元徴用工問題で、韓国の裁判所が日本企業に支払いを命じた賠償金の肩代わりを行う韓国政府傘下の財団に、大韓商工会議所と韓国経済人協会が、それぞれ15億ウオン(約1億5千万円)を寄付した。
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2023年初めの時点で、新日鉄住金(現・日本製鉄)と三菱重工業とを相手取った3件が韓国最高裁で判決が確定していた。
韓国大法院(最高裁判所)は2018年10月、日本製鉄強制徴用の被害者が出した損害賠償訴訟で被害者の勝訴を確定した。日本製鉄(旧新日鉄住金)に対し、戦時中に日本の工場に動員された4人の韓国の元労働者に1人あたり約1000万円の賠償を命じた。
大法院判決(11対2の決定)は、戦時中に行われた日本統治下の朝鮮半島から日本本土の工場などへの動員は「日本政府の不法な植民地支配や、侵略戦争の遂行と結びついた日本企業の反人道的な不法行為」と認定していた。
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韓国大法院は2018年11月29日、三菱重工業に対し、第2次世界大戦中に同社の軍需工場で労働を強制された韓国人の元徴用工らに対する賠償支払いを命じる判決を下した。大法院は、損害賠償訴訟2件について、三菱重工業の上告を棄却し、2件の訴訟の原告に対し、1人あたり最大で1億5000万ウォン(約1500万円)の支払いを命じた。
しかし、日本政府は、元徴用工問題は日韓請求権協定によって「請求権問題は完全かつ最終的に解決された」という立場で一貫している。
日韓請求権協定。
第一条 日本が韓国に対して無償3億ドル(生産物、役務を10年にわたり供給)、有償2億ドル(長期低利の貸付)を供与する。
第二条
1 両締約国は,両締約国及びその国民(法人を含む) の財産,権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、1951年9月8日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第四条(a)に規定されたものを含めて,完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する。 (中略)3 2の規定に従うことを条件として,一方の締約国及びその国民の財産,権利及び利益であつてこの協定の署名の日に他方の締約国の管轄の下にあるものに対する措置並びに一方の締約国及びその国民の他方の締約国及びその国民に対するすべての請求権であつて同日以前に生じた事由に基づくものに関しては,いかなる主張もすることができないものとする。
このため、日本製鉄と三菱重工業は、日本政府の見解をもとに、支払いに応じていない。
大邱地裁浦項支部は2021年12月30日、日本製鉄が韓国内に所有する資産、POSCOとの合弁会社「PNR」の株式の売却命令を出した。
日本側は現金化されれば国交正常化の前提が崩れ、関係修復が困難になると警鐘を鳴らしてきたが、韓国の司法は司法の立場を推し進めた。
最後の段階で、韓国の朴振外相は2023年3月6日、元徴用工問題の解決策を正式に発表した。
日本側の主張を受け入れ、かつ、韓国の司法の決定を尊重し、韓国最高裁が日本企業に命じた賠償金の支払いを韓国の財団が肩代わりする。
2023/3/9 韓国、元徴用工解決策を発表
1965年の日韓請求権協定を通じ日本から経済支援を受けた韓国鉄鋼大手ポスコは2023年3月15日、元徴用工を支援する韓国政府傘下の財団に40億ウォンを拠出すると表明した。
その後、同社は2024年9月19日にさらに20億ウォンを追加拠出し、合計で60億ウォンとなった。ポスコは、被害者の高齢化を考慮し、迅速な支援が必要と判断したため、追加拠出を決定したと説明している。
元徴用工への賠償を命じる判決は相次いで確定している。日本企業からの賠償を求めて財団からの支払いを頑固に拒否してきた原告(およびその遺族)も次々に財団からの支払いを受け入れており、財団の資金も残り少なくなっている。
このため今回、大韓商工会議所と韓国経済人協会が、それぞれ15億ウオン(約1億5千万円)を寄付したもの。
財団関係者は「今回の寄付で新たに15人前後の被害者に賠償金を支払える見通しだ」と話した。
財団は日本企業からの寄付にも期待を寄せているが、現時点で日本企業からの資金提供は確認されていない。
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