塩野義製薬、田辺ファーマから筋萎縮性側索硬化症等治療薬エダラボン事業を買収

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塩野義製薬は、2025年12月22日に開催された取締役会において、田辺ファーマが開発・販売する筋萎縮性側索硬化症(ALS)等治療薬エダラボン(日本での製品名「ラジカット」、米国での製品名「Radicava」)の日米を含むグローバルでの全権利の獲得に関する契約締結について決議した。25億ドル(3900億円)で買収する。


田辺ファーマは2025年12月1日に田辺三菱製薬が社名を変更したもの

 2025/2/6 米Bain Capital 、田辺三菱を5100億円で買収  

  2025/7/1にベインキャピタル傘下で新たにスタート

  2025/12/1より商号を「田辺ファーマ株式会社」 に改称


エダラボンは、ALSの進行に関与する酸化ストレスを抑制することで、運動ニューロンの障害進行を遅延させる作用を有するフリーラジカル消去薬である。

国立精神神経センター国府台病院(当時)の吉野 英氏は 、発症原因の一説であるフリーラジカル説に着目し 、2001年に脳梗塞急性期治療薬として承認されたエダラボンが、細胞が傷害される原因の一つであるフリーラジカルを消去し 、細胞を保護する作用を有することから、ALSに有効ではないかと考えた。

このため 、企業に先んじて臨床研究を自ら着手し、更に田辺三菱製薬による 第3相試験で有効性が検証されるまで、ALS専門医として全ての臨床試験に参画し、ALS治療薬としての承認取得へ導いた。


新規筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬としてのエダラボンの研究開発


ALSは進行性の神経疾患であり、根本的な治療法が存在しないアンメットメディカルニーズの高い疾患だが、エダラボンは疾患進行を抑制する数少ない治療選択肢の一つとして期待されており、米国では注射剤に加え、服薬負担を軽減する経口懸濁剤も上市され、ALS患者のQOL向上に寄与している。

エダラボンは、田辺ファーマがALS治療薬として創製・開発し、米国ではタナベファーマアメリカが販売した。

田辺ファーマは2001年から13年間にわたる臨床試験を通じてALS研究を進め、2015年に日本および韓国でRADICUT®として承認を取得、その後、カナダ(2018年10月)、スイス(2019年1月)、インドネシア(2020年7月)、タイ(2021年4月)、マレーシア(2021年12月)、オーストラリア(2023年2月)、ブラジル(2024年2月)で承認を取得した。

RADICAVA® Oral Suspensionはカナダ(2022年11月)、スイス(2023年5月)で承認され、日本ではRADICUT® Oral Suspension 2.1%が2022年12月に承認された。

米国では、エダラボンの注射剤および経口懸濁剤が、合計約2万人のALS患者の治療に使用されている。

エダラボンの経口懸濁剤は、2022年に米国FDAからALS治療薬として承認を取得した。2024年には、静注投与の負担を回避する経口懸濁剤という新たな投与経路を提供し、患者ケアに大きく貢献したことから、FDAより希少疾病用医薬品として排他的承認期間が付与された。

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塩野義は、米国についてはタナベファーマアメリカがRadicavaに関する事業会社を新設し、塩野義の米国グループ会社Shionogi Inc.が完全子会社化する。世界での知的財産や販売権とともに、営業人材や販売ノウハウを引き継ぐ。

本契約に基づき、対価として、手続き完了時に総額2,500百万ドルを米国グループ会社Shionogi Inc.を通じて田辺ファーマに支払う。加えて、一定の条件を満たした場合には、将来の売上に応じたロイヤリティーを支払う。

今後、米国においては、Radicava事業会社がShionogi Inc.の完全子会社として、速やかに事業を開始する。


ラジカヴァは日米のほか欧州や東南アジア、南米でも販売しているが、米国での売り上げが9割以上を占める。

日本を含む米国以外の地域については、流通業務の移管および製造販売承認の承継時期について今後検討し決定する。

当該事業は年間売上1,000億円以上であり、2026年度以降の売上収益および利益へ継続的に貢献する見通し。

塩野義は世界で1000億円以上を売り上げる「ブロックバスター」を手に入れることになるが、それだけではなく、世界最大の医薬品市場である米国の営業基盤を手に入れ、成長の柱に据える自社開発の希少疾患薬を投入する。

ALSをはじめとする希少疾患向け医薬品は対象患者が限られる一方、競合も少ない。薬価が比較的高く維持されやすく、開発に成功すれば先行者利益を得やすい分野である。

なかでも米国市場は希少疾患薬に対する制度的な保護が厚い。臨床試験(治験)の実施や承認後の普及において大きな役割を果たす患者団体が整っており、販売拡大につなげやすい。塩野義は買収で、患者団体との関係性も田辺ファーマから引き継ぐ。

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