米政府は9月28日、新年度となる10月1日以降の連邦政府予算が確保できないことに伴う政府閉鎖を見据え、閉鎖時の対応などについて職員に通知を始めた。
議会下院では多数派を占める共和党の内部対立で、予算案の成立が見通せていない。政府閉鎖となれば、トランプ前政権だった2018年12月~2019年1月以来となる。
米議会上院の与野党は2018年12月21日午後8時30分に、新たなつなぎ予算案を可決することなく22日正午まで休会に入った。 国土安全保障省、司法省、住宅都市開発省など、連邦政府の約4分の1にあたる機関では12月22日午前0時1分に予算が失効した。
上院は2019年1月25日、満場一致で「国境の壁」建設費を含まないつなぎ予算を承認、その後、下院が承認し、ホワイトハウスに送った。大統領が署名し、2018年12月22日から始まり、35日間続いた政府閉鎖はいったん終わった。2018/12/31 米政府機関の一部閉鎖、年明けまで続く
2019/1/26 米国、政府閉鎖を一時解除
今回の新年度予算を巡っては2023年5月、バイデン大統領とマッカーシー下院議長が、国防費を除いた歳出規模を前年度並みに抑制することで合意。財政拡張を志向する民主党と、緊縮財政を求める共和党の双方が歩み寄り、歳出抑制方針を盛り込んだ法案を超党派で可決した。
Biden米大統領と米連邦議会のKevin McCarthy 下院議長(共和党)は2023年5月27日、米政府債務の法定上限を引き上げることで合意した。債務上限を引き上げる一方で、政府の支出を削減するなどの案で「基本合意に至った」と明らかにした。今後は双方のスタッフ間での法案の文言の調整を進めるほか、28日にはBiden大統領と再び会談し、正式合意に至るとの見通しも示した。
暫定合意には、2年間の債務上限引き上げ(時限措置として現行の上限である約31.4兆ドルを上回る債務残高を認める)に加え、非国防支出を今後2年間にわたりほぼ現行の水準に据え置く歳出合意が盛り込まれた。
非国防支出を2024年度は2023年度と同レベルとし、2025年度は1%だけ増やすとされる。
未使用の新型コロナウイルス資金を回収、一部のエネルギープロジェクトの許可プロセスを加速し、貧しい米国人向けの食糧援助プログラムに要件を追加する。2023/6/2 債務上限法案を上院も可決、デフォルトを直前回避
しかし、共和党の一部の保守強硬派は、新年度予算でこの合意内容を上回る大幅な歳出削減を要求した。
トップ合意に反する主張だが、党内基盤の弱いマッカーシー下院議長は保守強硬派の声に配慮せざるを得ず、新年度予算の協議は行き詰まった。政府機関閉鎖を避けるため、つなぎ予算の検討に入った。
米上院の民主・共和両党の指導部は9月26日、つなぎ予算により11月17日まで連邦政府機関の閉鎖を回避するとともに、ウクライナ への60億ドル(約8900億円)の支援を提供する計画について合意した。
ウクライナ支援はバイデン大統領が要求した240億ドルには届いていない。ホワイトハウスが求めた緊急災害援助160億ドルのうち60億ドルは含まれている。
ウクライナ支援には保守派が反対しており、ポール上院議員(共和)が、ウクライナ支援を盛り込むことを巡り、手続き上の妨害によって審議・採決を遅らせると脅している。
このため、上院は9月30日深夜の政府機関閉鎖回避期限前に同計画の承認採決を実施できない可能性もある。
下院はそれ以上に問題である。下院のマッカシー議長(共和党)は党内の保守強硬派の反対を受け、譲歩に譲歩を重ねて15回目の投票でようやく新議長に選出された経緯があり、保守強硬派の意見を無視できない立場にある。
下院共和党は、政府機関閉鎖を避けるための予算案には、メキシコとの国境に移民希望者が殺到している現状を踏まえ、新たな入国規制措置を盛り込む必要があるとしている。
具体的に提示しているのは(1)トランプ前大統領が目玉政策としていたメキシコとの国境の壁の建設再開(2)亡命申請者の規制(3)国境管理関係の人員増強と報酬引き上げ――など。下院の一部共和党議員は、ウクライナ向け追加支援を盛り込んだ法案には反対票を投じる姿勢。
連邦緊急事態管理庁(FEMA)は、ハリケーンや山火事など自然災害の被災者向け支援予算が間もなく尽きると議会に警告しており、 上院では60億ドルの災害支援を含む歳出法案が超党派の支持を獲得したが、これがウクライナ支援とセットになる場合、下院共和党の一部が反対に回る恐れがある。
下院共和党は、社会問題への対応で保守的な政策を入れた歳出法案を幾つか提案している。(1)薬局での経口中絶薬ミフェプリストンの販売禁止(2)国防総省が職員に対して中絶を合法としている州で手術を受けるための旅費を支給することを禁止(3)国防総省による人種多様性プログラム実施の禁止(4)人種問題に関する学校教育の制限――といった内容 。
下院のマッカーシー議長(共和党)は9月27日、上院が超党派で合意した11月17日までの政府予算を賄う「つなぎ予算」案について、成立に必要となる下院の採決を行わない意向を示した。
つなぎ予算成立のタイムリミットは9月30日深夜で、間に合わなければ10月1日から一部の政府機関が閉鎖される見通し。
バイデン大統領は9月27日、政府が閉鎖されれば「多くの重要な仕事が影響を受ける」とし、共和党に譲歩を促した。
共和党のマコネル上院院内総務は債務上限問題ではマッカーシー議長を公然と支持する姿勢を貫いたものの、今回は上院で取りまとめられている政府機関閉鎖回避のための超党派案を支持し、自身をはじめとする上院共和党と下院共和党との違いを鮮明にしている。「上院と下院とでは極めて異なる。上院では、超党派ベースで可決が可能な合意に達することに引き続き努め、政府閉鎖がないようにしたい」と語った。
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