アルツハイマー病 血液検査で正確診断

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アルツハイマー病については、現状の診断では患者や家族への問診、認知機能を測るテストなどで症状を基に判断する場合が多い。

このためアルツハイマー病と似た症状の病気と見分けられない。

新潟大学が2023年に発表した研究では、アルツハイマー病と診断された患者の約4割に別の病気の可能性があった。

有効な検査技術が確立しておらず、ベテラン医師でも症状が似ているほかの病気と見分けるのは難しい。

高齢化で認知症は増加を続ける。適切な治療には正確な診断が欠かせない。

精緻に診断するにはアミロイドベータやタウを測る必要がある。ただ、陽電子放射断層撮影装置(PET)検査は費用が高い。脳脊髄液を採取する検査は体への負担が大きい。

アルツハイマー病の患者の脳には、たんぱく質「アミロイドβ」がたまった沈着物や、タウタンパク質の繊維状の塊がみられる。

認知機能が衰える数十年前からアミロイドベータの蓄積は始まり、その後にタウが蓄積する。そして神経細胞が徐々に壊され、認知機能障害などが現れる。


患者の病気の進行度を知るためには、脳内のアミロイドベータやタウの蓄積を正確に把握する必要があるが、これまで脳内のタウ量を血液から推定できるバイオマーカーはなかった。

米Washington University School of Medicine, St. Louis, MOなどの研究チームは本年3月、アルツハイマー病の原因物質といわれるたんぱく質「タウ」の脳内での蓄積を血液中の物質から把握できるという診療に変革をもたらすと期待を集める成果を英科学誌 nature medicine に発表した。2025/3/31 Plasma MTBR-tau243 biomarker identifies tau tangle pathology in Alzheimer's disease

研究を主導したのは、同大の特任准教授でエーザイ研究部門の部長も務める堀江勘太氏。

堀江氏らが注目したのは「MTBR(微小管結合領域)タウ243」というタウの断片で、脳内でタウが塊を作る際に一部の構造が壊されると分泌されて血液に漏れ出す。脳内の蓄積と相関があると考えられている。

検証が進めば、新たな診断法として認められる。エーザイが出資する米バイオ企業C2N Diagnostics LLCが開発を進めている。

エーザイは2024年3月6日、米国子会社Eisai Inc.が、C2N Diagnostics LLCによる米国におけるアルツハイマー病の血液診断の実用化ならびに、アクセス、アフォーダビリティ、および利用の拡大に向けた取り組みを支援するため、同社に最大15百万米ドルの出資を決定したと発表した。今回の決定は、2022年8月に発表した米国の実臨床における認知症当事者への血液検査法の活用に関する協働を発展させるもの。

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もう一つの関連物質のアミロイドベータについては、「リン酸化タウ217」などのバイオマーカーが見つかっている。アミロイドベータが脳内に蓄積すると、タウに異常なリン酸化が起こり、リン酸化タウ217が血液に漏れ出す。

富士レビオ・ホールディングスは5月19日、リン酸化タウ217とアミロイドベータの断片比率を測定する血液検査薬について、米食品医薬品局(FDA)の承認を得たと発表した。

https://www.hugp.com/news/202505/20250519_news.pdf

アルツハイマー病の診断を補助する血液検査薬が米国で承認されるのは初めてで、スウェーデンの大学などが複数社の検査薬を比べた研究論文で、富士レビオの検査薬は特定の測定手法では「もっとも高い性能」と評価された。

国内向けは2025年内に医薬品医療機器総合機構に申請する。

正確な診断が実現した後は、それに適した新薬が求められる。患者の段階ごとの治療が実現すれば、無駄が減り、医療費の削減にもつながる。

(日本経済新聞の報道をベースにした)

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