徴用工原告の1人が韓国政府の解決策受け入れに転換 

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日本による強制徴用被害を象徴する人物である梁錦徳さん(95)が10月23日、尹錫悦政権における強制徴用解決策「第三者弁済案」を受け入れた。


梁錦徳さんは同日、韓国行政安全部の傘下機関「日帝強制動員被害者支援財団」で、2018年の大法院の強制徴用確定判決に伴う賠償金と遅延利息を受け取った。

1944年、日本による強制徴用により三菱重工業名古屋航空機製作所で重労働に当たった梁錦徳さんは、1992年から韓日両国を行き来して強制徴用被害を証言してきた。

梁錦徳さんはこれまで、日本戦犯企業ではなく民間の寄付金形式による財団支援金で被害者への賠償金を支給する尹政権の解決策について「過ちを犯した人がいるのに、謝罪する人は別なのか。そんなお金は受け取れない」と反対してきた。


韓国大法院は2018年、日本製鉄や三菱など強制徴用を行った日本企業の損害賠償責任を認める判決を下した。

韓国大法院は2018年10月、日本製鉄強制徴用の被害者が出した損害賠償訴訟で日本製鉄の上告を棄却(原告の請求認容、当社敗訴)した。日本製鉄(旧新日鉄住金)に対し、戦時中に日本の工場に動員された4人の韓国の元労働者に1人あたり 1億ウオン(約1000万円)の賠償を命じたソウル高裁判決が確定した。

韓国大法院は2018年11月29日、三菱重工業の上告を棄却し、同社に対し、第2次世界大戦中に同社の軍需工場で労働を強制された韓国人の元徴用工らに対する賠償支払いを命じる判決を下した。

1件は、元女子勤労挺身隊員の女性4人と親族1人に対し、それぞれ最大で1億5000万ウォン(約1500万円)の賠償を命じた。この女性らは1944年、名古屋市にあった三菱重工の航空機製作工場で、無償労働を強制されたと話している。
もう1件の訴訟では、原告6人(うち生存者2人)にそれぞれ8000万ウォン(約800万円)の賠償支払いが命じられた。

日本は「1965年の韓日請求権協定により個人請求権は消滅した」という従来の見解を固守し、韓日関係が悪化した。

これに対して尹政権は2023年3月、行政安全部傘下の同財団が民間の寄付金を募って大法院賠償判決を受けた被害者に賠償金を支給できるようにする第三者弁済案を解決策として打ち出した。その財源には1965年の韓日請求権協定で支援を受けた大手製鉄会社ポスコが寄付した40億ウォン(現在のレートで約4億4000万円)が基になっている。

2023/3/9 韓国、元徴用工解決策を発表


これまで大法院で賠償判決を受けた被害者15人のうち11人が1人当たり2億-3億ウォンの判決金と遅延利息を受け取りした。そのうち生存者は1人だった。

韓国政府の解決策を拒否した4人のうち、生存者は梁錦徳さんと李春植さん(104)の2人だったが、この日、梁錦徳さんが政府の解決策に同意した。残る李春植さんも近く、財団から判決金を受け取るという。

付記

韓国政府関係者は10月30日、原告の李春植さんが政府傘下の財団から賠償金相当額と遅延利子を受け取ったと明らかにした。

2018年に韓国最高裁で日本企業に対する勝訴が確定した原告のうち、存命する2人がいずれも政府の解決策を受け入れたことになる。

勝訴が確定した原告は15人。11人の原告の遺族が解決策を受け入れたが、2人の原告側は拒否している。 

原告の支援団体は同日、梁さんが認知症を患っており、本人の意思による決定なのか不明だとする立場を表明した。

梁錦徳さんの賠償金受け取りは現在裁判中の他の強制徴用被害者たちにも影響を及ぼすものとみられる。

2018年の大法院判決以降、同様の強制徴用賠償訴訟は現在、韓国全国で約80件行われており、原告は約1200人に達する。韓国政府はこのうち200-300人が勝訴する可能性があるとみている。

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