中国発インターネット通販「Temu」が米国のサイトで、中国から送る一部商品の価格を2倍以上に引き上げた。 対象は注文を受けた後に中国から米国の消費者宅に直接配送する商品。
これまではいわゆるDe minimis ruleに基づき課税対象外だった 中国から郵送される800ドル以下の小包が5月2日以降、課税される。
4/29以降に受注したものは、現地で出荷し、米国で通関するのは5/2以降になるので、課税を前提に値上げした。
付記
また、中国から郵便で送られる800ドル以下の荷物については、荷物の価値の120%、もしくは1個当たり100ドル(6月以降は200ドル)が課税される。
米郵便公社は関税徴収には関与せず、航空会社や船舶運航会社が中国側の配送業者や郵便当局と連携して関税を支払い、商品が中国・香港から発送される前に証明書を提示する必要がある。
その後、米中交渉の妥結に伴い、5/14 以降、下記の通り変更
変更後:中国から郵便で送られる800ドル以下の荷物については、荷物の価値の54%、もしくは1個当たり100ドル(6月以降も100ドル)が課税される。
TemuやSHEIN(シーイン)といった新興の通販会社が米国で急成長を遂げた背景には、一世紀近くにわたるこの抜け穴の存在がある。米税関・国境警備局によると、米国への「デミニミス」小包の数は2024年度に14億個と、22年度の約2倍に増えた。
今後、800ドル以下の小包も課税されるため、TemuやSHEINなどにとって打撃となる。 このため、新しく課税される税額を価格に上乗せする。
Temu やSHEINは販売業者なので、追加コストを自ら負担して販売することはありえない。外国のメーカーが追加コストを負担するかどうかは、そのメーカーの判断による。まずは各社の値上げ宣言で販売がどうなるか(需要家が追加コストを負担して高値で買うか、買うのを諦めるか、少々劣る代替品で我慢するか、等々)結果を見たい。
トランプ大統領による関税の大幅引き上げが早速、米国消費者に「値上げ」という形で影響を与えることとなった。トランプ大統領は関税収入を所得税減税で米国民に還元するとしているが、最終的にどんな形で米国経済に影響を与えるのか、注目される。
付記
アマゾンはTemu やSHEINに対抗して2024年11月に20ドル以下(大半が10ドル以下)の幅広い商品を取りそろえたサイト Amazon Haul を開設した。
大半が中国からの輸入品のため、 今回、これらについて対中関税による価格アップ分を明示することを決めた。
しかし、これを知った米政権側が「政権に敵対的だ」と猛反発し、大統領報道官が記者会見で批判、トランプ大統領もアマゾン創業者のJeff Bezosに電話して懸念を伝えた。
このため、アマゾンはこれを取りやめた。
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トランプ大統領は4月2日、中国からの輸入に対して非課税基準額(De minimis ;ラテン語で「些細なこと」という意味)ルールの適用を停止する大統領令を発表した。
これまで関税支払いが免除されていた800ドル以下の少額貨物に対して、5月2日以降、関税が課されることになる。
トランプ政権はフェンタニルの流入阻止などを理由に、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき、中国原産品に対して20%の追加関税を課している。
同措置を定めた大統領令では、輸入申告額が800ドル以下の少額貨物の輸入に対して、関税支払いなどが免除されるデミニミスルールの適用停止も定められていたが、通関上の混乱などがみられたことから、「適用される関税収入を完全かつ迅速に、処理および徴収するための適切なシステムが整っていることを商務長官が大統領に通知した時点」まで、一時的にデミニミスルールの適用を認めていた。
今般、商務長官が、関税を徴収するための適切なシステムが整ったことを大統領に報告したことから、次の措置を執ると発表した。
- 米国東部時間5月2日午前0時1分以降に通関された中国または香港で生産された800ドル以下の製品に対して関税を課す。
- 国際郵便ネットワークを通じて中国または香港から輸送された場合、関税率は、輸入申告価格の30%の従価税、または郵便物1件につき25ドルの重量税(6月1日午前0時1分以降は郵便物1件につき50ドル)が適用される。
* ChatGPTに確認したところ、通常この表現がされた場合には、"whichever is higher"(いずれか高い方) という意味になる。
- 大統領令が発表された日から90日以内に、商務長官は米国通商代表部(USTR)代表と協議の上、本措置が米国の産業、消費者、およびサプライチェーンに与える影響と必要な追加措置について大統領に報告する。これには、マカオに対してデミニミスルールの適用停止を行うべきか否かについての勧告も含まれる。
なお、商品の価値が100ドル以下の贈答品、商品の価値が200ドル以下であり個人または家庭用で米国に入国する人物が携行している場合は、これまでどおり De minimis ruleが適用される。
中国以外の国に関しては「対応できるシステムができ次第」 De minimis ruleは廃止される。
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Temuは、商品代金に加えてこうしたコストを支払うよう、顧客に求めている。
Temuのベストセラーリストに掲載されている中国から発送された14商品は、税金が商品の価値を上回っていた。例えば、19.49ドルの電源タップは、28日時点で商品価格の1.41倍にあたる27.56ドルの輸入コストがかかっている。
Bloomberg によるTemuのベストセラー14品目の価格と追加関税コストは下記の通りで、単純平均で追加コストは価格の1.24倍となり、全て転嫁すると、価格は従来の価格の2.24倍になる。
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