2008年6月アーカイブ

LG Chem 6月24日、Kolon Industries から高吸水性樹脂(SAP)事業を87百万ドルで買収する契約を締結したと発表した。

工場は慶尚北道金泉市にあり、能力は7万トン。

LG Chem は原料のアクリル酸の韓国唯一のメーカー(能力16万トン)で、世界のSAPメーカーが能力拡大と原料への垂直統合を進める中で、この取引は両社にとって "win-win strategy" であるとしている。
また、買収を通じて事業拡大を図るという同社の目標の最初の目に見える成果であるとしている。

今後、能力を拡大し、アクリル酸とSAP事業の売上高を2015年までに1,500億円以上とする考え。
(現在の同社のアクリル酸の売上高は約300億円、
Kolon SAPの売上高は約 100億円)

同社では今後、アクリル酸やSAP事業で南米や中東の石化会社と提携する足がかりにしたい考えで、海外企業とのJV設立を検討している。

ーーー

Kolon グループは1957年に Korean Nylon を設立した。1969年にKorean Polyester を設立した。
1981年にそれぞれが改称していた Kolon (Nylon) Industries Kolon (Polyester) Industries が合併して Kolon Industries となった。

別途、Kolon グループは1976年にKolon Chemical を設立した。石油樹脂からスタートし、SAP、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂に拡大した。中国の蘇州にフェノール樹脂のJVを持っている。
2007年6月、
Kolon Industries と合併した。

現在、Kolon Industries Chemical Material 部門で繊維、産業資材、フィルム、エレクトロニック資材、エンプラを、Performance Material 部門で石油樹脂、SAP、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂を扱っている。

Kolon SAPでは世界の6番目のメーカー。
1985
年に韓国科学技術院と共同でSAPの製造技術を開発、1987年に仁川で商業生産を行なった。
1993
年に慶尚北道金泉市で製造開始、2002年に41千トンに増設、2007年に増設して70千トンとした。

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Kolon Industries と東レは1996年、金泉市に Kolon 70%、東レ 30%でポリアセタールの製造販売のJV KTP Industries を設立した。
東レ独自開発の簡略化された重合プロセス
を採用した。

本年6月6日、東レはKTPへの出資を解消したと発表した。
経営資源の集中による樹脂事業のコア
ABS樹脂、ナイロン樹脂、PBT樹脂、PPS樹脂等)での競争力強化および事業拡大戦略に鑑み、出資を解消することとしたもので、同社が生産するポリアセタール樹脂の日本市場向け販売については従来どおり、東レインターナショナルを通じて継続する。

 


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ニュースのその後

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2008/6/21 Hexion によるHuntsmanの買収、取り止めか   

Huntsman は623合併を邪魔したとしてHexionの親会社のApollo Management をテキサス州法廷に訴えた。

訴えによると、Apollo はライバルのBasell のオファーを退け、出来もしない約束をしたとし、その上で値下げ交渉をしようとしているとする。

Huntsman 30億ドルの損害賠償と、Basellに支払った違約金2億ドルのうちHexionが負担すべき1億ドルに加え、Huntsmanの事業、企業価値への損害額(金額未定)を求めるとしている。

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2008/1/7 韓国公正取引委員会、LDPEカルテルで6社に課徴金
   

韓国公正取引委員会は2007年4月、タイヤメーカー向け合成ゴムに関して2000年3月から2003年3月までの間、価格カルテルを行っていた錦湖石油化学と Seetec (旧 現代石油化学)に対し,是正命令と総額56億ウォンの課徴金を賦課する決定を行った。

錦湖石油化学の合成ゴムのシェアは68.7%、現代石油化学のシェアは22.2%であった。

更に本年6月、2000年以降、スチレンモノマー、トルエン、キシレン、エチレングリコールなど6種類の製品で価格の談合をしていたとして、石油化学企業8社に対し総額127億ウォン(約13億2300万円)の課徴金納付命令と是正命令を下した。

会社別の課徴金の額は以下の通り。
SKエナジー 48億3600万ウォン
GSカルテックス 28億7200万ウォン
サムスン・トータル 17億6800万ウォン
湖南石油化学 8億9800万ウォン
シーテック(旧現代石化) 8億4400万ウォン
大林コーポレーション 6億1900万ウォン
東部ハイテック 4億7100万ウォン
サムスン総合化学 3億9500万ウォン

2007年2月のHDPEとPPカルテル(課徴金 10社合計 1,051億ウォン134億円)、同12月LDPE6社合計 541億7,500万ウォン:約65億8,400万円)を含め、短期間に相次いで4件のカルテルが摘発された。

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2007/8/11 PPカルテル審決  

2000年5月30日に7社に公取委の立入検査が入った。うち3社は課徴金を支払ったが、4社は2007年8月の審決に対して東京高裁に控訴して未だに争っている。

公取委は2008年6月20日付けで、残り4社に対し課徴金納付命令を出した。
(通常はメーカーが審決を受諾した後で課徴金納付命令を出す。メーカーが控訴したが、とりあえず課徴金の算定結果が出たので納付命令を出したというもの。)

メーカー側は控訴中のため、8月20日の納付期限までに裁判の結果が出ない限り、当然争うものと思われる。

各社の課徴金は以下の通り。(青字が確定分)

  当初課徴金 審判課徴金 今回の命令
三井化学(グランドポリマー)  7億6008万円    
日本ポリケム  8億4517万円  2億2087万円  
チッソ  4億3513万円  1億1662万円  
出光興産      1億4215万円
住友化学      1億1716万円
サンアロマー         5097万円
トクヤマ         4781万円

日本ポリケムとチッソは当初の課徴金納付命令に対し審判を要求、その結果、課徴金計算終期の見直しで当初の命令より大幅減額を得た。(当初命令は2000年9月頃の「本件合意から離脱する旨等を他の各社に文書で通知」した時期までであったが、5月30日の立入検査までとした。)

4社についての計算も立入検査までの期間での計算と思われる。

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2008/2/6  SABICの中国進出 

SABICは本年1月31日、Sinopec との間で、50:50のJVを設立して天津にエチレン誘導品コンプレックスを建設する Heads of Agreement を締結したと発表した。

Sinopecは天津で年産100万トンのエチレンコンプレックスを建設中であるが、JVはここに、年産60万トンのPEと40万トンのエチレングリコールのコンプレックスを建設することとなっていた。

SABICとSinopecは6月21日、戦略的協力契約を締結し、両社のJVを天津に建設中の石化コンプレックス全体に拡大するとともに、SABIC Innovative Plastics の技術での原料によるポリカーボネート生産のFSを実施することとした。

調印には、主要産油国と消費国がサウジアラビアのジッダで開いた緊急閣僚会合に出席した中国の習近平副主席も立ち会った。

契約はまた、今後の中国での他の計画での協力なども行なうとしている。

SABIC Innovative Plastics の前身のGE Plasticsは、2006年にPetroChina とポリカーボネートの製造JVの設立交渉を行っていたが、2007年初めにこの計画を延期することを決めた。
その後の報道では、GE Plastics を買収したSABICは、同社がサウジでPC計画を進めているため、中国での計画をやる考えはないと言明していた。

2007/2/13 GE Plastics、中国のPC計画延期 

 


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住友化学は4月3日、東洋インク製造と合弁でサウジアラビア、タイ、中国にPPコンパウンド設備を追加すると発表した。

同社はPP事業のグローバル展開を進めている。サウジでSaudi Aramco とのJV PetroRabighで今秋完成を目指して建設を進めており、完成後はシンガポール、テキサス、千葉と合わせて世界4極、年産200万トン規模のPP供給体制が構築される。

これらを最大限に活かして、自動車用部品向けなどで需要が増加している PPコンパウンド事業について拡大を図る。

タイでは住友化学 55%、東洋インキ 45%出資のSumika Polymer Compounds Thailandを設立、年産11,000トンのPPコンパウンド設備をバンコク近郊に建設する。

中国では2006年に東洋インキとの合弁会社(住化55%)の珠海住化複合塑料有限公司が現地生産を開始しているが、11,000トンを増設し、年産22,000トンに増強する。

サウジアラビアでは住友化学 55%、東洋インキ 45%出資で Sumika Polymer Compound Saudi Arabia を設立し、PetroRabighプラントに隣接するRabigh Conversion Industrial Parkで年産10,000トンののPPコンパウンド設備を建設する。
アジア、アフリカ、欧州等の市場に向けて、原料から一貫した生産体制を構築する。

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サウジアラビアは人口増、高い失業率に悩んでおり、外資を導入して石油オンリーの経済を多角化しようとしており、新しいプラスチック加工のセンターになることを目指している。

Rabigh Conversion Industrial Park (CIP) Saudi Aramcoと住友化学がスポンサーとなって PetroRabigh に建設するプラスチック加工団地で、面積は240ヘクタール(うち70ヘクタールは用役、物流、共通施設用地)。

下記の利点を訴え、ニューヨーク、ロンドン、デュッセルドルフ、湾岸各地で誘致説明会を行なっている。

Rabigh Conversion Industrial Park の利点
  詳細
 http://www.rabighcip.com//?content=6#resinsandenergy 

1)PetroRabigh の競争力あるレジン  
   当面の生産品目:
    HDPE
LLDPEEPPEHomo PPRandom PPImpact PPMEGPO

2)政府が設定する安い電力料金 約 3.2 Cents/kWh

3)政府のインセンティブ
   外資
100%承認(JV含め国内投資と同様の扱い)
   損失の無期限繰越
   元本・利益・配当の自由送金
   法人税率20%頭打ち、等々

4)立地
   国際港湾の Jiddah
からハイウエーで180km
   大規模新都市
King Abdullah Economic City から15km
   欧州市場へのアクセス
 

5)サポートサービス
   電力、水、通信、保安、ビジネス支援等々
   


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Neste Oil 13日、オランダのRotterdam NExBTL技術で再生可能ディーゼルの製造工場を建設すると発表した。
能力は
80万トンで、670百万ユーロを投じ建設する。2011年完成の予定。

同社は再生可能ディーゼルの製造技術を開発し、フィンランドのPorvoo Refineryに2007年夏に第一工場を建設した。現在第二工場を建設中で、2009年に生産を開始する予定。能力はいずれも年産17万トン。

20085月にフィンランドで再生可能ディーゼル油(商品名:Neste Green Diesel)の一般販売を開始した。
NExBTLプロセスで製造した再生可能燃料を10%以上含んでいる。

同社は2007年11月にシンガポールでの工場建設を発表した。能力は80万トンで、2010年末に完成の予定。

同社は2005年7月にTotal S.A.と覚書を締結、NExBTL技術での大規模な再生可能ディーゼル工場を欧州のTotal の製油所内に建設することを検討することとした。

また2006年3月には、オーストリアのOMVとの間でOMV のSchwechat 製油所に20万トンの再生可能ディーゼル工場を建設する覚書を締結している。

同社は再生可能ディーゼルの世界のトップ企業になることを目標としている。.

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NExBTLは〔NExt generation Biomass To Liquid diesel〕の略で、ヤシ油、ナタネ油、獣脂のミックス(混合比率は自由)を原料にし、水素化精製技術を適用して軽油に相当する炭化水素油燃料を製造する。

製造過程においては、燃料として利用可能なガスやガソリン相当燃料以外の副生物が発生しないという特徴がある。

また、輸送用燃料としてのNExBTL には、以下の特徴がある。
・ 軽油と比較してセタン価が高い(軽油:45~55、NExBTL:84~99)。
・ PM の原因となる硫黄分やアロマ分をほとんど含まない。
・低温流動性の調整が容易である(流動点範囲:-30~5℃)。
・高濃度での軽油への混合が可能である(混合率65%程度まで)。
・ 貯蔵安定性に優れる。

全てのディーゼルエンジンに使用できる。

 

NExBTLの概要は以下の通り。

参考  2008/5/9 木くずからバイオディーゼル  


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Bhopal 事件のその後

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1984年12月にインドのBhopal Union Carbide 工場から有毒ガスが漏れ、その夜のうちに3,000人が死亡し、最終的に2万人以上が死亡した事件で、被害者や支援者が政府の対応を求めたデモが続いている。支援者は617日を行動と連帯のNational Day とし、全国で抗議活動を行なった。

米国下院の16名の議員もインドのSingh 首相に、この運動を支援するレターを出した。

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Bhopal Union Carbide 工場では殺虫剤のカルバリル(Carbaryl)を製造していた。この中間体のmethyl isocyanateMIC)はホスゲンから製造するが、MICタンクに水が混入し、大量の有毒ガスが発生し、ガス洗浄装置が修理のため停止していたため、有毒ガスが漏れ続けた。 

その夜のうちに3,000人が死亡し、最終的に2万人以上が死亡した。

現在もなお工場から漏れ出した化学物質による周辺住民への健康被害が続いており、10万人が慢性疾患で苦しんでいる。また、Union Carbide への訴訟や責任問題が未解決である。

Union Carbide CEOは大規模な殺人事件の主犯とされたが法廷での審理に出席せず、インド政府は犯罪人引渡条約を締結している米国に引渡しを求めたが、引渡しは行なわれていない。

Union Carbide は2001年にDowに吸収合併された。

インド国営石油会社(IOCL)のエチレンコンプレックス建設時にEGについてダウ技術を採用したが、国民の間から"Don't fill your car with Bhopali blood" としてIOCLのガソリンの不買運動が起こった。反対運動家がこの技術がUCC技術であることを見つけ出し、IOCLと政府に伝えた結果、IOCLは2005年にダウとの契約を破棄している。

2006/6/5 インドのエチレン計画 

 

2006年4月、Amnesty International Singh 首相に公開書簡を送った。

現在まで、このガス漏出と、人々と環境に影響を及ぼし続けるような悲惨な結果について、誰の責任も追及されていない。

汚染された工場跡地はいまだに浄化されていない。その結果、有毒廃棄物が環境を汚染し続け、周辺地域が頼っている水を汚染している。
インド最高裁は2004年5月に州政府に対して、清潔な水を提供するようにとの命令を出したが、州政府はいまだに命令に完全には応じていない。

ニューデリーでの化学肥料省の前で平和的にデモを行っていた300人の抗議者が拘禁された。少なくともそのうち2人の被害者は、警察に暴行され入院が必要になったと言っている。

以下のことを訴える:
最高裁の命令に従い、被害を受けた地域に十分で安全な家庭用水の永続的な供給を保証すること;
地下水と環境への更なる害を防ぐために迅速な工場敷地の浄化を保証すること;
上記のデモ参加者への警備について迅速、公平で徹底した透明性のある調査を行い、警察による武力の使用が国内法と国際基準との整合性がとれているかを調査し、過度の武力の行使に関与したとされる人物は、責任を負うことを保証すること。

しかし、まだ水の供給は行なわれていない。

現在、被害者と支援者は次の2点を政府に要求している。

・対策委員会を設置し、30年間にわたって医療や経済・社会・環境面のリハビリを行なう資金を確保
Dow Chemical Union Carbide に対するリーガルアクション

政府からは何の反応もなく、69日には座り込みをしていた被害者がデリー警察に逮捕され、今も23名が拘束されたままとなっている。

米国下院の16名の議員が65日付けで Singh 首相に、この運動を支援するレターを出した。Ted Kennedy 上院議員の息子のPatrick Kennedyも含まれている。

事故から20年以上経つが、Bhopal では毒物汚染で毎月10-30名が死亡し、15万名が長期の健康被害に苦しんでいる。毒ガスの影響は次世代にも被害を与える。

2004年の最高裁の命令にもかかわらず、25千人が汚染された水を飲んでいる。
工場跡地はまだクリーンアップされておらず、環境を汚染し、飲み水を汚染している。

更に毒ガス漏れやその影響について誰一人責任を問われていない。Union Carbide Dow Chemical の役員が裁かれていないのはひどい。被害者は抗議や訴訟で繰り返し要求しているが、効果がない。
インド政府は
Union Carbide Dow Chemical の民事・刑事責任を追及することを望む。

海外での米国企業の行動(特に環境面)は我々の長い間の懸念である。

被害者たちは社会・経済・医療リハビリや汚染土壌のクリーンアップを行い、飲み水を提供する資金付きの対策委員会設置を求めており、当然のことだ。
インド政府がこれに応じることを望む。

我々はBhopalの人びとを支援する。首相には是非、被害者たちと会い、要望を聞いてほしい。

 

このほか、世界中から支援の声とSingh 首相への対応要請が出されている。

1991年に、社会主義型計画経済を取り込んだ「混合経済」が行われていたインドが、保有外貨が底をついてデフォルト寸前の経済危機に落ち込んだ際に、産業・貿易の許認可制度を撤廃、公営企業が独占していた産業への民間参入、関税引き下げ、外国企業の出資制限の緩和などの広範な改革を行ない、今の経済発展につなげたのが、当時財務相であった Singh 首相である。

本件に関して首相が全く動かないのは理解できない。


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三井物産の米国のベンチャー投資会社 Mitsui & Co. Venture Partners (MCVP) と米国投資会社 Sanderling Ventures は共同で出資しているバイオベンチャー企業のActimis Pharmaceuticals, Inc. Boehringer Ingelheim に売却することとなった。

売却は同社の喘息薬AP768の開発度合いに応じて行なわれる。現在phase I の臨床開発段階であるが、phase III まで進めば100%売却となり、売却額は515百万ドルとなる。

AP768は、喘息やアレルギー性鼻炎治療の新たな標的であるCRTH2(マウスTH2細胞に発現する化学誘引物質共役型受容体)に作用する化合物で、現在実施中のフェーズⅠに先立つ前臨床試験では、複数の動物モデルにおいて、現在市販されているロイコトリエン受容体拮抗薬と比べて、より有効性の高い作用機序であることが示唆された。

Boehringer Ingelheim では呼吸器系領域での研究開発に強みを発揮してきており、今回の買収はこれを補完するもの。

Actimis Pharmaceuticals, Inc. の元はバイエル薬品中央研究所の喘息領域部門。

バイエル薬品中央研究所は関西文化学術研究都市の木津南地区にあり、設立間もなくの1997年から喘息領域に取り組んでいた。

Bayer Healthcare 2003年12月Berkeley (米国カリフォルニア州)で行っているバイオテクノロジー研究の組織を縮小再編し、さらにバイエル薬品中央研究所を閉鎖すると発表した。

中央研究所の泌尿器系疾患研究はWuppertal (ドイツ)へ移管し、コア領域以外の開発候補品については、ライセンスパートナーを探すとした。

Bayer Healthcare は当時、感染症、循環器系リスクマネジメント(糖尿病、肥満を含む)、泌尿器系疾患のコア領域に焦点を絞る、また癌研究は大きな課題と可能性をもつ新領域と考えていると発表している。

Actimis Pharmaceuticals 、2004年11月に元バイエル薬品中央研究所の喘息領域主席研究員 Dr. Kevin Bacon が中心となり、Bayer Healthcare AG からスピンオフした。
20054月に600万ドルの増資を行い、Sanderling VenturesMCVPが引き受けた。MCVP の出資比率は2-3割程度とみられる。

新薬開発に一定のメドが立ったためBoehringer 傘下で実用化を目指すこととなった。 

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参考

バイエル薬品は日本シェーリングの経営統合に伴い2007年12月に神戸リサーチセンターも閉鎖した。

同センターの研究チーム(桜田一洋センター長ほか)は山中伸弥京大教授らが06年8月にマウスiPS細胞の作成を発表した直後から、ヒトでの研究を始め、山中教授らのチームより早く、ヒトの「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」を作成し、特許出願も完了していると伝えられた。

桜田センター長はその後、米ベンチャー企業が2007年に設立したiPS細胞による医薬品スクリーニング会社 iZumi Bio, Inc. の最高科学責任者(CSO)に就任している。


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サウジのSipchem の石油化学計画については2月に報告した。

同社はAl-Jubail で、第1期として無水マレイン酸とメタノール、第2期として酢酸、VAMを建設したが、第3期として、エチレン100万トンにプロピレン、PEPPANMMMA、カーボンファイバーなど多岐にわたる誘導品を製造するもので、三井物産やIneosSABICなどの参加も噂された。
70億ドルを投じるもので、2011年の生産開始を予定していた。

    2008/2/29 サウジ Sipchem の石油化学計画

同社がエチレンとプロピレンのクラッカー建設を取り止めたと報じられた。LDPE、HDPE、PP計画も取り止める。

中東の石化プラント建設ラッシュで建設業者が確保できず、スケデュールやコストに狂いが出たこととファイナンス問題が理由とされている。

同社はエチレン、プロピレンをAl-Jubail の他のメーカーから購入し、付加価値製品の生産に専念する。
計画されている製品には、EVA
ACNMMAPMMA、ポリアセタール、PVA、青酸ソーダ、カーボンファイバーがある。

Al-Jubail には多くのクラッカーがあり、能力に余裕があるため、Sipchemにエチレン、プロピレンを供給するのに特に新規投資を必要としない。

中東では石化ブームで建設費は異常に高騰している。
PetroRabigh の建設費は予想の43億ドルから85億ドルに上昇したが、2007年5月に発表されたAramco/Dow Ras Tanura 計画は当初 100億ドルと想定された建設費が、220億ドルに達すると見られている。
2007年2月にはカタール石油  ExxonMobil が建設費高騰のためGTLプラントの建設を取り止めることを決めた。

    2007/4/19 中東の石化計画、建設費アップが重大問題に 

 


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Borden Chemical 等が合併して設立されたHexion Specialty Chemicals (投資会社Apollo Management の100%子会社)が、2007年7月、借入金込みで106億ドルで Huntsman を買収する契約を締結した。Basellとの契約を破棄しての契約締結であった。

Basellは買収価格の引き上げを拒否、「Hexion は買収の認可を受けるのに長期間を要しよう」とし、「取引完了までに不確定要素もあり、Basellとしては推移を見守りたい」とした。
Basellは違約金2億ドルを受け取った。
Hexion は合併が実現すれば、このうち1億ドルを負担することとなっている。

    2007/7/14 Hexion、Huntsmanを106億ドルで買収   


上記記事では、Hexion と Huntsman には重複事業はなく、独禁法上の問題があるとは思えない、と述べた。

しかしFTCの審査は時間がかかっており、昨年10月に両社は追加資料を求められている。
このため、 Hexion
本年4月に契約打切り期限を78日まで延長している。

Hexionは6月18日、この買収契約が実行不能であると宣言する訴えを裁判所に提出したと発表した。
損害賠償や違約金の義務がないという決定を求めるもの。

Huntsman の負債が増加したこと、同社の事業が悪化し収益が低下していることを理由とし、契約上の「重要な悪影響」に相当するとしている。

Huntsman の本年第1四半期の純損益は前年同期の46.6百万ドルから7.3百万ドルに下落し、EBITDA(税引前利益+支払利息・減価償却費)も242百万ドルから169.5百万ドルに下がっている。
一方、
3月末の長期債務は昨年末の1,975百万ドルから2,265百万ドルに13%増加している。

両社は個別にはやっていけるが、合意した資本構造で借入金を増やして合併を行なえば立ち行かなくなるとし、銀行が必要資金の融資に応じないだろうとしている。

これに対し、
Huntsmanは19日に声明を発表、Hexion の行動は契約に反するもので、同社としてはあくまで契約の実行を求めるとしている。
融資予定の Credit Suisse Group Deutsche Bank は何も発表していない。

ーーー

合併契約には、銀行が融資をしない場合に、Huntsman Hexion に対し銀行を訴えさせる権利を有しており、それで得た賠償金はHuntsman に与えられることとなっている。

また、契約では特定の事情の場合に違約金324百万ドルを払うこととなっている。

Hexion の今回の訴えは「重要な悪影響」を理由にこれらの免除を求めるもの。

ーーー

Huntsman の株価はHexionの発表を受け、$12.50から $8.36 に下落した。

Basell は1株 25.25ドル、負債込みで96億ドルで契約したが、Hexion は昨年79日に1株28ドルに引き上げ、負債込み 106億ドルでこれを奪い取った。
米国でサブプライムローンの問題が表面化し、世界的な信用収縮不安で投資家がリスク資産から資金を引き揚げる動きが始まる直前である。

アナリストは、この取引は買収ブームのピークのもので、Huntsman の価値を過大評価しているとする。今の状態なら、$13 $15が妥当だろうとしている。

ーーー

なお、Hexionは今回の訴えとは切り離し、FTCほかの承認を求める運動は続けるとしている。

但し、延長した契約打切り期限の78日までにFTCの承認が得られない場合は、契約打切りになると思われる。
(その場合の条件は不明)

付記

Huntsman 623日、Hexion の親会社を合併を邪魔したとして訴えた。

損害賠償として30億ドルに、Basell に払った違約金の半分1億ドル及び企業価値に与えた損害に対する賠償(金額不明)を求めている。

 


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日中両政府は18日、懸案になっていた東シナ海のガス田開発問題で合意した。

1.日中の中間線をまたぐ北部の海域(龍井ガス田の南)に「共同開発区域」を設定。
  採掘場所を共同探査で絞り込む。収益配分の方法などは今後の交渉で決める。

  東シナ海のその他の海域における共同開発をできるだけ早く実現するため、継続して協議を行う。

2.春暁ガス田については日本法人が出資、日本が一定の権益を確保する。
  (中国の海洋石油資源の対外協力開発に関する法律に従って)

付記

日中の東シナ海ガス田協議で、龍井(日本名:翌檜)を共同開発の対象としないことで合意していたことが20日、分かった。
日中ともに単独開発も行わず、翌檜は事実上放棄される。
翌檜は〈1〉中国と韓国の境界の基準となる「中間線」〈2〉日韓大陸棚共同開発区域――に近接しており、開発すれば韓国と摩擦を生じかねないと判断、韓国に配慮した。

2004年6月に中国が日中中間線近くでガス田の開発に着手したことが表面化し、日本が抗議してから4年を経て、問題は一応の決着を迎えることになった。
(平湖ガス田は上海天然気公司
1998年から生産を開始しており、上海まで389kmのパイプラインでガスを送っている。)

 

問題の発端は、東シナ海での境界が未画定であることである。

国連海洋法条約には境界について次の2つの規定がある。

  第15条では「中間線」としている。

二の国の海岸線が向かい合っているか又は隣接しているときは、いずれの国も、両国間に別段の合意がない限り、いずれの点をとっても両国の領海の幅を測定するための基線上の最も近い点から等しい距離にある中間線を越えてその領海を拡張することができない。ただし、この条の規定は、これと異なる方法で両国の領海の境界を定めることが歴史的権原その他特別の事情により必要であるときは、適用しない。

  第77条は「大陸棚に対する沿岸国の権利」を認めている。

1  沿岸国は、大陸棚を探査し及びその天然資源を開発するため、大陸棚に対して主権的権利を行使する。
2  1の権利は、治岸国が大陸棚を探査せず又はその天然資源を開発しない場合においても、当該沿岸国の明示の同意なしにそのような活動を行うことができないという意味において、排他的である。
3  大陸棚に対する治岸国の権利は、実効的な若しくは名目上の先占又は明示の宣言に依存するものではない。
4  この部に規定する天然資源は、海底及びその下の鉱物その他の非生物資源並びに定着性の種族に属する生物、すなわち、採捕に適した段階において海底若しくはその下で静止しており又は絶えず海底若しくはその下に接触していなければ動くことのできない生物から成る。

  このほか、「衡平の原則」(Equitable Principle) がある。

北海大陸棚事件(西ドイツ対デンマーク、西ドイツ対オランダ、1969年判決)で国際司法裁判所は、大陸棚を「陸地領土の延長又は連続」と定義し、これを根拠に大陸棚を沿岸国領域の一部とみなしうる、と判断した。
大陸棚の境界画定の原則については、衡平の原則に従い、かつすべての関連ある状況を考慮に入れて、各当事国の合意によって決定されるものとした。

点線が「等距離原則」によるドイツの領域、
国際司法裁判所は「衡平の原則」により赤色の線内をドイツの大陸棚と設定した。

日本は国際司法裁判所の判例などに照らして「重なる場合は中間線が境界」と主張してきた。
一方、中国は、大陸棚の資源開発などには沿岸国の主権的権利が及ぶとする
同条約の「大陸棚自然延長論」を主張、「沖縄トラフ」が境界だとしている。

国際裁判の判例は、1960年代までは大陸棚の自然延長論を採用した例もあったが、80年代からは、「等距離原則」が定着している。

日本は国際司法裁判所や国連海洋法裁判所に付託する事を中国に要請しているが中国はこれに応じていない。

中国側が開発する4つのガス田、春暁(日本語名白樺)、断橋(楠)、天外天(樫)、龍井(翌檜:アスナロ)はいずれも中間線の中国側にあるが、2005年4月に経産省が「白樺」「楠」「翌檜」の地質構造が中国側と日本側でつながっているとの調査結果を発表、日本側のガスを吸い上げているとして中止を要求した。

また、これまで日本側海域での採掘は控えていたが、2005年7月に中国側に対抗して、帝国石油に中間線の日本側海域でのガス田試掘権を付与した。(安全保障面や経済面等で政府側との調整が進んでない)

今回の合意は、境界画定を棚上げした形で決着した。

ーーー

今回の合意には多くの問題が指摘されている。

1.境界画定を棚上げ

付記

日中共同プレス発表は次の通りで、添付地図からは双方主張の境界線が消されている。

日中双方は、日中間で境界がいまだ画定されていない東シナ海を平和・協力・友好の海とするため、2007年4月に達成された日中両国首脳の共通認識及び2007年12月に達成された日中両国首脳の新たな共通認識を踏まえた真剣な協議を経て、境界画定が実現するまでの過渡的期間において双方の法的立場を損なうことなく協力することにつき一致し、そして、その第一歩を踏み出した。今後も引き続き協議を継続していく。



2.「共同開発区域」の設定と春暁ガス田への日本法人の出資が決まっただけで、詳細はすべて今後協議。
  いずれも「早期に締結すべく努力する」としている。

  「共同開発区域」はガスの存在は不明。
  中間線より日本側海域の方が中国側より面積が広い(日中関係筋)。

  春暁出資は中国の海洋石油資源の対外協力開発に関する法律に従って行なうとなっており、中国の事業への参加に過ぎない。
  (春暁などには2003年8月に
ShellUnocal 20%ずつ権益を取得した。
   
20049月に「商業上の理由」で撤退した。)

3.断橋(楠)、天外天(樫)、龍井(翌檜)には触れず。
  「東シナ海のその他の海域における共同開発をできるだけ早く実現するため、継続して協議を行う」としている。
     龍井(翌檜)については上の付記参照
  

4.採掘可能埋蔵量は少ない。

  中国側によると、東シナ海全体のガス田の埋蔵量は石油換算で1.8億バレル。
  日本が出資する白樺の埋蔵量は6,380万バレルで、日本で消費する石油・天然ガスの約10日分。

ガス田名 採掘可能埋蔵量
(石油換算)
白樺(春暁)  6,380万バレル
楠 (断橋)  1,520
樫 (天外天)  1,260
翌檜(龍井)  不明

5.ガス運搬問題

  日本までのパイプライン(600km) は事業採算は合いにくいとみられる。
  (平湖ガス田~上海のパイプラインで中国に運ぶ案が有力)

ーーー

注. 日韓大陸棚共同開発
1978年6月22日に発効した日韓大陸棚協定(2つの協定の通称)の②によるもの。
韓国が日韓中間線を超えて南側の東シナ海の大陸棚及び沖縄舟状海盆の一部に鉱区を設定したことが契機となった。

①「日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚の北部の境界画定に関する協定」(略称:北部協定)
  北緯33度付近から36度付近にかけての両国の大陸棚の境界を画定したもの。
  境界線は対馬海峡西水道を通過するが、両国の領海基線に対してほぼ中間線となっている。

②「日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚の南部の共同開発に関する協定」(略称:南部協定)
  境界画定を棚上げして石油・天然ガス資源の共同開発についてのみ細目にわたり協定した。
  50年の最低効力期間を設けている。


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水俣病の未認定患者の新救済策がチッソの拒否で膠着状態になっているのに対応するため、自民党の水俣問題小委員会は6月10日、チッソの分社化の素案をまとめた。

しかし、与党水俣病問題プロジェクトチームは17日の会合で、チッソの分社化の検討より、「未認定患者の救済策実現を優先させる」との認識で一致し、問題の全面解決に向け、訴訟を起こしている団体に対し和解を働き掛けていく方針を確認した。

2007/11/23 チッソ、与党プロジェクトチームの水俣病未認定患者の新救済策を拒否 

2008/5/31 チッソの弁明 

 

自民党の水俣問題小委員会(園田博之委員長)は10日、チッソの分社化を進める「公害健康被害補償金等の確保に関する特別措置法」の素案をまとめた。

液晶で好業績を続けるチッソを新会社に衣替えさせることで補償への不安を解消、同社の新たな負担を伴う与党プロジェクトチームの未認定患者救済案の受け入れを促すのが狙い。

法案の骨子は以下の通り。

公害被害の補償で多額の債務がある事業者に債務支払いと事業とを別法人で行わせ、収益力を高めて債務履行を完遂させることを目的とする
   
事業者は患者補償や公的支援の債務返済、地域経済への支障を及ぼさない再編計画を作成し環境相による認可を受けなければならない
   
新規事業会社の株式譲渡には環境相の承認を必要とし、譲渡益は公的支援を行っている自治体に納付。自治体はこれを積み立て、補償債務支払いを引き受ける
   
事業者と自治体は債務引き受けに関する協定を締結できる。締結には環境相と自治体議会の承認を必要とする
   
再編で新たに生じる登記諸税や法人事業税などは免除。欠損金処理に関する特例措置も設け事業者負担を軽減する
   

チッソの事業部門を100%子会社化して上場・独立させ、現在のチッソは補償部門だけを担う親会社とする内容。
上場後の株式売却益で約1500億円の公的債務と約400億円の金融機関に対する債務に加え、将来も続く患者補償を担う。
親会社は当面、子会社の株式配当益で補償業務を担い、3年後をめどに株式を他者に全面譲渡、譲渡益を熊本県に納付して補償業務を委ね、清算するとしている。

園田氏は「患者補償の安定した財源を確保し、膨大な公的債務を早期返済できる土台づくりのためだ。チッソの業績が好調な今でないと時機を逸する」と語った。

園田氏は、「課題は二つ。一つは将来の患者補償も含め、チッソが負うおおよその債務を確定できるか。もう一つは、その債務を十分上回る評価が株式市場で得られるかどうかだ」としている。

小委員会では、譲渡益(税金免除)は2000億円以上が見込まれると想定している。

「株売却で株が別の資本の手にわたり、水俣工場がなくなるのでは」という地域の不安の声に配慮し、「債務返済、地域経済への支障を及ぼさない」とした。
また、分社化しても、債務がほぼ固まらないと株は売却しないとしており、
株式譲渡には環境相の承認を必要」とした。

チッソは未認定患者による訴訟も抱え、補償費用がさらに膨らむ可能性がある。親会社清算後に新たな負担が生じた場合にどうするかという問題がある。

売却益について、大手証券会社関係者は「見込みを上回る可能性もあるが、素案に『地域への配慮』が盛り込まれたことなどは譲渡益が減るリスクでもある」と指摘している。

ーーー

この案では、補償業務を熊本県が引き継ぐ形となり、公害の汚染者負担(PPPの原則)を揺るがしかねないとの批判が強い。
汚染者負担の原則(PPP)を貫くためとして、国と熊本県は32年間公的支援を続けてきたが、子会社株売却後には親会社は清算するため、加害企業が消滅することになる。

鴨下一郎環境相は13日、「分社化によって水俣病の責任の所在が不明瞭になることを心配している」と懸念を表明、「訴訟もあり、将来的に債務がどの程度になるのかが不透明な間に、分社化が進んでいくのはどうなのか」と述べた。

2000年の抜本策作成に加わった熊本県職員は、「チッソの存続自体、市場原理を逸脱した公的支援が前提」と指摘、「道義的責任を有するが故に存続しているチッソの分社化構想は、倒錯した企業倫理観を改めて印象づける」とし、「分社化の本質は、過去の責任との決別であり、それは許されない」としている。

チッソなどを相手取り係争中の水俣病不知火患者会(約2100人)と水俣病被害者互助会(約150人)は、「被害者救済が最優先。加害企業が形を変えて延命するのは許されない」との共同声明を発表した。

 

17日の与党水俣病問題プロジェクトチーム会合では分社化法案を公明党や県、県議会に説明した。

県議会などからは分社化の議論が救済策より先行することへの批判が噴出した。
公明党は、分社化法案も「白紙から検討する」としたが、あくまで「救済策実現による全面解決のめどを立てた上での話」とクギを刺した。

未認定患者のうち約3400人が与党救済策の受け入れを表明する一方、約1500人はそれを拒み国家賠償請求訴訟を起こしており、全面解決の枠組みはできていない。

プロジェクトチームは、チッソの分社化の検討より、「未認定患者の救済策実現を優先させる」との認識で一致し、問題の「全面解決」に向け、訴訟を起こしている団体に対し和解を働き掛けていく方針を確認した。
園田博之座長は「分社化法案の結論は、全面解決のめどが立たないと出せない。裁判に訴えておられる方に、話し合い解決を求めていく」と話した。

 

日弁連の水俣病問題検討プロジェクトチームは未認定患者の実態調査を行なっている。日弁連は、与党プロジェクトチームの未認定患者の新救済策を「不十分な内容」と批判し、現行の認定基準見直しを含めた総合的な救済施策を求めている。今秋にも実態調査の結果をまとめ、国や熊本県に不知火海沿岸住民の健康調査を迫る考え。


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2008年6月3日に「中東のアルミ事業」を書いたが、サウジの2件の新しいアルミ計画が明らかになった。

  出資者 内容 予算  
Sino-Saudi Jazan Aluminum
(Jazan Economic City)
Chalco(China)40%
MMC(Malaysia)20%
Binladen Group20%
Other Saudi investors20%
アルミ 100万トン $3 billion 2007/11 契約締結
2008/4Q 着工
Chalco(China)20%
MMC(Malaysia)50%
電力 1,860MW $2 billion
(King Abdullah Economic City) Emal International
(Dubai Aluminium/
Mubadala Development
)
アルミ 70万トン
発電
$5 billion 2008/1 契約

 

1.Sino-Saudi Jazan Aluminum

Aluminum Corporation of China Limited (Chalco) 2007年11月、マレーシアのMMC International Holdings、サウジのBinladin Group との間で、サウジでアルミ精錬工場を建設する基本契約を締結した。

立地はSaudi Arabian General Investment Authorityがサウジの南西端のYemen との国境近くにある紅海沿岸のJazan (中心都市はJizan)に建設中のJazan Economic Cityである。

出資はChalco(China)40%MMC(Malaysia) 20%サウジのBinladen Group20%サウジの投資家が残り20%となっている。
能力は100万トンで、予算は30億ドル、2008年第4四半期に着工する予定。
Chalco が技術供与を行い、原料アルミナを供給する。
Saudi Arabia General Investment Authorityが支援を行なう。

Chalco (Aluminum Corporation of China) はアルコアと共同でRio Tinto に出資している。

   2008/2/8 中国アルミとアルコア、Rio Tinto に出資 

MMC International Holdings はマレーシアの投資会社で、輸送、エネルギー、建設等を中心としている。

Saudi Binladen Group はサウジ最大の建設業者で、モスク、空港、道路、電力、通信等の大型公共工事及びそのメンテナンス分野を得意としている。サウド王家と特別な関係を保っている。

Usama Binladin はグループ創始者の Sheikh Mohammed Binladen の息子の一人。
(一族はUsama を破門し、サウジ政府も国籍を剥奪している)

発電所(1,860MW)も同時に建設される。
これには MMC 50%を出資、Chalco 20%を出資する。予算は20億ドル。

Jazan Economic City Master Plan

2.Emal International

Dubai Aluminium Company (Dubal) Abu Dhabi Mubadala Development JVEmal International はサウジで建設中のKing Abdullah Economic City にアルミ精錬工場を建設する。

Dubal Dubai政府100%所有で、Abu Dhabi 政府 100%所有のMubadala Development と組んでAbu Dhabi Emirates Aluminium を建設しており、AlgeriaでもBeni Saf aluminium smelter を建設中。

2008年6月3日 「中東のアルミ事業」 

Emal International 本年1月に、King Abdullah Economic City 建設のために設立されたEmaar the Economic City との間で契約を締結し、Saudi Arabian General Investment Authority の承認を受けた。

投資額は50億ドルで、能力は70万トン、所要の発電も行なう。

ーーー

King Abdullah Economic City 建設計画は2005年に発表されたもので、Rabighの南の紅海沿岸 35kmに渡って、港湾、 Industrial ZoneCentral Business DistrictEducational ZoneResort DistrictResidential Communities からなる50万人都市を新たに建設し、PetroRabigh 計画と並んで、サウディ西岸の産業振興・経済活性化の牽引役にしようというもの。

Saudi Arabian General Investment Authority が開発を統括し、ドバイの大手ディベロッパーEmaarが企画を担当、Emaar社と地元資本とのJ/V Emaar the Economic City 開発主体となる。

総投資額は
SR130 billion (350億ドル)を超える。

Industrial Zone の中心がEMALによるアルミ精錬と、フランスのTotal と現地資本の潤滑油JV Saudi Total Lubricants Company (Satlub) となる。

King Abdullah Economic City Master Plan

 


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BPは6112008年版 Statistical Review of World Energy を発表した。

石油、天然ガス、石炭、原子力、水力発電及びこれら合計の一次エネルギーについて、世界各国の需給、能力の過去からの統計と解説を毎年発表している。

   http://www.bp.com/genericarticle.do?categoryId=2012968&contentId=7045418

ーーー

(一次エネルギー)

2007年の世界の一次エネルギー消費は前年比2.4%増となった。

体の消費のうち、アジア太平洋が1/3を占め、前年比でも5%増加している。
日本は -0.9%だが、中国は7.7%の増加、インドも6.8%の増加となっている。
中国は2002年から需要が急増している。インドも日本の需要に近づいている。

ECは-2.2%となった。うちドイツは-5.6%で世界で最大のマイナスとなっている。

各地域の一次エネルギー内訳は以下の通り。前年比では石炭の伸びが大きい。        

一次エネルギー消費   (単位:百万トン-石油換算)
  2006 2007 増減 シェア             2007年 内訳
 石油 天然ガス  石炭 原子力  水力  合計
北米   2,794.0   2,838.6   1.6%   25.6%    1,134.7   728.9   613.3   215.6   146.2   2,838.6
中南米    533.0    552.9   3.7%   5.0%     252.0   121.1    22.4    4.4   153.1    552.9
欧州&ユーラシア   3,009.7   2,987.5   -0.7%   26.9%     949.4  1,040.1   533.7   275.6   188.6   2,987.5
(EC)  (1,783.4)  (1,744.5)  (-2.2%)  (15.7%)    (703.9)   (433.7)   (317.9)   (211.7)   (77.3)   (1,744.5)
中東    557.3    574.1   3.0%   5.2%     293.5   269.4     6.1   ー    5.1    574.1
アフリカ    328.3    344.4   4.9%   3.1%     138.2    75.2   105.9    3.0   22.2    344.4
アジア太平洋   3,620.7   3,801.8   5.0%   34.3%    1,185.1   403.1  1,896.2   123.4   194.0   3,801.8
(日本)   ( 522.3)   (517.5)  (-0.9%)   (4.7%)    (228.9)   (81.2)   (125.3)   (63.1)  ( 18.9)    (517.5)
(中国)  (1,729.8)  (1,863.4)  ( 7.7%)  (16.8%)    (368.0)   (60.6) ( 1,311.4)   (14.2)  (109.3)   (1,863.4)
合計  10,843.0  11,099.3   2.4%  100.0%    3,952.8  2,637.7  3,177.5   622.0   709.2  11,099.3
                        (2006年内訳)  3,910.9  2,558.3  3,041.7   634.9   697.2  10,843.0
                        (増減)    41.9    79.4   135.8    -12.9   12.0    256.3

 

(石油)

石油の生産は前年比 -0.2%となった。2002年以降でマイナスは初めて。
OPECが減産で -1.2%となった。サウジ(-4.1%)の減産が大きい。中南米ではベネズエラが -7.2%となっている。
逆に旧ソ連が増産となった。うち、
Azerbaijan 31.7%大幅増となった。

生産は前年比マイナスとなったが、消費は1.1%増となった。
アジアでは日本の消費は前年比マイナスだが、中国は
4.1%の増となった。 

石油
     生産量 (千バレル/日)       消費量(同)
2006 2007 増減 シェア   2006 2007 増減 シェア
北米   13,732   13,665   -0.5%   16.5%    24,904  25,024   0.4%   28.7%
中南米   6,866    6,633   -3.6%    8.5%     5,225   5,493   5.0%   6.4%
欧州&ユーラシア   17,600   17,835   1.5%   22.0%    20,477  20,100   -2.0%   24.0%
中東   25,589   25,176   -1.8%   30.8%     5,949   6,203   4.4%   7.4%
(サウジ)  (10,853)  (10,413)  (-4.1%)  (12.6%)    (2,005)  (2,154)   (7.2%)   (2.5%)
アフリカ    9,995   10,318   3.2%   12.5%     2,824   2,955   4.6%   3.5%
アジア太平洋    7,877   7,907   0.3%    9.7%    24,851  25,444   2.3%   30.0%
(日本)            (5,224)  (5,051)  (-3.5%)   (5.8%)
(中国)   (3,684)   (3,743)   (1.6%)   (4.8%)    (7,530)  (7,855)  ( 4.1%)   (9.3%)
合計   81,659   81,534   -0.2%  100.0%    84,230  85,220   1.1%  100.0%
(OPEC)  (35,560)  (35,204)  (-1.2%)  (43.0%)          
(旧ソ連)  (12,318)  (12,804)   (3.9%)  (16.0%)          

 

(天然ガス)

北米とアジアの需要の伸びが大きい。特に中国の需要は19.9%の伸びとなった。

天然ガス
     生産量 (10億m3)       消費量(同)
2006 2007 増減 シェア   2006 2007 増減 シェア
北米   754.4   775.8   2.9%   26.6%     761.4   801.0   5.2%  27.6%
中南米   147.2   150.8   2.5%   5.1%     131.3   134.5   2.5%   4.6% 
欧州&ユーラシア  1,076.3  1,075.7   -0.1%   36.5%    1,151.5  1,155.7   0.4%  39.4%
中東   339.0   355.8   4.9%   12.1%     291.4   299.4   2.7%  10.2%
(サウジ)  ( 73.5)  ( 75.9)  (3.3%)  ( 2.6%)    ( 73.5)  ( 75.9)   (3.3%)  ( 2.6%)
(イラン)  (108.6)  (111.9)  (3.0%)  ( 3.8%)    ( 108.7)  ( 111.8)   (2.9%)  ( 3.8%)
アフリカ   181.6   190.4   4.8%   6.5%      77.9    83.5   7.2%   2.8%
アジア太平洋   373.7   391.5   4.8%   13.3%     420.9   447.8   6.4%  15.3%
(日本)            ( 83.7)  ( 90.2)   (7.8%)   (3.1%)
(中国)   (58.6)   (69.3) (18.4%)   (2.4%)    ( 56.1)  ( 67.3)  (19.9%)   (2.3%)
合計  2,872.2  2,940.0   2.4%   100.0%    2,834.4  2,921.9   3.1%  100.0%
(旧ソ連)  (780.0)  (790.2)  (1.3%)  (26.8%)    (624.1)  ( 631.9)  ( 1.2%)  (21.6%)

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Dow Chemical 10日、タイのSiam Cement Group (SCG)とのJVSCG-Dow Group がタイでPO工場の建設に着手したと発表した。

Dow BASF が共同開発した過酸化水素法PO(HPPO)で、能力は39万トン、Map Ta Phut 近郊のAsia Industrial Estates に建設する。
PGプラントも同時に建設し、2011年に生産開始の予定。

原料過酸化水素については2007年7月にDow SolvayJVの設立で合意している。
能力は
330千トン(100%ベース)で、Asia Industrial Estates に建設する。

    2007/8/3 Dow Solvay、タイにHPPO用の過酸化水素製造のJV設立
     

Solvayはタイの子会社、Peroxythai Ltdにもここから過酸化水素を供給する。

PeroxyThai 1989年にSolvay が設立した。Rayong に過酸化水素工場(能力2万トン)を持ち、主にパルプ、製紙用に供給、4割を輸出している。

HPPO 用の原料プロピレンについては、 Dow Siam Cement Group が建設を発表したRayong の新しいナフサクラッカーから供給する。
11億ドルを投じてを建設するもので、能力はエチレン90万トン、プロピレン80万トン。OCT(Olefins Conversion Technology) で大量のプロピレンを製造する。Siam 67%Dow 33%出資し、2010年稼動を目指している。

    2006/10/24 ダウ、アジア進出を促進 

2007年7月のDow/Solvay の過酸化水素JV発表時には、POは、アントワープでのDow/BASF JVによるHPPO計画に続くものとして、Dow BASF で交渉が進められていた。

今回、何故BASFが降りて、代わりにDowがエチレンで提携している現地のSiam Cement となったのかは、明らかにされていない。

ーーー

過酸化水素法POはBASFが1995年頃から研究してきたもので、副産物がなく、最終製品であるPOと水しか発生しないこと、プラントの設置面積が小さく、必要インフラストラクチャが少ないことが特徴とされている。

Dowは2001年にエニケムとの間でポリウレタン事業とポリメリ(UCC/エニケムのPEのJV)持分を交換した際にこの技術を取得しており、DowBASFは2002年8月に共同開発を決めた。

BASFは過酸化水素製造のため、Solvay と提携している。

2006年3月、DowBASFは合弁でアントワープに過酸化水素法POプラントを建設すると発表した。
能力は30万トンで、2008年初めのスタートを目指した。

両社は2006年2月に製造JV契約を締結、共同開発した技術に50/50の権利を有し、それぞれが生産量の半分を引き取る。

過酸化水素はSolvay技術による単一ラインとしては世界最大の23万トンプラント。 Solvay BASF JVを設立し、このJVDowがファイナンスのためのパートナーシップを設立した。

    2006/3/24 ダウとBASF、POを新製法で生産 

Dow BASF はアジアを含む他の地域でも共同でこの事業を行ないたいとしていた。 


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Rohm and Haas 5月26日、拡大する塗料市場の需要に対応するため、ベトナムのDong Nai省Nhon Trach市(Ho Chi Minh市から30km) にアクリルエマルション工場を建設すると発表した。能力は25千トンで、10百万ドルを投じ、2009年央に完成させる。

同社は1953 年に世界初の水性アクリル樹脂を開発して以降、品質と技術を高めてきた。
内外装用塗料を始め、金属用塗料、木工塗料、一般道路や高速道路に使用される路面標示用塗料、DIY用塗料、プラスチック用塗料、住宅用断熱材やフロアケアに至るまで、様々な分野でのニーズに応え、多種多様な原料を提供している。

今回のベトナム工場は、全世界で34番目、アジア太平洋地区で12番目の工場となる。

同社は過去6ヶ月で、中国の広東省仏山市三水区とインドのChennai に新工場を建設し、インドのTaloja 工場を拡張している。
このほか、ロシア、トルコ、メキシコで新増設している。

ーーー

中国:
同社は本年1 月8 日、中国広州省三水の新製造工場の稼動を正式に開始したと発表した。
10百万ドルを投資したもので、アクリルエマルション技術をベースとした製品を製造する。
能力は2万トンで塗料やコーティングの製造に使用される環境に配慮した水性バインダーおよびエマルションが含まれる。

華南地域の塗料産業は、中国全土の40%を占めている。

ーーー

インド:
Taloja
  Mumbai 近郊のTaloja に能力35千トンのプラントを持つが、これを倍増した。
   
Chennai
  昨年9月、南インドの Chennai から80kmのSriperumbudur industrial areaに工場を開設した。塗料、接着剤、繊維、紙、皮革等の原料用で能力は30~40千トン。
   

これにより、インドの能力は100~110千トンとなる。

ーーー

Rohm and Haas は2006年にビジネス戦略「ビジョン2010」を発表した。
アジア太平洋地域では、2006 年度の16 億ドルから2010 年度には32 億ドルの売上げを目標にしている。

この実現のため、今後ますます重要な役割を果たしていくアジア太平洋地域の体制強化の一環として、同社は昨年11 アジア太平洋地域において5 名の副社長を任命した。

 

エマルション以外では同社は中国のプラスチック添加剤市場向けに合弁会社を設立している。

2006年12月、同社は中国の威海金泓高分子有限公司(Weihai Jinhong Polymer )との間で、プラスチック添加剤製造を行う新規製造合弁会社、金泓Rohm and Haas Chemical (JinHaas)を設立することに基本合意した。

Rohm and Haas が51%出資し、金泓社の山東省威海市の工場を拠点に、MBS、アクリル系耐衝撃強化剤(AIM)、アクリル系加工助剤を製造し、それらをアジア地域に提供する。

JV は2007年8月に営業を開始している。

又、韓国では昨年末に、フラットパネルディスプレイ市場で使用される最先端の光学および機能フィルムの開発、製造、および販売を行う韓国 SKC との合弁会社SKC Haas Display Filmsの操業を開始している。

Rohm and Haas はフラットパネルディスプレイ事業の拡大の為、2007年にEastman Kodak のLight Management Films businessを取得している。

 


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Denver, Colorado の裁判所は62Dow Chemical Boeing に、核兵器工場のプルトニウム汚染による被害に対し合計 926百万ドルの罰金を課した。

18年前にコロラド州のRocky Flats核兵器工場の近辺の12千人の住民が被害(健康被害の懸念と住宅価値の下落)を訴えた集団訴訟で、 陪審員が2006年2月にDow Chemical Rockwell International Boeing1996年に買収)に責任があると判断したが、それに対して罰金を決めたもの。

判決は住民補償のため Dow 653.3 百万ドル、Boeing 508.1 million 百万ドルを命じたが、総額725.9百万ドルの頭打ちとした。別途、懲罰的賠償として、Dow に 110.8 百万ドル、Boeing に 89.4百万ドルの支払いを命じた。

Denver 北西25kmにあるRocky Flats 工場は米国の核爆弾のためのプルトニウム起爆装置を生産していたが、1953年~1975年にダウが、それ以後1994年の閉鎖まではRockwell が操業していた。

その間、火災事故、設備の漏れ、ルーズな貯蔵管理のため、プルトニウムや他の放射性物質が漏れる重大事故があった。
1989年にFBIとEPAが環境犯罪の疑いで工場の立入捜査を行い、最終的に閉鎖された。

プルトニウムに汚染された廃油や溶剤の容器が戸外に置かれていた。いくつかの容器が漏れて周辺の土を汚染し、それが風で風下に飛ばされたという。

政府はサイトのクリーンアップに70億ドルを投じた。現在は野生生物保護区となっている。

これに対して Dow は、契約上Dow Boeing も免責となっていて、最終的にはエネルギー省が責任を持つべきものであるとし、控訴するとしている。 


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経済産業省は6月10日、エチレンセンター11社の2007年度の収益状況を発表した。

それによると、売上高は前年比で大幅な増加となったが、経常利益は、売上高の増加や合理化努力によるコスト削減があったものの、高騰するナフサ等の原燃料価格を製品価格に転嫁しきれず、利益が圧縮されたことにより、2,108億円(対前年同期比 ▲22.6% 減)となった。

経常損益推移(億円)
年度 合計 (上期) (下期)
2004  2,132   838  1,294
2005  1,753  1,201   552
2006  2,725   832  1,893
2007  2,108  1,286   822
  注 下期は年度合計 マイナス 上期

上期、下期に分けて見ると、図の通り、06年下期をピークに、07年上期、下期と大幅に減少している。
07年下期は前年同期に比べ、1,071億円、57%もの減少となっている。

参考  2008/5/14 2008年3月期 注目会社決算 石油化学各社

過去の年度別推移は以下の通り。

集計対象は下記(2007年度)の通りだが、連結ベースの場合は連結対象会社の変更等があるので、前年度と単純な比較は出来ない。

単独ベース
  エチレンセンター
連結ベース 集計区分
三井化学、大阪石油化学 三井化学 基礎化学品、機能材料部門
丸善石油化学 丸善石化
山陽石油化学 旭化成 ケミカルズ部門
出光興産(石油化学部門) 出光興産 石油化学製品部門
東燃化学 東燃ゼネラル 石油化学製品部門
昭和電工 昭和電工 石油化学部門
住友化学 住友化学 石油化学部門
東ソー 東ソー 石油化学部門
三菱化学 三菱化学 石化部門
新日本石油(石油化学部門) 新日本石油 石油化学製品部門



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日本水泳連盟は10日、東京都内で常務理事会を開き、8月の北京五輪で競泳日本代表選手が、SPEEDO社製水着LZR RACERを含め着用水着を自由に決められることを正式に決定した。

ミズノもその後、北島選手などの契約選手に他社の水着着用を認めた。

水連はこれまで、選手が五輪や世界選手権等主要大会で着用できる水着を、サプライヤー契約(2017年までの12年契約)を結ぶ国内メーカーのミズノ、デサント、アシックスの3社製品に限定していた。
しかし2月のLZR RACER発表以降、世界中で多くの着用選手が軒並みベストタイムを短縮するなど、これまでの常識を覆す性能の高さを示した。(今回の北島選手を含め、2月以降の世界記録19のうち、LZR RACER着用は18

    2008/5/17 競泳用水着の闘い

水連はミズノ、デサント、アシックスに対して水着の改良を求めていたが、5月30日、3社から改良水着の説明を受けた。

ミズノは従来と比べて2~4倍締め付ける素材を使った。東レとの共同開発素材。
山本化学工業の素材は、デサントとアシックスが部分的に使用したタイプをつくった。

6月6日からのジャパン・オープンで、SPEEDO 社製も含めて代表選手が試し、着用水着の結論を出すこととなった。

ジャパン・オープンでは3日間で 17の日本新が出た。
このうち
LZR RACERを着用した選手が16個をマーク。男子200m平泳ぎで北島康介選手がLZR RACERを着用して 2分7秒51の世界新記録をマークした。
LZR RACER以外の日本記録は古賀淳也選手がミズノ社製の従来品で男子50メートル背泳ぎ予選で達成した1個のみ。
(但し、同決勝では
LZR RACERを着用した宮下純一選手がこれを上回る記録を出した)

この結果を受け、日本水連は8日、日本代表が北京五輪で着用する水着について、英SPEEDO 社を含むすべてのメーカーの製品を選べるようにする方針を決めた。ミズノ、デサント、アシックスの国内3社からも同意を得た。

ーーー

ミズノにとって大きな誤算となった。

同社は1965年にSPEEDO社とライセンス契約を結び、日本における同社ブランド製品の製造・販売のみならず、同ブランドグループ全体における最先端技術の開発の役割も担ってきた。

2000年のシドニー五輪ではミズノがSPEEDO社の協力を得て完成させたサメ肌水着 SPEEDO Fastskin を、出場選手1,677人の6割にあたる1,006人(138カ国)が着用、メダルは、151個のうちの100個を獲得した。

採用した素材は東レと共同開発の「アクアブレード」で、表面にサメ肌状の微小な凹凸が刻まれた。

しかし2006年、ミズノは創業100周年を機に、「全商品のブランドを“MIZUNO”に統一する」方針を決定した。
これに基づき、まだ期間が残っていたライセンス契約を、2007年5月31日付で打ち切った。

同社の決算では特別損失に「ライセンス契約解除に伴う費用」としてこのライセンス契約の早期解除に伴う諸費用が計上されている。
2007/3月期に 327百万円が計上されたが、2008/3月期にも更に 252百万円が計上されている。合計では579百万円にもなる。

ミズノの契約解除に伴い、三井物産がSPEEDO社とのライセンス契約を締結し、主要商品カテゴリーの開発・製造・販売を担当するパートナーとして、ゴールドウインとサブライセンス契約を結んだ。2008年春夏シーズンから日本での製品販売を開始した。

ゴールドウインは1951年に富山県西部の小矢部市で、津沢莫大小(メリヤス)製造所としてスタート、翌年、「今日のスポーツ産業の隆盛を先取りし」、一般メリヤスメーカーから、スポーツウエア専業メーカーへと転身、1963年にゴールドウインと改称した。

北島康介選手は2004年1月、ミズノとの間でSPEEDOブランドのアドバイザリー契約を結んだ。SPEEDOのスポーツウエア、水着、ゴーグル、タオル、スイミングキャップ等を使用するほか、ミズノ商品開発へのアドバイス、JOC契約に基づく肖像権の使用及びイベントへの参加なども含まれている。

当初は2004年の1年間であったが、延長して、2005年~2008年の長期契約としている。

ミズノのSPEEDO社との契約打ち切りに伴い、SPEEDOブランドの水着を使っていた北島康介選手らの契約は、ミズノに引き継がれた。

このため、日本水連がすべてのメーカーの製品を選べるようにする方針を決めても、北島選手は契約上、ミズノの水着しか使用できないこととなる。(ジャパン・オープンではミズノは、テストとして、LZR RACER着用を認めた。)

ミズノは当初、自社水着の改良と選手の忠誠心に期待を寄せていたが、水連決定を受け、他の水着の着用を認めた。違約金の発生もないと明言した。

北島選手はそもそもSPEEDOブランドのアドバイザリー契約をミズノと締結しており、ミズノのSPEEDO 離脱時になんらかの条件を付けておれば問題にならずに済んだかも分からない。(当然契約は修正している筈だが、内容は分からない)

また、契約時には想定外であったLZR RACER 出現ということで、北島選手がLZR RACER を着用しても、「法的には」契約違反にならないかも分からない。

いずれにせよ、仮に、ミズノが契約を盾に着用を認めなかったり、違約金を取ったりすれば、同社に対する批判が強まり、同社にとって大きなマイナスとなる。

本年2月に発表された LZR RACER 3年あまりをかけて開発されたといわれており、2006年末のミズノによる契約打ち切り発表時には、当然 LZR RACER の開発の情報は入っていたと思われる。

それなのにミズノが違約金を払ってまで中途解約したのには、ミズノ側に、これが国際水連に認められないとの判断があったのではないかと噂されている。

国際水泳連盟には「競技中に速さや浮力、持久力の向上につながる道具を身につけてはいけない」という規則があり、LZR RACER はこれに抵触する可能性がある。

しかしLZR RACER 問題にならず、許可された。(山本化学の材料を使用したニュージーランド製水着も同様)
浮力に関する明確な数値規定はなく、国際水連役員の裁量で決まる。

当然政治力も影響する。これまでも五輪では日本選手に不利なルール改正が何度も行なわれてきた。もし、
LZR RACER をミズノが出しておれば、許可されなかったことも考えられる。

 

ミズノは本年4月、表面にジェル加工を施すことで水になじむ親水素材を開発し、さらなる低抵抗を追求した新水着「WATER GENE」を発表した。

従来は生地が水をはじく撥水加工により低抵抗を追求したが、全く発想を変え、『水との融合による低抵抗』を素材の開発コンセプトとし、カジキ(marlin) をヒントに低抵抗素材 Marlin Compを開発した。
Marlin Comp HD(高密度素材)はポリエステル70%、ポリウレタン 30%、同HS(高ストレッチ素材)はポリエステル 80%、ポリウレタン 20%となっている。

しかし、結果はLZR RACERに全く敵わなかった。

ーーー

山本化学工業の素材は、デサントとアシックスの水着に部分的に使用された。

山本化学は、アシックスとデサントの2社に意見や提案を聞いてもらえない、素材を全身に使用した水着(ニュージーランド製)を試してほしいが、どの選手が試着を希望しているか情報がもらえないとの不満を表明している。

同社の水着が全く試されないまま、LZR RACER に決まってしまうのは残念な気がする。

 

付記  北島選手は11日、ホームページで、北京でのLZR RACER 着用を明らかにした。

今回の水着問題は水泳界だけではなく、報道を通じて、全国的な注目を集めていますが、今日、僕なりの答えをだしました。
北京オリンピックではspeedoの水着を着用しようと思います。
(中略)

先日の記録更新という結果を冷静に受け止め、応援してくださる皆さんに、最高のパフォーマンスを見ていただくために、現段階での最善の選択をしたいと思います。 (中略)

水着は、もちろん競泳にとって、勝負に関わる大切なものであることには違いありません。
でも、泳ぐのはやはり選手です。
とにかく北京では、世界の代表選手たちと勝負して、結果を出したいと思っています。
そしてその経験で、今後のミズノの水着開発に少しでも役立ちたいと思っています。
(後略)


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経済産業省は6月6日、オーストラリア、スペイン、中国、南アフリカから輸入される電解二酸化マンガンに対して暫定的な不当廉売(アンチ・ダンピング)関税を賦課すると発表した。

昨年1月に東ソーと東ソー日向が不当廉売関税の課税申請を行い、4月から調査を行なってきた。6日に関税・外国為替等審議会から答申があったもので、10日に閣議決定し、14日から開始される。

暫定的な不当廉売関税率は以下の通り。

  関税率 不当廉売差額
(輸出価格=
100
オーストラリア  29.3%   41
スペイン  14.0%   17
中国(紅星大龍)  34.3%   43 *
中国(その他)  46.5%   74 *
南アフリカ  14.5%   18

* 中国の生産者の正常価格については、平成13年の中国のWTO加盟時の取り決めに基づく特例措置(下記)により算定した。

米国、EUも電解二酸化マンガンに対し不当廉売課税をしている。  

米国 オーストラリア   120.59% 2008/3 暫定措置
中国  236.81%
EU 南アフリカ   17.1% 2007/9 暫定、2008/3 確定措置

ーーー

不当廉売関税制度は、関税定率法第8条、不当廉売関税に関する政令に基づく。
(WTO協定上はガット第6条、ダンピング防止協定)

不当廉売された輸入貨物に対し、同種の貨物を生産する国内産業を保護するために割増関税を課するもので、
適用要件は:
 (1) ダンピング輸入の事実
 (2) 損害等の事実、因果関係
 (3) 産業保護の必要性

以上の要件を充足する場合、
 不当廉売差額〔(正常価格)-(不当廉売価格)〕と同額以下の割増関税を課する。

暫定措置の期間は原則4か月以内。
利害関係者の反論、反証を受けた後に最終決定を行なう。
確定措置の期間は原則5年間以内となっている。

 

今回の調査の結果は以下の通り。

(1) ダンピング輸入の事実 
上記表の「不当廉売差額」の存在

不当廉売差額は、個々の生産者から提出された証拠に基づいて、工場出荷段階を原則に調整した上で算出した。
中国の生産者の正常価格については、平成13年の
中国のWTO加盟時の取り決めに基づく特例措置により算定した。

WTO協定では「貿易の完全な又は実質的に完全な独占を設定している国ですべての国内価格が国家により定められているもの(「非市場経済国」)からの輸入の場合には、規定の適用上比較可能の価格の決定が困難であり、また、このような場合には、輸入締約国にとって、このような国における国内価格との厳密な比較が必ずしも適当でないことを考慮する必要があることを認める。」と規定している。

「非市場経済国」の場合、ダンピング調査の際に、輸出価格は、国内価格との比較ではなく、経済発展レベルが近い代替国の価格と比較して判定される。EUは中国に市場経済国待遇を適用せず、しかも中国よりコスト水準の高い国を代替国に採用するケースが多く、この結果、ダンピングと判定される確率も高くなっているといわれている。

2006/2/27  EU、中国・ベトナムの革靴に反ダンピング税 

日本の場合は、中国の調査対象企業自らが、
 ① 生産者が政府から独立して市場原理に基づき意思決定していること
 ② 市場価格での原料購入
 ③ 労働者との賃金交渉
 ④ 生産手段の自己管理
 ⑤ その他(国際会計基準に基づく会計処理)
を立証しない限り、輸出価格と比較する対象を中国の国内価格等ではなく、第三国での国内価格等を用いることができることとしている。

紅星大龍は価格決定に関する証拠を提出したが、地方政府が間接的な株主となっている等、生産者の事業活動が政府から独立していないものと考えられ、市場原理により生産価格、販売価格が決定されている証拠は明確に示されなかったことなどから、特例措置を適用した。

(2) 損害等の事実、因果関係

   平成16年度を100として、平成18年度には、
    国内総需要が90に減少し、
    国産品の国内販売量が54に減少し、
    国内産業の市場占拠率が60に減少しているのに対して、
    4ヶ国からの輸入量は166に増加している。

   この結果、国内産業の利潤、雇用等が大幅に減少しており、国内産業に損害が生じている。 

(3) 産業保護の必要性

   国内産業は大幅に収益等が悪化していること、
   EC、米国が不当廉売関税を発動し、我が国への販売圧力が強まること、
   から、緊急に損害の拡大を防止する必要がある。

ーーー

電解二酸化マンガンは、主に一次電池(マンガン電池、アルカリマンガン電池等)の正極材料として使用。その他、マッチ原料、ガラス工業用途(着色)、触媒原料等にも利用される。

メーカー:
 東ソー㈱、東ソー日向㈱ 日向工場  (東ソー日向は東ソーの100%子会社)
 三井金属鉱業㈱ 竹原工場

輸入量: 単位 トン(2006年度)
南アフリカ  2,654 17.5%
スペイン  2,600 17.2%
豪州  5,671 37.4%
中国  4,111 27.1%
その他   124   0.8%
総輸入量 15,160 100.0%
  * 2004年度は 9,225トン

ーーー

我が国における不当廉売関税の申請及び課税の状況は以下の通り。
①フェロシリコマンガン(中国、南アフリカ、ノルウェー産)
  1993年 中国産に不当廉売関税課税
        (中国2社とは価格約束)
  1998年 課税期間満了

②パキスタン産綿糸
  1995年 不当廉売関税課税
  2000年 課税期間満了

③ポリエステル短繊維(韓国、台湾産)
  2002年 不当廉売関税課税
  2007年 延長

 


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BASF Plant Science 5月27日、台湾の最高学術研究機関中央研究院(Academia Sinica) との間で協力契約を締結した。
コメやトウモロコシのような主要作物の収穫量を増大し、環境ストレス耐性を改善する遺伝子発見が主要テーマとなる。

中央研究院がコメの遺伝子の機能分析を行い、BASFが中央研究院の基礎資料のなかから、収量が高く、ストレス耐性がよいものの選択を行なう。
当初の協力期間は2年で、収量の高い、いくつかの遺伝子組み換え作物を市場に出したいとしている。

BASF Plant Science にとって、今回の契約は韓国、中国に次ぐ、8ヶ月で3回目の協力契約である。
同社はアジア地区での事業を狙っており、各国の研究機関を高く評価している。

BASF は、収量増大が現在の農業研究で中心の目標としている。
中国のような国で生活水準の向上で肉の消費は過去
20年で300%増大しており、それに伴い、飼料の需要が増大している。同時に都市化によってアジアの耕作面積が減少している、と指摘している。

ーーー

BASF Plant Science は昨年10月、韓国のCrop Functional Genomics Center (CFGC) との間でR&D契約を締結した。

Crop Functional Genomics Center は韓国の科学技術部(Ministry of Science and Technology)がThe 21C frontier R &D program という計画の下で行なっているコンソーシアム形式の研究組織で、全国の大学、研究機関、企業の研究をサポートするバーチャルな研究所。

予算は年間10 百万ドルで、主にイネ、ダイズ、唐辛子の3種類の植物の機能ゲノム研究を行う。
研究内容、
Crop functional genomics :ゲノム構造、遺伝子探索、②Development of Transgenic Crops:有用植物への遺伝子導入技術の推進、有用形質の付与、③Molecular Breeding :分子マーカー(形質マーカー)の探索とそれらを用いた有用形質の獲得である。

契約内容は研究協力とライセンスで、40の著名研究機関の200人の研究員の10年間の発見を含む。

狙いはコメやトウモロコシのような主要作物の収量増大、環境ストレス耐性改善で、分担は上記台湾のケースと同じ。
CFGC は重要な作物について韓国以外での独占ライセンス権をBASFに与える。

ーーー

BASF Plant Science は本年1月、北京生命科学研究所(National Institute of Biological Sciences, Beijing NIBS) との間で協力・ライセンス契約を締結した。

トウモロコシ、大豆、コメのような作物の収量増加を狙うもの。

NIBS は2003年に政府の科学技術の開発戦略の一環として、ライフサイエンスの基礎研究の基地として設立された。

NIBS は作物の収量増加を示す遺伝子を見出している。同所で更にその機能の分析を進めた後、BASFに回す。

契約ではNIBS 発見された遺伝子を組み込んだ作物を開発・販売する独占権(中国以外)をBASFに与える。

 


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6月6日のニューヨーク・マーカンタイル取引所の原油先物相場は、ユーロなどに対するドル安進行を材料に急騰し、WTI原油の7月渡しが一時、139.12ドル/バレルまで上昇し、最高値を大幅に更新した。

終値も前日比10.75ドル高の138.54ドルで、終値の最高値を更新、1日の上昇幅としては過去最大の8.4%となった。

6日に発表になった米雇用統計で、失業率が5.5%と前月から0.5ポイント急上昇した。0.5ポイントの上昇は22年ぶりのことで、これを受け、為替市場でドル売りユーロ買いが強まり、原油価格も上昇した。
Morgan Stanley がレポートで、7月4日までに原油価格が150ドルまで上昇する可能性を述べたことなども買いを誘った。

Morgan Stanley のアナリスト Ole Slorer が、アジア諸国の強い需要で独立記念日前にも150ドルまで上昇する可能性があるとした。

週明けの東京市場でもドバイ原油やナフサが急騰するとみられる。



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インドネシア最大の石化会社 PT Chandra Asri は同国のPPメーカー Tri Polyta の株式の 75.95% を取得する。
Chandra Asri の大株主のBarito group の総帥 彭雲鵬 (Prajogo Pangestu) が所有する Tri Polyta 株式のうち、5%を除き、Chandra Asri に譲渡する。残りは創業者一族が所有している。

Tri Polyta は1988年に設立され、1992年にPPの生産を開始した。現在の能力は36万トン。原料プロピレンはChandra Asri から購入している。

Tri Polyta 1996年8月に日本触媒、トーメンと45/50/5%出資のアクリル酸製造のJV PT Nisshoku Tripolyta Acrylindo を設立した。
2000年8月にトリポリタの所有する全持ち株を日本側が買い上げ、出資比率が日本触媒93.8%、トーメン6.2%となり、2001年1月には社名をNippon Shokubai Indonesia に改称した。

 

Chandra Asri の能力はエチレン 520千トン(現状は実質590千トン)、プロピレン 270千トン、LLDPE/HDPE 240千トン、HDPE 100千トン。

Chandra Asri は昨年、豊田通商からインドネシアのスチレンモノマー製造・販売子会社 PT.Styrindo Mono Indonesia の全株式を買収した。Styrindo Mono の原料エチレンはChandra Asri が供給している。

    
2007/3/31  ニュースのその後 Styrindo Mono Indonesia 

Chandra Asri は最近、2億ドルを投じてブタジェン工場を建設することを明らかにしている。能力は10万トンで、2011年上期の稼動を目指す。

ーーー
Chandra Asri
はスハルト元大統領の次男のバンバンのビマンタラ・グループ、合板王と呼ばれる彭雲鵬が率いるPT Barito Pacific林紹良が率いるサリム・グループからスピンオフしたナバン・グループが75%出資し、日本インドネシア石油化学投資(丸紅85%、昭和電工10%、TEC5%)が25%出資して設立された。    

    2006/4/26 インドネシアのエチレン計画への日本企業の参加-1
     
   

その後、紆余曲折の結果、インドネシア金融再編庁(IBRA)が融資の担保として現地側企業の持分を保有、その後、Barito GroupPT Inter Petrindo Inti Citra とマレーシアのGlazers & Putnam Investment に売却した。

他方、丸紅は2005年10月に、日本側持株をComerzbank International Trust (Singapore) Ltd に売却した。

丸紅は重点分野の事業として PT Barito Pacific と共同出資しているMusi パルプ事業の経営権取得を目的として、段階的に出資比率の引き上げを行なってきた。
Barito が債務リストラの一環として、大口債権者でBaritoに21%出資する Comerzbank に対し、Musiパルプ事業の関連資産への転換オプション付き社債を発行するとの動きが出てきたことから、懸案の「Chandra事業からの撤退」と、「Musiパルプ事業の経営権の取得」という2つの課題を同時に達成すべく、Comerzbank と交渉を行い、Chandra 株式とBarito社債を交換することとしたもの。

2006年1月、シンガポールの政府系投資機関のTemasek HoldingsChandra Asri の株式 50.45% を7億ドルで買収したと報じられた。(同社は発表していない)
Comerzbank の所有する 24.59% と Glazers & Putnam Investment Ltd.(マレーシア)の所有する 25.86% を買収したと言われる。

ここまでの株主の推移は以下の通り。

IBRA  75.41%  ー  ー  ー
PT Inter Petrindo Inti CitraBarito  ー 49.55% 49.55% 49.55%
Glazers & Putnam Investment Ltd.(マレーシア)  ー 25.86% 25.86%  ー
丸紅(日本インドネシア石油化学投資) 24.59%  ー  ー  ー
Comerzbank International Trust (Singapore)  ー 24.59% 24.59%  ー
Temasek Holdings  ー  ー  ー 50.45%

 

2007年11月、インドネシア当局は PT Barito Pacific Tbkが検討していた10億ドルの増資を承認した。
同社はこの資金の大半を使い、PT Chandra Asri の株式 70% を買収した。
PT Inter Petrindo Inti Citra
から14.6%を、マレーシアの2つの企業、Strategic Investment HoldingsMIH (Malaysian Issuing House Sdn Bhd)から55.4%を購入した。

(残りの30%を誰が持っているのか不明。また、マレーシアの2企業の株式取得の経緯、Inter Petrindo Inti Citra の当初の持株がどうなったのか等、不明。この時点でBarito はChandra Asli に関してInter Petrindo Inti Citraを通じて14.6%を所有しているだけ」としていた。経営悪化で手放した可能性がある。)

PT Inter Petrindo Inti CitraBarito 49.55% 14.6%  -
Temasek Holdings 50.45%  -  -
Strategic Investment HoldingsMIH  - 55.4%  -
PT Barito Pacific  -  - 70.0%
その他(不明)合計  - 30.0% 30.0%


いずれにせよ、Chandra Asri の経営権は、当初の株主の一人のPT Barito Pacific に戻ったことになる。

 


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2008年5月30日、BHP Billiton European Commission に対し Rio Tinto 買収の事前届出を行なった。

ECは74までに、買収を認めるか、更なる審査を行なうかの結論を出す。

ーーー

2007年11月、BHP Billiton Rio Tinto に対して買収の提案を行った。
Rio
Tinto の株式1株に対してBHP株3株を与えるという案で、1,400億ドル以上に相当する。

これに対し、Rio Tinto は買収価額が著しく安すぎるとし、拒否した。

   2007/11/15 BHP Billiton Rio Tinto に買収提案 

Rio Tintoの要請に基づき、英国公開買付パネルは 12月21日に決定を下した。
  
BHP Billiton 2008年2月6日までに、Rio Tinto に対してオファーをするか、しないかを伝えろというもの。

   2007/12/29 BHP Billiton によるRio Tinto 買収提案のその後 

BHP Billiton 期限の2月6日にRio Tinto に対し買収提案を行なった。
対価は当初の
案を修正し、BHP株3.4株とした。

Rio Tinto は同日、これを拒否した。

BHP Billiton の提案を慎重に検討した。
若干の値上げはあったが、依然として
Rio Tinto の価値、将来性を過小評価しているとして拒否する。

その後、両社の応酬があり、5月30日にBHP Billiton European Commission に対し買収の事前届出を行なった。

ーーー.

日本鉄鋼連盟は本年3月13日、公正取引委員会に対して、次ぎの理由で、本件の精査および、鉄鉱石・原料炭各市場における公正な競争を確保するための適切な措置の実施を正式に要請した。

BHPビリトンによるリオ・ティント買収が実現すると、鉄鉱石・原料炭両市場での一層の寡占化が進展し、特に鉄鉱石については、他に大きな代替ソースがないことから上位2社に供給を依存せざるを得ず、供給側における競争が実質的に制限され、公正な価格形成を損なうものと懸念する。原料価格の更なる高騰は、鉄鋼業界のみならず、需要産業ひいては消費者にも深刻な影響を及ぼしかねない。

今回の事前届出を受け、次ぎの声明を発表した。

両社の統合が鉄鉱石および原料炭の海上貿易市場における健全な競争を著しく阻害すると認識しており、今後は、日本高炉各社が主要関係国の独禁当局に対して異議申し立て等という形でその立場を主張していくこととなる。

鉄鋼業界は、今年度に入って、強粘結炭が昨年度比で3倍となった他、鉄鉱石が昨年度比65%を上回る大幅な値上げとなるなど、深刻な原料コストの高騰に直面しており、結果的に鉄鋼製品価格への転嫁を顧客にお願いせざるを得ないような事態に立ち至っている。鉄鋼製品は橋梁、建築物等の社会整備インフラから、日用品・自動車及びハイテク製品に至る基礎素材として幅広く利用されており、本統合により更なるコストアップも懸念され、わが国経済に与える影響は甚大なものと考えられることから、主要関係国の独禁当局に対して統合阻止を求めていきたい。

公取委事務総長は6月4日の定例会見で、以下の通り述べた。

我々としても強い関心を持っており、海外の競争当局とも連携をとりつつ、情報収集等に努めてきた。
引き続き、欧州委員会をはじめ、海外の競争当局と連携をとりつつ、情報収集、実態把握を行い、独占禁止法上の問題点の有無について、検討を進めていきたい。

(現行法では)株式取得については、問題がないかどうかをチェックするために、取得後30日以内の届出を義務付けているだけ。
EU等諸外国と同じように事前届出にしようという改正法案を、今、国会に提出している。(下記)

我が国市場に影響を及ぼすおそれも十分あり得るし、独占禁止法上の問題もあり得るため、十分慎重に検討していきたい。

こういう企業結合案件については、当事会社からいろいろと事情を聞く、あるいは資料を提出してもらうのに加え、競争業者、ユーザー等からヒアリングをしたり、資料を提出してもらうというような形で進めるのが一般的。

 

なお、独占禁止法の改正案は国会に提出されたが、まだ審議入りもしていない状況で、今国会での成立は難しい。

 


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信越化学は6月2日、「日経ビジネス」6月2日号の特集記事「深層スペシャル 原油200ドルに備えよ―このままでは信越化学が8割減益に―」への抗議を発表した。

見出しならびに本文中に架空試算数値を掲げ、あたかも同社に大幅減益の危険があるかのような著しく誤った印象を読者に与え、投資家、取引先にも少なからぬ不利益をもたらしかねない不当な表現があったとし、猛省を促すとともに、「風評被害」の発生を抑えるために実効性ある対応を早急に実施されることを強く要望するとしている。

ーーー

日経ビジネスの特集記事の概要は以下の通り。

深層スペシャル 「原油200ドル」に備えよ 
(タイトル) 原油高で磨く競争力
(サブタイトル)
このままでは信越化学が8割減益に?

「信越化学工業が8割、ユニ・チャームが6割、花王や武田薬品工業が3割の減益にーーー。原油価格が1バレル=200ドルになったら、日本企業の業績はどうなるか。第一生命経済研究所の長濱利廣・主席エコノミストがはじいた試算では、こうなる。」

原油200ドルが営業利益にもたらす影響度 (その中の化学関連の例)

信越化学  -81.37%
花王  -31.44
武田薬品工業  -30.03
住友化学  -22.76
日本触媒  -21.93
三井化学  -10.81
昭和電工  - 9.29
JSR  - 8.66

計算は、「1990年以降の原油価格の動きと企業の売上高やコスト構造の相関関係から」算出したもので、具体的には「営業利益の前年比における売上高要因と変動費要因に対するWTI弾性値(WTIが1%変化すると、それぞれ何%変化するか)を調べ、WTIが200ドル/バレルとなったと仮定した時の営業利益に対する影響度を算出した」としている。

こういう計算は企業が内部資料を使ってやらないと出来ない。セグメント別の変動費も発表されていないのに、どうやって計算したのだろうか。
企業の業態は大きく変化しており、1990年からの企業のコスト構造などは企業の今後の予想に関係あるとは思えない。

信越化学や武田薬品工業は石油の使用は大きくなく、何故この数値になるのか、理解しがたい。

サブタイトルとは異なり、記事の中では、信越化学については次ぎのように肯定的に述べている。

もっとも、卓越した相場観と少数精鋭のスピード経営で知られる金川社長のこと。現状に手をこまねいているわけではない。塩化ビニール事業では、競合他社が大幅減益に陥る中で、欧州への輸出などで米工場のフル操業を維持し、300億円超の経常利益を確保した。厳しい環境だが、「知恵と努力で乗り切る」と金川社長は力を込める。

そして、結論は以下の通り。

(石油ショック時のように)この未曾有の事態を危機と捉えるか、競争力を磨く機会とするかで、未来は変わってくる。

ーーー

信越化学が記事に関して問題と考える点は以下の通り。

【原油価格高騰の同社への影響について】
  同社では原油を原料とする製品より、地球上に無尽蔵にあるケイ石を出発原料とする製品が大きな割合を占めており、原油が200ドルとなった場合でも、他の会社より影響が大きいとは考えられない。
   
【日経ビジネス誌当該記事の問題点】
(1) 試算数値
  当該記事では、「試算」の算出意図も計算根拠も明示しておらず、同社の業績見通しとは関わりのない架空の条件下での数値。
試算の数値を個別企業の業績とことさらに結びつけた形でクローズアップする意味はない。
   
(2) 同社名を見出しに使用した点
  当該記事は大見出しの上に赤文字で「このままでは」同社が大幅減益に陥るかのような表現が使われている。
1)同社が特に見出しで言及される必要性や必然性をまったく見出しえない。
2)「このままでは」という表現が、具体的に何を指しているのか不明で、同社が大幅な減益に陥るかのような印象を与えている。
   
(3) 同社の業務実態に対する誤った記事内容
  当該記事中では、「石油を大量に使う化学メーカー」としているが、直接石油系原料を使用しているのは塩ビ系事業に限られる。
 塩ビは原料構成比は6割が塩であり、石油化学系樹脂の中ではきわめて石油使用量が少ない素材。
 また、米国シンテック社では、原料は石油ではなく天然ガス由来。
   
(4) なんら取材を行わず当該記事を作成した点
   

ーーー

信越化学のセグメント別営業損益内訳は下図の通り、シリコンウェハーなどの電子材料の貢献が大きく、石化(塩ビ)の比率は小さい。

    2008/5/2 2008年3月期決算 信越化学好調

塩ビの営業損益の減少はShintech 減益が主な理由だが、原油値上がりのためではなく、米国の住宅不振が影響したもの。それでもShintech は同業他社が稼働率を落とし大幅な減益や赤字に転落する中で、輸出で補完してフル操業を行い、300億円を超える経常損益を確保した。
同社のエチレンの原料は石油からのナフサではなく、米国のエタンであり、値上がり度合いは異なる。

住友化学のサウジのラービグ計画も原料はエタンで、価格が安定しているため、「原油価格が上がればそれだけ有利になる」(住友化学)。    

原油が200ドルになっても、利益 8割減などあり得ない。

原油200ドルの影響を説明するのに、信越化学は適当な例ではなく、数値の計算、タイトルなどは問題で、同社の主張は当然である。
こういう数字を出す以上は、計算根拠や前提も示すべきである。

 


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    2008/5/2 2008年3月期決算 信越化学好調 

国務院弁公庁は本年1月、各省・自治区・直轄市の人民政府、国務院の各部・委員会、直属の各機関に向けて、「ポリエチレン製のレジ袋の生産・販売・使用の制限に関する通知」を出した。

今年6月1日以降、スーパーマーケット、デパート、大型市場など商品を小売りするすべての場所でレジ袋を有料化し、無料での提供を一律禁止する。また、ゴミ公害(「白色汚染」)対策として極薄(0.025mm 以下)ポリエチレン製のレジ袋の生産・販売・使用を禁止する。

    2008/1/14  中国、6月1日からレジ袋を有料化  

中国では現在、1日30億枚以上のレジ袋が使い捨てられていると言われている。

6月1日から、この「限塑令」(レジ袋規制条例)が施行され、ポリエチレン製レジ袋が有料化された。 

人民日報日本語版には哈爾濱(ハルビン)市のスーパーでレジに掲示された買い物袋の価格の写真が載っているが、大型が0.3人民元(4.5円)、中型が0.2人民元(3円)となっている。

新華社のウェブサイト「新華網」環境保護チャンネルが行ったオンライン調査によると、回答者の88.02%がレジ袋の代わりとして布製などの「エコバッグ」を準備した、あるいは準備中であると回答した。

中国の3部門・委員会は5月、「商品小売施設におけるレジ袋有償使用管理弁法」を共同で公布し、レジ袋の有償使用や価格基準など詳細内容に関する詳細な規定を定めた。これにより、商店が規定に違反してレジ袋を無料で提供した場合、罰金が科せられることとなった。

工商部門はレジ袋の制限に向けて今後、次の5つの措置を取ることを決定した。
(1) 今年6月1日から8月1日までの間、総合的・集中的な検査活動を展開し、レジ袋販売会社が法律に基づいて許可証を取得しているか、経営者が規定の厚さ(0.025mm)に満たないレジ袋の使用を停止しているかどうかを検査する。
   
(2) 業務内容にレジ袋の生産・販売を含む法人の設立申請や、これらの業務内容の追加登録に対する検査を厳しくする。
   
(3) スーパーマーケット、商店、大型市場でのレジ袋販売状況の巡回調査制度をうち立て、ルール違反行為を摘発・処分する。
   
(4) 6月1日以降、商店、スーパー、市場および小売専門店でのレジ袋の提供・使用状況を監督・検査の重点項目とし、規定の厚さ(0.025mm)に満たないレジ袋を提供・使用した違法な経営者や企業、および品質合格マークのないレジ袋を販売した経営者や企業に対しては、法律に基づいて処分を下す。
   
(5) 行政法律執行ネットワークの役割を十分に発揮させ、消費者からの通報を迅速に受理し対応する。またトラブルを迅速に処理し、違法な経営活動に対する調査をタイミングよく進める。

 


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中東のアルミ事業

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5月23日の日本経済新聞は「中東湾岸 素材産業の拠点に」として、次ぎのように述べている。

中東のペルシャ湾岸産油国が素材産業の生産拠点として台頭してきた。空前の原油高で流入する資金と豊富な原燃料を使った石油化学や鉄鋼、アルミニウムなどの大型生産計画が相次いでいる。2010年代には湾岸地域は石化最大の輸出拠点となり、アルミ地金の世界シェアは1割を超える見通し。天然ガスを使う製鉄所建設も相次ぎ、エネルギー資源をてこに素材分野でも存在感を高めている。

既報のとおり、Abu Dhabi 政府の投資会社 Mubadala Development Dubai Aluminium と組んで、世界最大のアルミ精錬工場を建設する。
    
2008/2/14 Abu Dhabi'Polymer Park' 'Metal Park' 創設へ 
       

このほか、オマーンとカタールで新工場が建設中で、現在170万トンの湾岸地域のアルミ生産能力は2010年代前半には400万トン超、世界シェアは現在の5%から10%に高まる見通しだ。

中東のアルミ事業の概況は以下の通り。

  社名 株主                   能力 電力 稼動
既存 Bahrain Bahrain Aluminium
(Alba)
Bahrain Government77%
SABIC
20%
Breton Investments(Germany)
3%
830千トン
(→1,000千トン)
1,500MW
石油コークス焼成
   450
千トン
1971
(5
6千トン)
UAE
(Dubai )
Dubai Aluminium
(Dubal)
Government of Dubai100% 950千トン 1,983 MW 1979
(136
千トン)
建設中/
計画
UAE
(Abu Dhabi )
Emirates Aluminium
(EMAL Taweelah
  Aluminium Smelter)
Dubai Aluminium50%
Mubadala Development50%
(Abu Dhabi Government 100%)
700千トン
(→
1400千トン)
2,000 MW
(
3,500 MW )
2010
(2013)
Oman Sohar Aluminium Co.
(SAC)
Abu Dhabi Water and Electricity
   Authority40.0%
Oman Oil
40.0%
Alcan
20.0%
350千トン 1,000 MW
(gas-fired)
 
Qatar
(Mesaieed )
Qatalum Qatar Petroleum50%
Hydro
50%
585千トン 1,350 MW
(gas power)
 

 

Dubai AluminiumAbu Dhabi 政府のMubadala Developmentは以下の計画を持っている。

計画 立地 出資者 内容 スタート
Bauxite Mining cum
  Alumina Refinery Project
Orissa, India Dubai Aluminium74%
Larsen
& Toubro(India):26%
bauxite mining
alumina 1,400千トン
  (
+ 1,450千トン)
2009/下期
Sangaredi Refinery Project
 (Guinea Alumina Co.)
Guinea Dubai Aluminium25%
Global Alumina33.3%
BHP Billiton33.3%
Mubadala Development8.3%
bauxite mining 9,000千トン
alumina 3,000千トン
 
Beni Saf aluminium smelter Algeria Dubai Aluminium
Mubadala Development
Sonatrach
 
Algeria 国営石油ガス) 
Aluminium 700千トン  

 

付記 サウジの2件の新しいアルミ計画が明らかになった。(2008/6/18記事)

  出資者 内容 予算  
Sino-Saudi Jazan Aluminum
(Jazan Economic City)
Chalco(China)40%
MMC(Malaysia)20%
Binladen Group20%
Other Saudi investors20%
アルミ 100万トン $3 billion 2007/11 契約締結 
2008/4Q 着工
Chalco(China)20%
MMC(Malaysia)50%
電力 1,860MW $2 billion
(King Abdullah Economic City) Emal International
(Dubai Aluminium/
Mubadala Development
)
アルミ 70万トン
発電
$5 billion 2008/1 契約

 

 


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Sinopec と韓国のSK Energy は5月28日、SK Energy Sinopec の武漢エチレン計画に35%出資することで合意したことを明らかにした。
韓国の李明博大統領は27日から4日間、就任後初めて中国を訪問したが、基本契約調印は大統領の北京滞在中に行なわれた。

アジア勢としては初めてのエチレン計画への参加となる。
昨年の4月24日にSKとSINOPECとの間で共同投資の覚書を締結したと伝えられていた。

同社の投資額は明らかにされていないが、韓国業界筋では10億ドル程度とみている。
政府の認可が得られ次第、合弁会社を設立する。

武漢エチレン計画は既に建設が始められており、2011年末のスタートの予定。
Sinopec 子会社の武漢石油化学が実施するもので、19億ドルを投じ、80万トンのエチレンコンプレックスを建設する。

計画には以下の誘導品が含まれている。SKはこれらにも参加する。
  LLDPE
 300千トン
  HDPE  300千トン
  PP    400千トン
  EO   100千トン
  EG   380千トン

   2007/4/9 中国、湖北省武漢市のエチレン計画を承認 

ーーー

SKは2007年7月に持株会社制度を採用し、石油及び化学部門を SK Energy とした。

SKは元々は鮮京(SunKyung:ここからSKという名前ができた)で、石油化学の歴史は以下の通り。

1962年に韓国政府が100%出資で Korea Oil を設立1972年に蔚山に韓国最初の石化コンプレックスをつくった。

Korea Oil は1976年に米国 Gulf Oil との50/50JV となったが、同社の撤退で1980年に鮮京が50%出資、1980年の政府民営化方針で鮮京の100%出資となった。

1982年にKorea Oil をYukong (油公)と改称した。
1987年にはARCOとのJVのYukong ARCO でPO/SM 併産プラントを建設した。(1992年にARCOが撤退、現在はSK子会社のSKC となっている。)

Yukong は1997年にSKと改称、上記の通り、現在はSK Energy となっている。

SK Energyの蔚山コンプレックスの概要は以下の通り。(単位:千トン)

その後設立された各財閥のコンプレックスと異なり、政府設立のコンプレックスのため、川下企業が多数参加している。

三星石化:三星グループ 47.41%、BP 47.41%、Shinsegae 5.18%
三星BP Chemical :三星
BPJV
SKC:
Yukong ARCO Chemical
BASF:
現在のSKCからPO/SM 併産以外のSM設備購入
東西石油化学:旭化成 100%
龍山三井化学:龍山化学/三井化学JV
韓国 PTG :龍山化学 33.33%/龍山 14.11%/愛敬石化 30%
愛敬油化(元 三敬化学):愛敬化学/三菱ガス化学JV


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