中国有人宇宙事業弁公室(CMSA)によると、中国は6月17日、酒泉衛星発射センターで有人宇宙船「夢舟」のゼロ高度(地上での)緊急脱出飛行試験を成功裏に実施した。
中国の有人月探査プロジェクトの開発において新たな重要なブレークスルーを達成したことを示している。
テストでは、発射台にロケットではなく夢舟のみが設置され、固体燃料ロケット脱出エンジンを約20秒間噴射した。
「夢舟」の緊急脱出エンジンが正常に作動。①船体と脱出モジュールのコンビネーションが固体燃料エンジンの推進力で空中に打ち上げられ、約20秒後に所定の高度に到達した後、②帰還モジュールと脱出モジュールが安全に分離し、③パラシュートが正常に展開された。帰還モジュールはエアバッグ緩衝方式により試験落下区域の指定エリアに無事着陸し、試験は成功した。
緊急脱出システムは有人飛行ミッションにおける重要な安全確保手段であり、緊急故障発生時に宇宙飛行士を乗せた帰還モジュールを危険区域から退避させ、安全に地上へ帰還させることができる。
「夢舟」は、中国が将来の有人宇宙飛行ミッションに向けて完全に独自開発した次世代の有人宇宙往還機であり、モジュール化設計を採用することで最大7名の宇宙飛行士が搭乗可能で、その性能は国際的な先進レベルに達している。
次のステップとして、夢舟は長征ロケットで高高度に運ばれ、飛行中の脱出テストを実施する。中国は夢舟の打ち上げのために「長征10号」ロケットを開発中で、これは月着陸船「攬月」と連携して、地球低軌道(LEO)や月周回軌道を飛行する。
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中国有人宇宙プロジェクト弁公室は2024年2月24日、中国で計画されている有人月探査ミッションで使用される次世代有人宇宙船と月着陸船の名称が決定したことを発表した。
次世代有人宇宙船は「夢舟(むしゅう)」と命名された。
夢舟は①有人月探査ミッションで使用される月面着陸ミッション用(クルー3名)と、②宇宙ステーションミッションで使用される地球近傍用(クルー7名)の2種類が開発される予定で、このうち月面着陸ミッション用のバージョンは「夢舟Y」と呼ばれてい る。
月着陸船は毛沢東の詩「可上九天攬月(天に昇り月をつかみとる)」に由来する「攬月(らんげつ)」と命名された。
攬月は2名の宇宙飛行士が月周回軌道から月面に着陸し、再び月周回軌道へ戻るために使用される。
CMSAによると、有人月探査ミッションでは最初に攬月着陸船が打ち上げられて月周回軌道に投入される。
続いて宇宙飛行士を乗せた夢舟宇宙船が打ち上げられ、月周回軌道で攬月とドッキングし、攬月に移乗した宇宙飛行士は夢舟から分離して月面へ着陸し、月面活動を行う。
活動を終えた宇宙飛行士は攬月に乗って離陸し、月周回軌道で再び夢舟とドッキング。夢舟へと移乗した宇宙飛行士は攬月を分離して地球へ帰還する。
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現在の中国の宇宙ステーションは「天宮」で、2022年12月に完成した。
2026年には宇宙望遠鏡「巡天」を打ち上げ、連結させる。
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2022/6/7 中国の宇宙ステーション「天宮」 年末までに完成へ
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