富士レビオ、米国でアルツハイマー病の診断補助用の「血液による体外診断用医薬品」の承認取得

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富士レビオ・ホールディングスは5月19日、傘下の Fujirebio Diagnostics, Inc. が、アルツハイマー病の診断補助を目的として、血漿中の 217 位リン酸化タウ蛋白(pTau217) と β-アミロイド 1-42 の比率を測定する検査試薬「Lumipulse G pTau217/ß-Amyloid 1-42 Plasma Ratio」について、FDAより承認を取得したと発表した。全自動化学発光酵素免疫測定システム「ルミパルス G1200」で使用する。

本試薬は、アルツハイマー病の診断補助を目的として、FDA から承認された初めての血液用体外診断用医薬品となる。

日本での承認申請については8月にもデータを提出、欧州では年内に手続きに入る計画。

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アルツハイマー型認知症の原因は未だ解明されていないが、進行に伴っていくつかの特有の病変が見られる。

例えば、神経細胞の外側では「アミロイドβ」が蓄積して老人班を形成し、神経細胞の中では「タウタンパク」が蓄積してタンパク質が糸くず状に変化したようなもの(神経原繊維変化)が見られるようになる。


本試薬は、認知機能低下の症状を有し、アルツハイマー病等が疑われる 55 歳以上の人を対象に、脳脊髄液中のβ-アミロイド 1-42 および β-アミロイド 1-40 を測定し、その比率を評価することで、アルツハイマー病の特徴のひとつとされる脳内アミロイドβの蓄積状態の把握の補助として用いられる。

これまで陽電子放射断層撮影(PET)が診断に使用されてきたが、費用と時間がかかるほか放射線を利用するため、患者の負担が大きい。また、脳脊髄液中のアミロイドベータやリン酸化タウ蛋白の量を測定することで病態を推定する 腰椎穿刺(脳脊髄液検査)はいろいろなリスクを伴う。

それらに対し、この新しいルミパルス検査は、単純な採血のみを必要とする。検体採取における被検者への侵襲性を低減させるとともに、簡便に検査を行えることから、より広く検査の機会を提供できるものとして期待されている。


同社は、脳脊髄液中の β-アミロイド 1-42 と β-アミロイド 1-40 の比率を測定する検査試薬について、2022 年5 月にアルツハイマー病等による認知機能低下の診断補助を目的とした米国で初めての体外診断用医薬品として FDA の承認を取得した。

今回の検査試薬「Lumipulse G pTau217/ß-Amyloid 1-42 Plasma Ratio」は、これに続くアルツハイマー病の診断補助を目的とした血漿中のバイオマーカーを測定する体外診断用医薬品として米国で初めて承認された。

FDA より Breakthrough Device の指定を受け、2024 年9 月に承認申請をしていたもの。今後、上市準備が整い次第、本試薬の販売を開始する予定。

FDAは認知障害を有する成人の499の個々の血漿サンプルのデータを評価し、つぎのように述べている。

この臨床試験では、陽性結果を有する個人の91.7%がPETスキャンまたは脳脊髄液検査結果によるアミロイドプラークの存在を有し、陰性の個人の97.3%がアミロイドPETスキャンまたは脳脊髄液検査結果が陰性であった。

検査を受けた499人の患者のうち、ルミパルスG pTau217/β-アミロイド1-42血漿比の結果が不確定なものは20%未満であった。

これらの知見は、新しい血液検査が認知障害を有する患者における検査時のアルツハイマー病に関連するアミロイド病理の有無を確実に予測できることを示している。

ルミパルスG pTau217/ß-アミロイド1-42血漿比に関連するリスクは、主に偽陽性および偽陰性の検査結果の可能性である。

この検査試薬は、認知機能低下の兆候や症状を訴えて専門の医療機関を受診した患者を対象にデザインされたものであり、結果は、他の臨床評価とあわせて慎重に解釈すべきである。

FDA医療機器・放射線保健センターのMichelle Tarver所長は、「米国では約700万人がアルツハイマー病に罹患しており、この数は、今後約1300万人に増加すると予測されている。今回の承認は、アルツハイマー病の診断にとって重要な一歩であり、米国の患者にとって、より早期の診断が容易になり、より身近なものとなる可能性がある」と述べ ている。


富士レビオは1950年に日本で創業し、1966年に世界初の梅毒検査製品「梅毒HA抗原(TPHA)」の製品化に成功して以来、世界の臨床検査薬業界にイノベーションをもたらす研究開発、製造、マーケティングに携わってきた。

米国のCentocor Diagnostics、スウェーデンのCanAg Diagnostics、ベルギーのInnogenetics等、国内外のIn Vitro Diagnostics (体外診断用医薬品)を開発・製造・販売おする企業を傘下に収め、さまざまなノウハウを蓄積し専門性を強化し続けてきた。

このような臨床検査薬市場における専門性と経験を礎とし、同じグループの一員で世界有数のラボラトリーを有する㈱エスアールエルの臨床検査に関するリソースやノウハウを最大限活用するなど、グループ一体となった強力な体制を整えている。


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