高浜原発1号機 60年運転の管理計画 初の認可

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原子力規制委員会は3月27日、福井県にある関西電力高浜原子力発電所1号機について、本年6月6日に施行される新たな制度(2023年5月31日に参院本会議で可決のGX脱炭素電源法 )のもとで、運転開始から60年まで運転するための管理計画を全国で初めて認可した。

 新制度:

規制委員会は10年ごとに検査する。

原則は「運転期間は40年、延長期間は20年」だが、予見しがたい休止期間の範囲で60年超を認める。

予見しがたい休止期間:東日本大震災発生後の新規制基準制定による審査やその準備期間、裁判所による仮処分命令その他事業者が予見しがたい事由によって生じた運転停止期間など

高浜原発1号機は、昨年11月以降、国内の原発で初めて50年を超えて運転しているが、原子力規制委員会は2023年5月31日に法案が議会を通過した新たな制度のもとで申請された運転開始から60年までの管理計画を3月27日に認可した。

GX脱炭素電源法 に基づき、同法の施行日前においても申請することができる。

新たな制度で60年までの運転が認められるのは全国で初めて。

原発の運転期間は運転開始から60年以降も予見しがたい休止期間の範囲で延長できるように法律が改正された。高浜原発1号機が60年以降運転を続けるには、再度、管理計画を提出し認可を受ける必要がる。

また、3月27日には関西電力美浜原発3号機の運転開始から50年までの管理計画も認可された。

なお、運転開始から40年を超えた関西電力美浜原発3号機と高浜原発1、2号機を稼働し続けるのは危険だとして、愛知、福井両県などの住民が国に運転延長の認可取り消しなどを求めた訴訟の判決で、名古屋地裁は3月14日、「原子力規制委員会の判断に不合理な点はない」として、原告の請求を棄却した。

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経緯:

従来のルール:

運転開始から40年を迎える原発は、規制委の運転延長の審査に合格した場合に限り1回のみ最長20年の延長が認可される。
また、これとは別に、運転開始から30年以降の原発は、10年ごとに「高経年化対策」も実施されている。

2022/12/21

原子力規制委員会は2022年12月21日、原子力発電所の運転開始から30年以降10年以内ごとに繰り返し運転を認可する新ルール案を了承した。現行ルールを上回る「60年超」運転が可能になる。 

2023/1/4 原発運転期間延長 

2023/2/13

原子力規制委員会は2023年2月13日夜に臨時の委員会を開き、運転開始から60年を超える原子力発電所の安全規制の新たな制度案と原子炉等規制法の改正条文案を多数決で了承した。

石渡明委員が反対するなか、山中伸介委員長と他の委員の計4人が賛成した。政府は今国会に関連法案の提出をめざす。

2023/2/10 原子力規制委員会、原発60年超運転に向けた規制制度案の承認持ち越し → 承認 

2023/2/10

「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定された。

気候変動問題への対応に加え、ロシア連邦によるウクライナ侵略を受け、国民生活及び経済活動の基盤となるエネルギー安定供給を確保するとともに、経済成長を同時に実現するため、主に以下二点の取組を進める。

① エネルギー安定供給の確保に向け、徹底した省エネに加え、再エネや原子力などのエネルギー自給率の向上に資する脱炭素電源への転換などGXに向けた脱炭素の取組を進めること。

② GXの実現に向け、「GX経済移行債」等を活用した大胆な先行投資支援、カーボンプライシングによるGX投資先行インセンティブ、新たな金融手法の活用などを含む「成長志向型カーボンプライシング構想」の実現・実行を行うこと。

2023/2/28

政府はエネルギー関連の5つの法改正案を閣議決定。これらをまとめた束ね法案「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案」(GX脱炭素電源法)として、通常国会に提出された。

GX脱炭素電源法のうち、原子力に関しては、

原子力発電の利用に係る原則の明確化(原子力基本法)
高経年化した原子炉に対する規制の厳格化(原子炉等規制法)
原子力発電の運転期間に関する規律の整備(電気事業法)
円滑かつ着実な廃炉の推進(再処理等拠出金法)

が柱となっている。

原子力基本法の改正では、従前の条文に対し、目的、基本方針の中に、それぞれ「地球温暖化の防止」、「福島第一原子力発電所事故を防止できなかったことを真摯に反省」との文言が追加され、安全最優先、原子力利用の価値を明確化。さらに、廃炉・最終処分などのバックエンドプロセスの加速化、自主的安全性向上・防災対策に係る「国・事業者の責務」について、新たに条文立てされている。

高経年化炉の規制については、関連法案の成立を前提として既に原子力規制委員会で技術的検討が開始されているが、事業者に対し、
①運転開始から30年を超えて運転しようとする場合、10年以内ごとに設備の劣化に関する技術的評価を行う、
②その結果に基づき長期施設管理計画を作成し、規制委員会の認可を受ける――ことを義務付ける。


運転期間については、原子炉等規制法から経済産業省が所管する電気事業法に移され、
これまで通り「運転期間は40年」、「延長期間は20年」の原則を維持

安定供給確保、GX(グリーントランスフォーメーション)への貢献、自主的安全性向上や防災対策の不断の改善につき、経済産業相の認可を受けた場合に限り延長を認め、
「延長しようとする期間が20年を超える」場合は、事業者が予見しがたい事由(東日本大震災以降の安全規制に係る制度・運用の変更、司法判断など)に限定して運転期間のカウントから除外することで、実質的に60年超運転を可能とする。

2023/4/27

衆議院は4月27日の本会議で、電気事業法、原子炉等規制法、再処理等拠出金法、再エネ特措法および原子力基本法の改正案を束ねたGX脱炭素電源法案(脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案)を賛成多数で修正可決した。2025年6月6日に施行。

同法を巡っては自民、公明、日本維新の会、国民民主の4党が衆院通過前に規制委の審査の効率化を求める文言を付則に加えた。

原発の立地地域だけでなく「電力の大消費地である都市の住民」の信頼を確保し、協力を得ることを国の責務とする内容も修正して盛り込んだ。

2023/5/31

GX脱炭素電源法が成立、原発運転「60年超」可能に

原子炉等規制法、電気事業法、原子力基本法など5つの法律を改正する束ね法案

30年を超えて運転する原子炉については、最長10年ごとに劣化状況を評価し、原子力規制委員会の認可を受けることを義務付ける

30年を超えて運転する原子炉については、最長10年ごとに劣化状況を評価し、原子力規制委員会の認可を受けることが義務付けられている。
原子炉規制委員会の審査など
予見しがたい休止期間は運転期間に含めないため、実質的に運転期間(60年)を延長することができる。

2023/6/1 GX脱炭素電源法が成立、原発運転「60年超」可能に 

2025/3/27

高浜原発1号機が初の50年超運転認可...原子力規制委の「長期施設管理計画」

原子力規制委員会は、関西電力高浜原子力発電所1号機(福井県)について、50年を超えて最長60年まで運転するのに必要な「長期施設管理計画」を認可した。
6月に全面施行する「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法」に基づく新制度に対応するもので、50年超運転が認可されたのは初めて。

現行制度では、原発の運転期間を「原則40年、最長60年」としており、高浜1号機は2016年に60年までの運転を既に認められていた。国内で運転中の原発で最も古く、昨年11月に運転開始から 50年を迎えた。

2025/6/6

GX脱炭素電源法、2025年6月6日に 全面施行

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