2007年11月アーカイブ

10月度の新設住宅着工戸数は 76,920戸で、前月比 22.1%増だが、前年同月比では 35.0%減で、4か月連続の減少となった。

改正建築基準法の影響がいまだに響いている。

参考 2007/11/1 住宅着工件数 9月も大幅減 

木村剛氏はブログで、「コンプライアンス」の名の下に、現状に適合していない法制度を無理矢理導入してしまうことによって、日本経済が不必要に萎縮してしまうことを、「コンプライアンス不況」と名付けて警告している。

「自らの責任を業者サイドに押し付けてしまいたい」という霞ヶ関の思惑に乗っかって、経済の現状を熟知しないまま、遵守することが難しいルールを押し付けることによって生じるとする。

   2007/11/19 「建築基準法改悪:コンプライアンス不況が日本を滅ぼす」
      http://kimuratakeshi.cocolog-nifty.com/blog/2007/11/post_1b6c_1.html

ーーー

なお、10月の米国の住宅着工件数(季節調整済み)は年率換算で 1,229千戸となった。
このうち、全体の7割を占める一戸建て住宅は16年ぶりの低水準となっている。

8月以降、金融機関が住宅ローンの貸し出しを手控え、住宅価格、販売件数とも落ち込みが加速している。市場では底入れは来年後半から2009年初めになるとの見方が有力になっている。

経済協力開発機構(OECD)は11月21日にまとめた定期報告で、サブプライム問題について、金融機関等が抱える損失額が最大3千億ドルに膨らむとの見通しを公表した。

米連邦準備理事会(FRB)は11月20日、2010年までの米経済見通しを発表したが、サブプライム問題を発端とする金融不安の打撃が2008年に本格化し、住宅市場の低迷、個人消費の鈍化など景気の減速感が強まるとして、2008年の実質経済成長率は、2007年の2.4~2.5%に対し、1.8~2.5%に落ち込むと予想している。
(2009年は2.3~2.7%に回復)

金融庁発表によると、日本の金融機関が所有するサブプライムローンを組み込んだ証券化資産の残高は9月末時点で1兆3300億円とのこと。既報の通り、サブプライムローンの残高は1兆3千億ドルとされている。

ーーーー

* バックナンバー、総合目次は 
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
  
項目別の索引も作成しました。

フランスの食品大手のDanone と中国のWahaha の間のブランド流用にからむ争いは依然として続いている。

   2007/6/15 仏食品メーカーのダノン、中国で「ブランド流用」で合弁企業と対立 
   
2007/7/12 ダノンとワハハの争い、更に深刻化 
   
2007/9/14 ニュースのその後 ダノンとワハハの争い 

両社の争いは、現在、6箇所で審理が行なわれている。

ストックホルムでの調停(Danone 申請)
杭州での調停(
Wahaha 申請)
ロスアンジェルス最高裁(
Danoneによる宗会長の妻と娘に対する訴訟)
英領バージン諸島での訴訟(
DanoneによるWahaha持株会社に対する訴訟)
米領サモアでの訴訟(同上)

瀋陽裁判所での派生訴訟

このうち、3箇所でWahaha側に不利な状況となっている。
先ず、ロスの裁判で、
Wahaha側の弁護士が、証人が虚偽の証言をしたとして弁護を辞退した。弁護士交代で更に時間がかかることとなる。
英領バージン諸島と米領サモアでの訴訟では商標を無断で使用している
Wahaha の会社(非合弁会社)の海外持株親会社の資産を凍結し、管財人の管理下に置くという判決が出た。

Wahaha は敗訴の場合の準備もしているようで、新しく Qili という商標の使用も始めている。

ーーー

この問題でフランスと中国の政府も動き始めた。

1126日、北京を訪問中のSarkozy大統領は胡錦濤国家主席との会談で、Wahaha Schneider (後述)問題を取りあげた。
大統領はこれらの問題が両国の支援の下で友好的に解決されることを希望すると述べ、胡錦濤主席も異論を唱えなかったという。
(両国は北京の人民大会堂で、仏製の第3世代原子炉2基と、欧州エアバス製のA320型とA330型の計160機の調達などに合意する文書に調印した。エアバスと中国側は今年夏、A320の最終組立を天津で行うことで正式に合意済み。)

Schneider 問題は以下の通り。

中国の大手電気機器メーカー、正泰集団 (Chint Group) が、フランスの大手電気機器メーカーSchneider Electric SA の天津の子会社に対して、「高分断小型ブレーカーの特許を侵害している」として訴訟を起こした。

温州市中級人民法院(一審裁判)は9月末に、被告が特許を侵害しているとし、4,470万ドルの賠償金支払いと権利侵害行為の即時停止を命じた。

Schneider 側は当該技術を使用する権利を完全に有しているとの見方を示し、正泰の中国での特許の有効性に異論を唱えている。同社は現在控訴中。

ーーーー

* バックナンバー、総合目次は 
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
  
項目別の索引も作成しました。

日本とASEAN包括的経済連携(AJCEP)協定は8月25日の経済相会合で大筋合意していたが、11月6日の第11回交渉で確定、11月21日の日ASEAN首脳会議で交渉妥結に関する以下の共同声明が出された。

各国首脳は、日ASEAN包括的経済連携(AJCEP)協定交渉が、成功裡に妥結したことを歓迎し、ASEAN構成国と日本国が、来るべき協定を物品・サービス貿易、投資や経済協力といった分野を含む包括的なものとすることに成功したことに満足の意をもって留意した。
各国首脳は、本協定が、貿易と投資の更なる活性化のために強い刺激を与え、一層大きな機会をもたらすより大きくかつ効率的な市場をこの地域に創設することによって、ASEANと日本国の間の経済的な結びつきを強化することを確信する。

AJCEP:ASEAN-Japan Comprehensive Economic Partnership Agreement


包括的経済連携協定における物品の貿易自由化は以下の通りとなる。

日本 貿易額で90%分 即時関税撤廃
 同 3%分 段階的関税撤廃(10年以内)
残り 自由化除外(コメ、砂糖など)又は関税率を一定水準以下に
6カ国(ブルネイ、インドネシア、
マレーシア、フィリピン、
シンガポール、タイ)
一部 即時関税撤廃
品目数(6桁)で90%分 段階的関税撤廃(10年以内)
残り 自由化除外又は関税率を一定水準以下に
ベトナム 品目数(6桁)で90%分 段階的関税撤廃(15年以内)
残り 自由化除外又は関税率を一定水準以下に
カンボジア、ラオス、ミャンマー 品目数(6桁)で85%分 段階的関税撤廃(18年以内)
残り 自由化除外又は関税率を一定水準以下に

日本側
・鉱工業品については、殆どの物品について、10年以内に関税撤廃を行う。
・農林水産品については、守るべきものは守りながら、関税削減等を通じ可能な努力を行う。
  (1) 関税撤廃に応じた品目
      これまでのアセアン各国との二国間EPAで関税撤廃に応じた品目
      ・即時関税撤廃する品目の例:ドリアン、えび、えび調製品等
      ・10年以内に段階的関税撤廃する品目の例:塩蔵なす、カレー調製品、くらげ等
  (2) 関税撤廃に応じなかった品目
      ・関税削減する品目の例:鶏肉調製品、合板(熱帯産木材のうち関税が6%及び8.5%のもの)等
      ・除外等、関税撤廃・削減の対象外とした品目の例
         国家貿易品目(米麦、米麦調製品、乳製品)、牛肉、豚肉、鶏肉、砂糖・砂糖調製品、でん粉等

日本側のメリットとしては、原産地規則の「累積」の適用によって、日本及びASEAN域内全体での生産ネットワークを強化することである。

日本企業が薄型テレビのパネルなどの主要部品など高付加価値品を輸出して現地(B国)で組み立て、他のASEAN諸国(C国)に輸出する場合、これまではB国での付加価値が40%未満の場合は、C国で高率の関税がかかっていた。
(ASEAN産として無税輸入が認められるのには、ASEAN内で40%以上の付加価値の生産が必要)

原産地規則の「累積」とは、締約国Aの原産品が締約国Bで生産される産品の材料として使用される場合に、その原産品が締約国Bの原産材料としてみなされることをいう。

今回の協定でB国での付加価値が40%未満でも製品はASEAN産とみなされ、C国に無税で輸出できる。
これにより日本企業はASEAN域内で一体的な生産ができるようになる。

日本とASEANの貿易関係は以下の通り。

ーーーー

* バックナンバー、総合目次は 
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
  
項目別の索引も作成しました。

米国際貿易委員会(ITC)は11月20日、中国製光沢紙をめぐる相殺関税と反ダンピングの調査で、ともに「シロ」の最終決定を下した。
商務省は本件でクロの最終決定を下していたが、ITCと商務省の決定が揃わないと適用されないため、相殺関税とダンピング税は課せられないこととなった。
中国のほか、韓国・インドネシア産の光沢紙についても同様となった。

米国ではITC が損害について、商務省が調査開始手続・ダンピング・補助金について担当している。

対象となるのは表面処理加工紙(coated free sheet paper)で、カレンダーや雑誌に使われる光沢紙等の高級紙製品。

相殺関税は、補助金の交付を受けた産品の輸出が当該産品の輸入国の国内産業に被害を与えている場合、輸入国政府が当該補助金を相殺する目的で課す特別関税。
①補助金を受けた貨物の輸入の事実、②国内産業の損害の事実、③両者の因果関係、④国内産業を保護するために必要であることの4点が条件となる。

米国は1984年以来、中国など非市場経済国に相殺関税を適用しない方針を採用してきた。
(当時はソ連式経済では補助金の影響は少ないというのが理由で、控訴裁判所でもこの方針が認められた)

非市場経済国:
WTO協定では「貿易の完全な又は実質的に完全な独占を設定している国ですべての国内価格が国家により定められているものからの輸入の場合には、規定の適用上比較可能の価格の決定が困難であり、また、このような場合には、輸入締約国にとって、このような国における国内価格との厳密な比較が必ずしも適当でないことを考慮する必要があることを認める。」と規定している。但し、「非市場経済国」の定義はなされておらず、どのような場合に輸出国を「非市場経済国」として認めるかについては各国の裁量にゆだねられている。

「市場経済国」との認定を受けていない国の場合、ダンピング調査の際に、輸出価格は、国内価格との比較ではなく、経済発展レベルが近い代替国の価格と比較して判定される。

現在、中国を「完全な市場経済国」と認めた国はニュージーランド、オーストラリア、韓国など51カ国に達しているが、米国、EU、日本などはまだ認めていない。

2006年に中国からの輸入量が急増し、10月に 光沢紙メーカーの Dayton, Ohio NewPage Corporation が、「中国のメーカーが減税、補助金、低金利融資などの補助金を受けている」として、この方針を変更するよう正式に要求、これを受け商務部は適用を仮決定した。

当該製品の過去3年間の輸入実績は以下の通り。
  2004 2005 2006
輸入量(t)  29,282  99,182  264,026
輸入額(千ドル)  21,500  80,876  224,016

相殺関税調査では通常、ダンピング調査と合わせて行なわれる。

商務省は本年3月30日、中国から輸入される表面処理加工紙に対して10.9~20.35%の相殺関税の暫定課税を決定、当該製品を輸入しようとする者は直ちに、下記の額を米国税関に預託することを求められることとなった。

Shandong Chenming Paper Holdings, Ltd.  10.90%
Gold East Paper Co., Ltd  20.35%
その他すべての企業  18.16%

10月18日、商務省は本件の最終決定を行なった。ただし、ITCが同様の決定をした場合に適用される。

最終相殺関税
Gold East Paper (Jiangsu) Co., Ltd.   7.40%
Shandong Chenming Paper Holdings, Ltd.  44.25%
All Others   7.40%
* Shandong Chengming は調査に協力しなかったため、高率となった。
 
最終ダンピング税率
Gold East Paper (Jiangsu) Co. Ltd.
Gold Hua Sheng Paper (Suzhou Industry Park) Co. Ltd.
China Union (Macao Commercial Offshore) Company Ltd.
 21.12%
Shandong Chenming Paper Holdings Ltd.  99.65%
Yanzhou Tianzhang Paper Industry Co. Ltd.  21.12%
China-Wide Rate  99.65%
* Shandong Chengming は調査に協力しなかったため、高率となった。

 

これに対してUS International Trade Commission ITC 11月20日、商務部が「補助金を受け、米国で公正な価値より安く売られている」とした中国・インドネシア・韓国製の表面処理加工紙の輸入により、米国の業者に著しい被害が出ておらず、その恐れもないとの決定を下した。
5対1の決定であった。
詳しい決定理由は後日開示される。

ーーー

この光沢紙の件をきっかけに、米商務省は相次いで中国製品に対して相殺関税調査を開始した。

本年10月、商務省は中国製ラバーマグネットに対する反ダンピング・相殺関税調査の同時発動を正式に決定した。この1年足らずで6回目となる。
他には、オフロードタイヤ、軽量感熱紙(韓国、ドイツも)、溶接鋼管、ラミネートされた織物製袋がある。

中国商務部の報道官は、米国の措置に断固たる反対を表明し、次のように述べた。
米側の手法はWTOの関連規則の濫用であり、自国の判例と長年の慣例に違反しているうえ、両国間の相互利益的で Win-Win の、調和ある健全な経済・貿易関係の発展にとって無益であり、正常な経済・貿易関係を複雑化させるものであり、賢明でない誤ったものだ。
米国向けの中国製輸出品に対し、米側がこのように頻繁に反ダンピング・相殺関税調査を同時発動することは、米国の国内産業界に誤ったシグナルを伝えており、これによって、中・米両国政府がともに、不必要で多大な圧力に直面している。
これに対し中国側は、米側がこの誤った手法を早急に是正し、マイナスの影響の発生を回避することを望むものである。
同時に中国側は、WTO加盟国としてのあらゆる合法的権利を留保する。」
(中国は米国による相殺関税調査に対してWTOに提訴している)

他方、米上下両院の超党派諮問機関、米中経済・安全保障再検討委員会は11月15日に発表した年次報告書で、中国による為替操作を世界貿易機関(WTO)が禁止する輸出補助金と認定し、対抗措置としての相殺関税などの発動を容易にする法律を制定するよう勧告した。

米政府は2007年2月2日、中国政府が世界貿易機構(WTO)が禁止している補助金を使っているとして同国をWTOに提訴している。
  2007/2/10 
米政府、中国をWTO提訴 

ーーーー

* バックナンバー、総合目次は 
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
  
項目別の索引も作成しました。

"Bayer Climate Program"

| コメント(0)

Bayer は1119日、温室効果ガス排出を更に削減するとともに、気候保護の促進、気候変動への対応への解決策を開発するため、グループを挙げての"Bayer Climate Program"を実施すると発表した。

過去の実績に満足するのではなく、新しいスタンダードをつくるとし、以下の点をあげている。
 ・温室効果ガス削減目標
 ・建物建設、農業、バイオ燃料での画期的解決法
 ・
3年間で気候関連の研究開発に10億ユーロ
 ・"Bayer Climate Award” と奨学金の創設

  発表:http://www.climate.bayer.com/en/News-Detail.aspx?id=7288

  説明会:http://www.climate.bayer.com/en/News-Detail.aspx?id=7295

 

発表内容は以下の通り。

1) 温室効果ガス削減目標の設定
  Bayerでは2005年~2020年の排出削減目標を設定した。
  Bayer MaterialScience:製品トン当たりの温室効果ガスを
25%削減
  Bayer CropScience:全世界の排出量を
15%削減
  Bayer HealthCare:
5%削減

また、エネルギー効率の向上と工場からのCO2排出削減をコントロールする手段として Bayer Climate Check 制度を導入する。
  工場の設計の際に、従来の利益率算定に加え、エコロジーの基準を加える。
  第一段階として、温室効果ガス排出量の
85%に当たる100工場をチェックする。
    チェックで問題になった箇所については対策を取る。

  Bayer Climate Checkは2008年に第三者試験認証機関のTUVの認定を受ける予定。
    今後、他社もこれを採用できるようにする。 
   

2) 気候保護のための解決策の開発
EcoCommercial Building
  重要なファクターの一つが省エネ、温室効果ガス削減のための高品質材料で、建設分野ではビルの断熱にポリウレタンが大きな役割を果たす。

Bayerでは 次のような構成の Zero emission building の 'EcoCommercial Building' の開発を進める。

  ポリウレタンによる断熱
  太陽光による全エネルギー(電気、暖冷房、温水)供給
  断熱ガラス 
  通風システム
  ポリカーボネート板(透明な天井板、側面パネル:断熱効果、生産時にガラスより省エネ)
  溶剤フリーの塗料

2008年春にインドのNew Delhi 近郊でオフィスビルの建設を開始する。インドのビルの平均より70%の省電力となる。
今後、地球のいろいろの環境で建設する。

   
農産物増産

バイオ技術により、旱魃や熱波などの気候変動への耐性を高めた植物の開発
   
バイオ燃料

バイオディーゼル用にCanola 菜種の供給
 (カナダで開発した
InVigor 種はバイオディーゼルを通常種より20%増量)

Jatropha curcas からのバイオディーゼルの開発
 (他の農産物が栽培できない荒地で栽培)

サトウキビからのバイオエタノールの検討

   
3) 従業員による省エネ
 

全従業員に省エネカー使用を奨励、車による温室効果ガス排出を20%削減する。
通信技術の利用で飛行機利用を削減
 
     
4) "Bayer Climate Award” と奨学金の創設

Bayer Science and Education Foundation 毎年、5ユーロのBayer Climate Award を授与
同じく、学生に海外のセミナー出席のための奨学金を授与

 
     

ーーーー

* バックナンバー、総合目次は 
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
  
項目別の索引も作成しました。

経団連は11月20日、「独占禁止法の抜本改正に向けた提言 -審査・不服申立ての国際的イコールフッティングの実現を-」を発表した。
  
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2007/091.html

 

改正独禁法は2006年1月4日に施行されたが、附則で、「政府は、この法律の施行後2年以内に、新法の施行の状況、社会経済情勢の変化等を勘案し、課徴金に係る制度の在り方、違反行為を排除するために必要な措置を命ずるための手続の在り方、審判手続の在り方等について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする」とされている。

   改正独禁法については 2006/2/16 独禁法改正 

これに基づき、内閣官房長官の下で「独占禁止法基本問題懇談会」が開催され、2006年7月には「独占禁止法における違反抑止制度の在り方等に関する論点整理」が公表され、2007年6月に報告書が取りまとめられた。

   2006/7/25 独占禁止法に関する論点整理 

   2006/8/2  「独占禁止法基本問題」に関する経団連のコメント

 

公正取引委員会は10月16日に「独占禁止法の改正等の基本的考え方」を発表した。
   
http://www.jftc.go.jp/pressrelease/07.october/07101601.pdf 

上記の報告書等を踏まえ,公取委の責任で作成・公表したもので、今後、政府部内を含めた各方面との議論を踏まえて、具体的な法案等の作成作業を行うこととなる。

公取委の考え方の主なポイントは以下の通り。

    現行法 改正案
課徴金 対象となる違法行為 ほぼ、談合・カルテルに限定 (追加)
・他の事業者の事業活動排除行為(コスト度外視の価格設定等)
・不当表示や優越的地位の乱用
時効(除斥期間) 3年 5年(欧米なみ)
算定率 大規模製造業者で10% 変更なし
割り増し 再違反は5割増 「主犯格」を追加(加算率は未定)
自首による減免制度 先着3社まで減免 ・減免企業数を拡大
・グループ各社を1社とカウント
審判制度 処分の審査と不服申し立ての
審判をともに担当
変更なし
他社の株式取得の届け出 事後届け出 事前届け出

上記の2006年8月の経団連コメントの「望ましい法改正の姿」の一つは、公取委の審判の廃止で、公取委が審査・審判の両方を兼ねることへの不信感を払拭するため、公取委による審判を廃止し、公取委の行政処分への不服申立ては、裁判手続に委ねるというものであった。

今回の公取委案では審判制度は変更なしとなっている。

公取委の竹島一彦委員長は以下の通り述べている。

「処分の審査と不服申し立ての審判を同じ組織が兼ねることへの疑念は印象論としては理解できる。
ただ、独禁法違反事件の審査には継続性や高度な専門性が必要であり、公取委が第一審相当の判断を行う方が合理的かつ効率的だ」
「公取委の判断に納得がいかない企業は高裁に訴えを起こせる。今の制度で企業が被害を受けているとは思えない」

ーーー

経団連の提言は、以下の通り、問題意識を明らかにしている。

グローバル化に伴い独禁法の重要性は高まり、国際的整合性が求められる。

しかし、わが国の独禁法に係る行政処分にいたる手続及びその後の不服申立手続は、欧米諸国の制度と比べて、適正手続、制度運用の予見可能性が十分に確保されているとは言い難い状況にある。

基本問題懇談会は、2年間という長期に渡る審議にもかかわらず、21世紀の競争法のあるべき姿を根本に立ち返って見直すとの基本理念を見過ごし、また独禁法の執行にあたっての適正手続の確保に関する国際的な比較や各界からのコメントへの対応も十分になされないまま、本年6月に報告書を公表した。
これをもとに独占禁止法の見直しがなされるならば、さらに問題が深刻化するおそれがあるといわざるを得ない。

1.予見可能性を確保した、国際的に整合性のある適正手続
  
課徴金を課す際には刑罰と同程度の適正手続が確保されなければならない。

2.迅速で明確な課題の解決
  収集した証拠を行政機関側に有利か不利かを問わずアクセスができる状態に置くこと。

3.摘発・行政処分へのリソースの集中
  独占禁止法違反事件の多くはカルテル・談合事件など、違反事実の有無が争点となるものであり、
  この判断に習熟した裁判官に委ねるのが適切である。

経団連の「望ましい法改正の姿」は以下の通り。

1.不服申立手続の公正・公平性の確保
  
(1) 公正取引委員会の審判の廃止
     
行政処分に対する不服申立ては地方裁判所に対する取消訴訟の提起により行う仕組みに改めるべき。

  (2) 専門的な審理機関の整備

  (3) 専門的人材の育成・確保

  (4) 公正取引委員会の保有する証拠の開示
      裁判所からの令状なしに証拠の収集が行われ、これに対する妨害行為には罰則が強化されている。
      審査対象の事業者及び代理人がすべての関係証拠を閲覧できることを法律上明記すべき。

  (5) 現行法上の排除措置命令が出されるまでの適正手続の確保
      意見申述・証拠提出の機会

2.国際水準に適う新たな審査制度の構築
  
(1) 弁護士立会権等の確保

  (2) 自己負罪拒否特権の創設
      
「何人も、自己に不利益な供述を強要されない」という自己負罪拒否特権及び黙秘権

  (3) 審査の透明性の確保  

3.その他の公正取引委員会の考え方に関する意見

   (1) 萎縮効果を生じさせない課徴金の対象範囲の見直し
      事業者の正当な競争インセンティブひいてはわが国経済の持続的な成長を阻害することのないよう

   (2) 公正取引委員会による警告・公表要件の明確化

   (3) 証拠文書等の適正な取り扱い

   (4) 実務に配慮した株式取得の事前届出化等

ーーーー

* バックナンバー、総合目次は 
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
  
項目別の索引も作成しました。

韓国ハンファグループのHanwha Living & Creative (L&C) Corporation 11月19日SABIC Innovative Plastics (旧 GE Plastics) PPG Industries の50/50JVのAZDEL を買収したと発表した。

AZDELは1972年に設立された高機能複合素材のメーカーで、自動車のバンパーの材料となるGMT、天井部分の内張りなどに使われるLWRT などの分野において全米1位のメーカー。

GMTGlass Mat Thermoplastic)はグラスファイバーとPPなどの5のスタンパブルシート。
LWRT (Lightweight Reinforced Thermoplastic )PPとグラスファイバーの低圧複合材で、接着フィルム、バリアフィルム、その他のフィルムと結合したもの。
1972年にPPGが事業を開始し、1986年にGEが参加し、50/50JVのAZDELを設立した。

Hanwha Living and Creative は1999年設立で、床材、窓枠、ドア材、塩ビコンパウンド、フィルム・シート、SMC、コンクリートパネル(Conpanel)、HanexDecor Sheet などを扱っている。

ハンファ・グループは会長が今年1月、海外進出に関する戦略会議で、現在10%にとどまっている海外事業の売り上げを2011年までに40%に引き上げるという目標を打ち出して以来、初めて目に見える結果を出したとしており、ハンファL&Cは世界最大のGMTメーカーとなり、自動車の部品や素材を全世界の自動車メーカーに供給できるグローバルネットワークの基盤を形成することになるとしている。


今回の買収に伴い、AZDEL SABIC Innovative Plastics PPG Industries との間で長期原料供給契約を締結した。
 
SABIC Innovative Plastics は熱可塑性レジンを供給。
 PPG
はグラスファイバーを供給する。


ーーー


日本では1982年に宇部日東化成がPPGから
熱可塑性スタンバブルシート「アズデル」を技術導入し、生産を開始した。

別途、出光石油化学と日本板硝子が1987年に折半出資で出光エヌエスジーを設立し、同じマット式スタンパブルシートを展開した。

その後、両グループは過剰能力下で苦戦し、1999年に3社で合弁新会社の日本GMTを設立し、宇部日東化成及び出光エヌエスジ-のスタンパブルシート事業を新会社に引き継ぎ、両社の生産・販売・研究開発の融合による事業競争力の強化と需給ギャップの解消を図ることとした。


マット方式とは別に、
JFEケミカル(旧川崎製鉄)のグループ会社ケープラシートが、英国のウィギンス・ティーブ社から導入した抄紙技術によるPP/グラスファイバー複合材料のスタンパブルシートを生産している。(当初は住友化学、伊藤忠、タキロンが参加)
この方式では新日鉄/三菱油化も進出していたが、早くに撤退している。


このほか、チッソがガラス長繊維強化樹脂を生産している。同社独自の技術により開発した射出成形用のガラス長繊維強化樹脂で、従来のスタンパブルシートによる成型品と同等の性能が射出成形によって可能としている。

ーーー

SABICによるGE Plastics 買収に伴い、GEの参加していた事業の整理が進められている。


GE Plastics はBayer MaterialsScience から50/50JVの自動車用
glazing (窓ガラス代替分野)のJV EXATEC の同社持分を買収し、100%子会社とした。

  2007/9/4 SABIC、GE Plastics の買収完了 


BASF
SABIC Innovative Plastics とのPBT 製造の 50/50JV BASF GE Schwarzheide GmbH & Co. KG. SABIC 持株を買収すると発表した。

  2007/11/17 BASF、エンプラ事業を拡大 

ーーーー

* バックナンバー、総合目次は 
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
  
項目別の索引も作成しました。

チッソは11月19日、与党プロジェクトチーム(PT)の水俣病未認定患者の新救済策を「解決への展望がどうしても持てない」などとして受け入れ拒否を正式に表明した。

チッソが約317億円を拠出して未認定患者1人あたりに一時金260万円などを支給した1995年の政治決着が最後と思って努力した、あれ以上の解決は考えられないとし、新たな負担には応じない考えを強調した。

与党PTの新救済策は水俣病未認定患者を対象とするもので、患者1人あたりに対し一時金150万円のほか、月額1万円の療養手当、医療費の一律支給が柱となっている。

1995年の政治決着に漏れた人の救済を基本に検討したが、客観的証明は難しく、その症状を現在持っている人を広く救済対象ととらえた。認定申請者約6000人と医療費が補償される新保健手帳所持者約1万3000人のうち、水俣病特有の感覚障害が認められ、認定申請と訴訟を取り下げた人が対象となる。
救済対象を広げたため、一時金260万円、療養手当月額2万円を支給した95年時より低額になった。
救済策に前向きな被害者2団体と交渉し大筋で同意を得たが、訴訟中の団体は救済策を拒否している。

チッソは受け入れ拒否の理由としては、
①一部の被害者団体がPT案を拒否し、同社や国が被告の訴訟を継続する意向を示している
②チッソの負担額が不透明なうえ、国や県の資金支援があるとしても、これ以上の借金を後世に残せない
③株主や社員、取引金融機関に説明できないーーなどを挙げた。
ただし、PTや環境省との今後の交渉での方針転換に含みを持たせている。

また、チッソを資産・債務管理会社と事業会社に分割する「分社化」の実現を求めていく考えを示した。
液晶材料などが好調な同社の事業をすべて子会社に移し、親会社チッソは累積債務の返済と補償に専念する。子会社は社会に評価される事業体となり、取引が増える、子会社が上場すれば親会社に巨額の資金が入り、水俣病患者に補償を支払う上でも問題がなくなるとした。熊本県水俣市からの事業撤退を否定した。

これに対して、鴨下環境相は20日、「チッソが変わることが必要ではないか。協力してもらうのが当然だ」と批判した。
分社化については「補償問題などの責任が明確でなくなる懸念があり、私は理解できない」と話した。

ーーー

行政が水俣病患者と認めた「行政認定」者(感覚障害と運動失調など複数症状の組み合わせにより認定、新潟水俣病と合わせ約3000人)に対しては公害健康被害補償法に基づき、補償(1973年チッソとの補償協定により1,600万円~1,800万円)が行なわれたが、未認定患者の救済が問題となっていた。

1995年に村山首相が政府として初めて「結果として長期間を要したことについて率直に反省しなければならない」と首相談話で遺憾の意を表明し、自民・社会・さきがけ3党連立政権が訴訟や認定申請の取り下げなどを条件に政治決着を行なった。

四肢末端優位の感覚障害がある場合は「医療手帳」を交付
  チッソから一時金260万円、国・県から医療費自己負担分全額、月額約2万円の療養手当などを支給

感覚障害以外で一定の神経症状がある場合は「保健手帳」を交付
  医療費自己負担分などを上限付きで支給
  国の責任を認めた2004年10月の関西訴訟最高裁判決後に受け付けを再開、
   医療費自己負担分は全額支給に改めた。

ほとんどの患者が和解に応じ裁判を取り下げた。

しかし、一部はこの解決策を拒否し政府の行政責任追及にこだわった。

「チッソ水俣病関西訴訟」の論点は、
① 被害を防止しなかった行政の過失を認めるかどうか
② 患者を水俣病ではないとした行政の認定基準は正しかったのかどうか、であった。

2001年の高裁判決は、排水規制をしなかった国と県の過失を指摘、水俣病の認定基準も間違っているという判断を下した。
2004年10月、最高裁は原告の主張を認め、県と国の法的責任が確定した。

これにより、行政責任を不問にした「和解」の前提が強く揺さぶられる事態を迎えた。

【主な水俣病訴訟の判決】
  訴訟名 裁判所     結果
企業 行政 排水規制
71年9月 新潟1次 新潟地裁  ○  -  
73年3月 1次訴訟 熊本地裁  ○  -  
79年3月 2次訴訟 熊本地裁  ○  -  
85年8月  同上 福岡高裁  ○  -  
87年3月 3次1陣 熊本地裁  ○  ○  
92年2月 東京訴訟 東京地裁  ○  ×  
   3月 新潟2次 新潟地裁  ○  ×  
93年3月 3次2陣 熊本地裁  ○  ○  
  11月 京都訴訟 京都地裁  ○  ○  
94年7月 関西訴訟 大阪地裁  ○  ×  
01年4月  同上 大阪高裁  ○  ○  ○
04年10月  同上 最高裁  -  ○  ○
○は責任認める ×は認めず。-は争点外

最高裁判決が一部国の責任を認めたことで、公害健康被害者補償法上の認定を申請する患者が急増したが、熊本、鹿児島、新潟3県の認定委員会は、認定基準が変わらない以上、多くは不認定となる可能性は高く、不認定になった人たちを手当てする何らかの受け皿的措置がなければ認定を再開することが難しいとして、判定されないままになるという異常事態が生じた。

このため公明党が20064月に新救済案の提言をまとめ、それを基に与党PTを設置し、紆余曲折の結果、新救済策を決定した。

ーーー

チッソの経営問題については 2006/5/1 水俣病50年 

同社の損益状況は以下の通り。        単位:百万円

      売上高   営業損益   経常損益   当期損益
連結 単独 連結 単独 連結 単独 連結 単独
00/3  202,975  140,423   9,119   6,537   5,295   4,041  55,317  58,647
01/3  163,826  132,470   8,551   6,191   6,524   5,331   -1,183   -1,603
02/3  148,368  119,574   7,277   5,420   5,227   4,616   -2,984   -1,277
03/3  136,036  117,711   8,625   6,220   6,666   5,428   -1,883   -1,078
04/3  132,784  110,398  10,958   7,582   9,964   6,752    527    -292
05/3  150,694  114,720  12,063   7,645  12,421   7,086   4,215    761
06/3  199,635  155,813  16,122  10,219  16,973  10,167    111   2,951
07/3  216,979  160,022  18,814  11,501  19,063  11,003  12,273   3,991
                 
06/9中間   98,945   75,098   8,417   5,395   8,686   5,198   4,085   1,514
07/9中間  131,321   89,996  10,419   5,951  10,445   5,730   5,277   2,471
                 
08/3  260,000  183,000      21,000  12,000  10,000   4,500

特別損失(連結)のうち公害関係は以下の通り。(億円)

  00/3 01/3 02/3 03/3 04/3 05/3 06/3 07/3   06/9 07/9
水俣病補償損失  -49  -53  -48  -56  -47  -45  -43  -42    -21  -20
公害防止事業費負担  -15  -14  -13  -12  -12  -12  -15  - 9    - 5  - 4

  ほかに2006/3に減損損失 -121億円を計上している。

同社の20079末の資本金は78億円、未処理損失は1,224億円(資本勘定は-1,043億円)となっている。

ーーー

日経(2007/11/23)によると、与党PTはチッソが受け入れやすい環境作りを狙って、チッソの法人税軽減の特例措置を検討している。
欠損金繰越控除期限(現行は過去7年以内)を大幅に延長する案。

上記のとおり、チッソの累積損失は巨大だが、単独決算で2005年3月期に黒字に転換し、欠損金の繰越期限切れにより2007年3月期までに法人税など約36億円の税負担が生じている。

特例により税負担をなくし、公的債務の返済や新救済策での負担に資金を回せるようにする狙いがあるとみられている。

ーーーー

* バックナンバー、総合目次は 
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
  
項目別の索引も作成しました。

1)江蘇省、太湖流域の汚染排出権を有料に

今年の5月に太湖のアオコ発生により、100万人以上の無錫市の住民が10日間水道水が飲めなくなるという事態が発生した。
江蘇省と上海市の3千万人の住民が飲み水を太湖水域に頼っている。
温家宝首相は対策会議で、飲み水問題を国家プロジェクトとして優先的に対処すると述べた。

2007/6/16 太湖の水質汚染問題

江蘇省はこのたび、2008年から太湖流域における水質汚染物質の排出権を有料化する取り組みを試験的に行うことを決定した。
モデル事業の実施範囲は太湖流域の無錫市、常州市、蘇州市、鎮江市の丹陽県と句容県、南京市の高淳県などで、先ず 266社を重点監督コントロール対象に選んだ。

江蘇省環境保護局が決めた計画では、化学会社は化学的酸素要求量(COD)1kg 当たり 10.5人民元(1.4米ドル)の支払いが必要となる。
染色業では5.2元、製紙業では1.8元、醸造業では2.3元となっている。
2009年からは更に、アンモニア窒素や総燐(T-P)の排出権有料化モデル事業をスタートし、太湖流域における市レベルの水質汚染物質排出権取引市場を構築する。

環境保護局では有料化により、汚染業者が処理設備を高度化し、汚染物質を減らすことを期待しているが、同時に、1,000社以上の小規模化学工場が閉鎖に追い込まれるだろうとみている。

ーーー

中国政府は太湖のクリーンアップのために5年間で145億ドルを投じることを決めた。太湖の富栄養化をコントロールし、水質改善を図る。
これにより、8~10年で太湖の水汚染問題は基本的に解決されるとみている。

ーーー

2) 「グリーン貸付制」

中国国家環境保護総局は本年7月30日、「中国は国家の産業政策に合致せず環境を汚染した企業とプロジェクトに対して貸付規制を行い、グリーン貸付メカニズムで高エネルギー消耗と高度汚染の産業の拡大を食い止めることにする」と発表した。

国家環境保護総局は定期的に金融機関に企業の環境情報を提供して、これら情報を企業の信用情報データに収め、企業に貸付するときの重要な根拠とするとし、今後、ほかの部門と協力して、環境保護の促進策を提案するとした。

7月中旬、国家環境保護総局が中国人民銀行、中国銀監会(中国銀行業監督管理委員会)と合同で「環境保護政策法規を着実にして貸付リスクを防止する意見」を発表した。
産業政策に合わない環境違法の企業および案件に対し、貸付規制を行い、グリーン貸付メカニズムで高消費・高汚染産業の盲目的な拡張を抑える。
環境保護総局は先ず、人民銀行、銀監会に30社の環境違法企業のリストを通報した。

「中国青年報」によると、「グリーン貸付制」が、開始4カ月で早くも効果を上げはじめている。

国家環境保護総局の責任者によると、同局が作成したブラックリストに載った汚染の深刻な企業のうち、これまでに12社が、各銀行から貸付金の返還を求められたり、貸付けを停止または拒否されたりしている。

安徽省では、現地の銀行に1000万円の貸付けを申請していた酒造企業が、長年にわたって汚水処理施設を設置せず汚水を垂れ流して環境保護部門のブラックリストに載ったことがわかったため、貸付けを受けることができなくなった。
江蘇省では、現地農業銀行に新しく貸付けを申請したある著名な企業が、環境汚染度で「レッド」クラスに認定された貸付け制限対象であることが判明し、環境汚染状況を改善し環境保護部門の検査を受けリストから解除されてからもう一度申請するようにとの指示を受けた。

国家環境保護総局の責任者によると、グリーン貸付制のもっとも大きな作用は、企業が環境保護法規を違反した場合に大きな経済的な損失を払わなければならなくなることである。
現行の法律では、企業の環境汚染行為に対する罰金は10万元以下に制限されており、汚染によって得られる利益と比べればあまりに小額である。
グリーン貸付制は、環境保護法規違反の取り締まりのための新しい有効な手段となっている。

ーーー

国家環境保護総局は中国の新しい環境保護政策体系の構築に積極的に取り組んでいる。

環境保護総局は年初に、市場経済の要請に相応しい環境政策の確立を目指しているとの姿勢を示した。
価格、税収、財政、貸付、費用徴収、保険などの手段を通じて、市場主体の行為を調節したり、影響を与えることにより経済建設と環境保護の調和の取れた発展の実現を図ることが新しい環境政策の主旨で、環境税の徴収も検討している。
グリーン貸付制はこの一環である。

ーーー

地方政府も同様の政策をとっている。

広東省深セン市で今年、「環境保護建設生態都市強化に関する決定」が実施され、企業の汚染物質の違法排出を効果的に制約することに成功した。
新規定には、「環境汚染の違法行為をすれば銀行は貸付を停止する」「汚染物質の違法排出をすればメディアで公開謝罪をする」等の項がある。

銀行が毎年年度始めと6月に行う貸付けに対して企業審査を盛り込むこととなった。
同市の環境保護局が環境違法企業の147社を含めた237社の環境情報を人民銀行に渡した結果、全部で4社が1億元の融資を停止された。

市では違法な建設や期限付きの環境改善などの情報を将来さらに取り入れていき、1つでも関連規定に違反すれば、銀行貸付の停止処分を取るとしている。

同市では2004年11月から、「汚染物質の違法排出をした場合、メディアで公開謝罪することとする」と規定し、環境汚染の違法行為をした企業に対して、メディアで公開謝罪、法規の遵守を誓約、社会からの監督を承認するよう要求している。
今年の1月~9月までの間で、企業14社がメディアを通じて謝罪した。

ーーー

3)これとは別に、吉林省では、汚染物排出減少政策に違反する製紙・パルプ会社93社を閉鎖させることを決定した。

吉林省環境保護関連の部門が全省の製紙会社209社の排水を調べたところ、生産規模1万トン以上の非パルプ製紙会社は、生産を停止して改善を施したことで汚染物排出基準値をクリアしたが、生産規模が1万トン以下の小規模の企業の大多数は未だ汚染改善用設備が建設されず、排水は汚染基準値を超え、環境汚染が著しかった。

吉林省は、11月20日までに閉鎖リスト上の製紙会社に閉鎖命令を下し、水道や電気をストップし、法に基づき生産許可証や営業許可証を取り消す。

ーーーー

* バックナンバー、総合目次は 
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
  
項目別の索引も作成しました。

IPCC 第四次報告

| コメント(0)

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は17日、スペイン・バレンシアで開いた総会で最終報告を採択した。
  報告サマリー 
http://www.ipcc.ch/pdf/assessment-report/ar4/syr/ar4_syr_spm.pdf

lPCCは1988年に設立された国連の組織で、各国政府から推薦された科学者が3つの作業部会に分かれ、5、6年ごとに地球温暖化に関する科学的根拠とその影響、対策の3項目について評価を見直す。
今回は90年、96年、01年に次いで4回目。

今回の報告は今年前半に開いた3つのIPCC作業部会の評価報告を統合したもの。

第1作業部会(科学) http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/2007-02-1.htm#ipcc 
第2作業部会(影響) 
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/2007-04-1.htm#ipcc-2
3作業部会(対策) http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/2007-05-1.htm#ipcc-3

国連の潘基文事務総長は会見で、「世界の科学者は一致して、その考えを示した。各国の政策決定者が、12月にバリで開催される国連の気候変動枠組み条約締約国会議(COP13)で同様に行動することを期待する」と述べた。

IPCC報告の骨子は以下の通り。

・温暖化は疑う余地がない
・気温上昇のほとんどは人間活動によってもたらされた
・現在の政策を続ければ温暖化ガスは今後20-30年増加する
・早急な対策がなければ地球の平均気温は今世紀末に最大で6.4度上昇する
・温暖化の進行を抑えるには2050年までに約300兆円が必要
・今後20-30年の努力と投資が温暖化ガスの安定化のカギとなる

まず、気温や水温の増加、雪や氷の溶解、海水面の上昇などから、温暖化は疑う余地がない(unequivocal)としている。

更に、気温上昇のほとんどは人為的な温暖化ガス上昇によることは very likely としている。

温暖化ガス濃度を抑えるなら早期に排出量の削減に転じなければいけないとし、温暖化の緩和策と影響への適応策をとれば、気候変動リスクをかなり減らすことができるとしている。
今後の対策に応じ、今世紀末の気温は
20世紀末比で 1.16.4度上昇、海面は 1859センチの範囲で上がると予測した。

Projected global averaged surface warming and sea level rise at the end of the 21st century
Case Temperature change
( at 2090-2099
relative to 1980-1999)
Sea level rise
( at 2090-2099 relative to
1980-1999)
Model-based range
excluding future rapid
dynamical
changes in ice flow
Best
estimate
Likely
range
Constant year 2000
concentrations
0.6°C 0.3 - 0.9°C Not available
B1 scenario 1.8 1.1 - 2.9 0.18 - 0.38m
A1T scenario 2.4 1.4 - 3.8 0.20 - 0.45
B2 scenario 2.4 1.4 - 3.8 0.20 - 0.43
A1B scenario 2.8 1.7 - 4.4 0.21 - 0.48
A2 scenario 3.4 2.0 - 5.4 0.23 - 0.51
A1FI scenario 4.0 2.4 - 6.4 0.26 - 0.59

温暖化による長期的な影響を5つ挙げている。

 ・Risks to unique and threatened systems
   地球の平均気温が1980-99年レベルの1.5-2.5°C を超えると 20-30%の生物種で
      絶滅リスクが高まる可能性がある。
 ・
Risks of extreme weather events
   旱魃、熱波、洪水が増加する可能性が高い。
 ・
Distribution of impacts and vulnerabilities
   経済的弱者が温暖化の影響を受けやすい。
 ・
Aggregate impacts
   気候変動の市場ベースの利点は温暖化の初期にピークになるが、デメリットは温暖化が進むとより大きくなる。
 ・
Risks of large-scale singularities
   グリーンランドや南極の氷が溶けることからの海水面の上昇のリスクは、モデルによる予想よりも大きく、
   (数世紀ではなく)
1世紀の間に起こる可能性がある。

気候変動の影響は対策により軽減や遅らせることが可能で、安定化のためには次の20-30年間の努力が大きな影響を与える。
温暖化進行を抑えるには
2050年までに全世界のGDPの最大5.5%(300兆円)のコストが必要である。

2050年にCO2換算で 710ppm 445ppm に止めるためのコストはグローバルなGDP -1%5.5%と予測した。
最も厳しい対策で、年平均のGDP成長率の低下は0.12%以下にとどまる。

Estimated global macro-economic costs in 2030 and 2050.
Costs are relative to the baseline for least-cost trajectories towards different long-term stabilisation levels.
Stabilisation levels
(ppm CO2-eq)
Median GDP
reduction (%)
Range of GDP
reduction(%)
Reduction of average annual
GDP growth rates (percentage
points)
2030 2050 2030 2050 2030 2050
445 - 535 Not available < 3 < 5.5 < 0.12 < 0.12
535 - 590 0.6 1.3 0.2 to 2.5 slightly negative to 4 < 0.1 < 0.1
590 - 710 0.2 0.5 -0.6 to 1.2  -1 to 2 < 0.06 < 0.05

ーーー

安井先生の「市民のための環境学ガイド」は早速これを取り上げている。 
 2007/11/18 「理想的な温暖化防止対策の枠組みとは」
 
   
http://www.yasuienv.net/LongMitigFW.htm

ーーーー

* バックナンバー、総合目次は 
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
  
項目別の索引も作成しました。

OPECサミット

| コメント(0)

2000年以来 7年ぶり、創立以来3回目となるOPEC首脳会議が11月17、18日の両日、サウジアラビアのリヤドで開かれた。

事前の発言の通り、ベネズエラChávez 大統領は米国がイランを侵略すると原油価格は1バレル200ドルに倍増すると警告、またOPECメンバーに対し、貧困との戦いで先陣を切るべきだとして社会正義のための運動に参加するようアピールした。

2007/11/16  ベネズエラChávez 大統領の原油価格論

これに対してサウジアラビアのKing Abdullah が、OPECは常に穏やかに、賢明に行動すべきだと反論した。また、原油は発展のためのエネルギーであり、紛争や感情のための道具となるべきでないとした。
更に、
OPECは開発途上国や貧困撲滅に対する責任を見過ごしてはいないとし、OPECの国際開発基金が120カ国以上の途上国に寄付をしてきたことを例に挙げた。(宣言の3項目の1つに取りあげた。)

首脳会議は18日に、「リヤド宣言」を採択した。
宣言は①グローバルなエネルギー市場の安定、②持続可能な発展のためのエネルギー(途上国支援)、③エネルギーと環境(環境問題)、の3項目を取り上げ、
OPECとして初めて環境問題を前面に押し出した。
サウジは3億ドルを地球温暖化を対象とした研究に投じることを明らかにした。カタール、アラブ首長国連邦、クウェートもそれぞれ1億5千万ドル程度の拠出を表明した。

Chávez 大統領は原油価格の基準として米ドルを外すべきだと主張し、イランがこれに賛成し、紛糾した。
単に米国に対する嫌がらせでなく、米ドルが他の通貨に対して下落していることが原油価格上昇の理由の一つとなっている。

(サミット終了後の会見でもイランの Ahmadinejad 大統領は米ドル問題を取りあげ、 "worthless piece of paper"
と呼んだ。)

サウジやアルジェリア等のメンバーは、この動きが米国の不況の引き金となるのを恐れて反対した。
これによりドルの価値が下がると、大量のドルを抱えている産油国も被害を被ることとなる。

宣言の②では、「サミットで提起された提案を含め、OPECメンバー間のファイナンス面での協力を強化するための手段を研究するよう、石油エネルギー相や財務相に指示する」との項目が最後に記載されており、12月5日のOPEC総会までに財務相会合を開催する方向。
ユーロなどを含む「通貨バスケット」の採用などを検討する可能性もある。

③については宣言では、
エネルギー生産・消費、環境保護、経済成長・社会発展の相互関係を認識し、以下の点を実施するとしている。
・環境問題への対応
・石油資源のベースを増やし、よりクリーンな燃料を供給するための研究開発
・森林保護
・温暖化問題の重要性の確認
・温暖化対策がバランスが取れていること(化石燃料の生産・輸出に依存する国を含めた途上国の問題)
・温暖化問題での包括的アプローチの必要性の強調
・クリーンで効率的な石油技術の重要性、カーボンの捕捉や貯蔵などの温暖化対策技術の開発の重要性の強調

予想通り原油増産には言及せず、12月上旬の総会に持ち越した。

「リヤド宣言」全文  http://www.opec.org/aboutus/Third%20OPEC%20Summit%20Declaration.pdf

ーーーー

* バックナンバー、総合目次は 
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
  
項目別の索引も作成しました。

各社の発表がほぼ出揃った。

既報の医薬メーカーを除く各社の営業損益対比は以下の通り。(旭硝子、昭和電工は6月中間)

多くの企業が原料費のアップを価格転嫁して増益となっているなかで、一部企業は特定の理由(特定製品の売価低下など)で減益となった。
今後は一層の原油高のなかで、更なる価格転嫁は難しくなり、業績悪化が懸念される。

 

下記各社については既報を参照

  信越化学  2007/10/30  信越化学 中間決算 

  住友化学、三菱ケミカル、三井化学、旭化成、東ソー 2006/11/13
 主要会社 中間決算-1

ーーー

旭硝子

営業損益対比(億円)
  06/6中 07/6中 増減   06/12 07/12
予想
ガラス   203   341   138      465   610
電子・ディスプレイ   400   463    63      792  1,040
化学    46    85    38      78   130
   14    14    0      33    20
全社    -2    1    3      -2    0
営業損益合計   661   903   242    1,366  1,800

ガラス事業は、欧州の旺盛な需要を背景に増収増益
電子・ディスプレイ事業は、CRT設備の構造改善効果とTFT用ガラス出荷増で増益
化学事業は、製品市況改善(特に塩ビ関連)でコストアップを吸収し増益

ーーー

帝人

営業損益対比(億円)
  06/9中 07/9中 増減   07/3 08/3
予想
合成繊維    96   117   21     173   280
流通・リテイル    22    23    1      54    60
化成品   186   127   -59     339   230
医薬医療   104    98   - 6     212   210
IT・新事業     9    6   -3      43    30
全社    -30    -40   -10     -71   -90
営業損益合計   388   330   -58     751   720

化成品で、PC樹脂は一般産業用途中心に販売は伸びたが、BPA価格上昇継続が業績を圧迫した。
また、米国のPETが需要低迷、競争激化で大幅減益となった。

ーーー

三菱レイヨン

営業損益対比(億円)
  06/9中 07/9中 増減
化成品・樹脂   180   131   -49
アクリル繊維・AN    4   15    11
炭素繊維・複合材料   53   67    14
アセテート・機能膜   29   16   -13
全社    1    -1    -2
営業損益 合計   268   228   -39

同社では2006/3より、退職給付会計における数理計算上の差異の処理方法を、定額法償却での営業外費用処理から発生の翌年度に営業費用として一括償却する方法に変更した。
  
2006/3    9億円の損
  
2007/3  142億円の益
  
2007/9は影響が少ない。

対比のため、数理計算上の差異を除くと、以下の通りとなる。

  06/9中 07/9中 増減
化成品・樹脂   135   136    1
アクリル繊維・AN   -7   15    22
炭素繊維・複合材料   45   69    24
アセテート・機能膜   24   16    -8
営業損益 合計   197   236    39

なお、同社は今回から区分を以下の通り変更した。

ーーー

なお、中間配当は以下の通りで、信越化学が40円でダントツのトップ。
但し、医薬では武田薬品が中間84円、年間予想168円。

  中間 年間予想
信越化学  40.0円  80.0円
JSR  16.0円  32.0円
日立化成  15.0円  30.0円
クラレ  11.0円  22.0円
ADEKA  11.0円  22.0円
旭硝子  10.0円  20.0円
日産化学  10.0円  20.0円
下記各社(*)   8.0円  16.0円
  中間 年間予想
武田薬品  84.0円  168.0円
エーザイ  65.0円  130.0円
アステラス製薬  50.0円  100.0円
第一三共  35.0円   70.0円
大正製薬  12.0円   27.0円
* カネカ、日本触媒、三菱ケミカル、
  三菱ガス化学
 

ーーーー

* バックナンバー、総合目次は 
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
  
項目別の索引も作成しました。

BASF 1113日、 SABIC Innovative Plastics (元 GE Plastics)とのPBT 製造の 50/50JV BASF GE Schwarzheide GmbH & Co. KG. SABIC 持株を買収すると発表した。

1997年にBASF GE Plastics 50/50 JVとして設立し、BASFSchwarzheide工場内に年産 60千トンのワールドスケールのプラントを建設した。現在の能力は100千トン。

BASFでは今後欧州のエンプラ市場での力強い成長を予想しており、長期的にこの分野での投資を進めるとしている。

 

今回の買収はBASFにとって過去5年で5番目のエンプラ分野での買収となる。

20031月、BASFHoneywell の全世界のエンプラ事業(主に nylon 6 and nylon 6,6 とそのアロイ)を買収した。
 (逆にナイロン繊維事業を同社に売却)
   
2003年12月末、BASFTiconal の全世界のnylon 6,6 事業を買収した。
   
2005年11月、BASFドイツの特殊ポリアミドコンパウンドのメーカーのLeuna-Miramid GmbHを買収した。
 (
2006年5月にBASF Leuna と改称)
   
2005年12月、BASFイタリアのエンプラコンパウンドメーカーのLATI Industria Termoplastici から同社の米国子会社LATI USA を買収した。
nylon 6 6,6PBTPOMの商権の買収で、工場や従業員は移さない。
   

BASFはアジアでも事業を拡大しており、20064月にはマレーシアの東レとのPBTベースレジン製造JV Toray BASF PBT Resin Sdn. Bhd が生産を開始した。(50/50JV、立地:クアンタン、能力:60千トン)

20075月には、同社は上海の浦東区にエンプラコンパウンド工場の開所式を行なった。
能力は
45千トンで、同社によれば世界で最も近代的なコンパウンド工場の一つで、最高度の環境基準の、最も効率的な工場としている。

同社は他にマレーシアと韓国にもエンプラコンパウンド工場を持ち、アジアの能力は100千トンを超えることとなる。

ーーー

なおGE Plastics とのJVでは、Bayer MaterialsScience 2007年8月に、自動車用glazing (窓ガラス代替分野)の50/50 JV EXATEC の同社持分をGE Plastics (その後SABIC Innovative Plastics と改称)に売却している。

  2007/9/4  SABIC、GE Plastics の買収完了  

ーーーー

* バックナンバー、総合目次は 
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
  
項目別の索引も作成しました。

反米強硬派のベネズエラ Chávez 大統領はこのたび、OPECサミットを前に、原油価格論を述べた。

2000年以来 7年ぶりとなるOPEC首脳会議が11月17、18日の両日、サウジアラビアのリヤドで開かれる。サウジのアブドラ国王やベネズエラのチャベス大統領ら、OPEC加盟国の首長クラスが出席。国際原油市場の現状や見通しについて議論を行うほか、環境対応や安定供給に向けたOPECの役割などについて議論を行い、首脳の意見を取りまとめた宣言を公表する予定。
但し、増産するかどうかなどの具体的な議論は12月5日にアブダビで開かれるOPEC臨時総会で行なわれるとみられている。

まず、米国がイランを侵略すると原油価格は1バレル200ドルになると警告した。
更に、もし米国がベネズエラを攻撃するなら、米国への原油の輸出を打ち切るともしている。
(ベネズエラは米国への原油輸出量では世界で4番目で、生産量の約半分を米国に輸出している)

また、OPECサミットでベネズエラとして新しい原油価格決定方式を提案すると述べた。
大統領によると、一般に基準とみられているWTI (
West Texas Intermediate) は全世界の1日当たり産出量からみて、極々少ない量のものであり、基準とはなりえない。

更に、大統領はOPECは地政学的にもっと重要なプレーヤーになるべきだとし、貧困国に対して、読み書き能力、健康、教育、住宅などの社会開発計画の費用を出すべきだと提案した。石油カルテルはエネルギー分野を超えて政治的様相も示すべきだとする。
産油国が同意すれば、貧困国への援助資金として1,000億ドルの基金をつくることが可能であるとしている。

また、貧困国に対して富裕な国よりもはるかに安い価格で原油を販売することを提案した。
具体例として富裕な国に1バレル100
ドルに対し、貧困国には20ドルという案を示した。資本主義の原則ではあり得ないが、OPECにはそれが可能であるとしている。

しかしながら、新しい原油の価格帯の設定については反対であるとしている。
彼は
1999年に大統領になってすぐ、原油価格を22ドル~28ドルの間で維持するべきだとOPECを説得した。しかし、結果は下限に張り付き、上限に届いたことがなかったという経験を持つ。

大統領は原油価格は100ドルになるとの以前からの見方を繰り返しているが、OPEC56年間は価格をそのレベルに維持すべきだと考えている。そうすれば先進国は需要を抑えるようになるだろうと。

 

 

なお、NY市場のWTI は11月7日に 一時 98.62$/bbl を付け、100ドル間近といわれたが、その後反落、13日には安値 90.13$/bbl 90ドル割れ目前まで下がった。

   最近の価格推移:  

 

 

ーーーー

* バックナンバー、総合目次は 
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
  
項目別の索引も作成しました。

2007年7月に英豪資源大手Rio Tinto がカナダのアルミ大手、Alcan を買収することで合意したと発表した。
この前には、BHP Billiton Alcoaを買収するとの噂があった。(同社は最早、この買収を考えていないとの報道もあった。)

2007/7/17 Rio Tinto、Alcanを買収 アルミ生産で世界最大に

先般、Alcan 買収手続きを進めているRio Tinto に対してBHP Billiton が買収の提案を行った。
Rio
Tinto の株式1株に対してBHP株を与えるという案で、1,400億ドル以上に相当する。

これに対し、Rio Tinto の役員会は、この条件が同社の現状、将来性を考えると著しく安すぎるとし、拒否した。
11月8日、
BHP Billiton Rio Tinto がそれぞれ、明らかにした。

BHP では拒絶を受け、Rio Tinto に対して引き続き交渉をしたいと伝えた。
Rio Tinto は今後、Alcan との統合を含めた現在の戦略を推し進めていきたいとしている。

ーーー

Rio Tinto は英国と豪州の鉱業・資源グループで、銅、鉄鉱石、金、亜鉛、ダイヤモンドなどを取り扱っている。
1995年に英国の
Rio Tinto-Zinc Corp (現 Rio Tinto Plc.)と豪州のConzinc Riotinto of Austalia (現 Rio Tinto Ltd.)の二元上場会社(DLC Dual Listed Companies)として設立された。

2つの会社は別個の会社として残り、それぞれロンドン、オーストラリア証券取引所に上場。
両社は同一の取締役会により単一の経済単位として経営され、両社の株主は同じ投票権と配当受領権をもつ。

BHP Billitonも世界最大の鉱業会社で、鉄、ダイアモンド、石炭、石油、ボーキサイトをはじめとして金属や鉱産品を取り扱っているが、これもDLCである。
2001年にオーストラリアの
Broken Hill Proprietary BHP)とイギリスの会社で南アフリカで大規模に操業するBilliton の二元上場会社となることで設立された。

ーーー

両社が仮に統合すれば、石炭、鉄鉱石、銅、アルミで強力な地位を占める、株式時価 3,500億ドルの基礎金属の巨人の誕生となる。
戦略的コモディティでのカルテルについての懸念も生じる。

鉄鉱石と石炭は今でも価格が上昇しているが、統合会社はそれぞれの市場で1/3以上のシェアを持つこととなる。
BHP ではこの懸念に対しては、鉄鉱石事業の処分も考えたいとしている。)

英国のTelegraph の報道では、中国政府の中国開発銀行China Development Bank)が最近、密かに Rio Tinto の株式を購入した。
1%以下の出資と見られるが、中国政府が世界的な鉱山会社に出資したのは注目される。
中国は世界の鉄鉱石の50%近くを消費しており、今回の統合が成立すれば被害を被る可能性がある。

両社の今後の動きが注目される。

 

ーーーー

* バックナンバー、総合目次は 
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
  
項目別の索引も作成しました。

医薬大手の中間決算が出揃った。

営業損益、当期損益は以下の通り。

  中外製薬は6月中間決算
  田辺三菱製薬は2007年10月1日発足
   (グラフ右端は参考で、両社の単純合計)

 

武田薬品

増収、増益。
配当は年間168円にアップ。

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
連結 単独 連結  単独  連結 単独  連結  単独  中間 期末
06/9中間  642,427  431,955   236,223  178,548  299,040  207,448  159,142  113,211  60.0  
07/9中間  708,468  459,167   264,905  185,461  333,696  196,933  218,011  146,250   84.0  
                     
06/3 1,212,207  840,230   402,809  345,969  485,354  364,439  313,249  249,361  53.0  53.0
07/3 1,305,167  869,068   458,500  347,652  585,019  378,377  335,805  219,813  60.0  68.0
08/3 1,400,000     485,000    605,000    395,000    84.0  84.0

ーーー

第一三共

2005/10/1 に第一製薬と三共が経営統合、共同持株会社「第一三共株式会社」を設立したが、 2007年4月に三共㈱と第一製薬㈱を第一三共㈱が吸収合併した。2006/9と2007/3の単独決算は「管理料」。 

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
連結 単独 連結  単独  連結 単独  連結  単独  中間 期末
06/9中間  485,842   2,757   78,353    127   88,208    124   66,886     60  30.0  
07/9中間  443,708  287,690   93,911  71,503  100,696  91,851   60,243  54,949  35.0  
                     
06/3  925,918   76,656  154,728  73,948  159,714  73,591   87,692  73,545  25.0  25.0
07/3  929,506   6,141  136,313    361  152,086    269   78,549   -3,355  30.0  30.0
08/3  876,000    160,000    171,000    100,000    35.0  35.0

売上高は、医薬品の売上高が主要製品の売上拡大等で174億円の増収となったが、欧米子会社決算期変更で 174億円のマイナス、非医薬品事業の自立化により421億円のマイナス(第一ファインケミカルを協和発酵に売却、ほか)があり、減収となった。

営業損益、経常損益は医薬品の売上拡大で増益。
当期損益 前年には関係会社売却益があったため、特別損益が129億円の減少となった。
配当 昨年の年間60円から70円に増配

ーーー

アステラス製薬

増収、増益。配当は年間80円から100円に増配。

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
連結 単独 連結  単独  連結 単独  連結  単独  中間 期末
06/9中間  447,924  295,906   72,474   39,698   77,015   43,573   60,674   46,227  40.0  
07/9中間  483,516  301,432  148,138   87,074  151,573   94,830   88,927   50,590  50.0  
                     
06/3  879,361  576,023  193,020  125,024  202,588  159,216  103,658  101,496  30.0  40.0
07/3  920,624  593,753  190,514  107,124  197,813  112,590  131,285   94,279  40.0  40.0
08/3  968,000  611,000  256,000  152,000  266,000  161,000  158,000   91,000  50.0  50.0

売上高は、過活動膀胱治療剤ベシケアや免疫抑制剤プログラフなどグローバル製品が国内外で着実に伸びた。

営業損益は756億円の増益となったが、うち、日本が482億円、欧州が207億円、北米が92億円の増益となっている。
営業損益のうち北米は22.5%、欧州は18.2%を占める。

経常損益の増に対し、当期損益の増が少ない理由は、特別損益の減(354億円の損)による。
  特別利益は前期はゼファーマ等の売却益 212億円があった。(180億円減少)
  特別損失は当期に割増退職金 131億円があった。(174億円増加)

ーーー

各社とも配当を毎年増やしているが、特に武田とエーザイの増加は著しい。

  中間 年間予想   07/3 06/3 05/3 04/3
武田薬品  84円  168円    128円  106円  88円  77円
エーザイ  65円  130円    120円   90円  56円  36円
アステラス製薬  50円  100円     80円   70円    
第一三共  35円   70円     60円   50円    
大正製薬  12円   27円     27円   30円  25円  25円
 

ーーーー

* バックナンバー、総合目次は 
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
  
項目別の索引も作成しました。

各社の中間決算が順次、発表されている。

信越化学決算は 既報  2007/10/30  信越化学 中間決算 

総合化学5社(住友化学、三菱ケミカル、三井化学、旭化成、東ソー)の決算は以下の通り。
住友化学のみが営業損益で減益となっている。

ーーー

住友化学 

増収だが、石油化学と情報電子化学が大幅減益となったことで営業損益、経常損益は減少した。
更に、前期の投資有価証券売却益がなくなり、特別損益が前期比 183億円の減益となったことから、当期損益は半減した。
配当は年間12円を据え置く。

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
連結 単独 連結  単独  連結 単独  連結  単独  中間 期末
06/9中間  854,621  425,773   68,214  19,214  75,920  36,922  53,283  56,783   5.0  
07/9中間  931,896  444,878   48,364   6,865  57,664  23,401  26,396  18,737   6.0  
                     
06/3 1,556,606  755,037  120,790  30,795  141,127  62,159  90,665  50,956   4.0   6.0
07/3 1,790,026  885,557  139,623  45,928  157,981  70,595  93,860  83,711   5.0   7.0
08/3 1,940,000  940,000  120,000  32,000  125,000  50,000  70,000  42,000   6.0   6.0
営業損益対比(億円)
  06/9中 07/9中 増減   07/3 08/3
予想
基礎化学    59    79    20     135   170
石油化学    74    20    -54     236   100
精密化学    73    61    -11     131   130
情報電子化学    63   -63   -126      35   110
農業化学   122   108   -14     233   210
医薬品   262   260    -3     562   470
その他    34    22   -12      80    10
全社    -6    -5    1     -15    -
営業損益合計   682   484   -199    1,396  1,200

石油化学部門は原料価格の高騰や、千葉工場の4年に一度の大型定期修理の影響(約30億円の減益)により、前年同期に比べ54億円の減益となった。

情報電子化学は韓国の偏光フィルム販売が軌道に乗り、売上を伸ばしたが、国際市況の下落や設備増強に伴う固定費の増加などから営業利益は赤字となった。(昨年下期も赤字)

但し、「偏光フィルムは海外では品不足になるほど需要が拡大しており、操業度や生産効率も上がってきている」としており、通期では情報電子化学の営業損益は110億円の黒字としている。

ーーー

三菱ケミカルホールディングス

石油化学が好調で、営業損益は増益となった。
当期損益については、前中間期に自社株取得に関連して法人税等調整額が
-56億円だったのが62億円と、差引118億円増えたこともあり、40%の減益となった。
配当は昨年の年間14円を16円に増やす。

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
連結 単独 連結  単独  連結 単独  連結  単独  中間 期末
06/9中間 1,263,457   22,275   56,640  21,187  64,531  21,115   61,945  42,896   7.0  
07/9中間 1,389,814   16,206   66,487  15,091  70,578  14,703   38,164  42,752   8.0  
                     
06/3 2,408,945    1,487  133,619    438  143,575    144   85,569    81   3.0   8.0
07/3 2,622,820   36,800  128,589  34,553  141,296  33,978  100,338  55,898   7.0   7.0
08/3 2,970,000     148,000     149,000     186,000      8.0   8.0
営業損益対比(億円)
  06/9中 07/9中 増減   07/3 08/3
予想
石化    71    170    99     282   
機能化学   160    179    20     350   
機能材料   120    108   -12     243   
ヘルスケア   204    212    8     396   
サービス    48    48    -     106   
全社   -36    -52   -16     -92   
営業損益合計   566   665    98    1,286  1,480

石化部門は、テレフタル酸の海外市況は弱含みで推移したが、1,4ブタンジオール等全般的は市況上昇や生産トラブル減少で増益となった。

11月9日の日本経済新聞によると、同社はPTAの減産を強化する。
主原料のパラキシレンが高騰する中、PTAは供給過剰で価格が低迷していることに対応するもの。
現在、年間能力比で2割弱の減産をしているが、3月に立ち上げた中国浙江省の新工場(年産60万トン)を12月後半から休止する。再開時期は未定。これを加えると年間3割強の減産になる。

なお、同社は棚卸資産の評価について総平均法をとっている。
上期のようにナフサ価格が急上昇している場合、住友化学や三井化学のような後入先出法会社では当期の高いナフサ価格に基づく高い製品価格が原価となるが、同社の場合は前期末残の安い価格と平均されたものが原価となり、利益が多目に出る。

2007年10月1日に田辺三菱製薬が誕生した。
2008年3月の営業損益(予想)は520億円だが、これは三菱ウェルファーマの中間決算に新しい田辺三菱製薬の下期予想を加えたもの。
グラフでは対比のため、田辺製薬の上期(184億円:棒グラフの下部)を加えた。

ーーー

三井化学

ウレタン原料の市況が高騰し、採算が大幅に向上したのが貢献し、増収増益となった。
当期利益は法人税等調整額が35億円増加し、若干の減益となった。
配当は前年の年間10円を12円にアップする。

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
連結 単独 連結  単独  連結 単独  連結  単独  中間 期末
06/9中間  833,985  490,591   33,488   9,714  36,744  15,001  20,292   9,406   4.0  
07/9中間  881,591  510,756   42,733  13,700  40,488  16,902  20,152   8,588   6.0  
                     
06/3 1,472,435  852,955   58,705  25,552   61,989  34,246  44,125   14,967   4.0   4.0
07/3 1,688,062  991,787   91,678  31,720   95,478  38,373  52,297   20,996    4.0   6.0
08/3 1,800,000 1,050,000   90,000  26,000   87,000  31,000  43,000   22,000   6.0   6.0

 

営業損益対比(億円)
  06/9中 07/9中 増減   07/3 08/3
予想
機能材料    82    190   108     259   380
先端化学品    48    50    2     117   120
基礎化学品   198    196   - 2     531   430
その他    19     14   - 5      36    20
全社   -12    -23   -11     -26   -50
営業損益合計   335   427    92     917   900

    

同社は今期より区分を変更した。

従来区分 新区分
機能樹脂 エラストマー、機能性ポリマー、工業樹脂、ウレタン樹脂原料 機能材料 自動車・産業材(エラストマー)、包装・機能材(工業樹脂)、ウレタン樹脂原料
機能性ポリマー 電子・情報材
電子材料、情報材料
生活・エネルギー材(機能加工品)
機能化学品 精密化学品、農業化学品 先端化学品 精密化学品、農業化学品
樹脂加工品、電子材料、情報材料
石油化学 石化原料、ポリエチレン、ポリプロピレン 基礎化学品 基礎原料(エチレン、プロピレン等)、フェノール、
合繊原料・ペット樹脂、工業薬品、
ポリエチレン、ポリプロピレン
基礎化学品 合繊原料、ペット樹脂、フェノール、工業薬品
その他 プラントの建設及びメンテナンス、倉庫運送業等 その他 その他関連事業等

機能材料はウレタン原料のTDIの市況が東・東南アジアで改善したこと、原料価格高騰を受けたPPGの製品価格値上げが貢献した。
ウレタンは欧州大手の工場トラブル等で市況が過去最高となった。
このため変動費差
-50億円に対し売価差は160億円と、差引 110億円の利益増となった。

基礎化学品では中国市況の低迷でPTAの採算が悪化したほか、PE、PPもナフサ高の影響を受けている。
なお、日経報道では、三井化学も
PTAで1割の減産を行なっている。

ーーー

旭化成

ケミカルズが好調で増収増益となった。
配当は前年の年間12円を13円にアップする。

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
連結 単独 連結  単独  連結 単独  連結  単独  中間 期末
06/9中間  768,878  22,984  50,690  15,720  48,765  16,178  28,958  16,755   5.0  
07/9中間  830,757  24,064  63,689  15,851  63,145  16,469  38,019  18,131    6.0  
                     
06/3 1,498,620 42,649 108,726  27,410  104,166  27,013  59,668  29,010  5.0 5.0
07/3 1,623,791 42,758 127,801 28,216 126,507  29,069 68,575 28,867 5.0 7.0
08/3 1,729,000 46,000 135,000 29,000 134,000 30,000 79,000 32,500 6.0 7.0

 

営業損益対比(億円)
  06/9中 07/9中 増減   07/3 08/3
予想
ケミカルズ   228   362  134      566   690
ホームズ    54    48   -6      275   240
ファーマ    72    77   5     139   135
せんい    13    35   22      42    65
エレクトロニクス   124   115   -9     226   230
建材    25    21   -4      50    45
サービスほか    23    27   4      39    45
全社   -32   - 49  -17     -58   -100
営業損益合計   507   637  130    1,278  1,350

 

ケミカルズは汎用事業、特にANM、SM などモノマー事業が旺盛な海外需要を背景に前期比大幅増益となり、イオン交換膜法食塩電解プラント及びイオン交換膜など高付加価値系事業も数量を伸ばし、前期比増収、増益となった。

コスト差等が前期比180億円(損)あるが、このうち198億円が原燃料で、ナフサが113億円、ベンゼンで58億円、その他で27億円となっている。
これに対して売価差は300億円の益で、その他差を含め、前期比 134億円の増益となった。
ANMは原料価格に連動せず需給バランスで2,000ドル/t 近い価格となっている。

なお、ニチアスの耐火性能偽装により、「ヘーベルハウス」、「へーベルメゾン」の約40,000棟の軒裏天井の改修工事を行なうが、ホームズの年間予想にはこれは織り込まれていない。

ーーー

東ソー

連結売上高、営業利益、経常利益、当期純利益のいずれも上期過去最高となった。機能商品が好調。
配当は年間8円を据え置く。

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
連結 単独 連結  単独  連結 単独  連結  単独  中間 期末
06/9中間  374,700  255,254  22,531  11,692  23,131  14,881  11,480   8,334  3.0  
07/9中間  400,035  279,720  30,689  18,513  29,463  20,643  14,939  13,027  4.0  
                     
06/3  648,810  444,024  47,459  26,203  49,731  31,191  27,532  16,288  3.0  3.0
07/3  781,347  520,068  60,279  33,584  57,998  38,466  28,488  22,353  3.0  5.0
08/3  840,000  585,000  63,000  37,000  59,000  41,000  29,000  24,000  4.0  4.0

営業損益対比(億円)
  06/9中 07/9中 増減   07/3 08/3
予想
石油化学    49    71   21     140   136
基礎原料     1    12   11      61    46
機能商品   163   207   44     372   420
サービス    12    17    6      30    28
営業損益合計   225   307   82     603   630

   

石油化学 オレフィン製品、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン及び樹脂加工製品、機能性ポリマー等
基礎原料 苛性ソーダ、塩ビモノマー、塩ビ樹脂、無機・有機化学品、セメント等
機能商品 無機・有機ファイン製品、計測・診断商品、水処理装置、
電子材料(石英ガラス、スパッタリングターゲット)、機能材料、ウレタン原料等
サービス 運送・倉庫、建設・修繕、検査・分析、情報処理等
 *2006/9 日本ポリウレタン工業の連結子会社化により、ウレタン原料が機能商品事業の製品に加わった。

機能商品はウレタンの値上がりによる採算改善や免疫診断用試薬の伸びで営業増益となった。

苛性ソーダ、VCM、PVC、セメント等の基礎原料も前年上期比は増益だが、低迷が続いている。

ーーーー

* バックナンバー、総合目次は 
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
  
項目別の索引も作成しました。

国家発展改革委員会と商務部はこのほど、「外国企業投資産業指導目録(2007年改訂)」の全文を公布した。12月1日から施行される。2004年に出された目録(2004年改訂)」は失効する。

指導目録では外国企業による投資の奨励品目、制限品目、禁止品目を定めている。

現時点では中国語のものしか、入手できない。
 
http://www.ndrc.gov.cn/zcfb/zcfbl/2007ling/W020071107537750156652.pdf

人民日報によると、今回の改訂では状況の変化に応じ、以下の変更がなされた。

(1)対外開放拡大を堅持しつつ産業構造のランクアップを図る
 
製造業では、ハイテク産業・設備製造業・新素材製造業に対する投資の奨励を強化した。
すでに成熟した技術と比較的高い生産能力を持つ旧来の製造業については投資を奨励しない。

サービス業では、WTO加盟時の承諾を履行、対外開放を積極的かつ確実に拡大し、「アウトソーシングサービス業務の引き受け」「現代的物流」などへの投資を奨励、これまで投資に制限や禁止を加えていた項目を減少

   
(2)資源節約と環境保護を促進
  循環経済・クリーン生産・再生可能エネルギー・生態環境保護・資源総合利用が投資奨励項目として新たに追加。

中国国内で稀少または再生不可能な重要な鉱物資源については投資を奨励しない。
 そのうち数種の鉱物に関しては外国企業が投資して調査・採掘を行うことを禁止。

外国企業によるエネルギーや資源の消費量が高く汚染源となる事業も制限または禁止となった。
   
(3)輸出奨励に偏っていた政策を調整
   
(4)各地域のバランスのとれた発展を促す
  投資項目の一部に付けられていた「中西部地域に限る」という条件を廃止。
(外国企業の投資をこれからも必要とする中西部や東北地方の産業に関しては、「中西部地区外国企業投資優勢産業指導目録」改訂の際にまとめて考慮する)
   
(5)国家経済の安全を維持
  国家経済の安全に関わる戦略的で敏感な産業については、慎重な開放が必要となるため、国内発展と対外開放の原則に則り、関係項目の適切な調整が図られた。
   

ーーー

王子製紙は中国進出に当たり、当初の単独出資案を合弁に変更したが、これは2004年11月の「目録」変更によった。

そこでは外資奨励事業、外資制限事業、外資禁止事業が明示され、製紙業については
①年産30万トン以上の化学パルプ、年産10万トン以上の化学機械パルプの生産計画
②上級紙、段ボールの生産計画
が奨励事業となったが、いずれも合弁か合作に限るとされた。

    2007/10/31 王子製紙の中国工場、発表から4年半でようやく着工 

今回の改正でも、この点については変更はない。

しかし、「エチレンは年産60万トン以上が奨励事業とされ、中国側パートナーがマジョリティを持つこと」とされていたのは、今回は「年産80万トン以上、中国側均等出資」となった。

興味深いのは奨励事業に新しく 「20万トン以上のエチレン法PVC」が入ったことである。

中国国内では小規模プラント除去のため、新設はエチレン法では20万トン以上、カーバイドアセチレン法では8万トン以上となっている。
このため、東ソーは東曹(広州)化工有限公司設立に当たり、当初の11万トン計画を22万トンに倍増した。

中国の最近の新設はほとんどがカーバイドアセチレン法である。
 2007/8/30 
中国のPVC業界の状況 

中国政府はカーバイドアセチレン法の環境問題等を懸念して、外資によるエチレン法PVC投資を奨励しているものとみられる。

ーーーー

* バックナンバー、総合目次は 
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
  
項目別の索引も作成しました。

Bayer は11月6日、第3四半期の業績を発表した。

HealthCareCropScienceが好調で、全社的には増収、増益で、税効果の影響もあり、純利益は大幅に増加した。

1-9月業績  単位:100万ユーロ
  合計 HealthCare CropScience MaterialScience
2006 2007 2006 2007 2006 2007 2006 2007
Sales  20,986  24,345   7,942  11,007   4,398  4,505   7,629  7,856
EBIT before special items   2,857   3,513   1,254   1,908    641   743   1,023   876
Special items   (301)   (744)   (128)   (617)   (15)   (94)   (162)   (33)
EBIT   2,556   2,769   1,126   1,291   626   649   861   843
Group net income   1,372   4,644  
  * EBIT =税引前当期利益+支払利息
  * Net income はSchering 買収に伴う税効果の影響で増加

この中でBayer MaterialScience は増収だが減益となっている。

Bayerは同日の発表で、Bayer MaterialScience のコストダウン計画を発表した。
今後とも技術と収益性の面で主導的地位を占めるべく、更なるコストダウンを行なうとしている。

2009年末までに年間3億ユーロ(500億円)のコストダウンを行なう。
このため、世界中の生産基地の操業とメンテナンスにおいて、プロセスとコストの最適化を達成する。
加えて、管理・マーケティング・流通のコストを大幅に減らす。
これの達成のために、2009年に150200百万ユーロの特別損失を見込む。

記者会見でWerner Wenning 会長は、部門の従業員の10%に相当する1500人をカットすると述べた。このうち400~500人がドイツ。
大部分は2008年から2009年に退職者の再雇用をしないなど、自然減で達成できるとしている。

ーーー

証券アナリストの間でBayerがプラスチック(MaterialScience)事業を売却するのではとの説がある。
同社のCEOが、「プラスチック事業は同社の重要な部門である」としているが、いつまでそれが続くだろうかとしている。

   2007/6/6 続 次の買収は? 

今回の発表の直前にも、MaterialScience restructuring が発表されるのではないかとの噂が流れていた。
SABIC (PCのライバルのGE Plastics を買収)やドイツのライバルBASF が石油やガスで利益を確保できるのに対して、Bayer のPC事業は長引く石油価格高騰の影響を逃れられないとされた。

ーーーー

* バックナンバー、総合目次は 
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
  
項目別の索引も作成しました。

ガラス長繊維分野における世界1位企業の2位企業買収に伴う韓国の子会社同士の統合に韓国公正取引委員会が待ったをかけた。

朝鮮日報によると、公取委は11月4日、Owens Corning KoreaによるR&C Korea Saint-Gobain の孫会社)の買収について、韓国市場での競争が行われなくなる可能性があるという理由から、これを認めず、R&C Korea 株式や工場をすべて第三者に売却せよと命じた。
買収により、韓国のガラス長繊維市場での事業者数が3社に減少し、統合新会社の韓国でのシェアが53.5%に達することから、競争が行われなく恐れがあるとするもの。

今回の合併は、両社の親会社である米国のOwens Corning によるフランスのSaint-gobain の長繊維事業 Saint-Gobain Vetrotex の買収に伴い自動的に実現するもの。

米国やEUは工場の一部売却を条件に買収を承認しており、今回の韓国公取委の措置は、これらより厳しいものとなった。

ーーー

2007年2月20日、 Owens Corning Saint-Gobain は、Owens Corning の補強材事業(Reinforcements Business) とSaint-Gobain の補強・複合材事業(Reinforcements and Composites BusinessVetrotex の一部)を合併し、OCV ReinforcementsOwens Corning Vetrotex Reinforcements)というJonit Venture を設立することで合意した。

新会社は欧州、北米、南米、アジアに広く業務拠点を持つことになり、その中には中国、インド、ロシア、メキシコ、ブラジルなど主要な台頭新興市場も含まれる。

7月27日にOwens Corning は、JVではなく、Saint-Gobain の事業を640百万ドルで買収することで合意したことを発表した。
1031日に手続きを完了)

Saint-Gobain の事業は2006年の売上高が9億ドル、従業員は4,500人。
統合後の売上高は
22億ドル、従業員 9,000人で、16カ国、42箇所に生産基地を持つこととなる。

Owens Corning は、EUの条件を満たすため、同社のベルギーとノルウエーの子会社を、米国の独禁当局の条件を満たすためペンシルベニア州のCFM (連続フィラメントマット)事業を売却した。

今回のOwens Corning KoreaによるR&C Korea 買収はこの手続きの一環であった。

Owens Corning は10月31日、この事業でのアジアと東欧、特に中国とロシアの能力増強を明らかにした。
先ず、今回の買収で手に入れた中国の杭州の
Hangzhou Saint-Gobain Vetrotex Glass Fiber (JV of Saint-Gobain Vetrotex/Hangzhou Glass Group) 、モスクワ近郊のGous Kroustalny にある旧 Saint-Gobain Vetrotex Steklovolokno の能力を2年以内に増強する。

ーーー

旭硝子は9月12日、旭ファイバーグラス(当初 Owens Cornin とのJV)のガラス短繊維事業と工業材料事業をグローバル・インシュレーションに譲渡することを決めたが、長繊維事業については2006年にOwens に譲渡している。

2007/9/21 旭硝子、旭ファイバーグラスの事業を譲渡 

ーーーー

* バックナンバー、総合目次は 
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
  
項目別の索引も作成しました。

豪州の農薬会社Nufarm 115日、中国化工集団公司 (ChemChina)Blackstone Group 及び Fox Paine Management III, LLC からの買収提案を受け入れた。
買収額は
30億豪ドル(27.7億米ドル)になる。
より有利な提案がなされない限り、これで決着する。


中国化工集団公司(ChemChina)は2004年
5月に国営のChina National Blue Star (Group) (藍星グループ)と China Haohua Chemical Industrial (Group) (昊華化工)を統合して設立された。

同社はその後、盛んに海外進出を図っている。

ChemChina は2005年に、Orica ExxonMobil から両社のJVの石油化学会社Qenos を買収している。

Orica 1997年に ICI が売却した ICIオーストラリアが改称したもの。
Qenos 1999年10月に、Orica Kemcor(統合前のExxon Chemical Mobil Chemical50/50 JV)が、両社の石油化学事業を統合して47/53設立したJV。

BlueStar は2006年1月にはCVC Capital Partners から子会社で動物用栄養製品メーカーの Adisseo を4億ユーロで買収した。
2006年10月には、フランスのローディアとの間でローディアのシリコーン事業を買収する契約を締結した。

2006/10/30 中国化工集団公司(ChemChina)の海外進出 

Blackstoneは2007年5月に中国政府から30億ドルの出資(9%)を受け入れている。

2007年9月ChemChina と投資会社のBlackstone Group 、スペシャルティケミカル分野でのグローバルリーダーをつくるための戦略的提携を発表した。Blackstone ChemChina 100%子会社のBluestarの20%を6億米ドルで取得、2人の役員を派遣する。

2007/9/17 Blackstone、藍星グループに出資 

今回の買収はその提携の一環である。

ーーー

Nufarm Ltd オーストラリアのメルボルンに本社を置く農薬会社で、生産と製剤に関するグローバルネットワークを持ち、農薬事業を専門としながら、数多くの工業用化学薬品事業、ファインケミカル事業、高機能化学品事業も展開している。

豪州、ニュージーランド、アジア、欧州、南北アメリカに工場と営業拠点を持ち、従業員は2,600以上。
特許切れ農薬ではイスラエルの
Makhteshim Agan Industries MA Industries)に次ぐ世界第二位。

ChemChina は子会社のChemChina Agrochemical Corporation で農薬事業を行なっており、中国最大の農薬メーカー。
Nufarm ChemChina の農業化学事業を統合すると特許切れ農薬事業でグローバルリーダーになるとしており、Nufarm の経営陣が引き続き統合事業の経営を行い、Nufarm のビジネスカルチャーを維持する。
統合会社の本社はメルボルンに置く。

 

英ペルミラのアリスタライフサイエンス買収の後、Nufarm は買収対象の噂に上がっていた。.Monsanto上記のMA Industries、アリスタライフサイエンス買収で負けたBain Capital Advantage Partners も同社を狙っているといわれていた。

ーーーー

* バックナンバー、総合目次は 
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
  
項目別の索引も作成しました。

ブラジル国営石油ペトロブラスはエクソンモービル系の南西石油を買収することで基本合意したと報じられた。
買収後に約1千億円を投じて最新設備を新設し、ブラジル産原油を日本でガソリンなどに精製、中国などアジア市場に輸出する。

本件は昨年9月に交渉開始が伝えられたが、その後、進展の報道はなかった。

昨年
11月にブラジル国営石油総裁は次の通り述べている。

2006年4月にブラジルは日量188万バレルの生産で、完全自給体制を確立した。
2011年までに237万バレルにまで拡大し、輸出を増やす。
ただブラジル産の石油は重質油で国内の精製能力が足りないため、欧米やアジアで現地企業の買収や提携などを通じ精製能力を拡大したい。
シノペックとは油田開発や石油生産・精製で協定を結んだ。(中国での製油所建設の実現は中国政府の意向次第)

南西石油はエクソンモービル子会社の東燃ゼネラル石油が87.5%、住友商事が12.5%出資している。
1968年にエッソスタンダード沖縄として設立され、1977年に南西石油と改称した。

沖縄県西原町に製油所を持つ。
能力は常圧蒸留 100,000 BPCD
接触改質 13,500BPCDナフサ脱硫 25,000BPCD灯軽油脱硫 19,000BPCD 

ペトロブラスは東燃ゼネラルの全保有株を買い取り、一部を住商に売却して、製油所を共同運営する計画で、住商に出資比率を20-30%に引き上げるよう要請している。

南西石油は能力が小さく、設備も老朽化しているため、エクソンは閉鎖を検討していた。このため、株式買取り額は数十億円と伝えられている。

ぺトロブラスは1千億円を投じて大型設備を建設し、2010年前後に稼働させ、中国や東南アジアなどにガソリンなど石油製品の輸出を始める見通し。

付記 2007年11月8日調印 (Petrobras 11/9、東燃ゼネラル石油 11/10 発表)

売却額は55億円
 但し、最終的な譲渡金額は、2008/3予定の株式引渡期日時点の資産ならびに負債を調整後、決定。

Petrobras はターミナル能力を利用して、日本やアジアでのバイオ燃料の商業化、原油・石油製品のアジア市場への拡大を計画しているとしている。

1112日、住友商事はペトロブラスとの間で、南西石油の新株主間協定書調印に合意したと発表。
新出資比率はペトロブラス 87.5%、住友商事 12.5%。
3年後を目処に精製設備の高度化の為の設備投資を計画、これにより、安価なブラジル産の重質原油を南西石油で処理することが可能となる。
住友商事はアジア地域を中心とした原油、石油製品のトレードのノウハウと沖縄県内向けを中心とする国内石油販売の機能を提供する。

ーー

日本では2004年(と2005年)にSaudiAramco昭和シェルの株式15%を取得、本年9月にはアブダビ首長国の政府系投資機関、国際石油投資会社(IPIC)が約900億円を投じコスモ石油に20%出資、筆頭株主になることが発表されている。

昭和シェルについてはシェルが持株の一部をAramcoに譲渡するもの。昭和シェルとAramcoの関係を深めて昭和シェルの原油調達能力を高め、競争力を抜本的に強化するのが狙い。
Shell Aramco米国とサウジで共同事業を展開するなど、グローバルな戦略的提携を実施している。

アブダビのIPCIはコスモ石油を「アブダビ政府の大事なパートナー」と評価、経営が良好で石油化学やLPGなど様々な下流部門を持っており、資本参加で上流と下流とのインテグレーションを進めたいとしている。
また、アブダビ産の原油や天然ガスの安定供給先の確保も出資の狙いと説明している。

このほか、アラビア石油と富士石油が統合したAOC Holding にはクウェート石油公社やサウジアラビア政府が出資している。

ーーー

日本の石油精製会社の出資関連図(能力は2007/4/1現在)

ーーーー

* バックナンバー、総合目次は 
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
  
項目別の索引も作成しました。

トルコ政府は2007年7月、国営石化会社Petkem民営化のため株式の51%の入札を実施したが、応札した8社のうち、最高額で入札したカザフスタンとロシアのコンソーシアムTransCentralAsia Petrochemical Holding 2,050百万ドルで落札した。

同社はロシアの投資銀行のTroika Capital Partners、カスピ海油田の開発のために設立された米国の石油会社Transmeridian Exploration 100%子会社の Caspi Neft と、ロシアやカザフの投資家のためにトルコでの投資管理を行っている不動産業のEvrazia のコンソーシアムである。

2007/7/11 カザフスタンのコンソーシアムがトルコの国営石化会社Petkim の51%を取得
    

10月に入り、首相を含む Higher Privatization Council 2,040百万ドルで2位で入札したSocar-Turcas-Injaz joint investment group を売却先に決めた。

変更の理由は明らかにされていないが、入札のあとで、TransCentralAsia Petrochemical Holding の裏にアルメニア系の米国のビジネスマン Ruben Vardanyan がいるという噂が広まり、国民の間に反対の声が沸き起こっていた。

アルメニアとトルコは第1次世界大戦中に発生したとされるオスマン帝国による「アルメニア人虐殺」問題で対立している。

アルメニア側は、1915年から1923年にオスマン帝国が行った「アルメニア人虐殺」で150万人が殺害されたとし、トルコ政府はこれを否定している。

米国下院外交委員会は大統領やトルコ政府の批判を無視し、1010日に27対21の賛成多数で 「ジェノサイド」と認定して非難する決議を採択した。

アルメニア政府はこれを歓迎、トルコ政府は外交委での採択を非難し、本会議での採決をけん制する声明を発表、採択された場合には両国の同盟関係が失われる恐れがあり、「無責任な態度だ」と反発している。

 

今回売却先に決まった Socar-Turcas-Injaz joint investment group アゼルバイジャンの石油会社Socar、カザフスタンのKazmunaigaz 、トルコの石油会社Turcas Petroleum とサウジの Injaz Projects のコンソーシアムである。

Injaz Projects はサウジの3社、Al Muhaideb Group (40%)Al Fozan Group (40% )Amwal Al Khaleej (20%) が所有するコングロマリットで、本件の技術・財務コンサルタントをしており、コンソーシアムに10%の出資をしている。

Socar の社長は今回の決定を受け、トルコとアゼルバイジャンは歴史的なつながりから兄弟国であるだけでなく、多くの分野、特にエネルギー分野で戦略的パートナーであるとし、次のように述べている。

・今回の決定はトルコがアゼルバイジャンを重要なパートナーと見ている証である。
・同社は
Petkim の設備の近代化のため20億ドルを投資する。
・トルコは現在、石油化学製品の需要の
75%を輸入しているが、同社の投資でこれが30%に低下する。
・トルコとアゼルバイジャンの外交政策は同じであり、アルメニア問題へのスタンスは同じだ。
  しかし、今回の決定は、両国が兄弟国で戦略的パートナーであることが理由だ。
・同社には年産
600万トンのリファイナリー建設の計画があり、これにより両国の商業面での関係が深まる。

2006年6月に、アゼルバイジャン共和国バクー市からグルジア共和国トビリシ市を経由し、地中海に面するトルコ共和国ジェイハン市を結ぶ総延長1,768kmのBTCパイプライン」が完成している。伊藤忠商事や国際石油開発などが投資している。

2006/6/7 BTCパイプライン完成  

なお、トルコの最高裁は労働組合から出された Petkim 売却無効の訴えを却下した。
入札手続の瑕疵を理由にしたものだが、このほかに、「国益に反する」理由での無効の訴えも出されている。

ーーーー

* バックナンバー、総合目次は 
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
  
項目別の索引も作成しました。

ブラジルのBraskemは10月29日、Dusseldorf で開催中の国際プラスチック・ゴムフェア(K 2007)で、サトウキビベースのエタノールを原料にした年産200千トンのHDPEプラント建設を発表した。建設費は150百万ドルで、2009年下期に生産開始の予定。建設場所は明らかにしていない。

同社は本年6月、サトウキビベースのエタノールからHDPEを生産するのに成功したと発表している。

同社の Technology and Innovation Center が技術を開発した。これまでに月産1トンのパイロットプラントでサンプルを生産し、需要家に渡している。既に green polymer に関心を持つ需要家と販売予約契約を締結している。

Braskemによると、プラスチック容器にバイオソースのPEを使用して「環境に優しい」(green credentials)を謳い文句にしたい需要家が多く、プレミアムを払うとする需要家もある。(原料のサトウキビ1トンは炭酸ガス 2.5トンを吸収する)

Braskemでは、原油価格の高騰のなかで、バイオマスからの他のバイオポリマー(例えば PP)の研究も行なっているとしている。

なお、Dowはブラジルのバイオエタノール大手のCrystalsev と共同で、ブラジルでサトウキビからワールドクラスのLDPE工場の建設計画を明らかにしている。

   2007/7/27 Dow、ブラジルでサトウキビからLDPE製造 

ーーー

ブラジルは世界最大のエタノール生産国で、現在の生産量は年間180億リットル。次の5年で倍増が期待されている。

双日は10月31日、ブラジルの大手コングロマリットのOdebrecht S.A と共同でバイオエタノール・砂糖製造事業に参入すると発表した。
Odebrecht S.A が2007年7月に設立したETH Bioenergia S.Aの発行済み株式33.33%を約92億円で取得し、農園のサトウキビ栽培からバイオエタノール・砂糖生産までの一貫事業を手がける。
2016年にサトウキビの年間圧搾量約1600万トン(エタノール生産量年間98万キロリットル+粗糖生産量年間79万トン)の事業にすることを計画している。

ーーーー

* バックナンバー、総合目次は 
   
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
  
項目別の索引も作成しました。

EUは10月26日、Basell による Lyondell 買収を承認した。両社の活動は、製造場所が異なるため相互補完的であり、競争上、問題とはならないとした。

   2007/7/18 Basell が Lyondell を買収  

これを受け、両社は10月31日、統合後の会社の社名をLyondellBasell Industries とすると発表した。
Lyondell 7月に締結した買収・統合契約を1120日の株主総会に提案する。社名変更は年内に行なわれる株取引終了後に行なわれる。

Lyondell では、「新社名は、将来の事業拡大とともに、需要家・従業員・提携相手・株主・地元にとって大事なこれまでの歴史をも示すもの」としている。

ーーーー

* バックナンバー、総合目次は 
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
  
項目別の索引も作成しました。

Honeywell 100%子会社のUOP LLC は10月23日、シンガポールの Jurong Aromatics Corp.Jurong 島に建設する芳香族プラントの技術、基礎設計、設備購入業務に同社が選ばれたと発表した。

天然ガスコンセンデート(天然ガス田のガスに含まれる液体油)を原料に、パラキシレン 80万トン、オルソキシレン 20万トン、ベンゼン 45万トン、燃料 250万トンを生産するもので、基礎設計は既にUOPが実施しており、2011年稼動を目指す。

Jurong Aromatics Jurong Energy Corp.60%を出資し、他に次の各社が参加する。
 ・スイスの世界最大のコモディティ商社
Glencore (アルミのUC RUSALに参加)
 ・
韓国のSK Energy
 ・クウエートの投資会社 Noor Financial Investment Co
 ・中国最大のPETレジンメーカーの三房巷(Jiangsu Sanfangxiang Industrial Group Corp.

このプラントでは低硫黄分のクリーンな燃料生産のためにUOP Merox processUOP Distillate Unionfining process、高品質の芳香族を生産するためにUOP CCR Platforming processUOP Parex processUOP Isomar processUOP Tatoray processUOP Sulfolane processなど、UOPの幅広い技術を使用する。

Jurong Aromatics では、世界で最も進んだ技術を使用し、世界で最も競争力のある石化プラントになるとしている。

ーーー

シンガポールの石油化学については 2006/4/2 シンガポールの石油化学の歴史 (及び その2)

ExxonMobil Chemical は94、シンガポールでの2計画の最終決定を行なったと発表した。
Shellも20067月に Bukom IslandShell Eastern Petrochemicals Complex 建設の最終決定を行なった。

  2007/9/10 ExxonMobil、シンガポールでの2期計画発表 

シンガポール政府は石油化学企業の誘致を進めており、エチレン生産を現在の230万トンから2015年以降に年600~800万トンに高める計画を立てている。将来的には輸入のガスやメタノールを原料に現地でオレフィンに変換することも考えている。

ーーーー

* バックナンバー、総合目次は http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
  
項目別の索引も作成しました。

国土交通省が10月31日に発表した9月の新設住宅着工戸数は 63,018戸で、前年同月比 44.0%減、3か月連続の大幅減少となった。

平成18年度の住宅着工は1,285千戸であったが、9月の季節調整済年率換算値では 720千戸に止まっている。(7月は947千戸、8月は729千戸)。
特にマンションは 5,328戸で、前年同月比 74.8%減と大きく落ち込んでいる。

これは改正建築基準法の施行によるものである。
耐震偽装対策として申請時の添付書類を大幅に増やしたうえ、建物の構造、防火などにかかわる計画変更は原則として認めず、着工後の再申請は工事をストップした場合に限って認めた。

詳細は以下を参照。

   2007/10/1 日米住宅着工件数減少 

建築資材については既に影響が出ている。住宅を主需要とする塩ビについても間もなくこの影響が出てくると思われる。
7~9月期のGDPに対しても下押し要因になることは避けられないとみられ、景気への悪影響が懸念されている。

法改正で自治体や民間審査機関の責任を重くしたため、審査機関が慎重になりすぎた面があり、審査機関の多くは改正法をしゃくし定規に適用している。
審査の目安となる技術基準解説書が公開されたのは8月になってから。

マンション建設の審査に利用する「構造計算ソフト」の整備が間に合っていないという問題もある。

改正建築基準法では、中高層マンションなど高さ20m超の鉄筋コンクリート建築などには、建築物の安全性を測定する「構造計算書」の提出が求められ、自治体などの検査機関とは別に、「指定構造計算適合性判定機関」という第三者組織を設け、二重にチェックする体制を整えた。
審査をスムーズに進行させるためには、書類の申請側と審査側に共通仕様の計算ソフトが必要になる。
姉歯事件でのプログラム改竄を避けるため、不正防止機能を備えた認定構造計算ソフトをつくることとなっているが、施行から4ヶ月たった現在でも発売されておらず、年内発売も微妙という。

現在は、構造計算書は非認定プログラムによって計算されたものが使われているが、審査期間が長くなるし、着工後に建築基準法に違反していたことが判明すれば工事はストップし、完成後でも取り壊さざるを得なくなる恐れがある。

 

国土交通省では着工件数の激減について「予想以上の混乱」としており、改正法が円滑に運用されるよう、10月30日、「改正建築基準法の円滑な施行に向けた取組について」を発表した。11月中旬にも同法の施行規則を改正し、実施する方針。

国土交通省においては、改正建築基準法の円滑な施行に向けて、各般の関連情報の周知徹底等に努めておりますが、これまでに意見交換の場等であった実務者からの要望等を踏まえ、更に以下の取組みを行います。

(1) 実務者向けのリーフレットの配布
  従来から行ってきたホームページによる質疑・応答( Q&A) 等の公表に加え、新しい建築確認手続きの要点に絞って、設計者、施工者、デベロッパーなど主に事業者側の実務者を念頭に、わかりやすく説明したリーフレットを作成し、関係団体、商工会議所、地方公共団体等を通じて、幅広く、関係者に配布するとともに、確認審査の窓口等に備え置きます。
   
(2) きめ細かい個別の地域に対するアドバイスの実施
 
建築確認申請件数、あるいは建築確認件数が依然大幅に落ち込んでいる地域に対して、特定行政庁や指定確認検査機関から個別に状況をヒアリングした上で、具体的な改善策についてアドバイスを行います。
   
建築確認手続きの円滑化に向けて、特定行政庁や指定確認検査機関が講じている効果的な取組事例を整理し、各審査機関に対して周知を図ります。
   
(財) 建築行政情報センターのホームページ上に設置している「苦情箱」に寄せられた苦情のうち、特定行政庁や指定確認検査機関の不適切な取扱いの具体的な事例を整理し、各審査機関に対して注意喚起をします。
   
(3) 建築確認手続きに関する運用面の改善・明確化
  大臣認定書の写しの添付や計画変更に係る確認を要しない軽微な変更に関する取扱い等について、事務手続きの合理化や解釈の明確化を図る観点から、建築基準法施行規則等の所要の見直しを行います。

改善例
間仕切りや開口部の変更で、構造安全性、防火・避難性能が低下することのないもの等については、「軽微な変更」として扱い、計画の変更に係る確認申請を要しないこととする。

建築確認申請の際に、構造方法、材料に係る大臣認定書の写しについては、審査機関が認定内容を確認できる書類を有していない等の理由により、申請者に提出を求める場合に限って添付を要することとした。

 

付記

国土交通省が導入した建築確認の二重チェック制度が始まった6月20日以降、約25%の建築物が不合格になっていたことが11月1日、分かった。耐震強度不足の物件はないものの、構造計算書と設計図面の不整合などが多かった。

ーーー

* バックナンバー、総合目次は 
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
  
項目別の索引も作成しました。

最近のコメント

月別 アーカイブ