伊藤忠と持田製薬、医薬品産業グループのアンドファーマに参加

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伊藤忠商事は9月22日、医薬品製造を中心とした医薬品産業グループであるアンドファーマ㈱の株式を取得し、持分法適用会社化することに合意したと発表した。

本株式取得において、伊藤忠は、第三者割当増資の引受けに加え、ジェイ・ウィル・パートナーズが運営・管理する合同会社ジェイ・イー・エイチが保有する一部株式の譲り受けを通じて、同社の株式20%(出資金額:162億円)を取得する。

持田製薬も同日、同じ内容の発表を行った。

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アンドファーマ(AND PHARMA)は、ジェイ・ウィル・パートナーズ(J-Will Partners)が投資する日医工、共和薬品工業、武田テバファーマ(現 T'sグループ)の3社を傘下に収める持ち株会社として設立された。

2025年10月1日付けで、持田製薬と伊藤忠商事がアンドファーマの株式をそれぞれ20%ずつ取得する。


ジェイ・ウィル・パートナーズは、ゴールドマン・サックス出身の佐藤雅典氏により2003年に設立された。社名は、"Japan"の "J" と "志" を表す "Will" が由来で、「志をもって日本のために」が理念である。

地銀との関係が強い。債権、不動産への投資も行う。再生案件にも強い。 ビッグモーター事業を伊藤忠グループが引き取ったWECARS(ウィーカーズ)に共同投資している。

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国内の後発医薬品(ジェネリック医薬品)市場は、厚生労働省による医療費適正化の推進を背景に、政府目標であった数量シェア80%を達成し、今後も拡大が見込まれている。

一方で、依然として社会課題である医療費抑制や医薬品の安定供給に対応すべく、政府は品目統合や供給効率化を後押しし、企業間の連携や業界再編の動きがみられる。更に、サプライチェーンの強靱化、多様な提供チャネルの整備など、持続可能な医薬品供給体制の構築に向けた期待が高まっている。


アンドファーマは日医工、共和薬品工業、およびT'sグループを子会社に持つ純粋持株会社であり、国内大手ジェネリック医薬品企業と比肩する売上規模を有する企業である。オーソライズド・ジェネリック(先発医薬品メーカーの許諾を受けて製造・販売される「先発医薬品と同じ」ジェネリック医薬品)を含むジェネリック医薬品、バイオシミラー、長期収載品といった領域で幅広い品揃えを誇り、国内における医薬品の安定供給の一端を担っている。

後発薬大手の日医工は多くの問題で苦境に立っていた。

2021年、ジェネリック医薬品の製造において不適合製品を適合品として出荷する品質不正が発覚し、富山県から業務停止命令を受けた。

品質不正や、以前から抱えていた米国子会社の事業失敗による損失計上が重なり、業績が悪化、経営危機を乗り越えるため、事業再生ADR手続きに入り、金融機関からの同意を得て事業再生計画を成立させた。

経営再生のため、2023年3月29日に東京証券取引所プライム市場での株式上場を廃止し、アンドファーマと医薬品卸大手メディパルホールディングスの出資を受け、新経営陣のもとで経営再建を進めている。

2022/11/17 日医工が破綻、投資ファンドの支援で再建へ

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共和薬品は、ジェネリックメーカーとして、特に中枢神経系(CNS)の領域においてトッププレイヤーの地位を確立してきた。

共和薬品工業は2007年10月、インドの後発薬大手のLupin と資本提携することとし、Lupinが共和薬品の発行済み株式の大半(99.82%)を100億円弱を投じて取得したが、2019年にLupinは共和薬品を日本の投資ファンドに売却した。

2019/11/14 インド後発薬大手のルピン、子会社 共和薬品を売却 

2022年3月に承認内容と異なる医薬品の製造や製造記録の改ざん・ねつ造などの品質問題が発覚し、兵庫県から薬機法に基づく行政処分(業務停止命令、業務改善命令)を受けた 。

2024年7月には「アルプラゾラム錠」の自主回収、2024年4月には「メスチノン錠」の一部変更申請時における不適切な試験データの提出が確認されるなど、その後も品質に影響する事案が発生している。

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T's ファーマは旧称武田テバで、武田薬品とテバファーマが共同出資してジェネリック医薬品などを取り扱う会社として2016年に設立された。武田薬品は武田テバの株式49%を保有していた。

2016年

2015/12/2 武田薬品とイスラエルのTeva Pharmaceutical、日本でジェネリック医薬品のJV設立


武田薬品工業は2024年12月6日、後発薬を扱う武田テバファーマの株式をイスラエルのテバファーマスーティカル・インダストリーズに譲渡すると発表した。今回の譲渡に伴い、約550億円を受けとる見込み。

テバファーマは同日、取得した株式を含む武田テバの全株式を2025年4月1日までに国内投資ファンドのジェイ・ウィル・パートナーズ(JWP)が設立した㈱ジェイ・ケイ・アイに売却すると発表した。売却総額は明らかにしていない。武田テバはJWPの傘下に入ることになる。

JWP移管後の2025年9月に武田テバは社名を「T'sファーマ」へと変更する予定で、武田薬品が流通を担当する製品は、引き続き武田が担う。

2024/12/9  武田薬品とイスラエルのTEVA、JVの武田テバファーマを国内投資ファンドに売却


伊藤忠商事は、同社グループとの連携やグローバルネットワークを活用し、医薬品の原料等の調達・供給や物流・流通機能の提供、研究開発支援等、医薬品業界において幅広く事業を展開している。

今後、同社の幅広いサプライチェーンの知見・ノウハウと、今回本株式取得を行う持田製薬が有する独自の研究開発力や数々の技術的ノウハウを活用し、アンドファーマの製造・品質管理・供給基盤を強化し、後発医薬品のサプライチェーン強靭化による生産効率及び安定供給体制の向上に取り組んでいくとしている。更に、同社グループが強みとする生活消費分野における消費者接点を起点とした後発医薬品の流通ネットワーク構築等、横連携を通じた新たな事業展開を目指す。

伊藤忠商事は、経営方針「The Brand-new Deal ~利は川下にあり~」のもと、マーケットイン視点でのビジネスモデル構築を進めており、本出資を通じ、後発医薬品の安定供給と品質確保を両立し、医療費適正化への貢献と、より良い医療が提供される社会の実現に努めていくとしている。

一方、持田製薬は、本株式取得を通じたアンドファーマの子会社各社との協業により、同社グループが有するバイオシミラーの開発・事業化ノウハウと、アンドファーマの子会社が有するバイオシミラーの製造能力とのシナジーを創出するとともに、既存品目の製造連携も見据え、コア事業である医薬事業の収益力強化を図る。

新薬メーカーとして社会に新しい価値を提供する新薬への継続的な取り組みおよびバイオマテリアル事業や核酸医薬、細胞医薬といった成長事業への継続的な投資を堅持する中で、本株式取得は、「コア事業の収益力強化」における後発薬・バイオシミラーによる医療経済的価値の提供を具体化した施策の一つと位置付ける。

中長期的には、後発薬・バイオシミラー事業の安定収益基盤を活かして、同社の成長戦略を加速していく好循環を形成していきたいと考えている。

伊藤忠グループの有する原薬調達や流通機能に加え、同社グループが強みとする生活消費分野における消費者接点の活用等により、アンドファーマの子会社各社の事業基盤は今後一層強化されることが期待されるとしている。

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