2024年11月アーカイブ

米財務省は1114日、貿易相手国の通貨政策を分析した半期為替報告書を公表した。
     
https://home.treasury.gov/system/files/136/November-2024-FX-Report.pdf

「為替操作国」基準にかかった貿易相手国・地域はなかった。

2019年8月に中国が、2020年12月にスイスとベトナムが「為替操作国」となった。それ以降、2022年11月までの間は、基準では対象となる国があったが、米財務省の判断で実際は非認定となった。
今回は基準でも対象となる国はなかった。

米財務省は為替操作国に指定する条件として(1) 対米貿易黒字の規模 (2) 経常黒字の規模 (3) 継続的な通貨売り介入――を掲げている。

  従来の基準 2019/5より改正
①重大な対米貿易黒字 対米貿易黒字が200億ドル(米国GDPの約0.1%) 以上 同左
②実質的な経常黒字 経常黒字がその国のGDPの3.0%以上 GDPの2.0%以上
③外為市場に対する介入 GDPの2%以上(ネットで)の額の外貨を繰り返し購入
(12カ月のうち、8カ月
同左
(12カ月のうち、6カ月


3基準全てに該当すれば「為替操作国」となる。

次の場合、「監視リスト」に入る。
  2基準に該当 & 1基準だが、前年「監視リスト」の場合
  なお、中国は常時、「監視リスト」

日本は永く2項目でひっかかり、「監視リスト」に入っていた。2022年11月から1項目だけとなり、2023年6月と2023年11月は「監視リスト」から外れた。しかし前回から、①対米貿易黒字に加え、②実質的な経常黒字で該当し、再度、『監視リスト」に入った。

日本の経常黒字は、下図(報告書に記載)の通り、2015年以降、GDPの3%(2019/5より2.0%)を超え、対米黒字と合わせ2基準でかかっていた。2022年は2%を下回り、(時期のずれで)2022/11~2023/11の3期が1項目だけ該当となった。しかし、2023年には経常黒字は再び2%を上回り、2024/Q2は更に上がり4.2%になった。今回2項目で該当する。

日本は2023年12月までの4四半期には外為市場への介入していない。

今回の報告書では、日本の財務省は4月29日と5月1日に合計9.8兆円(620億ドル)のドル売りを行い、7月11-12日にも再び5.5兆円(350億ドル)のドル売りを行ったとしたが、日本は外国為替操作に関して透明性を確保しており、毎月定期的に外国為替介入を公表していると述べ、大規模で自由に取引される為替市場では、介入は適切な事前協議を伴う非常に例外的な状況でのみ行われるべきであると強く期待すると述べた。

ーーー

今回は、日本に加え、前回に続き2項目の台湾、ドイツ、ベトナム、シンガポールと、今回2項目となった韓国1項目だが常時「監視リスト」の中国の合計7カ国が「監視リスト」に載った。マレーシアは1項目が2回続き、外れた。

なお、③「外為市場に対する介入」でひっかかったのはシンガポールだけであった。 

操作国
3基準  
監視国
2基準  
監視国
1前年監視対象 &中国 丸数字は問題となった項目
                 
  日本 中国 韓国 台湾 ドイツ スイス インド アイルランド ベトナム イタリア マレーシア シンガポール タイ メキシコ
2016/4
2016/10
2017/4
2017/10
2018/4
2018/10
2019/5
 

①②



①②

 

 

①②

①②

①②

①②

2019/8   操作国  
2020/1
①②


①②

①②

①②

 



①②

①②

2020/12
①②


①②

①②

①②
操作国
①③
操作国
①②

①②


①②
2021/4
①②


①②
操作国
非認定

①②
操作国
非認定

①③

①②
操作国
非認定

①②

①②


①②

①②
2021/12
①②

①②

①②
操作国
非認定

①②

①③

①③

操作国
非認定

①②

①②


①②

①②
2022/6
①②


①②

①②

①②
操作国
非認定




①②



2022/11


①②

①②

①②
操作国
非認定







2023/6



①②

①②






①②



2023/11



①②

①②




①②


①②



2024/6
①②



①②

①②




①②





2024/11
①②


①②

①②

①②




①②





 

 赤字が為替操作国基準にひっかかった項目

ナルコレプシーなどの過眠症患者は、夜間に十分な睡眠時間を取っているにもかかわらず、通常起きている時間帯に自分では制御できない眠気が繰り返し起る。また感情の高まりをきっかけに突然寝てしまう情動脱力発作が起こり うる。

取引先の前で話している途中で寝てしまったとか、学生であれば受験など重要な試験中で寝てしまったとか、日常生活で壮絶なトラブルがある。

運転中などでも起こり得るため、患者の生活の質は大きく低下する。

日本で過眠症治療に使用できる薬剤は、覚醒剤と類似した作用機序を有しており、薬物乱用や依存が問題になる上に、処方できる医師が限られる。

もっともよく効く薬はメチルフェニデート(商品名リタリン)だが、依存性が問題になっており、近年では適応が非常に厳しく制限されるようになってきた。

ペモリン(商品名ベタナミン)はその点の問題は少なく有用な薬だが、劇症肝炎のリスクがあり、アメリカなど他国では使用が禁止されるなど、一癖ある薬である。

マジンドール(商品名サノレックス)も覚醒作用があるが、日本では眠気治療に保険適応がなく、やせ薬としてのみ使用されている。リタリン同様依存性が問題として言われている。

比較的新しい薬として、モダフィニル(商品名モディオダール)がある。依存性が少なく、副作用も少ないので画期的な薬で、最近条件付きで、睡眠時無呼吸症候群にも使用が承認された。ただ、効果がある人とない人がある。

  以上  ナルコレプシーなど過眠症で用いられる薬 から

そのため、高い安全性及び有効性の両者を兼ね備えた薬剤の開発が待たれている。

北海道大学大学院医学研究院(2023/4まで東北大学大学院)の吉川雄朗教授らの研究グループは、ヒスタミン代謝酵素であるヒスタミンメチル基転移酵素(histamine N-methyltransferase:HNMT)の阻害薬を用いた研究成果を発表した。

ヒスタミンは脳内で覚醒の維持に重要な役割を果たしている。過眠症の一つであるナルコレプシーでは患者の脳脊髄液中ヒスタミン量が低下していることが報告されていた。

そこで本研究では、脳内ヒスタミンを分解する HNMT を薬物により阻害し、脳内ヒスタミンを増加させた際に症状が改善するかを調べた。

HNMT 阻害薬はマウス脳内ヒスタミン量を増やし覚醒時間を延長すること、及び過眠症マウスの症状を大幅に改善することを明らかにした。




HNMT の阻害作用があるメトプリンを野生型マウスに投与すると、脳内のヒスタミン量が約2倍に増加し、マウスが長時間起きていることを明らかにした。

メトプリンは 脳内のヒスタミン量を増加させる薬物 で、メトプリンを投与すると脳内のヒスタミン量が増加し、睡眠覚醒や情動脱力発作に影響を与えることが知られている。

Metoprine :製造元:Toronto Research Chemicals Inc、販売元:富士フィルム和光純薬
      試験・研究の目的のみに使用されるものであり、「医薬品」、「食品」、「家庭用品」などとしては使用できません。

次にヒトのナルコレプシーと類似した症状を持つ病態モデルマウスにメトプリンを投与し、過眠症状がほぼ完全に消失することを明らかにした。
また、メトプリンの効果は欧米でナルコレプシー治療薬として承認されているピトリサントよりも強いことが示された。

日本発の製薬ベンチャー企業のアキュリスファーマは2024年11月21日、ナルコレプシー患者を対象にしたヒスタミンH3受容体拮抗薬/逆作動薬ピトリサントの国内臨床第3相試験で主要評価項目を達成したと発表した。

これらの結果から、HNMT の阻害はナルコレプシーの有効な治療戦略となるため、これを標的とした新たな創薬研究の発展が期待される。

本研究成果は、2024年10月23日公開の睡眠学の国際専門誌 SLEEP に掲載された。

ペルーの首都リマ北方約70キロで中国遠洋海運集団(COSCO)が60%出資するチャンカイ(Chancay)港が11月14日に開港する。

リマの外港のCallao 港の船舶の渋滞と港湾周辺の交通渋滞の深刻化などを背景に、新たなハブ港として始まった。プロジェクトの全4段階の第1段階で、4つのバース、パンアメリカンハイウェイに接続するインターチェンジ、船舶の海上進入路、防波堤、隣接するチャンカイ市を迂回できるトンネルなどが建設されている。総事業費は34億ドル以上と見込まれており、そのうち第1段階で13億ドル以上が投じられる。

チャンカイ港では、最大1万8,000TEUのコンテナ船を受け入れる。水深も18メートルに達する見込み。現状、ペルー国内で最大の港であるカジャオ港で受け入れ可能なコンテナ船の大きさは1万5,000TEU、水深は15メートルであるため、カジャオ港よりも大きな船舶の受け入れが可能となる。

これだけの規模の船舶を受け入れ可能な港となるため、これまで行われていたメキシコのマンサニージョ港や米国カリフォルニア州のロングビーチ港などに寄港しての貨物の積み替えの必要がなくなり、太平洋を横断して東アジアまで直行できるようになる。

チャンカイ港の最も注目すべき特徴の1つは最先端の自動化であり、コンテナの積み下ろし時間を大幅に短縮する。「COSCOが行った投資のおかげで、この港は上海で使用されているのと同様の技術を使用するため、以前は3時間かかっていた船からの荷下ろしが1時間未満でできる。」

さらに、ポストパナマックス(パナマ運河を通れない大型船)として知られる大型船を扱えるキャパシティがあり、より多くの貨物を輸送することができる。これは、青果物や加工品などの傷みやすい産品や、市場価値を維持するために目的地に迅速に到着する必要がある鉱物に関して大きな違いを生む。

東アジアまでの所要日数が23日と12~17日程度短縮される。

遠隔自動操作システムの稼働に際し、中国の通信機器大手の華為技術(Huawei)とメキシコ系通信会社Claro が5G(第5世代移動通信システム)回線を導入する基地局を設置している。

また、チャンカイ港では当初140万~160万TEUの貨物の取り扱いを予定しているが、これが実現すれば、当初から中南米の港の貨物取扱量ランキングでトップ10に迫り、南米の太平洋側の港の中では4番目の規模となる。

首都リマとチャンカイの間にある国内最大のCallao港と合わせると540万TEUで、パナマのコロン港、ブラジルのサントス港を上回る規模になる見込みという。

中国にとってはチリ、ボリビアなど他の南米諸国や中米各国へのさらなる進出のハブ港にすることができる利点があるとされる。

ーーー

2019年にCOSCO傘下で港湾運営の中遠海運港口が、ペルーの鉱山会社Volcanからチャンカイ港を開発中のコンテナターミナル運営会社TPCのの株式60%を2億2500万ドルで取得した。

2021年にペルーの国立港湾局と新港の独占的運営権に関する協定に調印した。ただ、ペルーが中国に向こう30年間の運営権を与える上、その後も中国が運営権を維持できるといった協定内容にペルー国内で反対論が起きため、国立港湾局が『行政上のミス』として協定をご破算にしようと試みた。中国側は一時、契約違反と非難し、国際裁判に持ち込む動きを見せた。

しかし今年6月、ペルー議会で協定の締結を事実上容認する法案が成立、問題解決への道が開かれた。ボルアルテ大統領は同法案に署名し、訪中の際の手土産にした。習近平主席はペルーの首都リマで行われるAPEC閣僚会議・首脳会議(11月15日~19日)に出席の折、チャンカイ新港の落成式に臨む予定であったが、安全上の観点からリモートで参加する。

在リマ外交筋は「中国の対ペルー投資が習近平主席の唱える『一帯一路』構想の南米戦略の一環として行われている点に注目すべきだ」と強調する。ペルーは2019年に中国との間で「一帯一路」構想への参加を表明する「了解覚書(MOU)」を取り交している。

中国の南米戦略の最重点国はブラジルに次いでペルーという見方が有力になっている。中国企業はペルーの鉱業分野やインフラ部門を中心に積極的に投資しており、今や「ペルー経済の発展は中国の存在を抜きにしては考えられない」(ペルーの有力エコノミスト)といった声が聞かれるほど。

今年6月末のボルアルテ大統領の中国公式訪問時には、大統領と習近平国家主席は2国間の経済・貿易面での強化関係をもう一段格上げすることで合意した。また、この首脳会談で両国間の自由貿易協定(FTA)の拡充を目指す交渉も事実上完了したと伝えられる。習近平主席は鉱業のほか電力・通信・港湾などのインフラ分野でも経済支援を拡大すると述べたという。

ーーー

ペルー民間投資促進庁は2024年3月22日、南部イカ州のサン・ファン・デ・マルコナ(San Juan de Marcona)新港湾ターミナルのデザインと資金調達、建設、運営管理に関する官民連携方式による事業者として、中国の金兆鉱業(JINZHAO MINING)のグループ会社の金兆ペルーを選定すると発表した。同ターミナルは首都リマのカジャオ港、リマ州北部のチャンカイ港(中国COSCO社が60%出資)に次ぐ規模となる予定で、総投資額は4億500万ドルに上る。コンセッション契約期間は契約締結日から30年間とされている。

カジャオ港の取扱貨物量は年間3,570万トン、チャンカイ港は同3,400万トンとされている。サン・ファン・デ・マルコナ港の想定取扱貨物量は1,900万トンだが、最大で4,000万トンの許容があるという。

これまで、運輸通信省(MTC)傘下のペルー国家港湾局に対する金兆ペルーからの事業提案は、政府が求める条件に基づいて幾度か修正が行われ、最終的に2023年12月20日付で国益に資する事業として認定を受けた。新港湾ターミナルは公共施設として位置づけられるが、その運営管理から生じる収益は主として金兆ペルーに属することになる。

関連して金兆ペルーは、イカ州に隣接するアレキパ州のパンパ・デ・ポンゴ鉄鉱石鉱山事業を手掛けているが、同地域ではその他にも同じ中国資本のラス・バンバス銅鉱山などが操業している。サン・ファン・デ・マルコナ港湾の開発は、将来的に多くの南部鉱山ビジネスに寄与することになる。

米国大統領選挙

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米国大統領選挙は4年ごとに、11月の最初の月曜の次の火曜日(本年は11月5日)に行われる。

同時に上院議員の1/3、下院議員全員の選挙が行われる。

付記

 Whitehouse、上院、下院ともに共和党で「トリプルレッド」 詳細別紙

ーーー

大統領選挙は選挙人を選ぶ。通常、選挙人はその党の大統領候補に投票する。したがって、大統領候補の選挙である。

選挙人は上院(100) と下院(435)の議員数にコロンビア特別区の3人を合わせ総数は538人で、当選に必要な人数は270人。

米国では国勢調査が10年に1度行われ、そこで確定した州別の人口数に基づき、全435の下院議席数が各州に配分される。
商務省センサス局は2021年4月26日、2020年の国勢調査(センサス)に基づき、一部の州で連邦下院議席数が変更になることを、大統領に報告。2022年11月に実施の中間選挙から適用された。

人口の増えた州の選挙人が増え、減った州の選挙人は減少する。今回、Mid-Atlantic、The Mid-West が減り、The South、Rocky Mountainsが増えた。

ーーー

選挙人

下記2州を除き、最も多く得票した候補がその州の選挙人全員を獲得する。
  メインは4人のうち、上院分 2人は全体勝者とし、下院分 2人は2選挙区の勝者
  ネブラスカは5人のうち、2人は全体勝者、3人は3選挙区の勝者

複数の激戦州で勝敗を左右 
 「拮抗」             共和やや優勢
 
  ペンシルバニア(19票)   ノースカロライナ(16票)
  ミシガン   (15票)    ジョージア  (16票)
  ウイスコンシン (10票)    アリゾナ   (11票)
  ネバダ     ( 6票)
    合計  50票--------------------      合計  43票
  

選挙人

Trump Harris

選挙人

Trump Harris
'20 '24 '20 '24
New England Maine 4 4 The Midwest Iowa 6 6
New Hampshire 4 4 Indiana 11 11
Vermont 3 3 Illinois 20 19 -1
Massachusetts 11 11 Ohio 18 17 -1
Connecticut 7 7 Wisconsin 10 10
Rhode Island 4 4 Michigan 16 15 -1
Mid-Atlantic New Jersey 14 14 Missouri 10 10
New York 29 28 -1 Minnesota 10 10
Pennsylvania 20 19 -1 Rocky Mountains Idaho 4 4
Delaware 3 3 Colorado 9 10 +1
Maryland 10 10 Montana 3 4 +1
Washington D.C. 3 3 Wyoming 3 3
The South Arkansas 6 6 The Southwest Arizona 11 11

Alabama

9 9 New Mexico 5 5
West Virginia 5 4 -1 Nevada 6 6
Florida 29 30 +1 Uta 6 6
South Carolina 9 9 Pacific Oregon 7 8 +1
Georgia 16 16 Washington 12 12
Texas 38 40 +2 California 55 54 -1
Tennessee 11 11 Alaska   3 3
Kentucky 8 8 Hawaii  4 4
North Carolina 15 16 +1 合計 538 538
Virginia 13 13
Mississippi 6 6
Louisiana 8 8
Great Plains Oklahoma 7 7
Kansas 6 6
South Dakota 3 3
North Dakota 3 3
Nebraska 5 5

上院

定員100名 50州 x 2

任期 6年  2年ごとに約1/3ずつ 改選(本年は33名 が改選)+ 特別選挙

共和党の非改選 -1、改選 +1 は特別選挙
 Nebraskaの議員が2023/1に辞任、知事は後任を指名したが、任期を今回選挙までとした。このため、今回、非改選期の議員が1名選ばれる。

  共和党 民主党 民主系
無所属
合計
2024年改選前 49 47 4 100
非改選 39-1 28 67-1 (66)
改選 10+1 19 4 33+1(34)
 同改選後 33+1 (34)
改選後合計 100


民主系無所属は
Sanders
議員、 King 議員、Sinema議員、Joe Manchin 議員(2024/5 無所属に)

下院

定員 435名

任期 2年 全員改選

下院議員に欠員が生じた場合には、補欠選挙または総選挙によってのみ補充される。

  共和党 民主党 合計 欠員

2024年改選前

220 212 432 3

   改選後

435  

日米欧の先進7カ国(G7)は10月25日の財務相・中央銀行総裁会議で、ロシアの凍結資産を活用したウクライナ支援について最終合意した。年内に、融資による約500億ドル(約7兆6千億円)の支援を開始する。

G7首脳は共同声明を発表し「ロシアは違法な侵略戦争を終わらせ、ウクライナの損害を賠償しなければならない」と強調した。

ロシアによる不法かつ、不当で、いわれのないウクライナに対する侵略戦争は、引き続き甚大な人的被害及び経済的損失をウクライナにもたらすとともに、世界の最も脆弱な人々を害する食料及びエネルギー不安を含め、世界経済に負のスピルオーバーをもたらしている。

我々は、必要とされる限りの我々の揺るぎないウクライナへの支援を再確認し、また、ロシアに対して戦争の即時終結を求める。

我々は、6月15日にプーリア(イタリア)で発表された G7 首脳声明に沿って、G7 財務大臣が、凍結されているロシアの国家資産から得られる特別な収益を活用し約500 億米ドル(450 億ユーロ)をウクライナのために支出する特別収益前倒し融資(ERA ローン:Extraordinary Revenue Acceleration Loan)イニシアティブの実施要領について合意したことを発表できることを、喜ばしく思う。

各国が個別に融資契約を締結し、ウクライナの需要に応じて12月1日から2027年末までの間に分割で実施する。その元本及び利息は、G7 国内において保有されるロシアの国家資産の凍結から生じる特別収益により返済し、ウクライナに返済義務は生じない。

G7などが凍結したロシアの資産は約2800億ドルに上る。G7は6月の首脳会議で、この資産を活用してウクライナを支援することを決め、融資条件や返済方法といった詳細を協議していた。

G7は「ロシアは自らがもたらした損害に対して支払いを行うべきだ」(加藤勝信財務相)との考え方を出発点に、日本がG7議長国を務めた昨年から、ロシアの資産を活用する方法を検討 してきた。

しかし、ロシアの資産の運用益はロシアに帰属し、それをウクライナに融資するのは違法であるとの懸念が出た。

検討の結果、ロシアの中央銀行が欧州の国際決済機関に預けている 債券のうち、償還期限が来て現金化された資産から生じる運用益であれば、ロシアに帰属しないことが法的に確認され、ウクライナ側の返済原資に充てることが可能となった。

(ロシアの中央銀行が預けている債券のうち、償還期限が来て現金化された資産はロシアの資産である。凍結資産のためロシアはその運用を指示できない。建前上はそれは運用せずにそのまま置いておく。
 実際には運用して運用益がでるが、ロシアの指示で運用したものではないため、ロシアに帰属しない。)

ロシアの国家資産から生じる一連の特別収益の ERA 貸出国への返済のための分配は、今般合意されたウクライナ融資協調メカニズムを通じて管理される。G7 貸出国への返済のための分配は、各二国間融資のコミットされた元本額に比例してなされる。

なお、日本にとっては、ウクライナへの融資金が軍事目的に使われない仕組みにすることが必須だったが、世界銀行の基金を経由することでこれをクリアした。国民に対し、追加的な負担を求めることも回避した。

米国は10月23日、ウクライナへの500億ドルの融資のうち米国が担当する200億ドルの拠出を最終決定し、経済・軍事支援に向け年末までに提供を開始すると発表した。イエレン米財務長官とウクライナのマルチェンコ財務相が合意書に署名した。
バイデン大統領は「ウクライナは納税者に負担をかけることなく、今必要な支援を受けることができる」と述べた。

米国は12月までに100億ドルを経済援助として提供し、残りの100億ドルを軍事支援に充てることを目指している。ただし、この軍事支援部分は米国議会の承認が必要となる。

500億ドルの融資の残り200億ドルをEUが担当、100億ドルを英国、日本、カナダが分担する。

最終的に融資額は下記のとおりとなった。

実際の融資額 米ドル換算
(概算)
米国 200億米ドル 200億ドル
EU 181.15億ユーロ 200億ドル
英国 22.6億ポンド 29億ドル
カナダ 50億カナダドル 37億ドル
日本 4,719億円 31億ドル

1ドル150円の場合で、130円では36億ドル

合計 497億ドル

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