「no」と一致するもの

Dow の売上高は535億ドルと前年を9%上回り、過去最高となった。各部門とも前年を上回った。
しかし、営業損益は前年を下回り、税引後損益は2年連続の前年比減となった。

全社では売価は前年比で7%アップ、数量も2%増となったが、原料とエネルギーコストは11%増となっている。

 

部門別実績は以下の通り。(単位:百万ドル)

  売上高 EBIT
2006 2007 差異 2006 2007 差異
Performance Plastics  13,944  15,116  1,172  1,629  1,390   -239
Performance Chemicals   7,867   8,351   484  1,242   949   -293
Agricultural Sciences   3,399   3,779   380   415   467    52
Plastics  11,833  12,878  1,045  2,022  2,006   -16
Chemicals   5,560   5,863   303   689   813   124
Hydrocarbons and Energy   6,205   7,105   900    0   -45   -45
Others    316    421   105   -594   -897   -303
Total  49,124  53,513  4,389  5,403  4,683   -720

 

売上高

 

部門別営業損益 (EBIT earnings before interest and taxes

Dow の各部門の事業内容は以下の通り。

部門 事業
Performance Plastics Dow AutomotiveDow Building SolutionsDow Epoxy
Polyurethanes and Polyurethane Systems
Specialty Plastics and Elastomers
Technology Licensing and Catalyst
Performance Chemicals Designed PolymersDow LatexSpecialty Chemicals
Agricultural Sciences Dow AgroSciences
Basic Plastics PolyethylenePolypropylenePolystyrene
Basic Chemicals Core ChemicalsEthylene Oxide/Ethylene Glycol
Hydrocarbons and Energy Hydrocarbons and Energy

ダウはグローバルに効率改善とコストダウンを進めているが200712工場閉鎖と人員削減策を発表した。
    
2007/12/8  ダウ、合理化策を発表  

ダウはAsset light strategy に基づき、新規事業と既存事業のJV化を進めているが、仕上げとして昨年、PEPPPC、エチレンアミン、エタノールアミンと関連事業をクウェート国営石油の子会社 Petrochemical Industries Company (PIC) とのJVにすると発表している。
    2007/
12/19 ダウとPIC のグローバル石化JV 詳報   

同社は更に多くの事業を新しく作った事業グループのDow Portfolio Optimization に移し、それぞれの戦略的価値を評価し、会社にとっての長期的価値を最大にするにはどうすればよいかー他のダウ事業との統合か、JV化か、売却かーを決める。
    
2008/2/28 Dow Chemical、ポリカーボネート等の事業を再評価
        
 

全社損益推移 (単位:百万$)

  2000 01 02 03 04 05 06 07
売上高  29,798  28,075  27,609  32,632  40,161  46,307  49,124  53,513
金利・償却前損益 EBIT   3,105     35     86   2,487   4,457   6,963   5,403   4,683
税引前損益   2,586    -613    -622   1,751   3,796   6,399   4,972   4,229
税引後損益   1,675    -385    -338   1,730   2,797   4,515   3,724   2,887

    2001年、2002年の赤字の原因は以下の特別損失による。(単位:百万ドル)

  2001 2002
リストラ関連   -103   -280
合併関連 (Union Carbide)  -1,384  
アスベスト関連 (Union Carbide)     -828

 


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ロシアのLukoil-Neftekhim のウクライナの子会社 KarpatNaftoKhim はウクライナのKalushKiev の南西500km)で同国初のPVC工場の建設を開始した。

能力は30万トンで Uhde Vinnolit の高機能リアクターを使った最新技術で建設する。投資額は200百万米ドル。

Uhde PVCと同時に同地にイオン交換膜電解工場の建設も請け負っている。110百万ユーロを投じて、隔膜法に代えてイオン交換膜法のプラントを建設するもので、能力は塩素177千トン、ソーダ200千トンとなっている。本年央に完成の予定。

KarpatNaftoKhim は同地でエチレン、プロピレン、PE、塩素/ソーダのほか、370千トンのVCM工場を有している。
しかし、東欧最大の
PVCメーカーであるBorsodchem が自社VCM増設に伴い購入を取り止める決定を行なった結果、極めて低い操業となっており、PVC自製を決めたもの。

Lukoil はロシアの大石油会社で、石油化学に関してはKarpatNaftoKhim の他に、以下の子会社を有している。

 Saratovorgsintez
  立地:ロシア Saratov
  製品:アクリロニトリルほか
       DuPont技術で
青酸ソーダ15千トン)を建設

 Stavrolen
  立地:ロシア Budennovsk
  製品:PP(ダウ技術 120千トン)、PE

 LUKOIL Neftokhim Burgas
  立地:ブルガリア Burgas
  製品:ポリマー、有機薬品

なお、20049月に ConocoPhillips Lukoil の株式の7.6 %を購入、将来20%まで増やすことができる旨の契約を締結している。.

ーーー

これまで KarpatNaftoKhim VCMを購入していたハンガリーのBorsodchem は塩ビとイソシアネートのメーカーで、製品は以下の通り。

塩素:水銀法 125千トン
VCM:現有能力 220千トン、増強後 320千トン
PVC330千トン(うち、150千トンは信越化学1973年にChemocomplex に技術供与したもの)
   
* 信越は1975年にポーランドのPolimex にも技術を供与している。(200千トン)
PVCコンパウンド
MDI60千トン
TDI60千トン(100千トンへの増設計画あり)

2006年に欧州最大の買収ファンドの英 Permira とオーストリアのVienna Capital Partners がつくったファンドがBorsodChem の全株式を取得した。

    Permiraについては 2007/10/26 欧州最大買収ファンドのペルミラ、農薬大手アリスタ買収 
         

これに至るまでには、Borsodchem とロシアの Gazprom との戦いがある。

2000年6月にBorsodchem はハンガリーのもう一つの石化会社Tiszai Vegyi Kombinat (TVK) 28.5%を取得したが、これをTVKに19.6%出資しているハンガリーの石油・ガス企業のMOLに譲渡しようとした。Borsodchem はエチレン取得のためTVK株式を購入したが、MOLが供給を保証したため、株式保有の必要性がなくなった。

TVKの事業 (現状)
 エチレン:660千トン
 LDPE: 97千トン
 HDPE:420千トン
 PP:280千トン

2000下半期に大騒動が起こった。
アイルランドの
Milford Holdings という名前だけの会社がBorsodchem 24.8%を取得した。
更に
オーストリアのCE OIL & GAS (本件のために設立された会社)が同社の59%を取得した。

Milford Holdings の背後に誰がいるのか分からないまま、Milford 臨時株主総会を開催することを要求、取締役交代とTVK株式売却取り止めを求めた。
そのうち、
Milford の背後にGazprom がいることが分かり、CE OIL & GAS Gazprom と組んでいるのではないかとの噂が流れた。
CE OIL & GAS VCP Capital Partners の子会社で、Gazprom との結びつきはなかった)

 * Milford は一時、持株をGazprom 子会社の SIBURに移した。
  このため、
SIBURBorsodchem を買収したという誤った記事が出ている。

Borsodchem は要求を拒否し、長い交渉が行なわれた。
この争いの最中にBorsodChem Gazprom の子会社の SIBUR からの原料購入の代わりに、Gazprom の競争相手のLUKoil からエチレンとVCMを購入する契約を結んだ。これが上記のKarpatNaftoKhim のVCMである。

2001年6月には、遅まきながらハンガリー国会が乗っ取り防止の証券取引法改正を行なった。(この法律はLex BorsodChemBorsodChem法と呼ばれた)

2001年6月、Milford Holdings Borsodchem に対する法的闘争をギブアップした。

2003年4月、CE OIL & GAS の親会社のVCP Capital Partner Milford の所有するBorsodchem 株式を買収する契約を結び、同社株を合計88.97%取得した。その後、2004年に同社は株式の一部売却を決めた。

2006 9 月、Permira Funds VCP Capital Partner のファンドが BorsodChem の全株式を買収した。

なお、問題の原因となったTVKは、2007年2月にハンガリーの石油大手MOLが持株を2倍に増やし、84.86%を所有している。

 


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T.T. Chao 逝去 - 化学業界の話題

Westlake Chemical は10日、同社の創設者で元会長のT.T. Chao が37日に逝去したと発表した。86歳だった。

同氏は1921年、蘇州に生まれ、1946年に台湾に移住した。
1954年に台湾初のPVC工場を建設、1964年に
CGPC を設立した。

CGPCは当初は米国 Gulf とのJVで、China Gulf Petrochemical Corp と称したが、その後 Gulf 撤退で、China General Petrochemical Corp.に改称した。(略称は同じ)
その後、
T.T. Chao は同社を手放しているが、現在、CGPCは自社でPVC関連を、子会社の台湾VCMでVCM、台湾PPでPP、台達化学でPS/ABS、Asian Polymer でLDPEと、幅広く事業を行っている。

T.T. Chao 1986年に米国に進出、Westlake Chemical を設立した。
その後、事業を拡大し、ルイジアナ州に2箇所、ケンタッキー州に1箇所のコンプレックスでエチレン、塩素、LDPE/LLDPE、VCM、PVC、SMを生産、他に、PVCパイプ、窓枠/ドア材
なども扱っている。

1992年には故郷の蘇州にWestlakeとNorsk Hydro 他とのJVのSuzhou Huasu Plastics を設立し、PVC、PVCフィルムを生産している。

   詳細は 2006/9/16 Westlake Chemical、20周年 

Westlake Chemical の現在の能力は以下の通り。(単位:100万ポンド、2.2で割ると千トン能力)

業部 製品          立地 合計
Lake Charles
LA)
Calvert City
KY
Geismar
(LA)
Westlake Petrochemicals エチレン    2,400      
Westlake CA&O エチレン       450     2,850
塩素       410      410
ソーダ       450      450
Westlake Polymers LDPE     850        850
LLDPE     550        550
Westlake Monomers VCM      1,300     600   1,900
Westlake PVC PVC       800     600   1,400
Westlake Styrene SM     485        485
North American Pipe PVC Pipe Booneville(MS), Springfield(KY),
Litchfield
(IL),Wichita Falls(TX),
Van Buren(AK),Bristol(IN),
Leola(PA),Greensboro(GA)
   810
Westech Building Products Fence, Deck and Railing Evansville(IN)     75
Doors and Window Profiles CalgaryAlberta), Pawling(NY)     30
Suzhou Huasu Plastics Company
蘇州)
PVC Westlake 43%/Norsk Hydro 32%/
Jiangsu Chemical Pesticide Group 14%/
China Taicang Petrochemical 3%
   726
PVC film & Sheet    132

 

更に1989年にはマレーシアに進出、Chao Group (53.2%)、マレーシア政府のPNB(45.5%)ほかが出資してTitan Chemicals を設立し、マレー半島南端のパシールクダンにエチレン、HDPE、LDPE、プロピレン、PPのコンプレックスを建設、運営している。

Titan Chemicals 2006年3月にインドネシアのPEメーカー P.T. PENI (BP/三井物産/住友商事合弁、LLDPE/HDPE 450千トン)を買収し、PT. TITAN Petrokimia Nusantara と改称した。


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各分野とも増収、増益となった。

部門別実績は以下の通り。(単位:百万ドル)

  売上高 税引前損益
(除 特別損益)
2006 2007 差異 2006 2007 差異
Agriculture & Nutrition   6,008   6,842   834   725   894   169
Coatings & Color Technologies   6,290   6,609   319   827   840   13
Electronic & Communication Technologies   3,573   3,797   224   572   594   22
Performance Materials   6,179   6,630   451   636   811   175
Pharmaceuticals    -    -   -   819   949   130
Safety & Protection   5,496   5,641   145  1,107  1,199   92
Other    180    178    -2   -173   -184   -11
部門間取引   -305   -319    -14      
合計  27,421  29,378  1,957  4,513  5,103   590

売上高

Textiles & Interiors 部門のINVISTA 2004年にKoch Industries に売却
DuPont Pharmaceuticals は2001年6月に Bristol-Myers Squibbに売却

営業損益(特別損益を除く)

Textiles & Interiors 部門のINVISTA 2004年にKoch Industries に売却
Pharmaceuticals は2001年6月に Bristol-Myers Squibbに売却

売却済みのPharmaceuticals で多額の利益が発生している理由は以下の通り。

2001年、DuPontは世界の事業の構造改革を実施した。4月に競争力を失ってきたポリエステルおよびナイロン工場の閉鎖を発表、3カ月後にはポリエステル事業の一部を売却した。
同年6月、
DuPont PharmaceuticalsBristol-Myers Squibbに売却するという決断をした。医薬品事業に必要な巨額投資は、同社にとっても、あまりにリスキーだったからである。

売却額は78億ドルで、税引き後利益は38億6,600万ドルである。
但し、条件として、
抗高血圧薬のCozaar(R)、Cozaar とチアジド系利尿剤 との合剤 Hyzaar(R) の権利は DuPont が維持し、Merckにライセンスした。
「医薬部門」の利益はこの特許料で、実績は以下の通り(百万ドル)。

2002 2003 2004 2005 2006 2007
 468  548  681  751  819  949

    2007/3/30 デュポンの部門別損益 

ーーー

同社の各部門の製品は以下の通り。

 Agriculture & Nutrition                                          
  
主要製品                               主要市場             
Seeds Pioneer(R)
Crop protection chemicals
:殺虫剤、除草剤、殺菌剤ほか
Food ingredients:Solae(R)大豆タンパク
Food quality and safetyBAX(R) 病原体検出システム
Production agriculture
Food processing
   
 Coatings & Color Technologies
 
主要製品 主要市場              
Titanium dioxide
Liquid and powder coatings
Coatings and application services

Automotive OEM
Collision repair
Paper
Industrial coatings
Architectural coatings
Plastics
   
 Electronic & Communication Technologies
 
主要製品                   主要市場                      
Circuit and component materials
Flexographic printing systems
Photovoltaic materials
Refrigerants
Surfacing materials
Semiconductor fabrication and
   
packaging materials
Wire & cable materials
Semiconductors
Printed circuit boards & components
Automotive and industrial electronics
Displays
Packaging and commercial printing
HVAC refrigeration
Chemical processing industries
Electronic data and telecommunications
Alternative energy
   
 Performance Materials
 
主要製品 主要市場
Engineering polymers
Flexible packaging resins
Industrial resins
Performance elastomers
Performance films
Automotive
Packaging
Electrical/electronics
Construction
Consumer durables
   
 Safety & Protection
 
主要製品                             主要市場               
Safety and operational consulting and training
Specialty, performance, and industrial Energy chemicals
DuPont Corian(R) solid surfaces
MMA人工大理石
DuPont Kevlar(R) fiber:パラ系アラミド繊維
DuPont Nomex(R) fiber and paper:メタ系アラミド繊維
DuPont Tyvek(R) protective material:不織布
Construction
Energy
Health care
Military/homeland security
Protective apparel
Transportation
 

ーーー

全社損益の推移は以下の通り。

2001-03の大幅増減は下記の特別損益(税引前)によるもの。 
 2001 DuPont Pharmaceuticals 売却益  6,136百万ドル  
 2002 会計制度変更   
-2,944百万ドル
 2003 Invista分離関連 
-1,915百万ドル


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BASFの2007年の決算は、増収増益で、売上高で前年比10%増、EBIT(税引前当期利益+支払利息)は8%増となった。

売上高の増加は 5,341百万ユーロに達するが、内訳は以下の通り。事業買収が大きく貢献している。
     
  数量増   2,557百万ユーロ    
  価格   1,321
  為替差 - 1,989(ユーロ高:1.26$/Euro→1.37$/Euro)
  事業買収、新規   3,598(下記)
  事業売却 -  146(Fine Chemicals:lysine, premix)
  合計   5,341

各部門売上高の製品グループ別内訳は以下の通り。

部門 内訳 2006 2007 伸率
Chemicals Inorganics   1,134   1,192  105
Catalysts *1   2,411   4,804  199
Petrochemicals   5,754   5,696   99
Intermediates   2,273   2,470  109
合計  11,572  14,162  122
Plastics Styrenics *2   4,994   5,306  106
Performance Polymers   2,932   3,024  103
Polyurethanes   4,849   5,166  107
合計  12,775  13,496  106
Performance
 Products
Construction Chemicals *3   1,081   2,100  194
Coatings   2,414   2,587  107
Functional Polymers   3,387   3,522  104
Performance Chemicals   3,251   3,488  107
合計  10,133  11,697  115
Agricultural Products
 & Nutrition
Agricultural Products   3,079   3,137  102
Fine Chemicals *4   1,855   1,852  100
合計   4,934   4,989  101
Oil & Gas Exploration and production   4,555   4,365   96
Natural gas trading   6,132   6,152  100
合計  10,687  10,517   98
Others     2,509   3,090  123
Total    52,610  57,951  110

2001年に売上高が減少しているが、同社は2000年12月に医薬品事業をAbbott Laboratories へ69億ドルで売却している。

同社はこの数年前から、医薬品事業の将来についてあらゆる選択肢を検討していた。
医薬品事業売却に合わせ、American Home Products
より農薬事業(American Cyanamid社)を買収し、BASF武田ビタミンの武田薬品持分を買収するなど農薬とファインケミカル事業を急速に拡大した。

*1 Catalysts
   BASF は2006年にEngelhard を買収した。
    
2006/6/12 2つの買収劇  

*2 Styrenics  
   
BASFCEOは20078月の2007年第2四半期の業績発表の席上、 スチレン事業の一部の売却に関して、
   買い手候補のある1社と極めて建設的な交渉を行っていることを明らかにした。
    
2007/8/6 BASF、スチレン事業一部の売却交渉進展   

   最近の報道では近いうちに発表がある模様。

*3 
Construction Chemicals
   
20063DegussaからConstruction chemicals business 27億ユーロで買収
     
混和剤システム(北米、欧州、アジア太平洋)
     建材システム(北米、欧州)

*4 Fine Chemicals
   2007年3月、Lysine 撤退を決定、韓国群山工場(10万トン)を閉鎖、11月に売却が決定した。
    今後は非アミノ酸に集中する。
   また、日本を含む各地の飼料用プレミックス(ビタミンと飼料添加物を混合)から撤退した。
    2007年2月に多くの国の事業をオランダの
Nutrecoに売却、日本の事業は12月に伊藤忠に売却した。

 

部門別の営業損益(EBIT:税引前当期利益+支払利息)は以下の通り。

原料高はほぼ転嫁できているが、Oil & Gasの減益は原油価格アップによる。
Fine Chemicalsの黒字転換は、赤字の lysine と premix からの撤退の影響が大きい。

部門 2006 2007 増減
Chemicals   1,380   1,995   615
Plastics   1,192   1,236   44
Performance Products    669    704   35
Agricultural Products    447    489   42
Fine Chemicals    -66    171   237
Oil & Gas   3,250   3,014  -236
Others   -122   -293  -171
Total   6,750   7,316   566

 

全社損益の推移は下記の通り。

 

 

(今後、各社決算分析を順次掲載します。)


* 総合目次、項目別目次は
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2007年2月に、三井物産がサウジのSaudi International Petrochemical CompanySipchem)が計画している大石油化学事業に参加するという報道を伝えた。

    2007/2/9 三井物産 サウジ石化事業に参加 

Sipchemは2006年11月のオレフィン及び誘導品事業の発表で、アラムコとの間で天然ガス供給の文書にサインしたこと、三井物産、DuPont、Lucite と最終契約書の交渉中であることを明らかにしている。

その後、三井物産やDuPont との契約締結の発表はないが、最近、2つの報道がなされている。

一つはSipchemが
Ineos とJV設立で交渉していることを認めたという報道で、多岐にわたる計画のうち、クラッカーとポリオレフィンを対象としているとされる。IneosはANM200千トン)について技術供与で合意している。

(この報道によれば、Sipchemは韓国のハンファと交渉していたが、ハンファ会長が昨年5月に、息子を殴った飲食店従業員に報復するため暴行した容疑で逮捕されたことから、サウジ政府からハンファを外すよう指示されたという。)

もう一つはSABICがこの計画に参加するという報道で、間もなく覚書が発表されるというものである。

誘導品の計画は多岐にわたっており(後述)、 Lucite International とはMMA(250 千トン)のJV交渉を行なっていると伝えられている。

ーーー

Sipchem Al-Zamil Group 11% 出資し、運営に当たっている。主な株主はサウジのほか、クエート、バーレン、UAEの企業が参加している。1999年12月に設立された。

   Al-Zamil Group についてはサウジの民間ポリオレフィン計画」参照。
      

同社のJubail での石油化学計画は3段階に分かれており、問題の計画は第三段階のものである。

(第一段階) メタノール及びブタンジオール

 (1)メタノール 
    
JV名:International Methanol Company
    出資 :Sipchem 65%
        
Japan-Arabia Methanol Co. 35%
         (三井物産 55%、三菱商事 15%ダイセル 15%、飯野海運 15%
    能力 :
1,000千トン
    
生産開始:2004/11 

    サウジでは3番目のメタノール製造会社で、三井物産が生産量の約80%を引取る。
       
2006/3/31 サウジ・メタノール計画 

 (2)ブタンジオール
    
JV名:International Diol Company
         当初はGulf Advanced Chemical Industries Ltd.GACIC)と称した。
    出資:Sipchem 53.9%
        下記各社 残り
         (
Saudi Public Pension Agency (PPA)General Organisation for Social Insurance(GOSI)
          Huntsman CorpDavy Process TechnologySabih Tahir Darwish Al Masri
          A.S. Albabtain & Company
    製品 :
Maleic Anhydride            Huntsman 技術
        BDO        75千トン Davy 技術
        
Tetrahydrofuran (THF)
        Gamma-butyrolactone (GBL)        

なお、SABICはこのたび、OSOS Petrochemical (新設)との間で、上記製品とPBT を生産するJV設立の覚書を締結している。
   
2008/1/19  SABIC、新規JV設立で MOU 締結  

 

(第二段階) 酢酸、VAM、一酸化炭素 
    2006年下期に建設開始、2009年第1四半期スタートの予定

 (1)酢酸 
    
JV名:International Acetyl Company (IAC)
    出資 :Sipchem
85%
        
Helm Arabia 15%
          
Helm AG (ドイツ)とフランス子会社Thales International Offsites のJV
    製品 :
酢酸    460千トン
          無水酢酸  50千トン

 (2)Vinyl Acetate Monomer (VAM)  
    
JV名:International Vinyl Acetate Company (IVAC)
    出資 :Sipchem
85%
        
Helm Arabia 15%
          
Helm AG (ドイツ)とフランス子会社Thales International Offsites のJV
    製品 :
VAM 330千トン
    原料 :メタノール(International Methanol
Company
        
CO、水素(United Industrial Gases Company 下記)
    技術 :
DuPont (2004/8契約)

 (3)一酸化炭素(CO)  
    
JV名:United Industrial Gases Company (UIGC)
    出資 :Sipchem 7
5%
        
National Power Company (NPC) 25%
    製品 :
CO 340千トン
    原料 :
Saudi Aramco が天然ガス供給契約

Celaneseは2007年11月、Sipchem、International AcetylsInternational Vinyl Acetate の3社に対し、3社が建設中の酢酸と酢ビプラントへの同社の技術・ノウハウの使用禁止を求めてテキサス州で訴訟を行った。

これに対してShipchem Eastman Chemical DuPont の技術を使用しており、訴えは根拠のないものと反論している。

   
2006/12/1 Celanese、サウジの酢酸メーカーを訴訟  

(第三段階)

 2006年11月、Sipchemはオレフィンと誘導品計画を発表した。

    
原料 アラムコ(エタン35%、プロパン65%
    
製品 :エチレン  1,000千トン
        プロピレン 
215千トン
        
HDPE 500千トン
        
EVA / LDPE 250千トン
        
PP
         
ANM 200千トン(Ineos 技術)
        
MMA 250千トン(Lucite 技術)
        
Carbon fiber
         
Ethylene vinyl alcohol
        
Polyvinyl acetatePolyvinyl alcoholPolyvinyl butyral
        
Polyacrylonitrile
        
Sodium cyanide
         PE pipe and film
     生産開始:
2011
     投資額:US$ 7 billion


* 総合目次、項目別目次は
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

中国の2007年のエチレン生産量は初めて1,000万トンを超え、1,048万トンとなった。
2006年中に完成した茂名石化、蘭州化学(増設)、中海シェル(新設)が通年稼動したのが寄与した。

年末の生産能力は997万トン。
2007年中の大きな新増設はないが、地図記載の通り、大規模な新増設が行なわれており、能力は今後更に大きく増える。

各社の能力、生産量の推移は下記の通り。(社名の前の番号は地図の番号に対応)

              能力(千トン)       生産(千トン)
03/末 04/末 05/末 06/末 07/末 2003 2004 2005 2006 2007

大慶石化

CNPC

龍江省

480

600

600

600

600

508

  456

556

517

537

吉林化学

CNPC

吉林省

530

530

750

750

850

575

  580

511

752

870

盤錦エチレン

Liaoning Huajin

遼寧省

160

160

160

160

160

156

  166

157

180

172

遼陽石化化繊

CNPC  

遼寧省

120

120

120

120

200

145

  142

146

150

74

撫順石化

CNPC

遼寧省

150

150

150

150

150

179

  175

168

180

177

北京東方化工

Sinopec

北京市

150

150

150

150

150

165

  181

178

168

160

燕山石化

Sinope

北京市

710

710

710

710

710

722

  801

812

820

749

天津石化

Sinopec

天津市

200

200

200

200

200

230

  228

207

232

226

斎魯石化

Sinopec

山東省

450

720

720

720

840

563

  456

825

839

847

揚子石化

Sinopec

南京市

650

650

650

650

650

765

  813

776

755

801

上海石化

Sinopec 

上海市

850

850

850

850

850

948

  956

962

960

869

廣州エチレン

Sinopec

広東省

200

200

200

200

200

170

  217

214

196

210

茂名石化

Sinopec

広東省

380

380

380

1,020

1,020

390

  394

348

522

963

中原石化

Sinopec

河南省

180

180

180

180

180

190

  209

192

214

211

蘭州化学

CNPC

甘粛省

240

240

240

690

690

175

  239

246

240

680

新疆独山子

CNPC

新彊省

220

220

220

220

220

236

  254

261

247

239

BASF-YPC

BASF/Sinopec

江蘇省

600

600

600

  ー

341

647

655

Secco

BP/Sinopec 

上海市

900

900

900

  ー

642

978

1,000

中海シェル

Shell/CNOOC

広東省

800

800

  ー

646

900

合計

5,670

6,060

7,780

9,670

9,970

6,117

6,266

7,555

9,412

10,480

②吉林、⑨斎魯の能力は実能力
⑲中海シェルの生産量は推定
合計生産量には自消用の小規模エチレンを含む。


* 総合目次、項目別目次は
   
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

2004年にメキシコ前大統領のVicente Fox Quesada が同国の石油化学の拡大のため、野心的な "Phoenix project" を打ち出した。
国営石油会社 Pemex が外資と組んで、19億ドルを投資し、年産120万トンのエチレン、60万トンのプロピレンと各誘導品を生産するというものであった。

Pemex はパートナーとしてカナダの Nova Chemicals とメキシコの私企業2社 Idelpro Grupo Idesa を選んだ。
しかし、この計画は実現しなかった。

Pemex
は財務省の指示に基づき、天然ガス等の原料の価格を米国の市場価格ベースにするよう主張、これに対しパートナーはこれが長期契約としては全く unfair であるとし、結局話がまとまらず、2005初めにPhoenix project は廃案となった。

 

2月18日Felipe Calderón 大統領は、新しく年産100万トンのエチレンコンプレックスを建設して同国の石油化学を復活させるための入札を発表した。誘導品7億ドルを含め、17億ドルのプロジェクトである。

今回の計画には Pemex 自体は参加しない。

通常は計画の参加者を先ず決め、それから原料価格等の交渉を行なうが、今回は
reverse engineering の手法を使用し、先ず、長期契約での原料のエタン、天然ガスの購入の入札を行なう。ベストオファをしたところが、工場建設の交渉を行なうこととなる。


* 総合目次、項目別目次は
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

河北省の滄州大化(Cangzhou Dahua)は2月2日、韓国・SKグループの SK (China) Investment との間でTDIの合弁会社設立の覚書を締結した。

JV名は Cangzhou Dahua-SK で、滄州大化が過半数(60-70%)を持ち、残りをSKが出資する。昨年9月から交渉を行なっていた。

滄州大化は河北省の滄州市に年産 30千トンのTDIプラントを持ち、別途同市の臨港化工区で 50千トンのプラントを建設中だが、2007年4月に、これに隣接して50千トンプラントを増設することを決めていた。

滄州大化は建設中の50千トンのTDIプラント(本年末に完成予定)をJVに出し、JVがこれに隣接して、TDI 100千トン(当初案の50千トンを倍増)と原料のDNT 60千トン、苛性ソー ダ 160千トン、硝酸 100千トンプラントを建設する。

滄州大化は現在、臨港化工区で60千トンのDNTプラントも建設中だが、これをJVに出すかどうかは決まっていない。

ーーー

滄州大化は2006年にChemChinaが60%を取得し、同社の子会社となった。
河北省に本拠を置き、上海で上場している。
尿素580千トン、アンモニア300千トンプラントを持ち、TDIでは現在、BASF、Gansu Yinguang TDI (甘肅銀光) に次ぎ、第3位のメーカー。

既存の30千トンのTDIプラントは滄州市内にあり、JVには入れずに滄州大化が従来通り運営することとなる。
この工場は昨年5月に爆発を起し、5人死亡、80人が負傷した。工場は半年間閉鎖され、11月に生産を再開している。

ーーー

中国のTDIの需給は以下の通り。(千トン)

  生産 輸入 輸出 消費
2004    66   246   7.5   304.5
2005    70   238   7.5   300.5
2006   140   163   6   297

BASFの上海プラントは2006年に稼動し、2007年には通年操業しており、2007年の生産量は増えている。

各社のTDIの能力及び計画は以下の通り。(単位:千トン)

社名 現行能力 建設中 計画 完成
上海BASFポリウレタン(上海市)*1   160      
甘肅銀光TDI(甘肅省白銀市)    50      50 2010年
滄州大化(河北省滄州市)
 Cangzhou Dahua-SK (河北省滄州市臨港化工区)
 
   30
 
 
 
   50
 
 
 
  100
 
2008年末
2012年?
藍星グループ(山西省太原市)     30      
Yantai Juli (山東省莱陽市)     15      
Bayer Material Science(上海市)*2     300   2009年
遼寧North Jinhuaポリウレタン(遼寧省 葫蘆島市)      50   2008年末
合計    285   400   150  

*1 BASFはHuntsman 及び中国側とのJVで上海にイソシアネート・コンプレックスを建設した。

*2 Bayerは上海ケミカルパークで1系列では世界最大の35万トンのMDI 設備を建設中で、2008年完成の予定だが、合わせて30万トンのTDIプラントを建設している。同プラントは当初16万トンの計画であったが30万トンに拡大された。2009年稼動予定で、Gas Phase Phosgenationを始めて採用する。

これは既存プロセスと比べ、投資額が20%、エネルギーコストが40%少なくて済み、より安全で、溶剤使用量も少ない。
年産30千トンのパイロットプラントで実績がある。


* 総合目次、項目別目次は
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

Bayer の薬害問題 - 化学業界の話題

217日の米CBSテレビの報道番組 60 Minutes One Thousand Lives A Month” というタイトルで Bayer の失血予防薬 Trasylol (Aprotinin) の薬害問題について報じた。

   http://www.cbsnews.com/stories/2008/02/14/60minutes/main3831900.shtml (番組ビデオ付き)

Bayer HealthCare Pharmaceuticals Trasylol (Aprotinin)は失血リスクや輸血リスクが高い患者の心臓バイパス手術時の失血予防薬として使われる。

Trasylol は出血をコントロールできるという研究から1993年にFDAが使用を承認した。

しかし、2006年1月に Dr. Dennis ManganoNew England Journal of Medicine に次の発表を行なった。

血行再建術を受ける患者 4,374 例を対象に、3つの薬剤(Aprotinin 1,295 例、アミノカプロン酸 883 例、トラネキサム酸 822 例)の投与と薬剤非投与(1,374 例)について評価した。

アプロチニンの使用は、複雑な冠動脈手術を受けた患者あるいは初回手術を受けた患者において、透析を要する腎不全のリスクが 2倍になることと関連していた。
同様に、初回手術群にアプロチニンを使用すると、心筋梗塞または心不全のリスクが 55%増加し、脳卒中または脳症のリスクが 181%増加した。
アミノカプロン酸とトラネキサム酸はいずれも、腎、心、脳イベントのリスク増加とは関連していなかった。

結論
アプロチニンは重篤な標的臓器障害と関連することから、継続的使用は賢明ではないことが示される。
一方、アプロチニン($1,000)より安価なジェネリック薬であるアミノカプロン酸やトラネキサム酸($50)は、安全な代替薬である。

FDAは20062月に、この研究に基づき、本剤の使用を制限するよう、勧告を出したが、禁止はしなかった。 

BayerはハーバードのDr. Alexander Walker に調査を依頼した。70,000人の患者の記録から、同じような結果が得られた。

2006年9月、Dr. ManganoはFDAに17カ国5,065名の患者の観察を提示し、本剤の禁止を要請した。
しかし、彼の研究はプラシーボ(偽薬)と対比するというきちんとした研究ではなく、病院の記録の分析であったため、あまり評判はよくはなかった。
Bayerはこの会議に出席したが、
Dr. Walker の研究結果については触れず、本剤を擁護した。
(以後の調査で、担当者がこの報告の研究方法や分析に問題があるとして質問し、会議日までに返事を受け取っていなかったとしている)
この結果、本剤は禁止されなかった。

20079月に開催されたFDA諮問委員会に先立って発表された資料において、FDAはTrasylol (Aprotinin)が透析が必要となる腎不全や死のリスクを上昇しうるという見解を表明、11月に使用が禁止された。

ーーー

番組ではDr. Mangano は、2006年1月から2007年11月までの間に 431,000人の患者が本剤の投薬を受けており、もし20061月の彼の報告時に本剤を禁止しておれば、22,000人(月 1,000人)の命 (番組タイトルの One Thousand Lives A Month) が救われたであろうと述べた。

FDA Dr. Hiatt は、もしBayerの調査結果を知っておれば、20069月の会議で禁止の提案をしていたであろうと述べている。


* 総合目次、項目別目次は
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

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