2006年5月アーカイブ

Gulfmap これまでイラン、イラク、サウジアラビアの石油化学について述べたが、他の湾岸諸国もそれぞれ石油化学事業を行っている。

クウェート

クウェートの石油化学を担当するPIC (Petrochemical Industries Company K.S.C ) は1963年に国営会社として設立され、1980年のクウェート国営石油(KPC) 設立で同社の子会社となった。石化基地はShuaiba Industrial Area につくられた。Kuwait

PICは以前は肥料を中心事業としていたが、ダウ(当時はUCC)と提携して石油化学を始めた。

1995年にダウ(当時のUCC)が45%、PICが45%出資のJV、Equate Petrochemical Company を設立した。残りの10%は民間資本のBoubyan Petrochemicals(PICが10%出資)が出資した。
その後、同じくPICが10%出資し、残りを民間資本の投資会社
Qurain Petrochemical を設立し、現在の出資比率は下記の通り。

 出資:ダウ 42.5%
     PIC 
42.5%
     Boubyan 9%
     Qurainga 6%

 能力:エチレン 80万トン(当初65万トン)
     LL/HDPE 40万トン(当初30万トン)

     PP10万トン(12万トンに増設中) 
           PICが所有し、Equateが操業を受託

PICとダウは2007年稼動予定で第2期計画Equate II)を実施している。これはエチレン・PE・EGと芳香族、SMの3つの会社に分かれる。

(1)Kuwait Olefins Company

 出資:Equateと同じ

 能力:エチレン 85万トン
     PE 30万トン
     EG 60万トン

(2)Kuwait Aromatics Company

 出資:PIC 80%
     Qurain Petrochemicals 20%
 製品:ベンゼン、パラキシレン

(3)The Kuwaiti Styrene Company

 出資:Dow 42.5
%
    
Kuwait Aromatics Company 57.5%
 能力:EB 50万トン
     SM 
45万トン

ダウは1980年にサウジでSABICとのエチレン、EGのJV、PETROKEMYAを設立しながら1982年に撤退した歴史をもつが、ここでは力を入れており、上記のJVのほかに2004年にPICと2つの海外JV(いずれも50/50)を設立した。

(1)MEGlobal 
 事業はMEG、DEGの製造販売で、ロンドンに本社を置き、世界中で販売する。ダウのカナダの2工場を移管した。

(2)Equipolymers 
 事業はPET樹脂の製造販売とPTAの製造。チューリッヒに本社を置き、イタリアのPETとPTA工場、ドイツの
SchkopauのPET工場を移管するとともに、SchkopauでPETの増設中。完成後のPET能力は434千トンとなる。

ダウはこれとは別にオマーンでエチレン、PE計画への参加を決めている。

なお、クウェート国営石油(KPC) は昨年末に、シノペックBP、ロイヤル・ダッチ・シェルとの合弁で、中国広東省に製油所を建設することで合意した。

このほか、PICは下記の国際JVに出資している。

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バーレーン

1979年にGulf Petrochemical Industries Company を設立した。

 立地:Sitra
 株主:バーレーン政府 1/3
     SABIC(サウジ) 1/3
     PIC (クウェート) 1/3

 製品:アンモニア 1,200トン/日(当初 1,000トン/日)
     メタノール  1,200トン/日(当初 1,000トン/日)
     尿素     1,700トン/日(当初はなし)

金川社長の日本経済新聞連載「私の履歴書」が終わった。

5/16のブログ「世界一の塩ビ会社 信越化学」で2箇所の修正がある。(元の記事を修正し青字で表示している)

1)ニカラガのポリカサ

 どこかの記事を元に、「革命政府に接収された」としたが、「履歴書」によると、革命で危険なため信越側が引き揚げ、先方の再稼動要請を断ったとのこと。接収されれば保険が下りたが、接収はされていない。

2)ボーデン工場買収

 信越の人の情報を元に「凍結中」としたが、金川氏によると設備に問題があり廃棄している。「1回でも事故を起こせば致命的な打撃を受ける。今回の買収では、商権を手に入れただけで投資の成果は十分に上がった。」(私の履歴書)

 実際にボーデンの3工場のうち、台湾のFormosaが買収したIlliopolis工場は2004年に重合槽が爆発し、4人が死亡、8人が負傷、工場の60-70%が破壊された。

 信越の世界全体のPVCの能力表も修正した。

前回、中国石油天然ガス(CNPC)のカザフスタン進出に触れた。同社はこのほか、ベネズエラやスーダンで大型油田を開発している。

最近の中国の石油会社の海外の石油権益を求めての動きは激しい。

中国海洋石油(CNOOC)は米国のユノカルの買収に動き、これは議会の反対で頓挫したが、2005年4月にカナダのオイルサンド開発企業・MEGエナジーの株式の16.69%を1億5千万カナダドルで買収した。シノペック(中国石油化工集団) も2005年6月にカナダのアルバータ州ノーザンライツでのオイルサンド事業の権益の40%を1億5千万カナダドルで買収し、オイルサンド事業に参入した。

シノペックは 2004年にイラン政府との間で、今後30年間にわたり石油・天然ガスの供給を受けることで合意し、総額で700億ドルの契約の覚書に調印した。シノペックが今後30年間にわたり毎年2億5千万トンの液化天然ガスを購入するほか、イランのヤダバラン油田の開発権を得るというもので、同油田の開発が成功した場合、中国側は25年間にわたって、毎日15万バレルの原油の供給を受けることでも合意している。Iranyuden

なお、このヤダバラン油田は、国際石油が権益をもつ日本の自主開発油田として最大級となるアザデガン油田に隣接している。同油田の権益は国際石油が75%、イラン側が25%となっている。

イランの核開発疑惑の関連で日本はアザデガン油田開発について米国からの圧力を受けているが、中国は積極的で、「米国が反対するのなら代わりの原油を供給せよ」としている。
両油田は「地下ではつながっている」との説もあり、中国による開発が進むと、 アザデガン油田から原油を 吸い上げられる可能性さえあるという。
(日本側の開発担当の国際石油開発帝石HDによると、現在はアザデガン油田の地雷除去が86%終わった段階とのこと)

シノペックはまた、サハリン3のうち、Venin鉱区の25.1%の権益をロシア国営石油会社のロスネフチから取得した。中国企業がロシア国内のエネルギー案件に参加するのは初めて。

シノペック傘下の雲南石油探査局とミャンマー国営石油・ガス公社は、ミャンマーでの石油・天然ガス探査共同事業を開始した。Myanmarpipe

これが成功した場合には「ミャンマー-雲南-重慶原油パイプライン構想」が実現する可能性があるとされる。ミャンマーのSittweから雲南省・昆明市まで原油パイプラインを建設し、その後昆明から重慶市まで延長するというもので、重慶市政府とシノペックにより、2004年末に国務院に提出されている。中国の輸入原油の約8割は、現在マラッカ海峡を経由しているが、このパイプラインが完成すれば、中国は中東原油の輸入ルートを複数持つこととなる。

中国は急増するエネルギー需要に対応するためアフリカと関係強化を進めており、胡錦濤国家主席の今年のナイジェリア訪問の際、油田開発に関する協定に調印し、探査事業や製油所の整備などで協力することで合意している。中国海洋石油は今年初め、ナイジェリア南部の海底油田の権益を20億ドル以上で買収、中国石油天然気はナイジェリアの製油所の買収交渉を進めている。

中国とカザフスタンを結ぶ石油パイプラインが25日、正式に稼動した。同日未明原油が新疆ウイグル自治区の阿拉山口(アラシャンコウ)に届き始めた。

全長962キロの石油パイプラインは、2004年9月着工し、05年11月に工事を終えた。西側がカザフスタンのアタス、東は中国新疆ウイグル自治区の阿拉山口を結び、年間輸送能力は設計ベースで2千万トンだが、パイプラインの稼動当初の年間輸送量は1千万トン。両国が共同でパイプラインの建設費7億ドルを提供した。

カザフスタンと中国の間に石油パイプラインを建設することは、1997年に中国の中国石油天然気集団公司(CNPC)がカザフスタンの石油会社Aktobemunaigazの株式60%を買収した際に決まった。

Kazaf 工期は3期に分かれており、1期はカスピ海のアトラウからケニキャクまで、今回のアタスから阿拉山口間は2期工事にあたる。3期はケニキャクからクムコルまでで、これが完成するとパイプライン総延長は約3千Kmとなる。完成後は半分がカザフスタン国内油田、半分がロシアのカスピ海沿岸の油田の原油が中国に輸送されることとなる。

CNPC は、現在はAktobemunaigaz の株式85.12%を保有しており、ケニキャク周辺の油田権益を保有している。またCNPCは2005年8月カザフスタンに権益をもつカナダの石油会社・ペトロカザフスタンを41億8千万ドルで買収した。
ぺトロカザフスタンは1986年にカナダに設立されたハリケーン・ハイドロカーボンズが前身。91年に合弁事業でカザフスタンに進出、2003年に現社名に変更した。カザフスタンで油田開発から精製、販売まで一貫して手掛め、発電所も持つ総合エネルギー企業。

ーーー

阿拉山口の近くの独山子にあるCNPCの新疆独山子石油化学は、昨年8月、製油所と石油化学プラントの拡大工事を開始した。
製油所は6百万トン/年から10百万トンに拡大するもので、カザフスタン原油を使用する。

石油化学では既存エチレン22万トンに加え、100万トンを新設する。誘導品ではHDPE 30万トン、LDPE 60万トン、PP 55万トン、SM 32万トン、PS 13万トン等が新設され、中国の最奥地に一大石油・石化センターが出来ることとなる。 

競争政策研究会報告

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経済産業政策局長の私的研究会の競争政策研究会(座長:鶴田俊正専修大学名誉教授)は19日、報告書(~グローバル競争下における企業結合審査の予見可能性の向上を目指して~)を発表した。

東アジアとの域内貿易が急速に拡大、企業の供給・調達はアジアワイドで一体化が進展するなかで、欧米企業は産業再編を通じて急速に企業規模を拡大しており、日本企業は常に海外企業からのグローバル競争圧力に直面している。

海外企業との競争を優位に展開していくためにも、企業再編が必要だが、現在の独禁法の下では、海外からの競争圧力が認められず再編を断念した案件がある。

 例 ・
PSジャパンと大日本インキ化学工業のPS事業統合
   ・東海カーボンと三菱化学のカーボンブラック事業統合

この問題は競争政策研究会が1月30日に発表した「企業結合審査における改革の進展状況と今後の課題」の中で具体的に取り上げている。
本ブログ 02/20 「
競争政策研究会の『企業結合審査における改革の進展状況と今後の課題』」 でPSの問題を分析し、公取委の見解を批判した。

公取委はPSジャパンと大日本インキ化学工業のPS事業統合を認めない理由として輸入品による競争圧力が認められないことをあげた。
「現在,中国におけるPSの需要増加による供給不足を背景として,日本への主な輸出国である韓国,台湾等のアジア各国で生産されたPSの多くが中国向けに輸出され,日本向けの輸出が増えない状況である。今後,中国国内においてPSプラントを増設する計画があるが,
PSの原料であるSMについてもアジア全体で供給不足が継続する見込みであるため,この傾向は当面継続される見込みである。」

実際には中国のSMは2005年にSeccoが50万トン常州東昊化学が15万トンを新設、2006年にも中海シェルの55万トン江蘇利士德化工の20万トンなどの新設があり、輸入は減少しつつある。
三菱化学は採算面からシェル・シンガポールからの年間38万トンのSM引取権を解消する交渉を始めている。
アジアのPSは過剰能力のために値下がりしており、Plattsによれば7月価格はSMがCFR China $1,205 に対してPSは$1,170と逆転した。

争政策研究会は3つの提言をしている。

(1)独禁法上の判断の枠組みや具体的な判断要素を明確化する

現行の企業結合ガイドラインを見直し、将来の輸入拡大の可能性など、海外企業との競争に関する分析手法を明確化すべき。
加えて、内外市場一体化の実態を踏まえ、アジア経済圏など国外を含めた市場画定を行うことについて検討すべき。

(2)独禁法上の判断の基準をわかりやすく提示する
   ~市場シェア「基準」の見直し~

現行ガイドライン:
・合併後の市場シェアが25%以下
 ⇒ 競争を実質的に制限することとなるとは通常考えられない
・合併後の市場シェアが25~35%以下
 ⇒ 競争を実質的に制限することとなるおそれは小さいと通常考えられる。

提案
・ 35%以下:
 ⇒ 独禁法上ただちに問題となるものではない。
・ 35%超50%以下:
 ⇒ 過去の審査実績を踏まえれば、独禁法上問題となる可能性は少ない。
・ 50%超:
 ⇒ 輸入圧力などの競争促進要因がある場合は、独禁法上問題なしと判断される。

(3)独禁法上の問題解消措置の考え方や選択肢について明確化する~「選択肢」の拡大

高シェア案件であっても問題解消措置を講ずることにより、競争制限のおそれを解消することが可能であり、
どのような問題解消措置を講じれば問題ないと判断されるのか考え方を示すとともに、その類型を可能な限り幅広く提示し、企業の選択肢を拡大すべき。

ーーー

このうち(1)が特に重要である。
現行独禁法では国内市場のみをみているが、「内外市場一体化の実態を踏まえ、アジア経済圏など国外を含めた市場画定を行うことについて検討すべき」である。

 


 

 

 

インドネシア最大のポリエステルメーカーのインドラマSPL がナイジェリアの国有石油化学会社を買収した。

ナイジェリア政府は昨年、国営の Port Harcourt 製油所と 石油化学会社 Eleme Petrochemicals Company の民営化を決定、インドラマが競売で韓国のLGやナイジェリア企業に勝ち、Eleme石化の75%225百万ドルで取得した。

Eleme石化はナイジェリアのNational Petroleum 子会社で、能力は、オレフィンが30万トン、PE25万トン、PPが8万トン。インドラマは同社をIndorama Polyolefins と改称、現在休止中のプラントを3ヶ月以内に再稼動させ、アフリカ市場での拡販を図る。

インドラマSPLはインド系のS. P. Lohia がインドネシアで20年前に始めた会社で、現在ではポリエステル繊維、PETをコアとした6億ドルのコングロマリットとなっている。これとは別にS.P.Lohiaの兄弟のO.P. Lohia がインドに Indo Rama Synthetics (India) Ltd. を設立し、ポリエステル事業を行っている。

インドラマSPは海外にも進出している。同グループの事業は以下の通り。

インドネシア 不動産事業  
Indorama Synthetics PET樹脂、ポリエステル繊維、
フィラメントヤーン、ほか
Medisage 医療用手袋
インド 不動産事業  
Indorama Cement セメント
スリランカ Isin Lanka スパンヤーン
タイ Indopoly ポリエステル繊維
Indorama Petrochem PTA70万t)
Indorama Polymers PET樹脂
トルコ Indorama Iplik スパンヤーン
エジプト Indorama Egypt
 Petrochemicals
アンモニア
ナイジェリア Indorama Polyolefins ポリオレフィン

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Trinidad 本年4月、Westlake Chemical と南米北端のカリブ海にある島国のトリニダッド・トバコ政府は、同国でエタンベースで57万トンのエチレンとポリエチレンほかの誘導品事業を行う覚書を締結した。当面の予想所要資金は15億ドルで、2007年後半にスタートを目指してFSを行う。安価な原料とその立地を利用して、中南米の成長市場での販売が可能と考えている。

Westlake Chemical は台湾の華夏プラスチック(CGPC)の元のオーナーのT.T.Chaoが米国に進出したもので、エチレン、LDPE、LLDPE、SM、塩素、VCM、PVCを生産している。また、Chaoグループはマレーシアの国有Permodalan Nasional Berhad と組んでパシールクダンにTitan Chemicalsを設立、エチレン70万トン、HDPE、LLDPE、LDPE、PPを生産している。同社は昨年、インドネシアのPT PENI(LLDPE/HDPE 45万トン)を買収し、PT Titan と改称した。

 

インド人や台湾人のバイタリティには感心する。


 


 

 

 

ソニーは17日、部品製造子会社のソニーケミカルとソニー宮城を7月1日付で合併し、ソニーケミカル&インフォメーションデバイスを設立すると発表した。

新会社は、ソニーケミカルが持つ化成品技術と、ソニー宮城が記録メディアビジネスなどで培った材料・プロセス技術を一体にすることで更なる事業の拡大を目指し、特に、拡大が著しい液晶テレビのパネルに用いられる機能性フィルムなどの化成デバイス分野にリソースを集中させる。

ソニーケミカルは、工業用接合材料、ディスプレイ用光学フィルム、エレクトロニクス機器向けプリント配線板、熱転写プリンター用リボンの開発・設計および製造・販売を担当するソニーグループにおける化成デバイス事業の基幹事業所で、従業員数は約1,100名(正規従業員)

ソニー宮城は、記録メディア(磁気テープおよび光ディスク)やリチウムイオン2次電池用電極、昇華型プリンター用リボン、磁気・光学デバイスおよび高純度金属加工などを行なう、デバイス事業の量産拠点で、従業員数は約1,800名(正規従業員)
す。

薄型テレビの急激な値下がりで、メーカー各社の利益率は悪化する懸念があるが、ソニーでは機能性フィルムの内製化で、テレビ事業の収益性向上を図るとともに、内製化を通じて今後の商品力強化にデバイス面からも貢献させようとするもの。

ーーー

2006/3/4の「ハイテク材料バブル説」で、現在好調なこの分野も以下の問題を内包しているとした。

化学以外の他の業界からも殺到するため、過当競争となる。
需要分野の進展が急で、新製品・新製法の開発により折角投資した材料の需要が急になくなる可能性がある。
供給先が競争に敗れ撤退する可能性(他社に供給できればよいが・・・)
新製法等での競合材料の出現
需要家自体が材料分野に進出する可能性
需要自体がバブルである可能性

ソニーの機能性フィルム内製化の動きは早晩、他社にも広がると考えられ、影響が懸念される。 

 

石油コンビナート高度統合運営技術研究組合RING)は18日、第3次事業計画を発表した。

RINGは、石油及び石油化学産業等の20社により2000年5月に設立され、コンビナートの国際競争力強化と再生を目指して「コンビナート・ルネッサンス事業」を開始した。

同事業の狙いは添付Ringroadmapの通り。

現在の組合員25社で、以下の通り。
旭化成ケミカルズ、出光興産、ヴイテック、大阪ガス、鹿島石油、コスモ石油、山陽石油化学、ジャパンエナジー、昭和シェル石油、新日本石油、新日本石油精製、住友化学、大陽日酸、帝人ファイバー、東亜石油、東ソー、東燃ゼネラル石油、トクヤマ、徳山オイルクリーンセンター、日本ゼオン、日本ポリウレタン工業、丸善石油化学、三井化学、三井武田ケミカル、三菱化学

第1次事業は2000年度から02年度までの3カ年で、コンビナート内設備の共同運用による製品や原材料の最適融通等を高効率に行うことを可能とする高度統合運営技術開発を全国5地区で行った。

第2次事業は03年度から
05年度までの3カ年計画で、コンビナートにおける新たな環境負荷低減対策技術の確立、更なる合理化・高度化を図るための副生成物高度利用及びエネルギー統合回収・利用に関わる高度統合技術の開発を、全国5地区にて行った。

今回の第3次事業計画は06年度から09年度の4年間で、事業は以下の通り。06年度の総事業費は約78億円。

【鹿島地区】「石油・石化原料統合効率生産技術開発」

 コンデンセートをスプリッターにかけ、C5留分など他の副生成物と一括して脱硫し、芳香族やガソリン、エチレン、プロピレンの原料として効率的に利用する。参加企業は鹿島石油、三菱化学、JSR、鹿島アロマティックスの4社。
 

【千葉地区】「コンビナート副生成物・水素統合精製技術開発」

 コンビナート内で副生する未利用C4留分を原料として高効率でプロピレンを生産する技術を開発する。また、全域の副生水素を集め、大規模に活用するための高純度回収技術、安定供給システムを開発する。参加企業は出光興産、コスモ石油、極東石油工業、三井化学、住友化学、丸善石油化学、大陽日酸の7社。
 

【水島地区】「コンビナート原料多様化最適供給技術開発」

 原料多様化のためコンデンセートを精製処理し、エチレンやガソリン、芳香族生産のための原料として安定的に製造・供給する技術を開発する。参加企業は新日本石油精製、ジャパンエナジー、三菱化学、旭化成ケミカルズ、山陽石油化学の5社。

ーーー

第1次~第3次の事業計画は以下の通り。Ringimage_1

 

石油コンビナート高度統合運営技術研究組合についてはホームページ参照
http://www.ring.or.jp/

図は同ホームページから(第3次は当方で追加)。

ーーー

なお、「コンビナート高度統合研究会」(伊丹敬之・一橋大学教授を委員長に産官学の委員14氏で構成)は23日、報告を発表した。

伊丹委員長は「海外の工場も訪ねて日本のコンビナートが抱えている課題や今後のあり方などを整理してみた。日本のコンビナートは原料調達や利用、コスト競争力など、いくつかの点で弱みをもっている。しかし、こうした弱みは克服すればいいわけで、逆の見方をすれば将来の強みにもなる」と述べた。

第8回 コンビナート高度統合研究会(2006/3/1)では以下の発言がある。
「エチレン生産750万トンのうち、内需は500万トン、輸出は250万トンである。今後、中国での新たな新プラント稼動等により競争環境が激化することが予測されているが、わが国石化産業も、このアジア市場でどう戦えるのかということを考えていかないと、国内の内需さえも一気に食われてしまうことにもなりかねない。」

報告書では、日本の弱みとして
・コンビナートの構成企業が統合されていない
・コンビナートが全国各地に分散し、小規模
・原料多様化が不十分、
などの点を指摘、「
コンビナートが連携・統合をはかることで原料の有効利用、中間品やエネルギーの相互融通、コスト削減と付加価値生産性の向上等を通じ、問題解決と競争力強化を同時達成していくことが喫緊の課題である」と強調している。 

コンビナート統合の実現に向けた「提言」として、以下の7項目を挙げている。
(1)アクションプログラムの策定
(2)技術課題の研究開発
(3)広域的パイプラインの敷設・整備
(4)社会的規制の最小化
(5)運営・組織形態制度の改善
(6)人材育成
(7)総合的な行政支援体制 

ーーー

RING 第三次事業計画はそれ自体結構なことだ。しかし、これは今のコンビナートの存続を前提に、やれることをやるというものである。

研究会の提言にあるコンビナートの連携・統合がどういう形のものを目指しているのかはっきりしないが、日本の石化の根本問題は過剰能力である。
今後は輸出に期待できない以上、この過剰能力の解消が必須である。
今のままなら、過剰能力→過当競争による値下がり→赤字となるのは必至である。

最終的には誘導品が弱いコンビナートをつぶすしかないと思われるが、産構法の時のように全体で相談してやることではない。下手をすれば共倒れになりかねない。

結局は各社が独自に判断すべきであろう。

3月決算

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3月決算の発表がほぼ終わった。化学会社の決算を別紙にまとめた。
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/kessan-taihi.htm

信越化学の好調な決算が目立つ。米国のシンテックの塩ビ事業は大増益となっている。
2006/5/16 「世界一の塩ビ会社 信越化学」参照)

営業損益でみると前年の場合はほとんど全社が前年比でプラスとなっていた。
本年度も前年比プラスの会社が多いが、ダウンしている会社も見られる。製品によって、特に海外活動で明暗が分かれている。

中国で増設が相次いでいる合繊原料やVCM、PVCで市況が軟化しており、これらの製品で早くも影響が出始めている。逆にスペシャリティ製品は相変わらず好調である。炭素繊維やポリカーボネートは大増益となっている。Renketueigyo

営業損益の減少したのは、三菱化学の石化部門、三井化学の石油化学と基礎化学品部門、東ソーの基礎原料部門である。
合繊原料やVCM、PVCでの海外市況の低下が響いている。
三菱化学のポリオレフィン子会社は前年比増益だが、三井化学では価格転嫁の遅れが影響しているとしている。

旭硝子(12月決算)はガラス、電子・ディスプレイの関連での減であり、旭化成は退職給付会計における数理計算上の差異の関係での減である(実質的には営業損益は91億円の増益)

(三菱化学、三井化学、東ソー、旭化成の決算については 5/17 「総合化学大手 連結決算対比」参照)

逆にスペシャルティ製品(およびハイテク材料)については相変わらず好調である。

住友化学の基礎原料ではナイロン原料のカプロラクタムが好調である。

Torayeigyo東レは炭素繊維複合材料が大増益となった。
炭素繊維“トレカ”が、航空機用途の拡大をはじめとして、ゴルフシャフトに加えて高級自転車向けが急拡大しているスポーツ用途、天然ガス自動車用CNGタンクなどの自動車向け、風力発電用風車ブレード、土木建築などの産業用途で順調に拡大。また、炭素繊維成型品(コンポジット)も、パソコン筐体等情報機器分野や産業機械分野で好調に推移した。

Teijineigyo帝人では既報の通り、合成繊維部門ではアラミド繊維関連の営業損益は183億円(前年153億円)、炭素繊維の東邦テナックス関連が42億円(同23億円)と増益、化成品部門ではフィルム事業が97億円(前年66億円)、PC事業関連は315億円(前年125億円)と大幅増益である。(2006/5/11 「3月決算 注目企業ー帝人」 参照)

Ubeeigyo 宇部興産でも化成品・樹脂部門が好調。ポリブタジェン(合成ゴム)、カプロラクタム、ナイロン樹脂の出荷が堅調で、各製品とも良好な需給バランスを背景に製品と原料の価格差が改善した。

三菱レイヨンでも炭素製品・複合材料、機能膜部門と化成品・樹脂部門が増益となっている。

Sanrayeigyo 化成品・樹脂部門では、MMAモノマーがアジア向けなどの需要が引き続き好調に推移し、逼迫した需給バランスに対応し日本でのフル操業を維持、タイの増設分も寄与した。

JSRは既報の通り、多角化事業が業績に大きく寄与しているが、合成ゴムやABSも値上げで営業利益が増加している。
(2006/5/10 「
3月決算 注目企業ーJSR」参照)

ーーーーー

2004年度はどの化学製品も中国の旺盛な需要が日本の過剰能力を吸収した結果、好調な決算となった。
しかし、中国市場は明らかに変わってきている。

中国の能力増が著しい合繊原料、VCM、PVCが最初に日本企業に影響を与えた。
今後はポリオレフィンなどについても影響が出るであろう。

医薬各社の決算が出揃った。添付の通り武田薬品の業績がずば抜けている。
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/iyaku-kessan.htm

日本経済新聞によると世界医薬大手の咋年の売上高で、武田薬品工業は糖尿病治療薬の好調などで、前年度比6%増の見通しだが、順位は14位。昨年、第一製薬と三共が経営統合して発足した第一三共、山之内製薬と藤沢薬品工業が統合したアステラス製薬は、統合で順位を上げた。

世界医薬大手の売上高ランキング
  (カッコ内は2004年順位、▲マイナス)
順位 会社名(国名) 売上高
(億ドル)
伸率
  (%)

14(13)

武田薬品工業(日)

108.6

6

16(15)

第一三共(日)

83.6

0

17(17)

アステラス製薬(日)

80.5

3

各社の現状をまとめた。
各社とも多角化事業を整理し本業に資源を集中している。但し、大衆薬については対応が異なる。

武田薬品国内の構造改善については既に書いた。 

同社の問題点は米国である。同社は米国で自力販売できなかった1985年Abbott Laboratories と折半出資でTAP Pharmaceutical Products Inc. を設立し、米国での販売を行ってきた。数年前から同社株を買い取る交渉を続けているが価格面で折り合っていない。
1998年に自社で
Takeda Pharmaceuticals America, Inc. (現在Takeda Pharmaceuticals North America, Inc.)で糖尿病薬など新しい製品の販売を行っており、米国での販売体制の再構築が課題である。

なお同社は2003年に米国持株会社に26億ドルの増資を実施、今後、米国事業において資金需要が発生した場合の機動的な対応を可能にするとともに、米国に資金をシフトすることによる運用収益の向上効果も期待している

アステラス製薬(山之内製薬&藤沢薬品)

山之内製薬と藤沢薬品は2005年4月1日付けで合併してアステラス製薬となった。合併比率は山之内製薬1:藤沢薬品 0.71で山之内製薬を存続会社とする吸収合併方式とした。MR数も2,400名と国内企業最大規模、研究開発費は1,400 億円以上の規模となり、グローバル市場で競争し得る水準を確保した。

両社は合併に先立ち、一般用医薬品事業を分割し共同出資会社ゼファーマを新設した。
2006年4月、アステラス製薬は同社を
第一三共に355億円で売却した。大衆薬事業の売上高が200億円規模では生き残るのは難しいと判断、医療用医薬品に特化して国際競争力を高める。

また山之内製薬は、栄養補給食品及びパーソナルケア製品事業の、米国のシャクリーコーポレーション、イノービスと日本シャクリー、食品・花卉事業の米国のベアクリークコーポレーション、健康食品等の販売を行うサンウエルを売却した。

アステラス製薬は藤沢薬品が展開していた医療関連製品事業から撤退した。

第一三共(第一製薬と三共製薬)

第一製薬と三共は2005年9月28日株式移転方式により共同持株会社・第一三共を設立し、両社はその完全子会社となった。
第一製薬株式1株に対して、共同持株会社株式1.159株、三共株式1株に対して、共同持株会社株式1株が割り当てられた。

第2段階として2007年4月を目処に、両社の医療用医薬品事業を統合する。
両社の得意分野は三共は循環器系、第一は感染症系と重複せず、新薬の主要市場の米国では第一は拠点を持たないが三共は自前の販売網を整えつつあるなど、相互補完効果が期待できる。
(なお、三共の株主の村上ファンドが①統合相手と②統合比率の2点から本計画に反対票を投じた。)

三共は2002年に農薬事業部門を会社分割し、新たに設立する三共アグロに、特品事業部門を同じく三共ライフテックに移管している。
第一製薬は2001年にグループのファインケミカル事業を再構築し、第一ファインケミカルに集約している。
第一製薬と第一ファインケミカルは、畜産用の抗菌剤、ビタミン剤分野を中心に動物薬事業を展開していたが、経営資源を医療用医薬品事業に集中するため、2004年4月に同事業を明治製菓に譲渡した。

第一製薬は2003年に第一製薬66%/サントリー34%出資の第一サントリーファーマを設立してサントリーの医薬事業を移管したが、その後ここれを100%子会社とし、2005年10月に第一アスビオファーマと改称した。

前記の通り、第一三共はアステラスから大衆薬ゼファーマを買収した。
第一三共の大衆薬部門は国内8位
(2004年売上高296億円)で風邪薬「ルル」、ドリンク剤「リゲイン」、発毛促進剤「カロヤン」などを持ち、ゼファーマは同9位(同224億円)で胃腸薬「ガスター10」、傷薬「マキロン」、風邪薬「カコナール」、水虫薬「ピロエース」などを持っており、首位の大正製薬を追う。

2004年度大衆薬売上高
    億円
大正製薬  1,724
武田薬品   557
ロート製薬   522
第一三共+ゼファーマ   520
ライオン(+中外大衆薬)   503
エスエス製薬   470
佐藤製薬   332
興和   330

大日本住友製薬(大日本製薬と住友製薬)

大日本製薬と住友製薬は2005年10月1日合併し、大日本住友製薬となった。
合併により国内医療用医薬品売上高でトップ10入りを果たすとともに、MR 1,500人を擁し国内大手と肩を並べる規模となる。

大日本製薬が存続会社となり(住友製薬は非上場)、住友化学は10年間は出資比率を50.1%以内に留めて上場を維持する。
合併比率は大日本製薬1、住友製薬 1,290。                 
住友化学は稲畑産業から住友製薬株式の一部を取得し、住友化学の住友製薬株式の保有比率を
77.83%から85.70%にしている。

合併に先立ち、住友製薬は一般用医薬品を扱う全額出資子会社の住友製薬ヘルスケアを大日本除虫菊(金鳥)に譲渡、また、住友大阪セメントが製造し、住友製薬が販売する骨補填材の事業部門をオリンパス・バイオマテリアルに譲渡した。

大日本製薬も一般用医薬品等を扱うヘルスケア事業および子会社であるマルピー薬品の営業を興和に、ナイロン用フィックス剤など染色薬剤事業をオー・ジーに譲渡した。

 

大正製薬

2001年9月、大正製薬は田辺製薬と対等の精神で株式移転により両社で共同持株会社を設立して事業の一体的運営を図ることで合意した。
しかし、同年12月、両社は統合を見送ることで合意した。
田辺製薬が「対等」と理解したのに対して、大正製薬は「資本の論理は当然」としたことによる。

その後2002年に大正製薬は富山化学との提携を発表した。
(1)大正製薬による富山化学工業の株式の取得
 大正が富山の第三者割当増資を引受け、21.8
%の筆頭株主となる。
(2)
医療用医薬品事業の研究開発における協力体制の構築
(3)
医療用医薬品事業の研究開発・販売に関する戦略的提携
 2002/10、大正富山医薬品㈱設立、両社からMR約1,000名出向

富山化学はさきに三塩化リンなどの工業薬品事業から撤退しているが、医家向け医薬品の営業部門を上記新会社に切り離し、研究開発に特化したベンチャー型企業を目指すこととした。英グラクソ・スミスクラインと新薬探索で協力関係を結んでいる。

なお、大正製薬は1999年に殺虫剤の製造を中止している。「ワイパア」ブランドの商標使用権は製造権を小池化学など5社に、販売権を白元貸与した。

 

田辺製薬

田辺製薬は上記の通り大正製薬との統合を断念した。

2002年に動物薬事業を大日本製薬へ営業譲渡、また2004年から一般医薬品(大衆薬)事業を縮小してドリンク剤の「アスパラドリンク」、生薬「ナンパオ」、目薬「スマートアイ」、軟膏の「フルコート」の4品目に集中し、主力の医療用医薬品事業を強化した。

 

中外製薬

2001年12月、F・ホフマン・ラ・ロシュと中外製薬は、日本国内における両社の医薬品事業(OTCを含む)の統合を柱とする戦略的アライアンスを締結することで合意に達し、基本契約に調印した。
 ① 中外製薬と日本ロシュの合併(2002年10月1日)
 ② ロシュによる中外製薬株式の50.1%取得
 ③ 中外製薬の日本における独占的地位とロシュ製品に対する第一選択権
 ④ ロシュの中外製薬製品に対する第一選択権
 ⑤ ロシュの診断薬事業と競合する中外製薬の診断薬事業の
中核、米国ジェン・プローブ社のスピンオフによる切り離し

新生・中外製薬はロシュとの研究協力体制を構築することで合意し、研究協力趣意書を締結した。

 

エーザイ

2003年動物薬事業の営業権を明治製菓へ譲渡した。また2003年には食品添加物、医薬品原料、天然および合成ビタミンE等の食品・化学事業部をエーザイフード・ケミカル㈱として分割し、責任体制を明確にした。

 

塩野義製薬

同社は2003年、塩野義49%/デグサ51%の合弁会社DSLジャパンを設立し、沈降シリカ、シリカゲルおよびつや消し剤事業を移管した。

同社は200110月にアベンティスクロップサイエンス 66%、塩野義製薬 34%のアベンティスクロップサイエンス シオノギを設立して農薬関連事業を移管し、20024月に塩野義製薬49%、ベーリンガーインゲルハイム51%のベーリンガーインゲルハイムシオノギ ベトメディカを設立して動物用医薬品事業を移管した。
両子会社の製造業務はその後も同社が受託していたが、2004年4月からこの業務を
ハヤシアグロサイエンスに譲渡した。

医療用医薬品事業に資源を集中する。

 

三菱ウェルファーマ

同社の歴史は以下の通り。2005年10月、同社は新設の三菱ケミカルホールディングスの完全子会社となった。Wellpharma

2002年10月に全額出資会社の吉富ファインケミカルをエーピーアイコーポレーションと改称、三菱化学の医薬原体事業及びファインケミカル事業の一部を承継させ、2003年10月には自社の原薬事業も移管した。

2003年10月、血しょう分画製剤事業をベネシスに完全分社化、また2003年に米国血漿分画事業から撤退した。

2004年10月、ビタミンB2事業を第一ファインケミカルに譲渡

 

帝人

2003年1月、帝人杏林製薬は、帝人の医薬医療事業グループを会社分割によって杏林に事業統合し、帝人が杏林株式の50%超を保有することで合意した。

しかし、杏林の主力製品で副作用問題が発生し株価が大幅に下落したため、統合比率など条件を巡って両社の見解が食い違い、統合発表からわずか3カ月での白紙撤回となった。

 

酢酸業界

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昭和電工は本年3月中旬から定修でエチレンを671千トンから695千トンへ、酢酸を100千トンから130千トンへ、酢酸ビニルを120千トンから175千トンへ増強を行った。
同社では「アジアでトップクラスの収益力を持つ、個性派コンビナートを目指してきたが、実現に一歩近づいたと思う」としている。同社はエチレンから直接酢酸を製造する製法を開発し、酢酸と酢酸エチルをコア事業の一つとしている。

酢酸の製法にはアセトアルデヒド法(エチレン→アセトアルデヒド→酢酸)とメタノール法(メタノールと一酸化炭素から酢酸を合成)があったが、昭和電工はアセトアルデヒドを経由せずエチレンを直接酸化する直接酸化法を開発し、1997年にプラントを建設した。
また酢酸エチルはこれまでアセトアルデヒドを経由して製造しているが、同社では
酢酸とエチレンから直接合成る画期的プロセスの開発に成功し、インドネシアにプラントを建設している。

日本の酢酸関連のメーカー相関図と各社の能力は添付の通り。
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/aa.htm

 

以下に各製品の状況をみる。

アセトアルデヒド:

昭和電工は大分(160千トン)と徳山(140千トン)にプラントをもつ。徳山のプラントは元は徳山石油化学で1962年に日本ガス化学 60%/昭和電工 40%で設立されたが、その後昭和電工100%となり、99年に吸収合併した。

日本アルデハイド(69千トン)は1966年に住友化学 60%、ダイセル 40%で設立された。ダイセル大竹の酢酸の製法転換により1981年に 1系列を停止した。現在は千葉酢酸エチル向けに出荷している。

協和発酵ケミカル(61千トン)は協和発酵のケミカルカンパニーが製造子会社である協和油化をと統合したもの。

三井化学は97年に休止している。

酢酸:

昭和電工は1997年に大分に直接酸化法プラント(100千トン、現在は130千トン)を新設し、2001年にアセトアルデヒド法酢酸を休止(のち酢酸エチルに転用)した。

昭電は2001年にBPのマレーシア子会社BP PETRONAS Acetyls (BP 70%) から、同社が新設したメタノール法400千トン設備の能力の約30%を供給保証契約に基づき長期安定的に引取ることで合意している。

ダイセル化学は新井工場のアセトアルデヒド法プラントは休止し、現在は大竹でBP法で36千トンの能力をもつ。
同社は1977年に三菱ガス化学等とのJVの
協同酢酸を設立し、ダイセル網干にメタノール法酢酸プラントを建設した。
途中で協和発酵が参加し、現在の出資は、

ダイセル 54%/三菱ガス化学 18%/電気化学 15%/協和発酵 8%/チッソ 5%で、能力は408千トンとなっている。

酢酸エチル:

昭和電工は旧徳山石油化学の150千トンをもつが、昭和電工 55%/協和発酵 45% で日本酢酸エチルを設立し、2001年に休止した大分のアセトアルデヒド法酢酸を転用し、2004年に100千トン設備をスタートさせている。
なお、
協和油化は日本酢酸エチルの稼動後、生産を休止した。

昭和電工は1997年にインドネシアにPT. Showa Esterindo Indonesia を設立し、同社が開発した酢酸エチル直接付加法により50千トン設備を建設した。
立地はメラク地区で、昭電が51%出資し、現地のCV Indo Chemical が30%、シンガポールのChin Leong (CLP) が5%、トーメンが14%出資している。

千葉酢酸エチルはダイセルの新井工場のプラント停止を受け、1981年にチッソ 55%/ダイセル 45%で設立、チッソ・五井の酢酸エチル設備を増強して操業開始した。原料アセトアルデヒドはダイセル出資の日本アルデハイドから供給を受けている。

なお、チッソは韓国 International Esters Corporation (BP/Korean Alcohols Industrial/ 住友商事のJV)に参加して酢酸エチルを輸入していたが、1996年末に同社から撤退した。

酢酸ビニル:

昭和電工は大分に120千トン(今回の増設で175千トン)のプラントをもつ。

日本合成化学は水島(180千トン)、電気化学は千葉(60千トン)、クラレ岡山(150千トン)にプラントをもつ。
なおクラレは1983年に中条工場の
天然ガス法酢ビ(86.4千トン)を休止している。

日本酢ビ・ポバール(堺、120千トン)は2005年3月に信越化学の100%子会社となったが、以下の経緯をたどった。
 1968年 信越酢酸ビニール設立(信越化学
51%/ユニチカ 49%)
 2003年 信越酢酸ビニールとユニチカケミカル(PVA生産)が統合して日本
酢ビ・ポバール(信越化学 50%/ユニチカ 50%)設立
 2005年 信越化学 100%

ポリビニルアルコール(PVA ポバール) 

クラレは岡山(96千トン)と中条(28.3千トン)にプラントをもつが、中条は酢ビの生産停止で特殊品が中心となっている。

日本合成化学は水島(40千トン)と熊本(30千トン)、電気化学は青海(28.8千トン)にプラントをもつ。

日本酢ビ・ポバールは信越化学100%子会社となったが、堺に旧ユニチカケミカルの工場の40千トンプラントをもつ。
  → その後、60千トンに増設。

日本合成化学とクラレは1996年10月、シンガポールに50/50JVのポバールアジアを設立した。Sakra島に能力40千トンのプラントを建設、それぞれが20千トンずつ引き取る。

クラレは2001年にクラリアント社のポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)事業を買収、Kuraray Specialities Europe GmbH を設立した。ドイツ・フランクフルトのPVA 50千トン、PVB 16千トンのプラントを手に入れたが、現在の能力はPVA 70千トン、PVB 20千トンとなっている。
なお、同社は2004年にはRutgers社から同社子会社のHT TroplastのPVBフィルム事業を買収している。
(2006/4/26 同社はPVBフィルムの能力増強を発表した。2007年6月完工で現状26千トンを34千トンとする)

ーーーー

海外勢では大手の2社がアジアで争っている。

BPはオレフィンや誘導品事業をInnoveneとして分離し、昨年末にIneosに売却したが、芳香族、PTAと並んで酢酸事業についてはコア事業として残しており、世界全体で200万トン以上の能力をもっている。

マレーシアではペトロナスとのJVのBP PETRONAS Acetyls Sdn Bhd (BP 70%)で 400千トンの能力をもつ。(上記のとおり昭電に30%を供給)
韓国では三星とのJVのSAMSUNG BP Chemicalsで420千トンの能力をもつ。
(BPと三星はPTAでもJV・Samsung Petrochemical Company をもつ。当初は三星50%、Amocoが35%、三井石油化学が15%出資であったが、その後三井が離脱し、現在はBPと三星が47.4%ずつ、Shinsegaeが5.2%出資となっている)

BPは中国では酢酸事業でSINOPECとの間で2つのJVをもっている。
一つは重慶のYangtze River Acetyls Company(通称YARACO)で、BPが51%、SINOPECが44%、重慶投資建設公社が5%を所有する。2005年末に15万トンの増設工事が完成し、35万トンとなった。一部は隣接の「SINOPEC 四川ビニロン工場」の20万トン酢ビモノマーのプラントに供給される。
昨年11月にBPとシノペックの酢酸製造JV、BP YPC Acetyls(南京)を設立した。BPが50%、SINOPEC子会社の揚子石化が50%出資し、50万トン設備を建設する。

セラニーズ南京で60万トンの酢酸の工場を建設中。原料のメタノールとCOはテキサコの石炭ガス化技術によりメタノールとCO(ともに30万トン)を建設中の惠生(南京)化学から供給を受ける。

中国の2004年の生産量は1,150千トンで輸入量は525千トンである。YARACOは既に150千トンを増設、両社の南京計画が合計1,100千トンのため、近い将来に大幅な供給過剰となる。

セラニーズはシンガポールのSakra島でも酢酸 500千トン、酢酸エステル 100千トン、VAM 200千トンを生産している。

旭化成ケミカルズは本年2月、タイのPTT との間でアクリロニトリル(AN)とMMAおよびPMMAのタイにおける製造・販売合弁会社設立の詳細検討を開始したこと発表した。

計画ではANは能力200千トンで、同社が独自開発したプロパン法ANプロセスを採用する。原料プロパンはPTTが供給する。
AN副生の青酸を利用してACH法MMA 70
千トン及びPMMA 25千トンを別JVで生産する。

旭化成ケミカルズはこれにより全世界で約100万トンの供給能力をもつこととなり、世界最大手のIneos Nitrilesと同等の規模を確立することとなる。
(Ineos Nitriles は元のBPの事業で、Innovene として分離した上、昨年末にIneosに売却された。)

以下に各社の状況をみる。

旭化成国内では川崎に148千トン、水島に293千トン(2004年10月に50千トン増設後)の能力をもつ。
同社は2000年に三井化学から青化ソーダの営業権を譲受け、川崎にAN副生青酸を原料に10千トンの青化ソーダプラントを建設している。

同社は1998年に韓国の東西石油化学を100%子会社とした。2003年に増設した結果、現在の能力は次の通り。
 AN 270
千トン、青化ソーダ 40千トン、アクリルアマイド 10千トン、EDTA 3千トン
東西石油化学は1969年に忠州肥料と米国スケーリー石油との折半出資で設立され、その後1970年から1975年にかけて、韓一合繊が忠州肥料保有の株式を、旭がスケーリー石油保有の株式を順次譲り受け、1975年12月から韓一合繊と旭化成の50/50JVとなったが、1998年に旭化成が韓一合繊の持株を買取った。
韓一合繊は韓国のアクリルファイバーの大手メーカーであり、東西石油化学は引き続き韓一合繊向けにANを供給する。

旭化成は1998年に、米国ソルーシア社(モンサントのファイバー・化学品部門を中心に分離独立)のテキサス州アルヴィンでの250千トンAN建設計画に参画し、年間50千トンの引取権を取得した。 ソルーシアは260千トンの能力をもっていたが、不足するANを自製することとなり、プラントの高稼働維持のために旭化成をパートナーに選んだもの。

これにより同社の能力は日本で441千トン、韓国で270千トン、米国で50千トンとなり、タイの200千トンが加わると、約100万トンとなる。

ーーー

三菱化学と三菱レイヨンは2001年7月に両社のAN、アクリルアマイド、ポリアクリルアミド及び関連事業を統合し、50/50JVのダイヤニトリックスを設立した。(2006年4月に三菱レイヨン 65%/三菱化学 35%となり、三菱レイヨンの連結子会社となった)

ダイヤニトリックスのプラント別能力は以下の通り。(単位:千トン)

  三菱レイヨン 三菱化学
大竹 横浜 富山 水島 黒崎
AN  90      115  
アクリルアマイド    20      45
ポリアクリルアマイド     12     3.5
ACH         24  
N.ビニルホルムアミド
同ポリマー
         1.14
 1.20

なお、ダイヤニトリックスは中国でアクリルアマイド事業のFSを実施している。

ーーー

三井化学アクリルアマイド事業には注力しているが、ANについては、中国における生産設備の新増設、国内でのアクリル繊維等の需要減少で余剰状態が更に一層拡大していくと考え、20055月に大阪工場の59千トンを停止し、所要のANは旭化成に委託生産することとした。

同社のアクリルアマイドは、日本で38千トン(大阪、茂原)、インドネシアで5千トン、韓国で12千トン、合計55千トンで、アジアでは最大級のアクリルアマイドメーカーである。
インドネシアのP.T. Mitsui Eterindo Chemicals
は三井化学 70%、Eterindo Group 20%, クオックGroup 10%のJVで、メラクに5千トンの能力をもつ。
韓国では龍山化学(三井化学/龍山/トーメン
)で銅法で麗川で7千トンの生産をしていた。
2002
年に龍山三井化学三井化学 50%、龍山 50%の蔚山工場で、新しく開発したバイオ法により5千トンプラントを建設した。新旧両法合わせた能力は12千トンとなった。
最終的に龍山化学のアクリルアマイド製造事業を龍山三井化学に分離統合することで、龍山三井化学をアクリルアマイドの東アジアの製造・販売拠点とする。(龍山化学は無水マレイン酸などに事業を特化する。)

バイオ法は、三井化学が遺伝子組替え技術により新開発した酵素を触媒とするもの

なお東亞合成の高分子凝集剤事業を分離して、2006年10月に、三井化学100%子会社の三井化学アクアポリマー(当初は三井サイアナミッドでその後三井サイテックとなり、2003年に三井100%となって改称)と統合することを決めている。

ーーー

このほか、ANでは住友化学が新居浜に52千トン、昭和電工が川崎に51千トンの能力をもつ。

 

 

 




電気・電子機器メーカー、自動車メーカーの海外進出に伴い、国内ナイロンメーカー各社が海外生産を進めている。ナイロンとナイロン6の原料のカプロラクタムの動きをみる。
ナイロン66はアジピン酸とヘキサメチレンジアミンを重縮合させてつくる)

各社能力は以下の通り。
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/nylon-capa.htm

宇部興産はカプロラクタムとナイロン樹脂は日本・タイ・スペインの三極体制で生産、世界のビッグ3に数えられてる。

ナイロンは宇部工場で55千トン(他にナイロン66、ナイロン12)、タイで25千トン、スペインで10千トンの能力をもつ。
タイではラヨンにTPI、日商岩井とのJVのUbe Nylon (Thailand)を設立し、1997年に生産を開始したが、2002年に100%子会社とした。
現在の能力は25千トンで、ガラス強化コンパウンド6千トンも持つ。

スペインでは2001年10月に100%出資のUBE Engineering Plastics,S.A.をスペインカステジョン市のラクラム生産拠点に設立した。
現在の能力は10千トンだが、手直しで2006年末までに16千トンとし、2008年に15千トン設備を新設する。また昨年末にUBE Engineering Plastic R&D Centerを建設した。

同社では2007年をメドに米国にも生産拠点を設ける計画で、自動車メーカーの国際的な生産体制に対応する。

また同社は1998年に米国最大の総合コンパウンドメーカーであるM.A.Hanna(2000年にGeonと合併しPolyOneとなる)とナイロンコンパウンドの50/50合弁会社事業UBE-Hanna Compounding Company, LLC を設立し、グローバルに展開することとした。
現在の社名は
UBE-Polyone Compounding Company, LLC.で、デュッセルドルフにUBE-Polyone Compounding GmbH.をもつほか、中国進出も検討している。

原料カプロラクタムでは宇部に90千トン、堺に110千トンをもっていたが、タイに生産をシフトすることとし、2003年に堺の旧設備20千トンを停止した。残る1系列90千トンも停止を検討している。

タイのThai Caprolactam Public Company は1990年に宇部(44.45%)、TPI、丸紅、バンコク銀行のJVとして設立、2001年に53.63%として子会社化した。現在の能力は100千トンだが、増設を検討している。

スペインでは1967年に設立されたProductos Químicos Esso宇部興産が1993年に30%出資、94年に90%とした上で1996年に100%子会社とし、2003年にUBE Chemical Europe S.Aと改称した。
カステジョン市にラクタム75千トン、1-6 Hexanediol 3千トンの能力をもつ。

なお、宇部興産 33%/EMS-GrivoryEMS子会社)67%出資の宇部エムスが宇部でカプロラクタム15千トンとナイロン12の原料のラウロラクタム25千トンを併産している。

東レはナイロン6の内外での強化を図っている。
既存の名古屋に加え岡崎工場ではナイロン繊維の重合設備を転用した。今後1万トンまで増やす計画。
東南アジアや中国でアライ
アンスを有力な選択肢として検討している。

カプロラクタムでは東海工場に100千トン設備をもつ。

三菱化学は黒崎にナイロン30千トン、台湾に100%子会社の太洋ナイロンで11千トンを持つ。

同社はカプロラクタムについては2005年3月で外販事業(国内販売・輸出)から撤退し、自社向けの生産に特化した。このため、黒崎の2系列のうち50千トンを停止した。但し、その中間原料のシクロヘキサノンはウレタン原料、電子材料用特殊用材、塗料、医農薬中間原料など今後需要の拡大が期待されるため、カプロラクタム1系列停止後も生産量を維持し、国内及び中国を含むアジアマーケットへの拡販を図る。

三菱ガス化学の米国子会社 MGC Advanced Polymers(同社80%/丸紅20%)はヴァージニア州リッチモンド市近郊でMXナイロン生産設備(当初10千トン)を建設、2005年初めに生産を開始した。食品包装材向けを軸にする。

ーーー

住友化学のカプロラクタムは当初、同社と帝人、東洋紡のJVの日本ラクタムで生産していたが、1994年に同社を解散し、住友化学の事業となった。愛媛にBASF技術の93千トンプラントを持つが、別途新法を開発し、それにより67千トンの新プラントを建設した。

カプロラクタムは、ベンゼンを出発原料とし、シクロヘキサノンを経由して、シクロヘキサノンオキシムを液相でベックマン転位して製造する製法が主流だが、多量の硫安が副生する。
住友化学は、ベックマン転位工程での高性能新触媒の自社開発に成功し、イタリアのエニケムが開発したシクロヘキサノンをアンモニアと過酸化水素で直接オキシム化する新法と組み合わせて、
硫安を一切副生しない(副生物は水のみ)世界で最初の本格的商業プラントを建設した。2003年から稼動している。

総合化学大手6社(昭和電工は12月決算)が出揃った。

別紙(クリックしてください)に各社の売上高、営業損益、経常損益、当期損益を3期比較で対比した。
三菱化学は2005年下期より三菱ケミカルホールディングスとなった。2005年上期までは三菱化学の連結決算数値を使用している。

昨年度は各社とも前年比増益となったが、本年度は会社により差が出た。
連結営業損益、
経常損益でみると、三菱化学と三井化学、東ソーが前年比マイナスとなっている。(旭化成は経理処理による減)
逆に住友化学はいずれも大幅増となった。

中国で増設が相次いでいる合繊原料やVCM、PVCで市況が軟化しており、これらの製品で早くも影響が出始めている。今後はポリオレフィンなどについても影響が出るであろう。

各社の決算は以下の通り。(単位:百万円)

三菱化学

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益
04/3 1,925,331   98,163   82,613   34,547
05/3 2,189,462  148,624  148,069   55,372
06/3 2,408,945  133,619  143,575   85,569
増減  219,483  -15,005   -4,494   30,197

営業損益、経常損益が前期比マイナスなのに当期損益がプラスなのは、特別損失(ネット)が前期 -41,465 に対して当期が -28,505 と減少しているためである。Mitubishieigyo_1  

 

 

三菱化学では石化部門の営業損益が大幅減となった。同社の石化部門は基礎石化製品、化成品、合成樹脂、合成繊維原料などを含んでいるが、同社では「海外ではスチレンモノマー、エチレングリコール、テレフタル酸等の市況が弱含みで推移した」としている。アジア(日本を除く)の営業損益が減少している。

三菱化学は最近、シェルのシンガポールからのSMの引取権の解消に向け交渉中であることを明らかにした。PO/SMのJVの持株譲渡と交換に年間380千トン分の引取り権を得ているが、原料価格高騰を受けスプレッドが悪化、将来的にも収益改善が見込めないと判断したもの。

なお、三菱化学主導のPE、PP、PVC統合会社(12月決算)の業績(百万円)は以下の通り。各社とも好調。

日本ポリエチレン 2003/9スタート
(日本ポリケム=三菱化学50%、日本ポリオレフィン=昭電/新日石化学42%、三菱商事プラスチック8%)

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益
04/12  115,760   2,840   2,213    310
05/12  131,550   7,470   7,019   1,616

日本ポリプロ 2003/10スタート
(日本ポリケム=三菱化学
65%、チッソ 35%)

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益
04/12  138,037   5,156   4,661   2,814
05/12  156,028   5,584   5,242   2,533

ヴイテック
三菱化学 85.1%、東亞合成 14.9%

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益
03/12  26,937  - 3,375   - 3,564   - 3,557
04/12  33,184    954    765    765
05/12  35,670   1,510   1,318   1,282

* 2005/12月末のヴイテックの累積損益は-14,173百万円

なお、三菱化学は2005年下期から三菱ケミカルホールディングスとなった。
単独決算では期末は8円配当となっているが、三菱化学株主には1株について0.5株の割当のため、実質的には4円配当となる。

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旭化成

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益
04/3 1,253,534   60,932   53,643   27,672
05/3 1,377,697  115,809  112,876   56,454
06/3 1,498,620  108,726  104,166   59,668
増減  120,923   -7,083   -8,710    3,214

Asahieigyo 同社は退職給付会計における数理計算上の差異を、発生の翌期の1年間で営業費用として処理する方法を採用している。
これが前期は202億円の益、当期は40億円の益となっており、当期は前期比では162億円の減益となる。
これを除くと
実質的には営業損益は91億円の増益である。

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住友化学

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益
04/3 1,158,402   66,620   66,328    34,318
05/3 1,296,315   105,182   123,476   64,452
06/3 1,556,606   120,790   141,127   90,665
増減  260,291    15,608   17,651   26,213

Sumikaeigyo 連結売上高、営業利益、経常利益、当期純利益はいずれも過去最高を大幅更新した。

同社の石油化学、基礎化学とも増益となっている。基礎原料ではナイロン原料のカプロラクタムが好調。
また地域別にもアジアの営業損益は前年の238億円に対し334億円と増加している。

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三井化学

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益
04/3 1,089,518   53,942   47,694   12,466
05/3 1,227,547   80,491   79,737   26,192
06/3 1,472,435   58,705   61,989   44,125
増減  244,888  - 21,786  - 17,748   17,933

Mituieigyo_1

ナフサなどの原燃料価格高騰などにより売上原価が大きく増加し、前期に比べ218 億円減となった。主力の合成繊維原料の市況が弱含んだうえ、合成樹脂の価格転嫁の遅れも響いたとしている。(但し、上記の通り三菱化学の樹脂子会社は増益となっている)
*石化では変動費アップで-572億円に対し、値上げは439億円で差し引き-133億円
  基礎では変動費アップで-513億円に対し、値上げは401億円で差し引き-112億円
ポリオレフィンについてはプライムポリマーの設立に伴い、出光興産分の売り上げが増加した。

なお、有形固定資産の減価償却の方法は、従来定額法を採用していたが、当期より建物を除く有形固定資産について主として定率法に変
更した。これにより減価償却費は59億円増加し、営業利益、経常利益も同額減少している。

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昭和電工(12月決算)

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益
03/12  689,366  38,546  23,840  10,317
04/12  740,706  52,071  38,912   7,596
05/12  811,899  57,191  46,960  15,647
増減   71,193   5,120   8,048   8,051

Shodeneigyo 同社の電子・情報部門はハードディスク、化合物半導体、レアアース磁石合金、その他で、大幅増益となった。
石油化学はオレフィンと有機化学品(酢酸、酢酸ビニル、酢酸エチル等)が中心で、
日本ポリオレフィンのPE事業は2003/9に日本ポリエチレンとなり、連結会社でなくなった。

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東ソー

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益
04/3  484,388  30,054  25,372   7,296
05/3  588,331  56,898  55,757  29,533
06/3  648,810  47,459  49,731  27,532
増減   60,479  -9,439  -6,026  -2,001

Shodeneigyo_1 東ソーでは基礎原料(苛性ソーダ、塩化ビニルモノマー、塩化ビニル樹脂、無機・有機化学品、セメント等)の営業損益が激減している。
同社ではVCM及びPVCで、国内価格の値上げは浸透したが、海外市況は中国の需給緩和により軟化したとしている。

 

信越化学の決算が発表された。増収増益である。(単位:億円)

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益
04/3   832,804  125,625  125,612   74,805
05/3   967,486  151,734  151,503   93,160
06/3  1,127,915  185,320  185,040  115,045
増減   160,429   33,586   33,537   21,885

現在、同社の金川千尋社長は日本経済新聞の「私の履歴書」に連載中だが、同社の好業績は金川社長の指導力によるところが大きい。

売上高は1兆1,280億円、最終利益は1,150億円と、それぞれ1兆円、1000億円の大台に乗せた。11期連続の最高益更新。

同社は以下の製品群をもつが、いずれも好調である。Shinetusegeigyo

主力商品はPVC、シリコーン樹脂、半導体用シリコンウェハー、合成石英の4品目。

・有機・無機化学品:
    塩化ビニル、シリコーン、セルロース誘導体
・電子材料:
    半導体シリコン、電子産業用希土類磁石、
    フォトレジスト製品・電子産業用有機材料
・機能材料その他:
    合成石英製品、希土類磁石、レア・アース、
    酸化物単結晶

その中でも塩ビは日米欧に拠点を持ち、世界一の地位を占めている。同社のPVC事業の歴史をまとめた。

同社の現在の能力は以下の通り。

信越グループの能力(千トン)
  場所 PVC  VCM 注  
現状 計画 現状 計画
日本 信越化学 鹿島  550        
鹿島塩ビ 鹿島      492   600
米国 Shintech Texas 1,450        
Louisiana  590        
(270)       廃棄
   600    750 塩素 450
欧州 CIRES ポルトガル  200        
信越PVC オランダ  450    620    
フィンランド ( 90)       契約終了
合計 3,240  600 1,112  750 塩素 450

国内

1955年に新日窒とのJVで日信化学工業を設立し武生でPVCを起業化(1965年に100%化)、1957年には自社で直江津で生産を開始した。
1967年に三菱油化が鹿島のエチレン30万トン計画推進に当たり、有力企業を集めて
電解、VCM、PVCおよびアンモニアの起業化を検討、信越はこれに乗って鹿島進出を決めた。鹿島電解(ソーダ264千トン:23%出資)、鹿島塩ビモノマー(220千トン:50%出資)に参加するとともに、自社でPVC200千トンを建設、1970年に生産を開始した。(つなぎとして南陽にプラントを建設)

1972年に不況カルテルで日信化学プラントを停止、1973年には直江津のVCMプラント爆発でPVC生産を停止した。
南陽工場は産構法後に停止し、能力見合で新鋭設備を鹿島に建設し、同時に産構法での鹿島の休止設備を操業再開し、シェアを拡大した。

金川社長は後記の通りシンテックの100%子会社化を提案して以降、同社の経営に当たったが、1982年にシンテック社長に加え塩ビ事業本部長を兼務し、1990年8月、社長に就任、強烈な指導力で国内の塩ビ事業の拡大に貢献した。

以下はその例である。

1980年頃に鹿島では大きな問題があった。同社は鹿島電解で本来の枠に加え、旭硝子、旭電化の両社から両社の塩素枠の2分の1の塩素(優先塩素)を引き取っていた。(当初はメリットがあったから引き受けた筈)
1980年頃は輸入EDCの価格が低下したが、同社は優先塩素のために安い輸入EDCが使えないという問題である。これにエチレン価格問題があった。
同社では金川本部長のもとで、「(交渉決裂で原料が切れる場合に備え)米国からの原料およびPVCの直接輸入も必要とあらば直ちに実行できる準備をし、同時に万一訴訟等になった場合の対策についても万全の備えを行い十分に切り抜けられる体制をつくって」(同社社史)、交渉を行い、有利な新契約を締結した。

産構法時には他社が設備廃棄するなかで唯一、鹿島工場を休止し、産構法終了後の不足時に再稼動してシェアを伸ばした。
(業界では通産省の指導で産構法終了後も「重合槽のm3数」を増やさないとの約束をしていたが、同社は通産省に掛け合い、同社所属の共販会社の重合槽m3枠の増加を勝ち取った。
しかし、第一塩ビグループが第一塩ビ製造で増設したのに対し、重合槽のm3数維持を理由に強烈に反対したといわれている。)


三菱化学の合併に当たっても、(三菱化成が塩ビをやっているため)競争相手から原料エチレンを買うことになるとして、他社からの購入も考えて鹿島にエチレンタンクをつくるとし、最終的には有利な原料価格方式を勝ち取ったといわれている。

 

海外

CIRES(コンパニア・インダストリアル・デ・レジナス・シンテティカス):

同社の海外進出の第1号は1960年設立のJV、ポルトガルのCIRESである。

当時ポルトガルでは合成樹脂について国内に原料のあるPVC計画のみが検討されおり、その認可を受けた同国最大の電力会社ウニオン・エレクトリカ・ポルトゲーザ(UEP:傘下にカーバイド製造会社を持つ)が提携先を探していた。
三井物産のアレンジで信越の参加が決まり、1960年にCIRESが設立された。

三井物産と信越化学がそれぞれ25%出資、現地側はUEP12.5%、市中銀行2行で35%、機械商社2.5%の出資比率であった。
1963年に年産3,600トンでスタートした。

その後長期間、三井と信越は26%ずつの出資を続けたが、1992年にNorsk Hydroが26%の出資を行った。

 

ポリカサ(ポリメロス・セントロアメリカノス)

1967年にニカラグアでポリカサを設立した。

信越化学33.75%、三井物産11.25%に現地(ソモサ系)が55%出資で設立され、中米共同市場を対象にPVC年産5千トン、同コンパウンド6千トンを生産するもので、1970年にスタートした。

79年にサンディニスタ民族解放戦線による革命が勃発し、ソモサ大統領は亡命し、後に暗殺された。信越化学の全社員が引き揚げた。革金政権は操業再開を何度も求めてきたが、社員の安全を第一に考えて断った。(修正)

金川社長はこれを最大の失敗としている。
「中米のニカラグアで60年代の終わりから10年間で地元企業との合弁会社を、中米一の企業に育てた。ところが79年の終わり頃、革命が起きたのです。大統領がいなくなって国が滅茶苦茶になった。事業はうまくいっていたが、通貨がスーパーインフレになってしまい、国が滅茶苦茶になった。事業はパーです。それまでに現金収入で上げた利益を送っていたから、投資として帳尻は合ったが、事業は消えてなくなったわけです。」
2005/6/12 TV朝日「トップに迫る」

シンテック

金川海外事業本部長はポリカサヘの原料モノマー交渉を通じてダウ・ケミカルとの交流を深め、同社関係者から新技術による信越自身の米国でのPVC企業化を勧められていた。

1972年に、航空機部品の銅管から出発して塩ビパイプ部門に進出し米国最大の塩ビ管メーカーに急成長したロビンテックが信越に対し共同事業を申し入れた。

交渉の結果、1973年にPVC製造の合弁会社シンテック設立に関する契約が調印された。
信越とロビンテックの折半出資で、工場は当初年産10万トンとし、米国テキサス州フリーポートのダウ・ケミカルのコンビナートに隣接して建設する。信越は新技術を新会社に供与、プラント設計から建設、試運転、操業までの一切の指導に当たる。新会社の経営は両社が対等の立場で行う。原料はダウ・ケミカルから購入する、という内容である。

工場は1974年10月に完成した。

1976年初め、ロビンテックは資金繰りに困り、保有するシンテックの株式を譲渡したいと信越に申し入れた。信越とロビンテックの経営方針は大きく異なり、時を追ってこれが拡大していた。

信越の業績は石油危機後の最悪期を迎えており、共同経営の解消、株式買い取りについては社内外にも異論があったが、同社は金川海外事業本部長提案のあったシンテック株式の100%買い取りを承認、1976/7に調印した。1年後、金川常務がシンテック社長に就任した。

(ロビンテックは一時立ち直るが、80年代後半、再び苦境に陥り、米連邦破産法第11条を申請したが、再建できず、破産に追い込まれた。)

シンテックの特徴はダウとの提携であった。ダウは電解~VCM事業、シンテックはPVC事業に専従して共存共栄体制をとり、VCM価格の決定にはPVC価格を反映させている。PVC価格が暴落した場合は値下がり損の半分をVCM価格引下げでダウが負担、逆にPVC価格が上がれば値上がり分の半分がVCM価格に反映されるというものである。

*ダウは2004年に、テキサス工場のEDCプラント1系列を2005年末までに停止し、VCMの生産も縮小すると発表した。エネルギー・原料価格の高騰に伴い、採算が合わなくなったためと説明している。
シンテックの業績は好調であり、上記の運営方式ではダウにもメリットがいく筈であり、後記のシンテックによる原料遡及計画などを含め、シンテックとダウの関係が変わりつつあるのかも分からない。

テキサス工場は1976年以降、設備増強を重ねて、1990年末に90万トンとなって全米最大の塩化ビニル企業へ成長した。
その後も増強を続け、現在の能力は145万トンとなっている。

なお、信越はテキサスに塩化ビニル樹脂コンパウンドの製造・販売子会社 K-Bin Inc.をもっている。

ルイジアナ第2工場

1996年、信越はシンテックを通じてルイジアナ州コンベントに15平方キロの工場用地を取得した。
7億ドルを投じて電解、VCM(50万トン)、PVC(50万トン)の一貫生産体制をつくる構想で、1998年スタートを予定した。

しかし、この計画は難航した。
環境保護団体グリーンピースが「ダイオキシンが発生する塩ビ工場を、黒人住民の多い地域に建設するのは人種差別」と攻撃した。

これに対し信越では、「地域住民を対象にした世論調査では6割以上の人が工場建設に賛成してくれている」と反論した。

1998年になり信越では立地をAddisに変更し、一貫生産を棚上げしてPVC 59万トンのみの生産とした。ここにはダウ・ケミカルの工場があり、原料供給を受けるかたちとなる。

200012新工場の生産能力59万トンの半分である第一段階の30万トンが完成し、生産を開始した。 残りは2001年末に完成している。

ボーデンのプラント買収

Borden Chemicals and Plastics は1987年にBordenから分離独立した塩ビ会社であるが、20014月に米連邦破産法第11条(会社更正法)の申請を行い、2003に最終的に清算された。

同社はルイジアナ州AddisとGeismer、イリノイ州Illiopolis に3つのプラントをもっていた。

Addis工場は1979年に信越化学の技術を導入し建設された工場で、シンテックの工場から約2km離れた場所に位置する。信越はこれを買収した。能力は27万トン。
プラントは設備に問題があり、廃棄した。「1回でも事故を起こせば致命的な打撃を受ける。今回の買収では、商権を手に入れただけで投資の成果は十分に上がった。」(私の履歴書)

なお、残りのGeismer工場はWestlakeが、Illiopolis工場はFormosaが買収した。

ルイジアナ新計画

2004年12月、信越化学は新計画を発表した。
総額10億ドルをかけて塩素 45万トン、VCM 75万トン、PVC 60万トンの一貫生産を行うというもので、第一段階として、塩素 30万トン、VCM 50万トン、PVC 30万トンを2006年末に完成させ、残りを2007年末に完成させる。

信越は発表していないが、ルイジアナ州地元紙はルイジアナ州プラクミンの南の元アッシュランドケミカルの工場敷地に建設することを決めたと伝えている。

各プラントの立地は以下の通り。Shintech

ミシシッピ川流域ではDowがPlaquemine、HahnvilleとNorco(両方合わせてSt.Charles工場)、
ExxonMobilがBaton Rouge、ShellがNorco にエチレン工場をもっている。

シンテックの最近の業績は以下の通り。  

  2003/12月期 2004/12月期 2005/12月期
◇売上高  1,671億円  1,971億円  2,330億円
◇経常利益   238億円   271億円   373億円
◇当期純利益   155億円   179億円   248億円

信越PVC(欧州)

1999年、信越化学はシェル・ケミカルスとアクゾ・ノーベルの塩化ビニル合弁事業を買収した。
買収したのはシェルとアクゾの合弁会社でオランダに本社を置くロビン社で、オランダの
BotlekVCM 550千トン、同じくPernisにPVC 295千トンを持ち、更にフィンランドでNesteに 90千トンの製造委託を行っている。

その後の増設でVCMは620千トン、PVCはPernisを450千トンに増強し、合計PVC能力を540千トンにした。

ーーー

以上により現在の同社のPVCの全世界能力は360万トンで、新計画が完成すると420万トンとなる。

金川社長は中国進出については、こう述べている。(2005/6/12TV朝日「トップに迫る」)

「中国はね、市場としてはこれからの10年、圧倒的に伸びるでしょうね。非常に魅力的な市場です。我々は製品の輸出には中国に大変お世話になっていて、たくさん輸出しています。ただし、投資とは別のことなのです。中国の場合はカントリーリスクというと語弊があるかもしれないが、例えば我々の商品の基礎中の基礎の原料である石油とか電力を、政府が一番コントロールしている。我々が下流、ダウンストリームでいくら努力して、事業を成功させても、上流で押さえられたらそれで一発で終わり。つまり、我々の経営努力ではできないものがあるところではやってはいけない、というのが私の考え方。経営努力で克服できるものは経営努力で克服するが、できないものはやらない。株主にも言うと、多くの、特に長期の投資家は私の意見を理解してくれる。目先、とにかく儲けろと言う人はあまり理解してくれないと思うが。」

資料:信越化学社史

三菱化学は10日、米エクソンモービルケミカルとの合弁の米国及びシンガポールの自動車用PPコンパウンド会社について、6月1日付でエクソンの持分を買い取り、100%子会社とすると発表した。

自動車メーカーの米国進出に伴い、1980年代に日本のPPメーカーは自動車メーカーの要請もあり、相次いで米国進出を検討した。

このうち宇部興産、三井東圧、三菱油化等は、米国のPPを購入してコンパウンドで自動車メーカーに供給する戦略をとった。これに対して住友化学は自社技術のPPで進出して最適の製品を供給する方針をとり、PPメーカーと交渉した。

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宇部興産:

1985年、宇部興産 60%、丸紅 40% ATC Inc (当初名はアメリカン・テクノロジカル・コンポジックス)設立し、テネシー州ナッシュビルに工場をつくった。その後、メキシコにも子会社ATC Mexicanaをつくり、米国で44千トン、メキシコで11千トンの能力とした。

宇部興産はその後、日本で三井化学とPP事業を統合してグランドポリマーを設立したが、2001年10月に同社の持分を三井化学に譲渡してPP事業から撤退、ATC持分も2002年5月に三井化学に譲渡した。

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三井化学:

1986年6月に当時の三井東圧が65%出資、三井物産30%、東洋インキ5%出資で Color & Composite Technologies, Inc. を設立した。
オハイオ州シドニーに65千トンのプラントを建設した。

2002年5月に宇部興産からATC持分を購入し、2003年1月にATCとCCT両社を統合して新しく Advanced Composites, Inc. を設立した。
出資は三井化学が
62.8%、三井物産が27.0%、丸紅が10.2%となっている。現在の能力はメキシコを含め120千トンとなっている。

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三菱化学:

1987年2月に当時の三菱油化がエクソンとの均等出資で Mytex Polymer General Partnership を設立した。インディアナ州に25千トンの能力をもつ。両社は2000年に同じく均等出資で Mytex Polymers Asia Pacific Priveate Limited を設立している。

前記の通り、三菱油化はエクソンモービルから同社持分を買収し、両社を100%子会社とする。
同社では
高品質な原料PPを安定的に確保することが不可欠であるとし、北米・東南アジアでは従来から引き続き、エクソンモービルから原料PPの供給を受けるとともに、チッソとのPP統合会社日本ポリプロの高付加価値PPプロセスのライセンス事業との連携によって、より高品質な原料PPのグローバルな安定確保を図ることとしている。

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このほか、三菱商事がカナダのACLO Compounders Inc. (能力20千トン)に約70%出資しているが、出光興産(当時は出光石油化学)が1990年にこれに出資している。

また機能樹脂のコンパウンドでは新日鐵化学が1988年にミシガン州のThermofil, Inc. を買収し100%子会社としたが、20006月に旭化成がこれを買収し、旭サーモフィル(アメリカ)としている。

エンジニアリング樹脂のコンパウンドでは川崎製鉄がLNPをICIから買収し、Kawasaki-LNP として米国とオランダで事業を行っていたが、川鉄が化学では石炭化学事業に特化することを決め、2002年にGEに売却している。また、東レは2001年に日本ピグメントの米国子会社ニッピサン・インデイアナのコンパウンド設備(2万トン)を買収し、米国子会社のトーレ・レジンで自社生産を行っている。

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住友化学:

これら各社の動きに対して住友化学は米国メーカーと組んで自社技術のPPのプラント建設を考えた。

同社はSolvayの米国子会社(Soltex)やカナダのポリサーと交渉したが、まとまらず、1987年頃からPhillips との交渉を始めた。
Phillips はシンガポールで共同でHDPE事業を行っている相手だが、Houston HDPE 54万トン、PP 22万トン、Kレジン 12万トンのプラントを持っていた。PPの触媒を住化触媒に切り替えるのを機に、PPを切り離して住友化学とのJVとし、住化法のPPを新設するという案で交渉を進めた。

1992年5月、両社はPhillips Sumika Polypropylene Co. を設立した。新プラント建設資金を住友化学が出して最終的に50/50にした。
1994
年8月にフィリップスのバルク法3系列計220千トンを引継ぎ、968月に住化気相法技術で1系列120千トンをスタートさせた。現在の能力は合計380千トンとなっている。

なお、住友化学はこの間、現地のコンパウンダーに住化処方でのコンパウンドの製造委託を行った。

ーーー

このほか、商社主導での進出があった。

三菱商事:

アリステック・ケミカルは化学品(フェノール、アセトン他)、ポリマー製品(ポリプロピレン他)の製造販売を行っていた。

1989年にハンツマンがアリステックの買収を計画した。アリステックはこれを拒否、一時は住友化学にもPPを分離してJVにする提案もしたが、1990年に三菱商事が買収提案を行い、ハンツマンが買収を諦めたため、三菱商事による買収が確定した。買収額は850百万$だが借入金の引継ぎなどをいれると10億$以上となるといわれた。

当初同社には三菱化成、三菱油化、三菱瓦斯化学、三菱レ-ヨンが各4.48%出資して三菱グループ総力を挙げて取り組む姿勢を見せたが、その後、 三菱商事100%となった。

2000年11月、三菱商事はアリステックをスノコ社に売却した。アリステックを買収して以来、石油化学品事業の戦略において、北米の橋頭堡として位置づけてきたが、原料価格の上昇を製品価格に転化しきれず、採算が大幅に悪化していた。譲渡価格は固定資産及び棚卸資産の合計で695百万ドル、これにその他の資産・負債を加減した金額になる。

なお、1997年にアリステック・ケミカルのアクリル樹脂事業部門を分離独立し、三菱レイヨンが10%出資し、Aristech Acrylics LLC を設立したが、これはスノコへの売却資産には含まれず、三菱商事が88%出資で残っている。

ーーー

伊藤忠:

1998年に伊藤忠は ARCO Products Co. とPPの製造販売のJV ARCO Polypropylene, LLC を設立した。ARCOの精油所内に建設中のPPプラント(年産20万トン)を保有・運営するもので、伊藤忠商事が1/3、残りはARCOが保有する。

伊藤忠はPP樹脂の貿易取引では年間35万トン以上と世界でトップの取扱高を持っており、これにより供給ソース及び販売網の拡大、多様化を図るもの。

その後、BPによるARCO買収などを経て2002年12月にBPが伊藤忠持分を買取り、伊藤忠は代わりにアジア、南米のエージェントの権利得ている。

お知らせ

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5月13日までのバックナンバーを見易く整理しました。下記をご覧ください。
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm

サウジではSABICやアラムコのようなサウジ政府主導の計画のほかに、多くの民間の石油化学計画がある。11日にBasell はTasnee & Sahara Olefins Company とのJVで2008年からエチレンとPEを生産する計画を発表した。
Tasnee & Sahara Olefins Companyはこの事業のためにTasnee PetrochemicalsSahara Petrochemical が設立したJVで、両株主はそれぞれBasellとのJVを持っている。

1.Tasnee Petrochemicals (National Petrochemical Industrialisation Co.

サウジのワリード・ビン・タラール王子はフォーブスが発表する長者番付でベスト・ファイブに入る世界的大富豪で、投資・持株会社Kingdom Holding Companyを率いて米国、中東、アフリカ、西ヨーロッパ等に進出、直接出資している企業だけでも150社、それらの子会社を含めると5千社、その分野も金融、メディア、ホテル、レジャー、小売業等々多岐にわたっている。

Kingdom Holding はサウジではNational Industrialisation Company NIC)の筆頭株主となっているが、そのNICが51%出資して石油化学事業を行うのがTasneeである。

TasneeにはNIC(51%)のほか、以下の会社が出資している。
Gulf Investment Corporation
 ガルフの6国(バーレン、クウェート、オーマン、カタール、サウジ、アラブ首長国連邦)が均等出資
Saudi Pharmaceutical & Medical Appliances Co.
National Industries GroupKuwait
Al-Olayan Financing Co.Saudi Arabia

Tasneeの石化事業は以下の通り。  

1)メタノール計画
 立地:
Al-Jubail
 製品:メタノール 1,800千トン、
     酢酸・VAM 700千トン

2)エチレン・プロピレン計画
 立地:
Al-Jubail
 出資:Tasnee Petrochemicals
    
Sahara Petrochemical
          
the Al-Zamil Group
    
Saudi International Petrochemical Co.
           (Sipchem)          

 製品:エチレン  1,000千トン
     プロピレン 200千トン 

3)Saudi Polyolefins Co.(SPC)
 出資:
Tasnee Petrochemicals 75%
     Basell Holdings Middle East 25%
 立地:Al-Jubail
 製品:プロピレン 450千トン
     PP     450千トン

ーーー

2.Sahara Petrochemical Company

Al-Zamil Group 石油化学子会社

Al-Zamil Groupはコングロマリットで、以下の事業を行っている。
air-conditioning manufacturing, food processing, plastics, steel fabrication, stained glass production, travel services
関係会社で banking, industrial investment, petrochemicals, paint, fencing systems, packaging

1)エチレン・プロピレン計画(上記)
Saudi International Petrochemical Co. (Sipchem) にはAl-Zamil Group 11%所有

2)Sahara/Basell JV

 出資:Sahara Petrochemical Company
     Basell Holdings Middle East
 製品:プロピレン(propane dehydrogenation
     PP 450千トン 
Spherizone process

3)Gulf Advanced Chemical Industries Ltd.

 株主:Al-Zamil Group
     Al-Babtain Group
     Al-Turki Corporation
     Astra Group
     Nahlan Commercial Company
 製品Maleic Anhydride 10千トン
     (
butane-to-maleic anhydrid
    
BDO 50千トン 
     (
MAH to BDO

ーーー

3.Tasnee & Sahara Olefins Company

 株主:Tasnee Petrochemicals
     Sahara Petrochemical Company
     Saudi Arabian General Organisation
          for Social Insurance
         
(a minor shareholder)

1)BasellとのJV(今回発表)
 
出資: Basell 25%、Tasnee & Sahara Olefins 75% 
 立地: Al-Jubail Industrial City
 製品: エチレン
      HDPE 400千トン(Hostalen 法)
     LDPE 400千トン( Lupotech T 法)

 

 

大日本インキ化学は永年赤字が続いた米国の合成樹脂事業子会社ライヒホールドを中間期末に売却した。

Dicop 同社の営業損益は順調に増加している。2006年3月決算でも、主要原料価格の高騰に対し、販売価格の是正を積極的に進め、特に工業材料での販売価格是正の効果があり、前期比2.8%増益の495億円となった。欧米の工業材料はライヒホールドを中間期末で売却し、赤字から黒字に転じた。

しかし特別利益、特別損失は毎年膨大で、当期純利益は変動している。Dicpl

特に、欧米で合成樹脂事業(不飽和ポリエステル、塗料用樹脂、エマルジョン、接着剤等)を行う子会社のライヒホールドの赤字が続き、その関係で大きな特別損失を出していた。(単位:億円)

  02/3 03/3 04/3 05/3 06/3
営 業 利 益  309  402  438  482  495
経 常 利 益   80  204  314  452  485
特 別 利 益  187   24   92  318  290
特 別 損 失  384   95  170  464  647
税引前純利益 -117  134  237  307  127
           
税 金 -168  100  158  188   58
           
少数株主利益   7   10   15   13   16
当期純利益   44   24   64  106   53

特別利益、特別損失の主なものは以下の通り。(単位:億円)

  02/3 03/3 04/3 05/3 06/3
特別利益 合計  187   24   92  318  290
           
資本償還益          261
固定資産売却益   88    2    6    4   10
事業売却益   78       69   4
匿名組合投資利益   13        
退職給付債務減少益        234  
厚生年金基金
代行部分返上益
      66    
           
特別損失 合計  384   95  170  464  647
           
事業売却損          542
固定資産減損損失           30
営業権減損損失  146      196  
関係会社リストラ費用   65   61   77   50   61
事業損失引当金繰入額       40   26  
ゴルフ場事業関連損        137  
固定資産処分損  100   28   35   44   14
工場移転関連損   46   4      

2005/3までの特別損益の主なものは以下の通り。

事業売却益:02/3は米州のラテックス事業をダウ・ケミカル社に売却したもの、05/3はアグリケミカル事業を日本曹達に譲渡。

退職給付債務減少益:ポイント制キャッシュバランスプラン型の新しい退職金・年金制度に移行

営業権減損損失はライヒホールド、リストラ費用は同社を含む海外関係会社中心。

ゴルフ場事業関連損は関係会社の天ヶ代ゴルフ倶楽部。

2002/3の税金のマイナスはライヒホールドの株式について単独決算で609億円の評価損を計上したことにより、税効果額約 256億円が連結決算上では税金費用のマイナスとなったもの。 
ーーー 

2006年3月期でライヒホールドを売却し542億円の特別損失を出した。他に固定資産減損損失は、売却前にライヒホールド本社ビルの評価減をしたもの。

1987年にライヒホールドグループを買収して以来、欧米において合成樹脂事業を展開してきたが、近年業績不振が継続しているため、事業譲渡を中心に抜本的なリストラクチャリング策の検討を進めてきた。
商権の散逸を防止し損失を最小に抑えるためには、MBO方式により現経営陣に売却することが最善の策であるとの結論に至った。

なお同じ期の特別利益の資本償還益は米国の100%出資子会社サンケミカルとイーストマン・コダックとの折半出資の合弁会社コダックポリクロームグラフィックス(感光性アルミ版および製版用フィルムを中心とした印刷資材事業)の持分ををKodakに売却したもの。

同社ではライヒホールドの売却により、今後は安定した利益を予想している。(単位:億円)

  06/3実 07/3 08/3 09/3
営業損益  495  510  560  660
当期損益   53  200  260  310

 

大日本インキ化学は1987年にライヒホールドを買収して以来、欧米の多くの事業を買収してきた。
主な製品は、コンポジット(不飽和ポリエステル)、コーティング(塗料用樹脂)、エマルジョン(ラテックス)、接着剤である。

1927 Henry Reichholdが設立
1985 Swift Adhesives を買収
1987 DICがReichholdを買収
1987 Koppers のpolyester resin 事業を買収
1989 Spencer Kellog の coating resin 事業を買収
1995 Ashland Canadian の coatings 事業を買収
1995 Celanese Mexican の resin 事業を買収
1995 Reichhold Europe 設立
1995 Heitz Alsacol (France) の adhesive 事業を買収
1996 Costenaro SpA (Italy) の adhesives and resins 事業を買収
1996 Resana S/A (Brazil) のresins and polymer 事業を買収
1997 Lyons Coatings (Franklin, MA) を買収
1997 Jotun Polymer (Europe/Asia & Middle East)を買収
1998 社名をReichhold Chemicals, Inc.から Reichhold, Inc.に改称
1999 Czech Republic (JV) (Spolchemie)を買収
2000 Fibercenter Ltda. (Brazil)を買収
2001 Dow-Reichhold Synthetic Latex JV 設立
2002 接着剤事業 Swift Adhesives Ltd.(英)、
Swift Adhesifs S.A.(仏)他を売却
2005 Brazilian Resin Manufacturer IBRを買収
2005 MBO 方式による売却

 

大日本インキ化学では、1987年に印刷インキ、顔料、印刷材料の製造・販売のSun Chemical Group を買収したが、その後多くの事業を買収している。

1929 Morrill Co.が他の4つのインキ会社と統合しGeneral Printing Ink (GPI)を設立
1935 GPI が Sun Chemical and Colors of Harrsion, NJ を買収
1945 GPI が Sun Chemical と改称
1980 Sun がAmerican Cyanamidからphthalo pigment business を買収
1987 DICがSun を買収
1991 Sun がBASF Packaging and Commercial のインキ事業を買収
1992 Sun がデンマークの KVKを買収、欧州進出
1993 Sun が United States Printing Ink (known as US Ink)を買収
1994 Sun が Moscow Printing Inksを買収
1996 Sun が Zeneca Specialty Inksを買収、
北米のpackaging inks department強化
1997 Sun がEastman Kodak との 50/50 jv
Kodak Polychrome Graphics設立
  
2005/1 Sunが持分をKodakに売却(上記)
1999 Sun がトタルフィナから インキ部門Coates Lorilleuzを買収
 
 コーツ・ブラザース(米国)、コーツ・ブラザース(英国)、
  コーツ・スクリーン・インクス(ドイツ)他4社
  及びその関係会社 計約75社(約40ヵ国)
2003 Sun が Bayerの high performance organic pigment businessを買収
2004 Sun がトルコのCBS Holdingの印刷インキ事業CBS Printasの資産を買収

 

決算短信:    
  
http://www.dic.co.jp/ir/finance/2006/20060511_s_01.pdf

決算説明資料:
  
http://www.dic.co.jp/ir/finance/2006/20060511_s_02.pdf

帝人の2006年3月期は増収、大幅増益となった。ポリカーボネート(PC) の寄与が大きい。
2007年3月期は売上高・営業利益・経常利益・当期純利益とも過去最高を更新する予想。予想配当も過去最高となる。

                   単位:百万円(配当:円)
         連結決算  単独決算
売上高 営業
損益
経常
損益
当期
損益
当期
損益
配当
05/3  908,388  51,864 43,087  9,159 -25,421   6.5
06/3  938,082  76,757 68,162 24,852   2,025   7.5
07/3  980,000  85,000 75,000 45,000   8,500  10.0

連結営業損益のセグメント別、地域別推移は添付の通り。

Teijinseg Teijinchiikiセグメント別では化成品、地域別ではアジア(日本を除く)の伸びが著しい。

合成繊維部門では昨年、メキシコの衣料用・工業用ポリエステル長繊維、工業用ナイロン長繊維の製造販売子会社 Teijin Akra S.A.de C.V. 及び欧州のポリエステル長繊維衣料用テキスタイルの製造、販売子会社TMI Europe S.p.A.から撤退した。
(昨年の単独決算の赤字はこれらによる関係会社有価証券評価損 264億円、事業整理損失 386億円があったため。)

衣料繊維は赤字のアクラ、TMI撤収があったものの、市況低迷で減益となった。
しかしアラミド繊維、炭素繊維が増収増益で、これを補った。
これらは需給逼迫で増設中。

アラミド繊維関連の営業損益は183億円(前年153億円)、炭素繊維の東邦テナックス関連が42億円(同23億円)となっている。
(東レでも炭素繊維複合材料部門の営業損益は前年度56億円に対し本年度は118億円と倍増している)

化成品部門ではPETフィルム、PENフィルムが増収、増益。フィルム事業子会社の連結営業損益は97億円(前年66億円)となった。
PC樹脂はDVD、OA機器、電気・電子用途が好調で、中国浙江省の第一工場5万トンは昨年操業を開始し、第二工場5万トンも工事中。
PC事業関連の連結営業損益は315億円(前年125億円)と大幅増益である。アジアの大幅増益はPC樹脂が中心。

医薬医療部門では医薬品では主に骨粗鬆症領域が好調。在宅医療では主に在宅酸素療法(HOT)事業が販売量・レンタル台数増で増収・増益となった。

米州はアクラ撤収で黒字化、欧州はアラミド繊維、炭素繊維、PC樹脂等で増益となっている。

 

同社では各セグメント別にSBUを次の通り、成長SBU、安定収益SBU、再建SBUに分けている。

  成長SBU

積極的資源投入
安定収益SBU

安定収益と
キャッシュ・フロー
確保
再建SBU

抜本策による
再建実施
合成繊維 パラアラミド繊維、
炭素繊維、
PEN繊維
  ポリエステル
  繊維
化 成 品

PC、
PENフィルム、
PEN樹脂

  ポリエステル
  フィルム、
ポリエステル
  樹脂
医薬医療 医薬医療    
流通・リテイル   流通・リテイル  
IT   IT  

SBU=Strategic Business Unit
ミッション、経営資源、製品・サービス、顧客、競争相手などによって明確に区分することができ、且つ、独立した戦略・計画を立案すべき事業単位。

成長SBUとして積極的に資源を投入してきた各製品が利益に貢献している。

2007年3月期では減価償却費540億円に対して設備投資 900億円と、トワロン増強、炭素繊維増設、中国PCPC樹脂工場第二期等、成長SBUを中心に減価償却費を上回る設備投資を行う。

また、研究開発費の約70%は成長SBUで行っている。

 

決算短信
http://www.teijin.co.jp/japanese/ir/doc/tanshin/140a_060508.pdf 
決算説明資料
http://www.teijin.co.jp/japanese/ir/doc/setsumeikai/info060508.pdf 

参考 ポリカーボネートと原料ビスフェノールA

JSRの決算が好調である。

                 単位:百万円(配当:円)
         連結決算  単独決算
売上高 営業損益 経常損益 当期損益 当期損益 配当
05/3  305,368   45,332   44,075   27,563   25,148  14
06/3  338,159   53,357   52,980   30,554   27,463  20
07/3  372,000   56,000   56,000   35,000   31,000  24

Jsrsegeigyo本年度は合成ゴムやABSが値上げで営業利益が増加しているが、多角化事業も利益を伸ばしている。
多角化事業の営業利益率は27%と高く、全社営業利益に占める比率も72%と非常に大きい。

同社は日本における合成ゴム事業育成のために1957年12月に「合成ゴム製造事業特別措置法」により日本合成ゴム㈱として設立された会社だが(1997年12月にJSRと改称)、大分以前から名前だけでなく、実質的にも日本合成ゴムではなくなっている。

多角化事業の状況は以下の通り。

                                        (単位:億円)
  前期 当期 増減額
全社 売 上 高  3,054  3,382   328
営 業 利 益   453   534    80
うち
多角化事業
売 上 高  1,226  1,427   202
営 業 利 益   358   382    24
営業利益率  29.2%  26.8%  
全社比 売上高  40.1%  42.2%  
営業利益  78.9%  71.6%  

多角化部門のうち、メインのファイン事業の売上高内訳は次の通り(単位:億円)

  前期 当期
半導体材料  325  379
FPD材料  609  728
光学材料  112   97
機能化学品材料   21   23
ファイン事業合計 1,067 1,227

この他には包装資材、ポリマー等製造技術、健康食品等食品類、医薬品などがある。

<半導体製造用材料事業>
半導体製造用材料では、主力製品であるフォトレジストが、エキシマレジストを中心に国内、輸出とも好調。

<フラットパネル・ディスプレイ用材料事業>
液晶ディスプレイ(LCD)用材料が、モニター用、テレビ用などの液晶パネルの生産増加により需要が拡大し、特にアジア向けを中心とする輸出が大きく増加。
プラズマ・ディスプレイ(PDP)用材料もアジア向け輸出が拡大。

韓国のJSRマイクロコリア(JSR 100%)は第二期工事が完了、2005年8月より生産開始し売上高は前期を大幅に上回った。
台湾の
JSRマイクロ台湾(JSR 100%)もLCD用材料の工場が完工し、今年夏の商業生産を目指す。

<光学材料事業>
輸出用光ファイバーケーブルの需要回復を背景に、光ファイバー用コーティング材料が好調に推移。
2006年3月末にDSMグループから国内外のディスプレイ用コーティング材料及び光学メディア用材料を中心とする事業を譲り受けた。
(JVの日本特殊コーティングが日本で行う事業と、DSMが日本以外で行う事業)

<機能化学品材料>
耐熱透明樹脂アートン(R)の拡販に注力

* アートン:非晶質ポリオレフィン(COP)
・シクロペンタジェンを出発原料としたノルボーネン系モノマーを重合した樹脂
・薄型TVをはじめとした液晶ディスプレイ分野向けの位相差フィルム用途で需要が急拡大
・同社のレジン能力は年産3千トン
   
・四日市工場内に「アートンフィルム」工場を新設

ーーー

なお、ABSのJVのテクノポリマー(JSR 60%/三菱化学 40%)の業績も好調である。

         (単位:百万円)
  前期 当期
売上高  48,148  49,358
営業利益   1,410   3,163
経常利益   1,698   3,124
当期利益    946   1,467

決算短信
 
http://www.c-direct.ne.jp/japanese/uj/pdf/10104185/00045372.pdf
補足説明資料
 
http://www.c-direct.ne.jp/japanese/uj/pdf/10104185/00045371.pdf

 

 

2006年4月末にプノンペンで自由貿易協定(FTA)交渉を進めてきた韓国とASEAN加盟9カ国が商品分野交渉で妥結した。5月中旬の韓・ASEAN通産長官会議で署名され、国内批准を経て年内に発効される。
ただ、タイはコメ市場開放などに関連した国内事情を理由に参加しないことを決めた。

商品貿易協定に基づき、韓国とASEAN加盟国は、
・2010年までにそれぞれ輸入の9割に該当する品目の関税を撤廃し、
・2016年までに残りのうち7%の関税を0-5%水準に引き下げる。
・残りの3%は「超敏感品目」に指定、交渉除外または長期間の関税引き下げなどで保護する。

ーーー 

3国の状況は以下の通り。中国と韓国はASEAN、インド等、及び相互に関税引き下げを行っており、日本だけが非常に出遅れている。

相手国 中国 日 本 韓 国
ASEAN(加盟年)      
ブルネイ 1984 FTA   FTA
インドネシア 1967 FTA   FTA
マレーシア 1967 FTA   FTA
ミャンマー 1997 FTA   FTA
シンガポール 1967 FTA FTA FTA
タイ 1967 FTA    
カンボジア 1999 FTA*   FTA
ラオス 1997 FTA*   FTA
フィリッピン 1967 FTA*   FTA
ベトナム 1995 FTA*   FTA
中国  ー   バンコク協定
韓国 バンコク協定    -
インド バンコク協定   バンコク協定
バングラデシュ バンコク協定   バンコク協定
スリランカ バンコク協定   バンコク協定
(ラオス) バンコク協定   バンコク協定

ーーー

(中国)

中国とASEANの自由貿易協定が2005年7月に発効した。

中国は同月20日からブルネイ、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、シンガポール、タイの6カ国に対し、下記により関税を引き下げる。
残りのカンボジア、ラオス、フィリピン、ベトナムに対しては、各国が国内の承認手続きを終え次第、FTAに基づく関税率を導入する

対6カ国 関税率引き下げ計画
  2005 2007 2009 2010
20%以上  20%  12%  5%   0
15%~20%  15%   8%  5%   0
10%~15%  10%   8%  5%   0
5%~10%   5%   5%   0   0
5%未満 不変 不変   0   0
 

ーーー

(バンコク協定:中国/韓国/インド等)

「バンコク協定」は1975年、国連の指導下で発展途上国間の貿易拡大を目的に締結されたもので、現在、中国、韓国、インド、バングラデシュ、スリランカ、ラオスが加盟し、関税の減免などを実施している。

2005年11月、閣僚級会議が開催され、今後これを「アジア太平洋貿易協定」と改称し、新たな関税引き下げ策を共同で実施することで合意した。
2006年7月から、すでに優遇関税が適用されている品目に加え、農産物・繊維製品・化学工業製品などを含む計4千品目余りが、優遇措置の新たな対象となる。

ーーー

(日本)

日本・シンガポール新時代経済連携協定が2002年11月30日に発効した。
日本からシンガポールへの輸出にかかる関税は全て撤廃
・ シンガポールから日本への輸入も約94%は関税率ゼロとなる(
石化製品は例外

石化製品(例外)の扱いは以下の通り。
LDPE、LLDPEPolyisobutylenePropylene copolymers
 発効日から関税率を2.8%とし、
 2003年から8回(8年)にかけて毎年均等な引き下げをに行い、
 2010年において関税を撤廃する。
HDPEPP
 2004年1月1日から関税率を6.5%とし、
 2005年から6回(6年)にかけて毎年均等な引き下げを行い、
 2010年において関税を撤廃する。

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韓国のケースで開城(ケソン)工業地区の扱いが問題になっている。Nkoreamap2
2000年8月、金正日総書記と鄭夢憲・現代グループ会長との合意で、北側が土地と労働力を、南側が技術と資本を提供して、開城に一大工業団地を作ることが決まった。2003年8月に南北当局者間で投資保障、二重課税防止、清算決済、商社紛争合意書の4項目に関する経済協力合意書を交わした。第一段階100万坪のうち、まず28千坪について、15の企業を入居させるパイロットプラン(モデル団地)を実施中で現在11の企業が操業を開始している(化学品はない)。

韓・シンガポールと韓・EUの自由貿易協定は、開城工団製品を韓国産に認めた。「韓国産原料を60%以上使っていれば、韓国産に見なし、無関税の恩恵を与えてほしい」という韓国政府の要求が受け入れられた。
しかし、ASEANとの交渉では相当数の国が「WTOの原産地規定は、最終的な加工が行なわれた地域を基準とする」と反対し、ペンディングとなっている。
米国は、開城工団北朝鮮勤労者に対する労働搾取などを主張し、問題視している。

付記 2006/6/13 日・マレーシア経済連携協定発効

2006/8/24 韓国とASEANは、クアラルンプールで経済担当相会議を開き、北朝鮮の開城工業団地で韓国企業が製造する100品目についてASEAN側が「韓国製」と認定することで正式合意した。韓国側は同工業団地で生産した製品を輸出しやすくなる。

前回に戦前の話を書いたので、今回は日本の最初の石油化学計画について書く。

日本のエチレン第1期計画は次の4つである。

  立地 エチレン スタート 計画書提出 設立
三井石油化学 岩国 20千トン 1958/2 1956/1 1955/7
住友化学 新居浜 12千トン 1958/3 1954/12  
三菱油化 四日市 22千トン 1959/5 1955/12 1956/1
日本石油化学 川崎 25千トン 1959/7 1954/10 1955/8

しかし、これよりはるか以前、1950年に壮大な石油化学事業計画を通産省に提出した会社がある。日本曹達である。

たまたま、同年初めに同社の日比野部長(のち専務)が生産性本部のアメリカ産業調査団に加わり、アメリカの石油化学を調査した。
その結果、①世界の化学工業の大勢は石油化学工業の方向に進んでおり、これが日本の産業を興す原動力になろう、
②日本曹達は
日本で唯一のエチレン系製品の製造会社で、石油化学をやるのに最もふさわしい、
として技術陣が総力を挙げて計画を作成した。

計画は以下の通りであった。

立地:新潟県二本木工場
事業総資金:11億4千万円
原料:灯油または軽油(2,000kl/月)
製品および能力(月産トン)
    能力
エチレン系 エチレン   371
酸化エチレン   85
エチレングリコール   70
各種セロソルブ
(EGのモノエーテル)
  50
ポリエチレングリコール   50
二塩化エタン(EDC)   20
エーテル   50
その他誘導品   35
プロピレン系 プロピレン   203
イソプロパノール   120
ソープレスソープ
(合成洗剤)
  150
ブチレン系 ジオクチルフタレート   30
芳香族 ベンゼン   130
トルエン   60
キシレン   20
                            (日本曹達70年史)
 

同社の計画の特徴は、米国のエタン利用ではなく、石油を分解してオレフィンを、また副生油から芳香族を回収するという、現在のナフサ方式の先駆的計画であること、熱分解と芳香族分離は技術導入を行うが、誘導品については全て自社技術であるということである。熱分解は米国バジャー技術の導入を考えた。

ーーー

日本曹達は中野友禮が1920年に設立した会社である。彼は京大助手時代に中野式食塩電解法(水平隔膜式電槽)の特許を取得し、日本の電解法苛性ソーダの企業化第1号の程ヶ谷曹達(のち保土ヶ谷曹達)に参加したが、その後日本曹達を設立し、新潟県中頸木郡の二本木工場で苛性ソーダと晒粉の生産を始めた。
その後、「リング・チェーン式経営法」(芋づる式)で無機化学、有機化学に事業を広げていき、日曹コンツェルンを形成した。

有機化学では軍の要請で四塩化炭素、六塩化エタンを製造、次にエチレングリコールを生産した。
製法はエチルアルコールを熱分解してエチレンガスをつくり、塩素と反応させてエチレンクロルヒドリンにし、それから酸化エチレン、エチレングリコールをつくった。

これにより、当時、二本木工場でエチレン100トン、酸化エチレン80トン、エチレングリコール40トン、ニ塩化エタン30トン、クロルヒドリン350t(いずれも月産)などの生産実績があった。

ーーー

1950年8月、この事業計画を受けた通産省通商化学局では、石油化学事業第1プロジェクトとして全面的支援を約束した。

日本曹達は事業資金11億4千万のうち、政府資金(復興金融金庫)を4億5千万円申請した。難航の結果、通産省の支援により3億円の融資が決定した。復興金融金庫の融資は民間銀行の協調融資がつくことが条件となっていた。

ところがメインバンクの日本興業銀行がどうしても融資に応じず、最終的にこの計画は頓挫した。

栂野棟彦氏の 「昭和を彩った日本の石油化学工業」によると、興銀は当時の日本曹達の経営姿勢(特に営業姿勢)を問題にした。特需景気のなかで、古くからの商社や問屋を排除して高値でさえあればどこでもという営業姿勢をとっており、いずれ破綻する、石油化学事業はきちんとした営業体制でやるべきだというのが興銀の考えであった。

もし、この計画が実現していれば、日本の石油化学はどうなっていたであろうか。

日本曹達の計画は日本の化学業界を驚かせ、各社が検討を始めた。

ーーー

なお、日本曹達では1953年に東京ガスの千住工場の重油熱分解による都市ガス副生エチレンをボンベで二本木に輸送し、EO、EG等を生産する計画を立てたが、MITIが公益事業者による副業規制を表明したため断念した。

その後、日石化学のエチレン生産開始で、タンク貨車(ボンベ84本積載)でエチレンを二本木に輸送し、酸化エチレンを生産した。
しかしこれは競争力がないため、
丸善石油化学への参加を決定、日曹油化工業を設立して、Scientific Designからの技術導入で1964年に五井でEO、EGの生産を始めた。(当初、日本曹達51%、日本レイヨン:現ユニチカ 15%、新日本窒素肥料34%出資、1967年日本曹達100%)

その後は以下の通り。

1969年 EG需要家の帝人が日曹油化に参加
1975   四日市工場稼動
1985  五井工場を分離して丸善石化との折半出資の日曹丸善ケミカル設立
1999   日曹丸善ケミカルが丸善石化の100%子会社に
2000   日曹油化(工場:四日市)と日曹丸善ケミカル(工場:五井)が合併、丸善ケミカルに
2005  丸善石化が丸善ケミカルと丸善ポリマー(HDPE、元日産丸善ポリエチレン)を吸収合併

資料:日本曹達70年史
    栂野棟彦 「昭和を彩った日本の石油化学工業」

お知らせ(修正)

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連休中は休ませてもらいます、としましたが、5月1日は水俣病50周年のため、チッソについて2回にわたり書きます。

その後は5月8日(月)から再開します。

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4月末までのバックナンバーを見易く整理しました。下記をご覧ください。
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm

日本窒素・興南工場

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鎌田正二著 「北鮮の日本人苦難記 -日窒興南工場の最後ー」という本がある。

鎌田氏は元チッソの社員で、チッソの前身の日本窒素が戦前に北朝鮮の興南(今の咸鏡南道咸興市)に大規模コンビナートを築き、敗戦で社員が日本に引き上げる苦難を描いたものである。Nkoreamap

チッソは1906年に初代社長野口遵によって鹿児島県大口市に建設された水力発電所がその第一歩で、1908年に熊本県水俣市でカーバイドの製造を開始、社名を日本窒素肥料とし、石灰窒素や硫安の製造にも着手して、日窒コンツェルンの中心となった。
(第二次世界大戦後、日窒コンツェルンが解体され新日本窒素肥料となり、1965年にチッソと改称した。)

北朝鮮の屋根といわれる蓋馬高原には鴨緑江の大支流が北に向かっているが、これを堰きとめて大人造湖を造り、日本海に向かって落とせば素晴らしい大電力になるとの構想が立てられた。野口遵は1926年、日窒の全額出資で朝鮮水電を設立、1929年に第一期工事が完成して送電が開始された。 

この電力を消費するために建設されたのが興南工場で、1927年に朝鮮窒素肥料を設立、硫安の製造を開始した。

その後、工場はドンドン拡大された。

肥料工場では硫安、硫燐安のほか、過燐酸石灰や乾式燐酸からの燐安の設備をもつに至った。
また火薬の原料であるグリセリンを自給するための油脂工場が昭和7年に完成した。グリセリンは延岡及び興南に建設された朝窒火薬の火薬工場に送られた。
脂肪酸からつくる洗濯石鹸、化粧石鹸は、内地、朝鮮はもちろん、満州、台湾、中国の市場に向けられた。

興南肥料工場の東北に興南金属工場がつくられた。アルミニウム工場、マグネシウム工場、カーボン工場、製鉄工場などがあった。
アルミニウム工場は朝鮮木浦(モッポ)附近の明礬石を原料とした。

宝石工場ではアルミナを酸素水素焔で溶融して、軸受けなどに使われるルビー、サファイアの原石をつくった。

本宮工場では、苛性ソーダ、エチレングリコール、ブタノール、アセトン、アセチレンブラックなどアセチレンを原料とする諸工場ができ、またアランダム工場、塩化アンモニア肥料工場、アンモニア工場が建設された。

日窒燃料工業の竜興工場ではアセチレンからアセトアルデヒドをつくり、アルドール、クロトンアルデヒドを経てブタノールとし、これよりイソオクタンを製造した。

朝窒火薬では硝酸、硝酸アンモニア、過塩素酸アンモン、綿火薬、黒色火薬、導火線、カーリット、ダイナマイト、窒化鉛、ヘキソーゲン等の工場が並び、火薬綜合工場となった。

最盛期の能力は以下の通り。
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/chisso-konan.htm

日本窒素は興南以外の朝鮮で、咸鏡北道の永安工場、灰岩工場(朝鮮人造石油)、平安北道の青水工場(日窒燃料)、南山工場(日窒ゴム工業)の諸工場があり、永安、朱乙、吉州、竜門に石灰の鉱業所があった。
また満州で吉林人造石油、北支太原で華北窒素、台湾で台湾窒素、海南島で日窒海南工業、それにジャバ、スマトラ、マラヤなどに進出していた。
しかし日本窒素の事業の中心は興南であった。

ーーー

興南工場は第二次世界大戦中は、何等の損傷を受けなかった。

1945年8月19日、ソ連軍が元山に上陸、26日に興南工場はソ連軍に接収された。

しかし、朝鮮戦争が始まり、1950年7月末から8月初めに米軍の爆撃で工場は完全に破壊された。

ーーー

インターネットの記事に、1991年4月、在日朝鮮人企業との合弁の国際化学合弁㈱という会社が興南に工場を建設したという情報がある。事業内容は北朝鮮に眠るモナザイド等のレア・アース(希土類)の製錬で、さらに塩酸、硝酸、苛性ソーダ、アンモニアなどの関連工業の技術向上をはかるとの目標を掲げているという。

 

資料 鎌田正二著 「北鮮の日本人苦難記 -日窒興南工場の最後ー」

水俣病50年

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5月1日は水俣病が公式に確認されて丁度50年目である。

チッソ付属病院の細川院長が1956年4月、歩行障害や言語障害などを訴える5歳と2歳の姉妹を診察した。他にも同様の症状を訴える患者が多数発生していることが分かり、同年5月1日、水俣保健所に「原因不明の中枢神経症患者が多発している」と報告、この日が水俣病の公式確認の日となった。(公式確認以前でも、死んだ魚が水俣湾に浮いたり、ネコが狂ったような状態で死ぬことが確認されており、患者は公式確認の10年以上前から出ていたとされる。)

日本窒素肥料(現チッソ)が1908年に水俣工場の操業を開始、1932年にアセトアルデヒド(アセチレン法)の製造を開始して有機水銀を含む排水を水侯湾へ放出した。

1968年に水俣でのアセトアルデヒドの製造を中止している。
同社はアヴィサン法ポリプロとエチレン法アセトアルデヒドの起業化のため千葉進出を決定、1962/7にチッソ石油化学を設立した。
(丸善石油は当初、松山でのエチレンセンターを計画していたが、千葉計画への変更は当時のMITI吉田班長ーのち三菱油化社長ーのアドバイスとチッソの千葉進出が契機となった)

水俣病については50年を機に各新聞が特集を組んでいる。

ーーー
チッソは1973年の補償協定締結後に認定申請者が急増し、77年度には364億円の累積赤字を計上した。
そのため、熊本県が県債を発行してチッソに融資する金融支援が閣議了解された。
水俣湾のヘドロ立て替え県債、
95年の未認定患者への一時金支払いの貨し付けなど、公的債務は99年に1,257億円にまで増加した。

チッソの返済が困難となり、県の負担が問題になったため1999年6月、関係閣僚会議申合せ「平成12年度以降におけるチッソ㈱に対する支援措置」が提示された。
これに基づいてチッソは金融機関に支援を要請、2000年1月、
再生計画2003年度を最終年度とする中期経営計画)を発表した。

再生計画は以下の通り。
支援措置:

1.公的支援
・平成12年度下期以降、患者県債方式は廃止し、
チッソは経常利益から患者への補償金を優先的に支払っていく。
・既往公的債務は、チッソが経常利益から患者補償金を支払った後、 可能な範囲で県への貸付金返済を行う。
・水俣病問題解決支援財団は、チッソに対する一時金貸付金及びその利息のうち85%相当額を免除する。
 (約317億円の融資のうち85%相当額、
約270億円について免除
・経済の急激な変動等によるチッソのー時的な収益変動に対して、補償金支払不足額のセーフティ・ネットを講ずる。

2.関係金融機関支援
・今後のチッソ及び同社子会社の事業の継続に直接必要な資金について引き続き支援する。
・現在チッソに実施している貸付金元本の返済猶予及び保証を平成15年3月末日まで継続する。
・平成12年3月末日に、チッソに対する既往の棚上利息及び棚上保証料を免除し、平成12/4/1~15/3/末の間、新規に発生する棚上利息及び棚上保証料を免除する。
 (棚上利息及び棚上保証料累計額は
約356億円、その全額について免除、うちメインバンクの興銀は173.63億円

再生計画:
1)
事業戦略【選択と集中】
 ○戦略強化事業→機能材料部門の拡大強化
  ・液晶および周辺材料 ・天然系食品保存料
  ・有機珪素化合物 ・電子部品 
  ・その他バイオ製品 ・環境関連事業
 ○収益安定事業→既存事業の特殊化、差別化
  ・ポリプロピレン ・熱接着性複合繊維 
  ・被覆肥料 ・有機化学品
 ○不採算事業→抜本措置を講ずる。
  ・塩化ビニール ・グアニジン系難燃剤 
  ・中間膜用特殊可塑剤
  ・肥料原料

2)合理化策
 ○人員のスリム化
  ・平成10年度末 2,151人
    一平成15年度末 1,900人
 ○固定経費の削減
 ○生産コスト低減の強化
 ○物流コスト削減

3)経営の効率化等
 ○役員報酬カットの増大
 ○取締役人数を半数程度に削減
 ○執行役員制度導入
 ○組織、業務の徹底的な見直し

選択と集中による具体的処理

1)塩ビ樹脂の商権譲渡
 2000/4/1に塩ビ樹脂の商権を鐘淵化学工業に譲渡
 ・2000/5 五井のPVC工場停止
 ・2000/7 水俣のPVC工場停止
 ・2003/3 水島のPVC工場停止(これまで鐘化から製造受託)

*日本窒素は1937年に水俣でPVC合成研究に着手、1941年に日本で初めて国産化(乳化重合)に成功、ニポリットの商標で市販を開始した。(爆撃で工場破壊、戦後再スタート)

2)フタル酸系可塑剤事業における合弁会社設立
 2003/4 
シージーエスター㈱営業開始
   三菱ガス化学 50%/チッソ 50%

ーーー

チッソは2000年3月決算で債務免除益 635億円を計上した。

その後の損益状況は以下の通り。 
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/chisso-pl.htm

同社の20053末の資本金は78億円、未処理損失は1,478億円(資本勘定は-1,254億円)となっている。

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