Googleが小型原子炉建設を支援-新興企業 Kairos Powerと電力購入契約

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Googleは10月14日、米国の小型モジュール型原子炉(SMR)スタートアップのKairos Powerと電力購入契約を結んだと明らかにした。2035年まで50万キロワットの電力を調達する。これは、AI データセンターキャンパス1カ所に電力を供給できる規模である。

Kairos Powerは、溶融塩冷却技術を使用するSMRを建設する計画で、送電網への供給開始後、Googleが電力を購入する。

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米エネルギー省は2020年12月、以下5社のチームを支援先として選定した。

開発費 DOE支援
Kairos Power フッ化物塩冷却高温炉(KP-FHR)の開発 7年間で総額6億2,900万ドル 3億300万ドル
Westinghouse Electric Company ヒートパイプ冷却炉:eVinci超小型炉 7年間で総額930万ドル 740万ドル
BWXT Advanced Technologies TRISO燃料及びSiCマトリックスを利用するBWXT新型原子炉(BANR) 7年間で総額1億660万ドル 8,530万ドル
Holtec Government Services 軽水炉(PWR):Holtec SMR-160 7年間で総額1億4,750万ドル 1億1,600万ドル
Southern Company Services 溶融塩化物炉実験(MCRE) 7年間で総額1億1,300万ドル 9,040万ドル


米原子力規制委員会(NRC)は2023年12月12日、Kairos Powerが開発しているフッ化物塩冷却高温炉「KP-FHR(Kairos Power Fluoride salt-cooled High temperature Reactor」の実証炉「Hermes」(熱出力3.5万kW)について、第4世代の原子炉としては初の建設許可を発給すると発表した。

Kairos Powerは、テネシー州オークリッジにある米エネルギー省(DOE)の「東部テネシー技術パーク」に建設する計画で、2024年の着工に向けてサイトの最終準備作業を進め、2026年までに同炉を完成させる方針。

Kairos Powerはは2024年7月30日、米エネルギー省の「東部テネシー技術パーク」内の建設予定サイトで熔融塩実証炉「Hermes」の土木工事を開始した。

同社が最終的に建設を目指している商業規模の「KP-FHR」は熱出力32万kW、電気出力14万kWで、冷却材としてフッ化リチウムやフッ化ベリリウムを混合した熔融塩を使用。燃料にはTRISO燃料(ウラン酸化物を黒鉛やセラミックスで被覆した粒子型の燃料)を用いるとしており、同炉では固有の安全性を保持しつつ電力と高温の熱を低コストで生成可能になるという。

「Hermes」は「KP-FHR」の熱出力を約10分の1に縮小した非発電炉となる予定。Kairos Powerは「KP-FHR」の商業化に向けた段階的アプローチの重要ステップとして、クリーンで安全かつ安価な核熱の生産能力を「Hermes」で実証する。

NRCは現在、「Hermes」の隣接区域で同炉を2基備えた実証プラント「Hermes2」を建設するための許可申請書を審査中で、Kairos PowerはこれらのHermesシリーズで得られる運転データやノウハウに基づき、技術面や許認可面、建設面のリスクを軽減。「KP-FHR」のコストを確実化し、2030年代初頭に商業規模の「KP-FHR」の完成を目指すとしている。

Kairos Powerは「Hermes」の建設許可申請書を、2021年9月と10月の2回に分けてNRCに提出した。NRCは今年6月に同炉の安全性評価報告書(SER)最終版を完成させたのに続き、今年8月には環境影響声明書(EIS)の最終版を取りまとめた。

「Hermes」の建設計画に対しては、テネシー峡谷開発公社(TVA)が2021年5月に設計、許認可、建設、運転等でKairos Powerに協力すると発表。テネシー州政府やオークリッジ市、東部テネシー経済審議会なども、同計画への支持を表明している。

Kairos Powerのヘイスティングス副社長は、「過去50年以上の間に、米国で水以外の冷却材を使用する原子炉の建設が認められたのは初めて」と指摘。「Hermes」の完成後は運転認可の取得が別途必要になることから、「申請前の協議で築いた信頼関係に基づきNRCとは今後の審査でも協力していきたい」と述べた。 

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Kairos Power FHR (KP-FHR) は、ペブル形状の TRISO 燃料(ウラン酸化物を黒鉛やセラミックスで被覆した粒子型の燃料)と低圧フッ化物塩冷却剤を組み合わせた新しい先進的な原子炉技術で、効率的で柔軟な蒸気サイクルを使用して、核分裂熱を電気に変換し、再生可能エネルギー源を補完する。


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次世代原子炉ではNuScale Powerの小型モジュラー炉が注目されていた。

米オレゴン州の原発メーカーNuScale Power は2017年1月12日、開発を進めてきた次世代原子炉の小型モジュラー炉(SMR)を使った初めての発電所を建設・運転するための認可申請を米原子力規制委員会(NRC)に提出した。

発電所の所有者は
Utah Associated Municipal Power Systems で、アイダホ国立研究所(Idaho National Laboratory )内に建設され、操業はEnergy Northwestが担当する。

IHIは2021年5月27日、NuScale Power, LLCへ出資し、日揮とともにSMR事業に参画すると発表した。


しかし、
NuScale Power は2023年11月8日、米西部アイダホ州での小型原発の建設計画を中止すると発表した。

実現すれば米国初の案件となるはずだったが、インフレや金利高で建造費などが高騰しており、経済性が見込めなくなった。

2021/5/31 日揮とIHI、小型モジュール原子炉事業に参画

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