GlaxoSmithKline (GSK) のCEOのSir Andrew Witty はこのたび、貧困国で医薬品を手に入れやすくするため、特許を申請しない方針を明らかにした。
これにより、他の企業が特許を心配せずにこれらの地域でGSK の医薬品を製造販売し、民衆が手に入れやすくなるのを望むとしている。
アフリカがもっとも恩恵を受けることを望んでいる。
具体的には、下記の方針を決めた。
国連と世界銀行の分類による「後発開発途上国」(LDCs:Least Developed Countries) と「低所得国」(LICs:Low Income Countries) では医薬品の特許を申請しない。
対象となるのは、50カ国で、合計の人口は10億人。「低中所得国」(LMICs:Lower Middle Income Countries)では特許は引き続き申請するが、ジェネリックメーカーに対し少額のロイヤリティで10年間のライセンスする。
期間中に経済成長で「低中所得国」から独立した国に対しても適用する。「高中所得国」(UMICs:Upper Middle Income Countries) とその他諸国では、従来どおりフルに特許保護を求める。
特許申請せず LDC 国連開発政策委員会が設定した基準に基づき、国連総会の決議で認定(当該国の同意を条件)
・1999~2000年の1人当たりGNI平均 750ドル以下
・Human Asset Index 55未満
(カロリー、乳幼児死亡率、教育水準を指標化したもの)
・Economic Vulnerability Index 37超
(輸出集中度、輸出による所得不安定度、農業生産不安定度、GDPに対する製造業・サービス業比率、人口規模を指標化)LIC 2013年の1人当たり GNI が1,045ドル以下 少額ロイヤリティ LMIC 同 1,046~4,125ドル UMIC 同 4,126~12,745ドル
具体的には、OECDによる最新のLDC、LIC、LMICのリスト 参照。
リストは3年ごとに更新され、3年連続で一人あたりGNIが上限の基準を超えると除外される。
同社はまた、開発途上国での増大する癌の負担に対応するため、将来の抗がん剤全てを「医薬品特許プール」(Medicines Patent Pool)に入れたいとしている。
「医薬品特許プール」に入れることで、GSK の医薬品のジェネリックの貧困国での生産・流通が可能となる。
医薬品特許プールは世界保健機関(WHO)が採択した「公衆衛生と技術革新、知的財産権に関するグローバル戦略」の一貫として2010年に発足した。
医薬品の特許を所有している企業や大学、研究機関などが、自ら所有する特許権を提供し、第三者による製造や製品改良のための仕組みで、HIVや結核、C型肝炎などの治療へのアクセスを高めてきた。
特許権の保有者がプールにその権利を提供することで、ジェネリック薬(後発医薬品)のメーカーは特許期間が満期になる以前に対象となる医薬品の開発に着手できる。
また、プールのライセンスが指定した国に対しては、開発した医薬品を輸出することもできる。
特許保有者は利用者から特許権料を受けるが、プールの運営には特許プール管理機構があたり、提供者と利用者の間の使用交渉や特許料の支払い、受け取りの管理を行う。
GSKはPfizer と塩野義製薬とのJVのViiV HealthcareでHIV治療薬を開発しているが、2014年4月2日、医薬品特許プールとの間で HIV治療薬に関する新たなコラボレーションを発表し、成人および小児医療向けの新しい有望な抗レトロウイルス薬(ARV)、ドルテグラビル(DTG)へのアクセス強化に対する2つの契約を結んだ。
この契約によってジェネリック医薬品メーカーは、最も大きなHIV負担国で、HIVにかかった成人の93%、子供の99%が住んでいる発展途上国に向けて、低コストのDTG治療薬を製造することができる。
今後、癌治療薬を加えることでGSKの貢献は高まる。
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