2008年2月アーカイブ

2007年2月に、三井物産がサウジのSaudi International Petrochemical CompanySipchem)が計画している大石油化学事業に参加するという報道を伝えた。

    2007/2/9 三井物産 サウジ石化事業に参加 

Sipchemは2006年11月のオレフィン及び誘導品事業の発表で、アラムコとの間で天然ガス供給の文書にサインしたこと、三井物産、DuPont、Lucite と最終契約書の交渉中であることを明らかにしている。

その後、三井物産やDuPont との契約締結の発表はないが、最近、2つの報道がなされている。

一つはSipchemが
Ineos とJV設立で交渉していることを認めたという報道で、多岐にわたる計画のうち、クラッカーとポリオレフィンを対象としているとされる。IneosはANM200千トン)について技術供与で合意している。

(この報道によれば、Sipchemは韓国のハンファと交渉していたが、ハンファ会長が昨年5月に、息子を殴った飲食店従業員に報復するため暴行した容疑で逮捕されたことから、サウジ政府からハンファを外すよう指示されたという。)

もう一つはSABICがこの計画に参加するという報道で、間もなく覚書が発表されるというものである。

誘導品の計画は多岐にわたっており(後述)、 Lucite International とはMMA(250 千トン)のJV交渉を行なっていると伝えられている。

ーーー

Sipchem Al-Zamil Group 11% 出資し、運営に当たっている。主な株主はサウジのほか、クエート、バーレン、UAEの企業が参加している。1999年12月に設立された。

   Al-Zamil Group についてはサウジの民間ポリオレフィン計画」参照。
      

同社のJubail での石油化学計画は3段階に分かれており、問題の計画は第三段階のものである。

(第一段階) メタノール及びブタンジオール

 (1)メタノール 
    
JV名:International Methanol Company
    出資 :Sipchem 65%
        
Japan-Arabia Methanol Co. 35%
         (三井物産 55%、三菱商事 15%ダイセル 15%、飯野海運 15%
    能力 :
1,000千トン
    
生産開始:2004/11 

    サウジでは3番目のメタノール製造会社で、三井物産が生産量の約80%を引取る。
       
2006/3/31 サウジ・メタノール計画 

 (2)ブタンジオール
    
JV名:International Diol Company
         当初はGulf Advanced Chemical Industries Ltd.GACIC)と称した。
    出資:Sipchem 53.9%
        下記各社 残り
         (
Saudi Public Pension Agency (PPA)General Organisation for Social Insurance(GOSI)
          Huntsman CorpDavy Process TechnologySabih Tahir Darwish Al Masri
          A.S. Albabtain & Company
    製品 :
Maleic Anhydride            Huntsman 技術
        BDO        75千トン Davy 技術
        
Tetrahydrofuran (THF)
        Gamma-butyrolactone (GBL)        

なお、SABICはこのたび、OSOS Petrochemical (新設)との間で、上記製品とPBT を生産するJV設立の覚書を締結している。
   
2008/1/19  SABIC、新規JV設立で MOU 締結  

 

(第二段階) 酢酸、VAM、一酸化炭素 
    2006年下期に建設開始、2009年第1四半期スタートの予定

 (1)酢酸 
    
JV名:International Acetyl Company (IAC)
    出資 :Sipchem
85%
        
Helm Arabia 15%
          
Helm AG (ドイツ)とフランス子会社Thales International Offsites のJV
    製品 :
酢酸    460千トン
          無水酢酸  50千トン

 (2)Vinyl Acetate Monomer (VAM)  
    
JV名:International Vinyl Acetate Company (IVAC)
    出資 :Sipchem
85%
        
Helm Arabia 15%
          
Helm AG (ドイツ)とフランス子会社Thales International Offsites のJV
    製品 :
VAM 330千トン
    原料 :メタノール(International Methanol
Company
        
CO、水素(United Industrial Gases Company 下記)
    技術 :
DuPont (2004/8契約)

 (3)一酸化炭素(CO)  
    
JV名:United Industrial Gases Company (UIGC)
    出資 :Sipchem 7
5%
        
National Power Company (NPC) 25%
    製品 :
CO 340千トン
    原料 :
Saudi Aramco が天然ガス供給契約

Celaneseは2007年11月、Sipchem、International AcetylsInternational Vinyl Acetate の3社に対し、3社が建設中の酢酸と酢ビプラントへの同社の技術・ノウハウの使用禁止を求めてテキサス州で訴訟を行った。

これに対してShipchem Eastman Chemical DuPont の技術を使用しており、訴えは根拠のないものと反論している。

   
2006/12/1 Celanese、サウジの酢酸メーカーを訴訟  

(第三段階)

 2006年11月、Sipchemはオレフィンと誘導品計画を発表した。

    
原料 アラムコ(エタン35%、プロパン65%
    
製品 :エチレン  1,000千トン
        プロピレン 
215千トン
        
HDPE 500千トン
        
EVA / LDPE 250千トン
        
PP
         
ANM 200千トン(Ineos 技術)
        
MMA 250千トン(Lucite 技術)
        
Carbon fiber
         
Ethylene vinyl alcohol
        
Polyvinyl acetatePolyvinyl alcoholPolyvinyl butyral
        
Polyacrylonitrile
        
Sodium cyanide
         PE pipe and film
     生産開始:
2011
     投資額:US$ 7 billion


* 総合目次、項目別目次は
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

Dow Chemical 2月25日、多くの事業を新しく作った事業グループのDow Portfolio Optimization に移すと発表した。
これに移した事業はそれぞれの戦略的価値を評価し、会社にとっての長期的価値を最大にするにはどうすればよいかー他のダウ事業との統合か、JV化か、売却かーを決める。

対象となるのは、サラン(PDVC)製品と特殊フィルム、ポリカーボネート、コンパウンド、合成ゴム、特殊コポリマーなどで、今後、その他の製品も対象とする。

ーーー

サラン製品と特殊フィルム

ダウのポリ塩化ビニリデン(PVDC)は第二次大戦中、蚊帳や靴の中敷き、弾丸包装フィルム等に使われたが、戦後は余り用途がなかった。
たまたま、フィルムメーカーの2人の社員夫婦がピクニックに行くとき、レタスをフィルムに包んで持っていくと評判になったため、フィルムを紙管に巻きつけて箱詰めし、二人の妻の
Sarah Ann の名前からSaran Wrap という商品名で1950年に発売した。
1952年からダウが生産を担当した。
日本では
1952年に旭化成とダウのJVの旭ダウが誕生、1960年からサランラップを販売した。現在は旭化成が販売。
(呉羽化学ー現クレハーも
1960年にクレラップを発売している。)

ポリカーボネート

ダウは米国に80千トン、ドイツに105千トンのプラントを持つ。
日本では住友化学との
50/50JVの住友ダウが愛媛に55千トンプラントを持つ。
また、韓国では
LGとのJVLG-Dow 65千トンプラントを持ち、現在倍増中。

合成ゴム

ドイツ、オランダ、フランスでSBRBRを製造している。

ーーー

ダウはグローバルに効率改善とコストダウンを進めているが200712工場閉鎖と人員削減策を発表した。

    2007/12/8  ダウ、合理化策を発表 

本年2月にはカナダのJVのPetromont の生産停止を発表した。

    2008/2/16 カナダの石油化学会社 Petromont、生産停止 

ダウはAsset light strategy に基づき、新規事業と既存事業のJV化を進めているが、仕上げとして昨年、PEPPPC、エチレンアミン、エタノールアミンと関連事業をクウェート国営石油の子会社 Petrochemical Industries Company (PIC) とのJVにすると発表している。

    2007/12/19 ダウとPIC のグローバル石化JV 詳報  

ポリカーボネートはこのJV構想に含まれているが、今回の発表で、このJVに入れるかどうかを再検討するものと思われる。


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   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

米国第二巡回控訴裁判所は2月22日、ベトナム戦争中の枯葉剤 Agent Orange が出生異常や癌を含む病気を起したとして、ベトナム人被害者300万人以上を代表して「Vietnam Agent Orange/Dioxin 被害者協会」が Dow ChemicalMonsanto のほか35社の農薬メーカーを相手取って行なった民事訴訟の控訴審で、下級審の却下を支持した。

ニューヨークの連邦地裁は2005年3月に、Agent Orange が戦争での毒物使用禁止に違反していることを原告が示せず、また原告の病気が化学品に結びついていることが立証できないとして却下した。

控訴審の事前ヒアリングは2007年618日に行なわれ、その後審議が行なわれていた。

    2007/6/23 ベトナムの枯葉剤被害者による訴訟
    

控訴審で裁判長は、「除草剤散布は議論を呼ぶが、Agent Orange は枯葉剤として使用されたのであり、人間をターゲットとした毒物として使われたのではなく、国際法に違反するものではない」と述べた。

控訴審は同時に、1984年の和解で退役軍人が補償を受けた後に健康被害が分かったとして訴えた退役軍人とその家族の訴えも却下した。化学会社は米軍の請負業者であり、法的責任を免れているとした。

ベトナムの原告側弁護士は控訴するとしている。

Dow Chemical は「当社はこれまで、戦時中の活動に関する問題は米国とベトナムの政府間で話をすべきだとの見解を支持してきた」と述べ、決定を歓迎した。Monsanto も同じ意見を述べた。

ベトナム政府スポークスマンは23日、この決定は不公正で間違っていると述べた。ベトナム国民は判決に非常に不満であるとし、米国政府がAgent Orange による被害に対処するためベトナムと協力しているときに、このような判決を下すのは残念だとした。

米議会は2007年に、大量のダイオキシンで汚染されたダナンの旧米空軍基地の土壌封じ込めを含め、調査とクリーンアップのために300万ドルの支出を認めた。

 

なお、1984年の和解で、Dow ChemicalMonsanto など7社は健康被害を受けた米軍人に対して180百万ドルの補償を行っている。


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中国の2007年のエチレン生産量は初めて1,000万トンを超え、1,048万トンとなった。
2006年中に完成した茂名石化、蘭州化学(増設)、中海シェル(新設)が通年稼動したのが寄与した。

年末の生産能力は997万トン。
2007年中の大きな新増設はないが、地図記載の通り、大規模な新増設が行なわれており、能力は今後更に大きく増える。

各社の能力、生産量の推移は下記の通り。(社名の前の番号は地図の番号に対応)

              能力(千トン)       生産(千トン)
03/末 04/末 05/末 06/末 07/末 2003 2004 2005 2006 2007

大慶石化

CNPC

龍江省

480

600

600

600

600

508

  456

556

517

537

吉林化学

CNPC

吉林省

530

530

750

750

850

575

  580

511

752

870

盤錦エチレン

Liaoning Huajin

遼寧省

160

160

160

160

160

156

  166

157

180

172

遼陽石化化繊

CNPC  

遼寧省

120

120

120

120

200

145

  142

146

150

74

撫順石化

CNPC

遼寧省

150

150

150

150

150

179

  175

168

180

177

北京東方化工

Sinopec

北京市

150

150

150

150

150

165

  181

178

168

160

燕山石化

Sinope

北京市

710

710

710

710

710

722

  801

812

820

749

天津石化

Sinopec

天津市

200

200

200

200

200

230

  228

207

232

226

斎魯石化

Sinopec

山東省

450

720

720

720

840

563

  456

825

839

847

揚子石化

Sinopec

南京市

650

650

650

650

650

765

  813

776

755

801

上海石化

Sinopec 

上海市

850

850

850

850

850

948

  956

962

960

869

廣州エチレン

Sinopec

広東省

200

200

200

200

200

170

  217

214

196

210

茂名石化

Sinopec

広東省

380

380

380

1,020

1,020

390

  394

348

522

963

中原石化

Sinopec

河南省

180

180

180

180

180

190

  209

192

214

211

蘭州化学

CNPC

甘粛省

240

240

240

690

690

175

  239

246

240

680

新疆独山子

CNPC

新彊省

220

220

220

220

220

236

  254

261

247

239

BASF-YPC

BASF/Sinopec

江蘇省

600

600

600

  ー

341

647

655

Secco

BP/Sinopec 

上海市

900

900

900

  ー

642

978

1,000

中海シェル

Shell/CNOOC

広東省

800

800

  ー

646

900

合計

5,670

6,060

7,780

9,670

9,970

6,117

6,266

7,555

9,412

10,480

②吉林、⑨斎魯の能力は実能力
⑲中海シェルの生産量は推定
合計生産量には自消用の小規模エチレンを含む。


* 総合目次、項目別目次は
   
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

公取委は2月22日、海上のタンカーから陸地の貯蔵施設に石油を移すときに使うマリンホースを巡り国際カルテルを結んでいたとして、独占禁止法違反(不当な取引制限)で英仏伊のメーカー4社とブリヂストンに排除措置命令を出した。
ブリヂストンには課徴金納付命令も出された。

国際カルテルで公取委が外国企業に同命令を出すのは初めて。

ーーー

米司法省は2007年5月2日、原油の海上輸送に使うマリンホースの販売で国際的な価格カルテルに関与した疑いがあるとして日欧企業の幹部8人を逮捕したと発表した。

逮捕されたのは、
 英
国に本拠を置くコンサルタント会社  PW Consulting (Oil & Marine) Ltd のオーナー
 英国の
Dunlop Oil & Marine Ltd 2名
 フランスの
Trelleborg Industrie S.A2名
 イタリアの
Parker ITR slr 1名
 イタリアの
Manuli Rubber Industries SpA 1名
 日本のブリヂストンの1名
の合計6社の8名。

本件は横浜ゴムの米司法省への自主申告により調査が開始された。

公取委も2007年5月7日、ブリヂストンと横浜ゴムに立ち入り検査に入った(EUも)。

    2007/7/9 マリーンホース国際カルテル事件  

その後、逮捕された各社責任者が順次、米国で長期の禁固刑を受けている。(ブリヂストンはまだ決定していない)

    2007/12/18 マリーンホース国際カルテル事件のその後 

ーーー

今回公取委は、以下の決定を下した。
横浜ゴムは自主申告をしたため、排除命令、課徴金納付命令を免除された。

  事業者名 本店の所在地 排除措置命令 課徴金額
1 ブリヂストン    ○  238万円
2 Dunlop Oil & Marine Ltd 英国  ○   -
3 Trelleborg Industrie S.A. フランス  ○   -
4 Parker ITR slr イタリア  ○   -
5 Manuli Rubber Industries SpA イタリア  ○   -
6 横浜ゴム    -   -
合  計  5社  238万円

 違反行為:

  日・英・仏・伊の需要家にはそれぞれの国のメーカーが受注予定者となる。
日本とイタリアの場合は2社のうち、いずれかを受注予定者とする。
  それ以外の国の需要家には、予め決めた各社の割合を勘案して、コーディネーターが選定する。
  受注価格は受注予定者が決め、他のメーカーはそうなるよう、協力する。

 排除命令:

5社は違反行為を取り止めている旨を確認し、今後日本での受注では各社が自主的に受注活動を行なうことを取締役で決議する。
  5社はメンバー及び日本の需要家に上記を通知する。
  5社は今後、相互又は他の事業者と共同して、日本の需要家発注分について受注予定者を決定してはならない。

 課徴金納付命令

 ・ブリヂストンは、平成20年5月21日までに、238万円を支払わなければならない。

 

欧州委員会は20071月、電力用ガス絶縁開閉装置で国際カルテルを結んでいたとして日欧10社に7億5千万ユーロの制裁金支払いを命じた。
日本企業は欧州で販売せず、欧州企業は日本で販売しないことも決めていたとし、日本企業は欧州での販売実績はほとんどないが、欧州で応札せず、直接的に欧州での競争を制限したため制裁金が課せられた。(日本メーカーはこれを不服として提訴している。)
欧州委員会のカルテル制裁金は当該事業者の全世界売上高の10%以下となっている。
  
2007/1/26 EU、電力用ガス絶縁開閉装置のカルテルで1200億円の制裁金 
    

日本の場合は、日本でのカルテル行為について、日本の売上高を基準に課徴金が科せられる。
英・仏・伊のメーカーは協定に基づき日本では販売していないため、課徴金の対象となっていない。
横浜ゴムは自主申告により、課徴金を免ぜられた。

ーーー

ブリヂストンは2月22日、「このような命令が出されたことを厳粛に受け止めており、役員ならびに社員一同、高い倫理意識でコンプライアンスを重ねて徹底し、信頼の回復に努めたいと考えております。」とし、命令の内容については、これから精査し対応を検討すると発表した。

横浜ゴムは2月22日、自主申告したことを初めて認め、以下の発表を行なった。

弊社は、かねてより独占禁止法の遵守に取り組み、談合やカルテルに関わる事のない様、社内ではコンプライアンス推進室を設けるなど、その排除に努めてまいりました。
 しかしながら、2006年秋、本件に関する社内調査の過程におきまして、当該商品の販売に関するカルテルへの関与が明らかとなりましたので、公正取引委員会に弊社の調査結果をご報告するとともに、課徴金減免制度の適用申請を行いましたので、本日に至るまで公表を差し控えておりました。
 弊社といたしましては、引き続き談合やカルテルへの関与等の独占禁止法違反となる行為の排除はもとより、コンプライアンス遵守の経営の徹底に全社一丸となって取り組んで参りますので、皆様の温かいご理解とご支援を賜ります様、合わせてお願い申し上げます。」

ーーー

ブリヂストンは2月12日、マリンホース事業で中南米や東南アジアなどの外国公務員に対する不適切な支払いが少なくとも1億5千万円あったと発表した。
販売を仲介する海外コンサルタントに支払った手数料の上乗せ分が複数国の公務員らに賄賂として渡った可能性があるというもので、不正競争防止法違反(外国公務員への賄賂)にあたる恐れがある。

不正競争防止法
第18条(外国公務員等に対する不正の利益の供与等の禁止)
 
 何人も、外国公務員等に対し、国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得るために、その外国公務員等に、その職務に関する行為をさせ若しくはさせないこと、又はその地位を利用して他の外国公務員等にその職務に関する行為をさせ若しくはさせないようにあっせんをさせることを目的として、金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をしてはならない。

同社はマリンホース事業から撤退することを明らかにした。


  

* 総合目次、項目別目次は
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

2004年にメキシコ前大統領のVicente Fox Quesada が同国の石油化学の拡大のため、野心的な "Phoenix project" を打ち出した。
国営石油会社 Pemex が外資と組んで、19億ドルを投資し、年産120万トンのエチレン、60万トンのプロピレンと各誘導品を生産するというものであった。

Pemex はパートナーとしてカナダの Nova Chemicals とメキシコの私企業2社 Idelpro Grupo Idesa を選んだ。
しかし、この計画は実現しなかった。

Pemex
は財務省の指示に基づき、天然ガス等の原料の価格を米国の市場価格ベースにするよう主張、これに対しパートナーはこれが長期契約としては全く unfair であるとし、結局話がまとまらず、2005初めにPhoenix project は廃案となった。

 

2月18日Felipe Calderón 大統領は、新しく年産100万トンのエチレンコンプレックスを建設して同国の石油化学を復活させるための入札を発表した。誘導品7億ドルを含め、17億ドルのプロジェクトである。

今回の計画には Pemex 自体は参加しない。

通常は計画の参加者を先ず決め、それから原料価格等の交渉を行なうが、今回は
reverse engineering の手法を使用し、先ず、長期契約での原料のエタン、天然ガスの購入の入札を行なう。ベストオファをしたところが、工場建設の交渉を行なうこととなる。


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河北省の滄州大化(Cangzhou Dahua)は2月2日、韓国・SKグループの SK (China) Investment との間でTDIの合弁会社設立の覚書を締結した。

JV名は Cangzhou Dahua-SK で、滄州大化が過半数(60-70%)を持ち、残りをSKが出資する。昨年9月から交渉を行なっていた。

滄州大化は河北省の滄州市に年産 30千トンのTDIプラントを持ち、別途同市の臨港化工区で 50千トンのプラントを建設中だが、2007年4月に、これに隣接して50千トンプラントを増設することを決めていた。

滄州大化は建設中の50千トンのTDIプラント(本年末に完成予定)をJVに出し、JVがこれに隣接して、TDI 100千トン(当初案の50千トンを倍増)と原料のDNT 60千トン、苛性ソー ダ 160千トン、硝酸 100千トンプラントを建設する。

滄州大化は現在、臨港化工区で60千トンのDNTプラントも建設中だが、これをJVに出すかどうかは決まっていない。

ーーー

滄州大化は2006年にChemChinaが60%を取得し、同社の子会社となった。
河北省に本拠を置き、上海で上場している。
尿素580千トン、アンモニア300千トンプラントを持ち、TDIでは現在、BASF、Gansu Yinguang TDI (甘肅銀光) に次ぎ、第3位のメーカー。

既存の30千トンのTDIプラントは滄州市内にあり、JVには入れずに滄州大化が従来通り運営することとなる。
この工場は昨年5月に爆発を起し、5人死亡、80人が負傷した。工場は半年間閉鎖され、11月に生産を再開している。

ーーー

中国のTDIの需給は以下の通り。(千トン)

  生産 輸入 輸出 消費
2004    66   246   7.5   304.5
2005    70   238   7.5   300.5
2006   140   163   6   297

BASFの上海プラントは2006年に稼動し、2007年には通年操業しており、2007年の生産量は増えている。

各社のTDIの能力及び計画は以下の通り。(単位:千トン)

社名 現行能力 建設中 計画 完成
上海BASFポリウレタン(上海市)*1   160      
甘肅銀光TDI(甘肅省白銀市)    50      50 2010年
滄州大化(河北省滄州市)
 Cangzhou Dahua-SK (河北省滄州市臨港化工区)
 
   30
 
 
 
   50
 
 
 
  100
 
2008年末
2012年?
藍星グループ(山西省太原市)     30      
Yantai Juli (山東省莱陽市)     15      
Bayer Material Science(上海市)*2     300   2009年
遼寧North Jinhuaポリウレタン(遼寧省 葫蘆島市)      50   2008年末
合計    285   400   150  

*1 BASFはHuntsman 及び中国側とのJVで上海にイソシアネート・コンプレックスを建設した。

*2 Bayerは上海ケミカルパークで1系列では世界最大の35万トンのMDI 設備を建設中で、2008年完成の予定だが、合わせて30万トンのTDIプラントを建設している。同プラントは当初16万トンの計画であったが30万トンに拡大された。2009年稼動予定で、Gas Phase Phosgenationを始めて採用する。

これは既存プロセスと比べ、投資額が20%、エネルギーコストが40%少なくて済み、より安全で、溶剤使用量も少ない。
年産30千トンのパイロットプラントで実績がある。


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Bayer の薬害問題

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217日の米CBSテレビの報道番組 60 Minutes One Thousand Lives A Month” というタイトルで Bayer の失血予防薬 Trasylol (Aprotinin) の薬害問題について報じた。

   http://www.cbsnews.com/stories/2008/02/14/60minutes/main3831900.shtml (番組ビデオ付き)

Bayer HealthCare Pharmaceuticals Trasylol (Aprotinin)は失血リスクや輸血リスクが高い患者の心臓バイパス手術時の失血予防薬として使われる。

Trasylol は出血をコントロールできるという研究から1993年にFDAが使用を承認した。

しかし、2006年1月に Dr. Dennis ManganoNew England Journal of Medicine に次の発表を行なった。

血行再建術を受ける患者 4,374 例を対象に、3つの薬剤(Aprotinin 1,295 例、アミノカプロン酸 883 例、トラネキサム酸 822 例)の投与と薬剤非投与(1,374 例)について評価した。

アプロチニンの使用は、複雑な冠動脈手術を受けた患者あるいは初回手術を受けた患者において、透析を要する腎不全のリスクが 2倍になることと関連していた。
同様に、初回手術群にアプロチニンを使用すると、心筋梗塞または心不全のリスクが 55%増加し、脳卒中または脳症のリスクが 181%増加した。
アミノカプロン酸とトラネキサム酸はいずれも、腎、心、脳イベントのリスク増加とは関連していなかった。

結論
アプロチニンは重篤な標的臓器障害と関連することから、継続的使用は賢明ではないことが示される。
一方、アプロチニン($1,000)より安価なジェネリック薬であるアミノカプロン酸やトラネキサム酸($50)は、安全な代替薬である。

FDAは20062月に、この研究に基づき、本剤の使用を制限するよう、勧告を出したが、禁止はしなかった。 

BayerはハーバードのDr. Alexander Walker に調査を依頼した。70,000人の患者の記録から、同じような結果が得られた。

2006年9月、Dr. ManganoはFDAに17カ国5,065名の患者の観察を提示し、本剤の禁止を要請した。
しかし、彼の研究はプラシーボ(偽薬)と対比するというきちんとした研究ではなく、病院の記録の分析であったため、あまり評判はよくはなかった。
Bayerはこの会議に出席したが、
Dr. Walker の研究結果については触れず、本剤を擁護した。
(以後の調査で、担当者がこの報告の研究方法や分析に問題があるとして質問し、会議日までに返事を受け取っていなかったとしている)
この結果、本剤は禁止されなかった。

20079月に開催されたFDA諮問委員会に先立って発表された資料において、FDAはTrasylol (Aprotinin)が透析が必要となる腎不全や死のリスクを上昇しうるという見解を表明、11月に使用が禁止された。

ーーー

番組ではDr. Mangano は、2006年1月から2007年11月までの間に 431,000人の患者が本剤の投薬を受けており、もし20061月の彼の報告時に本剤を禁止しておれば、22,000人(月 1,000人)の命 (番組タイトルの One Thousand Lives A Month) が救われたであろうと述べた。

FDA Dr. Hiatt は、もしBayerの調査結果を知っておれば、20069月の会議で禁止の提案をしていたであろうと述べている。


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2月19日のニューヨーク市場でWTI 原油価格が一時100.10ドル/バレルで過去最高値を更新、終値も100.01ドルで過去最高となった。
前日18日は米国では大統領の日で休日で、先週末の終値は95.5ドルだった。
これまでの最高は本年1月3日の100.09ドル、終値は同1月2日の99.62ドル。

OPECが35日に総会を開くが、減産を決めるのではないかとの懸念が出たのが主な理由。イランのNozari石油相が17日に、「OPECは通常3月に減産する。需要の動向や備蓄量を調べる必要がある」と述べたと伝えられた。

このほか、ベネズエラの石油国営化を巡ってのエクソンモービルとの争いでベネズエラが同社への原油出荷を凍結したこと、米テキサス州で起こった製油所の事故などから供給懸念が強まった。

ベネズエラは石油の国有化を決め、各石油会社は国営石油会社 PDVSAと条件交渉を行なった。
ChevronTotalBPStatoilHydroPDVSAの条件を呑み、Minority partner として操業を続けることとした。

しかし、ConocoPhillips Exxon Mobil はこれを拒否し、争ってきた。(ConocoPhillips は最近、合意に近づいたとしている)

Exxon Mobil 油田国有化で損害を被ったとして補償を求めて訴訟を行い、米欧の裁判所は同国が支払いに応じなかった場合に備え、PDVSAが海外に保有する資産を差し押さえる命令を下した。
米ニューヨーク連邦地裁は3億ドルの現金、英裁判所は120億ドルまでの資産の差し押さえを命じた。

今後、国際調停に入るが、不調に終わった場合、Exxon Mobil 差し押さえ資産を処分し、現金を回収できる。
但し、ベネズエラによると英国には資産はなく、問題になるのは米国の3億ドルの現金だけとしている。

これに反発してベネズエラのChavez 大統領は2月10日、Exxon Mobil が差し押さえた場合、「経済戦争」で米国への原油供給をカットすると警告、12日にPDVSAExxon Mobil への原油販売を止め、同社との関係を一時中断したと発表した。

ベネズエラは米国の原油輸入の約12%を占めており、カナダ、サウジアラビア、メキシコに次ぐ第4位となっている。

なお、東京市場でも原油、ナフサとも過去最高値に近づいている。


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韓国石油公社などが参加する韓国コンソーシアムは2月14日、イラクの北部クルド自治区内の油田4つの鉱区の開発とインフラ建設を並行して進める内容の覚書をクルド自治政府と締結した。

コンソーシアムは石油公社 38%、SKエナジー 19%、デソン産業、三千里(サムチョンリ)、ボムア資源開発(各 9.5%)、GSホールディングス、マジュコ通商(各 4.75%)、ユーアイエナジー(5%)などが構成している。

クルド自治政府の州都である Irbil 近くの3鉱区とクルド北部地域のドフク鉱区を合わせて4ヵ所の鉱区が対象で、4つの鉱区の埋蔵量は、最低10億バレル以上、多ければ20億バレルに上るものと期待される。

油田探査とは別に、双龍建設、斗山建設、極東建設などで構成された建設コンソーシアムは、2兆ウォン規模の4車線高速道路(450km)を建設する一方、上下水道施設、石油化学プラントなど、10兆ウォン規模の社会基盤施設建設にも参加する予定。

これに先立ち、コンソーシアムは2007年11月にクルド自治政府との間で5億バレル程度の原油埋蔵が予想されるBazian 陸上探査鉱区の生産物分配契約を締結している。

なおクルド自治政府の州都である Irbil にはイラク派遣の600人の韓国軍が駐在している。

ーーー

しかし、イラク政府はクルド地域内の韓国コンソーシアムによる油田開発を問題視している。

イラク国会ではイラクの石油・ガス田開発の権利を巡って行き詰っており、海外資本を規制する石油・ガス法が通らないままとなっている。
クルド地方政府はこれに苛立ち、海外石油資本と多数の契約を締結しているが、イラク政府は従来から外国企業がクルド地方政府と石油関連の合意を結ぶことは違法であると主張してきた。

昨年の韓国側とクルド地方政府との石油開発合意に抗議して、イラク政府は本年1月1日にSKエナジーに対する日量 9万バレルの輸出を一時停止、再開には1月31日までにクルド地方政府との合意を撤回するよう要求している。
イラク石油省は
2月初めに、オーストリアのOMVに対しても石油輸出の停止処分を行なっている。

これに対してクルド地方政府はこの契約は憲法の権利に基づくもので、イラクの基本法に反するものではないと主張する。
クルド地方政府は
SKエナジーに対する石油禁輸をバグダッドと交渉するとしている。


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富士フイルム、大正製薬、富山化学工業の3社は2月13日、富山化学の医療用医薬品事業の強化を中心とする戦略的資本・業務提携を行うことで基本合意したと発表した。

富士フイルムが富山化学の持つ新薬開発力を足掛かりに医薬事業に本格参入するもので、富山化学に約22%出資し提携関係にある大正製薬とも連携し、成長戦略の柱に育てる。

まず①富山化学が実施する第三者割当増資を富士フイルムと大正製薬が引き受け、次に、
②富士フイルムが富山化学の公開買付けを行う。これにより富士フイルムと大正製薬が合わせて富山化学の発行済株式総数の3分の2以上を取得し、さらに
③富山化学による全部取得条項付株式の発行を通じた方法を経て一般株主の持株を買い上げた上で、富士フイルムから大正製薬に一部の株式譲渡を行い、
最終的に富士フイルムが66%、大正製薬が34%の富山化学の株式を保有する。

これにより、
「インフルエンザ治療薬」、「アルツハイマー病治療薬」などの有力なパイプラインを保有し、優れた創薬力を有する富山化学を、特定領域(感染症、抗炎症、中枢神経など)における世界基準の有力創薬企業として大きく飛躍させ、
富山化学の企業力の向上と3社の研究開発・販売面でのシナジー拡大による新たな価値創造を通じて、富士フイルムと大正製薬がそれぞれの企業価値の最大化を実現する。
富山化学が開発中のインフルエンザ治療薬「T-705」の早期開発と安定供給体制の構築に向けた取り組みを加速する。

ーーー

富山化学は1930年に富山化学研究所として設立され、青化ソーダ、黄血塩等の製造、各種化学薬品の製造研究を行った。
1936年に富山化学工業が設立され、その事業を継承した。
1938年に医薬品製造を開始した。

同社は研究開発型企業として「新薬開発を通じて世界の医療の発展に貢献する」という経営目標を掲げ、世界基準の新薬候補化合物を安定的に創出する体制の構築を進めており、開発パイプラインに「インフルエンザ治療薬」「アルツハイマー病治療薬」「リウマチ治療薬」など有望な新薬候補を有している。

しかし新薬開発費用がかさみ、2007年3月期決算では88億円の損失を計上、2007年9月中間決算時点で、累積損失は163億円となっている。(資本金 224億円、資本剰余金 215億円)

 

富山化学と大正製薬は2002年8月に「資本提携及び医療用医薬品事業の研究開発・販売に関する戦略的提携についての基本合意書」を締結した。
 ・同年9月に大正製薬が富山化学の第三者割当増資を引受け、発行済株式の約22%を取得した。
 ・両社は同年10月、医療用医薬品分野の国内販売会社として大正富山医薬品(大正製薬 55%、富山化学 45%)を設立した。
 ・更に医療用医薬品事業の研究開発における協力体制を構築、
 ・海外の医療用医薬品事業でも提携することとした。

2007年10月には大正製薬・富山化学の両社が共同開発を行った合成抗菌剤「ジェニナック」を上市している。

ーーー

富士フイルムの事業領域は①イメージングソリューション分野、②インフォメーションソリューション分野、③ドキュメントソリューション分野の3つだが、②のインフォメーションソリューション分野のうちメディカル・ライフサイエンス事業を主要な事業領域の一つとしてグローバルに事業展開している。

デジタルX線画像診断システム「FCR」を中核に、超音波画像診断装置・電子内視鏡などとの組み合わせにより、医療画像診断における統合的ソリューションの拡販強化を図り、さらに医用画像情報ネットワークシステム「SYNAPSE」を中心としたネットワークサービス事業の拡大を図っている。

    2006/11/2 富士フイルム、超音波画像診断分野に参入 メディカル・ライフサイエンス事業拡大
      

同社は2006年10月に第一製薬より治療用放射性医薬品メーカーの第一ラジオアイソトープ研究所(1968年に第一製薬とMallinckrodt とのJVで設立、1988年に第一製薬の100%子会社)を買収し、富士フイルムRI ファーマと改称した。

特定の臓器に集まる化合物などにラジオアイソトープ(RI) を結合させ、RIから出るガンマ線を画像化またはグラフなどにして病気の診断や組織の機能検査に用いる。

また同社は1971年に写真用原料メーカーの三協化学(1990年代に医薬品製品に進出)に40%出資したが、2006年にこれを100%子会社とし、富士フイルムファインケミカルズに改称した。

同社は情報記録用有機化合物、医療原薬などの受託製造と有機合成薬品(感光材料、情報電子材料、医薬品原薬・中間体、染料中間体)の製造販売を行なっている。

同社は2006年9月、フイルムで蓄積した技術を利用してヘルスケア分野【予防分野】への参入を発表、第一弾として、機能性スキンケア化粧品、機能性体内ケア食品「エフキューブ アイ」を発売した。

これらには同社の下記の技術が使用されている。
FTD技術コンセプト(カラーフイルム技術)
「機能的に配合した成分もしくは素材を(Formulation)、新鮮なまま安定した状態で狙った場所に(Targeting)、タイミング良く適量届け、効果を持続させる(Delivery)」
「油溶成分可溶化」、「ナノ分散・乳化」、「安定化(酸化/熱/水分に対して)」技術
活性酸素の制御(写真フィルムの感度を上げたり、写真プリントの保存に使用)
ビタミンCを還元剤として活用した活性酸素の制御
コラーゲンの研究(写真フィルムの主原料)
ヒトと全く同じコラーゲンペプチドを遺伝子工学で創ることに成功、スキンケアや医薬品分野での応用研究に活用

今回、これらに加え富山化学の株式を取得して医療用医薬品事業に本格参入し、「予防~診断~治療」という全領域をカバーする総合ヘルスケアカンパニーグループを目指す。
古森重隆社長は「10年後をめどに売上高1兆円の総合ヘルスケア企業を目指す」としている。

参考 2007年3月期の医薬専業各社の連結売上高は以下の通り。

     武田薬品 1 3052 億円
     第一三共    9295 億円
     アステラス   9206 億円
     エーザイ    6741 億円

富士フイルムにとって、今回の買収の狙いを以下の通りとしている。

研究開発面では、富山化学のもつ高い技術力に富士フイルムの乳化分散技術によるナノ粒子化など、独自のFTD(Formulation Targeting Delivery)技術をはじめとする多彩な技術を組み合わせて、新たな価値創造による新薬パイプラインの強化および治験期間の短縮化を目指す。
生産面では、富士フイルムファインケミカルズの有効活用などを通じて、外注品の内製化を始めとする生産体制の効率化、災害リスク分散体制の構築、原材料共同購入などを検討する。
販売面では、富士フイルムグループの海外販売ネットワークやブランド力・知名度などを最大限に活用した、海外販売体制の構築などを進める。
また、富山化学の企業力強化に向け大正製薬と強固な協力体制を構築していくと共に、研究開発、販売分野を中心に、両社の企業価値の向上に繋がる協業の検討を進める。

ーーー

大正製薬は2001年9月に、田辺製薬との間で事業統合をすることで合意した。

医療用医薬品事業とセルフ・メディケーション事業のグローバル・カンパニーを目指すもので、2002年4月を目処に持株会社を設立し、同年10 月を目処として大正製薬の研究開発・営業基盤を含む医療用医薬品事業を田辺製薬に統合する一方で、田辺製薬の一般用医薬品事業を大正製薬に統合することで、事業別会社に再編を図るとした。

株式移転比率は、大正製薬の株式1 株に対して割り当てる持株会社の株式の数と田辺製薬の株式1 株に対して割り当てる持株会社の株式の数との比率が1 対0.55 となるように割当交付するとした。

しかし、2001年12月、両社は本件の破談を発表した。

両社の意思の疎通が欠けており、田辺が「大衆薬は大正に全面的に任せするが、医療用薬の研究開発、販売は田辺主導」とするのに対し、大正は「大正が多額の研究開発費を出しながら全て任せる訳にはいかない」とした。
田辺が「対等」を主張するのに対し、売上高、資金力で勝る大正は「持ち株会社への株式移転比率は大正が田辺の約2倍で、資本の論理が働くのは当然。意思決定は事業会社が個別にでなく、共同持ち株会社で決める形を思い描いていた」
 とした。

その後、上記の通り、大正製薬は富山化学との間で、2002年に資本提携と医療用医薬品事業の研究開発・販売に関する戦略的提携を行なった。

今回は富士フイルムに協力して富山化学への資本比率を引き上げ、今まで以上に両社の業務提携関係を強化するとともに、富士フイルムのもつ独自技術の導入による健康関連商品への応用などセルフメディケーション事業での協業を図るとしている。

 

なお、大正製薬は2月12日、ビオフェルミン製薬を買収すると発表した。TOBを実施し、最大で発行済み株式の62.0%を取得して子会社化する。乳酸菌技術を持つビオフェルミンを傘下に収め、自社の医薬品や健康食品の開発に役立てる。

本TOB成立後も引き続きビオフェルミン製薬の株式上場を維持する方針。

ビオフェルミン製薬の最大株主で38.28%を所有するT・ZONEキャピタルはTOBに同意しているが、10.01%を所有する二位株主の武田薬品は「慎重かつ迅速に検討する」としている。



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出光興産、住友化学、三井化学の3社は2月7日、「コンビナート副生分解C4留分の活用による高効率プロピレン生産システム」の主要研究設備の建設に着工した。

3社の千葉地区の工場(出光興産の流動接触分解装置、3社のエチレン分解炉)は近接立地し、パイプライン網で結びついている。

このため、各工場から発生する副生C4留分とエチレンを原料として、クリーン燃料とプロピレンを高効率で生産するシステムを開発しようと、2006年4月より「石油コンビナート高度機能融合技術開発事業(RINGⅢ事業)」の一環として共同で取り組んできた。
  RINGⅢは 2006/5/24 RING 第三次事業計画 発表 

主要研究設備の設計が終了し、関係官庁の認可をしたため、建設に着手した。

高効率プロピレン生産システムの概要は以下の通り。

     各工場で副生するC4留分を集積
     ・イソブテンを反応により選択的に重合させ、クリーン燃料に転換
     ・ノルマルブテンを濃縮製造、これをエチレンと触媒反応させ、プロピレンに転換

     (図は 2006年6月15日三社発表文から)

 
   
研究設備の概要は以下の通り。
 * プロピレン生産能力 : 年産15万トン目標
 * 研究開発費 : 約100億円
 * 負担比率 : 出光興産 50%、住友化学 25%、三井化学 25%
 * 研究設備の立地 : 三井化学 市原工場内
 * 研究設備の着工 : 2008年2月
 * 実証試験の開始予定 : 2009年度第3四半期

このシステムが完成すれば、3社の千葉地区でのプロピレンのエチレンに対する生産比率は一般的なエチレン分解炉の0.6に対し、アジアのコンビナートでもトップクラスの0.9以上となり、より付加価値の高いプロピレン系製品への転換が促進される。

ーーー

3社のうち、住友化学と三井化学は2000年11月17日、2社の全面的統合で基本合意し、先行してポリオレフィン事業を統合し、2002年4月1日に三井住友ポリオレフィンの営業を開始した。

しかし、統合比率に関して両社の見解の隔たりが埋まらず、結局2003年3月31日に統合の解消を発表、三井住友ポリオレフィンも同年10月1日に事業を解消した。

 

その後、三井化学と出光興産(及び出光石油化学)は2004年2月に「千葉地区における提携に向けた包括的検討」を開始し、両社のポリオレフィン事業全体を統合することに合意、2005年4月1日に合弁会社プライムポリマーの営業を開始した。

プライムポリマー 出資比率  三井化学 65%、出光興産 35% 

なお、住友化学と三井化学は、丸善石油化学の京葉エチレンに共同で参加しているほか、三井化学市原工場のメタロセン触媒による気相法LLDPE事業に住友化学が参加し、これをJVの日本エボリューとしている。
このほか、両社はPSのJV(
日本ポリスチレン)、ABSのJV(日本エイアンドエル)をつくっている。

京葉エチレン  生産能力 (当初)年産60万トン (現在)768千トン
          出資比率  丸善石化 55.0%、住友化学 22.5%、三井化学 22.5%
          引取比率  丸善石化 50%、住友化学 25%、三井化学 25%

日本エボリュー 生産能力 (当初)年産20万トン (現在)24万トン 
          出資比率  三井化学 75%、住友化学 25% 
          引取比率  プライムポリマー 15万トン+増設 4万トン、住友化学 5万トン

日本ポリスチレン
          出資比率  住友化学 50%、三井化学 50% 
          住友化学千葉工場内にPSプラント         

日本エイアンドエル
          出資比率  住友化学 67%、三井化学 33%
          住友化学千葉工場内にSBRラテックスプラント    

 


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カナダの石油化学会社 Petromont 212日、QuebecVarennes Montreal での生産を430日から無期限に停止すると発表した。

石化原料を競争力ある価格で入手するのが慢性的に難しくなったことやカナダドル高を理由に挙げている。
同社は、「これらの要素は収益性に大きな影響を与えており、北米の石油化学全般にこのような不利な状況があることを勘案すれば、操業を停止するしかない」としている。

Petromont  Dow Chemical Canada Quebec 州政府の子会Ethylec Inc. 50/50 Limited Partnership で、1980年に設立された。
Montreal地区のVarennes 工場でエチレン297千トン、Montreal 工場でHDPE 278 千トンを生産する。
従業員は
325名、年間売上高は750百万ドル。

Steam Cracker ではいろいろの原料を使用可能で、原料により、エチレン以外にいろいろな製品(プロピレン、Mixed C4、水素、ペンテン、燃料油、アセチレン、その他)を生産できる。
HDPEは北米市場で販売している。

カナダドルは20073月には 0.85米ドルであったが、200711月には1.08米ドルのピークとなり、現在では丁度 1.00米ドルとなっている。
Petromont にとり、米国向けの製品売価が15% 下がることを意味する。 

工場は、原料状況が好転したり、工場の買い手が出てくる場合に備えて、動かせる状態で維持するとしている。

なお、親会社のダウは2007124日に「合理化策」を発表したが、Petromont については長期的にみて採算悪化の見通しを理由に持分の消却を実施するとしている。

   2007/12/8  ダウ、合理化策を発表 

 

Montreal 地区では、2007年10月Ineos Nova PSプラント(55千トン)を年末に停止すると発表している。

ーーー

2006年2月15日にスタートした本ブログは3年目に入りました。

   2006/2/15 プラスチック100周年 


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経済産業省原子力安全・保安院は2月15日、三菱化学に対して、鹿島事業所の高圧ガス保安法に基づく完成検査及び保安検査に係る認定を取り消す行政処分を行い、同社あて通知したと発表した。

三菱化学は事故の発生原因として
分解炉内のデコーキング作業が終了し、クエンチフィッティング元弁フランジ部に挿入していた仕切板を取り出し中に、AOV(空気駆動弁)が開き、クエンチオイル(急冷油)が流出
鹿島事業所の「作業保安規則」に基づく「工事安全指示書」では、バルブの施錠確認を行うこととなっていたが、施錠の確認が行われなかった。また、「作業基準」に基づく「作業確認リスト」には、施錠の記載がなく、施錠が実施されなかった
としている。

   2008/1/9 三菱化学鹿島事業所 火災事故 その後 

高圧ガス保安法に基づき、完成検査及び保安検査を自ら実施することができる者(認定完成検査実施者及び認定保安検査実施者)として経済産業大臣の認定を受けている同社について、施錠が確実に実施されなかったことは、鹿島事業所の保安体制において認定基準への不適合があったものと認められることから、認定を取り消す行政処分を行ったもの。

この認定の取消しにより、三菱化学鹿島事業所は、補修等の変更工事を行う際には県知事が行う完成検査を受けることが必要となり、従来は4年に一度でよかった定期修理を毎年実施し、県知事が行う保安検査を受けることが必要となる。

また、同事業所は、今後2年間は、この認定を受けることができない。

再認定を受けるまでの間は鹿島事業所全体(蒸気等の用役が停まるため用役の供給を受ける日本ポリエチレン、日本ポリプロなどの同事業所内の関連会社を含め)が毎年、約1ヶ月の操業停止、定期修理の実施が必要となり、数十億円の定修費と減産損で大きな負担となる。

 

(参考)高圧ガス保安法に基づく完成検査及び保安検査に係る認定について

  完成検査 保安検査
原則 コンビナート等の高圧ガス製造事業者は、その製造設備について、補修等の変更工事を行う際には、都道府県知事の許可を得るとともに、完了時に都道府県知事が行う完成検査を受けなければならない。
(高圧ガス保安法第20条第3項本文)
高圧ガス製造事業者は、その製造設備について、都道府県知事が行う保安検査を年1回受けなければならない。
(同法第35条第1項本文)
認定 自ら変更工事に係る完成検査を行うことができる者として、経済産業大臣が認定を行った者(認定完成検査実施者)については、自ら完成検査を行い、その記録を都道府県知事に届け出れば、都道府県知事による完成検査を受けなくても良い。
(同法第20条第3項第2号)
自ら保安検査を行うことができる者として、経済産業大臣が認定を行った者(認定保安検査実施者)については、自ら保安検査を行い、その記録を都道府県知事に届け出れば、都道府県知事による保安検査を受けなくても良い。
(同法第35条第1項第2号)
1997年4月、要件を満足していると認められた設備については、最高5年の連続運転が可能となった。
取消 「高圧ガスによる災害が発生したとき」、「認定基準に該当していないと認められるとき」等は、経済産業大臣は、認定を取り消すことができる。(同法第39条の12第1項)
認定取消し後2年間は、再び認定を受けることができない。(同法第39条の6第1項第5号)

*2003年6月以降、認定保安検査実施者等の認定を受けた事業所において、法令に定められた検査が適正に行われていなかった事例が続けて報告された。経済産業省は認定保安検査実施者等の認定を受けていた全ての事業所に対し、保安検査の実施状況等を報告するよう指示、同年9月8日までに提出された各事業者からの報告について調査を行い、合計で6社、11事業所が認定を取り消された。

東ソー/四日市事業所、新日本石油精製/麻里布製油所・大阪製油所、三井化学/大阪工場、
日本ゼオン/徳山工場・水島工場、協和油化/四日市工場・千葉工場、
旭化成ケミカルズ/水島製造所B地区・同C地区・川崎製造所


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サントリーと100%子会社のAustralia Florigene が世界で初めて開発に成功した「青いバラ」(写真は同社発表から)が、2008年1月31日付で、カルタヘナ法に基づく第一種使用規定(切り花の用に供するための使用、栽培、保管、運搬及び廃棄等)の承認を得た。
同社では生産・販売体制を整え、2009年から発売する予定。

植物の色は含まれる色素の働きによるもので、色素には
 フラボノイド(
アントシアニン、フラボン、フラボノール、カルコン、オーロンなどの総称:白・黄・橙・赤・紫・青など)、
 ベタレイン(
ベタシアニン:赤から紫色、ベタキサンチン:黄色)、
 
カロチノイド(カロチンとキサントフィル:黄・橙)、
 クロロフィル(
葉緑素:緑
の4種類がある。

青色に見せる働きをするものは、フラボノイドの一種のアントシアニンで、その中でも特に重要な青色の色素が「デルフィニジン」。

バラにはもともとこのデルフィニジンが含まれておらず、このことから "Blue rose" は英語で "impossible" を意味した。

ーーー

サントリーは1990年に花の品種改良などを手がける豪州のバイオベンチャーのCalgene Pacific Pty Ltd.と共同で青いバラの開発を始めた。

Calgene Pacific 1994年にオランダの Florigene B.V.の資産を買収し、社名をFlorigene に改称した。
サントリーは2003年12月、Florigene を買収し、100%子会社とした。

開発は次の2つのポイントを試行錯誤しながら行なわれた。
 ・青色遺伝子の取得
 ・バラに遺伝子を導入して遺伝子組換えバラを作製する方法の開発

1991年ペチュニアから青色遺伝子を取得し、特許出願した。

1995年にこれを組み込んで、世界で初めての青色カーネーションが誕生した(1997年より発売)が、バラでは失敗した。

1996年にパンジーの青色遺伝子を入れたバラで研究を開始、1998年~1999年頃にはやや青みを帯びたバラを得ることに成功、デルフィニジンが100%近く蓄積する工夫を行い、2004年、ついに青いバラの誕生に至った。

ーーー

カルタヘナ法は「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」の別称で、2004年2月19日から施行されている。

(目的)
第一条 この法律は、国際的に協力して生物の多様性の確保を図るため、遺伝子組換え生物等の使用等の規制に関する措置を講ずることにより生物の多様性に関する条約のバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書の的確かつ円滑な実施を確保し、もって人類の福祉に貢献するとともに現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的とする。

カルタヘナ議定書(Cartagena Protocol on Biosafety):
現代のバイオテクノロジーにより改変された生物(Living Modified Organism)が生物の多様性の保全及び持続可能な利用に及ぼす可能性のある悪影響を防止するための措置を規定しており、生物の多様性に関する条約第19条3に基づく交渉において作成されたもの

この法律では、遺伝子組み換え生物等の使用等に先立ち、その使用形態に応じた対処の仕方(交雑防止措置など)を実施することを規定している。

遺伝子組み換え生物等の輸入・輸出、栽培、飼養、販売等にあたり、その開発者や輸入者などは手続きを行なったうえで主務大臣の承認を受ける義務が定められている。

「第一種使用」とは、一般ほ場での栽培や食品原料としての流通等の「環境中への拡散を防止しないで行う」使用のこと。

「第二種使用」は実験室内での研究等の「環境中への拡散を防止する意図をもって行う使用」で、拡散防止措置が必要とされる。

 


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アラブ首長国連邦の Abu Dhabi 政府は、拡大しつつある同国の石油化学、鉄鋼、アルミニウムの川下分野の開発のため、 'Polymer Park' 'Metal Park' を創設することを決めた。

2つの経済地区 'Polymer Park' 'Metal Park' は、投資促進のために2004年に設立された独立政府機関のZonesCorp との協力の下に、Mussafah industrial estate に設置される。

ここに誘致される企業に対しては、税制その他の恩典を与えることも検討している。

先ず、石化の川下のプラスチック加工事業を広げるため、資金供与を行なう。
サウジアラビア政府が
1970年代央にファンドを使って石化の川下産業を興したことを参考にした。

2006年に基盤産業の促進のために政府が設立したAbu Dhabi Basic Industries Corporation (ADBIC) が、Investment Fund for Plastic sector として今年先ず 150百万ドルを供与し、中小企業などが国産のプラスチックを最終製品に加工する工場を設立するのに利用する。
プラスチック加工については台湾のプラスチック産業(輸出用が中心)をモデルにするとしている。

ADBICでは、同国の大企業や中小企業でのこれに対する反響は大きく、18ヶ月以内に最初の工場の杭打ち式が行なわれるだろうとしている。それぞれの投資は2025百万ドル程度と見ており、5年後には累計で10億ドル程度の投資を予想している。

これとは別に、ADBIC 自身が38.2億ドルを投じてパイプ、ケーブル、自動車部品などを製造するプラスチック加工工場の建設を検討している。合弁事業として来年にも建設を始めるとしているが、相手先は明らかにしていない。

Abu Dhabi の石油化学は、Abu Dhabi National Oil CompanyとBorealis JVのAbu Dhabi PolymersBorouge)がAr Ruwais にコンプレックスを持っている。
(デンマークの
Borealis は今はAbu Dhabi IPCI65%、オーストリアのOMV35%出資するJVとなっている。)

稼動中の第1期はエチレン 60万トン、PE 60万トンで、現在、第2期(エチレン150万トン、PP 80万トン、PE 54万トン)を建設中。

2006/6/2  湾岸諸国の石油化学ー3 アラブ首長国連邦(UAE) 
2006/12/4 アブダビ・ポリマーズ、第2エチレン建設着工 

ーーー

同国はまた、アルミや鉄鋼などの事業を拡大しているため、石化に続いてこの分野での主に輸出用の加工業へのInvestment Fund も検討している。(こちらはまだ概念段階で、暫く時間がかかる)

Metal Park についてADBIC は、アルミ精錬工場と製鋼工場の増設が動き出した時点で、製品がここの各社で消費されることを期待している。

同国のこれら産業の動向は以下の通り。

アルミ:
Abu Dhabi
政府の投資会社 Mubadala Development Dubai Aluminium と組んで、60億ドルを投資して世界最大のアルミ精錬工場を建設する。首都 Abu Dhabi 近郊に建設するもので、能力は120万トン2,600-megawatt の発電所とともに建設する。
(現在の最大プラントはRussian Aluminium のシベリアのBratsk 工場で、2004年に965千トンの生産を行なっている。)

一方、Dubai Aluminium Jebel Al 工場は2006年に861千トンを生産し、世界7となったが、2010までに100万トン以上に拡大する計画である。

鉄鋼業では、ADBIC Emirates Iron & Steel Factory を買収して、これを Emirates Steel Industries と改称した。
2001年設立で、唯一の異形鉄筋鋼棒のメーカー。圧延工場の設計能力は60万トン。
ADBIC では5ヵ年計画で、能力を順次 500万トンにまで増やす計画を立てており、現在は10億ドルを投じて140万トンに増やす計画を実行中である。

 


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米国エネルギー省のアルゴンヌ国立研究所(Argonne National Laboratory)は25日、画期的なエチレン製法を開発したと発表した。

高温の水素透過膜でエタンから水素を取り除きエチレンをつくるという方法で、「これまでのように高コストで無駄の多い、公害物質を放出する製法とは異なり、クリーンでエネルギー効率のより製法だ」としている。

新しい膜は水素だけを通すため、エタンは空気中の酸素や窒素と接触せず、従来の熱分解法で発生するNOCO2CO等を発生しない。
また、絶えず熱の投入が必要な熱分解法と異なり、膜を通して出てきた水素が空気中の酸素と反応してエネルギーを発生させるため、反応に必要なエネルギーの投入が不要である。

更に、通常は C2H6(+heat)=C2H4+H2 の反応で、反応器内の組成が平衡に達すると(水素が平衡濃度に達すると)反応は進まないが、水素透過膜は生成した水素のみを透過させるので、反応式右辺の H2 が反応系から減少し(即ち平衡が破れ)、エタンのエチレン+水素への分解反応がどんどん進行する。発表文に以下の説明がある。

The membrane reactor thinks: Hey, I haven't reached equilibrium yet, let me take this reaction forward.

現在のところは実験でエチレンを生産しただけであるが、研究者は産業界と提携して商業的にこの膜を生産することを考えている。

この研究は6月にボストンで開催される 2008Clean Technology 会議で紹介される。

ーーー

アルゴンヌ国立研究所はシカゴ西方にあり、1946年に設立された米国で最初の国立研究所である。
元はシカゴ大学の冶金研究所で、1942年2月、ここで
Enrico Fermi などが世界で最初の核分裂連鎖反応を行なった。
戦後は核の平和利用に携わった。

現在の従業員は2,800人で、うち科学者とエンジニアは1,000人、そのうち博士号所有者は750人に達する。
年間予算は
530百万ドルで、200以上のプロジェクトを実施している。

研究は次の5つの分野に分かれている。

1) Basic science
 
  • Biosciences
  • Biodefense
  • Chemistry
  • High Energy Physics
  • Materials Science
  • Mathematics and Computer Science
  • Physics
2) Scientific facilities
3) Energy resources
4) Environmental management
5)

National Security

 

ーーー

一方、Dow Chemical 124日、“Methane Challenge” の研究助成金 640万ドルをCardiff University Northwestern University に与えると発表した。

Dow Chemical 20073月、メタンから直接エチレンやプロピレンなどを製造する研究の案を募集した。
商業的に採算の取れる技術を得る研究で、最初に合成ガスの生産が必要な、メタンからメタノールなどをつくる既存の間接法は対象とならない。

メタンは世界の多くの地域に存在するが、化学品や液体燃料にするのが難しく、Dow Chemical では広くアイディアを募集することとしたもの。

100件の提案のなかから、2つの大学の案が選定された。


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2007年には欧州委員会は多数のカルテルを摘発し、多額の制裁金を科したが、日本の企業も多く含まれている。     

対象分野 主な対象企業 制裁金
(百万ユーロ)
送電設備 三菱電機、東芝、日立製作所、独・シーメンス   751
エレベーター 三菱電機、米・オーチス   992
ファスナー YKKグループ、独・プリム   329
業務用ビデオテープ ソニー、富士フィルム、日立マクセル    75
建築用板ガラス 旭硝子、日本板硝子、仏・サンゴバン   487
クロロプレンゴム ENI、旧DuPont Dow Elastomers電気化学、東ソー    243
NBR  (2008/1) Bayer日本ゼオン    34

 

これに対し、各社が順次、対応を発表している。

送電設備(ガス絶縁開閉装置)(単位:千ユーロ)

   2007/1/26 EU、電力用ガス絶縁開閉装置のカルテルで1200億円の制裁金    

  免責額 制裁金
Siemens(ドイツ)     396,563
Siemens(オーストリア)      22,050
ABB(スイス)  215,156       0
三菱電機     118,575
東芝      90,900
Alstom(フランス)      65,025
Areva(フランス)      53,550
日立製作所      51,750
Schneider(フランス)      8,100
富士電機システムズ      3,750
日本AEパワーシステムズ*      1,350
合計  215,156   750,713
* 富士電機システムズ、日立、明電舎のJV

三菱電機、東芝、日立製作所、富士電機ホールディングスは、それぞれ欧州第一審裁判所へ提訴した。

日本企業は欧州での販売実績はほとんどないが、上記の取り決めに従って欧州で応札せず、直接的に欧州での競争を制限したため制裁金が課せられた。

欧州の送電設備市場は地元勢が強く、機器の仕様も独特。製品投入には新た場開発投資が必要になる。
欧州市場参入を見送った経緯について「参入しても採算を取るのは難しい」との判断があったと説明する。

ーーー

エレベーター(単位:千ユーロ)

   2007/2/28 EU、エレベーターのカルテルで過去最高の罰金 

社名 減額 罰金
KONE Oyj  138,130  142,120
三菱電機      18    1,841
Otis  208,227  224,933
Schindler    5,277  143,780
ThyssenKrupp   37,980  479,670
合計    992,312

三菱電機の発表はない。(少額なため、受け入れたと思われる)

ーーー

ファスナー 4つのカルテルで摘発)(単位:千ユーロ)

   
Prym group(ドイツ)   40,538千ユーロ
YKK group    150,250
Coats group(英)      122,405
他 4社         15,451
合計          328,644

YKK は2007年12月7日、欧州第一審裁判所に提訴した。

欧州委が主にカルテルに関与していたとするのはYKKの独子会社のYKK Stocko Fasteners GmbH だが、1994年にYKKが資本参加し、1997年に全額出資の子会社とした。
カルテルはYKKが資本参加する以前に始まっており、情報開示の不足があったとして、旧オーナーに損害賠償請求をしている。
同子会社は欧州だけで事業を展開しているが、欧州委はYKKの全世界売上をもとに制裁金を科したことを不服としているもよう。

ーーー

ビデオテープ (単位:千ユーロ)

Sony  47,190  
Fujifilm  13,200 協力で40%減
Hitachi Maxell  14,400 協力で20%減
合計  74,790  

日立マクセルは2008年1月31日、制裁金 14,400千ユーロを支払うと発表した。
提訴による裁判費用などを考慮した。

付記 ソニーは2月15日、制裁金支払いを発表した。

ーー

建築用板ガラス (単位:千ユーロ)

  2007/12/1 欧州委員会、板ガラスカルテルに制裁金
    

Asahi (Japan)   65 000
Guardian (USA)  148 000
Pilkington (UK) 日本板硝子  140 000
Saint-Gobain (France)  133 900
TOTAL  486 900

なお、EUは自動車用ガラスについても調査を行なっている。

日本板硝子は2008年1月31日、制裁金140,000千ユーロを支払うと発表した。
提訴による裁判費用などを考慮した。

日本板硝子は自動車分を含めた過料額を3.5億ポンド(約 465百万ユーロ)と見込み、ピルキントン社買収後の暖簾と合わせ、20年定額で償却することとし、2007年3月期決算に折り込んでいる。

旭硝子は2008年2月5日、課徴金の支払いに応じることとしたと発表した。
同社グループの主張が欧州委員会による課徴金の決定に概ね反映されたこと等を総合的に勘案した。
同社は自首減免制度に基づき、EUの調査に協力し、追加証拠を提出して、制裁金の減免を受けている。

なお同社は2008年1月15日、グループ経営の立場から監督上の社会的責任を痛感しているとし、代表取締役、取締役会議長、並びに関係執行役員は1月度から3ヶ月間、報酬の30~10%を自主返上することにしたと発表した。

同社は2007年12月期の決算で、自動車ガラス分も含めた課徴金の引当として324億円の特別損失を計上した。

ーーー

クロロプレンゴム (単位:千ユーロ)

   2007/12/11 欧州委員会、クロロプレンゴムのカルテルで 243.2 百万ユーロの制裁金

  本来の制裁金 減額 実際の制裁金
Bayer    201,000 *1  100%        0
東ソー       9,600   50%     4,800
DuPont/Dow
(うちDow) 
   79,000
  (64,900)
  25%     59,250
    (48,675)
ENI     132,160 *2      132,160
電気化学     47,000       47,000
合計        243,210

電気化学は2008年1月15日、「当社およびデンカ ケミカルズ社は競争制限行為を意図したことはなく、かつ事実認識も異なるため、欧州第一審裁判所へ提訴することにした」と発表した。
但し、「発生する可能性がある最大損失額(4,700万ユーロ=約76億円)を特別損失として引当計上する」として、連結決算予想を修正した。


一方、
東ソーは2008年1月31日の役員会でこれを「応諾」することを決めた。
訴訟を提起した場合の裁判の長期化による時間的・費用的負担、課徴金の更なる減額の可能性などを総合的に判断した結果、裁判によらず早期解決を図ることが最善と判断した。

ーーー

なお、従来は欧州第一審裁判所への提訴では、ほとんどのケースで制裁金が引き下げられていたが、2007年12月の家畜用のビタミンB4 カルテルではBASFに対する制裁金を引き上げる判決がなされた。
企業は今後、控訴戦略をよく考えるべきだとの意見が出ている。

2007/12/14 欧州第一審裁判所がカルテルの制裁金を増額 


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武田薬品工業は2月4日、Amgen Inc.との間で、Amgen が保有する癌、炎症、疼痛などの疾患領域における臨床開発品目に関するライセンス契約を締結すると同時に、同社の日本の100%子会社であるアムジェンK.K.の株式譲渡契約を締結したと発表した。

Amgen は、アムジェンK.K.の全株式を武田薬品に2008年3月末までに譲渡する予定で、譲渡後は、アムジェンK.K.は武田薬品の100%子会社としてAmgenからライセンスを受けた品目の開発業務を担当する。

アムジェンK.K.1992年設立で、資本金475億円、従業員は派遣・契約社員含み161名。

今回のライセンスは、抗癌剤の Motesanib diphosphate と、Panitumumabを含む 12品目の抗体医薬などのバイオ医薬品(うち1品目は、今後、最終的に契約対象とするかどうかを決定)の合計13の品目が契約対象となっている。

抗癌剤 Motesanib diphosphateは、米国で2006年9月、欧州で2006年11月に承認を取得し、日本でも非小細胞肺がんの適応で承認申請準備中で、他のがんでも開発を続けている。

Panitumumabは、がん細胞が増殖するために必要な信号を受け取る受容体(EGFR)を阻害して、細胞の増殖を停止させたり、細胞死を誘導する薬剤で、分子標的治療薬あるいは免疫抗体療法と呼ばれる。
FDAは2006
9月転移性大腸がん治療薬として承認した。

今回の契約内容は次の通り。

  Motesanib diphosphate Motesanib diphosphate 以外
武田の権利 日本での独占的開発・販売権
海外でのAmgen との共同開発・販売権
日本での独占的開発・販売権
契約一時金 100百万米ドル 200百万米ドル
武田の開発費負担 日本における開発費全額
海外における開発費の60%
日本における開発費全額
海外における開発費の一部(最大 340百万米ドル)
マイルストン支払い
(目標達成時)
最大 175百万米ドル
(1、2番目の効能取得にかかる開発の進捗に応じ)
最大 362百万米ドル
(開発の進捗に応じ)
ロイヤルティ支払い 日本での販売額に応じたロイヤリティ
(10%以上:double digit royalties
販売額に応じたロイヤルティ
(10%以上:double digit royalties)
海外販売から得られる利益 武田薬品とAmgen が等分  ー

Amgen 会長兼社長兼CEOの Kevin Sharer は、「今回の武田薬品との契約締結は、当社にとって今後10年間の成長を加速させるものである。当社の開発パイプラインが、日本ならびに世界中の患者にとって革新的な治療薬となりうると高く評価されたものと考えている」と述べている。

長谷川閑史武田薬品代表取締役社長は、「Amgen から導入した品目は、当社の重点領域である癌、骨・関節疾患領域などにおける研究開発パイプラインの強化に資するものである」と今回のライセンス契約を高く評価している。

ーーー

武田薬品はゲノム情報の活用などを通じて創薬ターゲットの探索力強化を図ってきた。

2003年8月にキリンビールのヒト抗体作製技術に関するライセンス契約を結んだのを皮切りに、数々の抗体作製技術の導入を進めてきた。

キリンビールは、独自に開発した巨大なヒト遺伝子を導入する技術を用いて、ヒト抗体産生マウスを完成させた。
1999年に米
国 Medarex, Inc.  ヒト抗体産生マウス事業について全世界で包括的な提携を結び、KMマウス(両社の頭文字をとった世界最高レベルのヒト抗体産生マウス)を開発し全世界で完全ヒト抗体技術を提供している。

武田薬品はキリンビールのヒト抗体産生マウス技術を用いて、武田薬品の選んだ抗原に対し完全ヒト抗体を作製し、全世界で治療薬および診断薬の開発、製造、販売を行うこととした。

2007年11月に同社は米国に Takeda America Holdings の100%子会社として、Takeda San Francisco, Inc. を設立した。

バイオ医薬産業の集積地であるサンフランシスコに設立した同社を武田グループの抗体医薬研究機能の中心と位置付け、同研究を加速することにより、抗体医薬の創製・開発・活性強化・製造などについて高い技術を備えた基盤の構築と早期上市を目指す。

長谷川社長は、「Takeda San Franciscoは当社の抗体医薬研究を加速させる重要なステップです。当社は、優秀な人材確保と積極的な研究投資を通じて、自社研究の推進および他社との共同研究・提携あるいは買収などあらゆる可能性を追求し、抗体医薬研究を加速してまいります。これと並行して、抗体医薬以外のバイオ医薬、核酸医薬や再生医薬などの新たな創薬技術を確立することにより、自社研究開発パイプラインのさらなる強化に取り組んでまいります」と、述べている。

今回のAmgen との提携はその基盤強化の一環である。

ーーー

Amgen 1980年にAMGen (Applied Molecular Genetics) として設立され、1983年にAmgen と改称した。

1983と85年にAmgen は2つの製品を出した。

EPOGEN(R)Epoetin Alfa):1983年開発、1987年特許
 遺伝子工学のテクノロジーによって作られた蛋白質で、腎臓に障害のある患者に用いられ、赤血球の生産を刺激・制限することで、患者の貧血の比率を低下させる

NEUPOGEN(R)Filgrastim):1985年開発、1985年特許 
 
癌患者のための新薬で、骨髄を刺激し、感染症に対する免疫機能を有する白血球細胞の増殖を促進する。

1992年に売上高が10億ドルを突破、1996年に20億ドル、1999年に30億ドルを突破した。

2001年12月、Amgen は抗炎症剤に強い生物薬剤メーカーであるImmunex を約160億ドルで買収すると発表、2002年7月、買収が完了した。

 

なお、バイオテクノロジーでAmgen と争っていたGenentech Herbert Boyer らが1976年に設立、ヒトインスリンとヒト成長ホルモンの大量生産に成功)1990年にRoche Holdingの傘下に入っている。

 


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JT、日清食品、加ト吉の冷凍食品事業の統合が、冷凍ギョーザ事件の関連で中止となった。

200711月に3「加ト吉、JT 及び日清食品における冷凍食品事業の統合について」の発表を行なった。

先ず、JTがTOBで加ト吉を100%子会社とし、
日清食品がこれに49%を出資し、
JTと日清の冷凍食品事業を加ト吉に移管するというもの。

これにより、売上高 約2,600億円の日本最大級の冷凍食品メーカーが誕生する。

  加ト吉  1,960億円
  JT     500億円
  日清食品 150億円
  合計   2,600億円

2007年4月に、加ト吉が過去6年にわたって組織ぐるみで循環取引による巨額の架空売上を計上していたことが発覚した。
冷凍クリや健康食品を伝票上で売り買いし、実際には倉庫に保管されたまま名義変更だけが繰り返され、伝票上で数百億円の取引を行っていた。

このため社長がJT出身者に代わり(JTは2000年に加ト吉の株式5%を保有)、JTによる加ト吉救済が取り沙汰されていたが、即席めん以外の事業の拡大を模索している日清食品が加わることになった。

また、これを機に、JTが日清食品に5%程度の出資をする交渉が進められた。
日清食品には米投資ファンドのSteel Partners が約19%の株式を保有しており、JTの出資はスティールにTOB を仕掛けられた時に、JTがホワイトナイトとして乗り出す大義名分にもなる。
その場合には
JTが日清食品を傘下に収める大型再編にも発展し得るとみられていた。

ーーー

今回のギョーザ事件を受け、日清食品は、「取引先などから日清食品がこの問題に主体的に取り組むべきだとの声をいただいた」ため、加ト吉への出資比率を当初予定の49%から過半に引き上げることをJTに打診した。

しかし、JTは「今回の問題を起こしたのは当社であり、問題を前に逃げるようなことはできない」とし、これを拒否、「統合解消が唯一の方策との結論に達した」という。

JTによる日清食品への出資構想も見直すことになる。

なお、JTは加ト吉株式を2007年11月28日から12月26日までに行った公開買付けにより、93.88%保有しており、早い段階で同社を100%子会社とする予定。

ーーー

JTはタバコ事業のほかに、医薬事業と食品事業の拡大を図っている。

医薬事業では1998年に鳥居薬品を買収した。

食品事業では「飲料・加工食品・調味料の三つの事業を柱に、綜合食品メーカーとしてトータルな“食”の世界を提案」するとしている。

飲料事業では1998年に(現)ユニマット・ホールディングスから自動販売機事業部門のユニマットコーポレーションの66.7%を買収した。
1999年に同社の社名をジャパンビバレッジに改称した。
JTの飲料事業では、コーヒーの「Roots」を基幹ブランドとし、ジャパンビバレッジ等を中心として事業を拡大している。

加工食品事業では、JTは1998年に米国 Pillsbury Companyとの協業による加工食品事業への本格参入以降、事業の拡大・強化を行なってきた。
1999年1月、JTは旭化成から同社の食品事業に係わる営業資産および関連子会社株式を買収する基本合意書を締結した。

譲渡対象は、旭化成の食品事業(冷凍食品、調味料、ベーカリー、製パン原料等)の資産、ならびに子会社8社(旭フーズ、サンバーグ、一品香食品、旭食材、ヨンゴー、日本食材加工、タイフーズ・インターナショナル、ハンス・コンチネンタル・スモールグッズ)である。

旭化成の食品事業は、昭和10年の調味料の事業化に始まり、その後、冷凍食品及び旧東洋醸造合併により加わったベーカリー・製パン原料、さらに豪州における畜肉加工事業等幅広く展開し、当時、年間売上高で約480億円(連結ベース)規模の事業となっていた。

旭化成では、新しい「事業ポートフォリオ戦略」に沿った事業構造の変革を推進しており、競争優位事業群を軸とした「選択と集中」が必須と考え、この観点から食品事業をJTに譲渡した。 

ベーカリーの分野では、JTは2002年にサンジェルマンを100%子会社としている。

ーーー

今回のギョーザ事件では、JTは食品メーカーとしての対応を完全に誤った。

日清食品の安藤社長は2月6日の記者会見で、JTの中毒事件への対応について質問され、次のように答えている。

「あまりコメントすべきではないが、食品会社は中毒事件を起こせば即刻対応するのが基本。
日清食品とJTでは現状認識が全く違う」


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中国のアルミ大手、Aluminum Corporation of China Chinalco)と米国のAlcoa The Aluminum Company of Americaは2月1日、英豪資源大手 Rio Tintoの株式の12%を取得したと発表した。取得額は141億ドル。

本投資はこの目的のためにChinalco 100% 出資でシンガポールで設立された特別目的事業体(Special Purpose Vehicle)のShining Prospect Pte. Ltd. SPPL)によって行なわれた。Alcoa SPPLが発行する12億ドル分の転換社債を引き受けており、ChinalcoAlcoa は事実上、共同で Rio 株式を取得する。

   Chinalcoについては 2006/8/25 中国アルミ業界の拡大競争
                 

Rio Tinto には英豪BHP Billiton が買収を提案しており、Rio Tinto の買収合戦に発展する可能性もある。

中国のメーカーはBHP Billiton-Rio Tinto 連合ができると鉄鉱石やボーキサイトのような天然資源を圧倒的なサプライヤーに独占されることを懸念している。
アナリストは 12% 出資はBHP Billiton の買収を妨げることはできないとしても、十分な影響を与えるとみている。
SPPL では、Chinalco Alcoa は現在のところ Rio Tinto の買収提案を行なう計画はないとしているが、その権利は保留するとしている。

今回のChinalcoAlcoa 連合のRio Tinto 株の取得価格は160 ポンドで時価に対して 21%premium となっている。
BHP Billiton の提案(Rio Tinto の株式 1株に対してBHP 株 3株)は 当日の株価で 44.31 ポンド相当となっている。

Rio Tinto 側は、今回の取引はBHP Billiton のオファー価格が安すぎるとする同社の主張を裏付けるものだとした。

他方、英国公開買付パネルからオファーするなら2月6日までにするよう期限を切られていたBHP Billiton 2月6日、新しい提案を行なった。

当初は Rio Tinto の株式 1株に対してBHP株 3株を与えるという提案を断られたが、今回はRio Tinto の株式 1株に対してBHP株 3.4 株と条件を引き上げた。
これは5日の終値ベースでは1株 54.30 ポンドになり、ChinalcoAlcoa 連合の取得価格 60 ポンドより大きく下回る。
現在の株価ベースでは 1,474億ドルに相当する。

Rio Tinto は同日、これを拒否した。評価が低すぎ、株主の利益に反するとした。

日本の公正取引委員会は、本件が独禁法上の問題があるか、海外の当局と連携して検討するとの見解を示した。

 

各社の関係は以下の通り。

Alcoa 2007年5月にカナダのアルミ大手、Alcan に対して買収総額269億ドル(債務引受を除く)の敵対的TOBをかけた。
  Alcan はこれを拒否し、White Night としてRio Tinto を選び、Rio Tinto 2007年7月、Alcan 381億ドルで買収することで合意した。
2007年10月に買収。
   
     2007/7/17 Rio Tinto、Alcanを買収 アルミ生産で世界最大に 
   
Alcan 買収手続きを進めているRio Tinto に対してBHP Billiton が買収の提案を行った。
Rio
Tinto の株式 1株に対してBHP株 3株を与えるという案で、1,400億ドル以上に相当する。
  2007年11月、Rio Tinto の役員会は、この条件が同社の現状、将来性を考えると著しく安すぎるとし、拒否した。
   
     2007/11/15 BHP Billiton Rio Tinto に買収提案 
   
BHP Billiton はその後も新しい提案の検討を進め、中国を含む他の同業者の動きも含め、いろいろな噂が飛び交っていた。

Rio Tinto 英国公開買付パネル(The Panel on Takeovers and Mergers)に要請、パネルは12月21日に、BHP Billiton に対し2008年2月6日までに、Rio Tinto に対してオファーをするか、しないかを伝えるよう、決定を下した。
もしBHP Billiton がオファーをしない場合は、その後6ヶ月間はオファーは出来ない。

     2007/12/29 BHP Billiton によるRio Tinto 買収提案のその後
   
   



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信越化学は2月1日、米国子会社シンテック社からの収益(2002年3月期から2006年3月期までの5事業年度)に関して、東京国税局より移転価格課税に基づく更正通知書を受領したと発表した。

更正通知による国外移転所得金額は約233億円で、追徴税額は法人税、事業税及び住民税(本税及び付帯税を含む)で合計約110億円と試算され。これに対し、同社はこの更正処分を不服とし、異議申し立てを行なう予定。

発表では理由は明らかにされていないが、報道では、信越化学はシンテックから売上高に応じて算定した技術料を受け取っているが、国税局からは「信越化学が提供した技術でシンテックは高収益を得ているのに、見合うだけの対価を受け取っていない」と指摘されたという。
技術料の支払いは、子会社が操業を始めた1970年代から続けている。
同社では、「他社からもシンテックと同じ算定率で技術料を受け取っていた実績があり、割安ではない。この技術だけでシンテックが高収益を上げたとは言えず、国税当局の指摘は不当だ」と話している。

発表では以下の通り述べている。

現在同社(シンテック)は、塩化ビニル樹脂事業で世界一の高収益会社となっておりますが、その源泉は、この同社における一日も欠かすことのない経営努力の積み重ねによるものです。
当社としましては、シンテック社との取引条件は公正であり、また当社およびシンテック社はこれまで各国の税制にしたがい適正な納税を行なってきたと考えております。したがいまして、今回このような更正処分を受けるに至ったことは誠に遺憾であり、到底承服できるものではありません。

移転価格税制に関しては以下を参照。

    2006/6/29  武田薬品、移転価格税制に基づく更正   

移転価格税制では親子会社間の取引が独立企業間価格と異なる場合は、独立企業間価格に合わせ再計算される。
まず、「伝統的な取引基準法」で検討され、それが適用できない場合には「その他の方法」で検討する。

① 伝統的な取引基準法

 ・独立価格比準法(CUP法)
   同種製品の独立企業間(日本→米国)の取引価格を検討
   (比較可能性の高い取引の選定が困難)

 ・再販売価格基準法(RP法)
   米国の比較可能な同業の財務データに基づいて販売会社がどの程度の売上利益率を計上しているかを検討
   (取扱製品の類似性が厳格に要求され、比較可能な同業の財務データの取得は困難) 

 ・原価基準法(CP法)
    日本の比較可能な同業の財務データに基づいて製造原価に対してどの程度利益の上乗せをしているかを検討
    (比較可能な同業の売上総利益データの取得は困難)

ーーー

シンテックは信越化学の技術で工場を建設し、操業しており、能力はテキサス州の工場が1,450千トン、ルイジアナ州の工場が590千トン、合計約200万トンと大きい。

シンテックは増収増益で、今回の移転価格課税の対象期間の2001年12月期から2005年12月期の5年間の経常損益≒税引前損益の累計は1,301億円となっている。(売上高累計は8,645億円) 〔資料:信越化学決算説明資料〕

今回の追徴課税233億円は売上高に対して2.7%に相当し(追加分のため合計ではもっと多い)、PVCの技術料としては異常に高いといえる。信越化学が求償している技術料に加えて、その期間の税引前利益の18%を取ろうとするものである。

生産技術は、単に原料VCMを重合して汎用のPVCにするだけであり、PPなどと違って高機能の特殊品もない。
製法については、最近では各社であまり大きな差異はない。

以前は毎日の生産終了後に人が重合器内に入り、壁に付着したスケール(PVCの重合物)を手作業、あるいは高圧洗浄機を用いて除去するため、大型の重合機の使用が難しかった。

信越化学は重合器や攪拌翼にあらかじめ塗布するスケール防止剤を開発し、通常の重合機が20~30m3であったのに対し130m3の重合機を開発し、生産性を一挙に高めたが、それは1970年代であり、今では各社の技術の差は少ない。

通常の技術供与では、余り多額でない一時金を取れる程度で、長期間の高率のランニングロイヤリティは考えにくい。

上記の「伝統的な取引基準法」で「独立価格比準法(CUP法)」を使えば、今回の追徴課税はあり得ない。

 

他方、信越化学の有価証券報告書では以下の記載がある。

塩化ビニルに関する研究は塩ビ・高分子材料研究所で行なっております。同研究所は、米国、欧州にも展開する塩化ビニル事業での世界の研究センターとしての役割を担っております。

この費用の負担と考えると、「原価基準法(CP法)」で研究費に一定の利益を加算して求償することとなる。

しかし、研究費の金額はせいぜい年間 5~10億円であると思われ(仮に30人としても労務費は3億程度)、多額の追徴はあり得ない。
仮に年間5億円として、15%の利益(仮定)を加え、数量比で分担を決めると、
  5.75 x 2,040/3,240=3.6億円で、
5年間では18億円に過ぎない。

そもそも、国税局からは「信越化学が提供した技術でシンテックは高収益を得ているのに、見合うだけの対価を受け取っていない」と指摘されたというが、シンテックの高収益が信越が提供した技術のためであるという認識に間違いがある。

もしそうなら、日本の信越化学は他の塩ビメーカーよりも高収益であるはずだが、決してそうではない。

シンテックの高収益の理由は、一つは原料のVCM(塩素とエチレンから製造)をクロルアルカリとエチレンのトップメーカーのダウから供給を受けていることで、塩ビの損益が悪化したときには、損失を一部ダウが負担するという契約条項もあるといわれている。

もう一つが常にフル操業をするという経営方式である。
2008年1月30日の週間ダイヤモンドに信越化学の金川社長(シンテックの社長兼務)の下記発言の記載がある。

世界全体の需要は強い。世界中の需要が強いところにどんどん売っていくことで、塩ビ工場の稼働率は100%を維持しています。今の米国メーカーの塩ビ工場の稼働率は76~78%。装置産業で76対100というのは致命的、決定的です。決して楽ではないですが、ちゃんとした経営をしていれば結果が出る。

(米国の他のメーカーには)輸出のための袋詰めの設備がないんですよ。うちは10年ぐらい前に、当時の輸出量の5倍ぐらいまで対応できる大きな袋詰め設備を造った。多少の投資はしたけれども、そんなものは1年くらいで回収しちゃった。同業他社が持っていない設備があることで、米国国内販売と輸出が機動的に実施できます。

---今、全世界では(塩ビが)足りないから、結構いい手取り(利益)なんです。

注)米国では塩ビやPE、PPのメーカーからの出荷は基本的に貨車で行なわれる。
各メーカーは数千の80トン貨車を保有(or リース)し、各需要家に出荷する。
小規模需要家にはコンパウンダーがメーカーから購入した上で小分けして販売する。
従って、レジンメーカーには袋詰め設備がないのが普通。
今回のように国内需要が減少し輸出しようとしても、コンパウンダーの袋詰能力不足で輸出できない状態にある。

米国の塩ビのコストは日本と比べてはるかに安く(エチレンはエタンが原料、塩素原料の塩は地下の岩塩層に蒸気を吹き込んで回収、グレード数は少なく、前月に注文を受け付け大量生産するなど、日本と大きく異なる)、輸出は好採算である。

この結果、サブプライムローン問題で他社の収益が激減しているのに対して、シンテックは減益幅は小さい。

信越化学はこの更正処分に対して異議申し立てを行なう予定で、業績予想の見直しは行なっていない。


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SABICの中国進出

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SABICは1月31日、Sinopec との間で、50:50のJVを設立して天津にエチレン誘導品コンプレックスを建設する Heads of Agreement を締結したと発表した。同日、北京で両社の会長により調印された。

50:50JVは天津に年産60万トンのPEと
40万トンのエチレングリコールのコンプレックスを建設する。
原料のエチレンはSinopecの子会社の天津石油化学(下記)から供給を受ける。
総投資額は17億ドルで、2009年9月に完成の予定。

本計画はSABICにとって中国での最初のプロジェクトとなる。

天津石油化学は現在100万トンのエチレンプラントを天津市の大港地区で建設しているが、当初はSinopec/天津市/ダウのJV構想で、ダウの撤退後はサウジアラムコが提携候補に上がっていた。その後、
2005末にSinopecが単独で承認を得て建設している。

    2006/4/7 中国のエチレン合弁会社ー2 の5 

計画概要は以下の通り。(千トン)

既存能力  増設
Refinery   5,000  7,500
エチレン    200  1,000
LLDPE    120  
LDPE     300
EO     22  
MEG     48   420
HDPE/MDPE       300
PP     60   450

しかし、2006年1月のサウジのアブドゥッラー国王の最初の公式訪中を機に、SABICがSinopecとの交渉を再開した。

2007年5月、SABICとARAMCOのトップが上海でのフォーラムで、両社がそれぞれSinopecとJV交渉を進めていることを明らかにした。
いずれも間もなく発表されるとされ、本ブログでも新聞情報などをもとに、「SABICはSinopec天津の新しい100万トンエチレン計画に10億ドルを投資して参加する」とした。

    2007/5/29
SABICとARAMCOの中国進出 

今回の発表によれば、天津計画全体への参加ではなく、エチレン系誘導品への参加である。

ーーー

福建省泉州市ではサウジアラムコがSinopec やExxonMobil と組んで、石油精製と石油化学(エチレン80万トン)のコンプレックスを建設中である。

    2006/4/7 中国のエチレン合弁会社ー2 の4  


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2007年 中国輸入統計

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2007年合計の中国の輸入、輸出統計が発表になった。

1)ポリオレフィン

LDPEは2005年を例外として、2001年からほぼ同水準となっている。
但し内訳を見ると、LDPEは順次減少、LLDPEは順次増加している。

HDPEは2007年に急減した。

PPは昨年、一昨年とほぼ同水準。

いずれも、日本からの輸入は低水準に止まっている。

2)スチレン系

原料SMの輸入は増加した。

日本からが110万トン、韓国からが112万トンと競っている。
台湾からの輸入が32万トンと急増した。

PSは2006年と同水準。

日本は輸出品の採算悪化により、2003年春から輸出を減らしており、低水準に止まっている。

ABSの輸入は増加している。
日本は主に中国に進出している需要家向けが中心で低水準。

3)塩ビ系

VCMの輸入は減少した。

PVC工場は今も大規模なものが新設されているが、最近の中国の新設はほとんどがカーバイド法で、輸入VCMを必要しない。

PVCの輸入は2001年をピークに毎年減少、2007年はほぼ半減となった。

その中で日本からの輸入は安定している。
日本は2003年に、韓国、米国、ロシア、台湾製のPVCとともにダンピング課税適用を受けており、免税の加工貿易用が主である。

最近では他国は中国よりもインド、中東その他に輸出先を変えており、全体の輸入量が減る中で日本品輸入は維持されている。

但し、中国政府は高付加価値輸出の促進を狙い、付加価値の低い商品の輸出抑制策を取っており、いつまでも続く保証はない。

輸入の減少とともに、中国からのPVCの輸出が増加している。

中国からの輸出は2005年末から2006年央まで順次増加したが、インドとトルコが中国等のPVCのダンピング調査を開始したため、減少した。
2007年に入り、輸出が復活し、3月、4月にはほぼ輸入量に並び、輸出が輸入を追い越すのも間近かと思われた。

しかし、中国政府が輸出抑制のため、2007年7月から輸出増値税還付を引き下げた(11%→5%)ため、再度減少に転じた。
  
2007/6/28 中国、輸出抑制のため輸出増価税還付率を引き下げ 

2007年12月にインド向け輸出が復活、2007年の年間輸出数量は70万トンを超え、輸入数量(100万トン)に近づいた。

 


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Dow Canada カナダのNGL会社Aux Sable Canada から、Heartland オフガス処理プラントからのエタン、エチレンを購入する契約を締結した。

Aux Sable Canada オイルサンドのビチュメンから生産する合成石油副生オフガスからエタン、エチレンを生産するカナダの最初の会社となる。
Heartland オフガス処理プラントはAlberta Fort Saskatchewan のDow Complex の北方で建設中で、原料オフガスはBA Energy Heartland Upgrader から供給される。
Upgrader ではアスファルト状のビチュメンから合成石油を生産する。 )

契約では供給されるエタン、エチレンは日量 8,000 バレルに達する。

両社は更に、ダウに原料を供給する将来のオフガス処理計画での戦略的提携契約を結んだ。Aux Sable が工場を建設し、ダウに独占的に供給する。

ダウでは、ダウのAlberta 工場にとってオイルサンドは手付かずの大規模原料ソースであり、石油化学の原料の長期的供給を確保したことになるとしている。

Aux Sable Enbridge Inc.Fort Chicago Energy PartnersWilliams Cos. JVで、米国にAux Sable Liquid Products、カナダにAux Sable Canada を持つ。Alliance Pipeline system の関連で設立され、同パイプラインのNGL を独占的に扱っている。

BA EnergyValue Creation企業グループ)は、Strathcona郡でHeartland Upgraderプロジェクトの建設を進めている。Upgrader3期に分けて建設され、各期とも日量 50千バレル、合計150千バレルのビチュメンを生産する予定。第1期は2008年スタート。
oil sands bitumen blend 260千バレル)

2010年の Upgrader 能力予想は以下の通り。(単位:日量 千バレル)

Suncor   550
Syncrude   500
Shell   300
Husky   150
OPTI    90
BA Energy    50
Northwest    50
Total  1,690

 

各社の立地は以下の通り。

以下、図はアルバータ州日本事務所 「カナダ・アルバータ州のオイルサンド」 から

ーーー

オイルサンドは、カナダ西部のアルバータ州の北方に位置する3地域に多く存在する、粘度質の黒いアスファルト状の炭化水素であるビチュメンと、砂・粘土の混合物である。
石油を含んだ油層が地殻変動で地表近くに移動し、地下水との接触や生化学反応によって揮発成分が失われたことによりできた石油資源とされ、埋蔵量はサウジアラビアの石油に相当するものと推定されている。

母岩が砂岩ではなく、堆積岩の一種の頁岩の場合にはオイルシェール(Oil Shaleと呼ばれる。オイルシェールはアメリカ合衆国西部、ブラジル、ロシアなどに分布する。


 

オイルサンドの採掘には露天掘りと油層内回収法の2つがある。
油層内回収法には、
Cyclic Steam StimulationCSS)法やSteam Assisted Gravity DrainageSAGD)法などがある。


アルバータ州はビチュメンからの総合コンビナート計画を作成している。 

 


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2007年の日本の合成樹脂の出荷実績がまとまった。

1)LDPE

 内需、輸出とも、この数年、ほぼ横並び状態である。

2)HDPE

 同上。

 フィルム用途が毎年少しずつ減少している。

3)PP

 内需、総出荷ともに過去最高となった。
 射出成形用が好調。

4)PS

 内需は3年間ほぼ横並び。包装用が増加するが雑貨ほかが減少。

 輸出は採算悪化により、2003年春から減らしており、低水準に止まっている。

5)ABS

 内需は前年並み。輸出が増加。

6)PVC

 内需は1982年(産構法以前、共販設立時)以来の低水準となった。(グラフ赤線) 

 逆に輸出は増大し、史上最高となった。

2007暦年の住宅着工件数は1,061千戸で、40年ぶりの低水準となった。
2006暦年は1,290千戸(年度では1,285千戸)であったため、18%減である。

下のグラフの通り、1980年代以降は、住宅着工件数とPVCの国内需要がほぼ同じ傾向を示している。
PVCの需要が住宅に大きく依存しているためである。
(この数年、住宅着工の増加に対してPVC需要が減少しているのは、もう1つの大きな需要の公共投資の減少によるとみられる)

昨年夏からの住宅着工の減少はこれからのPVC需要に響くため、本年のPVC需要は更に減少すると懸念される。


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三菱化学は1月25日、状況を発表した。

鹿島事業所においては、引き続き、関係諸官庁による火災発生原因の究明活動が行われております。また、原因究明中であるため、現在のところ、第2エチレンプラントの操業再開の目途は立っておりません。

  2007/12/24  三菱化学鹿島事業所 火災事故  

  2008/1/9   三菱化学鹿島事業所 火災事故 その後 

付記 2月1日発表

鹿島事業所においては、引き続き、関係諸官庁による火災発生原因の調査が行われております。したがいまして、現在のところ第2エチレンプラントの操業再開の目途は立っておりませんが、関係諸官庁よりご了解をいただき、発災箇所を除くプラントへの立ち入り及び検査を1月28日(月)から開始しております。

プラント再開は現地消防などの許可が必要。

付記  2月7日

三菱化学は2月7日、代表取締役常務執行役員(技術・生産センター長)の藤島治氏と執行役員(技術・生産センター鹿島事業所長)の鷲見富士雄氏が、事故の責任をとり、3月3日付けでそれぞれ代表取締役常務執行役員、執行役員を退任して顧問となり、鹿島事業所で発生した火災事故の原因究明等に従事する人事を発表した。

付記 2月15日  三菱化学鹿島事業所の事故で行政処分

三菱ケミカルホールディングスは1月31日、三菱化学の事故の今期業績への影響額を発表した。

営業利益  △ 100億円  (減産・減販及び代替品の調達による損失)
特別損失  △ 30億円  (事故に起因するプラント停止・低稼働に見合う固定費)
合計  △ 130億円  
  * 上記に対応する保険収入は、折り込まず              

同社はまた、第3四半期実績と事故の影響とを折り込み、平成20年3月期の連結業績予想の修正を発表した。

                                (単位:億円)
  売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
前回発表予想 (A)  29,700   1,480   1,490    1,860
今回修正予想 (B)  29,400   1,230   1,260    1,610
増減 (B-A)   300   250   230    250
前期(平成19年3月期)実績  26,228   1,286   1,413    1,003

 

前回予想との対比は以下の通り。(単位:億円)

石化部門の営業損益は、事故の影響のほかに、110億円の利益減となっている。

          本年度予想     
2007/11 2008/1  増減 うち
事故影響
売上高 石化   14,600   14,300   -300    α
機能商品    9,400    9,300   -100  
ヘルスケア    4,000    4,000     0  
その他    1,700    1,800    100  
合計   29,700   29,400   - 300  
営業損益 石化     330     120   - 210    -100
機能商品     610     570    -40  
ヘルスケア     550     550     0  
その他     110     110     0  
コーポレート    -120    -120     0  
合計    1,480    1,230    -250   -100
経常損益      1,490    1,260    -230   -100
特別損益 田辺合併    1,131    1,131     0  
一般    -101    -211    -110    -30
合計    1,030     920    -110    -30
税引前利益      2,520    2,180    -340   -130
法人税等      -560    -480     80  
少数株主損益      -100     -90     10  
当期純利益      1,860    1,610    -250  

 

今回の見直し後も、前年比では当期純利益は大幅な増益となっている。
これは2007年10月1日の三菱ウェルファーマと田辺製薬の合併の影響が大きい。

営業損益・経常損益は、田辺製薬分の下期の売上が追加された分が石化のマイナスを一部補った。
特別損益では、田辺製薬合併による持分変動利益が 1,176億円あり、合併関連費用45億円を差し引いて、1,131億円の増益となっている。

    前年度
実績
本年度予想
2008/1
 増減 うち
ヘルスケア
売上高 石化   12,632   14,300   1,668  
機能商品    9,084    9,300    216  
ヘルスケア    3,047    4,000    953    953
その他    1,465    1,800    335  
合計   26,228   29,400   3,172    953
営業損益 石化     291     120    -171  
機能商品     584     570    -14  
ヘルスケア     396     550    154    154
その他     106     110     4  
コーポレート     -91    -120    -29  
合計    1,286    1,230    -56    154
経常損益      1,413    1,260    -153    154
特別損益 田辺合併      0    1,131   1,131   1,131
一般     -35    -211    -176  
合計     -35     920    955   1,131
税引前利益      1,378    2,180    802   1,285
法人税等      -334    -480    -146  
少数株主損益       -41     -90    -49  
当期純利益      1,003    1,610    607  

 


* 総合目次、項目別目次は
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

 

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