2019年度米国防権限法(NDAA2019) --- Huawei、ZTE等の米政府機関との取引からの排除

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米上下両院は2018年8月、華為技術(Huawei)や中興通訊(ZTE)と、監視カメラ大手の杭州海康威視数字技術(HIKVISION )、浙江大華技術(Dahua Technology)、海能達通信(Hytera)の計5社への締め付けを大幅に強化することを盛り込んだ「2019年度米国防権限法(NDAA2019)」を超党派の賛成で可決し、8月13日にトランプ大統領が署名、成立した。

米国では議会が2012年頃から「Huawei と ZTEの通信機器が中国のスパイ活動に利用され、米国が開発した軍事技術が流出している」として米企業に2社の製品を使わないよう呼びかけを始めた。

2017年には国防総省による2社の製品調達を禁止する法律 (National Defense Authorization Bill ) が成立した。

2018年5月に国防総省は世界中の米軍基地の携帯電話販売店で HuaweiとZTE製のスマホの販売を禁止した。

背景には、米国による「中国製造2025」潰しもある。


2019年度米国防権限法(NDAA2019)は、禁止を国防総省以外にも拡大するもので、対象条項は、SEC. 889. Prohibition on certain telecommunications and video surveillance services or equipment.

禁止対象製品 (covered telecommunications equipment or services) は次の通り。

(A) Huawei Technologies と ZTE (関係会社を含む)製の通信機器 (Telecommunications equipment)

(B) Hytera Communications、Hangzhou Hikvision Digital Technology、Dahua Technology Company (関係会社を含む)製のセキュリティ用のビデオ監視・通信機器 (video surveillance and telecommunications equipment)

(C) 国防長官が国家情報長官、FBI局長との協議で、中国政府の影響下またはつながりがあるとみなす企業の通信機器及びビデオ監視システムも同様の扱いとなる。

* B 条項を提案したVicky Hartzler 下院議員は次のように述べている。

中国政府があらゆる手段を使って米国を標的にしている現実に対処せねばならない。中国企業が販売するビデオ監視装置やセキュリティ機器は米国政府を著しく脆弱な状況にしている。この法律は中国政府に米国の政府機関のビデオ監視をやらせないようにするものだ。

HIKVISIONは監視カメラ業界で世界シェア31.3%で1位、Dahua Technologyは世界2位
海能達通信(Hytera)は警察など特定用無線で世界1位

禁止は2段階に分かれる。

第1 段階(発効日の1年後=2019年8月13日以降)

  米政府機関(連邦政府、軍、独立行政組織、政府所有企業)が5社の製品や、5社が製造した部品を組み込む他社製品を調達することを禁止

procure or obtain or extend or renew a contract to procure or obtain any equipment, system, or service that uses covered telecommunications equipment or services as a substantial or essential component of any system, or as critical technology as part of any system;

第2段階(発効日の2年後=2020年8月13日以降)

5社の製品を社内で利用している世界中の企業との取引を禁止
(米政府機関に収めている製品・サービスが通信機器とは一切関係のない企業でも、5社の製品を使っておれば禁止)

enter into a contract (or extend or renew a contract) with an entity that uses any equipment, system, or service that uses covered telecommunications equipment or services as a substantial or essential component of any system, or as critical technology as part of any system.

問題は第2段階である。

既に世界の企業で多くの中国製通信機器が利用されている。企業が米国政府と取引を続けたい場合には、問題視されている機器の利用を一切やめ、その旨を米政府に報告・誓約しなければならなくなる。

中国国内に工場を持ち製品を作っている企業の多くは、中国製の通信機器を使わざるをえない状況にあるケースが多いという。これらの企業にとっては、「米政府と取引を続けるか、中国での生産活動を続けるか」という事実上の踏み絵を突き付けている。

日本でも多くの企業がHuaweiなどの製品を使っている。

Huawei の通信基地局の日本国内シェアは2017年度に13%で、低価格を武器に、約18%のNECや富士通に迫る。

ソフトバンクは Huawei の基地局を採用しており、同社と5Gの共同開発や実証実験を行っている。NTTドコモも5Gの実証実験で Huawei と組んでいる。

ソフトバンクは次世代通信「5G」の基地局などに中国製の設備を使わない方針を固めた。

付記 ソフトバンクは現行の携帯電話の通信規格「4G」の設備について、華為技術(Huawei)など中国製の基地局をなくす方針を固めた。スウエーデンのEricsson、フィンランドのNokiaの製品に順次置き換える。
    

一方、Huawei は大量の部品を日本企業から調達している。2017年の日本での調達額は約4900億円。

付記 

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