日本統治期に強制労働させられたとして、韓国人元徴用工の男性が三菱重工業に損害賠償を求めた訴訟の控訴審で、ソウルの裁判所は5月9日、時効を理由に請求を棄却した一審判決を覆し、1億ウォン(約1060万円)の支払いを命じる判決を出したことが6月7日に明らかにされた。
原告の男性は107歳で2019年に提訴した。賠償請求権の消滅時効が成立するかどうかが争点となっており、2022年の一審判決では訴えを退けられたが、控訴審では2023年の最高裁の判断を基に時効が成立していないと認められた。
徴用工訴訟について、日本政府は1965年の日韓請求権協定で解決済みとの立場だが、韓国最高裁は2012年、「個人の請求権は協定で消滅していない」と判断し、差し戻し審を経て2018年に日本企業敗訴が確定した。
韓国の民法は、不法行為に伴う損害賠償について「民法上の損害賠償請求権は、加害者が不法行為を行った日から10年、もしくは不法行為による損害と加害者を被害者が知った日から3年が過ぎると消滅する」と規定している。
韓国最高裁が個人の請求権は日韓請求権協定で消滅していないと判断した2012年と、それが確定した2018年のどちらを起点とみるか、下級審の判断が分かれたが、最近は韓国の裁判所が時効を理由に訴えを退けるケースが相次いだ。
本件では原告は2019年に提訴しているが、一審判決は「最高裁が個人の請求権は消滅していないと判断した2012年が時効の起算点」とし、消滅時効が成立するとした。
今回の控訴審では最高裁の全員合議体は次の通り判断した。
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最高裁の2012年の差戻し判決では、権利の法的な存在は認めたものの、実際には法的に争える状態に至っていなかった。
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2018年判決で「個人の請求権が消滅していない」と明確にされたことにより、 権利行使が本格的に可能となった。
このため、原告が主張したように2012年の最高裁判決は消滅時効の起算点とはならず、起点は「被害者が権利行使可能になった時点」、即ち2018年10月30日の最高裁全員合議体による判決である。
上記により、2019年に提訴された事案は、2018年10月30日の判決から3年が経過しておらず、時効成立を否定した。
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