「no」と一致するもの

Nature誌は7月24日付で "Discovery of SARS-CoV-2 antiviral drugs through large-scale compound repurposing" という論文を掲載した。

国際チームの論文で、Laura Riva (Sanford Burnham Prebys Medical Discovery Institute) とShuofeng Yuan(University of Hong Kong)が共同執筆した。チームにはSanford Burnham Prebys Medical Discovery InstituteのNaoko Matsunagaの名が出ている。

開発中や既存の約1万2000種類の薬について新型コロナウイルス感染症の治療に役立つかどうかを細胞実験で調べた結果、21の薬剤が候補として出てきた。

アビガンはこれに含まれていない。

既に他の効用でFDAの承認を得ているのが2つ(ハンセン病のClofazimine、アレルギーのAstemizole) で、ほかにRemdesivirはCOVID-19向けにFDAから緊急承認 (EUA) を得ている。

このほかに他の効用で臨床試験に入っているものが多い。(PhaseⅢが1つ、PhaseⅡが3つ、PhaseⅠが6つ)

クロロキン誘導品のHanfangchin Aなど4つはRemdesivirとのシナジーで機能する。

チームはこの21の候補のうち、3つが特に有望としている。

ONO 5334:小野薬品の骨粗鬆症向け:PhaseⅡまで進んだが、競合状況などから2012年に開発中止を発表した。

MDL-28170:アルツハイマー

Apilimod:自己免疫疾患、癌が主であったが期待外れ、PIKfyve inhibitor として有効

研究チームは現在、21の候補を小動物でテスト中で、結果が良ければCOVID-19治療の臨床試験の実施をFDAと協議するとしている。

小野薬品では「内容を精査して対応を検討する」としている。


候補薬剤は下記の通り。

薬剤 本来の用途 状況
Clofazimine ハンセン病 Approved (FDA)
Astemizole アレルギー Approved (FDA) and withdrawn
Remdesivir ウイルス感染 EUA(FDA)
Hanfangchin A (tetrandrine) 癌、マラリア原虫感染 Phase III
Apilimod 自己免疫疾患 、癌 Phase II
MLN-3897 骨疾患、炎症疾患
ONO 5334 骨粗しょう症
Elopiprazole 精神異常 Phase I
SDZ-62-434
YH-1238 胃潰瘍
DS-6930 糖尿病
N-tert-Butylisoquine (GSK369796) マラリア原虫感染
R 82913 HIV
VBY-825 非アルコール性脂肪性肝炎, PBC原発性胆汁性肝硬変 Phase 0
8-(3-Chlorostyryl)caffeine 精神異常 Preclinical
AMG-2674 痛み
KW 8232 骨粗しょう症
MDL 28170 アルツハイマー
SB-616234-A 気分障害
SL-11128
Z LVG CHN2 バクテリア感染

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ダイセルは7月20日、子会社ポリプラスチックのCelanese持分(45%)を1,575百万ドルで取得し、100%子会社にすると発表した。

同日、契約を締結した。各国の競争当局の承認を得て取得する。

ポリプラスチックは1964年5月にダイセル55%、Ticona( 当時はCelaneseと HoechstのJVのエンジニアリングプラスチック事業、のち、Celanese子会社)45%で設立した。

日本を代表するエンプラ専業メーカーで、ポリアセタール(POM)、液晶ポリマー(LCP)で世界シェアNo.1、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)でNo.4、ポリブチレンテレフタレート(PBT)でNo.5となっている。


これまでCelaneeとは、当該事業のみならず、酢酸、酢酸セルロース、アセテートトウなどよく似た事業構造を持つ企業として、パートナーシップを継続して きた。

両社間では、時には知的財産をめぐる係争が生じたり、ポリプラスチックスのさらなる成長をめぐる意見の相違が生じたりする場面もあ ったが、昨年来、トップ同士の対話を通じて、こうした諸課題の解決を模索し、この度の合意に 至ったもの。

ポリプラスチックスの完全子会社化により、エンジニアリングプラスチック事業を中核として、合成樹脂分野の事業再編を加速し、グループ内にある様々な製品群のシナジー効果の最大化を追求 する。

ーーー

Celaneseの歴史は下記の通り。

ドイツのHenri Dreyfus(Hoffmann La Roche勤務)が1913年にCellonit Gesellschaft Dreyfus を設立し、セルロイドの製造を始めた。

ダイセルの前身の大日本セルロイドも1919年に、日本セルロイド人造絹糸、堺セルロイド(いずれも1908年設立)、大阪繊維工業(1916年設立)などセルロイド製造会社8社の合併で設立された。

その後、航空機用ペイントとその原料の酢酸の製造を行った。英国にBritish Cellulose & Chemical Manufacturing Co.を設立。

第一次大戦後の需要減でアセテート繊維の製造を開始、英国の会社をBritish Celanese Limitedに改称、米国にAmerican Cellulose & Chemical Manufacturing Companyを設立した。

米国の会社は1927年にCelanese Corporation of America に改称した。

1961年にCelanese Corporation of Americaと Hoechst AG がドイツにJV のTicona Polymerwerke を設立し、POMの生産を開始した。

この後、1964年にダイセルと合弁でポリプラスチックを設立した。

1987年にHoechstがCelanese を買収した。

その後、1997年にヘキストは事業再編でTiconaを子会社とし、1999年に化学部門をCelaneseとして分離、残る農薬・医薬部門をRhone Poulencs と統合し、Aventisとした。
TiconaはCelaneseの子会社となった。



2004年にBlackstone Capital PartnersがTOBでセラニーズを38億ドルで買収した。

Blackstoneは2005年初めにCelaneseを上場、順次、持株を売却し、2007年5月に全株を売却、短期間で50億ドル以上の利益を得た。

2007/6/2 米投資会社 Blackstone、Celanese 株式の売却完了

韓国の食品医薬品安全処は7月17日、製薬大手Celltrion Healthcareの新型コロナウイルス感染症の抗体医薬品「CT-P59」に対する第1相臨床試験の実施を承認した。韓国初の新型コロナ薬の臨床試験となる。

Celltrion Healthcareは6月23日、リウマチ関節炎など自己免疫疾患治療薬 Remicade(一般名 Infliximab)のバイオシミラー「CT-P59」(商品名 Remsima)が新型コロナウイルス感染症に効果があることが確認されたと発表した。

Infliximabは抗ヒトTNF-αモノクローナル抗体で、米国ではJohnson &Johnson子会社のJanssen Biotech(旧称 Centocor)、日本では田辺三菱製薬からRemicade の商品名で販売されている。
Celltrion は2016年4月にFDAからRemsimaの米国の承認を受けている。

なお、田辺三菱製薬は、2015年12月21日、抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤「レミケード®点滴静注用100」(一般名:Infliximab)について、既存治療では効果不十分な川崎病の急性期に対する効能・効果追加の承認を取得したと発表した。生物学的製剤として、世界で初めての「川崎病」の効能・効果の承認取得となる。

2015/12/28 抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤「レミケード®」、川崎病の承認取得 

同社の抗体医薬品は、ウイルスの表面に直接作用し、ウイルスが人の細胞を捕捉することができないように設計されている。

臨床試験は忠南大学病院で健康な人32人に新薬を投与して安全性などを評価するもので、今年9月までに終了する計画。その後、200〜300人を対象にした第2相、2,000〜3,000人を対象にした第3相を終えて、来年上半期の商用化を目指している。

同社によると、新薬は感染力が高い変種ウイルス(GH型)への効果がより高いという。

海外でも欧州全域で近く治験を開始する予定で、その後軽症から中等症の患者を対象に、世界的に治験を実施する方針。

同社は7月21日、9月から松島(ソンド)の第1工場でこの製品の商業生産を開始すると発表した。臨床結果とは関係なく、まず生産に入り、臨床第2相の試験結果で有効な結果が出ればすぐに緊急使用承認の手続きを踏んで、早期商用化に乗り出す。

ーーー

Celltrion Inc.は低分子医薬品、バイオシミラー、革新的新薬の研究開発および製造に特化したバイオ医薬品企業で、1999年12月に Nexol, Inc.として設立された。

2002年に米国のバイオ医薬会社 VaxGenが48%出資、Nexolが13%、残りをその他数社が出資してCelltrion を設立し、2005年に韓国仁川にバイオ医薬品の工場を建設した。
(VaxGenは2010年にdiaDexus, Inc. に買収されたが、diaDexusは2016年に倒産した。)

2009年にCelltrion Healthcareに社名変更。

2013年にグローバル製薬市場をリードする欧州で 世界初の抗体バイオシミラーであるRemsima®を発売

日本化薬は2018年3月、Celltrion Healthcareと共同で開発してきたトラスツズマブ(遺伝子組換え)製剤のバイオシミラーの日本での製造販売承認取得を発表した。HER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発胃癌の効能・効果で承認されたもので、韓国と欧州ではCelltrionが承認を取得している。

武田薬品は2020年6月11日、アジア・パシフィックの国々のみで販売する一部のノンコアの一般用医薬品及び医療用医薬品を、バイオ医薬品企業である韓国のCelltrion Inc.に譲渡する契約を締結したと発表した。

一時金として現金2億6,600万米ドルを受け取り、マイルストン支払いとして最大1,200万米ドルを追加で受け取る可能性がある。

2020/6/16 武田薬品、アジア・パシフィックのノンコア医薬品を韓国のCelltrion社に譲渡 

札幌医科大学医学部が人口あたりの新型コロナウイルス死者数の推移を発表している。

これまで、これにより各国の状況を分析した。

当初はBCGの予防注射に注目した。(特に日本株とロシア株)

2020/5/4 COVID-19とBCG接種(その4)

BCGの日本株とロシア株は欧州のものと異なるため、死亡率の差はかなり説明できる。
但し、日本型と同じ種類のソ連型をみると、デンマーク型の国よりもはるかに少ないが、日本型とはかなりの差がある。この理由は不明である。

その後東アジアの人は、すでにさまざまなコロナウイルスの亜型にかかっており、新型コロナウイルスに効く免疫が出来ているのではないかとの見方をした。

2020/5/25 日本人などには新型コロナウイルスの免疫? 

更に時間が経ち、7月18日時点の死亡率をみると、状況は大きく変わっている。

中南米(チリ、ペルー、ブラジル、エクアドル、メキシコ、コロンビア)が急増しつつある。
東京株のBCGの予防注射をしているサウジ、イラクや、ロシア株BCGのエクアドル、トルコ、パナマなども増えている。

これに対し、日本、中国、韓国、マレーシア、インドネシア、豪州など、東アジア、東南アジア、豪州は低いままである。

これからみると、BCGの効果だけではなく、5/25のブログ記載の、「すでにさまざまなコロナウイルスの亜型にかかっており、新型コロナウイルスに効く免疫が出来ているのではないか」との見方が正しいように思われる。(山中伸弥氏もBCGの可能性は否定していない。)

日本だけが死亡率が低いわけではなく、麻生副総理の『おたくとは、うちの国とは国民の民度のレベルが違うんだ』(6月9日の衆議院の財務金融委員会発言)は正しくない。


黄色はBCG集団予防注射なし、紫は最近に死亡率が急上昇

人口千人

集団接種
実施期間

接種者
現年齢

接種
延年数

BCG株 4/30 5/19 6/5 7/18 7/18
順位
ベルギー 11,590 Pasteur 1173 647 784 824 846 1
スペイン 46,775 1965-1981 39-55 17 Danish 1331 519 593 598 608 3
イタリー 60,462 Danish 1331 458 495 555 579 4
英国 67,886 1953-2005 28-80 53 Glaxo 384 513 580 666 2
フランス 65,274 1950-2007 13-70 58 Danish 1331 369 433 445 462 6
オランダ 17135 Bulgaria 275 332 350 358 11
スウエーデン 10,099 1940-1975 45-80 36 Danish 1331 244 366 452 556 5
アイルランド 4,938 1950s-2003? 17-60+ 44 Danish 1331 241 313 337 355 12
米国 331,003 184 273 327 421 8
スイス 8,655 1960s-1987 33-50+ 18 Merieux (Danish) 163 185 192 195 17
ポルトガル 10,197 1965-2015 5-55 51 Danish 1331 95 121 143 165 20
カナダ 37,742 Connaught(-2012),
Tokyo 172-1(2012--)
79 155 202 234 16
デンマーク 5,792 1946-1986 34-74 41 Danish 1331 76 95 100 105 25
ドイツ 83,784 1961-1998 22-59 38 Danish 1331
旧東独は
Russia
75 96 103 108 24
イラン 83,993 <1990-2018+ 0-30+ 31 Pasteur 1173 P2 71 83 96 164 21
オーストリア 9,006 1952-1990 30-68 39 64 70 74 79 31
エクアドル 17,643 <1995-2018+ 0-25+ 26 Russia-Bulgaria 50 159 198 298 13
トルコ 84,339 1952-2018+ 0-68 69 Serum Inst. India (Russia) 45 49 55 297 14
スロベニア 2,079 1947-2005 15-73 59 Danish 1331 43 49 52 52 36
パナマ 4,315 <1980-2018+ 0-40+ 41 Russia-Bulgaria 41 55 84 133 22
ノルウェー 5,421 1947-2009 11-73 63 Danish 1331 37 39 44 46 39
フィンランド 5,541 1941-2006 14-79 66 Glaxo, Danish 1331 37 54 58 59 35
ルーマニア 19,238 1928-2018+ 0-92 93 Romania BCG substrain 35 48 68 102 26
マケドニア 2,083 <1993-2018+ 0-27+ 28 Toronto Canada (Connaught) 35 50 71 195 18
ハンガリー 9,660 1953-2018+ 0-67 68 Danish 1331 32 48 56 62
プエルトリコ 2,861 30 43 49 62
ペルー 32,972 <1990-2018+ 0-30+ 31 Danish 1331 29 88 153 388 9
モルドバ 4,034 <1992-2018+ 0-28+ 29 28 53 78 167 19
ドミニカ 10,848 <1995-2018+ 0-30+ 31 Russia-Bulgaria 27 40 48 87
ブラジル 212,559 <1990-2018+ 0-30+ 31 Moreau 26 79 160 366 10
イスラエル 8,655 1955-1982 38-65 28 25 31 34 45
チェコ 10,709 1953-2010 10-67 58 Moreau 21 28 30 33
セルビア 8,737 <1992-2018+ 0-28+ 29 Pasteur 1173 P2 19 26 28 52
ポーランド 37,847 1955-2018+ 0-65 66 Danish 1331 16 25 30 43
メキシコ 128,933 1951-2018+ 0-69 70 Danish 1331 13 41 97 297 15
ギリシャ 10,423 <1980-2014+ 12-46+ 35 Danish 1331 13 16 17 19
チリ 19,116 <1980-2018+ 0-40+ 41 Danish 1331 11 25 71 437 7
アルジェリア 43,851 <1985-2018+ 0-35+ 36 10 13 16 24
ロシア 145,934 <1992-2018+ 0-28+ 29 Russia 7 19 37 84
ウクライナ 43,734 <1992-2018+ 0-28+ 29 Bulgaria NCIPD 6 12 17 33
コロンビア 50,883 <1980-2018+ 0-40+ 41 Pasteur 1173 5 12 21 124 23
フィリッピン 109,851 1979-2018+ 0-41 42 Tokyo 172-1 and others 5 8 9 15
韓国 51,269 1970s-1985? 0-40+ 41 Tokyo 172-1 5 5 5 6
アルゼンチン 45,196 <1985-2018+ 0-35+ 36 Anlis Malbran (Pasteur) 5 8 13 47
モロッコ 36,911 1949-2018+ 0-71 72 5 5 6 7
サウジ 34,814 <1985-2018+ 0-35+ 36 Pasteur, Danish 1331,
Tokyo 172-1
5 9 18 69 32
エジプト 102,334 <1990-2018+ 0-30+ 31 4 6 11 41
豪州 25,500 1950s-1985? 40-70 31 Connaught (until 2010s) 4 4 4 5
日本 126,476 <1951-2020 0-69+ 70 Tokyo 172-1 3 6 7 8
中国 1,439,324 1949-2018+ 0-71 72 Shanghai D2PB302 3 3 3 3
マレーシア 32,366 <1980-2018+ 0-40+ 41 Tokyo 172-1 3 3 4 4
インドネシア 273,524 <1990-2018+ 0-30+ 31 Pasteur 1173 3 4 6 14
イラク 40,223 <1980-2018+ 0-40+ 41 Tokyo 172-1 2 3 7 90 27
南アフリカ 59,309 <1995-2011+ 0-25+ 26 Danish 1331 2 5 14 81 30
パキスタン 220,892 1978-2018+ 0-40 41 Danish 1331(-2007)
Tokyo172-1(2008-)
2 4 8 25
バングラデシュ 164,689 <1990-2018+ 0-30+ 31 Serum Inst. India (Russia)
Tokyo 172-1
1 2 5 15
インド 1,380,004 1951-2018+ 0-69 70 Danish 1331 1 2 5 19
ベトナム 94,670 30年以上前から 0


米商務省は7月20日、中国・新疆ウイグル自治区のウイグル族の強制労働や遺伝解析に関わったとして、衣料品や家電などを手掛ける中国企業11社をEntity Listに載せ、事実上の禁輸措置を発動すると発表した。

米国製品を対象企業に輸出する場合は商務省の許可が必要で、企業の申請は原則却下する。

強制労働 Changji Esquel Textile 世界最大規模のシャツ製造企業、ラルフローレンなどの衣料品を生産
Hefei Bitland Information Technology
Hefei Meiling(美菱:家電メーカー)
Hetian Haolin Hair Accessories(和田浩林髪飾品)
Hetian Taida Apparel(和田泰達)
KTK Group(高速鉄道関連の部品製造メーカー)
Nanjing Synergy Textiles
Nanchang O-Film Tech
Tanyuan Technology (高熱伝導性グラファイト強化アルミニウム複合材料)
遺伝解析 Xinjiang Silk Road BGI 中国のゲノム配列決定会社のBGI(北京基因組研究所)の子会社
Beijing Liuhe BGI


ロス商務長官は声明で「無力な少数派のイスラム教徒に対する中国共産党の卑劣な攻撃に米国の製品や技術が使われないようにするための措置だ」と強調した。

トランプ米大統領は6月17日に、中国政府による新疆ウイグル自治区のウイグル族弾圧に関わった中国当局者に制裁を科す「ウイグル人権法案」に署名、これにより同法は成立した。
同法は、大統領に対し、ウイグル族弾圧に関わった中国当局者らを特定する報告書を議会に提出するよう求め、資金凍結やビザ取り消しなどの制裁を科す。

ーーー

米国は中国が新疆ウイグル自治区で少数民族を弾圧していると批判している。

トランプ米政権は2019年10月7日、監視カメラ世界首位の杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)など中国の28団体・企業に禁輸措置を課すと発表した。

米商務省は10月9日付で輸出規制の対象である「エンティティー・リスト(EL)」にハイテク8社と、新疆ウイグル自治区各地区の公安部門など20機関の合計28団体・企業を加えた。

新たに登録された企業は新疆ウイグル自治区の住民たちに対し先進技術を用いた監視によって抑圧、大量の恣意的な拘留などを強いるのに協力していたと判断されるとした。

Hikvision(杭州海康威視数字技術 ) 監視カメラ世界首位
Dahua Technology (浙江大華技術) 監視カメラ世界2位
Sense Time(商湯科技) AIスタートアップの先頭集団に位置 自動運転向け画像認識技術
ホンダが提携
Megvii Technology(曠視) アリババが支援する顔認識およびディープラーニングソフトウェア
バイデン前副大統領の次男の関連投資会社が出資
iFLYTEK(科大訊飛 音声認識や自動翻訳技術大手
Xiamen Meiya Pico Information
美亞柏科信息
情報セキュリティ(データフォレンジック)
Yitu Technologies(依圖科技 顔認識
Yixin Science and Technology
溢鑫科創科技
ナノテクノロジー


2019/10/9 米、中国の少数民族弾圧でハイテク企業と公安部門をEntity Listに追加


米国は2020年6月5日に、
ウイグル関係の人権侵害関与理由により9団体をEntity Listに追加 した。うち7社は監視関連の企業である。

中国公安部の物証鑑定センター
強制労働 Aksu Huafu Textiles
監視関連 CloudWalk Technology (顔認識プロバイダー)
FibreHome Technologies Group(ITインフラストラクチャ
上記の子会社 Nanjing FiberHome Starrysky Communication Development
同 IS'Vision
NetPosa Technologies(スマートシティテクノロジーと顔認識)
上記の子会社 SenseNets
Intellifusion(公共安全関連のAIテクノロジー)

今回は、これらに続く第三弾である。

中国の人権問題でも圧力をかけるとともに、新興ハイテク企業をけん制する思惑がみられる。

ーーー

英国のドミニク・ラーブ外相は7月19日、中国西部の新疆ウイグル自治区で「おぞましく、甚だしい」人権侵害が起きているとして、中国政府を非難するとともに、関係者への制裁措置もあり得ると表明した。

人権団体や専門家は、ウイグル人をはじめとするチュルク語系の少数民族100万人超が拘束され、各地の強制収容所群に収容されているとみている。



米国国防総省、連邦調達庁、航空宇宙局(NASA)は7月14日、米政府機関が Huaweiなど指定企業の製品などを利用している企業と契約を行うことを禁止する2019年度国防権限法(John S. McCain National Defense Authorization Act for Fiscal Year 2019)の第889条に関する最終暫定規則を官報で公表した。 (7月10日に公表)

コメントを9月14日まで受け付ける。(8月13日施行の規則であるが、施行延期の要請が出ており、施行予定日を過ぎてのコメント受付は、施行日を遅らせる前提である可能性もある。)

付記

米政府は8月13日、華為技術(Huawei)など中国企業5社の製品やサービスを使う企業と、米政府との取引を禁止する規則を施行した 。

ーーー

米上下両院は2018年8月、華為技術(Huawei)や中興通訊(ZTE)と、監視カメラ首位の杭州海康威視数字技術(Hangzhou Hikvision Digital Technology:HIKVISION )、同2位の浙江大華技術(Dahua Technology)、特定用途無線大手の海能達通信(Hytera Communications)の計5社への締め付けを大幅に強化することを盛り込んだ「2019年度米国防権限法」を超党派の賛成で可決し、8月13日にトランプ大統領が署名、成立した。

米国では議会が2012年頃から「Huawei と ZTEの通信機器が中国のスパイ活動に利用され、米国が開発した軍事技術が流出している」として米企業に2社の製品を使わないよう呼びかけを始めた。
2017年には国防総省による2社の製品調達を禁止する法律が成立した。
2018年5月に国防総省は世界中の米軍基地の携帯電話販売店で HuaweiとZTE製のスマホの販売を禁止した。

2019年度米国防権限法は、禁止を国防総省以外にも拡大するもので、禁止対象製品は次の通り。

(A) Huawei と ZTE 製の通信機器

(B) Hytera、HIKVISION 、Dahua製のセキュリティ用のビデオ監視・通信機器

(C) 国防長官が国家情報長官、FBI局長との協議で、中国政府の影響下またはつながりがあるとみなす企業の通信機器及びビデオ監視システムも同様の扱いとなる。

禁止は2段階に分かれる。

第1 段階(発効日の1年後=2019年8月13日以降)

  米政府機関(連邦政府、軍、独立行政組織、政府所有企業)が5社の製品や、5社が製造した部品を組み込む他社製品を調達することを禁止

第2段階(発効日の2年後=2020年8月13日以降)

5社の製品を社内で利用している世界中の企業との取引を禁止
(米政府機関に収めている製品・サービスが通信機器とは一切関係のない企業でも、5社の製品を使っておれば禁止)

2018/12/11 2019年度米国防権限法(NDAA2019) --- Huawei、ZTE等の米政府機関との取引からの排除

第1段階は既に2019年8月13日以降実施されている。

問題は第2段階で、 既に世界の企業で多くの中国製通信機器が利用されている。 中国国内に工場を持ち製品を作っている企業の多くは、中国製の通信機器を使わざるをえない状況にあるケースが多いという。

2019会計年度(2018年10月~19年9月)の政府調達額は約5800億ドル。日本企業で米政府との取引企業は800社を超える。

日本でも多くの企業がHuaweiなどの製品を使っており、Huawei の通信基地局の日本国内シェアは2017年度に13%に達していた。

今回、この第2段階の2020年8月13日からの実施についての最終暫定規則が発表された。

暫定規則によると、当面は政府と直接契約する法人が対象となる。しかし最終的にグループ企業などにも広がる可能性がある。

企業が米国政府と取引を続けたい場合には、問題視されている5社の機器の利用を一切やめ、5社の製品やサービスを使っていないと証明書を出す必要がある。「利用(use)」の定義がなく、問題視されている。
虚偽を報告した場合は民事・刑事罰もあり得る。

準備が間に合わない企業に適用除外を申請できる制度も設けた。(但し、最長で2022年8月13日まで)

米政府は新規則順守にかかる費用として、完全に対応するまでに計800億ドル超のコストがかかると算定している。

共和党上院議員が6月25日に本規則の施行日を1年延長する案を提案したが、議会で承認されるかは不明。

米商工会議所は7月15日、施行を遅らせる条項を近く可決する予定の「COVID-19第4次対策案」に含めることを求める声明を出した。
特にコストが掛かり過ぎること、ルールの発表が7月10日で、8月13日施行では準備が出来ないことなどを問題視している。


富山大学、千代田化工建設、日鉄エンジニアリング、日本製鉄ハイケム、三菱商事は共同でNEDOの「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/CO2排出削減・有効利用実用化技術開発/化学品へのCO2利用技術開発」に応募し、採択されたと発表した。

テーマはCO2を原料とするパラキシレン製造に関する開発」である。

NEDOでは、既存の化石燃料由来化学品に代替することを目的とする化学品へのCO2利用技術の開発として、CO2を原料とするパラキシレン製造に関する世界最先端の技術開発事業への取り組みを開始し たが、これに採択された。

CO2からパラキシレンを製造するための画期的な触媒の改良、量産技術の開発やプロセス開発を実施するとともに、全体の経済性やCO2削減効果を含めた事業性検討を行い、実証段階への道筋を作ることを目指す。

2020年度~2023年度 に実施、予算は19.9億円。

分担は次の通り。

1) 触媒開発(新規触媒の性能向上、長寿命化等) :富山大学 、日本製鉄、ハイケム
2)
触媒のスケールアップ開発(触媒構成成分の大量合成、工業触媒向けの成形等):ハイケム
3
プロセス開発(最適プロセスフロー、運転条件の最適化等) :千代田化工建設、日鉄エンジニアリング、日本製鉄
4
事業性検討(反応経路に応じた経済性とCO2削減効果の評価、市場調査) :三菱商事

ーーー

これ以外の発表はないが、元の技術は富山大学大学院理工学研究部・椿 範立教授 の「二酸化炭素からの新しいC1化学プロセスの創成」によるものと思われる。

メタンとCO2 (+O2)からの合成ガス製造

・合成ガスから芳香族化合物・特にパラキシレンを合成

直接合成反応経路を開拓した。わずか1つのハイブリッド触媒(Cr/Zn-Zn/Z5@S1) を設計・調製し、合成ガスの高効率的な転換を達成したとともに、パラキシレンの優れた選択率も実現した。

https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2017/sc/c7sc03427j#!divAbstract

ーーー

メンバーのうち、ハイケム㈱は、「会社設立以来、化学業界における日中の架け橋として、化学品の輸出入販売や受委託製造を基軸とした事業を推進してまいりました」としている。

事業内容は①C1ケミカル事業、②素材エネルギー事業(生分解性材料、水素エネルギー関連)、③貿易事業(化学品の輸出入販売・委託製造)

①は、宇部興産の技術をもとに、同社と中国の東華工程科技等が共同で工業化を確立した合成ガス(シンガス)からエチレングリコールを製造する技術(SEG®技術)のライセンス、触媒供給、技術指導で、現在22件のライセンス契約を締結しており、これらのプラントがすべて稼動した場合、約800万トンの生産能力となる。

この関連で本プロジェクトに参加したと見られる。

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田辺三菱製薬は7月15日、連結子会社であるカナダのMedicagoが、新型コロナウイルス感染症 用のワクチンの第1相臨床試験を開始したと発表した。

植物由来のウイルス様粒子(VLP:Virus Like Particle)ワクチン(開発番号:MT-2766)で、本年3月12日に作成成功を発表、安全性と有効性に関する非臨床試験を実施してきた。

第1相臨床試験では、①単剤、②GSK社のアジュバントまたは③Dynavax社のアジュバントを添加したワクチンを、3用量 (3.75、7.5、15 micrograms)のグループにわけて、21日間隔で2回接種し、安全性と免疫原性を評価する。

アジュバントはワクチンと一緒に投与して、その効果(免疫原性)を高めるために使用される物質

なお、MedicagoはSARS-CoV-2に対する抗体に関しても、自らの技術基盤を活用し、Canadian Institutes of Health Research から一部資金提供を受けて、Laval University's Infectious Disease Research Centre と協力して研究を行っている。

付記

田辺三菱製薬は10月26日、カナダの子会社Medicagoの新型コロナウイルス感染症予防ワクチンの開発に、カナダ政府から173百万カナダドル(約137億円)の助成金を受ける契約を結んだと発表した。
カナダ政府に対し、最大7600万回分のワクチン供給もするという。

同社は7月にカナダでコロナワクチンの初期治験を開始、間もなく第1相臨床試験が終了する予定。11月から第2、12月から第3相臨床試験を開始する予定としている。

ーーー

田辺三菱製薬は2013年7月12日、Philip Morrisと共同で、カナダの医薬品会社 Medicago Inc.の全株式を取得することで同社取締役会と合意したと発表した。
両社は買収後のMedicagoを、田辺三菱60%、Philip Morris 40%のJVとして運営する。

報道では現在の出資比率は田辺三菱が67%、Philip Morrisが33%となっている。

Medicagoは下記の技術を持つ。

 Proficia™  植物の葉でのワクチン製造 
         
2016/2/26 田辺三菱製薬、タバコの葉からインフルエンザワクチン
 
 VLP     遺伝子情報を持たないウイルス様粒子(
体内でウイルスの増殖がなく安全性に優れる)

 
VLPExpress™  新ワクチンを早く見つける手法


Medicagoは植物由来のウイルス様粒子(VLP:Virus Like Particle)技術を用いた新規ワクチンの研究開発に特化したバイオ医薬品会社で、遺伝子操作によって植物の細胞内にVLPを生成させ、効率的に抽出・精製する独自技術を有している。

ワクチンは毒性を弱めた微生物やウイルスを使用、弱い病原体を注入することで体内に抗体を作り、感染症にかかりにくくする。
但し、弱いとはいえ病原体を接種するため、まれに体調が崩れることがある。

ウイルスはcapsid というたんぱく質でできた殻の中に、遺伝子(DNAやRNAなどの核酸)を収めている。
ウイルス様粒子(VLP)は、capsidの殻を持つため、生体はこれを認識して免疫反応を起こし、通常のウイルスに対するのと同様に抗体をつくって攻撃を仕掛ける。

しかし、capsidのなかに遺伝情報をもたないため、理論上感染の恐れがない安全なワクチン作成への応用が進められている。

ワクチンは受精卵などに接種し増殖させるが、Medicagoは植物の細胞内に遺伝子操作によってVLPを生成させ( Proficia technology) 、効率的に抽出・精製する独自技術で、VLPを安価に短期間で製造することを可能としている。

2013/7/19 田辺三菱製薬、カナダ医薬品会社Medicagoを子会社化


トランプ米政権は南シナ海における中国の権利主張を公式に非難した。これまでは「航行の自由」の保護を呼び掛けながらも、同海域の領有権問題には関与しないとの立場をとっていた。

ポンペオ米国務長官は7月13日、「米国はここで明確にしておく。南シナ海のほとんどの資源に対し中国政府が主張する権利は完全に不法なものであり、その掌握を目的とした嫌がらせの活動も同じく完全に不法だ」との声明を発表した。

ハーグの常設仲裁裁判所が2016年にフィリピンの訴えを受け、南シナ海の大部分について中国の領有権主張には法的根拠がないとした判断を支持すると述べた。また、中国がベトナム、マレーシア、インドネシア、ブルネイ近海で主張する海洋権益も否定し、他国の漁業、開発活動を妨害する行為を「違法」と非難した。

国務省の東アジア担当の次官補は「アメリカがこれらの海洋問題で中立だとか、いかなる立場もとらないとか言うことはもはやない」と述べた。

南シナ海では最近、中国海軍による軍事演習に続き、米軍が6年ぶりに空母2隻を派遣するなど緊張が高まっている。
第7艦隊は7月14日、「航行の自由」作戦を実施、イージス駆逐艦が、中国が軍事拠点化を進める南沙諸島(スプラトリー諸島)の周辺を航行した。

米国発表について中国外務省報道官は、「中国の主張は十分な歴史と法的根拠があり、国際法にも符合する」とし、「米国こそ地域の平和と安定を破壊するトラブルメーカーである」と強く反発、挑発をやめるべきだと主張した。

ーーー

南シナ海には、パラタス諸島(東沙諸島)、パラセル諸島(西沙諸島)、マクセルフィールド諸島(中沙諸島)、スプラトリー諸島(南沙諸島)などがある。

西沙諸島と南沙諸島(新南群島)は日本が領有していたが、日本が敗戦で 領有権を放棄した。1970年代に海底油田の発見などで中国やフィリピン、ベトナム、マレーシアなどが自国の領海と主張し始めた。
東沙諸島は台湾が実効支配している。

1947年に当時の中華民国は南シナ海に引いた11本の線を元にした「11段線」で囲まれた海域を「領海」と一方的に決めた。(地図の赤線 H と赤線A)
その後、中国はベトナムとの国境線として確定したためベトナム周辺海域の2線を減らし、「9段線」を自国の境界とし管轄権を主張している。(地図の赤線Aの2線を除いたもの)

中華民国(台湾)では11段線の主張を継続している。

中国は最近、この領域での活動を活発化している。

中国は、西沙諸島・中沙諸島・南沙諸島を海南省三沙市の帰属とした。

中国軍は2016年2月、西沙諸島にあるウッディー(永興)島に今地対空ミサイル8基を配備した。

フィリピン沖の南沙諸島では、岩礁を埋め立てた多くの人工島を軍事拠点化している。

ーーー

フィリピンは2013122日、西フィリピン海における領有権紛争の平和的かつ持続的な解決を実現するために、国連海洋法条約 (UNCLOS)に基づいて、オランダのハーグにある常設仲裁裁判所に中国を提訴した。中国外交部は同年219日、提訴は歴史的かつ法的に誤った措置であり、中国に対して受け入れ難い告発を含んでいるとして、フィリピンの仲裁手続きへの参加を拒否した。

フィリピンの提訴項目は、条約の限度を超えた中国の領有権主張、南沙諸島の海洋地勢の法的地位やその地理的位置、中国の南沙諸島における諸活動などの可否について判断を仰いだもので、提訴した15項目は、4つに類別でき る。

① 中国の「9段線」で囲った海域に対する「歴史的権利」が国連海洋法条約に違反し、無効である。
②南シナ海の海洋地勢の法的地位:島か岩かなど
③中国の南シナ海における海洋環境を破壊する建設活動と漁業活動によって、フィリピンの主権的権
利と航行権が妨害されている
中国の南シナ海における仲裁裁判開始後の行動は、仲裁裁判中の紛争の悪化や拡大の自制を求める国連海洋法条約違反である 。

ハーグに設置された南シナ海仲裁裁判所は2016712日、15項目に及ぶフィリピンの提訴項目全てに対して裁定を下した。
1つの提訴項目を除いて他の全ての提訴項目でフィリピンの主張を認めた。

提訴項目No.15は、「中国は、UNCLOSの下でのフィリピンの諸権利と自由を尊重し、南シナ海の海洋環境の保護、保全を含むUNCLOSにおける義務を遵守し、フィリピンの諸権利と自由に妥当な考慮を払いつつ、自らの諸権利と自由を行使すべきである」というもので、当然のことなので仲裁裁判所は何も言及しなかった。

南シナ海仲裁裁判所は、海洋地勢に対する主権問題や海洋境界画定に関しては管轄権を有しない。従って、この裁定は、フィリピンと中国の南シナ海における領有権紛争の直接的な解決をもたらすものではない。

仲裁の詳細は https://www.spf.org/oceans/analysis_ja02/b160901.html

中国はこれを無視しており、米国もこれまでは領有権問題には関与しないとの立場をとっていた。


欧州中央銀行(ECB)は7月10日、ブルガリアとクロアチアが、ユーロ導入に向け、その条件となる仕組み「為替相場メカニズム」(European Exchange Rate Mechanism:ERM)に参加することが決まったと発表した。

基本レートを1ユーロ=7.5345クロアチア・クーナ、1.95583ブルガリア・レバにそれぞれ設定 し、プラスマイナス15%の範囲での変動が許される。

マーストリヒト条約で決められたユーロの参加条件は、下記の収斂(Convergence )基準を満たすことで、これを満たしたうえで、③の為替レートが、市場の圧力なしでユーロとのペッグ制が少なくとも2年間維持された場合、正式加盟が可能となる。

① 物価:

加入検討の前年の消費者物価上昇率が、EU加盟国の中で最も消費者物価上昇率の低い3カ国の平均値の±1.5%以内であること。

② 政府財政:

実質、計画の双方において、年間財政赤字額の対GDP比が3%以下であること。但し赤字率が3%に近い水準に達している場合、例外的または一時的な3%以上の赤字の場合、赤字率が3%に近づいている場合は除く。

また政府債務残高が対GDP比で60%を超えないこと。但し負債の割合が十分に減った場合、十分なペースで60%に近づいている場合は除く。

③ 為替レート:

加入検討時点以前の2年間、欧州為替相場メカニズムで定められた変動幅を超えてはならない。
他のERM加盟国の通貨に対して自発的な切り下げを行っていないこと。

④ 利子率:

加入検討の前年の政府長期債における利回りが、EU加盟国の中で最もインフレ率の低い3カ国の政府長期債における利回りの平均から2%以上乖離しないこと。

2015/1/5 リトアニアがユーロ導入 

欧州為替相場メカニズムは、欧州における為替相場の変動を抑制し、通貨の安定性を確保することを目的とした制度で、欧州委員会は1979年3月にこれを取り入れて、1999年1月1日の単一通貨ユーロの導入に備えた。

加盟各国間の為替相場の変動幅を±2.25%以内に抑えることを原則としたが、1993年には欧州通貨危機の再燃により±15%にまで拡大した。

英国は1990年にERMへ加入したものの、その2年後にはジョージ・ソロスによる大掛かりな英ポンド売りをきっかけにERMから脱退した。

ユーロ導入で1999年にERM II に移行した。ERM IIはユーロを導入していないEU加盟国の通貨とユーロ間の為替相場を安定させ、ユーロ導入を促進することを目的としている。
ユーロ参加を目指すERM II加盟国はユーロに対する自国通貨の変動幅を2年間±15%に抑えることを求められる。

当初、ギリシャとデンマークが対象となったが、その後、2001年にギリシャがユーロを導入した。
デンマークは国民投票でクローネへの愛着でユーロ導入が否決された。 ERM II で、1ユーロ=7.46038をセントラル・レートとして、変動制限幅を±2.25%をとした。 ユーロとほぼ連動しており、クローネを使用し続けながら、ユーロ導入とほぼ同じ効果を持つ。

スウェーデンは国民投票でユーロ導入を否決したが、ERM参加については渋っている。

その後、スロベニア、マルタ、キプロス、スロバキア、エストニア、ラトビア、リトアニアがERM Ⅱを経由してユーロを導入した。

今回、ブルガリアとクロアチアがERM II に参加した。デンマークを加え、3カ国となる。

現時点では、ポーランド、チェコ、ハンガリー、ルーマニアの4カ国が収斂基準を満たしておらず、スウェーデンを加えた5カ国がERM Ⅱ に入っていない。

(EU参加 27か国のうち、ユーロ導入は19か国、ERM II 参加が3カ国、未定が5カ国となる。)

なお、EU非加盟のサンマリノとバチカンはイタリアと、モナコはフランスとそれぞれ通貨協定を締結した上でユーロを使用している。各協定は欧州委員会の承認を受けている。

ーーー

欧州自由貿易連合(European Free Trade Association:EFTA)は、1960年に英国が中心となって設立された自由貿易連合であり、欧州経済共同体(EEC)に対抗するため、その枠外にあった欧州諸国が加盟してきた。

英国を初めとして順次、EUに参加し、現在は4か国のみとなっている。

ーーー

欧州経済領域(European Economic Area:EEA)は、EFTA 加盟国が 欧州連合(EU)に加盟することなく、EUの単一市場に参加することができるように、1994年1月1日にEFTAとEUとの間で発効した協定に基づいて設置された枠組み。

但し、EFTA加盟のスイスは1992年の国民投票で僅差で否決され、EEAに参加していない。

EEAではEUの4つの自由の原則(EUにおける商品、人、サービス、資本の移動の自由)を共有している。

参加国はEU加盟国と自由な交易を行うことができるが、EU法の適用を受けなければならない。
EEAはブリュッセルでの政策決定に関与することはほとんどできない。
EEA参加国はEUに関する一切の財政負担を免除されているが、域内市場に関しては支出を義務づけられている。

なお、英国は、これに残留すればEU法の適用を受けるためEU離脱の意味がなくなるほか、人の移動の自由を認める考えはなく、EU離脱後にこれに加わることはない。

ーーー

シェンゲン協定とは、加盟しているヨーロッパの国家間において、出入国検査(国境検査)なしで国境を越えることを許可する協定。1985年6月に調印され、2019年4月現在、EU加盟22カ国とEFTA加盟4か国の合計26ヶ国が加盟している。

英国は「国境管理は国家主権の中核」として拒否、英国(北アイルランド)と国境を接するアイルランドも不参加。

キプロスは北キプロスとの国境問題で留保。

ブルガリア、クロアチア、ルーマニアは協定未締結だが、ルーマニアが近く参加すると見られている。

ーーー

北大西洋条約機構(NATO)は2020年3月27日、東欧の北マケドニア(旧マケドニア)が同日加盟したと発表した。
1949年に12カ国で発足した米国や西欧などの軍事同盟は冷戦終結後、東欧に大きく拡大し、30カ国体制となった。

2019/2/5 「北マケドニア」、NATO加盟へ

ーーー

 
メンバー国
青字は設立時メンバー、赤字は最近の動き
非メンバー国
EU
 27か国
ユーロ
導入
19か国
欧州為替
相場メカニズ

EFTA

EEA シェンゲン協定
(26か国)
NATO
(30か国)
参加 離脱
米国 1949
カナダ 1949
1 フランス 1952 1999 1994
(EU として)
1985 1949
2 (西)ドイツ 1952 1999 1985  1955 
3 オランダ 1952 1999 1985 1949
4 ベルギー 1952 1999 1985 1949
5 ルクセンブルグ 1952 1999 1985 1949
6 イタリア 1952 1999 1990 1949
英国 1973
2020離脱
適用除外 1960 1973 EU離脱 適用除外 1949
7 アイルランド 1973 1999 1994
(EU として)
適用除外
8 デンマーク 1973 適用除外 1960 1973 1996 1949
9 ギリシャ 1981 2001 1992 1952
10 スペイン 1986 1999 1992 1982
11 ポルトガル 1986 1999 1960 1986 1992 1949
12 オーストリア 1995 1999 1960 1995 1995
13 フィンランド 1995 1999 1986 1995 1996
14 スウェーデン 1995 国民投票 1960 1995 1996
15 スロベニア 2004 2007 2004 2004
16 マルタ 2004 2008 2004
17 キプロス 2004 2008 留保
18 スロバキア 2004 2009 2004 2004
19 エストニア 2004 2011 2004 2004
20 ラトビア 2004 2014 2004 2004
21 リトアニア 2004 2015 2004 2004
22 ポーランド 2004 2004 1999
23 チェコ 2004 2004 1999
24 ハンガリー 2004 2004 1999
25 ブルガリア 2007 2020 2004
26 ルーマニア 2007 2004
27 クロアチア 2013 2020 2009
アルバニア 2009
モンテネグロ 2017
北マケドニア 2020
アイスランド 1970 1994 1996 1949
リヒテンシュタイン 1991 1994 2008
ノルウェー 国民投票 1960 1994 1996 1949
スイス 国民投票 1960 2004
トルコ 1952
モナコ フランスと関税同盟
サンマリノ イタリア
バチカン イタリア


  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358  

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