新年度が10月1日に始まる。
毎年のことだが、またまた、米国が政府閉鎖の危機に瀕している。
本年度の予算については、正式予算は成立せず、3月11日に下院が9月30日までのつなぎ予算案を通し、上院は3月14日、下院共和党が可決し上院に送ったつなぎ予算案を可決した。
2025/3/12 米下院、9月末までのつなぎ予算案可決-上院に送付
2025/3/15 米上院、つなぎ予算案を可決、政府機関閉鎖を回避
しかし、9月1日からの新年度の本予算は成立しておらず、このままでは9月1日に政府閉鎖となる。
このため、共和党は9月1日からの暫定予算( Continuing Resolution)を提出した。9月19日に、下院は共和党多数のため通ったが、上院は予算案は60票が必要なため、成立していない。
下院 共和党案 可決 → 上院 可決には60票が必要なため、否決
共和党 民主党 合計 欠員 賛成 216 1 217 反対 2 210 212 棄権
1 2 3 合計
219 213 432 3
共和党
民主党 民主系
無所属合計 賛成 43 1 44 反対 2 44 2 48 棄権 8 8 合計 53 45 2 100
トランプは、上院民主党が国の閉鎖を願っているなど、偽りを含め、民主党の批判をいろいろしている。
実際は、共和党から反対2,棄権8と10人が賛成しておらず、60票は遥かに遠い。
上院は採決後、1週間の休会に入った。休み明けに暫定予算案が可決できなければ、9月1日に政府閉鎖となる。
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政府閉鎖のおそれがあるなかで、与党共和党の議員が反対2、棄権8 というのはなぜだろうか。(全員賛成に回っても60票は無理なので、どうせ否決されるが。)
なぜ与党共和党でも反対・棄権が出たのか。ChatGPTに尋ねた。
上院共和党から反対または棄権する議員がいた理由はいくつか重なっている:
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CR案(Continuing Resolution、暫定予算 or つなぎ予算)が"十分な政策的付加価値"を含んでいない。
一部の共和党員(特に保守派)は、「たとえ短期間であっても、CR に政策的な条件(例えば歳出削減、移民・国境政策の厳格化、医療制度改革など)が含まれるべき」と考えており、現状のCR案はそういった要望を満たしていない、あるいはあまりにも "クリーン" すぎる、と感じている。現状維持(status quo)を延ばすだけでは、不足だという立場。
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予算・歳出の削減を強く求める圧力(党内の右派からの圧力)
共和党内の保守派は政府支出全般を抑えることを重視しており、現行支出レベルをそのまま延長することに抵抗がある。特に非防衛部門などに対するさらなる削減を求めており、現行維持では満足しない議員がいる。
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与野党協調・民主党の政策要求に対する不信・戦略的対立
民主党側は、CR案では触れられていない保険制度の税控除の延長やメディケイドの元に戻すこと、公的放送の復活などを要求している。これらを付け加えることは、共和党内の政策流儀・予算抑制の姿勢と相反する。共和党指導部は、「短期延長」の目的は政府の閉鎖を避けること、予算交渉を行う時間を稼ぐこと、恒久的政策は本予算の過程で議論すべき、という立場を取っている。これに対して、民主党は健康保険など多くの国民生活に関わる部分が「切り捨てられる」ことを懸念しており、政策を伴う調整を求めている。
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上院での60票制(フィリバスター対策)の壁
上院では多くの法案・CR案で「進行させるための動議」には 60 票が必要。与党共和党は上院で多数派とはいえ、議席を53議席しか持っておらず、民主党の協力なしにはこの60票を確保できない。だから、共和党指導部としては「民主党を巻き込んで妥協案を探す」か「共和党内部で強硬派を説得する」が実務的な選択肢になるが、現状の案はどちらの方面の納得も十分ではなかった。
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政治的責任の取り合い・選挙・世論を意識した駆け引き
政府閉鎖になったとき、どの党・どのリーダーが「責任を負うか」が大きな政治問題。共和党指導部は、「これは民主党が拒否している」「民主党が交渉に応じない」と主張したい。反対や棄権することで、「協議なしに耐えるだけの案を押し付けられた」との主張ができる。あるいは、共和党内部で自分の支持基盤(保守派濃厚な地区など)を失わないように、単に与党リーダーに追随するのではなく、慎重な姿勢をとる議員もいる。
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短期間ではあるが安全保障の追加支出部分にも異論がある人がいる
CR案には、議員・裁判所・行政に対する追加の「安全保障」向け支出が含まれている。これを"余分な"支出と見なす議員もおり、その分予算全体の抑制を望む立場から反対する。
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参考 上院の議決
通常の法案や動議はフィリバスター可能で、可決には 60票が必要になる。
特例として「単純過半数」でよいものがある。
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予算決議 (budget resolution)
米上院は2025年2月21日、既に半年が経過している2025会計年度(2024年10月~2025年9月)予算決議案を52対48で可決した。
予算決議案は、予算枠の全体像を示すもので、ここで定められた枠を基に各歳出法案が策定される。
今回可決した予算決議では、政権が重視するテーマのうち、トランプ減税を除いたもので、国境措置の強化、国防費の増額、エネルギー生産の強化に対応する費用を盛り込んでおり、国境措置の強化として今後10年間で1,750億ドル、国防費の増額として同1,500億ドルを充てている。トランプ減税の延長減税措置に関しては、2026年度予算の審議過程で議論し取りまとめる。
2025/2/28 米国の2025会計年度(2024年10月~2025年9月)の予算決議案の審議
「予算決議」(budget resolution) の可決要件
単なる決議 (concurrent resolution) なので、大統領の署名は不要。
上院では 通常の法案と同じく「単純過半数(51票)」で可決可能 。
フィリバスター(議事妨害)も対象外なので、60票の「クロージャー票決」は不要。
「予算決議」が成立した後にできること
予算決議の中で「調整指示 (reconciliation instructions)」が盛り込まれていると、その後の関連法案(例:税制改革、歳出削減、医療保険制度改革など)を 「和解手続き」 に乗せることができる。
和解手続きは 上院でフィリバスターできない
したがって、単純過半数(51票)で可決可能
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和解法案 (reconciliation bills)
和解法案は、アメリカ議会における特別な立法手続き「予算調整 (budget reconciliation)」によって扱われる法案のこと。
通常の法案は上院で フィリバスター(長時間演説による議事妨害) を受ける可能性があり、その場合は採決に進むために 60票 必要になる。
しかし、和解法案は フィリバスターできない 仕組みになっており、単純過半数(51票)で可決可能。和解法案は、もともと
予算赤字削減
歳出削減
税制改正
といった財政関連の調整を迅速に行うために導入された。制限(Byrd Rule)
和解法案は「何でも過半数で通せる抜け道」にならないように、厳しい制限がある。和解法案には次のような条項は盛り込めない。
財政に 直接関係しない政策事項
予算上の影響が 副次的でしかない条項
予算への効果が 10年後に消えるような歳出増・減税
このため、例えば移民政策や環境規制など「財政とは直接関係ない政策」は和解法案に入れられない。
歴史的な活用例
1980年代〜:レーガン政権の歳出削減
1990年代:クリントン政権の財政赤字削減法案
2001・2003年:ブッシュ減税
2010年:オバマ政権の医療保険改革法(オバマケア)修正部分
2017年:トランプ政権の大規模減税(Tax Cuts and Jobs Act)
まとめ
和解法案=予算関連に限り、フィリバスター回避で 51票で成立 できる特別法案
強力なツールだが、財政に関係ない内容は不可
歴代政権が税制改革や医療制度改革で繰り返し活用
なお、下院は出席して投票した議員の過半数 で可決される。
フィリバスター(議事妨害) という制度は 下院には存在しない。
したがって、法案でも予算でも、大統領指名の承認でも、基本はすべて「過半数」で成立する。
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