の競争政策に影響が出る可能性がある。

欧州委は、パソコンメーカーが必要とする全て又はほぼ全てのx86CPUの供給をインテル社から購入することを条件にインテル社がパソコンメーカーに対してリベートを支払うという条件付きリベートが、いわゆる「忠誠リベート」に該当すると判断した上で、支配的地位にある企業がそのような忠誠リベートを提供した場合、その性質上当然に市場における競争を制限する効果があるものとして、実際に競争を制限する効果があったかを立証する必要はないとの立場を採っていた。

これに対して、2017年欧州司法裁判所では、単に「忠誠リベート」に該当するだけでEU競争法違反が認定されるという形式的なアプローチではなく、実際に競争を制限する効果があったかというより実質的な判断が求められるとした。

今後、欧州委員会にとってはEU競争法違反を立証する負担が増えることになる。

BRICSの首脳会議が10月22日 から24日まで、ロシアのカザン(モスクワの東約800kmに位置するタタールスタン共和国の首都)で開かれた。

中国の習近平国家主席ら各国首脳が22日に相次いでカザンに到着し、同日午後にはロシアのプーチン大統領と首脳会談を開いた。

国連のAntonio Guterres 事務総長がBRICS サミット出席のため到着した。同事務総長にとって2年以上ぶりのロシア訪問だが、ウクライナからは非難を浴びている。

クレムリンは、Guterres 国連事務総長は24日にプーチン大統領と会談し、ウクライナ紛争について話し合う予定だと述べた。

ウクライナの非難に対し、事務総長の報道官は、この訪問は「重要な加盟国を多く擁する組織」への定期的な参加の一環であり、ウクライナ紛争に関する「彼の一貫した立場」と「公正な和平への条件」を再確認する機会だと説明した。

インドのモディ首相も和平仲介者としての立場を示し、22日のプーチン大統領との会談で紛争の早期終結を訴えた。


今回のBRICS首脳会議は2024年1月にエジプト、エチオピア、イラン、アラブ首長国連邦(UAE)が新たに加盟国になってから初の首脳会議となる。

BRICSは2023年8月の首脳会議で、加入を申請している国のうち、アルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)の6カ国を正式に招待することが決まった。2024年1月付で正式なメンバーとなる。

2023/8/26 BRICSに6カ国が新しく参加

しかしアルゼンチンは、2023年12月に就任したハビエル・ミレイ大統領が加盟を見送った。

サウジについては、ロイター通信が本年2月にサウジ当局者の話として「加盟を検討中」と報道。サウジ国営メディアは「加盟の招待を受けている」と報じ、不明確な状態が続いていた。

最終的に、サウジアラビアは加盟資格を認められたものの、加盟していないとの見解を示している。

現在の加盟国は、既存の5カ国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南ア)と2024年1月1日 加盟の4カ国(エジプト、エチオピア、イラン、アラブ首長国連邦:UAE)の合計9カ国になった。

首脳会議の全体会合が23日に開かれた。

プーチン大統領は、2024/25年のBRICS諸国の平均経済成長率は3.8%で、世界の成長率は3.2─3.3%になると予想。「BRICSが世界経済で主導的な役割を果たす傾向はさらに強まるだろう」と述べ、その主な要因として人口増加、都市化、資本蓄積、生産性向上を挙げた。

プーチン大統領は「30か国以上が関係強化の意思を示している」と述べた。

その上で「BRICSがダイナミックに発展し、世界情勢における権威と影響力を強めているのを目の当たりにしている」と述べグローバル・サウスと呼ばれる新興国などを中心に、BRICSの影響力が拡大することに期待感を示した。

全体会合では「公正な世界発展と安全のための多国間協力の強化」をテーマに議論が行われ、「カザン宣言」が採択された。

カザン宣言では、

・ロシアやイランを含むBRICSの一部加盟国に科された「一方的な制裁措置」が対象国の最貧困層の人々を苦しめていると非難し、国際法に反する一方的な経済制裁の撤廃を求めた。

・BRICS穀物取引所や越境決済システムなど基本合意された共同プロジェクトが示された。

プーチン大統領は「BRICS諸国は世界有数の穀物、豆類、油糧種子の生産国であることから、BRICS穀物取引所の開設を提案した」と説明。

この取引所は「食料安全保障の確保という特別な役割を考慮すれば、製品や原材料の公正で予測可能な価格指標の形成に貢献する」と述べた。

取引対象はいずれ原油やガス、金属などに拡大する可能性がある。

・BRICSの枠組みにおける金融協力について、加盟国間の決済における自国通貨の使用拡大を引き続き検討する。

・BRICSの国々との関係強化などを目指す「パートナー国」の資格を設けることを支持した。

ロシアの大統領補佐官によると、「パートナー国」として13カ国のリストが合意された。ブラジル紙によると、トルコやインドネシア、マレーシア、タイ、キューバなどが含まれている。


BRICS首脳はまた、ドル支配の世界金融システムを回避して相互に貿易できるようにする、共通の越境決済システムの構築を支持した。

ブラジルのルラ大統領はオンラインで首脳会議に参加し、BRICS諸国が代替決済手段を構築する時が来たと述べた。

インドのモディ首相は、BRICS諸国の金融統合に向けた歩みを歓迎すると述べ、中国の習近平国家主席はBBRICS諸国の金融・経済協力の深化を促した。

プーチン大統領は演説の中で、BRICS投資プラットフォームの創設も呼びかけた。このプラットフォームはBRICS諸国間の相互投資を促すもので、グローバルサウスの他の国々への投資にも利用できる。

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