EUV露光装置の国内導入と高圧ガス保安法改正

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最先端半導体の量産に欠かせない極端紫外線(EUV)露光装置の国内導入が相次いでいる。1台300億円以上の高価な装置だが、2025年は3台が設置された。

ラピダス 2024年12月にEUV装置の搬入を始め、25年3月までに設置
2025年末までに2台目のEUV装置も導入
Micron 2025年5月 広島工場に導入

露光装置は、基本的に投影システムである。描画されるパターンの設計図を刻んだもの(「マスク」or「レチクル」)を通して光が投影される。この設計図は、実際に半導体デバイス上に描画されるパターンよりも4倍大きいサイズになっている。

このパターン形状が光により符号化され、リソグラフィ装置の光学系によって縮小されて、シリコンウエハの感光性表面に投射される。パターンが一つ描画されると、装置内でウエハが少し動き、ウエハ上の次の場所に同様にパターンが描画されていく。

波長13.5nmの極端紫外線(EUV:Extreme Ultraviolet)を使うEUV露光装置は、7nm世代以降のロジック半導体や最先端メモリーの製造で不可欠な同装置で、オランダのASMLホールディングが唯一生産している。

米Intelや韓国Samsung Electronics、台湾積体電路製造(TSMC)といった大手半導体メーカーがEUV露光装置を導入して先端半導体デバイスを量産している。

EUV露光装置の累計出荷台数は、2025年中盤時点で300台ほどに達しているとされる。

2018年10月に中国の新興半導体メモリーメーカー、合肥長鑫(イノトロン)がASMLから最先端のEUV露光装置導入に乗り出した。安徽省の合肥市政府が出資する企業で中国政府の意向を反映した動きとみられた。

軍事用途の半導体製造に使用される恐れがあるとする米国の圧力を受け、2019年に中国の顧客に対する最新鋭のEUV装置の販売を制限した。
旧式の深紫外線(DUV)露光装置の対中輸出は続けていた。(DUVは波長200nm程度、EUVは13.5nm)

オランダ政府は2023年6月30日、追加の輸出管理規制を9月1日から施行すると発表した。国の外交方針および安全保障政策次第で輸出許可ライセンスを停止することが可能という文言が含まれている。

ASMLは、既に輸出制限の対象となっている極端紫外線(EUV)露光装置に加え、深紫外線(DUV)露光装置の出荷に関してもオランダ政府の輸出管理規制の対象となったと述べた。

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「極端紫外線(EUV)露光装置」の日本への導入には高圧ガス保安法の改正が必要である。

EUV露光装置はPPL(Plasma-Produced Laser)方式の光源を採用する。

真空内を時速320km前後で移動する100万分の30mの大きさのスズの小滴を射出、レーザーを2回照射、1回目で高温にし、2回目で小滴を破壊、50万度のプラズマを発生させる。

スズを破壊させるプロセスを1秒当たり5万回繰り返すことで、半導体製造に必要な量のEUVが得られる。強力な炭酸ガスレーザーが必要。

炭酸ガスレーザーの生み出すエネルギーの8割は熱で、この除去が必要である。 磁石でファンを浮上させ、熱を吸い出す。

日本では(日本のみ?)、この高圧状態のスズとその容器(タンク)が高圧ガス保安法の適用対象である。

高圧装置は、完成時の検査のほか、高圧ガス保安法に基づく年1回の保安検査が義務付けられている。

保安検査の受検には、装置を安全に停止・解体・再稼働する必要があるため、24時間365日稼働し続ける半導体製造装置を何日か停止させねばならず、超高額装置の稼働率の低下をきたすことになる。

広島県は2022年6月に、国際的な安全基準・規格を活用した簡素化を経済産業省に要望。Micron Technologyなどの主要メーカーもキーサプライヤーや政府に緩和を求めている

2022年〜2023年にかけて、「高圧ガス保安法等の一部を改正する法律」が成立しており、2023年12月21日から施行された「認定高度保安実施者制度」がその主要な改正のひとつ。

この制度の趣旨・内容は、「自立的に高度な保安を確保できる事業者」について、保安検査等の手続きや検査の頻度などを一定緩和・合理化することを認めるというもの。

また、「認定高度保安実施者」の中でも更に要件が高い「特定認定高度保安実施者(A認定)」というランクもあり 、連続運転可能期間(停止しないでよい期間)や検査周期の延長など、より大きな緩和が可能。

ただ、この制度が成立したとか、施行されたということと、「EUV露光装置がこれにより年1回保安検査を停止なしで完全に免除される」 とは言えない。解釈や運営で法の規定を曲げることはあり得ない。

日本だけに適用されて対象企業に不利となるルールで、他国にこのルールがないことは本事業にとって必要なものでないルールであり、そのまま適用することは考えられない。


いよいよ、国営企業であるラピダスや米国のMicron両社が装置の利用を開始する。政府は明確なルールを出す必要がある。

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