原子力規制委員会は3月27日、福井県にある関西電力高浜原子力発電所1号機について、本年6月6日に施行される新たな制度(2023年5月31日に参院本会議で可決のGX脱炭素電源法 )のもとで、運転開始から60年まで運転するための管理計画を全国で初めて認可した。

 新制度:

規制委員会は10年ごとに検査する。

原則は「運転期間は40年、延長期間は20年」だが、予見しがたい休止期間の範囲で60年超を認める。

予見しがたい休止期間:東日本大震災発生後の新規制基準制定による審査やその準備期間、裁判所による仮処分命令その他事業者が予見しがたい事由によって生じた運転停止期間など

高浜原発1号機は、昨年11月以降、国内の原発で初めて50年を超えて運転しているが、原子力規制委員会は2023年5月31日に法案が議会を通過した新たな制度のもとで申請された運転開始から60年までの管理計画を3月27日に認可した。

GX脱炭素電源法 に基づき、同法の施行日前においても申請することができる。

新たな制度で60年までの運転が認められるのは全国で初めて。

原発の運転期間は運転開始から60年以降も予見しがたい休止期間の範囲で延長できるように法律が改正された。高浜原発1号機が60年以降運転を続けるには、再度、管理計画を提出し認可を受ける必要がる。

また、3月27日には関西電力美浜原発3号機の運転開始から50年までの管理計画も認可された。

なお、運転開始から40年を超えた関西電力美浜原発3号機と高浜原発1、2号機を稼働し続けるのは危険だとして、愛知、福井両県などの住民が国に運転延長の認可取り消しなどを求めた訴訟の判決で、名古屋地裁は3月14日、「原子力規制委員会の判断に不合理な点はない」として、原告の請求を棄却した。

ーーー

経緯:

従来のルール:

運転開始から40年を迎える原発は、規制委の運転延長の審査に合格した場合に限り1回のみ最長20年の延長が認可される。
また、これとは別に、運転開始から30年以降の原発は、10年ごとに「高経年化対策」も実施されている。

2022/12/21

原子力規制委員会は2022年12月21日、原子力発電所の運転開始から30年以降10年以内ごとに繰り返し運転を認可する新ルール案を了承した。現行ルールを上回る「60年超」運転が可能になる。 

2023/1/4 原発運転期間延長 

2023/2/13

原子力規制委員会は2023年2月13日夜に臨時の委員会を開き、運転開始から60年を超える原子力発電所の安全規制の新たな制度案と原子炉等規制法の改正条文案を多数決で了承した。

石渡明委員が反対するなか、山中伸介委員長と他の委員の計4人が賛成した。政府は今国会に関連法案の提出をめざす。

2023/2/10 原子力規制委員会、原発60年超運転に向けた規制制度案の承認持ち越し → 承認 

2023/2/10

「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定された。

気候変動問題への対応に加え、ロシア連邦によるウクライナ侵略を受け、国民生活及び経済活動の基盤となるエネルギー安定供給を確保するとともに、経済成長を同時に実現するため、主に以下二点の取組を進める。

① エネルギー安定供給の確保に向け、徹底した省エネに加え、再エネや原子力などのエネルギー自給率の向上に資する脱炭素電源への転換などGXに向けた脱炭素の取組を進めること。

② GXの実現に向け、「GX経済移行債」等を活用した大胆な先行投資支援、カーボンプライシングによるGX投資先行インセンティブ、新たな金融手法の活用などを含む「成長志向型カーボンプライシング構想」の実現・実行を行うこと。

2023/2/28

政府はエネルギー関連の5つの法改正案を閣議決定。これらをまとめた束ね法案「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案」(GX脱炭素電源法)として、通常国会に提出された。

GX脱炭素電源法のうち、原子力に関しては、

原子力発電の利用に係る原則の明確化(原子力基本法)
高経年化した原子炉に対する規制の厳格化(原子炉等規制法)
原子力発電の運転期間に関する規律の整備(電気事業法)
円滑かつ着実な廃炉の推進(再処理等拠出金法)

が柱となっている。

原子力基本法の改正では、従前の条文に対し、目的、基本方針の中に、それぞれ「地球温暖化の防止」、「福島第一原子力発電所事故を防止できなかったことを真摯に反省」との文言が追加され、安全最優先、原子力利用の価値を明確化。さらに、廃炉・最終処分などのバックエンドプロセスの加速化、自主的安全性向上・防災対策に係る「国・事業者の責務」について、新たに条文立てされている。

高経年化炉の規制については、関連法案の成立を前提として既に原子力規制委員会で技術的検討が開始されているが、事業者に対し、
①運転開始から30年を超えて運転しようとする場合、10年以内ごとに設備の劣化に関する技術的評価を行う、
②その結果に基づき長期施設管理計画を作成し、規制委員会の認可を受ける――ことを義務付ける。


運転期間については、原子炉等規制法から経済産業省が所管する電気事業法に移され、
これまで通り「運転期間は40年」、「延長期間は20年」の原則を維持

安定供給確保、GX(グリーントランスフォーメーション)への貢献、自主的安全性向上や防災対策の不断の改善につき、経済産業相の認可を受けた場合に限り延長を認め、
「延長しようとする期間が20年を超える」場合は、事業者が予見しがたい事由(東日本大震災以降の安全規制に係る制度・運用の変更、司法判断など)に限定して運転期間のカウントから除外することで、実質的に60年超運転を可能とする。

2023/4/27

衆議院は4月27日の本会議で、電気事業法、原子炉等規制法、再処理等拠出金法、再エネ特措法および原子力基本法の改正案を束ねたGX脱炭素電源法案(脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案)を賛成多数で修正可決した。2025年6月6日に施行。

同法を巡っては自民、公明、日本維新の会、国民民主の4党が衆院通過前に規制委の審査の効率化を求める文言を付則に加えた。

原発の立地地域だけでなく「電力の大消費地である都市の住民」の信頼を確保し、協力を得ることを国の責務とする内容も修正して盛り込んだ。

2023/5/31

GX脱炭素電源法が成立、原発運転「60年超」可能に

原子炉等規制法、電気事業法、原子力基本法など5つの法律を改正する束ね法案

30年を超えて運転する原子炉については、最長10年ごとに劣化状況を評価し、原子力規制委員会の認可を受けることを義務付ける

30年を超えて運転する原子炉については、最長10年ごとに劣化状況を評価し、原子力規制委員会の認可を受けることが義務付けられている。
原子炉規制委員会の審査など
予見しがたい休止期間は運転期間に含めないため、実質的に運転期間(60年)を延長することができる。

2023/6/1 GX脱炭素電源法が成立、原発運転「60年超」可能に 

2025/3/27

高浜原発1号機が初の50年超運転認可...原子力規制委の「長期施設管理計画」

原子力規制委員会は、関西電力高浜原子力発電所1号機(福井県)について、50年を超えて最長60年まで運転するのに必要な「長期施設管理計画」を認可した。
6月に全面施行する「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法」に基づく新制度に対応するもので、50年超運転が認可されたのは初めて。

現行制度では、原発の運転期間を「原則40年、最長60年」としており、高浜1号機は2016年に60年までの運転を既に認められていた。国内で運転中の原発で最も古く、昨年11月に運転開始から 50年を迎えた。

2025/6/6

GX脱炭素電源法、2025年6月6日に 全面施行

慶応技術大学医学部とワシントン大学保健指標評価研究所は3月21日、全国47都道府県の30年間の健康傾向の包括分析の結果を発表した。

Press release https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/files/2025/3/21/250321-1.pdf

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を含む 371 の疾病・傷害および 88 のリスク要因について、日本および 47 都道府県における各種健康指標の1990年から2021年までの30年間の推移を詳細に評価した。

日本が世界に先駆けて経験している超高齢社会の健康課題を明らかにし、健康格差の縮小や疾病構造の変化への対応など、保健医療社会政策における優先課題を科学的に提示している。

本研究成果は、Lancet Public Health 2025 3 21 日付けでオンライン公開された。

本研究で得られた知見:

1.日本の平均寿命は過去 30 年で 5.8 年延伸したが、健康寿命との差(何らかの健康問題を抱えて生活する期間)は拡大  

1990年 2021年 増減
平均寿命 79.4歳 85.2歳 +5.8歳
健康寿命 69.5歳 73.8歳 +4.4歳
差異* 9.9年 11.3年 +1.4年
  うち男性 8.7年 9.9年 +1.2年
    女性 11.1年 12.7年 +1.6年


健康寿命(Healthy Life Expectancy)は健康上の問題が生活の質に与える影響を考慮した平均余命を示す指標。

平均寿命と健康寿命の差 =何らかの健康問題を抱えて生活する期間

本研究では、平均寿命に疾病・傷害の有病率と、その影響の程度を示す障害の重み付け(Disability Weight)を統合し、算出している。

健康寿命は、延伸したが、平均寿命と健康寿命の差(つまり、何らかの健康問題を抱えて生活する期間)は、9.9 年から11.3 年へと拡大している。男女別では、この差は女性で 11.1 年から 12.7 年に、男性で 8.7年から 9.9 年に拡大しており、いずれも増加傾向にある。

2.47 都道府県間の健康格差が拡大:平均寿命の地域差は 1990 年の 2.3 年から 2021 年には2.9 年に拡大し、
 特に男性で格差が顕著(3.2 年→3.9 年)。

3.認知症(アルツハイマー病など)が主要死因の第1 位に浮上

4.脳卒中や虚血性心疾患を含む主要疾病の死亡率低下が鈍化

5.糖尿病の状況が悪化、肥満のリスクも高まる


発表では、1990年、2005年、2015年、2021年の死亡率の順位を比較しているが、ここでは1990年と2021年を比較する。

 * COPDは慢性閉塞性肺疾患、肺の生活習慣病で、気管支炎や肺気腫などの症状を総称した病気

2021 年の主要死因は、アルツハイマー病を含む認知症10 万人あたり 135.3 人)脳卒中(114.9 人)、虚血性心疾患(96.5 人)、肺がん(72.1 人)、下気道感染症(62.3 人)認知症は 1990 年の 6 位から 2021年には 1 位へと上昇した

平均寿命の延伸は、脳卒中(1.5 年)、虚血性心疾患(1.0 年)、がん(1.0 年)、下気道感染症(0.8 年)の死亡率低下に最も起因し、これらが 7 割以上を占めた。

本研究は、日本の健康指標が長期的に向上している一方で、その改善ペースが鈍化していること、また地域間の健康格差が依然として解消されていないことを明らかにした。

た、認知症や糖尿病の増加、肥満やメンタルヘルスの悪化が顕在化しており、平均寿命と健康寿命の差が拡大してい る。

こうした状況を踏まえ、国や各地域における疾病負荷の軽減を目的とした保健活動(ヘルスプロモーション)の推進や、社会環境の整備が、これまで以上に求められ る。

INCJ(旧産業革新機構)は活動期限を2025年3月までと定めており、保有株の売却を進めている。

同社は3月14日にジャパンディスプレイ(JDI)の保有株をすべて売却したと発表した。これまで4,620億円の投融資をしており、1,547億円の損失が確定した。

支援決定 実投資額 回収額 損失  
2011/8/31 2,000億円     2011/6/9 東芝・ソニーが携帯向け液晶統合、産業革新機構が出資
2016/12/21 750億円     2017/8/4 ジャパンディスプレイ、1千億円融資要請
2017/8/9 1,070億円    
2018/6/26 200億円      
2019/4/18 200億円      
2019/8/7 200億円      
2019/9/2 200億円      
2025/3  

3,073億円

  売却完了、持株比率 0%
合計 4,620億円 3,073億円 1,547億円  
 

ーーー

JDIは、東芝、ソニー、日立製作所と官民ファンドの産業革新機構が2012年春に中小型液晶パネル事業の統合会社として設立を発表したもの。
3社は10%ずつ出資、残り70%を産業革新機構が出資した。

当初は事業を拡大させ、2014年に株式を上場したが、中韓勢の参入で競争が激化した。2016年にも750億円の追加支援を決定するなどしたが、JDIは上場以来、一度も黒字化できず、株価も公募価格の900円を上回ることなく、現在は10円台で推移しており、INCJは当初想定した売却益を得られなかった。

ーーー

経営再建中のJDIは2020年1月31日、独立系投資顧問のいちごアセットマネジメントから最大1008億円の出資を受け入れる方向で最終契約を結んだと発表した。

いちごアセットは、日本開発銀行客員研究員やモルガン・スタンレー証券の株式統括本部長を務めたScott Callon 氏が2006年5月に設立した社名の「いちご」は千利休が説いた茶人の心構え「一期一会」から採った。

2020/2/3 JDI、いちごアセットマネジメントと最終契約   

いちごアセットの2024年9月末時点で出資比率は 78.19%である。

その後、JDIはいちごアセットのもとで経営改革を進めているが、ディスプレイ事業は厳しさが増している。そのため、「世界初、世界ー」の独自技術での成長を狙っている。

JDI20225月に、世界で初めてマスクレス蒸着とフォトリソを組み合わせた方式で画素を形成し、輝度・寿命を大幅に高める次世代OLEDeLEAP」の量産技術を確立した。

また20223月には、世界で初めて第6世代量産ラインにおいて、従来の酸化物半導体薄膜トランジスタと比較して電界効果移動度 24 倍以上となるバックプレーン技術「HMOの開発に成功しており、早期の量産化を目指している。

そのほかを加え、6つの「世界初、世界一」独自技術を持つ。

eLEAP
(次世代OLED)
%

environment positive(環境ポジティブ)
Lithography with maskless deposition
マスクレス蒸着+フォトリソ方式
Extreme long life, low power, and high luminance
(超長寿命・省電力・高輝度)
Any shape Patterning
(フリーシェイプ・パターニング)

広発光領域でピーク輝度2倍または寿命3倍、フリーシェイプで明るく鮮明な画像を実現
OLED蒸着用マスクを使用せず、洗浄不要

HMO
(High Mobility Oxide)
電界効果移動度従来 OS-TFT 技術と比較し 2倍以上となる高移動度酸化物半導HMOHigh Mobility Oxide技術
及び 4倍以上となる超高移動度酸化物半導体UHMOUltra High Mobility Oxide技術
メタバース
(超高精細ディスプレイ)
圧倒的なリアリティと没入感
高い歩留りと安定した品質
AutoTech EVに対応した統合コックピットの実現
HUDの進化による安全性の向上
Rælclear
(透明ディスプレイ)
高い技術開発力により実現したバックライト無しで表示が可能な液晶ディスプレイで、電源や駆動回路、HDMIと組み合わせて作られた透過率84%を誇るモニターセット。
映し出された映像は、表と裏の両面からクリアに見ることが可能。
新技術・新商品・新事業 独自技術の用途拡大
課題解決型の新規事業

「世界初、世界ー」独自技術での成長のためにも、過去の遺産を処分する必要がある。

JDIは2023年2月10日、資本増強による財務基盤の抜本的改善ー成長戦略「METAGROWTH 2026」の加速化を発表した。

グローバルディスプレイ産業の市場環境が大変厳しい中、更なる事業モデル改革と収益向上の抜本策が必要不可欠

◼ 大幅資本増強と無借金化により、財務基盤を抜本的に改善し、成長戦略である「METAGROWTH 2026」を加速化
◼ 脆弱な収益構造の主たる原因は、当社がコモディティ競争に陥ったことによる既存商品の差別化の不十分さによるもの。即ち、当社が提供する独自の顧客価値の欠如
◼ 「METAGROWTH 2026」は、世界のトップテクノロジーカンパニーも認める、絶大なビジネスチャンス
◼ 「METAGROWTH 2026」の進化と深化を通じて当社の唯一無二の顧客価値を具現化し、収益基盤を飛躍的に強化

今回の資本増強の全体像

施策 下図 いちご債権 目的、効果
(2022/12)いちごから借入 280億円
親会社「いちご」からの200億円の新規借入金→INCJからの同額の借入金の弁済 +200億円 資金調達(いちごからの借入金合計額480億円)
2023/2/27 INCJが保有するA種優先株式のすべてを無償取得、消却 将来の希薄化の回避(A種優先株式は普通株式に転換可能
「いちご」がINCJより合計537億円の貸付金債権を譲受 +537億円 INCJからの借入金を完済
「いちご」によるJDIに対する150億円の債権放棄 -150億円 資本増強、完全無借金化に向けた借入金削減、財務基盤の強化
2025/3/14 INCJがJDIの普通株10百万株を市場で売却 持ち株ゼロ
「いちご」の貸付金債権の合計額867億円をデット・エクイティ・スワップ 計867億円 資本増強、完全無借金化、財務基盤の強化
新株予約権をいちごに割当て(総額1,736億円)をいちごに割当て 資本増強、資金調達、「METAGROWTH 2026」による成長の加速化、財務基盤の強化


        

    

                  

米連邦議会上院は3月14日、下院共和党が可決し上院に送ったつなぎ予算案を可決した。

これによって政府機関の閉鎖は期限の深夜を数時間後に控え、回避された。一方で、民主党内部では深刻な亀裂が生じている。  

下院が法案を議決した時点で、上院民主党トップのシューマー院内総務は、民主党からいかなる意見も聞かずに予算案をまとめたなどと批判し、上院での可決を阻止する考えを明らかにした。

シューマー氏はその代わり、上院共和党に対して、民主党側が提示している30日間の予算案への協力を呼び掛けた。その間、両党が予算案について協議を行うという。


しかし、最終段階で
シューマー院内総務は、政府機関の閉鎖は共和党のつなぎ予算案を受け入れるよりも米国にとって「はるかに悪い」と述べるとともに、「政府が機能を続けて、それを閉鎖させぬよう、票を投じる」と演説で表明した。

閉鎖に陥れば、ホワイトハウスと政府職員削減を主導する実業家Elon Muskに、どの機関をいつ再開するか決定する権限を与えることになると述べた。

投票では、共和党から1名反対したが、民主党系からシューマー院内総務など10名が賛成に転じ、62対38で可決した。(可決には60票が必要)

共和党

民主党 民主系
無所属
合計
賛成 52 9 1 62
反対 1 36 1 38
合計 53 45 2 100



トランプ大統領による大胆な権力拡大にいかにして抵抗するかをめぐり、民主党内部では深刻な亀裂が生じている。

現在のつなぎ予算は3月14日が期限となっている。

下院は2024年12月20日、連邦政府の当面の資金繰りを確保する「つなぎ予算」を賛成多数で可決し、懸念されていた政府機関の一部閉鎖は回避される見通しとなった

トランプ次期大統領が強く求めていた債務上限の撤廃を「つなぎ予算案」から除外したことで、超党派での賛成につながった。

2025年3月14日までの政府の資金繰りなどを確保する新たな「つなぎ予算案」に共和党と民主党の大半の議員が賛成して可決した。

法案は上院に送られ、日付が変わった12月21日12時38分、賛成 85、反対 11 で可決した。

    2024/12/21 米議会、「つなぎ予算案」可決で政府機関の閉鎖回避 トランプ要求の「債務上限撤廃」を除外


ジョンソン下院議長は3月8日、9月30日までのつなぎ予算案を公表した。

法案は国防費を約60億ドル増額する一方で、非国防費を約130億ドル削減 する

共和党は、党派的な政策は追加されていないと強調しているものの、移民税関捜査局による追加の送還を支援するための新たな資金などホワイトハウスからの要求が盛り込まれている。

なお、Elon Muskの「政府効率化省」から提案された歳出削減は含まれていない。ジョンソン議長 は、「これらの削減は来年度の政府歳出交渉で対処できる」としている。

野党民主党は、国内支出を「無謀に削減」するものだとして即座に拒否した。

下院は3月11日、つなぎ予算案を217対213の賛成多数で可決した。共和党強硬派のThomas Massie議員が反対票を投じる一方、民主党穏健派のJared Golden議員が賛成に回った。

共和党 民主党 合計 欠員
賛成 216 1 217
反対 1 212 213
棄権 1 1 2

合計

218 214 432 3

つなぎ予算案は上院に送付されるが、上院ではフィリバスター(議事妨害)阻止のため60票が必要であり、共和党は民主党穏健派の支持を得なければならない。

上院の民主党に対しては、この予算案を支持するか、あるいは、トランプ氏との間の支出をめぐる対決に乗り出して政府機関閉鎖の危険を冒すか決めるよう圧力が強まっている。

上院ではポール共和党議員が反対しているため、同法案が成立するには少なくとも8人の民主党議員の支持が必要となる可能性が高い。

共和党

民主党 民主系
無所属
合計
53 45 2 100


同案が上院で否決された場合、共和党指導部はより短い期間のつなぎ法案の成立を週内にも目指す可能性がある。

付記

上院民主党トップのシューマー院内総務は、政府機関の一部閉鎖を回避するために共和党下院が可決したつなぎ予算案について、上院での可決を阻止する考えを明らかにした。

政府への資金提供は超党派の取り組みであるべきだが、共和党は党派的な道を選択し、民主党からいかなる意見も聞かずに予算案をまとめたなどと批判した。

シューマー氏はその代わり、上院共和党に対して、民主党側が提示している30日間の予算案への協力を呼び掛けた。その間、両党が予算案について協議を行うという。

ーーー

なお、債務上限については、1月1日で債務上限の凍結終了、上限は1月1日末の債務約36兆ドルに設定されている。ブログ付記

財務省は一時的な対策を講じて、支出を継続できるようにしている。具体的には以下のような手段がある。

  1. 政府系年金基金への投資を一時停止

    • 連邦職員退職基金や公務員退職基金の新規投資を停止し、現金を確保する。
  2. 地方政府証券の発行停止

    • 地方自治体向けの特定の国債を発行せず、国の借入枠を維持。
  3. 連邦職員のヘルスケア基金の資産運用を制限

    • 政府の医療給付基金への拠出を延期

財務省は約36兆ドルの債務がこれ以上増えないように、資金を捻出するが、制限範囲でほとんど通常通りに国債発行を継続しているものの、市場では債務上限到達時期の予想にかなり幅があり、中には初夏までに到達するとの見方もある。

米上院は2月21日、既に半年が経過している2025会計年度(2024年10月~2025年9月)予算決議案を52対48で可決した。

  共和党 民主党 民主系
無所属
合計
賛成 52 52
反対 1 45 2 48
合計 53 45 2 100

予算決議案は、予算枠の全体像を示すもので、ここで定められた枠を基に各歳出法案が策定される。

今回可決した予算決議では、政権が重視するテーマのうち、トランプ減税を除いたもので、国境措置の強化、国防費の増額、エネルギー生産の強化に対応する費用を盛り込んでおり、国境措置の強化として今後10年間で1,750億ドル、国防費の増額として同1,500億ドルを充てている。トランプ減税の延長減税措置に関しては、2026年度予算の審議過程で議論し取りまとめる。

トランプ政権1期目の2017年に成立した個人・法人減税措置(トランプ減税)は12月31日に期限切れとなり、大統領はその延長を公約としてきた。

共和党は野党民主党によるフィリバスター(議事妨害)を回避するため、財政調整措置を採用している。
この措置はかつてオバマ元大統領と民主党が医療保険制度改革法(オバマケア)を成立させるのに採用した。バイデン前大統領もインフレ抑制法(IRA)の成立に用いた。

債務上限や歳出に関する法案は、フィリバスターを回避して過半数で可決することが可能となる。1歳出年度に1度しか利用できない、上下院で同一の法案を審議しなければならないなど、幾つかの制約がある。

この後、各委員会がこれに基づき財政調整法案を策定し、予算委員会でまとめられ、一つの包括的な法案として議会で審議され、両院で可決することが必要である。



下院は2月25日、トランプ政権が重視する国境措置や減税措置の延長などに必要な費用を盛り込んだ2025会計年度予算決議案を217対215で可決した。

  共和党 民主党 合計 欠員
賛成 217 217
反対 1 214 215
棄権 1 1

再計

218 215 433 2

内容は、(1)1兆5,000億ドルの歳出削減、(2)4兆ドルの債務上限引き上げ、(3)4兆5,000億ドルの減税措置の拡大、(4)3,000億ドルの国境対策・国防費の増額を1本で実現することを狙ったもので、上院が可決済みの予算決議案とは異なる内容になっている。

共和党の財政保守派1人が反対票を投じた。民主党から賛成に回った議員はおらず、1人は投票しなかった。

下院の決議案については、歳出削減規模が不足しているとの財政保守派からの批判や、低所得者向け医療保険メディケイドの削減につながり得るとの穏健派の懸念など、共和党内部でも投票直前まで反対の声があがっていたが、トランプ大統領が反対派の議員を個別に説得した結果、離反は1票に抑えられた。

予算決議案に盛り込まれている歳出削減の具体策については議論が先送りされたかたちで、メディケイドの扱いなどの懸案に関しては、今後、決議案に基づいて法案を具体化していく過程でさらなる調整が進められる。

下院で予算決議案が採択されたことを受け、今後は2025年度予算における財政調整措置の活用に向けて、上下院で決議案の一本化に向けて調整していくことになる。

付記  政府・与党、下記の見直し案について一時「凍結」する最終調整へ。凍結はがん患者の団体らが求めていたほか、立憲民主党が2025年度予算案の修正案に盛り込んでいた。

→ 石破首相、高額療養費問題で、ことし8月からの引き上げは予定どおり行う一方、来年8月以降の制度のあり方については患者団体などの意見も聴いたうえで改めて検討し、
ことし秋までに決定する方針

「ことしの引き上げは物価や賃金の上昇を踏まえた限定的なもので、来年以降の取り扱いはしっかり協議していく」

ーーーーーーーー
高額療養費制度をめぐっては、政府は患者の自己負担額の上限を今年8月から段階的に引き上げる方針を決めている。

衆議院での審議に基づき、今回、長期で治療を受ける患者に配慮し、直近12か月以内に3回利用すると、4回目から負担が軽減される「多数回該当」については、年収にかかわらず、現行の自己負担額に据え置くことを決めた。

            上の例の場合、多数回該当は2027/8以降 76,800円になる予定であった。

仮に年収650万円の患者が月に10万円の治療を受け続けた場合、2年後も自己負担額は4万4400円に抑えられる。

しかし、この修正は、現在、多数回該当を受けている患者の身に限られる。

2年後に発病し治療を始めた場合は、現在の「多数回該当」の対象とはならず、同じ年収、同じ治療にもかかわらず、自己負担額が増える。

現在、多数回該当を受けている場合でも、その患者が職場が変わり、保険が変わった場合には1からのスタートとなり、この例外措置は適用されない。長い間、治療をしていて、一時的にこの治療がなくても維持できるというところで治療を一時やめる。その後、治療が必要となった場合も同様である。これらは新制度が適用される。

これに対し、福岡厚労大臣は「過去も高額療養費制度の見直しを行う中で同様の扱いをしてきた」と話し、制度の過渡期に起こるものだとして、理解を求めた。


特にがん患者の場合、長期に高額の医療費が必要で、医療費が引き上げられた場合、家族の生活も考えると、死ぬしかないとの意見が強い。


現行の制度   

  例 70歳以上、年収約370万円~770万円(3割負担)の場合     

       http://kogaku.umin.jp/tasuu.html

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改正案  70歳以上  2027/8~

現在は年収370万円~770万円の場合、すべて44,400円だが、改正後は年収を細分化し、最大で76,800円に増える。

トランプ政権は、カナダ・メキシコに対する25%の関税及び中国に対する10%の関税を2月4日から実施するとした。

付記

トランプ大統領、 3/4から中国からの輸入品に10%の追加関税  2月4日分とあわせ20%

米政権、中国からの輸入品に10%の追加関税(2/4)  例:

通常税率

'24 改正

追加 追加後 今回追加 追加後
リチウムイオン電池 7.5% 25% 10% 35% 10% 45%
EV 25% 100% 10% 110% 10% 120%


不法移民
合成麻薬「フェンタニル」などのアメリカへの流入を容認しているのが理由で、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき、不法移民と薬物の流入を「緊急事態」と認定し、期間は「危機が終わるまで」とした。(国際緊急経済権限法は、1977年10月28日に施行された米国の法律)

3カ国への追加関税の理由:

  カナダ:不法移民の流入

  メキシコ:不法移民と合成麻薬の流入

  中国:合成麻薬原料のメキシコへの輸出(製品がメキシコから米国に流入)

当初、カナダのトルドー首相は米国からの輸入品に25%の報復関税を上乗せする方針を明らかにし、第1弾として4日から、300億カナダドルに相当する米国からの輸入品が対象とした。

これに対し トランプ大統領は、「カナダからの輸入品は不要:エネルギーは無限にある、自動車は自分で作るべき、木材は使い切れないほどある」と反論した。

カナダ各州は、米国の関税に反対し、米国産ウイスキーの販売を中止した。

メキシコのシェインバウム大統領も報復関税を含む対抗措置をとると表明。 「犯罪組織と同盟関係にあるという誹謗中傷は断固として拒否」と述べた。

しかし、トランプ大統領はカナダ・メキシコの対応を受け、両国への追加関税は直前に1ヶ月猶予した。

カナダの対応:国境警備に13億カナダドル(約1400億円)を支出することを約束、合成麻薬フェンタニルの販売阻止に取り組む責任者を任命し、関連組織をテロリストに指定

メキシコの対応:米国との国境に1万人の兵士を送る。兵士は、合成麻薬フェンタニルが米国側に渡ることなどを阻むために配置される。

しかし、中国については、合成麻薬フェンタニルの米国流入を阻止していないとして、2月4日から全ての輸入品に10%の追加関税を発動した。

ーーー

合成オピオイドは、ケシから採取されるアルカロイドを化学的に合成して作られた鎮痛薬でフェンタニルは代表的な合成オピオイドである。鎮痛やがんの痛み緩和などの目的で使用されるが、誤用や乱用により依存症や嗜癖を引き起こす可能性がある。

フェンタニルは、最大でモルヒネの100倍、ヘロインの50倍の効力を有する即効性のある鎮痛剤を目的とした合成オピオイドで、比較的低コストであることから、多くの場合、ヘロインやコカイン、そしてメタンフェタミンなど他の物質と混合される。

フェンタニルは、中国で製造された原料をメキシコの犯罪組織・麻薬カルテルが加工して米国に密輸される。

トランプ大統領は今回の大統領令で次のように述べている。

合衆国大統領トランプは、合成オピオイドの持続的な流入が、1 日あたり約 200 人のアメリカ人の命を奪い、医療制度に深刻な負担をかけ、地域社会を荒廃させ、家族を崩壊させるなど、我が国に深刻な影響を及ぼしていると判断する。

合成オピオイドの過剰摂取は、アメリカ合衆国の 18 歳から 45 歳の人々の死亡原因の第1 位である。

最初の任期中、私はフェンタニルやその他の合成オピオイドが中国から米国に直接流入するのを阻止するための措置を講じた。それ以来、中国の政府と企業を最終的に統制する中国共産党は、米国で違法に販売される合成オピオイドの製造に使用されるフェンタニルや関連前駆化学物質を中国の化学会社が輸出できるよう補助金を支給したり、その他の形で奨励してきた。

さらに、中国は、違法な合成オピオイドの製造、出荷、販売による収益を洗浄する中国発の国際犯罪組織を支援し、安全な避難場所を提供している。

これらの中国発の国際犯罪組織は、業務遂行において中国のソーシャルメディアソフトウェアアプリケーションを使用して調整とコミュニケーションを行っている。

中国を拠点とする多くの化学会社も、法執行機関を逃れ、合法的な商取引の流れの中に違法物質を隠すためにあらゆる手段を講じている。

これらの中国系企業が荷物の本当の内容物と流通業者の身元を隠すために用いる手法には、米国内の再発送業者の利用、偽の請求書、不正な郵便料金、偽装梱包などがある。

過去3 会計年度で毎年 50 万ポンド以上の薬物が南国境で押収されている一方、過去3 年間の平均では北国境で毎年4万2 千ポンド以上の薬物が押収されている。(1ポンドは約 0.45kg)

違法薬物は毎年何万人もの米国人を殺しており、フェンタニルだけでも年間 7 万5 千人の死者が出ている。

これらの薬物が米国に流入すると、社会の構造が脅かされる。中国は、米国で流通する多くの違法薬物の最終的な供給源を阻止できないだけでなく、米国民を中毒させるビジネスを積極的に維持、拡大することで、この課題において中心的な役割を果たしている。

フェンタニルなどの密輸薬物が違法流通ネットワークを通じて米国に流入したことで、2025年1月20日の大統領覚書(米国第一貿易政策)、2025年1月20日の布告10886号(米国南部国境における国家非常事態宣言)、2025年1月20日の大統領令14157号(カルテルおよびその他の組織を外国テロ組織および特別指定国際テロリストに指定)に概説されているように、米国における公衆衛生危機を含む国家非常事態が発生している。

二国間対話を通じてこの危機を根本から解決しようと何度も試みられたにもかかわらず、中国当局は、既知の犯罪カルテルへの前駆化学物質の流入を食い止め、マネーロンダリング犯罪組織を閉鎖するために必要な断固たる措置を講じることができなかった。中国は、世界で最も包括的な国内法執行機関と組み合わせた最も洗練された国内監視ネットワークを実施している。また、中国は日常的に世界中で域外活動を行い、政治的反対意見とみなすものを脅迫、嫌がらせ、抑圧している。

したがって、中国共産党には、世界的な違法オピオイドの蔓延を深刻に抑制する能力が欠けているわけではない。単にそうする気がないだけだ。 私が宣言した国家非常事態に対処し、オピオイドの使用と中毒によって引き起こされる公衆衛生危機を含むこの非常事態を最終的に終わらせるためには、即時の行動が必要である。これは、中国政府の完全な遵守と協力が保証されるまで実現しない。

以上の背景のもとで、大統領令は次の通り述べている。

米国大統領としての最大の義務は、国と国民を守ることである。国民が毒され、法律が踏みにじられ、コミュニティが荒廃し、家族が破壊されるのを黙って見過ごすつもりはない。

私は以前、不法移民と麻薬の流入が米国にもたらす重大な脅威に関して国家非常事態を宣言した。

これに従い、国家非常事態の範囲を、化学原料供給者、マネーロンダリング業者、その他の国際犯罪組織、逃亡中の犯罪者、麻薬を逮捕、押収、拘留、またはその他の方法で阻止できなかった中国政府にまで拡大する。

さらに、この不作為は、米国の国家安全保障、外交政策、経済に対する異常かつ並外れた脅威であり、その源の大部分は米国外にある。

私は、この脅威に対処するため、国家非常事態を宣言し、再度表明する。この国家非常事態には、断固とした即時の措置が必要であり、私は、法律に従い、本命令に規定されているとおり、中国産品に従価関税を課すことを決定した。


中国政府は、米国の追加関税に報復措置を取った。

1) 石炭とLNGに15%、原油・農業機械・大型自動車などに10%の追加関税
2) タングステン、モリブデンなどを輸出規制の対象にする。
3) Google を独禁法違反の疑いで調査
4) 米国の追加関税をWTOに提訴
5) 米アパレル大手 PVHとIllumina, Inc.を「信頼できない企業」リストに追加

米食品医薬品局(FDA)は1月15日、菓子や漬物などに使われる合成着色料「赤色3号」について、ラットでの発がん性の懸念を理由に使用許可を取り消した。

数十年前から科学者や公益団体により人体への影響についての懸念が指摘され続けていたが、ラットの実験(後記)で発がん性リスクが認められた。  

2023年にカリフォルニア州が全米で初めて食品への赤色3号の使用を禁止した。これを受けて、赤色3号の使用禁止の動きが一気に加速した。

FDAの決定を受け、全米の食品メーカーは2027年1月までに赤色3号の使用中止や切り替えが義務づけられる。

伊東消費者担当相は会見で「日本では人の健康を損なう恐れのない添加物として指定され、使用が認められている」と安全性を強調した。

消費者庁は、「米国における決定の内容を精査し、米国以外の諸外国における動向なども踏まえ、科学的な見地から食用赤色3号の食品添加物としての使用を検討していく予定」としている。


しかし、FDAの本件についての発表は奇妙なものである。

「FDAは、連邦食品・医薬品・化粧品法(FD&C法)のデラニー条項(Delaney Clause)により、法の問題としてFD&C Red No.3(赤色3号)の使用許可を取り消す。」

「法の問題」であり、「安全性の問題ではない」としている。安全性には問題ないが、法律に従えば禁止せざるを得ないため、禁止するということ。

FDAは赤色3号には安全性に問題がないため禁止しないでいたが、NGOの弁護士に強く指摘されたので、やむを得ず対応した。


FDAは経緯を説明している。

  • 1960年のFD&C法改正でデラニー条項が制定された。
    この条項は食品添加物あるいは着色料がヒトまたは動物にがんを誘発することがわかった場合、それを認可してはならないと定めている。
  • 赤色3号は1969年に食品と医薬品に使用できる恒久リスト掲載着色料として認可された。
  • 1990年にFDAは化粧品と局所用医薬品への赤色3号の使用を暫定リストから恒久リストにする請願に対応した。その際の承認プロセスの一環として調べた情報の中に赤色3号がラットに発がん性を示すデータがあったためFDAはデラニー条項に基づき、この請願を却下した。
  • 1992年、FDAは上記の雄ラットで観察された影響を理由に、デラニー条項により赤色3号の食品および医薬品への使用に関する恒久リストを取り消す意向を発表した。しかしその時点で安全上の懸念はなく、リソースに限りがあるとして対応はしなかった。
  • 2022年、Center for Science in the Public Interest(CSPI)をはじめとする環境団体等の合同による赤色3号のデラニー条項該当を主張する請願により対応を迫られた。
  • 2025年(今回)、赤色3号をデラニー条項のため食品と医薬品に使用できる恒久リストから外すことを決定した。

赤色3号がラットに発がん性を示すデータがあるため、デラニー条項で認可取り消しが必要だが、実際には安全性の懸念がないため、放置していた。しかし、環境団体がデラニー条項を理由に取り消しを求めたため、安全性には問題ないが、法に基づき恒久リストから外すというもの。

後記のとおり、デラニー条項は、ヒトには当て嵌まらないような実験条件であっても、とにかくがんができたものは全て認可してはならないという もので、食品添加物以外では法律からデラニー条項は廃止されている。この条項をどうするか(廃止するのかどうか)を考える必要がある。

ーーー

赤色3号:エリスロシン (erythrosine) は、食用タール色素に分類される赤色の合成着色料の1つである。

米国では100年以上前から使用が認められている。加熱などに対して安定性が高く、食品の色味付けに使われる。

日本では菓子や漬物、かまぼこなどに使われている。

デラニー条項(Delaney Clause)は1950年代にJames Delaney下院議員により導入された一連の食品に添加される化学物質の安全性を強化するための条項で、残留農薬については1954年、食品添加物 は1958年、色素については1960年に関連法律に追加された。

デラニー条項は、 これらの法律で認可をするにあたって、ヒトや動物で発がん性が確認された場合には認可してはならないというもので、ヒトにはあてはまらないような実験条件であっても、とにかくがんができたものは全て認可してはならないという もの。
まず、農薬が残留する加工食品の販売が禁止され、その後、適用範囲が着色料、動物用薬品、飼料に拡大された。

しかし、このゼロリスク思想は現実的には多くの矛盾点があった。主な矛盾点としては、

①分析技術の進歩により、微量な化学物質も検出可能となり、検出限界である安全レベルがどんどん低くなってしまうこと。
②発がん性の有無だけが強調されているため、他の毒性が低くて、安全性の高い化合物ができても、わずかの発がん性のため代替できないこと。
③人工化学物質のみを対象としているため、天然由来の発がん物質は無視されていること。
④動物実験の発がん性試験は、必ずしも人に対する発がん性と一致しないこと、などが挙げられる。

これらのことから、1996年「食品品質保護法」の制定とともにデラニー条項は廃止された。ただし、理由はあきらかでないが、食品添加物 だけは廃止されず、今に至っており、今回「赤色3号」の使用許可が取り消された。

今回、デラニー条項が適用された理由の「発癌」データは1件だけのデータである。

Food Chem Toxicol. 1987 Oct;25(10):723-33  Lifetime toxicity/carcinogenicity study of FD & C Red No. 3 (erythrosine) in rats - PubMed 末尾にAbstract の邦訳

実験動物として広く使用されるラット:SDラットに赤色3号0, 0.1%, 0.5%, 1%あるいは 4%を含む餌を30ヶ月与えたところ甲状腺濾胞細胞腺腫とがんが雄の4%群で統計的有意に多かったというもの。1%までの濃度での用量相関はなく、4%群のみで影響が観察され た。

餌に、重量比4%もの大量の赤色3号を混ぜたものを30カ月間にわたって毎日食べさせ続けるという絶対に起こりえない状況で癌が発生したというもので、重量比1%(これも起こり得ない状況)では癌は発生していない。

消費者庁の調査によると、一般的な食生活を送る20歳以上の日本人が1日当たり摂取する赤色3号の量はわずかで、体重1キロ当たり0.05マイクログラム。

しかも後になって、発癌は甲状腺ホルモンへの影響の結果の二次的な腫瘍であることが分かった。

赤色3号はラットの甲状腺ホルモンのT4をT3(活性型)に変換する作用を抑制し、甲状腺ホルモンが足りないと感知されて下垂体から甲状腺ホルモン刺激ホルモン(TSH)が多く分泌されるようにな る。甲状腺は長期的にTSHによる刺激を受けるとがんリスクが高くなる。

この甲状腺ホルモンとTSHの動態はヒトとラットでは相当異なることがわかっていて、ラット試験での甲状腺への影響はヒトにはほぼ 当てはまらない。

大量の赤色3号を30ヶ月間、毎日食べさせるという起こり得ない状況で初めて癌が発生し、それもヒトには当てはまらない理由で発生した。

この理由で、FDAはヒトの安全性についての問題ではないとし、法の問題として赤色3号の使用許可を取り消すとした。



「科学的根拠に基づく食情報を提供する消費者団体FOOCOM」の畝山 智香子 氏の論文を元にした。

ーーー
Food Chem Toxicol. 1987 Oct;25(10):723-33のAbstract の邦訳(ChatGPTによる) :

FD&C Red No. 3(食用赤色3号)は、2つの長期毒性・発がん性試験において、Charles River CDラットに飼料添加物として投与された。本試験は、子宮内曝露(in utero)フェーズとF1世代フェーズで構成されている。前者では、F0世代のラット(各群60匹ずつ、雄雌別)に対し、0.0%、0.0%、0.1%、0.5%、1.0%(「オリジナル試験」)および0.0%、4.0%(「高用量試験」)の濃度で化合物を投与した。同時対照群には基礎飼料のみを与えた。F1世代の動物を無作為に選定した後、長期試験フェーズが開始され、同じ飼料濃度を用い、各群70匹の雄雌ラット(3つの対照群を含む)を対象に試験を実施した。最大30か月間の暴露が行われた。

子宮内曝露フェーズでは、試験物質に関連する影響は認められなかった。F1世代の雌ラットにおいて、4.0% FD&C Red No. 3(3029 mg/kg/体重/日)を摂取した群では、全試験期間を通じて対照群と比較して有意に体重が低下した(P < 0.01)。すべての処理群で、投与量依存的に飼料摂取量の増加が観察された。一方、血液学的検査、血清化学検査、尿検査には有意な影響は認められず、生存率にも試験物質に関連する影響はなかった。

4.0% FD&C Red No. 3(2464 mg/kg/日)を投与された雄ラットでは、甲状腺重量の増加が観察され、対照群の平均44 mgに対し、投与群では92 mgであった。また、甲状腺濾胞細胞の肥大、過形成、腺腫の発生率が統計的に有意に増加していた。一方、雌ラットでは、0.5%、1.0%、4.0% FD&C Red No. 3のいずれの濃度でも、甲状腺濾胞腺腫の発生率の数値上の増加が認められたが、統計的有意性はなかった。

本試験で設定された無毒性量(NOAEL: no-observed-adverse-effect level)は、雄ラットで0.5%(251 mg/kg/日)、雌ラットで1.0%(641 mg/kg/日)であった。

トランプ大統領は就任直後に多数の大統領令を出した。そのなかに「アメリカ市民権の意味と価値を守る大統領令」がある。

憲法修正14条第1節は以下のとおり規定する。

第1節 合衆国において出生し、又はこれに帰化し、その管轄権に服するすべての者は、合衆国及びその居住する州の市民である。

いかなる州も、合衆国市民の特権又は免除を制限する法律を制定又は施行してはならない。またいかなる州も、正当な法の手続によらないで、何人からも生命、自由又は財産を奪ってはならない。またその管轄内にある何人に対しても法律の平等な保護を拒んではならない。

今回の大統領令は、これについて以下のように述べている。

改正第14条はアメリカ国内で生まれたすべての者に普遍的に市民権を付与するものとして解釈されたものではなく、「その管轄権の対象となる」条件を満たさない者を市民権付与の対象外としてきた。

アメリカ国内で生まれても、その管轄権の対象とならない者のカテゴリーには以下が含まれる。

母親 父親
アメリカに不法滞在中 アメリカ市民または合法的永住者でない
アメリカに合法的だが、一時的に滞在中
(例えばビザ免除プログラム、学生ビザ、就労ビザ、観光ビザ等)


このため、上記に該当する場合は市民権を付与しない。本命令発効後30日以降にアメリカ国内で生まれる者にのみ適用される。

これは、不法移民や、米国籍獲得を目的としたBirth Tourism (出産旅行)の規制が目的である。不法滞在の母親を持つ子供で2022年に全米で生まれた子供は約25万5千人とされる。

これに対し、ワシントン、アリゾナ、イリノイ、オレゴンの4州が差し止めを求めて訴訟を提起。訴えを検討する間、大統領令を一時差し止めるよう求めた。

4州は、大統領に憲法を修正する権限はないと主張。大統領令が執行されれば、「米市民権を奪われた人々は不法滞在となり、強制退去や拘束の対象とされ、その多くは無国籍になる」とし、州民らが「回復不可能な損害を直ちに被る」と訴えた。

ワシントン州の連邦地裁のジョン・クーナー判事はは1月23日、25分間の審理を経て、今回の大統領令を「あからさまに違憲」と判断、差し止め命令を出した。大統領は控訴するとしており、最終的に最高裁に持ち込まれるとみられている。

ーーー

本件については既に1898年に最高裁の判断が出ている。

最高裁は1898年の United States v. Wong Kim Ark 事件で、「敵対的な職業に就いている敵性外国人の子供、外国の外交代表の子供を除き、米国内で生まれた全ての居住者の子供を明白に対象にしている。米国内に居住する外国人は全て米国の司法権に属する」とした。

背景

  • 修正第14条は、奴隷制度廃止後に、元奴隷やその子孫の市民権を保障するために制定された。
  • 19世紀後半、中国人労働者はアメリカ西部に多く移住したが、1882年の「中国人排斥法」により新たな中国人移民が禁止されるなど、移民政策が厳しく制限された。中国系アメリカ人の市民権の問題もこの差別的な背景の中で浮上した。
  • 原告 Wong Kim Ark (黄金德)は1873年にサンフランシスコで中国系移民の両親のもとに生まれた。彼自身はアメリカ生まれであり、修正第14条に基づき市民権を主張していた。彼が中国への旅行から戻る際にアメリカ入国を拒否され、市民権の有無をめぐる法的争いが生じた。

判決の内容

 最高裁は1898年に6対2の判断で以下の結論を下した:

  1. アメリカで出生したすべての人は、両親の国籍や移民ステータスにかかわらず、アメリカ市民であると確認した。
  2. 修正第14条の「アメリカで出生し、かつ合衆国の管轄下にある」という文言は、両親が外国人であっても、その子供がアメリカ国内で生まれた場合には市民権を認めると判断した。
  3. この原則には例外があり、外国政府の外交官の子供や占領軍の子供など、特定のケースには適用されない。

当時、中国系移民に対する差別が強まっていた中で、この判決は憲法の平等原則を支持するものであり、中国系アメリカ人にとって大きな勝利となった。

これによると、今回の大統領令が「管轄権の対象とならない」とする者は、不法滞在中であれ、一時的滞在であれ、「管轄権の対象」になる。

今回の大統領令を実行するためには、憲法改正か、長年認められてきた最高裁判断を覆す必要があることになる。

ーーー

強硬派の間には、1898年の最高裁判断は合法移民の子供に限定した判決だとの解釈がある。

不法入国者の流入は「侵略」で、不法移民は「敵性外国人」との主張もある。

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