三菱化学は6月11日、鹿島事業所の基礎石油化学事業の構造改革を発表した。
1)鹿島第1エチレンプラント及び第1ベンゼンプラントの停止(2014年の定期修理時に停止)
生産能力(非定修年、千トン/年)
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現 在 |
停止後 |
エチレン |
1E |
390 |
0 |
2E |
490 |
540 |
計 |
880 |
540 |
ベンゼン |
1Bz |
90 |
0 |
2Bz |
180 |
180 |
計 |
270 |
180 |
2)これに伴う主な設備対応
・鹿島第2エチレンプラントの増強 (+5万トン/年)
・OCU設備(プロピレン年間生産能力15万トン)の稼動維持に向けた設備対応
・事業所内の配管整備
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鹿島の第一エチレンは1970年(三菱油化時代)に能力300千トンでスタートした。信越化学のPVCの鹿島進出などがこれに貢献した。
第二エチレンは1992年(三菱油化時代)に能力326千トンでスタートした。
三菱油化は1980年代後半にスチレンモノマーの輸出で膨大な利益を上げたが、同社は高騰した株価の下で時価発行で増資し、設備増設を行った。その後のSMなどの輸出価格の下落で増設分が足を引っ張ることとなった。
三菱油化と三菱化成が合同した三菱化学は、旧油化の鹿島、四日市、旧化成の水島の3エチレンセンターをそのまま維持してきたが、2000年央からオレフィン及び誘導品の輸出を行うことが厳しくなること、さらには2004年の主要石化製品における大幅な関税の引き下げ等により今後より一層内需の伸びが期待できないことから、エチレン生産体制の見直しを行うこととし、2001年1月に、四日市事業所のエチレンプラント及びEG、EO設備を停止した。
三菱化学の生産能力 2001/1 単位:千T/Y
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製品名 |
スタート |
能力(現状) |
能力(集約化後) |
2011/12末
定修無し |
エチレン |
四日市
水島
鹿島No.1
鹿島No.2
計 |
'68/3
'70/7
'70/11
'92/6 |
270
450
375
453
1,548 |
0
450
375
453
1,278 |
0
494
390
490
1,374 |
EG |
四日市
鹿島
計 |
'81/8
'92/6 |
85
267
352 |
0
267
267 |
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EO |
四日市
鹿島
計 |
'81/8
'92/6 |
111
257
368 |
0
257
257 |
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注:エチレン生産能力は、定期修理実施年のもの
水島地区では三菱化学と旭化成は2011年4月から両社エチレンセンターの統合・一体運営のため、両社共同出資による有限責任事業組合(LLP)の運営を開始した。
設備能力削減については将来の需要をみて統合会社で柔軟に判断するが、最終的にはいずれか1基を休止する。
2011/3/1 三菱化学と旭化成、水島地区エチレンセンター統合のためのLLP設立
この結果、三菱化学の単独のエチレン設備は鹿島第二エチレン1基のみとなる。
なお、2007年12月に鹿島事業所第2エチレンプラントにおいて、火災事故が発生し、協力会社従業員4名が亡くなっている。
2007/12/24 三菱化学鹿島事業所 火災事故
ーーー
三菱化学は塩ビ事業撤退、スチレン事業撤退、ナイロン事業売却、テレフタル酸事業の国内撤退とグローバル化など汎用品を中心とした事業の整理・縮小を進めている。
鹿島事業所でも構造改革を進めている。
・ PS事業撤退に伴うスチレンモノマー停止
・ EOセンター化
2008/7/31
三菱化学鹿島のEOセンター
・ エチレンカーボネート増強
三菱化学は6月8日、鹿島事業所で、リチウムイオン二次電池等の原料として使われるエチレンカーボネート(炭酸エチレン)の生産能力を増強
すると発表した。
同社は2007年に鹿島事業所でエチレンカーボネートの生産を開始したが、今回、現行能力 3,000t/y を2013年9月に8,000t/yに増強する。
同社はリチウムイオン二次電池の主要4材料(電解液・負極材・正極材・セパレータ)すべてを取扱う世界唯一の企業で、それぞれの原料についても進出している。
2010/9/13 三菱化学、リチウムイオン二次電池用負極材の製造能力増強
・ ポリプロピレン
三菱化学子会社の日本ポリプロは2009年9月に最新鋭の技術で鹿島に300千トン設備を新設した。
なお、これに伴い、2011年に鹿島の90千トンプラントとチッソ(千葉)の79千トンプラント、合計169千トンを停止した。
これに加え、鹿島の電解およびVCMの構造改革も進めている。今後、電解とVCMの能力削減が行われる。
2011年12月に下記の発表があった。詳細は引き続き協議する。
1)鹿島電解および鹿島塩ビモノマーの運営について
旭硝子、ADEKA、カネカの3社が、鹿島電解及び鹿島塩ビモノマー両社への出資を引き揚げる。
信越化学および三菱化学が出資を継続し、信越化学の子会社として運営を行う。
2)鹿島電解のバース設備について
鹿島電解より分離し、新会社を設立し、運営を行う。
2011/9/19
鹿島コンビナート 電解・塩ビ再構築
ーーー
三菱化学が今後進めるべきものは、ポリオレフィンの構造改革である。
同社が中心となる日本ポリエチレンは三菱化学(鹿島と水島)、東燃化学(川崎)、昭和電工(大分)、旧新日本石油精製(川崎)に、同じく日本ポリプロは三菱化学(鹿島と水島)、東燃化学(川崎)、丸善石油化学(千葉)と東ソー(四日市)[いずれも旧チッソのPP工場〕のエチレンセンターにそれぞれプラントを持っている。
前者は日本ポリケムとJPO、後者は日本ポリケムとチッソの事業統合によるものだが、一部プラントの停止はあるものの、小規模のものを含め、各エチレンセンターの工場がそのまま残っている。
狭い日本でそんなに多くの工場を持つ必要はなく、合理的でない。真の事業強化のためなら、小規模工場を廃止して、大規模工場に集中すべきであるが、PE、PPの停止はエチレンの停止につながるため、恐らくエチレンメーカー側の了承なしには停止できないこととなっているものと思われる。
逆に言えば、PE、PPが三菱化学の傘下に入った結果、存立が保証され、エチレンの構造改革が進まないこととなっている。
付記 日本ポリエチレンと日本ポリプロは6月29日、川崎の1系列ずつを2014年4月に停止すると発表した。
日本ポリエチレン HDPE製造設備の停止
工場 川崎市川崎区(千鳥地区)
旧 東燃化学
設備 HDPE 第二系列(スラリー法)
能力 5.2万トン/年
日本ポリプロ PP製造設備の停止
工場 川崎市川崎区(千鳥地区)
旧 東燃化学
設備 PP 第3系列(バルクー気相法)
能力 8.9万トン/年 旧東燃化学のプラントはゼロとなる。
東燃化学は三菱化学と日本ポリケムをつくっていたが、東燃化学はPEでは日本ユニカーにも参加しているため、
日本ポリエチレン設立時に公取が承認せず、この結果、東燃化学は離脱し、PEとPPプラントを三菱化学に譲渡したもの。 (HDPEは東燃化学が昭和電工より譲り受けた)
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