トランプ政権は、カナダ・メキシコに対する25%の関税及び中国に対する10%の関税を2月4日から実施するとした。

不法移民合成麻薬「フェンタニル」などのアメリカへの流入を容認しているのが理由で、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき、不法移民と薬物の流入を「緊急事態」と認定し、期間は「危機が終わるまで」とした。(国際緊急経済権限法は、1977年10月28日に施行された米国の法律)

3カ国への追加関税の理由:

  カナダ:不法移民の流入

  メキシコ:不法移民と合成麻薬の流入

  中国:合成麻薬原料のメキシコへの輸出(製品がメキシコから米国に流入)

当初、カナダのトルドー首相は米国からの輸入品に25%の報復関税を上乗せする方針を明らかにし、第1弾として4日から、300億カナダドルに相当する米国からの輸入品が対象とした。

これに対し トランプ大統領は、「カナダからの輸入品は不要:エネルギーは無限にある、自動車は自分で作るべき、木材は使い切れないほどある」と反論した。

カナダ各州は、米国の関税に反対し、米国産ウイスキーの販売を中止した。

メキシコのシェインバウム大統領も報復関税を含む対抗措置をとると表明。 「犯罪組織と同盟関係にあるという誹謗中傷は断固として拒否」と述べた。

しかし、トランプ大統領はカナダ・メキシコの対応を受け、両国への追加関税は直前に1ヶ月猶予した。

カナダの対応:国境警備に13億カナダドル(約1400億円)を支出することを約束、合成麻薬フェンタニルの販売阻止に取り組む責任者を任命し、関連組織をテロリストに指定

メキシコの対応:米国との国境に1万人の兵士を送る。兵士は、合成麻薬フェンタニルが米国側に渡ることなどを阻むために配置される。

しかし、中国については、合成麻薬フェンタニルの米国流入を阻止していないとして、2月4日から全ての輸入品に10%の追加関税を発動した。

ーーー

合成オピオイドは、ケシから採取されるアルカロイドを化学的に合成して作られた鎮痛薬でフェンタニルは代表的な合成オピオイドである。鎮痛やがんの痛み緩和などの目的で使用されるが、誤用や乱用により依存症や嗜癖を引き起こす可能性がある。

フェンタニルは、最大でモルヒネの100倍、ヘロインの50倍の効力を有する即効性のある鎮痛剤を目的とした合成オピオイドで、比較的低コストであることから、多くの場合、ヘロインやコカイン、そしてメタンフェタミンなど他の物質と混合される。

フェンタニルは、中国で製造された原料をメキシコの犯罪組織・麻薬カルテルが加工して米国に密輸される。

トランプ大統領は今回の大統領令で次のように述べている。

合衆国大統領トランプは、合成オピオイドの持続的な流入が、1 日あたり約 200 人のアメリカ人の命を奪い、医療制度に深刻な負担をかけ、地域社会を荒廃させ、家族を崩壊させるなど、我が国に深刻な影響を及ぼしていると判断する。

合成オピオイドの過剰摂取は、アメリカ合衆国の 18 歳から 45 歳の人々の死亡原因の第1 位である。

最初の任期中、私はフェンタニルやその他の合成オピオイドが中国から米国に直接流入するのを阻止するための措置を講じた。それ以来、中国の政府と企業を最終的に統制する中国共産党は、米国で違法に販売される合成オピオイドの製造に使用されるフェンタニルや関連前駆化学物質を中国の化学会社が輸出できるよう補助金を支給したり、その他の形で奨励してきた。

さらに、中国は、違法な合成オピオイドの製造、出荷、販売による収益を洗浄する中国発の国際犯罪組織を支援し、安全な避難場所を提供している。

これらの中国発の国際犯罪組織は、業務遂行において中国のソーシャルメディアソフトウェアアプリケーションを使用して調整とコミュニケーションを行っている。

中国を拠点とする多くの化学会社も、法執行機関を逃れ、合法的な商取引の流れの中に違法物質を隠すためにあらゆる手段を講じている。

これらの中国系企業が荷物の本当の内容物と流通業者の身元を隠すために用いる手法には、米国内の再発送業者の利用、偽の請求書、不正な郵便料金、偽装梱包などがある。

過去3 会計年度で毎年 50 万ポンド以上の薬物が南国境で押収されている一方、過去3 年間の平均では北国境で毎年4万2 千ポンド以上の薬物が押収されている。(1ポンドは約 0.45kg)

違法薬物は毎年何万人もの米国人を殺しており、フェンタニルだけでも年間 7 万5 千人の死者が出ている。

これらの薬物が米国に流入すると、社会の構造が脅かされる。中国は、米国で流通する多くの違法薬物の最終的な供給源を阻止できないだけでなく、米国民を中毒させるビジネスを積極的に維持、拡大することで、この課題において中心的な役割を果たしている。

フェンタニルなどの密輸薬物が違法流通ネットワークを通じて米国に流入したことで、2025年1月20日の大統領覚書(米国第一貿易政策)、2025年1月20日の布告10886号(米国南部国境における国家非常事態宣言)、2025年1月20日の大統領令14157号(カルテルおよびその他の組織を外国テロ組織および特別指定国際テロリストに指定)に概説されているように、米国における公衆衛生危機を含む国家非常事態が発生している。

二国間対話を通じてこの危機を根本から解決しようと何度も試みられたにもかかわらず、中国当局は、既知の犯罪カルテルへの前駆化学物質の流入を食い止め、マネーロンダリング犯罪組織を閉鎖するために必要な断固たる措置を講じることができなかった。中国は、世界で最も包括的な国内法執行機関と組み合わせた最も洗練された国内監視ネットワークを実施している。また、中国は日常的に世界中で域外活動を行い、政治的反対意見とみなすものを脅迫、嫌がらせ、抑圧している。

したがって、中国共産党には、世界的な違法オピオイドの蔓延を深刻に抑制する能力が欠けているわけではない。単にそうする気がないだけだ。 私が宣言した国家非常事態に対処し、オピオイドの使用と中毒によって引き起こされる公衆衛生危機を含むこの非常事態を最終的に終わらせるためには、即時の行動が必要である。これは、中国政府の完全な遵守と協力が保証されるまで実現しない。

以上の背景のもとで、大統領令は次の通り述べている。

米国大統領としての最大の義務は、国と国民を守ることである。国民が毒され、法律が踏みにじられ、コミュニティが荒廃し、家族が破壊されるのを黙って見過ごすつもりはない。

私は以前、不法移民と麻薬の流入が米国にもたらす重大な脅威に関して国家非常事態を宣言した。

これに従い、国家非常事態の範囲を、化学原料供給者、マネーロンダリング業者、その他の国際犯罪組織、逃亡中の犯罪者、麻薬を逮捕、押収、拘留、またはその他の方法で阻止できなかった中国政府にまで拡大する。

さらに、この不作為は、米国の国家安全保障、外交政策、経済に対する異常かつ並外れた脅威であり、その源の大部分は米国外にある。

私は、この脅威に対処するため、国家非常事態を宣言し、再度表明する。この国家非常事態には、断固とした即時の措置が必要であり、私は、法律に従い、本命令に規定されているとおり、中国産品に従価関税を課すことを決定した。


中国政府は、米国の追加関税に報復措置を取った。

1) 石炭とLNGに15%、原油・農業機械・大型自動車などに10%の追加関税
2) タングステン、モリブデンなどを輸出規制の対象にする。
3) Google を独禁法違反の疑いで調査
4) 米国の追加関税をWTOに提訴
5) 米アパレル大手 PVHとIllumina, Inc.を「信頼できない企業」リストに追加

米食品医薬品局(FDA)は1月15日、菓子や漬物などに使われる合成着色料「赤色3号」について、ラットでの発がん性の懸念を理由に使用許可を取り消した。

数十年前から科学者や公益団体により人体への影響についての懸念が指摘され続けていたが、ラットの実験(後記)で発がん性リスクが認められた。  

2023年にカリフォルニア州が全米で初めて食品への赤色3号の使用を禁止した。これを受けて、赤色3号の使用禁止の動きが一気に加速した。

FDAの決定を受け、全米の食品メーカーは2027年1月までに赤色3号の使用中止や切り替えが義務づけられる。

伊東消費者担当相は会見で「日本では人の健康を損なう恐れのない添加物として指定され、使用が認められている」と安全性を強調した。

消費者庁は、「米国における決定の内容を精査し、米国以外の諸外国における動向なども踏まえ、科学的な見地から食用赤色3号の食品添加物としての使用を検討していく予定」としている。


しかし、FDAの本件についての発表は奇妙なものである。

「FDAは、連邦食品・医薬品・化粧品法(FD&C法)のデラニー条項(Delaney Clause)により、法の問題としてFD&C Red No.3(赤色3号)の使用許可を取り消す。」

「法の問題」であり、「安全性の問題ではない」としている。安全性には問題ないが、法律に従えば禁止せざるを得ないため、禁止するということ。

FDAは赤色3号には安全性に問題がないため禁止しないでいたが、NGOの弁護士に強く指摘されたので、やむを得ず対応した。


FDAは経緯を説明している。

  • 1960年のFD&C法改正でデラニー条項が制定された。
    この条項は食品添加物あるいは着色料がヒトまたは動物にがんを誘発することがわかった場合、それを認可してはならないと定めている。
  • 赤色3号は1969年に食品と医薬品に使用できる恒久リスト掲載着色料として認可された。
  • 1990年にFDAは化粧品と局所用医薬品への赤色3号の使用を暫定リストから恒久リストにする請願に対応した。その際の承認プロセスの一環として調べた情報の中に赤色3号がラットに発がん性を示すデータがあったためFDAはデラニー条項に基づき、この請願を却下した。
  • 1992年、FDAは上記の雄ラットで観察された影響を理由に、デラニー条項により赤色3号の食品および医薬品への使用に関する恒久リストを取り消す意向を発表した。しかしその時点で安全上の懸念はなく、リソースに限りがあるとして対応はしなかった。
  • 2022年、Center for Science in the Public Interest(CSPI)をはじめとする環境団体等の合同による赤色3号のデラニー条項該当を主張する請願により対応を迫られた。
  • 2025年(今回)、赤色3号をデラニー条項のため食品と医薬品に使用できる恒久リストから外すことを決定した。

赤色3号がラットに発がん性を示すデータがあるため、デラニー条項で認可取り消しが必要だが、実際には安全性の懸念がないため、放置していた。しかし、環境団体がデラニー条項を理由に取り消しを求めたため、安全性には問題ないが、法に基づき恒久リストから外すというもの。

後記のとおり、デラニー条項は、ヒトには当て嵌まらないような実験条件であっても、とにかくがんができたものは全て認可してはならないという もので、食品添加物以外では法律からデラニー条項は廃止されている。この条項をどうするか(廃止するのかどうか)を考える必要がある。

ーーー

赤色3号:エリスロシン (erythrosine) は、食用タール色素に分類される赤色の合成着色料の1つである。

米国では100年以上前から使用が認められている。加熱などに対して安定性が高く、食品の色味付けに使われる。

日本では菓子や漬物、かまぼこなどに使われている。

デラニー条項(Delaney Clause)は1950年代にJames Delaney下院議員により導入された一連の食品に添加される化学物質の安全性を強化するための条項で、残留農薬については1954年、食品添加物 は1958年、色素については1960年に関連法律に追加された。

デラニー条項は、 これらの法律で認可をするにあたって、ヒトや動物で発がん性が確認された場合には認可してはならないというもので、ヒトにはあてはまらないような実験条件であっても、とにかくがんができたものは全て認可してはならないという もの。
まず、農薬が残留する加工食品の販売が禁止され、その後、適用範囲が着色料、動物用薬品、飼料に拡大された。

しかし、このゼロリスク思想は現実的には多くの矛盾点があった。主な矛盾点としては、

①分析技術の進歩により、微量な化学物質も検出可能となり、検出限界である安全レベルがどんどん低くなってしまうこと。
②発がん性の有無だけが強調されているため、他の毒性が低くて、安全性の高い化合物ができても、わずかの発がん性のため代替できないこと。
③人工化学物質のみを対象としているため、天然由来の発がん物質は無視されていること。
④動物実験の発がん性試験は、必ずしも人に対する発がん性と一致しないこと、などが挙げられる。

これらのことから、1996年「食品品質保護法」の制定とともにデラニー条項は廃止された。ただし、理由はあきらかでないが、食品添加物 だけは廃止されず、今に至っており、今回「赤色3号」の使用許可が取り消された。

今回、デラニー条項が適用された理由の「発癌」データは1件だけのデータである。

Food Chem Toxicol. 1987 Oct;25(10):723-33  Lifetime toxicity/carcinogenicity study of FD & C Red No. 3 (erythrosine) in rats - PubMed 末尾にAbstract の邦訳

実験動物として広く使用されるラット:SDラットに赤色3号0, 0.1%, 0.5%, 1%あるいは 4%を含む餌を30ヶ月与えたところ甲状腺濾胞細胞腺腫とがんが雄の4%群で統計的有意に多かったというもの。1%までの濃度での用量相関はなく、4%群のみで影響が観察され た。

餌に、重量比4%もの大量の赤色3号を混ぜたものを30カ月間にわたって毎日食べさせ続けるという絶対に起こりえない状況で癌が発生したというもので、重量比1%(これも起こり得ない状況)では癌は発生していない。

消費者庁の調査によると、一般的な食生活を送る20歳以上の日本人が1日当たり摂取する赤色3号の量はわずかで、体重1キロ当たり0.05マイクログラム。

しかも後になって、発癌は甲状腺ホルモンへの影響の結果の二次的な腫瘍であることが分かった。

赤色3号はラットの甲状腺ホルモンのT4をT3(活性型)に変換する作用を抑制し、甲状腺ホルモンが足りないと感知されて下垂体から甲状腺ホルモン刺激ホルモン(TSH)が多く分泌されるようにな る。甲状腺は長期的にTSHによる刺激を受けるとがんリスクが高くなる。

この甲状腺ホルモンとTSHの動態はヒトとラットでは相当異なることがわかっていて、ラット試験での甲状腺への影響はヒトにはほぼ 当てはまらない。

大量の赤色3号を30ヶ月間、毎日食べさせるという起こり得ない状況で初めて癌が発生し、それもヒトには当てはまらない理由で発生した。

この理由で、FDAはヒトの安全性についての問題ではないとし、法の問題として赤色3号の使用許可を取り消すとした。



「科学的根拠に基づく食情報を提供する消費者団体FOOCOM」の畝山 智香子 氏の論文を元にした。

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Food Chem Toxicol. 1987 Oct;25(10):723-33のAbstract の邦訳(ChatGPTによる) :

FD&C Red No. 3(食用赤色3号)は、2つの長期毒性・発がん性試験において、Charles River CDラットに飼料添加物として投与された。本試験は、子宮内曝露(in utero)フェーズとF1世代フェーズで構成されている。前者では、F0世代のラット(各群60匹ずつ、雄雌別)に対し、0.0%、0.0%、0.1%、0.5%、1.0%(「オリジナル試験」)および0.0%、4.0%(「高用量試験」)の濃度で化合物を投与した。同時対照群には基礎飼料のみを与えた。F1世代の動物を無作為に選定した後、長期試験フェーズが開始され、同じ飼料濃度を用い、各群70匹の雄雌ラット(3つの対照群を含む)を対象に試験を実施した。最大30か月間の暴露が行われた。

子宮内曝露フェーズでは、試験物質に関連する影響は認められなかった。F1世代の雌ラットにおいて、4.0% FD&C Red No. 3(3029 mg/kg/体重/日)を摂取した群では、全試験期間を通じて対照群と比較して有意に体重が低下した(P < 0.01)。すべての処理群で、投与量依存的に飼料摂取量の増加が観察された。一方、血液学的検査、血清化学検査、尿検査には有意な影響は認められず、生存率にも試験物質に関連する影響はなかった。

4.0% FD&C Red No. 3(2464 mg/kg/日)を投与された雄ラットでは、甲状腺重量の増加が観察され、対照群の平均44 mgに対し、投与群では92 mgであった。また、甲状腺濾胞細胞の肥大、過形成、腺腫の発生率が統計的に有意に増加していた。一方、雌ラットでは、0.5%、1.0%、4.0% FD&C Red No. 3のいずれの濃度でも、甲状腺濾胞腺腫の発生率の数値上の増加が認められたが、統計的有意性はなかった。

本試験で設定された無毒性量(NOAEL: no-observed-adverse-effect level)は、雄ラットで0.5%(251 mg/kg/日)、雌ラットで1.0%(641 mg/kg/日)であった。

トランプ大統領は就任直後に多数の大統領令を出した。そのなかに「アメリカ市民権の意味と価値を守る大統領令」がある。

憲法修正14条第1節は以下のとおり規定する。

第1節 合衆国において出生し、又はこれに帰化し、その管轄権に服するすべての者は、合衆国及びその居住する州の市民である。

いかなる州も、合衆国市民の特権又は免除を制限する法律を制定又は施行してはならない。またいかなる州も、正当な法の手続によらないで、何人からも生命、自由又は財産を奪ってはならない。またその管轄内にある何人に対しても法律の平等な保護を拒んではならない。

今回の大統領令は、これについて以下のように述べている。

改正第14条はアメリカ国内で生まれたすべての者に普遍的に市民権を付与するものとして解釈されたものではなく、「その管轄権の対象となる」条件を満たさない者を市民権付与の対象外としてきた。

アメリカ国内で生まれても、その管轄権の対象とならない者のカテゴリーには以下が含まれる。

母親 父親
アメリカに不法滞在中 アメリカ市民または合法的永住者でない
アメリカに合法的だが、一時的に滞在中
(例えばビザ免除プログラム、学生ビザ、就労ビザ、観光ビザ等)


このため、上記に該当する場合は市民権を付与しない。本命令発効後30日以降にアメリカ国内で生まれる者にのみ適用される。

これは、不法移民や、米国籍獲得を目的としたBirth Tourism (出産旅行)の規制が目的である。不法滞在の母親を持つ子供で2022年に全米で生まれた子供は約25万5千人とされる。

これに対し、ワシントン、アリゾナ、イリノイ、オレゴンの4州が差し止めを求めて訴訟を提起。訴えを検討する間、大統領令を一時差し止めるよう求めた。

4州は、大統領に憲法を修正する権限はないと主張。大統領令が執行されれば、「米市民権を奪われた人々は不法滞在となり、強制退去や拘束の対象とされ、その多くは無国籍になる」とし、州民らが「回復不可能な損害を直ちに被る」と訴えた。

ワシントン州の連邦地裁のジョン・クーナー判事はは1月23日、25分間の審理を経て、今回の大統領令を「あからさまに違憲」と判断、差し止め命令を出した。大統領は控訴するとしており、最終的に最高裁に持ち込まれるとみられている。

ーーー

本件については既に1898年に最高裁の判断が出ている。

最高裁は1898年の United States v. Wong Kim Ark 事件で、「敵対的な職業に就いている敵性外国人の子供、外国の外交代表の子供を除き、米国内で生まれた全ての居住者の子供を明白に対象にしている。米国内に居住する外国人は全て米国の司法権に属する」とした。

背景

  • 修正第14条は、奴隷制度廃止後に、元奴隷やその子孫の市民権を保障するために制定された。
  • 19世紀後半、中国人労働者はアメリカ西部に多く移住したが、1882年の「中国人排斥法」により新たな中国人移民が禁止されるなど、移民政策が厳しく制限された。中国系アメリカ人の市民権の問題もこの差別的な背景の中で浮上した。
  • 原告 Wong Kim Ark (黄金德)は1873年にサンフランシスコで中国系移民の両親のもとに生まれた。彼自身はアメリカ生まれであり、修正第14条に基づき市民権を主張していた。彼が中国への旅行から戻る際にアメリカ入国を拒否され、市民権の有無をめぐる法的争いが生じた。

判決の内容

 最高裁は1898年に6対2の判断で以下の結論を下した:

  1. アメリカで出生したすべての人は、両親の国籍や移民ステータスにかかわらず、アメリカ市民であると確認した。
  2. 修正第14条の「アメリカで出生し、かつ合衆国の管轄下にある」という文言は、両親が外国人であっても、その子供がアメリカ国内で生まれた場合には市民権を認めると判断した。
  3. この原則には例外があり、外国政府の外交官の子供や占領軍の子供など、特定のケースには適用されない。

当時、中国系移民に対する差別が強まっていた中で、この判決は憲法の平等原則を支持するものであり、中国系アメリカ人にとって大きな勝利となった。

これによると、今回の大統領令が「管轄権の対象とならない」とする者は、不法滞在中であれ、一時的滞在であれ、「管轄権の対象」になる。

今回の大統領令を実行するためには、憲法改正か、長年認められてきた最高裁判断を覆す必要があることになる。

ーーー

強硬派の間には、1898年の最高裁判断は合法移民の子供に限定した判決だとの解釈がある。

不法入国者の流入は「侵略」で、不法移民は「敵性外国人」との主張もある。

上院は1月24日、トランプ大統領が国防長官に指名していたPete Hegsethを承認した。

Pete Hegsethは FOXニュースの司会者で、元軍人だが、軍や国家安全保障分野の上級職に就いた経験 はない。戦闘任務への女性従事に否定的である。

過去に女性への性的暴行の疑いで捜査を受けていたなどと報じられ、与党・共和党の一部からも起用を疑問視する声が出ていた。

Pete Hegsethは、14日に行われた上院の軍事委員会での公聴会で、優先課題は中国への対応だとし、「同盟国やパートナーと協力し、インド太平洋地域における中国による侵略を抑止する」と述べ、同盟国とともに抑止力の向上を図る考えを示した。

採決では反対に回る共和党議員も出た結果、賛成50票、反対50票の同数となったため、上院議長を兼ねるバンス副大統領が採決に加わり賛成したことから、ようやく承認された。

 

共和党

民主党 民主系
無所属
合計
賛成 50 0 50
反対 3 45 2 50
異動後 53 45 2 100


共和党の
Marco Rubio 上院議員が国務長官になる時点で辞任、フロリダ州知事が後任にFlorida Attorney General Ashley Moody を選び、1/16に就任した。


これで、承認されたのは3名となった。

 1月20日 国務長官 Marco Rubio 上院議員 99 対 0    本人は投票せず

 1月23日 CIA長官 John Ratcliffe元下院議員 74 対 25 (棄権 1)

 1月24日  国防長官  Pete Hegseth 50 対 50 議長が賛成票

厚生労働省は1月24日、2025年度の公的年金の支給額を24年度に比べて1.9%引き上げると発表した。

年金額の伸びを抑える「マクロ経済スライド」が発動されるため、増加率は0.4ポイント目減りした。 直近1年の物価変動率(基本)と比べると0.8ポイントの目減りである。 

2025年度の支給額は、国民年金では保険料を40年間納付した満額1人分で前年度比1,308円増の月6万9308円、厚生年金は夫婦2人のモデル世帯の場合、同4,412円増の同23万2784円。

計算は下記の通り。

直近1年の物価変動率 +2.7%
過去3年の名目手取り賃金変動率 +2.3%
採用 +2.3%
マクロ経済スライド -0.4%
最終改定率 +1.9%

マクロ経済スライドによるスライド調整率(▲0.4%)= 公的年金被保険者総数の変動率(▲0.1%) + 平均余命の伸び率(▲0.3%)(令和3~5年度の平均) (定率)

既裁定者(68歳到達年度以後の受給権者)

  実績 原則
2020年度 2021年度 2022年度 2023年度 2024年度 2025年度
直近1年の物価変動率(基本) +0.5% +0.0% -0.2% +2.5% +3.2% +2.7%

基本は物価変動率
賃金変動率が物価変動率より低い場合は賃金変動率を採用

過去3年の名目手取り賃金変動率 +0.3% -0.1% -0.4% +2.8% +3.1% +2.3%
(採用) +0.3% -0.1% -0.4% +2.5% +3.1% +2.3%  
マクロ経済スライド
公的年金被保険者の変動と平均余命の伸びに基づいて、スライド調整率を設定し、その分を改定率から控除
-0.1% -0.1%
(調整せず)

当期 -0.2% 
繰越 -0.1%
計  -0.3%

(調整せず)

当期  -0.3%
繰越  -0.3%
計   -0.6%


  -0.4%

   -0.4%

上記の(採用)がマイナスの場合は、調整せず、その分を翌年に繰り越す。

最終改定率 +0.2% -0.1% -0.4% +1.9% +2.7% +1.9%
マクロ経済スライド繰り越し   -0.1% -0.3%  

タレントの中居正広氏が1月23日、有料の会員サイトで芸能界を引退すると発表した。

英BBC(電子版)は「日本のエンターテイメント業界は長い間語られなかった性的暴行事件(sexually assaulting a woman at a 2023 dinner party held by staff )の精算に直面している」と報じた。「(フジの)社員がアレンジしたパーティ」としている。

「フジテレビがスキャンダルを隠蔽しようとしたというクレームの中、数十社がコマーシャルを差し止めた」としている。


フジテレビはあまり見ないが、BSのプライムニュースは、夜8時から10時の2時間にわたり、政治・経済問題を議論するので、よく見る。

23日も見たが、驚いた。通常は多数の大企業のコマーシャルが入るが、今回は全く入らず、代わりにACジャパンの公共広告が次々に出てきた。その後、初めて富士紡と原沢製薬のコマーシャルが出た。
通常は番組の終了に当り、提供各社の名前を挙げていき、残りは「ご覧の各社の提供でお贈りしました」と、社名は述べずに画面記載で済ませているが、今回は「ACジャパン、富士紡、原沢製薬の提供でお贈りしました」と2社の名前をあげた。

多数の大企業がコマーシャル枠を買い、代金も支払っているが、フジテレビの番組で自社の名前が広告主として出るのを嫌い、コマーシャル枠をACジャパンに譲ったものである。広告社として社名を出したのは富士紡と原沢製薬の2社だけであった。

ACジャパンによれば、

ACジャパンでは、創設から今日までさまざまなキャンペーンを展開しています。「公共マナー」「環境問題」「親子のコミュニケーション」といった時代を超えた普遍的なテーマ、「多様性」「ネットモラル」「災害」など時代の世相を反映したテーマ、公共福祉活動に取り組んでいる団体を支援するキャンペーン、阪神淡路大震災、東日本大震災など、大災害が発生した時の臨時キャンペーンを扱うものなど、社会がその時もっとも必要としているメッセージを発信し続けてきました。
ACジャパンの活動は、民間の企業・団体が持てる資源を少しずつ出し合い、社会にとって有益なメッセージを広告という形で発信しているCSR(Corporate Social Responsibility)活動です。
世の中を少しでも良くしたい。今後もこれらの様々な問題と真摯に向き合い、私たちは活動を続けていきます。

ACジャパンは、民間企業の会員社と一般生活者の個人会員の協力によって運営されている。活動資金はすべて会員社と個人会員の会費によるもので、公的な資金は一切受けていない。会員社は広告に関連する3つの業種の約1000社から構成され、それぞれの立場からACジャパンの活動を支えている。

会員である媒体社(放送局、新聞社、出版社、インターネットなど)の広告枠を無償で提供してもらうことで、広告を放送・掲載している。

通常は時々、特定の広告をするだけだが、今回は非常に多数の企業から広告枠の提供を受けたため、延々と広告を流すこととなった。

3月末までの番組の広告枠は決まっており、各社は既に代金を支払っている。問題は4月からのコマーシャルである。今の状況が続けば、コマーシャルを出す企業はごく少数にとどまり、フジテレビの収入がなくなることになる。

早急に問題を解決しないと、会社の存続が危うくなる。

付記

ライオンは1月23日、「人権侵害に関わるため、客観的な事実究明と結果に基づいた適切な対応の実行」を直接申し入れた。

フジとしては今後の広告主との関係も勘案し、1月にACジャパンの広告に差し替えた各社の広告料を請求しないことを決め、2月以降のCMのキャンセルを受け付けることを決めたとされる。

同社の月間広告料は約122億円で、同社の業績への影響は大きい。

同社は1月23日、第三者委員会の設置を決めた。

当社及びフジ・メディア・ホールディングスは、本日開催の両社の臨時取締役会において、第三者委員会の設置を決議いたしました。
この第三者委員会は、日本弁護士連合会が策定した「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」に準拠するものです。

1. 第三者委員会の設置目的
2023 年6月に当社の番組出演タレントと女性との間で生じた事案に関連した 2024 年12 月以降の一連の報道を受けて、事実関係の調査及び当社の事後対応やグループガバナンスの有効性を客観的かつ独立した立場から調査・検証するため、利害関係を有しない弁護士で構成する「第三者委員会」を設置いたしました。また、調査結果を踏まえた原因分析及び再発防止に向けた提言を得ることも目的といたします。

2. 第三者委員会への調査委嘱事項
1) 本事案への当社及びフジ・メディア・ホールディングスの関わり
2) 本事案と類似する事案の有無
3) 当社が本事案を認識してから現在までの当社及びフジ・メディア・ホールディングスの事後対応
4) 当社及びフジ・メディア・ホールディングスの内部統制・グループガバナンス・人権への取組み
5) 判明した問題に関する原因分析、再発防止に向けた提言
6)その他第三者委員会が必要と認めた事項

3. 第三者委員会の構成
 委員長:竹内 朗 (弁護士・公認不正検査士、プロアクト法律事務所)
 委員 :五味祐子(弁護士、国広総合法律事務所)
 委員 :寺田昌弘(弁護士、三浦法律事務所)

4. 今後の対応
当社及びフジ・メディア・ホールディングスは、第三者委員会による調査に対して全面的に協力いたします。第三者委員会によりますと、調査報告書は本年3 月末を目途としてご提出いただける予定です。当社及びフジ・メディア・ホールディングスは、第三者委員会から調査報告書が提出され次第、速やかに本ガイドラインに従って調査報告書を公表し、必要な対策を講じてまいります。

5. 第三者委員会委員長よりコメント
第三者委員会委員長の竹内朗氏より、次のコメントを預かっておりますので、ご紹介いたします。

「当職は本日、第三者委員会の委員長に就任いたしました。この第三者委員会は、最も独立性・中立性の高い日本弁護士連合会の第三者委員会ガイドラインに準拠して設置され、これに即して運営して参ります。フジテレビ及びフジ・メディア・ホールディングスにとって重要なステークホルダーである、視聴者の皆様、スポンサーの皆様、お取引先の皆様、株主・投資家の皆様、そして従業員の皆様が抱かれている疑問や懸念に対し、説明責任を明確に果たせるよう調査に努めて参ります」

建設現場でアスベストを吸い、肺がんや中皮腫を患った神奈川県の元労働者や遺族ら計28人が建材メーカー6社に損害賠償を求めた訴訟(横浜地裁→東京高裁)で、最高裁第3小法廷は1月15日付けで双方の上告を退ける決定をした。

メーカー4社(エーアンドエーマテリアル、ニチアス、エム・エム・ケイ、太平洋セメント)に対し22人に計約1億367万円の支払いを命じた差し戻し後の二審・東京高裁判決が確定した。

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建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込んだ元建設作業員と遺族が、国と建材メーカーに損害賠償を求めた4件の訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(深山卓也裁判長)は2021年5月17日、規制を怠った国の対応は違法と認め、「違法状態が続いた1975~2004年の被害に賠償責任が生じる」との初判断を示した。被害原因となった建材を製造した可能性が高い複数のメーカーの連帯責任も認めた。一部の元労働者について審理を高裁に差し戻した。

2021/5/19 最高裁、建設アスベスト訴訟で 国と企業の責任認める

神奈川県などの元労働者や遺族ら計28人が建材メーカー6社に計6億9300万円の損害賠償を求めた訴訟の差し戻し控訴審判決が2023年5月31日、東京高裁であった。渡部勇次裁判長は、うち4社に対し、22人へ計約1億367万円を支払うよう命じた。

賠償を命じられたのは、エーアンドエーマテリアル、ニチアス、エム・エム・ケイ、太平洋セメントの4社。

渡部裁判長は、元労働者の作業歴や建材製品の市場シェアなどに照らし、各メーカーの賠償額を算定した。

弁護団の田渕大輔弁護士は判決後に会見し、「責任を負うことが明確になった企業が、時間稼ぎのために訴訟を続けることはもはや許されない状況だ」として、各メーカー(計6社)による全面的な被害救済を求めた。

元労働者側とメーがー側がそれぞれ上告したが、最高裁は今回、双方の上告を退けた。


なお、
首都圏建設アスベスト東京1陣訴訟については、東京高裁は2024年12月26日、7社が原告282人に計約40億円の和解金を支払う内容の和解案を提示した。

2025/1/6 東京高裁 建設石綿訴訟で和解案提示

2024年12月25日の新華社通信によると、中国はチベット自治区を流れるヤルンツァンポ川(Yartung Tsangpo)の下流に世界最大級の水力発電ダムを建設する計画を承認した。

中国のCO2排出量削減目標の達成において大きな役割を果たし、関連産業を刺激し、チベットでの雇用を創出すると期待されているとしている。

新華社はダムの建設場所や建設の開始時期、事業の規模について言及していないが、承認された水力発電所の能力は年間3000kWhだとされる。中国が世界に誇る三峡ダムの3倍のスケール。

資金の規模も三峡ダム(約2542億元)の約4倍になる見込み。中国政府は2023年に「ダム建設費用は1兆元(約216000億円)に上る」との試算を発表している。

当局はこのプロジェクトがどれだけの人々を移住させ、地域の多様な生態系にどのような影響を与えるかを明らかにしていない。
ただ、当局によれば、チベットでの水力発電プロジェクトは、環境や下流の水供給に大きな影響を与えることはないという。

工事は難航することが予想される。

ダム建設には重機が欠かせないが、建設場所は奥地にあるため、その搬入が極めて困難だ。

日本時間の1月7日午前10時過ぎ、チベットでマグニチュード6.8の地震が発生、付近では多数の家屋が倒壊し、新華社通信は126人が死亡したと伝えている。

7日の地震が示すとおり、この地域は地震活動が活発であり、過去に大きな地震が何度も起きている。

ダムの建設には少なくとも10年はかかると言われている。

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ヤルンツァンポ雅魯蔵布:Yartung Tsangpo)川はチベット高原に端を発する河川で、世界で最も源流の標高が高い。

その後、ブラマプトラ(Brahmaputra)川となり、インドのアルナーチャル・プラデーシュ州に至る。そこから下流は一挙に川幅が広がり、シアング川
(Siang) と名を変える。アッサム州に達すると再びブラマプトラ川となり、バングラデシュではポッダ川と呼ばれるガンジス川に注いでいる。ガンジス川はインド洋へと注ぐ。



中国政府は「下流の水供給に大きな影響を与えることはない」としているが、インド、バングラデシュ両政府は早速懸念を表明している。

ヒマラヤ地方の大半の河川の水源付近にはこれまでダムの数は比較的少なかった。しかし中国に加え、インドもヒマラヤ地方にダム建設を急ぎつつある。建設計画中のダムの多くは米国コロラド川のフーバーダムに匹敵する4,000メガワット級の発電能力を有する世界最大級のダムになる。ヒマラヤ地方はダムが世界最多の地域となる可能性がある。

インドに流れる河川の半分は中国から直接流入していることからインドの置かれた立場は弱い。その一方で、バングラデシュはインドによる水路の迂回と水力発電計画を恐れている。バングラデシュの政府系機関の科学者によれば、バングラデシュではインドから流入する水量が1割減っただけで、1年の殆どの期間、農地の大半で水が枯渇することになる。バングラデシュ国内の5,000万人の小規模農家のうち、8割以上がインドから流入する水に依存している。

専門家は、洪水が増え、地震が起き易くなることを懸念している。また、ダムが建設されるのは、どれも氷河や雪原の融解が急速に進む河川であるが、気候変動が河川に及ぼす影響が未知数である。

今後、水問題で各国間の争いが起こる可能性がある。

トランプ次期大統領は2024年12月、1期目から目を付けていデンマークの自治領のグリーンランドについて、安全保障上の観点などからアメリカが所有すべきだと主張した。

北の隣国カナダを吸収して51番目の州にする可能性をほのめかし、カナダの当局者をあざけった。メキシコ湾をアメリカ湾に改めるとした。

さらに、米国が建設したもののパナマが四半世紀にわたって管理するパナマ運河を奪取する考えを示唆した。

記者からの「グリーンランドとパナマ運河について、軍事と経済で威圧しないと断言できるか」との質問に対し、「できない。どちらも経済安全保障に必要だ。デンマークに権利があるのか怪しい。権利を持っているなら放棄すべきだ。自由な世界を守るために」と述べた。

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1. グリーンランド

デンマーク領グリーンランドは、ロシアに近い世界最大の島で、軍事的な要衝である。

トランプ氏はグリーンランド周辺を中露の船が行き来していると指摘し、「国家安全保障上の理由で領有が必要だ」と訴えた。デンマークが譲渡に応じなければ「非常に高い水準の関税をかける」と強調した。 

トランプ氏は政権1期目の2019年にも買収計画を提案し、デンマークのフレデリクセン首相に「ばかげている」と一蹴され、外交摩擦になったことがある。

2019/8/20 トランプ大統領、「グリーンランド買いたい」

米国が懸念するように、中国はグリーンランドを狙っている。 中国政府は2018年1月、北極海の開発や利用に関する基本政策をまとめた「北極政策白書」を初公表した。北極海を通る航路を「氷上のシルクロード(Polar Silk Road)」と呼び、「一帯一路」と結びつける方針を示した。中国はグリーンランドをPolar Silk Roadの拠点とみなしている。

今回、クレムリンのペスコフ報道官はトランプ次期米大統領の発言について、「北極圏はロシアの国益と戦略的利益の領域」とし、「北極圏の平和と安定を維持することに関心がある」と述べ、状況を注意深く見守っているとした。

米国の現政権のブリンケン国務長官は1月8日、訪問先のフランスでの記者会見で「われわれは、同盟国を遠ざけるような言動をするのではなく緊密に協力することで、よりよい結果を得ることができる。その点で、グリーンランドをめぐる考えはよいことではない」と述べた。そのうえで「明らかに実現しないことなので、その議論に時間を費やすべきではないだろう」と批判した。

ドイツのショルツ首相は1月8日、ヨーロッパ各国の首脳らと意見を交わしたと明らかにしたうえで「最近のアメリカからの発言についてわれわれは理解しきれていない」と述べた。そして「国境の不可侵の原則はすべての国に適用される。小国であっても、とても強力な国家であろうと従わなければならない」と強調した。

フランスのバロ外相は8日、「グリーンランドはEUの領土だ。相手がどのような国であったとしても、EUが領土の攻撃を容認することはありえない」と述べるなど、ヨーロッパ各国からも批判的な声が相次いでいる。

2.パナマ運河

トランプ次期大統領は12月22日、アメリカが1900年代初頭に建設し、現在は中米パナマが全面的な管理権を得ているパナマ運河について、「法外な」通航料を請求していると同国側を非難し、通航料を引き下げるか、アメリカの管理下に戻すよう訴えた。

「パナマが請求している通航料金はばかげていて、非常に不公平だ」と語った。

トランプによれば、パナマ運河が中国に運営されている、運河を通航するアメリカの船舶に過剰な通航料を請求しているという。そして、来月大統領に就任するのをふまえ、「このような我が国に対する完全なぼったくりは、直ちに止まるだろう」と述べた。

香港を拠点とするCK Hutchison Holdingsは1997年にパナマ政府との契約を結び、パナマ運河の両入り口付近にあるバルボア港クリストバル港の運営権を保有し、港湾インフラの整備や近代化に投資、コンテナターミナルの運営や貨物取扱業務を行っている。

しかし、パナマのホセ・ラウル・ムリノ大統領は、「中国は全く干渉していない」と反論している。

パナマのホセ・ラウル・ムリノ大統領は、トランプ氏の発言を即座に非難。パナマ運河とその周辺地域はすべて、自国のものだと主張した。

ーーー

パナマ運河は、スエズ運河の建設者フェルディナン・ド・レセップスが初めて着工したが、黄熱病の蔓延や工事の技術的問題と資金調達の両面で難航した。
1889年にパナマ運河会社は倒産した。

フランスは運河建設から事実上、手を引くこととなり、運河建設は米国によって進められることとなった。

パナマ地峡は当初は自治権を持つコロンビア領であったが、パナマ運河の地政学的重要性に注目した米国は運河を自らの管轄下に置くことを強く志向し、1903年1月22日、米国のヘイ国務長官とエルラン臨時代理大使との間でヘイ・エルラン条約が結ばれた。しかし、コロンビア議会はこれを批准しなかったことから、米政府は、独立派の運動家と手を結び、1903年11月3日、この地域はコロンビアから独立を宣言して「パナマ共和国」となり、米国はパナマ運河条約を結び、運河の建設権と関連地区の永久租借権などを取得し、建設工事に着手した。

1905年にアメリカ資本による建設事業がスタートし、1914年8月15日に開通した。運河収入はパナマに帰属するが、運河地帯の施政権と運河の管理権は、米国に帰属した。

第二次世界大戦後になるとパナマの民族主義が高まり、運河返還を求める声が強くなっていった。1968年の軍事クーデターによって権力を握ったトリホス政権は運河の完全返還を強く主張した。これを契機に返還をめぐる協議が始まり、1977年、カーター大統領の時代に新パナマ運河条約が締結された。新条約では、恒久的に中立無差別な通航が保証される国際運河であることの再確認と引き換えに、まず1979年に主権をパナマに返還し、米国の海外領土としての運河地帯を法的に消滅させた。

その時点から20年間は運河の管理を両国共同で行うこととされ、1999年12月31日にアメリカは全ての施設を返還、アメリカ軍は完全に撤退した。

3.カナダとメキシコ

トランプ次期大統領は2024年11月25日、メキシコとカナダからの輸入に25%、中国からの輸入に10%の追加関税を就任初日に課す意向を示した。

メキシコとカナダについて、「数千の人々がメキシコとカナダを通じて米国に流入しており、犯罪と麻薬を持ち込んでいる」とし、就任日に署名予定の複数の大統領令の1つとして、両国からの全ての輸入品に25%の関税を課すとした。

両国から流入するフェンタニルをはじめとする麻薬と違法な入国者が止まるまで続けるとした。

米国は両国との間で、1期目のトランプ政権時の2020年7月1日に米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)を発効させている。同協定の原産地規則を満たした製品の域内貿易については、基本的に関税が免除されることから、日米を含む多くの企業が両国に拠点を置いて米国に輸出するサプライチェーンを構築している。

ーーー

11月末にフロリダ州でカナダのトルドー首相と会談した際、カナダがアメリカの51番目の州になるべきだなどと述べた。大統領就任初日にカナダに新たな関税を課すとしており、それによってカナダ経済が疲弊するのであれば「51番目の州になるべき」だと述べたとされる。

12月18日にも、カナダがアメリカの51番目の州になるのは「素晴らしいアイデアだ」とソーシャルメディアに投稿、「多くのカナダ人は、カナダが51番目の州になるのを望んでいる。そうなれば、税金を大幅に節約でき、軍事的保護も得られる。素晴らしいアイデアだと思う。51番目の州だ!」とした。


トルドー首相(53)は本年1月6日、与党・自由党の党首と首相の職を辞任すると表明した。9年間にわたって国を率いてきたが、退陣を求める声が与党内で大きくなっていた。

ーーー

トランプ次期大統領は1月7日、メキシコ湾の名称を「アメリカ湾」に変えると主張した。「なんと美しい名前だろう。(アメリカ湾こそ)ふさわしい。」

ワシントン・ポストによると、メキシコ湾という名称は400年以上前から使われてきた。
米政府が使用する地名については、連邦政府機関である「米国地名委員会」が、提案があったものを承認や却下する仕組みだという。

これを受け、メキシコのクラウディア・シェインバウム大統領は1月8日、メキシコ湾という名称は何世紀にもわたり国際的に認められてきたものだと反論した。

さらに、北米大陸にスペイン語で「America Mexicana」(英語でメキシカン・アメリカ)と書かれた1600年代の北米地図を示しながら、北米の名称をこれに変更するよう提案した。

米連邦議会下院は1月9日、国際刑事裁判所(ICC)への制裁法案を可決した。

Illegitimate Court Counteraction Act (不正裁判対抗法)という法律で、国際刑事裁判所 (ICC) が特定の個人に対する告訴を捜査または追求する場合、ICC の職員および関係者に制裁を課すものである。

実際には、ICCがイスラエルのネタニヤフ首相らの逮捕状を発行した対抗措置になる。決定に関与した人物だけでなく、ICCに協力した同盟・有志国を含む外国の個人も米国に保有する資産が凍結される可能性がある。

ーーー

国際刑事裁判所(ICC)は2024年11月21日、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とヨアフ・ギャラント前国防相に対し、人道に対する罪と戦争犯罪の容疑で逮捕状を発行した。

ICCは、パレスチナ自治区ガザ地区でネタニヤフ首相とギャラント前国防相が戦争手段として飢餓という戦争犯罪に刑事責任を負うと信じるに足る合理的な根拠があると判断した。

さらに、食料や水、電気、燃料、特定の医療物資の不足がガザで民間人の一部の破壊をもたらす生活条件を作り出し、その結果、子どもを含む民間人の死亡をもたらしたと信じるに足る合理的な根拠があると判断した。

国際刑事裁判所(ICC)の所長は、赤根智子氏で、2024年3月11日に日本人として初めてICCの所長に選出された。1982年に検事に任官し、東京高検や最高検検事などを務めた。2018年には日本人として3人目となるICC裁判官に就任している。

司法機関であるICCには独自の警察や執行機関がないため、容疑者の拘束については、ICCに関するローマ規程締約国124カ国・地域の協力に依存している。ロンドンを拠点とするアラブ系ニュースメディア「ニュー・アラブ」によると、オランダ、アイルランド、カナダ、ノルウェー、南アフリカ共和国がICCに協力する意向を示したという。

イスラエル首相府は2024年11月21日に声明を発表し、「イスラエルは、ICCの虚偽で不条理な告発を全面的に拒否する。いかなる反イスラエルの決定も、イスラエル国家が国民を守ることを妨げることはない」と述べた。

米国のバイデン大統領は11月21日に声明を発表し、「イスラエルの指導者に対するICCの逮捕状発行は言語道断だ。イスラエルとハマスの間に同等性はない。われわれは、イスラエルの安全保障に対する脅威に対して、常にイスラエルとともに立ち向かう」と述べた。なお、イスラエルも米国もICCには加盟していない。

ーーー

Illegitimate Court Counteraction Act は、国際刑事裁判所(ICC)が特定の個人に対して捜査や起訴を行った場合、ICCの職員や関連者に対する制裁を課すもの。

この法案では、特定の個人を保護対象者として定義している。

この中には、(1) 米軍の隊員、(2) 米軍を支援する米国政府の職員および契約者、(3) 米国の同盟国やパートナーの軍隊の一部の隊員が含まれる。

ICCが保護対象者を捜査または起訴した場合、大統領は、保護対象者の捜査、逮捕、拘留、または起訴に関与したICCの職員または関連者である外国人(個人または団体)に対し、ビザの発給停止や資産凍結の制裁を課さなければならない。

さらに、ICCが保護対象者を捜査または起訴した場合、大統領は以下の外国人に対してビザ発給停止の制裁を課す必要がある。

  1. ICCの職員
  2. ICCの代理として行動する者
  3. 保護対象者の捜査、逮捕、拘留、または起訴を支援した者の直系家族

ただし、資産凍結制裁は物品の輸入には適用されない。

また、ビザ発給停止の制裁は、(1) 米国の重要な法執行目的を達成する場合、または(2) 国連本部協定のような国際的な義務を遵守する場合には適用されない。

下院の投票結果は下記の通り。

定員 435名  

共和党 民主党 合計 欠員
賛成 198 45 243
反対 140 140
棄権ほか 21 30 51
219 215 434 1


共和党の Matt Gaetz は、未成年女性と性的関係をもった疑惑、情報が流出 2024/11/13に議員を辞職し、下院の調査無効と主張 


上院も近く、採決する見通し。



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