日米欧の先進7カ国(G7)は10月25日の財務相・中央銀行総裁会議で、ロシアの凍結資産を活用したウクライナ支援について最終合意した。年内に、融資による約500億ドル(約7兆6千億円)の支援を開始する。
G7首脳は共同声明を発表し「ロシアは違法な侵略戦争を終わらせ、ウクライナの損害を賠償しなければならない」と強調した。
ロシアによる不法かつ、不当で、いわれのないウクライナに対する侵略戦争は、引き続き甚大な人的被害及び経済的損失をウクライナにもたらすとともに、世界の最も脆弱な人々を害する食料及びエネルギー不安を含め、世界経済に負のスピルオーバーをもたらしている。
我々は、必要とされる限りの我々の揺るぎないウクライナへの支援を再確認し、また、ロシアに対して戦争の即時終結を求める。
我々は、6月15日にプーリア(イタリア)で発表された G7 首脳声明に沿って、G7 財務大臣が、凍結されているロシアの国家資産から得られる特別な収益を活用し約500 億米ドル(450 億ユーロ)をウクライナのために支出する特別収益前倒し融資(ERA ローン:Extraordinary Revenue Acceleration Loan)イニシアティブの実施要領について合意したことを発表できることを、喜ばしく思う。
各国が個別に融資契約を締結し、ウクライナの需要に応じて12月1日から2027年末までの間に分割で実施する。その元本及び利息は、G7 国内において保有されるロシアの国家資産の凍結から生じる特別収益により返済し、ウクライナに返済義務は生じない。
G7などが凍結したロシアの資産は約2800億ドルに上る。G7は6月の首脳会議で、この資産を活用してウクライナを支援することを決め、融資条件や返済方法といった詳細を協議していた。
G7は「ロシアは自らがもたらした損害に対して支払いを行うべきだ」(加藤勝信財務相)との考え方を出発点に、日本がG7議長国を務めた昨年から、ロシアの資産を活用する方法を検討 してきた。
しかし、ロシアの資産の運用益はロシアに帰属し、それをウクライナに融資するのは違法であるとの懸念が出た。
検討の結果、ロシアの中央銀行が欧州の国際決済機関に預けている 債券のうち、償還期限が来て現金化された資産から生じる運用益であれば、ロシアに帰属しないことが法的に確認され、ウクライナ側の返済原資に充てることが可能となった。
(ロシアの中央銀行が預けている債券のうち、償還期限が来て現金化された資産はロシアの資産である。凍結資産のためロシアはその運用を指示できない。建前上はそれは運用せずにそのまま置いておく。
実際には運用して運用益がでるが、ロシアの指示で運用したものではないため、ロシアに帰属しない。)
ロシアの国家資産から生じる一連の特別収益の ERA 貸出国への返済のための分配は、今般合意されたウクライナ融資協調メカニズムを通じて管理される。G7 貸出国への返済のための分配は、各二国間融資のコミットされた元本額に比例してなされる。
なお、日本にとっては、ウクライナへの融資金が軍事目的に使われない仕組みにすることが必須だったが、世界銀行の基金を経由することでこれをクリアした。国民に対し、追加的な負担を求めることも回避した。
米国は10月23日、ウクライナへの500億ドルの融資のうち米国が担当する200億ドルの拠出を最終決定し、経済・軍事支援に向け年末までに提供を開始すると発表した。イエレン米財務長官とウクライナのマルチェンコ財務相が合意書に署名した。
バイデン大統領は「ウクライナは納税者に負担をかけることなく、今必要な支援を受けることができる」と述べた。
米国は12月までに100億ドルを経済援助として提供し、残りの100億ドルを軍事支援に充てることを目指している。ただし、この軍事支援部分は米国議会の承認が必要となる。
500億ドルの融資の残り200億ドルをEUが担当、100億ドルを英国、日本、カナダが分担する。
最終的に融資額は下記のとおりとなった。
実際の融資額 米ドル換算
(概算)米国 200億米ドル 200億ドル EU 181.15億ユーロ 200億ドル 英国 22.6億ポンド 29億ドル カナダ 50億カナダドル 37億ドル 日本 4,719億円 31億ドル 1ドル150円の場合で、130円では36億ドル
合計 497億ドル
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